説明

像加熱装置

【課題】空気の吹き付けによる、ニップ部N通過後の記録材Pの挙動の乱れ、加熱ローラ91の冷却を低減する。
【解決手段】ニップ部Nには、送風装置93から記録材Pを加熱ローラ91から剥離するために、空気が吹き付けられている。この構成で、記録材Pの先端がニップ部Nを通過してから所定時間経過後、即ち、記録材Pの先端が加熱ローラ91から剥離された後に、その前の状態よりも風量を低下させる。これにより、ニップ部Nの下流での空気の乱れを低減して記録材Pの安定搬送を行え、且つ、加熱ローラ91に吹き付けられる空気の量を低減して、加熱ローラ91が冷却されることを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニップ部を通過する記録材を加熱する像加熱装置に関し、特に、加熱部材から記録材を剥離する送風手段を有する像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーなどの現像剤を用いて記録材に画像を形成する電子写真複写機や電子写真プリンタなどの画像形成装置では、未定着のトナー像を記録材に定着させる、或いは、定着画像の光沢度を調整する像加熱装置を備える。像加熱装置は、一般に加熱部材と加圧部材とで、未定着のトナー画像或いは定着画像を担持した記録材に対して加圧加熱しながら搬送して、トナー画像を記録材に定着する、或いは、定着画像の光沢度を調整する。
【0003】
このような方式の像加熱装置では、記録材上に形成された未定着のトナー画像或いは定着画像が加熱部材の表面に直接接触するために、溶融したトナーの粘性により記録材が加熱部材に張り付き易く、記録材が加熱部材から剥離しにくい。したがって、耐熱性の樹脂などで作られる剥離爪を加熱部材の表層に当接させて配置することにより、加熱部材に張り付いた記録材を剥離する剥離爪方式が、従来から広く採用されている。
【0004】
しかし、上述した剥離爪方式においては、剥離爪を加熱部材の表層に常に当接させるために小さな押圧力がかけられており、剥離爪の先端と加熱部材の表層が磨耗する。また、加熱部材周面の付着物が剥離爪に堆積して、これにより加熱部材の表層が傷つく可能性がある。更に、坪量の小さい薄紙の場合、剥離爪によって加熱部材から剥離される際に剥離爪との衝突により、紙先端にダメージを与えるなどの問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、圧搾気体を記録材の先端に吹き付けて加熱部材より記録材を剥離する方法が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−247672号公報
【特許文献2】特開2007−94327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
加熱部材と加圧部材とでニップ部を形成している時、これらの部材はお互いに圧接状態である為、そのニップ部に対して記録材を剥離するために空気を吹き付けると、その空気が加熱部材及び加圧部材に衝突した後に拡散する。空気の吹き付けは、記録材の先端が加熱部材から剥離した後もしばらく継続するために、空気はニップ部の搬送方向下流の搬送経路にも流れ込み、ニップ通過後の記録材の挙動が乱れる。この結果、空気が乱流となって記録材の進行を妨げて、ジャムなどの搬送不良が生じたり、挙動の乱れた記録材が搬送ガイドなどに強く接触して擦られることなどにより、画像面に傷がついてしまったりする可能性がある。
【0008】
また、プリントジョブ中において、常に空気を吹き付け続けると加熱部材が冷却され、定着不良が生じたり、所望の光沢度を得られない可能性がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、空気の吹き付けによる、ニップ部通過後の記録材の挙動の乱れ、加熱部材の冷却を低減すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、加熱部材と、前記加熱部材に当接してニップ部を形成する加圧部材と、前記ニップ部の記録材搬送方向下流で、且つ、前記加熱部材に近接した所定位置に、空気を吹き付ける送風手段と、を備え、前記加熱部材により前記ニップ部を通過する記録材を加熱し、前記送風手段により前記ニップ部を通過した記録材を前記加熱部材から剥離する像加熱装置において、前記送風手段により前記所定位置に吹き付ける風量を制御する風量制御手段を有し、前記風量制御手段は、記録材の先端が前記ニップ部を通過してから所定時間経過後に、その前の状態よりも風量を低下させる、ことを特徴とする像加熱装置にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録材の先端がニップ部を通過してから所定時間経過後に風量を低下させるため、記録材を加熱部材から剥離させつつ、空気の吹き付けによる、ニップ部通過後の記録材の挙動の乱れ、加熱部材の冷却を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【図2】第1の実施形態に係る像加熱装置の概略構成断面図。
【図3】第1の実施形態の送風装置の斜視図。
【図4】同じく送風装置の一部を切断して示す概略構成側面図。
【図5】同じく送風装置の一部を切断して示す概略構成平面図。
【図6】同じく送風装置の制御を説明するためのブロック図。
【図7】同じく送風装置の制御を説明するためのフローチャート。
【図8】第1の実施形態における、記録材の検知センサ通過後の時間と送風装置の風量との関係を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る送風装置の一部を切断して示す概略構成側面図。
【図10】同じく送風装置の制御を説明するためのフローチャート。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る像加熱装置の概略構成断面図。
【図12】同じく送風装置の制御を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図8を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の全体構成について、図1を用いて説明する。
【0014】
[画像形成装置]
画像形成装置内には、第1、第2、第3、第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdが併設され、各々異なった色のトナー像が、潜像、現像、転写のプロセスを経て形成される。
【0015】
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ専用の像担持体、本例では電子写真感光体である感光ドラム3a、3b、3c、3dを具備し、各感光ドラム3a、3b、3c、3d上に各色のトナー像が形成される。各感光ドラム3a、3b、3c、3dに隣接して中間転写体である中間転写ベルト20が設置され、各感光ドラム上に形成された各色のトナー像が、1次転写部T1a、T1b、T1c、T1dで、中間転写ベルト20上に重ねて1次転写される。そして、中間転写ベルト20上のトナー像は、2次転写部T2で記録材P上に転写される。さらにトナー像が転写された記録材Pは、像加熱装置9で加熱及び加圧によりトナー像を定着した後、記録画像として装置外に排出される。
【0016】
感光ドラム3a、3b、3c、3dの外周には、それぞれドラム帯電器2a、2b、2c、2d、現像器1a、1b、1c、1d、1次転写帯電器6a、6b、6c、6d及びクリーナ4a、4b、4c、4dが設けられている。また、装置の上方部にはレーザースキャナ5a、5b、5c、5dが設置されている。レーザースキャナ5a、5b、5c、5d内には図示しない光源装置とポリゴンミラーが設けられており、光源装置から発せられたレーザー光をポリゴンミラーが回転して走査する。そして、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、図示しないfθレンズにより感光ドラム3a、3b、3c、3dの母線上に集光して露光することにより、各感光ドラム上にそれぞれ画像信号に応じた潜像が形成される。
【0017】
現像器1a、1b、1c、1dには、現像剤としてそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナーが、図示しない供給装置により所定量充填されている。現像器1a、1b、1c、1dは、それぞれ感光ドラム3a、3b、3c、3d上の潜像を現像して、シアントナー像、マゼンタトナー像、イエロートナー像及びブラックトナー像として可視化する。
【0018】
中間転写ベルト20は、矢印の方向に感光ドラム3a、3b、3c、3dと同じ周速度をもって回転駆動されている。感光ドラム3a上に形成されたイエロートナー画像は、1次転写部T1aを通過する過程で、1次転写帯電器6aに印加される1次転写バイアスにより形成される電界と圧力により、中間転写ベルト20の外周面に1次転写されていく。
【0019】
同様にマゼンタトナー画像、シアントナー画像、ブラックトナー画像が順次中間転写ベルト20上に重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が形成される。合成カラートナー画像は、記録材Pの4辺端部より一定の余白部を残して形成される。
【0020】
11は2次転写ローラで、中間転写ベルト20の幅方向(搬送方向と直交する方向)と平行に支持され、中間転写ベルト20の外周面に接触するように配設されている。2次転写ローラ11には、2次転写バイアス源によって所望の2次転写バイアスが印加される。中間転写ベルト20上に重畳転写された合成カラートナー画像は、給紙カセット10からレジストローラ12、転写前ガイドを通過して2次転写部T2に所定のタイミングで搬送される記録材Pに、一括して転写される。この際、2次転写バイアスがバイアス電源から印加される。
【0021】
一次転写が終了した感光ドラム3a、3b、3c、3dは、それぞれのクリーナ4a、4b、4c、4dにより転写残トナーをクリーニング、除去され、引き続き次の潜像の形成以下に備えられる。2次転写後に中間転写ベルト20上に残留したトナー及びその他の異物は、中間転写ベルト20の表面にクリーニングウエブ(不織布)30を当接して、拭い取るようにしている。
【0022】
トナー画像の転写を受けた記録材Pは、後述する像加熱装置9へ順次導入され、記録材に熱と圧力を加えることで定着される。
【0023】
ここで、両面印刷の場合は、記録材Pは像加熱装置9で片面定着された後、フラッパー110により反転パス111に導かれる。その後、記録材Pは反転ローラ112により反転されて両面パス113へと導かれる。そして、再び記録材Pはレジストローラ12、転写前ガイド、2次転写部T2を通過し、2面目が転写され、像加熱装置9で両面が定着される。そして、記録材が両面画像形成中にフラッパー110が切り替わっており、両面定着された記録材Pは記録画像として装置外に排出される。
【0024】
[像加熱装置]
次に、上述の像加熱装置9について、図2を用いて説明する。像加熱装置9は、内部に発熱体であるハロゲンヒータ911を有する加熱部材である加熱ローラ91と、同じく内部に発熱体であるハロゲンヒータ921を有する加圧部材である加圧ローラ92を有する。加圧ローラ92は、図示しない付勢部材によって付勢されて加熱ローラ91に当接してニップ部Nを形成する。
【0025】
加熱ローラ91、加圧ローラ92の表面温度は、サーミスタ等のそれぞれ図示しない温度検知手段によって検知され、検知された表面温度は画像形成装置の各部を制御するコントローラ500(図1、6参照)に入力される。そして、加熱ローラ91及び加圧ローラ92の表面温度が、それぞれ所定の温度範囲(例えば160〜200℃)になるようにハロゲンヒータ911及び921の点灯を制御している。
【0026】
上面にトナー画像Tが形成された記録材Pは、記録材搬送方向上流側(図1の右側)から搬送され、ニップ部Nを通過する際に加熱および加圧される。これにより、記録材P上にトナー画像Tが定着される。ニップ部Nの記録材搬送方向下流の加熱ローラ91側には、送風手段である送風装置93を配置され、ニップ部Nを通過した記録材Pは、送風装置93により吹き付けられる空気により、加熱ローラ91から剥離される。
【0027】
[送風装置]
次に、送風装置93について、図2ないし図6を用いて説明する。図2及び図3に示す様に、送風装置93は、送風ファン931と送気ダクト932、回転弁933a等を有する流量制御弁933とから構成されている。定着後の記録材Pは、送風装置93からニップ部Nの記録材搬送方向下流で、且つ、加熱ローラ91に近接した所定位置に吹き付けられる空気により、加熱ローラ91から剥離される。その後、記録材Pは、ニップ部Nの記録材搬送方向下流に配置された、定着後搬送ローラ対94によって搬送され、像加熱装置9より排出される。
【0028】
本実施形態の場合、送気ダクト932からニップ部Nへ向けて吹き付けられる風量は、例えば、0.025〜0.035(m/s)に設定されている。そして、普通紙およびコート紙共に坪量50〜100(g/m)の範囲の記録材を、加熱ローラ91より剥離できるようにしている。
【0029】
また、送気ダクト932の出口開口部934は、例えば、縦2mm、横350mmのスリット形状であり、ニップ部Nから排出される記録材Pの先端部に対してほぼ均等に空気が吹き付けられるような形状としている。なお、出口開口部934における平均風速は35〜50(m/s)程度になっている。また、出口開口部934は、上述のニップ部Nの記録材搬送方向下流で、且つ、加熱ローラ91に近接した所定位置に対向するように配置されている。
【0030】
なお、坪量が所定値、例えば100(g/m)よりも大きい記録材においては、記録材の持つ剛性が高いため、ニップ部Nから排出される際に自らのコシにより加熱ローラ91から剥離される。したがって、このような記録材の場合には、送風装置93を動作させないようにしても良い。
【0031】
ニップ部Nの記録材搬送方向上流には、記録材検知手段である検知センサ95が配されており、像加熱装置9に進入する記録材Pの先端を検知している。このような検知センサ95としては、照射した光の反射を検知したり、搬送路にフラグを設けて、このフラグが倒れることを検知したりするなど、種々の構成が採用可能である。何れにしても、記録材Pの先端を検知できれば良い。
【0032】
送風ファン931から送られる空気は、送気ダクト932に送り込まれるが、送気ダクト932の流路断面積は徐々に狭まる。したがって、送気ダクト932を流れる空気は、内部で流速が徐々に上昇して、出口開口部934から流出する。一方、送風ファン931の吸気口931aには、流量制御弁933が取り付けられており、回転弁933aの開閉により、送風ファン931に流入する空気量をコントロールしている。即ち、本実施形態の送風装置93は、送風ファン931の空気の吸入量を制御することにより、出口開口部934から吹き出す空気の量(風量)を制御している。なお、回転弁933aなどの流量制御弁933は、送風ファン931の下流側、即ち、送気ダクト932内に設けても良い。また、送風装置93から吹き出す風量の制御は、送風ファン931の回転速度を制御することにより行っても良い。
【0033】
このような流量制御弁933は、図4及び図5に示す様に、ステッピングモータ933kにより回転弁933aの角度を調整し、流れる空気の量を制御している。即ち、回転弁933aの回転軸端部にはギア933iが固定されており、ステッピングモータ933kの回転による駆動をギア933j、933iを介して回転弁933aに伝達している。そして、ステッピングモータ933kによって回転弁933aを制御しており、流量制御弁ダクト933gから送風ファンの吸気口931aに流入する風量をコントロールしている。
【0034】
回転弁933aの回転軸上には、ギア933iの外側に回転検知フラグ933mが固定されており、フォトセンサ933nによって回転弁933aの回転位置を検知している。風量の制御は、回転弁933aの角度により制御されるが、この回転弁933aの角度は、ステッピングモータ933kに所定のパルス信号を印加することにより回転弁933aを所定量回転させることにより制御される。また、回転弁933aの回転位置(角度)は、フォトセンサ933nによって検知される。
【0035】
また、本実施形態の場合、図6に示す様に、コントローラ500は、検知センサ95の信号、フォトセンサ933nの信号に基づいて、送風ファン931、回転弁933aのステッピングモータ933kを制御する。本実施形態では、コントローラ500及び流量制御弁933により風量制御手段を構成している。
【0036】
このような風量制御手段は、記録材の先端がニップ部Nを通過してから所定時間経過後に、その前の状態よりも風量を低下させる。この所定時間とは、ニップ部Nを通過した記録材の先端が加熱ローラ91から剥離していると考えられる時間で、予め実験などにより求めたものである。特に、この所定時間は、記録材の先端が加熱ローラ91から剥離することと、剥離してからできるだけ早いタイミングとなることを考慮して定める。
【0037】
本実施形態の場合、この所定時間の経過は、検知センサ95が記録材Pの先端を検知してから第2の所定時間が経過することにより検知する。即ち、コントローラ500は、検知センサ95が記録材Pの先端を検知してから、第2の所定時間を経過したら、ステッピングモータ933kを制御して、出口開口部934から吹き出す空気の量(風量)を低下させている。
【0038】
ここで、第2の所定時間とは、検知センサ95からニップ部Nの出口までの距離と、画像形成装置による記録材Pの搬送速度から求められる値に、上述の所定時間を足した値である。即ち、検知センサ95が記録材Pの先端を検知してから第2の所定時間を経過した時には、記録材Pの先端は、ニップ部Nの出口から突出し、加熱ローラ91から剥離された状態である。
【0039】
また、風量の低下の割合(低下後の風量/低下前の風量)としては、例えば、その前の状態に対して1/3以上とすることが好ましい。但し、この割合は、画像形成装置内の温度、湿度などの環境を検知する環境センサ501(図1)により変化させても良い。また、上述の所定時間も環境により変化させても良い。例えば、相対湿度が高くなるほど、風量低下の割合を高く、所定時間を長くする。
【0040】
また、このような風量低下の割合、所定時間は、記録材に形成される画像の濃度、記録材の坪量によっても変化させても良い。記録材に形成される画像の濃度は、例えば、スキャナやパーソナルコンピュータなどの外部端末から画像形成装置のコントローラ500に入力される画像情報から求められる。また、実際に濃度センサを配置して求めても良い。この場合、記録材にトナー像が転写された後、像加熱装置9に入る前のトナー載り量を検知する。したがって、コントローラ500或いは濃度センサが、記録材に形成される画像の濃度に関する情報を取得する濃度取得手段に相当する。
【0041】
記録材に形成された画像の濃度が高いほど、記録材が加熱ローラ91から剥離しにくいため、この濃度取得手段により取得した画像の濃度が高いほど、風量低下の割合を高く、所定時間を長くする。
【0042】
記録材の坪量は、例えば、ユーザが入力装置502(図1)により入力した記録材の情報からわかる。例えば、紙種に対応する坪量の値を、予めデータとしてコントローラ500のメモリに記憶しておけば、ユーザが入力した紙種から坪量を求められる。このため、入力装置502及びコントローラ500が、記録材の坪量に関する情報を取得する坪量取得手段に相当する。
【0043】
記録材の坪量が小さいほど、記録材が加熱ローラ91から剥離しにくいため、この坪量取得手段により取得した記録材の坪量が小さいほど、風量低下の割合を高く、所定時間を長くする。
【0044】
また、本実施形態の場合、記録材の先端が定着後搬送ローラ対94に到達した後に、更に風量を低下させている。即ち、上述のように、記録材の先端が検知センサ95により検知されてから第2の所定時間経過後に、出口開口部934から吹き出す風量を低下させている。次いで、記録材の先端が定着後搬送ローラ対94に到達するタイミングで、この風量を更に低下させる。
【0045】
本実施形態では、風量をゼロにするようにしている。即ち、このタイミングで回転弁933aを回転させ始めて、最終的に回転弁933aにより流路を塞ぐ。このため、風量は、徐々に低下して行って、最終的にゼロになる。なお、送風ファン931をこのタイミングでオフにしても良い。
【0046】
また、記録材の先端が定着後搬送ローラ対94に到達するタイミングは、記録材の先端が検知センサ95で検知されてから第3の所定時間経過後である。第3の所定時間は、検知センサ95から定着後搬送ローラ対94のニップ部までの距離と、画像形成装置による記録材Pの搬送速度から求められる。
【0047】
[制御の流れについて]
上述の制御の流れについて、図7及び図8を用いて説明する。なお、以下の制御フローでの判断、動作の指令はコントローラ500が行う。まずプリントジョブがスタートすると、送風ファン931を動作させる(S1)。給紙カセット10から記録材Pが給紙され、中間転写ベルト20から合成カラートナー画像が転写された後、記録材Pの先端が検知センサ95に検知されてから200msec経過したか否かを判断する(S2)。200msec経過後、ステッピングモータ933kを駆動して流量制御弁933を開放する(S3)。
【0048】
本実施形態では、検知センサ95からニップ部N出口までの距離は、図6に示した通り100mmとなっており、画像形成装置の記録材搬送速度が300mm/sに設定されている。200msecという時間設定は、記録材Pが加熱ローラ91から剥離する時に十分な風量が得られるように、記録材Pがニップ部N出口に到達する時間より少し早く流量制御弁933を開放するよう設定したものである。また、この場合に、記録材Pの搬送速度のばらつき、流量制御弁933を開放してから送風装置93の放出空気量が最大になるまでの時間およびステッピングモータ933kの動作ばらつき等を考慮している。
【0049】
次に、検知センサ95が記録材Pの先端を検知してから340msec後に記録材Pの先端がニップ部N出口に到達する。この後記録材Pの先端が剥離するために必要な時間として50msec(所定時間)、即ち、検知センサ95が記録材Pの先端を検知してから390msec(第2の所定時間)経過したか否かを判断する(S4)。検知センサ95が記録材Pの先端を検知してから390msec経過後、ステッピングモータ933kを動作させ、流量制御弁933を通過し送風ファン931へ流れ込む流量を制限する(S5)。
【0050】
記録材Pの先端を剥離するためには、前述した0.025〜0.035(m/s)の流量が必要となるが、先端剥離後は記録材Pが送風装置93から吹き付けられた空気を受ける面積が増加するため、剥離に必要となる風量を下げることができる。従って、先端剥離後の流量が0.010〜0.015(m/s)となるように流量制御弁933を制御する。
【0051】
次いで、検知センサ95が記録材Pの先端を検知してから500msec(第3の所定時間)後に記録材Pの先端が定着後搬送ローラ対94に到達する。定着後搬送ローラ対94の周速は、加熱ローラ91の周速よりも3%早い309(mm/s)に設定されている。このため、記録材Pの先端が定着後搬送ローラ対94に到達した時点で、記録材Pの搬送挙動はニップ部Nと定着後搬送ローラ対94のニップによって安定する。したがって、検知センサ95が記録材Pの先端を検知してから500msec経過したか否かを判断し(S6)、経過していれば、経過した時点で流量制御弁933を閉鎖して、送風装置93から吹き付けられる風量をゼロにする(S7)。
【0052】
その後、今回のジョブの最終プリントであるかを判断し(S8)、最終プリントである場合は送風ファン931をオフして(S9)動作を終了する。後続のプリントがまだ存在する場合は、S2の前にもどり、S2からS8までの動作を繰り返し行なう。
【0053】
なお、ここで説明した流量制御弁933を動作させる具体的なタイミングは、本実施形態における像加熱装置9に対して最適化したものであり、本発明を適用する像加熱装置に対してはこの限りではない。
【0054】
図8は、検知センサ95が記録材Pの先端位置を検出してから定着後搬送ローラ対94に到達するまでの時間軸に対して、送風装置93からの放出空気量をプロットしたグラフである。このグラフからも分かるとおり、本実施形態では、段階的に風量を落としているため、流量制御弁933を常に開放する場合に比べ、吹き付けられている風量を低減することができる。この結果、加熱ローラ91の温度低下および剥離後の記録材Pの搬送挙動を安定化することができる。
【0055】
即ち、本実施形態の場合、記録材の先端がニップ部Nを通過してから所定時間経過後に、その前の状態よりも風量を低下させている。言い換えれば、記録材がニップ部Nを通過して加熱ローラ91から剥離した後に、風量を低下させている。このため、記録材を加熱ローラ91から剥離させつつ、空気の吹き付けによる、ニップ部N通過後の記録材の挙動の乱れ、加熱ローラ91の冷却を低減できる。即ち、ニップ部Nの下流での空気の乱れを低減して記録材Pの安定搬送を行え、且つ、加熱ローラ91に吹き付けられる空気の量を低減して、加熱ローラ91が冷却されることを低減できる。
【0056】
また、記録材の先端が定着後搬送ローラ対94に到達したタイミングで、風量をさらに低下、本実施形態ではゼロにしているため、空気の吹き付けによる、ニップ部N通過後の記録材の挙動の乱れ、加熱ローラ91の冷却を更に低減できる。
【0057】
なお、画像形成装置のコントローラ500から得られる、記録材Pの坪量の情報、および記録材P上の画像濃度情報を元に流量制御弁933を制御することも可能である。具体的には、記録材の剥離に送風装置93を必要としない、坪量100(g/m)よりも大きい記録材の場合は、流量制御弁933を常に閉鎖させても良い。また、記録材上のトナーの載り量が平均0.5(mg/cm)以下の場合は、流量制御弁933を常に閉鎖させても良い。
【0058】
また、加熱ローラ91の冷却を低減するためには、送風装置93の風量をできるだけ抑えることが好ましい。このため、前述の坪量取得手段により取得した記録材の坪量が大きいほど、風量を低下させることが好ましく、前述の濃度取得手段により取得した画像の濃度が低いほど、風量を低下させることが好ましい。
【0059】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図9及び図10を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、回転弁933aの制御はステッピングモータ933kで行なったが、本実施形態では、回転弁933aの制御をソレノイド933cで行なっている。以下、具体的に説明する。
【0060】
図9に示す様に、ソレノイド933cがプランジャ933hを吸着および開放すると、その先端に固定されたフック部933dが移動する。これに伴い、丸軸部933eを介してフック部933dに係合された回転アーム933bが回転する。回転アーム933bは、回転弁933aの回転軸端部に固定されているため、回転アーム933bが回転することにより、回転弁933aの開閉動作が行なわれる。
【0061】
ソレノイド933cがプランジャ933hを吸着(オン)すると、回転弁933aは流量制御弁ダクト933gの流路に対して平行な位置まで回転して流量制御弁は開放される。一方、プランジャ933hの吸着を止める(オフする)と、フック部933dが引張バネ933fによって図の右方向に引っ張られる。これにより、フック部933dが丸軸部933eを押して、回転弁933aが流量制御弁ダクト933gを塞ぐ位置まで回転し、流量制御弁933が閉鎖される。
【0062】
このように、ソレノイド933cにて流量制御弁933を制御する場合は、ステッピングモータのように回転弁933aの位置を多段階に制御するものではなく、開放および閉鎖の2段階を制御するものである。
【0063】
図10は、ソレノイド制御の場合における送風装置93の動作を説明するフローチャートである。基本的な制御の流れは、前述の図7と同じである。但し、S31では、ソレノイド933cをオンにすることにより流量制御弁933を開放し、S51では、ソレノイド933cをオフにすることにより流量制御弁933を閉鎖している。また、図10では図7のS6、7はない。なお、流量制御弁933が閉鎖した直後は、送風装置93からの放出空気量が徐々に減少し始め、やがてゼロになる。また、本実施形態では、ソレノイド933cの吸着時間ばらつきが最大100msec程度であるとして、記録材P先端が定着後搬送ローラ対94に到達するまでには、送風装置93からの放出空気量はゼロとなるよう設定されている。
【0064】
本実施形態の場合、ソレノイド933cによる回転弁933aの制御は、開放と閉鎖の2段階である為、ステッピングモータで制御を行なう場合のように多段階に制御できる場合と比較して制御の自由度が下がってしまう。但し、構成としてシンプルに設計できるため、コストを下げることができる。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0065】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図11及び図12を用いて説明する。なお、第1の実施形態と異なる部分は、送風装置93Aであり、その他の画像形成装置の構成は同構成である。このため、同じ部品に対しては第1の実施形態と同じ符号を付与している。
【0066】
本実施形態の場合、送風装置93Aは、送風ファン931と送気ダクト932Aとから構成されている。送気ダクト932Aは、2つの送風経路を有し、送風ファン931から送られる空気は、第1流路932aと第2流路932bとの何れかに流れる。第1流路932aは、送風ファン931から送り込まれた空気を加熱ローラ91に近接した所定位置からニップ部Nへ向けて吹き付ける。第2流路932bは、第1流路932a及び所定位置よりも搬送方向下流に位置し、送風ファン931から送り込まれた空気を、定着後搬送ローラ対94の下流の記録材搬送路に向けて吹き付ける。
【0067】
また、送気ダクト932内部には、第1流路932aに流れる風量(空気流量)と第2流路932bに流れる風量とを調整する調整手段である回転弁932cを有する。回転弁932cは、回転軸を中心に回転する板形状であり、第1流路932aを塞ぐ位置(B)、若しくは第2流路932bを塞ぐ位置(A)のどちらかに位置するように制御される。回転弁932cの回転動作は、図示しないステッピングモータ、若しくはソレノイドによって制御されるようになっており、制御動作は第1の実施形態或いは第2の実施形態と同様である。
【0068】
回転弁932cが第1流路932aを開放する位置(A)にある場合は、加熱ローラ91から記録材Pを剥離する空気流が発生する。一方、回転弁932cが第2流路932bを開放する位置(B)にある場合は、定着後搬送ローラ対94下流の記録材搬送路およびそこを通過する記録材を冷却する空気流が発生する。また、回転弁933aの回転動作を第1の実施形態と同様にステッピングモータにより行えば、第1流路932aと第2流路932bとにそれぞれ流れる風量を、段階的に調整できる。
【0069】
また、本実施形態の場合、第1流路932aの出口の開口面積よりも、第2流路932bの出口の開口面積を十分に大きくしている。このため、第2流路932bの出口での風速は、第1流路932aの出口での風速よりも十分に小さい。したがって、定着後搬送ローラ対94下流の記録材搬送路に第2流路932bから空気が吹き付けられても、ここを通過する記録材の挙動が乱れることは抑えられる。
【0070】
なお、像加熱装置9のニップ部Nの出口は、ニップ部Nを通過した記録材のジャムの発生を低減すべく、比較的広い空間を有する。このため、第1流路932aから風速の早い空気が吹き付けられると、この空間内で記録材の挙動が乱れ易い。これに対して、定着後搬送ローラ対94下流の記録材搬送路は、1枚の記録材が通過できれば良いため、ニップ部Nの出口に比べて空間が狭く、第2流路932bから空気が吹き付けられても、挙動が乱れにくい。特に、上述のように、風速が小さければ、記録材の挙動が乱れてジャムを起こすことはない。このため、第2流路932bから空気を吹き付けることにより、記録材の安定搬送を確保しつつ、記録材の冷却を行える。
【0071】
図12は、本実施形態の送風装置93Aの動作を説明するフローチャートである。基本的な制御の流れは、前述の図7と同じである。但し、S32では、回転弁932cを制御して、第1流路932aを開放している。また、S52では、回転弁932cを制御して、第2流路932bを開放している。また、図12では図7のS6、7はない。
【0072】
なお、検知センサ95、ニップ部N、定着後搬送ローラ対94の位置関係は、第1の実施形態と同じく設定されているため、回転弁932cを動作させるタイミングは第1の実施形態と同じである。また、回転弁932cをステッピングモータにより段階的に制御すれば、図7のようにS6、7を設けることもできる。また、第1の実施形態と同様に、記録材の坪量が100(g/m)よりも大きい場合、若しくは記録材上のトナーの載り量が0.5(mg/cm)以下の場合は、第1流路932aを閉鎖させても良い。
【0073】
本実施形態の場合、送風ファン931により送られる空気を、適宜、第1流路932aと第2流路932bとに送ることができるため、送風ファン931からの空気を効率良く使用できる。また、記録材を加熱ローラ91から剥離させつつ、空気の吹き付けによる、ニップ部N通過後の記録材の挙動の乱れ、加熱ローラ91の冷却を低減できる構造で、定着後搬送ローラ対94の下流で記録材の冷却を行える。その他の構造及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0074】
9・・・像加熱装置、91・・・加熱ローラ(加熱部材)、92・・・加圧ローラ(加圧部材)、93、93A・・・送風装置(送風手段)、932a・・・第1流路、932b・・・第2流路、932c、回転弁(調整手段)、933・・・流量制御弁、94・・・定着後搬送ローラ対(搬送ローラ対)、95・・・検知センサ(記録材検知手段)、500・・・コントローラ、N・・・ニップ部、P・・・記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部材と、前記加熱部材に当接してニップ部を形成する加圧部材と、前記ニップ部の記録材搬送方向下流で、且つ、前記加熱部材に近接した所定位置に、空気を吹き付ける送風手段と、を備え、前記加熱部材により前記ニップ部を通過する記録材を加熱し、前記送風手段により前記ニップ部を通過した記録材を前記加熱部材から剥離する像加熱装置において、
前記送風手段により前記所定位置に吹き付ける風量を制御する風量制御手段を有し、
前記風量制御手段は、記録材の先端が前記ニップ部を通過してから所定時間経過後に、その前の状態よりも風量を低下させる、
ことを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記ニップ部の記録材搬送方向上流で記録材の先端を検知する記録材検知手段を有し、
前記所定時間の経過は、前記記録材検知手段が記録材の先端を検知してから第2の所定時間が経過することにより検知する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記ニップ部の記録材搬送方向下流に、記録材を搬送する搬送ローラ対を有し、
前記風量制御手段は、記録材の先端が前記搬送ローラ対に到達した後に、更に風量を低下させる、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の像加熱装置。
【請求項4】
記録材の坪量に関する情報を取得する坪量取得手段を有し、
前記風量制御手段は、前記坪量取得手段により取得した記録材の坪量が大きいほど、風量を低下させる、
ことを特徴とする、請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載の像加熱装置。
【請求項5】
記録材に形成される画像の濃度に関する情報を取得する濃度取得手段を有し、
前記風量制御手段は、前記濃度取得手段により取得した画像の濃度が低いほど、風量を低下させる、
ことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記風量制御手段は、前記所定位置に空気を吹き付けるための第1流路と、前記所定位置よりも記録材搬送方向下流に空気を吹き付ける第2流路と、前記第1流路と前記第2流路とにそれぞれ流れる風量を調整する調整手段と、を有し、記録材が前記ニップ部を通過してから前記所定時間経過後に前記調整手段を制御して、前記第1流路の風量を低下させる、
ことを特徴とする、請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載の像加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−109024(P2013−109024A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251603(P2011−251603)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】