説明

像加熱装置

【課題】現状、定着部材表面リフレッシュは定着部材表面が摺擦部材を一回通過するだけで、表面性を所定の状態に整えることが困難であり、複数回の通過によって所定の状態に整えている。定着部材表面が摺擦部材を複数回の通過が必要なため、定着部材表面リフレッシュには数十秒の時間を要する。したがって定着部材表面リフレッシュを行っている間、数十秒の装置のダウンタイムが発生してしまう。
【解決手段】定着部材と、定着部材を加熱する加熱部材と、定着部材の外側に離間可能に配設された複数の摺擦部材と、定着部材に圧接された加圧手段を有する定着装置で、複数の摺擦部材は下流に配設された摺擦部材の方が上流に配設された摺擦部材よりも表面粗さが小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材上の画像を加熱する像加熱装置に関するものである。
【0002】
像加熱装置としては、記録材に形成された未定着画像を固着画像として加熱定着する定着装置が挙げられる。また、記録材に一旦定着された或いは仮定着された画像(定着済み画像又は半定着画像)を加熱加圧して光沢度を向上させるなどの画像の表面性状を調整する加熱処理装置などが挙げられる。
【背景技術】
【0003】
従来、複写機やファクシミリなどの静電記録式(電子写真方式)の画像形成装置において、記録材上に形成された未定着トナー画像を加熱して固着画像として定着させる像加熱装置である定着装置としては、熱ローラ対方式の定着装置が一般的に用いられる。
【0004】
この定着装置は、加熱源で加熱される定着ローラとこの定着ローラと相互圧接して定着ニップ部を形成する加圧ローラを有する。そして、未定着トナー画像を担持した記録材を定着ニップ部で挟持搬送して未定着トナー画像を記録材に対して固着画像として加熱加圧定着させるものである。
【0005】
近年は、離型剤を含むトナーからなる未定着画像を定着するオイルレス定着が普及しつつあり、これに応じて、定着ローラはAlや鉄の芯金にシリコーンゴムやフッ素ゴムからなる弾性層と表層にフッ素樹脂チューブやコーティングからなる離型層を備えている。
【0006】
このようなオイルレス定着方式では、定着ローラに離型剤としてのオイルを塗布するオイル塗布手段を有するオイル定着方式のようなオイルスジなどの光沢ムラが無いというメリットがある。そのため、コート紙のような高光沢の記録材に対してトナーの改良と合せて、従来よりさらに高画質を追求することが可能である。
【0007】
しかし、表層に離型層を備えた定着ローラの表層は通紙によるアタックや、紙粉、オフセットトナーなどの汚れにより、徐々に荒れてくるという問題点がある。特に通紙により、定着ローラに対して一定の位置に記録紙が多数枚通紙されると、通紙域、非通紙域および通紙域と非通紙域の境界の紙コバ部で定着ローラ表層の荒れ方が異なってくる。
【0008】
厚紙が通紙された場合は、境界部の段差が著しくなるため、剪断力が働き、定着ローラ表層に傷が発生しやすくなる。また長手方向が短い記録材を通紙する場合にも、加圧が短い記録材部分に集中するため、紙コバ部での剪断力が大きくなり、定着ローラ表層に傷が発生しやすくなる。
【0009】
その対策手段として本出願人は先に特許文献1で開示されるような手段構成を提案している。これは、定着部材に摺擦部材を接触させることで、未定着画像と接触する面を摺擦し、その表面性を所定の状態に整える定着部材表面リフレッシュという技術であり有効である。定着部材表面リフレッシュを行うことで、定着部材の表面性が維持され、画像劣化を抑え、耐久性向上が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−40363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来技術を更に発展させたものである。即ち、現状、定着部材表面リフレッシュは定着部材表面が摺擦部材を一回通過するだけで、表面性を所定の状態に整えることが困難であり、複数回の通過によって所定の状態に整えている。定着部材表面が摺擦部材を複数回の通過が必要なため、定着部材表面リフレッシュには数十秒の時間を要する。したがって定着部材表面リフレッシュを行っている間、数十秒の装置のダウンタイムが発生してしまう。
【0012】
摺擦部材の粗さを大きくすると、短い時間で定着部材表面の傷を消すことが可能となる。しかし、定着部材表面の粗さが大きくなることで、形成した画像の表面の粗さも大きくなってしまい、画像のグロス低下という問題が発生する。画像のグロス低下を防止するために、摺擦部材の粗さを小さくすると、定着部材表面の深い傷を消すために、定着部材表面が摺擦部材を複数回の通過が必要なため、前述したように、定着部材表面リフレッシュには数十秒の時間を要してしまう。
【0013】
本発明は、紙コバ傷や画像のグロス低下を防止すると共に、装置のダウンタイムを減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するための本発明に係る像加熱装置の代表的な構成は、外周面に離型層を有する回転可能な加熱部材と、前記加熱部材を加熱する加熱手段と、前記加熱部材とニップ部を形成する加圧部材と、前記加熱部材の外面に対して接離可能に配設されていて前記外面に当接されて摺擦することにより前記加熱部材の表面性を回復させる摺擦部材と、を有し、画像を担持した記録材を前記ニップ部で挟持搬送して加熱する像加熱装置であって、前記摺擦部材は前記加熱部材の回転方向において複数配設されており、前記回転方向の下流側に配設された摺擦部材の方が上流側に配設された摺擦部材よりも表面粗さが小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、像加熱装置において、紙コバ傷や画像のグロス低下を防止すると共に、装置のダウンタイムを減少させることができる
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】画像形成装置の一例の概略構成図
【図2】定着装置の概略構成の説明図
【図3】リフレッシュローラ(摺擦部材)が定着ローラから離間している状態を示した図
【図4】リフレッシュローラの砥粒番手とコート紙グロスの関係を示したグラフ
【図5】リフレッシュローラの砥粒番手と紙コバ傷を消すのに必要な摺擦ニップ通過回数の関係を示したグラフ
【図6】定着ローラのリフレッシュ制御の制御フローの一例の図
【図7】複数のリフレッシュローラのシフト機構の他の構成例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
[実施例]
<画像形成装置>
図1は本発明に係る像加熱装置を定着装置として搭載した画像形成装置の一例の概略構成図である。この画像形成装置100は、中間転写ベルト6に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部Y、C、M、Kを配置した、電子写真方式を利用しているタンデム型フルカラーレーザプリンタである。
【0019】
画像形成部Y、C、M、Kは、下から上に順にトナー像を中間転写ベルト6へ転写するように配置され、それぞれ電子写真プロセスを用いてトナー像が形成される感光ドラム1を備えている。それぞれの感光ドラム1の周囲には、感光ドラム1の回転方向に沿って帯電装置2、現像装置3、一次転写ローラ9、及びクリーニング装置4が配置されている。露光装置5は、画像形成部Y、C、M、Kの感光ドラム1に対して、レーザー走査露光光学系を用いて共通に露光を行うように配置されている。
【0020】
画像形成部Y、C、M、Kにおいて、露光装置5により、画像データに基づいた走査露光が、帯電装置2によって一様に帯電された感光ドラム1上になされて、感光ドラム1表面に走査露光画像に対応する静電像が形成される。
【0021】
現像装置3は、感光ドラム1の表面に形成された静電像を、トナー像として現像する。画像形成部Yの現像装置3にはイエロートナー、画像形成部Cの現像器3にはシアントナー、画像形成部Mの現像器3にはマゼンタトナー、画像形成部Kの現像器3にはブラックトナーがそれぞれ充填されている。トナーは離型剤を含む。画像形成部Yの感光ドラム1にはイエロートナー像、画像形成部Cの感光ドラム1にはシアントナー像が、画像形成部Mの感光ドラム1にはマゼンタトナー像が、画像形成部Kの感光ドラム1にはブラックトナー像がそれぞれ形成される。
【0022】
画像形成部Y、C、M、Kのそれぞれの感光ドラム1に現像された上記各色の単色トナー像は、感光ドラム1の回転と同期して等速で回転する中間転写ベルト6へ所定の位置合わせ状態で順に重畳されるように一次転写される。これにより、中間転写ベルト6上に、未定着のフルカラートナー像が合成形成される。
【0023】
本実施例では、エンドレスの中間転写ベルト6を用いており、中間転写ベルト6は、駆動ローラ7、二次転写対向ローラ14、テンションローラ8に懸回して張架され、駆動ローラ7によって回転駆動される。画像形成部Y、C、M、Kのそれぞれの一次転写ローラ9は、感光ドラム1に向かって中間転写ベルト6を付勢して、感光ドラム1と中間転写ベルト6との間にトナー像の一次転写部を形成する。
【0024】
不図示のバイアス電源が一次転写ローラ9に対してトナー像と逆極性の一次転写バイアスを印加する。これにより、画像形成部Y、C、M、Kの感光ドラム1から中間転写ベルト6に対して、各色のトナー画像が一次転写される。画像形成部Y、C、M、Kにおいて感光ドラム1から中間転写ベルト6へトナー像を一次転写した後に、感光ドラム1上に残った転写残トナーは、クリーニング装置4によって除去される。
【0025】
このような工程を中間転写ベルト6の回転に同調して、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像形成部Y、C、M、Kで行うことにより、中間転写ベルト6上に各色のトナー像が順次重ねて一次転写される。なお、単色のみの画像形成(単色モード)時には、上記工程は、目的の色の画像形成部(例えばブラックの画像形成部K)についてのみ行われる。
【0026】
一方、記録材カセット10にセットされたシート状の記録材Sは、給送ローラ11によって一枚分離給送されて、搬送路10aを通って、レジストローラ12に先端を当接した状態で停止する。記録材Sは、中央基準にて搬送される。レジストローラ12は、所定の制御タイミングで起動して、中間転写ベルト6と二次転写ローラ13とのニップ部である二次転写部へ記録材Sを送り込む。
【0027】
二次転写ローラ13は、接地電位に接続された二次転写対向ローラ14に内側から支持された中間転写ベルト6に当接して記録材Sに対するトナー像の二次転写部を形成する。中間転写ベルト6上に一次転写して重ね合わせたトナー像は、不図示のバイアス電源がトナーと逆極性のバイアスを二次転写ローラ13に印加することにより、記録材S上に一括二次転写される。二次転写部を通過した中間転写ベルト6上に残った二次転写残トナーは、ベルトクリーニング装置15によって除去される。
【0028】
トナー像を二次転写された記録材Sは、中間転写ベルト6から曲率分離され、搬送路10bを通って定着装置Fに導入される。定着装置Fは、トナー像が二次転写された記録材を加熱・加圧しつつ挟持搬送する過程で、トナー像を融解、押潰して記録材S上にフルカラー画像を定着させる。定着装置Fから送り出された記録材Sは、搬送路10cを通って、片面画像形成のフルカラープリントもしくはモノカラープリントとして排紙トレイ16に排紙される。
【0029】
両面画像形成モードの場合は、定着装置Fを出た第1面画像形成済みの記録材Sが搬送路10cに入りその後端部がフラッパ17を通過すると、フラッパ17の切換えがなされると共に、記録材Sの逆搬送がされる。これにより、記録材Sが搬送路10cから再循環搬送路10dに導入されて再び搬送路10aに送られる。そして、表裏が反転された状態にてレジストローラ12により所定の制御タイミングで二次転写部へ送り込まれて第2面に対するトナー像の二次転写を受ける。以後は片面画像形成モードの場合と同様の経路F、17、10cを通って両面画像形成のプリントとして排紙トレイ16に排紙される。
【0030】
<装置>
(1)定着装置Fの全体的な構成説明
図2は像加熱装置としての定着装置Fの概略構成の説明図である。この定着装置Fは、回転可能な加熱部材(回転体)としての定着ローラ51と、回転可能な加圧部材(回転体)としての加圧ローラ52とのローラ対を主体とする、熱ローラ対方式、オイルレス方式の装置である。
【0031】
定着ローラ51は外径φ60の複合層ローラであり、画像品質(定着性と光沢感など)を良好に保つために、円筒状のアルミ芯金51aと、その芯金51aの外周面に順次に積層した弾性層51bと、離型層51cを有する。弾性層51bは、シリコンゴムやスポンジ等の耐熱性の弾性材料層であり、厚さは例えば0.5〜5mmである。離型層51cは最外層であり、溶融したトナーに対する良好な離型性を確保するものであり、パーテトラフロロエチレン(PTFE)やパーフロロアルコキシ(PFA)等からなる、厚さは例えば20〜100μmである。
【0032】
定着ローラ51は一端部側と他端部側がそれぞれ定着装置筐体(不図示)の一端側と他端側の対向側板間に軸受部材を介して回転可能に受保持されて配設されている。そして、制御回路部58で制御される定着モータM1の駆動力が動力伝達機構(不図示)を介して伝達されて矢印Aの時計方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0033】
また、定着ローラ51の芯金51aの内部には、定着ローラ回転軸線の位置にほぼ対応する位置に定着ローラ51の長手方向に沿って長い加熱源(加熱手段)としてのハロゲンヒータ等の熱発生素子53が配設されている。この熱発生素子53に対して制御回路部58で制御される電源部59から電力が供給されることで、熱発生素子53から赤外線が発生する。この赤外線により芯金51aの内周面が加熱されて、定着ローラ51が内側から加熱される。
【0034】
加圧ローラ52は外径φ30の複合層ローラであり、丸棒状あるいは円筒状のアルミ芯金52aと、その芯金52aの外周面に順次に積層した弾性層52bと、離型層52cを有する。弾性層52bは、シリコンゴムやスポンジ等の耐熱性の弾性材料層であり、厚さは例えば2〜10mmである。離型層51cは最外層であり、本実施例ではトナーとの離型性が良く、オイルの親和性がよいシリコンゴム層である。
【0035】
加圧ローラ52は定着ローラ51の下側において定着ローラ51に並行に配列されて、一端部側と他端部側がそれぞれ定着装置筐体(不図示)の一端側と他端側の対向側板間に軸受部材を介して回転可能に受保持されて配設されている。そして、定着ローラ51と加圧ローラ52とは加圧機構(不図示)により例えば500N〜1000Nの加圧加重で相互押圧されている。これにより、定着ローラ51と加圧ローラ52との圧接部において定着ローラ51の弾性層51bと加圧ローラ52の弾性層52bが押圧変形されて記録材搬送方向Cにおいて所定幅のニップ部(接触部、定着ニップ部)Nは形成される。
【0036】
加圧ローラ52は、定着ローラ51が回転駆動されることでニップ部Nにおける定着ローラ51またはニップ部Nに導入された記録材Pとの摩擦力で定着ローラ51の回転に従動して回転する。加圧ローラ52は定着ローラ51の回転に連動してニップ部Nにおいて定着ローラ51の回転方向と同方向で定着ローラ51の周速度にほぼ対応した周速度で回転駆動する構成にすることもできる。
【0037】
定着ローラ51の上側には、定着ローラ51の表面性を回復(リフレッシュ)させるための摺擦部材ユニット60が配設されている。ユニット60には、定着ローラ51の外面に当接されて摺擦することにより定着ローラ51の表面性を回復させる摺擦部材が定着ローラ51の回転方向において複数配設されている。
【0038】
本実施例においては、その複数の摺擦部材として、定着ローラ51の回転方向に関して上流側と下流側との配設された第一リフレッシュローラ61と第二リフレッシュローラ62との2つの回転体を有する。この両ローラ61・62はそれぞれ定着ローラ51に対して並行に配列されていて、共通の筐体63の一端側と他端側の側板間に軸受部材を介して回転可能に軸受保持されて配設されている。
【0039】
第一及び第二リフレッシュローラ61・62は、それぞれ、制御回路部58で制御されるユニットモータM2の駆動力が動力伝達機構(不図示)を介して伝達されて矢印DとEの時計方向に所定の周速度で回転駆動される。また、ユニット60は、制御回路部58で制御されるリフレッシュローラ着脱制御手段としてのシフト機構64により定着ローラ51に対する着状態と脱状態とに転換される。即ち、ユニット60の筐体63はシフト機構64により図2の矢印Fの下方への並行移動と図3の矢印Gの上方への平行移動が可能にされている。
【0040】
ユニット60の着状態とは、図2のように、筐体63がシフト機構64により下降移動されて第一と第二リフレッシュローラ61・62が共に定着ローラ51の外面に対して所定の力で押圧して所定の進入量をもって接触している状態である。また、ユニット60の脱状態とは、図3のように、筐体63がシフト機構64により上昇移動されて第一と第二リフレッシュローラ61・62が共に定着ローラ51の外面から非接触に離間している状態である。
【0041】
第一と第二リフレッシュローラ61・62を定着ローラ51の外面に対して接離可能の支持するシフト機構64の具体例は図には省略したけれども適宜に構成することが出来る。例えば、電磁ソレノイド・プランジャ機構、カムとレバーを用いた機構、ラックとピニオンを用いた機構、引張りワイヤ機構などの上下動機構にすることができる。
【0042】
第一及び第二リフレッシュローラ61・62はそれぞれφ10のSUSの芯金に接着層を介して摺擦材としての砥粒を密に接着して形成している。摺擦材としては、例えば、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化チタン、ジルコニア、リチウムシリケート、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化鉄、酸化クロム、酸化アンチモン、ダイヤモンドが挙げられる。また、これらの混合物の何れかの砥粒を接着層接着処理したもの等が挙げられる。
【0043】
本実施例では、摺擦材として、アルミナ(酸化アルミニウム)系(「アランダム」又は「モランダム」とも称される)のものを用いた。アルミナ系は最も幅広く用いられる砥粒で、定着ローラ1に比べて十分硬度が高く、鋭角形状のため切削性に優れており、本実施例における摺擦材として好適である。
【0044】
第一と第二リフレッシュローラ61・62の表面粗さに関して、下流側に配設された第二リフレッシュローラ62の方が上流側に配設された第一リフレッシュローラ61よりも表面粗さが小さい関係構成にされている。これについては(3)項で詳述する。
【0045】
(2)定着動作
制御回路部58は画像形成装置100に対する画像形成スタート信号の入力に基づいて所定の制御タイミングにて定着モータM1の駆動を開始させる。摺擦部材ユニット60は常時はシフト機構84により図3の脱状態、すなわち第一リフレッシュローラ61と第二リフレッシュローラ62が共に定着ローラ51から非接触に離間している状態に保持されている。また、ユニットモータM2はオフにされている。従って第一リフレッシュローラ61と第二リフレッシュローラ62は回転を停止している状態に保持されている。
【0046】
加圧ローラ52は定着ローラ51の回転に従動して回転する。制御回路部58は電源部59から熱発生素子53に対して電力を供給する。これにより定着ローラ51が内部加熱されて定着ローラ51の表面の温度が昇温していく。その定着ローラ51の表面温度が、定着ローラ51の表面に対して近接配設または接触配置されたサーミスタ、モバイル等の温度検知素子54に検知される。温度検知素子54から出力される検知温度に関する電気的な情報がA/D、コンバータ(不図示)を介して制御回路部58へ入力する。
【0047】
制御回路部58の温調機能部は、温度検知素子54からの検知温度情報に基づいて定着ローラ51の表面温度を所定の目標温度(定着温度)に立ち上げて、その目標温度が維持されるように電源部59から熱発生素子53に対する供給電力を制御する。即ち、制御回路部58は定着ローラ51の表面温度を目標温度に立ち上げて温調する。
【0048】
この状態において、画像形成装置の画像形成機構側部から定着装置Fに未定着トナー画像tを静電的に担持している記録材Sが搬送され、入口側のガイド搬送55で案内されて定着ニップ部Nに導入される。記録材Sは未定着トナー画像担持面側を定着ローラ51側にして定着ニップ部Nに導入されてニップ部Nで挟持搬送される。これにより、記録材Sにはニップ部において定着ローラ51の熱が付与され、ニップ部の加圧力を受けることで未定着トナー画像tが記録材Sの表面に固着画像として熱圧定着される。
【0049】
定着ニップ部Nを出た記録材Sは定着ニップ部Nの記録材出口側において定着ローラ51の表面に当接または近接するように配設された記録材分離爪56により定着ローラ51の表面から分離される。そして出口側の搬送ガイド57で案内されて定着装置Fの外に排出搬送される。
【0050】
(3)定着ローラ51のリフレッシュ制御
摺擦部材ユニット60は常時は図3の脱状態、即ち第一及び第二リフレッシュローラ61・62がそれぞれ定着ローラ51に対して非接触に離間している状態に保持されている。
【0051】
一方、摺擦部材ユニット60が図2の着状態に転換されたときには、第一及び第二リフレッシュローラ61・62がそれぞれ定着ローラ51に対して所定の進入量で加圧される。これにより、第一及び第二リフレッシュローラ61・62と定着ローラ51との間に定着ローラ回転方向Aに関して上流側の摺擦ニップ部N61と下流側の摺擦ニップ部N62とが形成される。
【0052】
定着ローラ51が回転駆動されており、摺擦部材ユニット60が着状態に転換されている状態において、第一及び第二リフレッシュローラ61・62はユニットモータM2が駆動されることにより所定の周速度で所定の方向に回転駆動される。第一及び第二リフレッシュローラ61・62の回転方向はそれぞれ摺擦ニップ部N61と摺擦ニップ部N62において定着ローラ51の回転方向Aに対して順方向または逆方向のいずれでもよい。定着ローラ51とリフレッシュローラ61・62でそれぞれ表面速度に周速差を持つことが望ましい。
【0053】
本実施例においては、第一及び第二リフレッシュローラ61・62の回転方向はそれぞれ摺擦ニップ部N61と摺擦ニップ部N62において定着ローラ51の回転方向Aに対しては逆方向DとEにしている。これにより定着ローラ51とリフレッシュローラ61・62でそれぞれの表面速度に周速差を持たせている。
【0054】
リフレッシュローラ61・62が定着ローラ51に対して周速差をもって接する事で、定着ローラ51の離型層51cの長手方向全域(通紙域、非通紙域及びコバ部)に細かい摺擦傷を付けることで表面状態の凹凸の差を無くす。これにより、離型層51cに付いていた傷に細かい摺擦傷を重畳させ、記録材では視認不可能とすることができる。
【0055】
図6は定着ローラ51のリフレッシュ制御の制御フローの一例の図である。制御回路部58は画像形成機構部から定着装置Fに通紙される記録材Sについてサイズ別に積算(累積)通紙枚数をカウンタ機能部でカウントする(ステップS1、S2)。そして、サイズ別の何れかのサイズ(同じサイズ)の記録材Pの積算通紙枚数が所定の枚数に到達したら(S3のY)、画像形成機構の画像形成動作を一時中断し(S4)、定着ローラ51のリフレッシュ制御モードを実行する(S5)。
【0056】
リフレッシュ制御モードは、定着ローラ51の回転駆動および温調は続行した状態において実行される。制御回路部58は、ユニットモータM2を起動させてリフレッシュローラ61・62を所定の回転方向と周速度にて回転駆動する。また、シフト機構64を制御してユニット60を脱状態(図3)から着状態(図2)に転換する。
【0057】
これにより、定着ローラ51に対して第一リフレッシュローラ60及び第二リフレッシュローラ61が当接されて摺擦動作することにより、定着ローラ51の表面性のリフレッシュ、即ち離型層51cのリフレッシュがなされる。そして、リフレッシュ制御モードの実行開始から予め定めた所定のリフレッシュ時間の経過後にリフレッシュ制御モードの実行を終了する(S7)。
【0058】
リフレッシュ制御モードの終了は、シフト機構64を制御してユニット60を着状態(図2)から着状態(図3)に転換し、ユニットモータM2をOFFにすることでなされる。また、リフレッシュ制御モードを実行させた記録材サイズについての積算通紙枚数カウントがリセットされる。
【0059】
リフレッシュ制御モードの実行が終了したら中断された画像形成動作が再開される(S19)。その時点で画像形成動作が終了しているのであれば、制御回路部58は画像形成動作を終了して画像形成機構部と定着装置の動作を停止させて、次の画像形成開始信号が入力されるまで画像形成装置をスタンバイ状態に保持する(S9〜S11)。そして、ステップS9において画像形成動作が終了していない場合はステップS1に戻る。ステップS3で積算枚数が所定値に到達していない場合はステップS19に移行する。
【0060】
本実施例の定着装置Fにおいては、定着ローラ51の回転方向Aに関して上流側に配設された第一リフレッシュローラ61は、下流側に配設された第二リフレッシュローラ62よりも表面粗さが大きく設定されている。逆にいえば、下流側に配設された第二リフレッシュローラ62の方が上流側に配設された第一リフレッシュローラ61よりも表面粗さが小さい関係構成にされている。
【0061】
具体的には、第一リフレッシュローラ61は平均粒径が60μ程度の400番の砥粒で形成され、表面粗さRaが30μm程度になっている。第二リフレッシュローラ62は平均粒径が5μ程度の3000番の砥粒で形成され、表面粗さRaが3μm程度になっている。
【0062】
図4はリフレッシュローラの砥粒番手と、リフレッシュ後にコート紙にブルーベタ画像を形成した時のグロスを示したものである。320番、400番、600番、1200番、2000番、3000番の砥粒で作成したリフレッシュローラを用意し、これらを定着ローラ51に当接、回転させることでリフレッシュを行う。そして、その状態の定着ローラで坪量が128g/m2のOKトップコート紙(王子製紙製、紙グロス45°)に形成したブルーベタ画像の定着を行った。これにより得られた画像のグロスを光沢計PG−1M(日本電色工業株式会社製)で測定したものである。
【0063】
図4から分かるように、砥粒の番手が大きい場合には、良好なグロスが得られるが、砥粒の番手が小さくなると低グロスになることが分かる。これは定着ローラ表層の粗さが大きいと、形成された画像表面の粗さも大きくなるため、画像表面の凹凸でグロスが低下してしまうためである。したがって、小さな番手の砥粒で形成したリフレッシュローラを1本だけでリフレッシュを行った場合には、グロス低下が発生する。また砥粒の番手を変えた複数本のリフレッシュローラを当接する場でも、小さな番手の砥粒で形成したリフレッシュローラを定着ローラ下流側に配設すると、グロス低下が発生してしまう。
【0064】
図5はリフレッシュローラの砥粒番手と、厚紙通紙により発生したコバ傷を視認不可能するのに必要な摺擦ニップ通過回数を示したものである。320番、400番、600番、1200番、2000番、3000番の砥粒で作成したリフレッシュローラを用意し、坪量300g/m2のUPMフィネス紙(UPM製)を通紙する。これにより、定着ローラ表層に発生したコバ傷を記録材上の定着画像で視認不可能にするのに、それぞれのリフレッシュローラにおいて、定着ローラの表面が摺擦ニップを何回通過することが必要かを調べた。
【0065】
図5から分かるように、砥粒の番手が小さい場合には、少ない通過回数でコバ傷を消すことができるが、砥粒の番手が大きくなるとコバ傷を消すためには多くの回数の摺擦ニップの通過が必要となる。例えば、2000番の砥粒の場合には40回の通過が必要である。即ち、φ60の定着ローラ51が周速度500mm/sで回転している場合、リフレッシュ時間=必要回数(40)÷1秒あたりの回転数(500÷60÷3.14)となるため、15秒のリフレッシュ時間が必要になる。
【0066】
400番の砥粒の場合には1回の通過でコバ傷を消すことが可能である。従って、制御回路部58は、通紙される記録材Sが厚紙である場合には、その通紙中に定着ローラ51にリフレッシュローラを当接させる制御をすることで、ダウンタイムなしでリフレッシュを行うことが可能である。
【0067】
通紙される記録材Sの紙種情報は、制御回路部58に対してパソコンなどのホスト装置や画像形成装置の操作部から使用者により入力される。あるいは、記録材搬送路に設けられた紙種検知センサから入力される。あるいは選択された給紙カセット側から入力される。実施例においては、厚紙は坪量180g/mm2以上としている。
【0068】
また、リフレッシュ制御モードは、画像形成装置の操作部に設けたマニュアルキーを使用者が必要に応じて操作することにより適時に実行させることも出来る。
【0069】
本実施例では、上流側の第一リフレッシュローラ61は400番の砥粒で形成されているため、厚紙のコバ傷を1回の通過で消すことが可能である。また、下流側の第二リフレッシュローラ62は3000番の砥粒で形成されているため、定着ローラ61の表面の粗さを小さくでき、良好なグロスの画像が得られる。これらのリフレッシュローラ61、62を定着ローラ51に同時に当接させることにより、紙コバ傷や画像のグロス低下を防止すると共に、装置のダウンタイムを減少させることができる。
【0070】
このように、定着ローラ51の外側に離間可能に配設された摺擦部材を複数持つことと、下流側の摺擦部材62の方が上流側の摺擦部材61よりも表面粗さを小さいくすることで、定着ローラ51の表面のリフレッシュを短時間で実行することが可能となる。したがって、紙コバ傷や画像のグロス低下を防止すると共に、装置のダウンタイムを減少させることができる
以上の実施例では複数のリフレッシュローラ61、62を定着ローラ51に対して同時に着脱させているが、図7のように、それぞれを個別に着脱できるようにすることで、通常のリフレッシュだけでなく、グロスアップ、グロスダウンモードを設けても良い。
【0071】
即ち、通常のリフレッシュモードの場合はリフレッシュローラ61と62を共に定着ローラ51に対して当接させて定着ローラ51の表面を摺擦する制御をする。グロスアップモードの場合は下流側の第二リフレッシュローラ62だけを定着ローラ51に対して当接させて定着ローラ51の表面を摺擦する制御をする。グロスダウンモードの場合は上流側の第一リフレッシュローラ62だけを定着ローラ51に対して当接させて定着ローラ51の表面を摺擦する制御をする。
【0072】
<その他の事項>
1)回転可能な加熱部材51はローラ体に限られない。複数の張架部材間に懸回張設されて循環移動される可撓性を有するエンドレスベルト体とすることもできる。
【0073】
2)加熱部材51の加熱は内部加熱方式に限られない。加熱部材51を外部から加熱する外部加熱方式とすることもできる。加熱部材51の加熱は内部加熱または外部加熱の電磁加熱方式とすることもできる。
【0074】
3)加圧部材52はローラ体に限られない。回転可能なエンドレスベルト体にすることもできる。また、表面(加熱部材51や記録材Sとの当接面)の摩擦係数が小さい非回転部材(加圧パッドなど)の形態にすることもできる。加圧部材52も加熱する構成にすることもできる。
【0075】
4)摺擦部材61、62は回転可能なローラ体に限られない。回転可能なエンドレスベルト体にすることもできる。また、パッド体など非回転部材の形態にすることもできる。
【0076】
5)本発明の像加熱装置は、実施例のような、記録材に形成された未定着画像を固着画像として加熱定着する定着装置としての使用に限られない。記録材に一旦定着された或いは仮定着された画像(定着済み画像又は半定着画像)を加熱加圧して光沢度を向上させるなどの画像の表面性状を調整する加熱処理装置としても有効である。
【符号の説明】
【0077】
F・・像加熱装置、51・・加熱部材、51c・・離型層、52・・加圧部材、53・・加熱手段、N・・ニップ部、61・62・・複数の摺擦部材(上流側の摺擦部材と下流側の摺擦部材)、S・・記録材、t・・画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に離型層を有する回転可能な加熱部材と、前記加熱部材を加熱する加熱手段と、前記加熱部材とニップ部を形成する加圧部材と、前記加熱部材の外面に対して接離可能に配設されていて前記外面に当接されて摺擦することにより前記加熱部材の表面性を回復させる摺擦部材と、を有し、画像を担持した記録材を前記ニップ部で挟持搬送して加熱する像加熱装置であって、
前記摺擦部材は前記加熱部材の回転方向において複数配設されており、前記回転方向の下流側に配設された摺擦部材の方が上流側に配設された摺擦部材よりも表面粗さが小さいことを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記摺擦部材は回転体であり、前記外面に当接された状態において前記加熱部材の表面速度と周速差を持って回転駆動されることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−88498(P2013−88498A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226634(P2011−226634)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】