傾斜計及びそれを用いた計測方法
【課題】径寸法が極めて小さい(例えば、直径25mm以下の)傾斜計と、当該傾斜計を用いて削孔予定線に対する削孔孔の変位を計測する方法の提供。
【解決手段】傾斜に対応して変位する変位装置(1)と、変位装置(1)を視認する目視装置(2)と、目視装置(2)により変位装置(1)が視認出来るように照射する照明装置(3)と、筐体(5)とを備え、該筐体(5)は、概略円筒状に構成され、その内部に変位装置(1)、目視装置(2)、照明装置(3)が収納されており、前記変位装置(1)は、多面体(11)と、該多面体(11)を回転可能に支持している環状部材(12)とを有している。
【解決手段】傾斜に対応して変位する変位装置(1)と、変位装置(1)を視認する目視装置(2)と、目視装置(2)により変位装置(1)が視認出来るように照射する照明装置(3)と、筐体(5)とを備え、該筐体(5)は、概略円筒状に構成され、その内部に変位装置(1)、目視装置(2)、照明装置(3)が収納されており、前記変位装置(1)は、多面体(11)と、該多面体(11)を回転可能に支持している環状部材(12)とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング孔(例えば、鉛直方向のボーリング孔)の曲がり測定、すなわち、削孔されたボーリング孔が削孔予定線に対して、どの程度だけ変位しているのか(傾いているのか)を調べるための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボーリング孔やモニタリングの通水孔の削孔時に、削孔予定線に対する変位(曲がり或いは傾きの程度)を傾斜計で測定することが一般的に行われる。
【0003】
近年、例えば、地盤改良工法、土壌浄化工法等において、各種ボーリング孔やモニタリングの削孔に際して、掘削孔の径寸法が小さい場合が多く、例えば、傾斜計の直径が25mm以下であることが要求される場合がある。
【0004】
しかし、既存の傾斜計では、その直径を25mm以下にすることは不可能である。
【0005】
その他の従来技術として、磁気マーカーを用いて、縦孔における掘削先端位置を容易且つ高精度に計測するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係るシステムは、極小径の掘削孔における使用を前提としておらず、そのため、計測計の直径を30mm以下に収めることは不可能である。
【特許文献1】特開2005−283419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、径寸法が極めて小さい(例えば、直径25mm以下の)傾斜計と、当該傾斜計を用いて削孔予定線に対する削孔孔の変位を計測する方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の傾斜計(100)は、傾斜(ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角)に対応して変位する変位装置(例えば、第1のジャイロ1)と、該変位装置(1)を視認する目視装置(例えば、CCDカメラ2、内視鏡)と、該目視装置(2)により変位装置(1)が視認出来るように変位装置(1)を照射する照明装置(例えばLEDランプ3)と、筐体(5)とを備え、該筐体(5)は概略円筒状に構成され且つその内部に変位装置(1)、目視装置(2)、照明装置(3)が収納されており、前記変位装置(1)は、多面体(11)と、該多面体(11)を回転可能に支持している環状部材(12)とを有し、多面体(11)の下方領域は質量が大きく、前記環状部材(12)は筐体(5)の内壁面に回転可能に支持されていることを特徴としている(請求項1)。
【0008】
本発明において、筐体(5)における前記目視装置(2)と前記変位装置(1)との間の領域は折り曲げ自在に構成されており、該折り曲げ自在に構成された領域よりも変位装置(1)側には、折れ曲がった角度(例えば、ヨーイング角)が視認出来る手段(例えば、目盛りS等)が構成されているのが好ましい(請求項2)。
【0009】
或いは、本発明において制御装置(例えば、コンピュータ50)を備え、該制御装置(50)は目視装置(2)により視認された変位装置(1)の映像を記憶する記憶装置(51)と、傾斜(例えばヨーイング角)が発生する前後における変位装置(1)の映像を比較する比較装置(52)と、比較装置(52)の比較結果から傾斜(ヨーイング角)を決定する傾斜演算装置と(53)を有しているのが好ましい(請求項3)。
【0010】
本発明の実施に際して、前記筐体(5)は、直径が25mm以下であるのが好ましい。
【0011】
また、本発明の傾斜計(100)は、前記筐体(5)の捩れを計測する捩れ変位装置(1B)を備え、該捩れ変位装置(1B)は近接センサ(60)及び磁石(70)を有しているのが好ましい(請求項4:図13〜図15)。
ここで、近接センサ(60)は筐体(5)内に設けられ、磁石(70)はロッド(20)内壁面に所定の深度毎に複数個配置されているのが好ましく、前記ロッド(20)は傾斜を計測するべきボーリング孔(H)に建て込まれ且つ筐体(5)が挿入される様に構成されている(図13、図14)。
或いは、磁石(70)は筐体(5)内に設けられ、近接センサ(60)はロッド(20)内壁面に所定の深度毎に複数個配置されているのが好ましい(図15)。
【0012】
また、前記筐体(5)の捩れを計測する捩れ変位装置を備え、該捩れ変位装置は第2のジャイロ(80)で構成されているのが好ましい(請求項5)。
【0013】
上述した傾斜計(請求項1の傾斜計)を用いた本発明の計測方法は、傾斜を計測するべきボーリング孔にロッド(20)を建て込む工程(S1)と、変位手段(例えば、第1のジャイロ1)、目視手段(例えば、CCDカメラ2、内視鏡)、照明手段(例えばLEDランプ3)が収納されている筐体(プローブ5)をロッド(20)内に挿入する工程(S3)と、筐体(プローブ5)を下降させつつ、所定の計測位置毎に筐体(5)の捩れ量を計測する捩れ量計測工程(S5、S6)と、所定のタイミング(サンプリングタイム)毎に照明手段(例えばLEDランプ3)で変位手段(例えば、第1のジャイロ1)を照射して、目視手段(例えば、CCDカメラ2)で変位手段(1)を視認し、変位手段(1)の表示からロッド(20)の傾斜(ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角)を決定する工程(S15)と、決定された傾斜(ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角)に基づいて求められた変位量を捩れ量計測工程(S5、S6)で計測された捩れ量によって較正する較正工程(S19)、とを有することを特徴としている(請求項6)。
ここで、捩れ量計測工程(S5、S6)と、「傾斜(ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角)を決定する工程(S15)」とは、同一位置で実行しても良いし、異なった位置で実行しても良い。
【発明の効果】
【0014】
上述する構成を具備する本発明の傾斜計(100:請求項1)によれば、照明装置(例えばLEDランプ3)で変位装置(例えば、第1のジャイロ1)を照射し、目視装置(例えば、CCDカメラ2、内視鏡)で変位装置(1)の表示を視認し、視認された変位装置(1)の表示から、ボーリング孔(H)或いはロッド(20)の傾斜、いわゆる「ピッチング角」及び「ローリング角」を決定することが出来る。
【0015】
本発明において、筐体(5)における前記目視装置(2)と前記変位装置(1)との間の領域は折り曲げ自在に構成されており、該折り曲げ自在に構成された領域には折れ曲がった角度(例えば、ヨーイング角)が視認出来る手段(例えば、目盛りS等)が構成されていれば(請求項2)、前記折れ曲がった角度が視認出来る手段(例えば、目盛りS等)によって、いわゆる「ヨーイング角」を決定することが出来る。
【0016】
或いは、本発明において制御装置(例えば、コンピュータ50)を備え、該制御装置(50)は目視装置(2)により視認された変位装置(1)の映像を記憶する記憶装置(51)と、傾斜(ヨーイング角)が発生する前後における変位装置(1)の映像を比較する比較装置(52)と、比較装置(52)の比較結果から傾斜(例えばヨーイング角)を決定する傾斜演算装置(53)とを有していれば(請求項3)、記憶装置(51)に記憶された変位装置(1)の映像データから、比較装置(52)及び傾斜演算装置(55)によりヨーイング角を求めることが出来る。
【0017】
このように、本発明によれば、ボーリング孔(H)或いはロッド(20)の傾斜、いわゆる「ピッチング角」、「ローリング角」、「ヨーイング角」を決定することが出来るので、係る傾斜を決定するタイミング(サンプリングタイム)毎の変位量を合計することにより、ボーリング孔(H)或いはロッド(20)の変位量を決定することが可能である。
【0018】
本発明によれば、変位装置(1)、目視装置(2)、照明装置(3)は、筐体(筐体5)に収納されており、直径寸法の小さな円筒形状に構成することが出来るので、本発明によれば、直径寸法の小さな傾斜計が提供されるのである。
【0019】
本発明の傾斜装置(100)を下降する際に、筐体(プローブ5の筐体)自体が回転或いは回動してしまうと、ボーリング孔(H)或いはロッド(20)の傾斜を正確に求めることができない。
これに対して本発明によれば、前記筐体(5)の捩れを計測する捩れ変位装置(60、70)を備えれば(請求項3)、捩れ変位装置(60、70)で計測された筐体(5)の捩れ量によって、ロッド(20)の傾斜を較正することが出来るので、本発明により求めたボーリング孔(H)或いはロッド(20)の傾斜の精度は、さらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、地盤Gには極小径のボーリング孔(例えば、モニタリングの通水孔)Hが削孔されている。そして、ボーリング孔Hの曲がり或いは傾斜を測定するため、全体を符号100で示す傾斜計が、ボーリング孔H内に挿入されている。
【0021】
図示の実施形態に係る傾斜測定の測定精度は、例えば1/100程度である。
傾斜計100は、第1のジャイロ1と、CCDカメラ2と、LEDランプ3と、を備えている。
【0022】
第1のジャイロ1は、ピッチング角、ローリング角に対応して変位する。従って、後述する様に、当該変位を計測することにより、ピッチング角、ローリング角の計測が可能である。
ヨーイング角については、後述する様に、撮像範囲βにおいて観察される目盛り線の数や、撮像範囲における視認限界領域における第1のジャイロ1のカメラ画像から、計測することが可能である。
【0023】
CCDカメラは第1のジャイロ1の変位を視認するための目視装置である。後述する様に、CCDカメラの代わりに内視鏡を用いることも可能である。
LEDランプ3は、変位装置である第1のジャイロ1が視認出来るように第1のジャイロ1を照射するように構成されている。そしてLEDランプ3は、図示の実施形態では、CCDカメラ2の下方先端の側方に配置されている。CCDカメラ2により第1のジャイロ1を視認する際に、LEDランプ3がCCDカメラ2の視界を遮らないようにするためである。
ここで、照明はLEDランプ3に限定されるものではない。例えば、蛍光塗料等を利用した発光式の変位計を採用した場合には、LEDランプ3の様な照明を設ける必要性は無い。
【0024】
傾斜計100は、筐体(プローブの筐体)5と、カメラケーブル4とを備えている。ここで、カメラケーブル4は、CCDカメラ2とカメラコントローラ15とを接続しており、CCDカメラ2による視認の結果をカメラコントローラ15に伝達している。それと共に、図示しないカメラ駆動用の電源からCCDカメラ2に電力を供給している。
【0025】
筐体(プローブの筐体)5は概略円筒状に形成されており、その内部に第1のジャイロ1、CCDカメラ2およびLEDランプ3が収納されている。
なお、「プローブ」なる文言は、変位計、CCDカメラ、LED照明を包含する機器であって、筐体5で覆われている機器を包括的に表現する文言である。
【0026】
ここで、目視装置として内視鏡を用いた場合には、伝達ラインに光ファイバーが用いられる。内視鏡による映像、すなわち光学的なデータを地上側に伝達せしめるためである。
【0027】
図1で示す様に、傾斜計100は、地上側において、深度検出器7と、カメラコントローラ15と、照明LED用電源16と、制御手段であるコンピュータ50とを備えている。
【0028】
コンピュータ50は、記憶装置51と比較装置52と傾斜演算装置53とを有している。記憶装置51は、CCDカメラ2により視認された第1のジャイロ1の映像を記憶するように構成されている。比較装置52は、傾斜(例えば、ローリング角)が発生する前における第1のジャイロ1の映像と、傾斜(例えば、ローリング角)が発生した後のジャイロ1の映像とを比較するように構成されている。傾斜演算装置53は、比較装置52における比較結果(傾斜前におけるジャイロ1の映像と、傾斜が発生した後におけるジャイロ1の映像との比較結果)から、傾斜(例えば、ローリング角)を決定するように構成されている。
【0029】
コンピュータ50は、ケーブル30を介してカメラコントローラ15と接続されている。
カメラコントローラ15は、CCDカメラの稼動時の条件設定や、CCDカメラで撮影した画像情報の一次処理を行うと共に、一次処理した画像情報をコンピュータ50に伝送する際に中継する作用を奏する。
【0030】
LED用電源16は、LED用電源ケーブル6を介して、LEDランプ3と接続されている。
前記カメラケーブル4は、筐体5から地上の所定位置まで、ケーブルカバー4Cに覆われている。
LED用電源ケーブル6も同様に、筐体5から地上の所定位置まで、ケーブルカバー6Cに覆われている。
【0031】
図1では、地盤Gに削孔されたボーリング孔Hにボーリングロッド(ロッド)20が既に公知の手段によって建て込まれた状態が示されている。
筐体5をロッド20内部へ挿入するには、地上側に設置した筐体挿入装置9が用いられる。
筐体挿入装置9は、深度検出器7と筐体5の降下速度を調節するためのブレーキ8を設けている。
【0032】
深度検出器7は、ケーブルカバー4Cの繰り出し量により、筐体5の深度を検出するように構成されている。
図示の実施形態(図1)では、深度検出装置7は接触車輪71を有しており、接触車輪71が、ケーブルカバー4Cで覆われたカメラケーブル4と所定の押圧力により接触している。図示しない駆動装置により接触車輪71を回転し、以って、カメラケーブル4を地中側へ積極的に繰り出す様に構成することができる。
【0033】
筐体5をロッド20内に降下させれば、その降下量に応じて深度接触車輪71が回転し、深度接触車輪71の回転量に関する情報がケーブル40で前記コンピュータ50に伝送される。
そして、コンピュータ50において、深度接触車輪71の回転量から筐体5の降下量すなわち筐体5の深度を演算する。
【0034】
ブレーキ8は、筐体5を制動しながら降下させるために設けられている。
ここで、筐体5は自重により下降が可能であるが、自由落下させた場合には、ボーリング孔Hにおける底部に筐体5が衝突して、筐体5或いはその内部の機器が破損してしまう恐れが存在する。係る破損の危険性を回避するため、ブレーキ8で制動しつつ、筐体5を下降し、以って、筐体5及び/又は内蔵された機器の破損を防止している。
【0035】
図2は、筐体5を詳細に示している。
筐体5は泥水中に降下される場合があり、また、筐体5に内蔵される変位計である第1のジャイロ1、CCDカメラ2及びLEDランプ3は何れも精密機器であり、一部は光学系機器を構成する場合がある。そのため、筐体5は、水圧に対する耐圧性及び耐衝撃性が必要である。
筐体5の材料として、耐圧性及び耐衝撃性が良好な金属が選択可能である。
【0036】
また、筐体5を水圧の高い領域(深い領域:深度の大きい領域)へ降下させるために、一定以上の比重量が要求される。
すなわち、筐体5には、錘としての機能、すなわち重力により泥水中を確実に下降する機能が必要となり、その意味でも金属製であるのが好ましい。
【0037】
なお、筐体5の材料は金属に限定される訳ではなく、厚さ寸法が薄くても、一定以上の強度を有する材料であれば、筐体5の材料として選択可能である。
しかし、必要な強度及び比重量を得るための厚さ寸法が厚くなってしまうと、プローブの直径寸法が大きくなってしまうので、筐体5の材料選択には、注意が必要である。
【0038】
ロッド20内に地下水が溜まってしまう場合には、筐体5には耐水性が必要である。
明確には図示されていないが、地下水の筐体5内部への侵入防止のため、筐体5内部に高圧(3kgf/cm2〜5kgf/cm2)の不活性ガスを充填している。
【0039】
図示はされていないが、筐体5がロッド20の内壁面に衝突するのを防止するために、筐体5には、ロッド20に対するセンタリング機構がつけることが可能である。センタリング機構については、従来公知の機構をそのまま適用可能である。
【0040】
図示の実施形態において、筐体5の先端5aは尖っている。ロッド20内に水、特に泥水が充満している場合でも、筐体5が抵抗なく沈降する様にするためである。図示はされていないが、筐体5の先端を半球形に構成しても良い。
但し、泥水中を迅速に沈降出来るのであれば、筐体5先端は部分的に平坦であっても構わない。
【0041】
図3は、図2における第1のジャイロ1の中心点を含むX−X断面を拡大して示している。
図3において、第1のジャイロ1は多面体11と環状の枠体12と前記筐体5の一部によって構成されている。多面体11は、図2の下方の部分に、図2、図3では図示しない錘が内蔵されている。なお、図4以降において、第1のジャイロの動きを説明する際に、三角印Pbで錘の位置を特定している。
【0042】
環状の枠体12は、多面体11を包囲するように配置されている。多面体11は、第1の回転軸13により、環状の枠体12に回転自在に支持している。また、環状の枠体12の中心(多面体の中心に等しい)は、筐体5の中心軸に配置されている。環状の枠体12は、第2の回転軸14により、筐体5の一部に回転自在に支持されている。
第1の回転軸13と第2の回転軸14とは、直交するように配置されている。
【0043】
次に、図4〜図11を参照して、図示の実施形態における計測の態様について説明する。なお、図4〜図11では、図示の簡略化のため、多面体11を球として表現している。
図4は、縦穴(ボーリング孔)の傾斜を下向きに測定する場合における様態を、模式的に示している。
図4において、三角印Pbは、多面体11の下部に内蔵された錘の位置(多面体11の底部)を示している。丸印Ptは、多面体11における頂部を示している。三角印Pbと丸印Ptを結んだ直線Lvは、第1のジャイロ1の中心点を通る鉛直線である。
図4において、符号LcはCCDカメラ2の中心軸の延長線であり、この延長線Lcは、第1のジャイロ1の中心点Jcを通る。
【0044】
図4の(4‐1)は、3次元に傾斜した筐体5を水平方向に見た状態を示している。
図4の(4‐2)は、CCDカメラ2側から、第1のジャイロ1の頂部Pt側を概略正面に見た状態において、第1のジャイロ1のカメラ画像を示している。
図4の(4‐3)は、図4の(4‐1)において、第1のジャイロ1をA矢印方向に見た状態のカメラ画像を示している。
図4の(4‐4)は、図4の(4‐1)において、第1のジャイロ1の中心点Jcを、図4の紙面に垂直な方向から見た状態のカメラ画像を示している。
【0045】
図4において、符号θpはピッチング角を示し、符号θrはローリング角を示す。
第1のジャイロ1のカメラ画像(4‐2)は、第1のジャイロ1の頂部Ptが、CCDカメラ2の中心軸の延長線Lcすなわちジャイロ中心Jcから、ピッチングによって図4の左方向へ寸法δpだけ偏寄(変位)し、ローリングによって図4の上方へ寸法δrだけ偏寄(変位)した状態を示している。
CCDカメラ2で撮影した画像(4−2)は、上述した様に、カメラケーブル4、カメラコントロール15、ケーブル30経由で、コントロールユニット50に伝送される。
【0046】
図5は、縦孔(ボーリング孔)の傾斜を上向きに測定する場合の計測の様態を模式的に示している。
図5における符号は、図4の符号と同様である。
【0047】
図5の(5‐1)は、3次元に傾斜した筐体5を水平方向に見た状態を示している。
図5の(5‐2)は、CCDカメラ2側から第1のジャイロ1の底部Pb側を概略正面に見た状態において、第1のジャイロ1のカメラ画像を示している。
図5の(5‐3)は、図5の(5‐1)において、第1のジャイロ1をA矢印方向に見た状態のカメラ画像を示している。
図5の(5‐4)は、図5の(5‐1)において、第1のジャイロ1の中心点Jcを、図5の紙面に垂直な方向から見た状態のカメラ画像を示している。
【0048】
図5において、第1のジャイロ1のカメラ画像(5‐2)は、第1のジャイロ1の底部Pbが、CCDカメラの中心軸の延長線Lcすなわちジャイロ中心Jcから、ピッチングによって図4の左方向へ寸法δpだけ偏寄(変位)し、ローリングによって図4の上方へ寸法δrだけ偏寄(変位)した状態を示している。
【0049】
図6〜図8は、横孔の傾斜を測定する様態を、模式的に示している。
図6〜図8において、第1のジャイロ1における環状の枠体12には、横孔計測時専用のマーカーMが貼られている。マーカーMの貼られている位置は、CCDカメラ2側に面した第1の回転軸13上である。
【0050】
図6は、図示しないボーリング孔が水平であり、そのため筐体5も水平になった状態が示されている。
CCDカメラ画像(6−2)では、多面体11の頂部Ptは鉛直上方の位置となっており、マーカーMはカメラ画面(6−2)の正面の中央位置となっている。
ここで、図6の状態では、ピッチング、ローリング共に発生していない。
【0051】
図7は、横孔のボーリング孔が、筐体5の先端側が鉛直方向下方へ傾斜している場合における計測態様を示している。図7の態様では、筐体5にはピッチング角θpが生じている。
図7における(7−2)で示すCCDカメラ画像では、枠体12の中央部或いはマーカーMは、ピッチング角θpが生じていることにより、CCDカメラの中心軸Lcから下方に距離δpだけ偏寄(変位)した位置となっている。この距離δpを求めることにより、ピッチング角θpを演算することが出来る。
【0052】
図8は、筐体5にローリングが生じた状態を示している。図8において、符号「VL」は、管状の枠体12に対して直交する仮想線を示している。
図8の(8−1)で示す様に、筐体5にローリングが生じた場合には、環状の枠体12と直交する仮想線VLは、多面体11の頭部Ptと底部Pbを結ぶ直線Lvに対して、ローリング(ロール)角度θrだけ、円周方向(図8の(8−1)では反時計方向)へ偏寄(変位)する。
(8−1)の状態において、カメラ画面(8−2)では、CCDカメラ2及び環状の枠体12は筐体5のローリング方向に固定されているので、枠体12は図8の(8−1)において水平な状態を維持し、仮想線VLは垂直な状態を維持する。そして、多面体11の頭部Ptと底部Pbを結ぶ直線Lvは、枠体12と直交する仮想線VLに対して、時計方向へローリング角θrだけ偏寄(変位)した様に見える。
【0053】
図8において、ローリング角度θrを求めるためには、多面体11の頂部Ptと底部Pbが、CCDカメラに映ることが条件となる。図9に示すように、環状の枠体12がCCDカメラ2の正面に鉛直になるように配置されてしまうと、多面体11の頂部Ptと底部Pbが環状の枠体12の陰に隠れてしまい、CCDカメラに映らなくなるので、不都合である。
環状の枠体12を鉛直に配置するのであれば、図10に示すように配置するべきである。
【0054】
図11は、横孔のヨーイングを計測する場合の様態を示している。
図11の(11−1)は、ヨーイング(ヨーイング角θy)を生じた場合において、横孔H及び筐体5を上方から見た状態が示されている。この時、横孔H及び筐体5は水平方向に延在しており、ヨーイングは図11の(11−1)において、反時計方向に生じている。
図11の(11−2)は、(11−1)の状態において、横孔及び筐体5を水平方向(図11の(11−1)における上下何れかの方向)から見た状態が示されている。図11の(11−3)は、(11−1)及び(11−2)の状態におけるCCDカメラ画像を示している。
【0055】
横孔Hが水平方向左右の何れかの側に回りこむ(ヨーイングが生じた)場合に、ヨーイングが生じた旨を検出するために、図示の実施形態では、筐体5における第1のジャイロ1とCCDカメラ2の先端との間の領域に、部分的に筐体5を曲げるための伸縮継ぎ手55が設けられている。
【0056】
伸縮継ぎ手55は、外径が筐体5の外径と略等しい弾性体(例えば、ゴム製)の環状体である。伸縮継ぎ手55の軸方向の断面は、段部55aを有する段付の環状体である。段部55aは、内周側が軸方向の両端部で幅が減少するように構成されている。
筐体5の接続端部は、段付部5bを有する様に形成されている。そして、筐体5の段付部5bと、伸縮継ぎ手55の段部55aとは、相補的な形状をしており、係合可能に構成されている。筐体5の段付部5bと、伸縮継ぎ手55の段部55aとの係合箇所は、例えば図示しない複数のビス等で固定される。
【0057】
ヨーイングを視認し易くするために、筐体5の内周面における第1のジャイロ1近傍の領域であって、第2の回転軸14からCCDカメラ2側の領域には、環状の目盛りSが設けられている。
目盛りSは、筐体5の内周面に沿って所定の長さに亘って設けられている。目盛りSには、等間隔で複数(N本)の線s1〜sNが刻まれている(図12参照)。ここで、該複数(N本)の線s1〜sNは、異なる色によって色分けがされているのが好ましい。色分けすることにより、筐体5がどの程度ヨーイングしているかの視認が、さらに容易になるからである。
【0058】
ここで、CCDカメラの撮像範囲βは一定である。そして、目盛りSは、計測対象のボーリング孔Hが直線であれば、図12に示すように、複数(N本)の線s1〜sNが全て撮像範囲βに映り込み、カメラ画面に全ての線s1〜sNが同心円として映りこむ様に構成されている。なお、全ての線s1〜sNが同心円として映りこんだカメラ画面の図示は、省略する。
【0059】
これに対して、図11で示すように、筐体5がヨーイングした場合(ヨーイング角はθy)は、目盛りSの線s1〜sNの一部は、撮像範囲βから外れてしまう。すなわち、筐体5がヨーイングした場合、目盛りSの線s1〜sNの一部は、カメラ画像(11−2)の視認限界領域Qから外れてしまい、カメラ画像(11−3)の領域Eで示す様に、視認が出来なくなる。
【0060】
領域Eにおける目盛りSの線s1〜sNにおいて、視認出来る線が何処まで存在するのかを観測し、その観測結果を演算することにより、ヨーイング角θyを求めることが出来る。
或いは、コントロールユニット50で、ヨーイング前後の視認画像(カメラ画像)を重複させることにより、目盛りSの視認限界Qから外れた部分の面積、或いは、カメラ画像(11−3)の領域Eにおいて視認出来ない目盛りSの範囲を、正確に演算することが出来る。この演算結果によってヨーイング角θyは正確且つ容易に求まる。
【0061】
また、カメラ画像(11−3)から明らかな様に、第1のジャイロ1の鉛直線Lv或いは第1のジャイロ1全体が、カメラ画像(11−3)の中心線Lgから偏寄する(図11の(11−3)では左側に偏寄)。
ヨーイング前後の視認画像(カメラ画像)を重複させることにより、第1のジャイロ1の鉛直線Lv或いは第1のジャイロ1全体が、カメラ画像(11−3)の中心線Lgに対して、どの程度偏寄したかを演算することが可能である。そして、この演算結果を用いても、ヨーイング角θyを正確且つ容易に求めることが出来る。
コントロールユニット50において、筐体5の送り量(筐体5の進んだ距離)とヨーイング角θyとの関係から、計測対象の横孔Hのヨーイングによる極率半径も正確に求めることが出来る。
【0062】
再び図1において、ケーブルカバー4Cの捩れにより、筐体5全体が回動或いは回転して、CCDカメラ2及び第1のジャイロ1も回動或いは回転してしまうと、第1のジャイロ1の映像からロッド20、或いはボーリング孔Hの傾きを計算しても、実際の傾き(変位)とは異なってしまう。
従って、ロッド20、或いはボーリング孔Hにおける実際の傾き(変位)を求めるためには、カメラケーブル4の捩れ、筐体5全体の回動或いは回転を較正する必要がある。
【0063】
係る較正を行うため、図示の実施形態では、例えば所定深度毎に監視を行い、第1のジャイロ1の映像から演算されたボーリング孔H或いはロッド20の傾きや曲がりが所定の深度間において許容値以上に急増したならば、カメラケーブル4の捩れ、筐体5全体の回動或いは回転等の異常が発生と判断している。変位全体の計測制御の流れについては、図18のフローチャートで後述する。
【0064】
図示の実施形態において、カメラケーブル4の捩れ等に起因して、筐体5全体が回動或いは回転してしまうという異常を検出することが可能である。係る態様が、図13、図14で示されている。
図13、図14において、筐体5側に設けた近接センサ60と、ロッド20の内壁面に設けた多数のマグネット70とから捩れ計測装置1Bが構成されている。
マグネット70は所定の深度毎にロッド20内壁面の円周方向について一定の位置にセットされている。
【0065】
筐体5側に設けた近接センサ60は、所定の深度毎に、ロッド20の内壁面に設けられたマグネット70との距離を検出するように構成されている。
マグネット70は、ロッド20内壁面の円周方向について、一定の位置にセットされている。そのため、筐体5全体の回動等に対応して、マグネット70と近接センサ60との相対位置は変化する。
【0066】
捩れを生じていない初期状態では、例えば筐体5側に設けた近接センサ60と、ロッド20内周面に設けたマグネット70とは、筐体5の中心を通り半径方向に伸びる同一線上に位置している。この場合、近接センサ60とマグネット70との相対距離は、符号「L1」で示す通りである(図14参照)。
筐体5全体の回動により、図14に示すように捩れθが生じた場合は、近接センサ60とマグネット70との相対距離は、符号「L2」で示す距離に増大する。
【0067】
近接センサ60の受信結果により、近接センサ60とマグネット70との相対距離は求まるので、当該相対距離により捩れ量θを求め、筐体5全体の回動量を求めることが出来る。
これにより、筐体5全体の回転或いは回動を監視する事が出来る。
【0068】
マグネット70を、ロッド20の長手方向について、所定のピッチで設ける。そして、マグネット70の各々で、上述した態様によって捩れ量θを算出し、算出した捩れ量θを筐体5において積算すれば、合計の捩れ量、すなわち筐体5全体の回転或いは回動が求まる。
それと共に、マグネット70の所定のピッチにおいて、算出した捩れ量θが許容範囲を超えて増加していたならば、異常発生と判断する。
【0069】
図13、図14では、ロッド20の内壁面に複数の磁石70を設け、筐体側に近接センサ60を設けているが、図15に示すように、筐体5側に磁石70を設け、ロッド20内壁面に、複数の近接センサ60を所定の深度毎に設けても良い。
【0070】
図13〜図15の様に構成すれば、筐体5全体の回転量或いは回動量を求めることが出来る。
そして、第1のジャイロ1の映像からジャイロ中心が偏奇している方向を求めて、ボーリング孔H或いはロッド20の傾きを計算する際に、筐体5全体の回転量或いは回動量を用いて較正を行い、計算結果と実際の傾きとの乖離を無視できる程度に微小化させることが可能となる。
その様に構成すれば、後述するような第2のジャイロを別途設けることは不要となる。
【0071】
図示の実施形態では、図16に示すように、筐体(探査部)5内に第2のジャイロ80を設けても良い。
そのように構成すれば、第2のジャイロ80により、方向をチェックでき、カメラケーブル4の捩れや筐体5全体の回転或いは回動に起因する誤差を較正することが出来る。
【0072】
図示はされていないが、第2のジャイロ80が筐体5外にある場合にはカメラ、ケーブル4及びケーブルカバー4Cは捩り剛性があるものが選択される。第2のジャイロ80と筐体5との間のケーブル4及びケーブルカバー4Cにおける捩れ量を少なくして、第2のジャイロ80が示す向きと、第1のジャイロ1が示す向きとの較正を容易にするためである。
【0073】
或いは、図示はされていないが、ケーブルカバー4Cに円周方向位置が一定である旨の刻印、すなわち、方向を示す刻印を付けることが出来る。
そのように構成すれば、地上で当該刻印をチェックして、その刻印の向きがどの程度ずれたかを計測することにより、カメラケーブル4の捩れを検出し、必要な較正を行う。
【0074】
図1、図13、図14を参照して上述した捩れ計測装置1Bを用いて、カメラケーブル4の捩れ量の計測方法を図17のフローチャートに基づいて説明する。
【0075】
先ず、ロッド20をボーリング孔Hに建て込み(ステップS1)、ロッド建て込みが完了すれば(ステップS2がYES)、ステップS3に進む。
【0076】
ステップS3では筐体(プローブ)5を、ブレーキ8を操作しつつ、ロッド20内に降下させる。
筐体(プローブ)5は所定の計測位置に到達するまで降下される(ステップS4)。
ここで、ステップS4における「計測位置」とは、捩れ量を計測する工程を実行するべき計測位置或いは深度を意味している。すなわち、図13、図14において説明した所定深度であり、複数のマグネット70(或いは、近接センサ60)を設置する間隔(ピッチ)に相当する。
【0077】
筐体5が所定の計測位置に到達したならば(ステップS4がYES)、近接センサ60からの検出信号を検出し(ステップS5)、当該検出信号に基づいて、捩れ量の計測を行うべき所定の計測位置間における捩れ量(所定深度における筐体5全体の回動量)を演算する(ステップS6)。
すなわち、筐体(プローブ)5の降下後、最初の「所定の計測位置」に到達した場合には、その時点までの捩れ量を演算する。
【0078】
それ以降は、直前の「所定の計測位置」から到達した「所定の計測位置」の間における捩れ量、すなわち、図13、図14において説明した複数のマグネット70(或いは、近接センサ60)を設置する間隔(ピッチ)における捩れ量を演算する。
【0079】
コンピュータ50は、演算した捩れ量(計測位置間の捩れ量)が閾値以下か否かを判断する(ステップS7)。閾値以下であれば(ステップS7がYES)、ステップS8に進む。
演算した捩れ量が閾値を超えている場合(ステップS7がNO)、すなわち計測位置間において捩れ量が急激に増加した場合には、何らかの異常が発生したものと判定し(ステップS11)、筐体(プローブ)5を引き上げて(ステップS12)、ロッド20或いはボーリング孔Hの傾斜計測作業を終了する。
【0080】
ステップS8では、ステップS6で求めた「計測位置間の捩れ量」(図13、図4において説明した複数のマグネット70或いは近接センサ60を設置する間隔における捩れ量)を合算して、その総和を捩れ量とする。
【0081】
次にステップS9で、ステップS8で求めた捩れ量(総和)をコントロールユニット50の図示しない較正手段へ送信する。
【0082】
次に、目標深度、すなわちロッド20の最深部まで筐体5が到達したか否かを判断する(ステップS10)。
到達していない場合には、ステップS4以下を繰り返す(ステップS10がNOのループ)。
筐体(プローブ)5がロッド20の最深部まで到達したならば(ステップS10がYES)、筐体5を引き上げて(ステップS12)、筐体(プローブ)5の捩れ量計測作業を終了する。
【0083】
次に、図1〜図14を参照して上述した傾斜計100を用いて、且つ、図17の計測作業によって求めた筐体5の捩れ量を用いて、ロッド20(或いは、ボーリング孔H)の予定掘削線(縦孔掘削時の鉛直線)に対する変位の計測について、図8のフローチャートに基づいて説明する。
尚、図17の制御と、図18の制御は常時パラレルで処理されている。そして、図17のステップS1〜ステップS3と、図18のステップS1〜ステップS3とは、共通している。
【0084】
先ず、ロッド20をボーリング孔Hに建て込み(ステップS1)、ロッド建て込みが完了すれば(ステップS2がYES)、ステップS3に進む。
【0085】
ステップS3では筐体(プローブ)5を、ブレーキ8を操作しつつ、ロッド20内に降下させる。
ステップS14ではサンプリングタイムになるまで待機しており(ステップS14がNOのループ)、サンプリングタイムになったならば(ステップS14がYES)、ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角の計測を開始する(ステップS15)。
ここで、筐体(プローブ)5は、一定速度でロッド20内を降下している。所定時間(サンプリングタイム)だけ降下を続ければ、所定ピッチの距離だけ筐体(プローブ)5は降下したことになる。その意味で、「サンプリングタイム」なる文言は、図17で説明した「計測位置間」の距離と同様の意味で使われている。
サンプリングタイムだけ降下することにより筐体(プローブ)5が到達した位置と、図17のフローチャートの計測位置とを、同一にすることが可能である。
【0086】
ステップS16ではサンプリングタイム間の変位量δ(ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角)を演算する。
ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角の計測、演算については、図2〜図12で説明した通りである。
【0087】
ステップS17ではサンプリングタイム間の変位量δが閾値以下であるか否かを判断する。閾値以下であれば(ステップS17のYES)、ステップS18に進む。閾値を越えていれば(ステップS17でNO)、異常事態と判定し(ステップS23)、筐体(プローブ)5を引き上げて(ステップS24)制御は終了する。
【0088】
ステップS18ではサンプリングタイム毎の変位量を合算する。次のステップS19では、図17のフローチャートで説明した筐体5の捩れ量を用いて、変位量を較正する。そして、正確な変位量を決定する(ステップS20)。
正確な変位量は、例えば、コントロールユニット50のモニタに表示されて(ステップS21)、ステップS22に進む。
【0089】
ステップS22では、コントロールユニット50は最終目標深度、すなわちロッド20の最深部まで筐体(プローブ)5が到達したか否かを判断する。筐体5がロッド20の最深部まで到達していなければ(ステップS22がNO)、ステップS3以降を繰り返す。
目標深度に到達していれば(ステップS22がYES)、筐体(プローブ)5を引き上げて(ステップS24)計測作業を終了する。
【0090】
上述したような構成の本実施形態の傾斜計100によれば、LEDランプ3で第1のジャイロ1を照射しており、CCDカメラ2で第1のジャイロの表示を視認し、視認された第1のジャイロの表示から、コントロールユニット50によってこの表示の内容を解析し、ボーリング孔H或いはロッド20の傾斜(ピッチング角、ローリング角)を明確に決定することが出来る。
【0091】
第1のジャイロ1のCCDカメラ2寄りに設けた目盛りSを観測することにより、或いは、CCDカメラ2が捕らえた画像から非視認領域(図11の視認限界領域Qの外側)の目盛り(s1〜sN)を含んだ面積を、コントローラ50によって解析することにより、ヨーイング角を正確に決定することが出来る。
【0092】
また、コンピュータ50はCCDカメラ2により視認された第1のジャイロ1の映像を記憶する記憶装置51と、傾斜(ヨーイング角、ローリング角、ヨーイング角)が発生する前後における第1のジャイロ1の映像を比較する比較装置52と、比較装置52の比較結果から傾斜を決定する傾斜演算装置53とを有しているので、記憶装置51に記憶された第1のジャイロ1の映像データから、比較装置52及び傾斜演算装置55により傾斜を求めることが出来る。
そして、この傾斜を決定するタイミング(サンプリングタイム)毎の変位量を合計することにより、ボーリング孔H或いはロッド20の全変位量を決定することが可能である。
【0093】
本実施形態の変位計100によれば、第1のジャイロ1、CCDカメラ2、LEDランプ3は、筐体(プローブの筐体)5に収納されており、直径寸法の小さな円筒形状に構成することが出来るので、直径寸法の小さな傾斜計の提供が可能となる。
【0094】
また、本実施形態の変位計100によれば、筐体5の捩れを計測する捩れ変位装置1Bを備えているので、該捩れ変位装置1Bで計測された筐体5の捩れ量により、ロッド20の傾斜を較正することが出来る。従って、本実施形態によって求めたボーリング孔H、或いはロッド20の傾斜の精度は、更に向上する。
【0095】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定するものではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態の全体構成を示す構成図。
【図2】実施形態の筐体を詳細に示した部分断面図。
【図3】図2のX−X断面矢視図。
【図4】縦孔を下向きに計測する場合を説明する図。
【図5】縦孔を上向きに計測する場合を説明する図。
【図6】横孔計測時で変位が生じていない状態を示す図。
【図7】横孔計測時でピッチングが生じている状態を示す図。
【図8】横孔計測時でローリングが生じている状態を示す図。
【図9】計測不可能な状態を示す図。
【図10】計測可能な状態を示す図。
【図11】横孔計測時でヨーイングが発生している状態を示す図。
【図12】横孔計測時でヨーイングが発生していない状態を示す図。
【図13】実施形態の捩れ量検出機構を説明する模式図。
【図14】図13のX−X断面矢視図。
【図15】捩れ量検出機構の変形例を示す横断面図。
【図16】捩れ量検出機構の別の実施例の部分断面図。
【図17】捩れ量の検出を説明するフローチャート。
【図18】変位量計測を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0097】
1・・・変位装置/第1のジャイロ
2・・・目視装置/CCDカメラ
3・・・照明装置/LEDランプ
4・・・カメラケーブル
5・・・筐体/プローブ
6・・・照明用電源ケーブル/LED用電源ケーブル
7・・・深度検出装置
8・・・ブレーキ
9・・・挿入装置
15・・・カメラコントローラ
16・・・照明用電源
20・・・ボーリングロッド
50・・・コンピュータ
55・・・伸縮継ぎ手
H・・・ボーリング孔
M・・・マーカー
S・・・目盛り
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング孔(例えば、鉛直方向のボーリング孔)の曲がり測定、すなわち、削孔されたボーリング孔が削孔予定線に対して、どの程度だけ変位しているのか(傾いているのか)を調べるための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボーリング孔やモニタリングの通水孔の削孔時に、削孔予定線に対する変位(曲がり或いは傾きの程度)を傾斜計で測定することが一般的に行われる。
【0003】
近年、例えば、地盤改良工法、土壌浄化工法等において、各種ボーリング孔やモニタリングの削孔に際して、掘削孔の径寸法が小さい場合が多く、例えば、傾斜計の直径が25mm以下であることが要求される場合がある。
【0004】
しかし、既存の傾斜計では、その直径を25mm以下にすることは不可能である。
【0005】
その他の従来技術として、磁気マーカーを用いて、縦孔における掘削先端位置を容易且つ高精度に計測するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係るシステムは、極小径の掘削孔における使用を前提としておらず、そのため、計測計の直径を30mm以下に収めることは不可能である。
【特許文献1】特開2005−283419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、径寸法が極めて小さい(例えば、直径25mm以下の)傾斜計と、当該傾斜計を用いて削孔予定線に対する削孔孔の変位を計測する方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の傾斜計(100)は、傾斜(ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角)に対応して変位する変位装置(例えば、第1のジャイロ1)と、該変位装置(1)を視認する目視装置(例えば、CCDカメラ2、内視鏡)と、該目視装置(2)により変位装置(1)が視認出来るように変位装置(1)を照射する照明装置(例えばLEDランプ3)と、筐体(5)とを備え、該筐体(5)は概略円筒状に構成され且つその内部に変位装置(1)、目視装置(2)、照明装置(3)が収納されており、前記変位装置(1)は、多面体(11)と、該多面体(11)を回転可能に支持している環状部材(12)とを有し、多面体(11)の下方領域は質量が大きく、前記環状部材(12)は筐体(5)の内壁面に回転可能に支持されていることを特徴としている(請求項1)。
【0008】
本発明において、筐体(5)における前記目視装置(2)と前記変位装置(1)との間の領域は折り曲げ自在に構成されており、該折り曲げ自在に構成された領域よりも変位装置(1)側には、折れ曲がった角度(例えば、ヨーイング角)が視認出来る手段(例えば、目盛りS等)が構成されているのが好ましい(請求項2)。
【0009】
或いは、本発明において制御装置(例えば、コンピュータ50)を備え、該制御装置(50)は目視装置(2)により視認された変位装置(1)の映像を記憶する記憶装置(51)と、傾斜(例えばヨーイング角)が発生する前後における変位装置(1)の映像を比較する比較装置(52)と、比較装置(52)の比較結果から傾斜(ヨーイング角)を決定する傾斜演算装置と(53)を有しているのが好ましい(請求項3)。
【0010】
本発明の実施に際して、前記筐体(5)は、直径が25mm以下であるのが好ましい。
【0011】
また、本発明の傾斜計(100)は、前記筐体(5)の捩れを計測する捩れ変位装置(1B)を備え、該捩れ変位装置(1B)は近接センサ(60)及び磁石(70)を有しているのが好ましい(請求項4:図13〜図15)。
ここで、近接センサ(60)は筐体(5)内に設けられ、磁石(70)はロッド(20)内壁面に所定の深度毎に複数個配置されているのが好ましく、前記ロッド(20)は傾斜を計測するべきボーリング孔(H)に建て込まれ且つ筐体(5)が挿入される様に構成されている(図13、図14)。
或いは、磁石(70)は筐体(5)内に設けられ、近接センサ(60)はロッド(20)内壁面に所定の深度毎に複数個配置されているのが好ましい(図15)。
【0012】
また、前記筐体(5)の捩れを計測する捩れ変位装置を備え、該捩れ変位装置は第2のジャイロ(80)で構成されているのが好ましい(請求項5)。
【0013】
上述した傾斜計(請求項1の傾斜計)を用いた本発明の計測方法は、傾斜を計測するべきボーリング孔にロッド(20)を建て込む工程(S1)と、変位手段(例えば、第1のジャイロ1)、目視手段(例えば、CCDカメラ2、内視鏡)、照明手段(例えばLEDランプ3)が収納されている筐体(プローブ5)をロッド(20)内に挿入する工程(S3)と、筐体(プローブ5)を下降させつつ、所定の計測位置毎に筐体(5)の捩れ量を計測する捩れ量計測工程(S5、S6)と、所定のタイミング(サンプリングタイム)毎に照明手段(例えばLEDランプ3)で変位手段(例えば、第1のジャイロ1)を照射して、目視手段(例えば、CCDカメラ2)で変位手段(1)を視認し、変位手段(1)の表示からロッド(20)の傾斜(ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角)を決定する工程(S15)と、決定された傾斜(ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角)に基づいて求められた変位量を捩れ量計測工程(S5、S6)で計測された捩れ量によって較正する較正工程(S19)、とを有することを特徴としている(請求項6)。
ここで、捩れ量計測工程(S5、S6)と、「傾斜(ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角)を決定する工程(S15)」とは、同一位置で実行しても良いし、異なった位置で実行しても良い。
【発明の効果】
【0014】
上述する構成を具備する本発明の傾斜計(100:請求項1)によれば、照明装置(例えばLEDランプ3)で変位装置(例えば、第1のジャイロ1)を照射し、目視装置(例えば、CCDカメラ2、内視鏡)で変位装置(1)の表示を視認し、視認された変位装置(1)の表示から、ボーリング孔(H)或いはロッド(20)の傾斜、いわゆる「ピッチング角」及び「ローリング角」を決定することが出来る。
【0015】
本発明において、筐体(5)における前記目視装置(2)と前記変位装置(1)との間の領域は折り曲げ自在に構成されており、該折り曲げ自在に構成された領域には折れ曲がった角度(例えば、ヨーイング角)が視認出来る手段(例えば、目盛りS等)が構成されていれば(請求項2)、前記折れ曲がった角度が視認出来る手段(例えば、目盛りS等)によって、いわゆる「ヨーイング角」を決定することが出来る。
【0016】
或いは、本発明において制御装置(例えば、コンピュータ50)を備え、該制御装置(50)は目視装置(2)により視認された変位装置(1)の映像を記憶する記憶装置(51)と、傾斜(ヨーイング角)が発生する前後における変位装置(1)の映像を比較する比較装置(52)と、比較装置(52)の比較結果から傾斜(例えばヨーイング角)を決定する傾斜演算装置(53)とを有していれば(請求項3)、記憶装置(51)に記憶された変位装置(1)の映像データから、比較装置(52)及び傾斜演算装置(55)によりヨーイング角を求めることが出来る。
【0017】
このように、本発明によれば、ボーリング孔(H)或いはロッド(20)の傾斜、いわゆる「ピッチング角」、「ローリング角」、「ヨーイング角」を決定することが出来るので、係る傾斜を決定するタイミング(サンプリングタイム)毎の変位量を合計することにより、ボーリング孔(H)或いはロッド(20)の変位量を決定することが可能である。
【0018】
本発明によれば、変位装置(1)、目視装置(2)、照明装置(3)は、筐体(筐体5)に収納されており、直径寸法の小さな円筒形状に構成することが出来るので、本発明によれば、直径寸法の小さな傾斜計が提供されるのである。
【0019】
本発明の傾斜装置(100)を下降する際に、筐体(プローブ5の筐体)自体が回転或いは回動してしまうと、ボーリング孔(H)或いはロッド(20)の傾斜を正確に求めることができない。
これに対して本発明によれば、前記筐体(5)の捩れを計測する捩れ変位装置(60、70)を備えれば(請求項3)、捩れ変位装置(60、70)で計測された筐体(5)の捩れ量によって、ロッド(20)の傾斜を較正することが出来るので、本発明により求めたボーリング孔(H)或いはロッド(20)の傾斜の精度は、さらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、地盤Gには極小径のボーリング孔(例えば、モニタリングの通水孔)Hが削孔されている。そして、ボーリング孔Hの曲がり或いは傾斜を測定するため、全体を符号100で示す傾斜計が、ボーリング孔H内に挿入されている。
【0021】
図示の実施形態に係る傾斜測定の測定精度は、例えば1/100程度である。
傾斜計100は、第1のジャイロ1と、CCDカメラ2と、LEDランプ3と、を備えている。
【0022】
第1のジャイロ1は、ピッチング角、ローリング角に対応して変位する。従って、後述する様に、当該変位を計測することにより、ピッチング角、ローリング角の計測が可能である。
ヨーイング角については、後述する様に、撮像範囲βにおいて観察される目盛り線の数や、撮像範囲における視認限界領域における第1のジャイロ1のカメラ画像から、計測することが可能である。
【0023】
CCDカメラは第1のジャイロ1の変位を視認するための目視装置である。後述する様に、CCDカメラの代わりに内視鏡を用いることも可能である。
LEDランプ3は、変位装置である第1のジャイロ1が視認出来るように第1のジャイロ1を照射するように構成されている。そしてLEDランプ3は、図示の実施形態では、CCDカメラ2の下方先端の側方に配置されている。CCDカメラ2により第1のジャイロ1を視認する際に、LEDランプ3がCCDカメラ2の視界を遮らないようにするためである。
ここで、照明はLEDランプ3に限定されるものではない。例えば、蛍光塗料等を利用した発光式の変位計を採用した場合には、LEDランプ3の様な照明を設ける必要性は無い。
【0024】
傾斜計100は、筐体(プローブの筐体)5と、カメラケーブル4とを備えている。ここで、カメラケーブル4は、CCDカメラ2とカメラコントローラ15とを接続しており、CCDカメラ2による視認の結果をカメラコントローラ15に伝達している。それと共に、図示しないカメラ駆動用の電源からCCDカメラ2に電力を供給している。
【0025】
筐体(プローブの筐体)5は概略円筒状に形成されており、その内部に第1のジャイロ1、CCDカメラ2およびLEDランプ3が収納されている。
なお、「プローブ」なる文言は、変位計、CCDカメラ、LED照明を包含する機器であって、筐体5で覆われている機器を包括的に表現する文言である。
【0026】
ここで、目視装置として内視鏡を用いた場合には、伝達ラインに光ファイバーが用いられる。内視鏡による映像、すなわち光学的なデータを地上側に伝達せしめるためである。
【0027】
図1で示す様に、傾斜計100は、地上側において、深度検出器7と、カメラコントローラ15と、照明LED用電源16と、制御手段であるコンピュータ50とを備えている。
【0028】
コンピュータ50は、記憶装置51と比較装置52と傾斜演算装置53とを有している。記憶装置51は、CCDカメラ2により視認された第1のジャイロ1の映像を記憶するように構成されている。比較装置52は、傾斜(例えば、ローリング角)が発生する前における第1のジャイロ1の映像と、傾斜(例えば、ローリング角)が発生した後のジャイロ1の映像とを比較するように構成されている。傾斜演算装置53は、比較装置52における比較結果(傾斜前におけるジャイロ1の映像と、傾斜が発生した後におけるジャイロ1の映像との比較結果)から、傾斜(例えば、ローリング角)を決定するように構成されている。
【0029】
コンピュータ50は、ケーブル30を介してカメラコントローラ15と接続されている。
カメラコントローラ15は、CCDカメラの稼動時の条件設定や、CCDカメラで撮影した画像情報の一次処理を行うと共に、一次処理した画像情報をコンピュータ50に伝送する際に中継する作用を奏する。
【0030】
LED用電源16は、LED用電源ケーブル6を介して、LEDランプ3と接続されている。
前記カメラケーブル4は、筐体5から地上の所定位置まで、ケーブルカバー4Cに覆われている。
LED用電源ケーブル6も同様に、筐体5から地上の所定位置まで、ケーブルカバー6Cに覆われている。
【0031】
図1では、地盤Gに削孔されたボーリング孔Hにボーリングロッド(ロッド)20が既に公知の手段によって建て込まれた状態が示されている。
筐体5をロッド20内部へ挿入するには、地上側に設置した筐体挿入装置9が用いられる。
筐体挿入装置9は、深度検出器7と筐体5の降下速度を調節するためのブレーキ8を設けている。
【0032】
深度検出器7は、ケーブルカバー4Cの繰り出し量により、筐体5の深度を検出するように構成されている。
図示の実施形態(図1)では、深度検出装置7は接触車輪71を有しており、接触車輪71が、ケーブルカバー4Cで覆われたカメラケーブル4と所定の押圧力により接触している。図示しない駆動装置により接触車輪71を回転し、以って、カメラケーブル4を地中側へ積極的に繰り出す様に構成することができる。
【0033】
筐体5をロッド20内に降下させれば、その降下量に応じて深度接触車輪71が回転し、深度接触車輪71の回転量に関する情報がケーブル40で前記コンピュータ50に伝送される。
そして、コンピュータ50において、深度接触車輪71の回転量から筐体5の降下量すなわち筐体5の深度を演算する。
【0034】
ブレーキ8は、筐体5を制動しながら降下させるために設けられている。
ここで、筐体5は自重により下降が可能であるが、自由落下させた場合には、ボーリング孔Hにおける底部に筐体5が衝突して、筐体5或いはその内部の機器が破損してしまう恐れが存在する。係る破損の危険性を回避するため、ブレーキ8で制動しつつ、筐体5を下降し、以って、筐体5及び/又は内蔵された機器の破損を防止している。
【0035】
図2は、筐体5を詳細に示している。
筐体5は泥水中に降下される場合があり、また、筐体5に内蔵される変位計である第1のジャイロ1、CCDカメラ2及びLEDランプ3は何れも精密機器であり、一部は光学系機器を構成する場合がある。そのため、筐体5は、水圧に対する耐圧性及び耐衝撃性が必要である。
筐体5の材料として、耐圧性及び耐衝撃性が良好な金属が選択可能である。
【0036】
また、筐体5を水圧の高い領域(深い領域:深度の大きい領域)へ降下させるために、一定以上の比重量が要求される。
すなわち、筐体5には、錘としての機能、すなわち重力により泥水中を確実に下降する機能が必要となり、その意味でも金属製であるのが好ましい。
【0037】
なお、筐体5の材料は金属に限定される訳ではなく、厚さ寸法が薄くても、一定以上の強度を有する材料であれば、筐体5の材料として選択可能である。
しかし、必要な強度及び比重量を得るための厚さ寸法が厚くなってしまうと、プローブの直径寸法が大きくなってしまうので、筐体5の材料選択には、注意が必要である。
【0038】
ロッド20内に地下水が溜まってしまう場合には、筐体5には耐水性が必要である。
明確には図示されていないが、地下水の筐体5内部への侵入防止のため、筐体5内部に高圧(3kgf/cm2〜5kgf/cm2)の不活性ガスを充填している。
【0039】
図示はされていないが、筐体5がロッド20の内壁面に衝突するのを防止するために、筐体5には、ロッド20に対するセンタリング機構がつけることが可能である。センタリング機構については、従来公知の機構をそのまま適用可能である。
【0040】
図示の実施形態において、筐体5の先端5aは尖っている。ロッド20内に水、特に泥水が充満している場合でも、筐体5が抵抗なく沈降する様にするためである。図示はされていないが、筐体5の先端を半球形に構成しても良い。
但し、泥水中を迅速に沈降出来るのであれば、筐体5先端は部分的に平坦であっても構わない。
【0041】
図3は、図2における第1のジャイロ1の中心点を含むX−X断面を拡大して示している。
図3において、第1のジャイロ1は多面体11と環状の枠体12と前記筐体5の一部によって構成されている。多面体11は、図2の下方の部分に、図2、図3では図示しない錘が内蔵されている。なお、図4以降において、第1のジャイロの動きを説明する際に、三角印Pbで錘の位置を特定している。
【0042】
環状の枠体12は、多面体11を包囲するように配置されている。多面体11は、第1の回転軸13により、環状の枠体12に回転自在に支持している。また、環状の枠体12の中心(多面体の中心に等しい)は、筐体5の中心軸に配置されている。環状の枠体12は、第2の回転軸14により、筐体5の一部に回転自在に支持されている。
第1の回転軸13と第2の回転軸14とは、直交するように配置されている。
【0043】
次に、図4〜図11を参照して、図示の実施形態における計測の態様について説明する。なお、図4〜図11では、図示の簡略化のため、多面体11を球として表現している。
図4は、縦穴(ボーリング孔)の傾斜を下向きに測定する場合における様態を、模式的に示している。
図4において、三角印Pbは、多面体11の下部に内蔵された錘の位置(多面体11の底部)を示している。丸印Ptは、多面体11における頂部を示している。三角印Pbと丸印Ptを結んだ直線Lvは、第1のジャイロ1の中心点を通る鉛直線である。
図4において、符号LcはCCDカメラ2の中心軸の延長線であり、この延長線Lcは、第1のジャイロ1の中心点Jcを通る。
【0044】
図4の(4‐1)は、3次元に傾斜した筐体5を水平方向に見た状態を示している。
図4の(4‐2)は、CCDカメラ2側から、第1のジャイロ1の頂部Pt側を概略正面に見た状態において、第1のジャイロ1のカメラ画像を示している。
図4の(4‐3)は、図4の(4‐1)において、第1のジャイロ1をA矢印方向に見た状態のカメラ画像を示している。
図4の(4‐4)は、図4の(4‐1)において、第1のジャイロ1の中心点Jcを、図4の紙面に垂直な方向から見た状態のカメラ画像を示している。
【0045】
図4において、符号θpはピッチング角を示し、符号θrはローリング角を示す。
第1のジャイロ1のカメラ画像(4‐2)は、第1のジャイロ1の頂部Ptが、CCDカメラ2の中心軸の延長線Lcすなわちジャイロ中心Jcから、ピッチングによって図4の左方向へ寸法δpだけ偏寄(変位)し、ローリングによって図4の上方へ寸法δrだけ偏寄(変位)した状態を示している。
CCDカメラ2で撮影した画像(4−2)は、上述した様に、カメラケーブル4、カメラコントロール15、ケーブル30経由で、コントロールユニット50に伝送される。
【0046】
図5は、縦孔(ボーリング孔)の傾斜を上向きに測定する場合の計測の様態を模式的に示している。
図5における符号は、図4の符号と同様である。
【0047】
図5の(5‐1)は、3次元に傾斜した筐体5を水平方向に見た状態を示している。
図5の(5‐2)は、CCDカメラ2側から第1のジャイロ1の底部Pb側を概略正面に見た状態において、第1のジャイロ1のカメラ画像を示している。
図5の(5‐3)は、図5の(5‐1)において、第1のジャイロ1をA矢印方向に見た状態のカメラ画像を示している。
図5の(5‐4)は、図5の(5‐1)において、第1のジャイロ1の中心点Jcを、図5の紙面に垂直な方向から見た状態のカメラ画像を示している。
【0048】
図5において、第1のジャイロ1のカメラ画像(5‐2)は、第1のジャイロ1の底部Pbが、CCDカメラの中心軸の延長線Lcすなわちジャイロ中心Jcから、ピッチングによって図4の左方向へ寸法δpだけ偏寄(変位)し、ローリングによって図4の上方へ寸法δrだけ偏寄(変位)した状態を示している。
【0049】
図6〜図8は、横孔の傾斜を測定する様態を、模式的に示している。
図6〜図8において、第1のジャイロ1における環状の枠体12には、横孔計測時専用のマーカーMが貼られている。マーカーMの貼られている位置は、CCDカメラ2側に面した第1の回転軸13上である。
【0050】
図6は、図示しないボーリング孔が水平であり、そのため筐体5も水平になった状態が示されている。
CCDカメラ画像(6−2)では、多面体11の頂部Ptは鉛直上方の位置となっており、マーカーMはカメラ画面(6−2)の正面の中央位置となっている。
ここで、図6の状態では、ピッチング、ローリング共に発生していない。
【0051】
図7は、横孔のボーリング孔が、筐体5の先端側が鉛直方向下方へ傾斜している場合における計測態様を示している。図7の態様では、筐体5にはピッチング角θpが生じている。
図7における(7−2)で示すCCDカメラ画像では、枠体12の中央部或いはマーカーMは、ピッチング角θpが生じていることにより、CCDカメラの中心軸Lcから下方に距離δpだけ偏寄(変位)した位置となっている。この距離δpを求めることにより、ピッチング角θpを演算することが出来る。
【0052】
図8は、筐体5にローリングが生じた状態を示している。図8において、符号「VL」は、管状の枠体12に対して直交する仮想線を示している。
図8の(8−1)で示す様に、筐体5にローリングが生じた場合には、環状の枠体12と直交する仮想線VLは、多面体11の頭部Ptと底部Pbを結ぶ直線Lvに対して、ローリング(ロール)角度θrだけ、円周方向(図8の(8−1)では反時計方向)へ偏寄(変位)する。
(8−1)の状態において、カメラ画面(8−2)では、CCDカメラ2及び環状の枠体12は筐体5のローリング方向に固定されているので、枠体12は図8の(8−1)において水平な状態を維持し、仮想線VLは垂直な状態を維持する。そして、多面体11の頭部Ptと底部Pbを結ぶ直線Lvは、枠体12と直交する仮想線VLに対して、時計方向へローリング角θrだけ偏寄(変位)した様に見える。
【0053】
図8において、ローリング角度θrを求めるためには、多面体11の頂部Ptと底部Pbが、CCDカメラに映ることが条件となる。図9に示すように、環状の枠体12がCCDカメラ2の正面に鉛直になるように配置されてしまうと、多面体11の頂部Ptと底部Pbが環状の枠体12の陰に隠れてしまい、CCDカメラに映らなくなるので、不都合である。
環状の枠体12を鉛直に配置するのであれば、図10に示すように配置するべきである。
【0054】
図11は、横孔のヨーイングを計測する場合の様態を示している。
図11の(11−1)は、ヨーイング(ヨーイング角θy)を生じた場合において、横孔H及び筐体5を上方から見た状態が示されている。この時、横孔H及び筐体5は水平方向に延在しており、ヨーイングは図11の(11−1)において、反時計方向に生じている。
図11の(11−2)は、(11−1)の状態において、横孔及び筐体5を水平方向(図11の(11−1)における上下何れかの方向)から見た状態が示されている。図11の(11−3)は、(11−1)及び(11−2)の状態におけるCCDカメラ画像を示している。
【0055】
横孔Hが水平方向左右の何れかの側に回りこむ(ヨーイングが生じた)場合に、ヨーイングが生じた旨を検出するために、図示の実施形態では、筐体5における第1のジャイロ1とCCDカメラ2の先端との間の領域に、部分的に筐体5を曲げるための伸縮継ぎ手55が設けられている。
【0056】
伸縮継ぎ手55は、外径が筐体5の外径と略等しい弾性体(例えば、ゴム製)の環状体である。伸縮継ぎ手55の軸方向の断面は、段部55aを有する段付の環状体である。段部55aは、内周側が軸方向の両端部で幅が減少するように構成されている。
筐体5の接続端部は、段付部5bを有する様に形成されている。そして、筐体5の段付部5bと、伸縮継ぎ手55の段部55aとは、相補的な形状をしており、係合可能に構成されている。筐体5の段付部5bと、伸縮継ぎ手55の段部55aとの係合箇所は、例えば図示しない複数のビス等で固定される。
【0057】
ヨーイングを視認し易くするために、筐体5の内周面における第1のジャイロ1近傍の領域であって、第2の回転軸14からCCDカメラ2側の領域には、環状の目盛りSが設けられている。
目盛りSは、筐体5の内周面に沿って所定の長さに亘って設けられている。目盛りSには、等間隔で複数(N本)の線s1〜sNが刻まれている(図12参照)。ここで、該複数(N本)の線s1〜sNは、異なる色によって色分けがされているのが好ましい。色分けすることにより、筐体5がどの程度ヨーイングしているかの視認が、さらに容易になるからである。
【0058】
ここで、CCDカメラの撮像範囲βは一定である。そして、目盛りSは、計測対象のボーリング孔Hが直線であれば、図12に示すように、複数(N本)の線s1〜sNが全て撮像範囲βに映り込み、カメラ画面に全ての線s1〜sNが同心円として映りこむ様に構成されている。なお、全ての線s1〜sNが同心円として映りこんだカメラ画面の図示は、省略する。
【0059】
これに対して、図11で示すように、筐体5がヨーイングした場合(ヨーイング角はθy)は、目盛りSの線s1〜sNの一部は、撮像範囲βから外れてしまう。すなわち、筐体5がヨーイングした場合、目盛りSの線s1〜sNの一部は、カメラ画像(11−2)の視認限界領域Qから外れてしまい、カメラ画像(11−3)の領域Eで示す様に、視認が出来なくなる。
【0060】
領域Eにおける目盛りSの線s1〜sNにおいて、視認出来る線が何処まで存在するのかを観測し、その観測結果を演算することにより、ヨーイング角θyを求めることが出来る。
或いは、コントロールユニット50で、ヨーイング前後の視認画像(カメラ画像)を重複させることにより、目盛りSの視認限界Qから外れた部分の面積、或いは、カメラ画像(11−3)の領域Eにおいて視認出来ない目盛りSの範囲を、正確に演算することが出来る。この演算結果によってヨーイング角θyは正確且つ容易に求まる。
【0061】
また、カメラ画像(11−3)から明らかな様に、第1のジャイロ1の鉛直線Lv或いは第1のジャイロ1全体が、カメラ画像(11−3)の中心線Lgから偏寄する(図11の(11−3)では左側に偏寄)。
ヨーイング前後の視認画像(カメラ画像)を重複させることにより、第1のジャイロ1の鉛直線Lv或いは第1のジャイロ1全体が、カメラ画像(11−3)の中心線Lgに対して、どの程度偏寄したかを演算することが可能である。そして、この演算結果を用いても、ヨーイング角θyを正確且つ容易に求めることが出来る。
コントロールユニット50において、筐体5の送り量(筐体5の進んだ距離)とヨーイング角θyとの関係から、計測対象の横孔Hのヨーイングによる極率半径も正確に求めることが出来る。
【0062】
再び図1において、ケーブルカバー4Cの捩れにより、筐体5全体が回動或いは回転して、CCDカメラ2及び第1のジャイロ1も回動或いは回転してしまうと、第1のジャイロ1の映像からロッド20、或いはボーリング孔Hの傾きを計算しても、実際の傾き(変位)とは異なってしまう。
従って、ロッド20、或いはボーリング孔Hにおける実際の傾き(変位)を求めるためには、カメラケーブル4の捩れ、筐体5全体の回動或いは回転を較正する必要がある。
【0063】
係る較正を行うため、図示の実施形態では、例えば所定深度毎に監視を行い、第1のジャイロ1の映像から演算されたボーリング孔H或いはロッド20の傾きや曲がりが所定の深度間において許容値以上に急増したならば、カメラケーブル4の捩れ、筐体5全体の回動或いは回転等の異常が発生と判断している。変位全体の計測制御の流れについては、図18のフローチャートで後述する。
【0064】
図示の実施形態において、カメラケーブル4の捩れ等に起因して、筐体5全体が回動或いは回転してしまうという異常を検出することが可能である。係る態様が、図13、図14で示されている。
図13、図14において、筐体5側に設けた近接センサ60と、ロッド20の内壁面に設けた多数のマグネット70とから捩れ計測装置1Bが構成されている。
マグネット70は所定の深度毎にロッド20内壁面の円周方向について一定の位置にセットされている。
【0065】
筐体5側に設けた近接センサ60は、所定の深度毎に、ロッド20の内壁面に設けられたマグネット70との距離を検出するように構成されている。
マグネット70は、ロッド20内壁面の円周方向について、一定の位置にセットされている。そのため、筐体5全体の回動等に対応して、マグネット70と近接センサ60との相対位置は変化する。
【0066】
捩れを生じていない初期状態では、例えば筐体5側に設けた近接センサ60と、ロッド20内周面に設けたマグネット70とは、筐体5の中心を通り半径方向に伸びる同一線上に位置している。この場合、近接センサ60とマグネット70との相対距離は、符号「L1」で示す通りである(図14参照)。
筐体5全体の回動により、図14に示すように捩れθが生じた場合は、近接センサ60とマグネット70との相対距離は、符号「L2」で示す距離に増大する。
【0067】
近接センサ60の受信結果により、近接センサ60とマグネット70との相対距離は求まるので、当該相対距離により捩れ量θを求め、筐体5全体の回動量を求めることが出来る。
これにより、筐体5全体の回転或いは回動を監視する事が出来る。
【0068】
マグネット70を、ロッド20の長手方向について、所定のピッチで設ける。そして、マグネット70の各々で、上述した態様によって捩れ量θを算出し、算出した捩れ量θを筐体5において積算すれば、合計の捩れ量、すなわち筐体5全体の回転或いは回動が求まる。
それと共に、マグネット70の所定のピッチにおいて、算出した捩れ量θが許容範囲を超えて増加していたならば、異常発生と判断する。
【0069】
図13、図14では、ロッド20の内壁面に複数の磁石70を設け、筐体側に近接センサ60を設けているが、図15に示すように、筐体5側に磁石70を設け、ロッド20内壁面に、複数の近接センサ60を所定の深度毎に設けても良い。
【0070】
図13〜図15の様に構成すれば、筐体5全体の回転量或いは回動量を求めることが出来る。
そして、第1のジャイロ1の映像からジャイロ中心が偏奇している方向を求めて、ボーリング孔H或いはロッド20の傾きを計算する際に、筐体5全体の回転量或いは回動量を用いて較正を行い、計算結果と実際の傾きとの乖離を無視できる程度に微小化させることが可能となる。
その様に構成すれば、後述するような第2のジャイロを別途設けることは不要となる。
【0071】
図示の実施形態では、図16に示すように、筐体(探査部)5内に第2のジャイロ80を設けても良い。
そのように構成すれば、第2のジャイロ80により、方向をチェックでき、カメラケーブル4の捩れや筐体5全体の回転或いは回動に起因する誤差を較正することが出来る。
【0072】
図示はされていないが、第2のジャイロ80が筐体5外にある場合にはカメラ、ケーブル4及びケーブルカバー4Cは捩り剛性があるものが選択される。第2のジャイロ80と筐体5との間のケーブル4及びケーブルカバー4Cにおける捩れ量を少なくして、第2のジャイロ80が示す向きと、第1のジャイロ1が示す向きとの較正を容易にするためである。
【0073】
或いは、図示はされていないが、ケーブルカバー4Cに円周方向位置が一定である旨の刻印、すなわち、方向を示す刻印を付けることが出来る。
そのように構成すれば、地上で当該刻印をチェックして、その刻印の向きがどの程度ずれたかを計測することにより、カメラケーブル4の捩れを検出し、必要な較正を行う。
【0074】
図1、図13、図14を参照して上述した捩れ計測装置1Bを用いて、カメラケーブル4の捩れ量の計測方法を図17のフローチャートに基づいて説明する。
【0075】
先ず、ロッド20をボーリング孔Hに建て込み(ステップS1)、ロッド建て込みが完了すれば(ステップS2がYES)、ステップS3に進む。
【0076】
ステップS3では筐体(プローブ)5を、ブレーキ8を操作しつつ、ロッド20内に降下させる。
筐体(プローブ)5は所定の計測位置に到達するまで降下される(ステップS4)。
ここで、ステップS4における「計測位置」とは、捩れ量を計測する工程を実行するべき計測位置或いは深度を意味している。すなわち、図13、図14において説明した所定深度であり、複数のマグネット70(或いは、近接センサ60)を設置する間隔(ピッチ)に相当する。
【0077】
筐体5が所定の計測位置に到達したならば(ステップS4がYES)、近接センサ60からの検出信号を検出し(ステップS5)、当該検出信号に基づいて、捩れ量の計測を行うべき所定の計測位置間における捩れ量(所定深度における筐体5全体の回動量)を演算する(ステップS6)。
すなわち、筐体(プローブ)5の降下後、最初の「所定の計測位置」に到達した場合には、その時点までの捩れ量を演算する。
【0078】
それ以降は、直前の「所定の計測位置」から到達した「所定の計測位置」の間における捩れ量、すなわち、図13、図14において説明した複数のマグネット70(或いは、近接センサ60)を設置する間隔(ピッチ)における捩れ量を演算する。
【0079】
コンピュータ50は、演算した捩れ量(計測位置間の捩れ量)が閾値以下か否かを判断する(ステップS7)。閾値以下であれば(ステップS7がYES)、ステップS8に進む。
演算した捩れ量が閾値を超えている場合(ステップS7がNO)、すなわち計測位置間において捩れ量が急激に増加した場合には、何らかの異常が発生したものと判定し(ステップS11)、筐体(プローブ)5を引き上げて(ステップS12)、ロッド20或いはボーリング孔Hの傾斜計測作業を終了する。
【0080】
ステップS8では、ステップS6で求めた「計測位置間の捩れ量」(図13、図4において説明した複数のマグネット70或いは近接センサ60を設置する間隔における捩れ量)を合算して、その総和を捩れ量とする。
【0081】
次にステップS9で、ステップS8で求めた捩れ量(総和)をコントロールユニット50の図示しない較正手段へ送信する。
【0082】
次に、目標深度、すなわちロッド20の最深部まで筐体5が到達したか否かを判断する(ステップS10)。
到達していない場合には、ステップS4以下を繰り返す(ステップS10がNOのループ)。
筐体(プローブ)5がロッド20の最深部まで到達したならば(ステップS10がYES)、筐体5を引き上げて(ステップS12)、筐体(プローブ)5の捩れ量計測作業を終了する。
【0083】
次に、図1〜図14を参照して上述した傾斜計100を用いて、且つ、図17の計測作業によって求めた筐体5の捩れ量を用いて、ロッド20(或いは、ボーリング孔H)の予定掘削線(縦孔掘削時の鉛直線)に対する変位の計測について、図8のフローチャートに基づいて説明する。
尚、図17の制御と、図18の制御は常時パラレルで処理されている。そして、図17のステップS1〜ステップS3と、図18のステップS1〜ステップS3とは、共通している。
【0084】
先ず、ロッド20をボーリング孔Hに建て込み(ステップS1)、ロッド建て込みが完了すれば(ステップS2がYES)、ステップS3に進む。
【0085】
ステップS3では筐体(プローブ)5を、ブレーキ8を操作しつつ、ロッド20内に降下させる。
ステップS14ではサンプリングタイムになるまで待機しており(ステップS14がNOのループ)、サンプリングタイムになったならば(ステップS14がYES)、ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角の計測を開始する(ステップS15)。
ここで、筐体(プローブ)5は、一定速度でロッド20内を降下している。所定時間(サンプリングタイム)だけ降下を続ければ、所定ピッチの距離だけ筐体(プローブ)5は降下したことになる。その意味で、「サンプリングタイム」なる文言は、図17で説明した「計測位置間」の距離と同様の意味で使われている。
サンプリングタイムだけ降下することにより筐体(プローブ)5が到達した位置と、図17のフローチャートの計測位置とを、同一にすることが可能である。
【0086】
ステップS16ではサンプリングタイム間の変位量δ(ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角)を演算する。
ピッチング角、ローリング角、ヨーイング角の計測、演算については、図2〜図12で説明した通りである。
【0087】
ステップS17ではサンプリングタイム間の変位量δが閾値以下であるか否かを判断する。閾値以下であれば(ステップS17のYES)、ステップS18に進む。閾値を越えていれば(ステップS17でNO)、異常事態と判定し(ステップS23)、筐体(プローブ)5を引き上げて(ステップS24)制御は終了する。
【0088】
ステップS18ではサンプリングタイム毎の変位量を合算する。次のステップS19では、図17のフローチャートで説明した筐体5の捩れ量を用いて、変位量を較正する。そして、正確な変位量を決定する(ステップS20)。
正確な変位量は、例えば、コントロールユニット50のモニタに表示されて(ステップS21)、ステップS22に進む。
【0089】
ステップS22では、コントロールユニット50は最終目標深度、すなわちロッド20の最深部まで筐体(プローブ)5が到達したか否かを判断する。筐体5がロッド20の最深部まで到達していなければ(ステップS22がNO)、ステップS3以降を繰り返す。
目標深度に到達していれば(ステップS22がYES)、筐体(プローブ)5を引き上げて(ステップS24)計測作業を終了する。
【0090】
上述したような構成の本実施形態の傾斜計100によれば、LEDランプ3で第1のジャイロ1を照射しており、CCDカメラ2で第1のジャイロの表示を視認し、視認された第1のジャイロの表示から、コントロールユニット50によってこの表示の内容を解析し、ボーリング孔H或いはロッド20の傾斜(ピッチング角、ローリング角)を明確に決定することが出来る。
【0091】
第1のジャイロ1のCCDカメラ2寄りに設けた目盛りSを観測することにより、或いは、CCDカメラ2が捕らえた画像から非視認領域(図11の視認限界領域Qの外側)の目盛り(s1〜sN)を含んだ面積を、コントローラ50によって解析することにより、ヨーイング角を正確に決定することが出来る。
【0092】
また、コンピュータ50はCCDカメラ2により視認された第1のジャイロ1の映像を記憶する記憶装置51と、傾斜(ヨーイング角、ローリング角、ヨーイング角)が発生する前後における第1のジャイロ1の映像を比較する比較装置52と、比較装置52の比較結果から傾斜を決定する傾斜演算装置53とを有しているので、記憶装置51に記憶された第1のジャイロ1の映像データから、比較装置52及び傾斜演算装置55により傾斜を求めることが出来る。
そして、この傾斜を決定するタイミング(サンプリングタイム)毎の変位量を合計することにより、ボーリング孔H或いはロッド20の全変位量を決定することが可能である。
【0093】
本実施形態の変位計100によれば、第1のジャイロ1、CCDカメラ2、LEDランプ3は、筐体(プローブの筐体)5に収納されており、直径寸法の小さな円筒形状に構成することが出来るので、直径寸法の小さな傾斜計の提供が可能となる。
【0094】
また、本実施形態の変位計100によれば、筐体5の捩れを計測する捩れ変位装置1Bを備えているので、該捩れ変位装置1Bで計測された筐体5の捩れ量により、ロッド20の傾斜を較正することが出来る。従って、本実施形態によって求めたボーリング孔H、或いはロッド20の傾斜の精度は、更に向上する。
【0095】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定するものではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施形態の全体構成を示す構成図。
【図2】実施形態の筐体を詳細に示した部分断面図。
【図3】図2のX−X断面矢視図。
【図4】縦孔を下向きに計測する場合を説明する図。
【図5】縦孔を上向きに計測する場合を説明する図。
【図6】横孔計測時で変位が生じていない状態を示す図。
【図7】横孔計測時でピッチングが生じている状態を示す図。
【図8】横孔計測時でローリングが生じている状態を示す図。
【図9】計測不可能な状態を示す図。
【図10】計測可能な状態を示す図。
【図11】横孔計測時でヨーイングが発生している状態を示す図。
【図12】横孔計測時でヨーイングが発生していない状態を示す図。
【図13】実施形態の捩れ量検出機構を説明する模式図。
【図14】図13のX−X断面矢視図。
【図15】捩れ量検出機構の変形例を示す横断面図。
【図16】捩れ量検出機構の別の実施例の部分断面図。
【図17】捩れ量の検出を説明するフローチャート。
【図18】変位量計測を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0097】
1・・・変位装置/第1のジャイロ
2・・・目視装置/CCDカメラ
3・・・照明装置/LEDランプ
4・・・カメラケーブル
5・・・筐体/プローブ
6・・・照明用電源ケーブル/LED用電源ケーブル
7・・・深度検出装置
8・・・ブレーキ
9・・・挿入装置
15・・・カメラコントローラ
16・・・照明用電源
20・・・ボーリングロッド
50・・・コンピュータ
55・・・伸縮継ぎ手
H・・・ボーリング孔
M・・・マーカー
S・・・目盛り
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜に対応して変位する変位装置と、該変位装置を視認する目視装置と、該目視装置により変位装置が視認出来るように変位装置を照射する照明装置と、筐体とを備え、該筐体は概略円筒状に構成され且つその内部に変位装置、目視装置、照明装置が収納されており、前記変位装置は、多面体と、該多面体を回転可能に支持している環状部材とを有し、多面体の下方領域は重量が大きく、前記環状部材は筐体の内壁面に回転可能に支持されていることを特徴とする傾斜計。
【請求項2】
筐体における前記目視装置と前記変位装置との間の領域は折り曲げ自在に構成されており、該折り曲げ自在に構成された領域よりも変位装置側には、折れ曲がった角度が視認出来る手段が構成されている請求項1の傾斜計。
【請求項3】
制御装置を備え、該制御装置は目視装置により視認された変位装置の映像を記憶する記憶装置と、傾斜が発生する前後における変位装置の映像を比較する比較装置と、比較装置の比較結果から傾斜を決定する傾斜演算装置とを有している請求項1の傾斜計。
【請求項4】
傾斜計は、前記筐体の捩れを計測する捩れ変位装置を備え、該捩れ変位装置は近接センサ及び磁石を有している請求項1〜3の何れか1項の傾斜計。
【請求項5】
前記筐体の捩れを計測する捩れ変位装置を備え、該捩れ変位装置はジャイロで構成されている請求項1〜3の何れか1項の傾斜計。
【請求項6】
請求項1の傾斜計を用いた計測方法は、傾斜を計測するべきボーリング孔にロッドを建て込む工程と、変位手段、目視手段、照明手段が収納されている筐体をロッド内に挿入する工程と、筐体を下降させつつ、所定の計測位置毎に筐体の捩れ量を計測する捩れ量計測工程と、所定のタイミング毎に照明手段で変位手段を照射して、目視手段で変位手段を視認し、変位手段の表示からロッドの傾斜を決定する工程と、決定された傾斜に基づいて求められた変位量を捩れ量計測工程で計測された捩れ量によって較正する較正工程、とを有することを特徴とする計測方法。
【請求項1】
傾斜に対応して変位する変位装置と、該変位装置を視認する目視装置と、該目視装置により変位装置が視認出来るように変位装置を照射する照明装置と、筐体とを備え、該筐体は概略円筒状に構成され且つその内部に変位装置、目視装置、照明装置が収納されており、前記変位装置は、多面体と、該多面体を回転可能に支持している環状部材とを有し、多面体の下方領域は重量が大きく、前記環状部材は筐体の内壁面に回転可能に支持されていることを特徴とする傾斜計。
【請求項2】
筐体における前記目視装置と前記変位装置との間の領域は折り曲げ自在に構成されており、該折り曲げ自在に構成された領域よりも変位装置側には、折れ曲がった角度が視認出来る手段が構成されている請求項1の傾斜計。
【請求項3】
制御装置を備え、該制御装置は目視装置により視認された変位装置の映像を記憶する記憶装置と、傾斜が発生する前後における変位装置の映像を比較する比較装置と、比較装置の比較結果から傾斜を決定する傾斜演算装置とを有している請求項1の傾斜計。
【請求項4】
傾斜計は、前記筐体の捩れを計測する捩れ変位装置を備え、該捩れ変位装置は近接センサ及び磁石を有している請求項1〜3の何れか1項の傾斜計。
【請求項5】
前記筐体の捩れを計測する捩れ変位装置を備え、該捩れ変位装置はジャイロで構成されている請求項1〜3の何れか1項の傾斜計。
【請求項6】
請求項1の傾斜計を用いた計測方法は、傾斜を計測するべきボーリング孔にロッドを建て込む工程と、変位手段、目視手段、照明手段が収納されている筐体をロッド内に挿入する工程と、筐体を下降させつつ、所定の計測位置毎に筐体の捩れ量を計測する捩れ量計測工程と、所定のタイミング毎に照明手段で変位手段を照射して、目視手段で変位手段を視認し、変位手段の表示からロッドの傾斜を決定する工程と、決定された傾斜に基づいて求められた変位量を捩れ量計測工程で計測された捩れ量によって較正する較正工程、とを有することを特徴とする計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−122271(P2008−122271A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307704(P2006−307704)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【出願人】(391006038)東都電機工業株式会社 (8)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【出願人】(391006038)東都電機工業株式会社 (8)
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