説明

像形成性コーティングにおける遷移金属化合物の使用

基材上に像を形成する方法であって、加熱または照射により色が変化する、モリブデン、タングステンまたはバナジウムのアミンの分散水または懸濁液または有機溶媒溶液としての、基材へのコーティングを備える。また、コーティングされた基材であって、前記コーティングは、モリブデン、タングステンまたはバナジウムのアミン化合物と、前記アミン化合物と熱可塑性モノマーまたは光重合性モノマーとの溶液をとを含み、可視光に対し十分に透明な層であるものについても記述される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属化合物およびその像形成性コーティングにおける使用に関する。
【背景技術】
【0002】
長年の間、感熱性イメージングシートが、コピー、サーマルプリント、サーマルレコーディング、およびサーマルラベリングに使用されてきた。近年では、スクライビングレーザの開発により、コーディングおよびマーキングの両シート材、および自立するまたは自立しない形成物に対して、感熱性イメージング材料が使用できるようになった。
【0003】
サーモグラフィック材料には、一般的に2種類のカラー生成反応物が使用されてきた。すなわちロイコラクトン、または例えばUS−A−3846153に記述されているように、通常はフェノール化合物により顕色されるスピロピラン化合物、および例えばUS−A−2663654に記述されているように、着色錯体を得るために配位子と反応し得る有機酸の重金属塩がこれに当たる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら両種類の化合物の活用は、ポリマー結合剤中への固体成分の分散、適当な基材上へのこれらのコーティング、および発色させるためのこれらの固体成分のうち少なくとも1つの溶解、におけるその物理的な分離の成果にかかっている。固体材料の分散は、本質的に、コーティングおよび乾燥時に幾らかの不透明な層を生じさせる。これは通常、紙などの不透明基材上では許容されるが、透き通ったマイラー(訳注:デュポン社の登録商標)(ポリエステル)フィルム、および透明なパッケージングフィルム等の透明基材上では、その適用が制限される。その例として、もともとフィルムの透過性が要求されている場合、または透明フィルムパッケージングへの適用時でフィルムの不透明さがパッケージングの中身または容器の表面を覆い隠してしまう場合がある。
【0005】
従って、透明または半透明フィルム基材上および缶用金属等の反射基材上のコーティング向けに、透明な感熱性イメージング層に対する需要が存在する。さらには、瓶などの成形または形成物およびラベリングやコーディングに用いる他の容器上に、コーティングまたはプリントできるレーザ感応性イメージング材料に対する需要も存在する。当然ながらこれらの適用にあたっては、コーティングが基材上でしっかりかつ確固として付着、すなわちエンドユーズ環境下で遭遇する典型的な化学的および物理的処理に対し十分な抵抗力を有していなければならない。一般に、溶媒可溶性結合剤を含む有機溶媒ベースの組成物は、乾燥時に水ベースの組成物などよりも透明性および水への抵抗力に優れた、より丈夫でより良い付着層を提供する。
【0006】
感熱性イメージング層でのモリブデン酸有機アミンの使用は、US−A−2910377(実施例10参照)およびUS−A−3028255(ここで例示のアミンは第1級アミンである)で述べられている。この使用はコピー用紙に制限されており、モリブデン酸塩は、延長されたボールミルにより樹脂結合剤中で分散されて懸濁液を生じ、コーティングに用いられる。このような懸濁液は、透明フィルム基材上でのコーティングおよび乾燥時に、透明性を失ってしまう恐れがある。
【0007】
US−A−4217409(実施例10および12参照)は、基材への適用時に、IR、可視およびUV照射を含む電磁照射に対し感応する薄層材料を与えるコーティングとして、ポリビニルアルコールの酸性水溶液中でのモリブデン酸イソプロピルアンモニウムの使用について述べている。ポリビニルアルコール溶液は、しばしばポリエステルフィルムに対するコーティング特性が乏しく、曇った乾燥フィルムが容易に分離してしまう。乾燥されイメージングされたコーティングは、物理的および化学的損傷、特に水からの化学的損傷を最も受けやすい。イソプロピルアミンは揮発性であり、水性アルカリと接触すると匂いを生じさせる。
【0008】
US−A−4406839は、有機溶媒可溶性モリブデン酸アミンの合成がくすみ遅延剤として有益であり、様々なアミンから作られることを述べている。実施例では、トリドデシルアミンなどの高分子量アミンを用いている。
【0009】
モリブデン酸アミン、その合成および使用については、US−A−2910377、US−A−3028255、US−A−3290245、US−A−4053455、US−A−4153792、US−A−4217292、US−A−4217409、US−A−4226987、US−A−4266051、US−A−4406837、US−A−4406838、US−A−4406839、US−A−4406840、US−A−4410462、US−A−4410463、US−A−4424164、US−A−4425279、US−A−6217797、およびUS−A−6355277でも述べられている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも一部分においては、モリブデン酸アミンおよび類似化合物、そしてそのうちの幾つかは新しいものが、イメージングに適した特性を有していることの発見に基づいている。特にこれらは、少なくとも幾つかの有機溶媒に溶け、フィルム形成溶媒に可溶性の有機結合剤と融和性を有し、透き通ったポリエステルフィルムなどの不活性基材上のコーティング時および乾燥時に、可視光に対して十分に透明な連続層を基材上に形成する。このような層は感熱性で、走査レーザまたはサーマルプリンタによりサーモグラフィック材料中でイメージング効果をもたらし、非イメージング領域を不透明化することなく効果的なマーキングを提供する。
【0011】
本発明の一面によれば、基材上に像を形成する方法であって、加熱または照射により色が変化する、モリブデン、タングステンまたはバナジウムのアミン化合物の有機溶媒溶液による基材のコーティングと、前記コーティングに対する加熱または照射と、を備える。
【0012】
本発明のさらなる側面は、コーティングされた基材であって、前記アミンは各アルキル基が12までの炭素原子を有する第2級または第3級アルキルアミンであり、前記アミンは24までの炭素原子を有する。他の側面は、アミン化合物と、光重合性モノマーまたは熱可塑性モノマーと、の溶液である。
【0013】
本発明のモリブデン酸アミンの有機溶媒に対する可溶特性によって、既存の感熱性イメージング材料用のコーティング混合物を準備するのに通常必要な、時間のかかる、無駄でコスト的にも消費するプロセスが回避できる。これらは、マイラー等の透明基材上、およびポリプロピレン等の市販用で入手可能なパッケージングフィルム上で生成されるべき、十分な透明性と光沢とを有する感熱層を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で用いる化合物は、モリブデン酸アミンが望ましい。ここで“モリブデン酸アミン”(例えばモリブデン酸エチルアミン)とは、その構造が完全に定義されていない化合物を述べるのに用いられており、時にはこれに関係するモリブデン酸アンモニウム(例えばモリブデン酸エチルアンモニウム)とも呼ばれ、化合物が塩であることを意味する。一般的用語の“モリブデン酸アミン”は、モリブデン酸アミンまたはイソポリモリブデン酸アミンを生じさせるためのアミンの反応時に形成される錯体または塩を言う。参考までに、Cotton&Wilkinson;先進無機化学、第2版、1967、第30章30節−C−2および3を参照のこと。
【0015】
ここでは、例証を目的として、モリブデン酸アミンについて説明する。本発明で用いるこのような化合物は、アミン、およびモリブデン酸塩、およびポリモリブデン酸塩(VI)酸、およびそれらの塩から形成されてもよく、像を与えるため熱によりコーティング中で活性化が可能(can be can be(訳注:重複誤記と推定))である。タングステンまたはバナジウムをベースとするものを含む、本発明の使用に適した他の化合物は、同様の方法により生成され得る。
【0016】
より具体的にこのような化合物は、例えば既知であって、150℃またはそれ以上の沸点(1大気圧での)および80℃以下の融点を有する飽和状態の第2級または第3級脂肪族ジアルキルまたはトリアルキルモノアミンを、異なったまたは好ましくは同じ、例えば3から12の、好ましくは5から12の、より好ましくは5から10の、最も好ましくは6または7から10の炭素原子を有する個別のアルキル基と共に用いることで生成される。この化合物は、一般的に総数7から24の炭素原子を有している。この化合物の塩に、酢酸アミンまたは塩化物などを用いてもよい。代表的なアミンは、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジ−n−オクチルアミンおよびトリ−n−オクチルアミンである。1またはそれ以上のアミン化合物が用いられてもよいのは言うまでもないであろう。
【0017】
モリブデン酸アミンは、例えば酸化モリブデン、モリブデン酸、ジモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウムまたは市販用の“モリブデン酸”(1またはそれ以上の第1級モリブデン酸アンモニウムを備える)などの酸化状態VIのモリブデン化合物と、アミンとを反応させることで生成される。本発明に使用されるモリブデン酸アミンは、オクタモリブデン酸ビス(2−エチルヘキシル)アミンが代表的であり、かつ好ましい。
【0018】
本発明の使用に適するモリブデン酸アミンは、以下の1つまたはそれ以上の特徴を有する。
(i)少なくとも1つの有機溶媒に対して個別に溶ける
(ii)有機溶媒溶液のコーティングまたはプリント時に、特定の市販用ポリマー基材上で透明または略透明フィルムを形成する特性
(iii)モリブデン酸アミンを含む層が、イメージング部分を走査レーザおよび/またはサーマルプリンタのヒートブロックにより熱でさらされた場合、視角的に十分な識別を伴う色変化を表す感熱性
(iv)混合物の略透明フィルムの形成に示されるような、少なくとも1つの溶媒可溶性ポリマー結合剤との融和性
(v)モリブデン酸アミン層が水性アルカリにさらされてアミンが放たれた場合のリスクが低くなるよう、低揮発性の前駆アミンを用いた準備
【0019】
モリブデン酸アミンは、有機溶媒に溶け、フィルム形成溶媒に可溶性の有機結合剤と融和性を有し、透き通ったマイラーポリエステルフィルム等の不活性基材上でコーティングまたはプリントされ乾燥された場合に、可視光に対して十分に透明なモリブデン酸アミンの連続層を形成する溶液を提供する。このような層は感熱性で、走査レーザまたはサーマルプリンタによりサーモグラフィック材料中および3D物体上にイメージング効果をもたらす。本発明の方法により形成される透き通った層は、光沢のない表面を生じる不溶懸濁モリブデン酸塩を含む組成物とは異なり、望ましい光沢を与えることができるので、不透明な基材上であっても効果を有する。
【0020】
これらのモリブデン酸アミンを含むイメージング要素は、フレキシブルなシート基材、好ましくはポリエステル等のフレキシブルな透明シート基材上に支持されてもよい。代わりに、容器の外表面等の硬い3D物体を基材に用いてもよい。イメージング要素および基材間には、十分な凝縮結合がなければならない。基材は、レーザまたは感熱性イメージングで許容できない減成または変形を生じることなく、要素(モリブデン酸アミンを含む)のレーザイメージングに耐えられなければならない。基材には、レーザのIR照射出力をある程度まで吸収する透明または半透明な材料が好ましい。さもなければ、基材がイメージング要素のレーザ照射領域に対するヒートシンクとして作用し、層感度を減少させてしまう。この点に関し、マイラーポリエステルフィルムは、充満されていないポリプロピレンまたはポリエチレンよりも優れている。
【0021】
本発明で用いられる溶媒可溶性のモリブデン酸塩は、溶液から塗られ、乾燥されて略透明層を生じ得る。これらモリブデン酸アミンを含むフィルム形成組成物は、十分な付着力、透明性およびイメージング用の感熱性を有した層を提供する。このような層は、例えば透き通ったポリプロピレン等の市販用の透明ポリマーフィルム基材上で、フィルモーゲニック(filmogenic)特性および透明性を有することができ、略透明の感熱性シートまたはウェブ材料を供給する。溶媒可溶性のモリブデン酸アミンは、特定の有機溶媒可溶性を有するポリマー結合剤との混合時に優れた融和性も示す。これらの混合物は、サーモグラフフィック材料を供給するための、十分に透明で有益な感熱性層を形成することもできる。
【0022】
本発明は、市販用で入手可能な透明フィルムまたは基材への溶媒コーティングとしての適用時、またはこれと異なり透明または半透明ポリマー層上またはその内部での混合時に、安定性に優れ透明で、かつサーマルレーザイメージングまたは必要に応じサーマルプリントに対し感応特性を有する感熱性イメージング媒体を直接供給する、モリブデン酸アミン組成物についても提供する。ドライコーティングのコーティング重量は、通常0.5から20g/m、好ましくは1から10g/mの範囲内である。
【0023】
本発明は、好ましくは光学的に略透明または半透明なポリマー材料の基材にまたは基材内で付着する、モリブデン酸アミンを含む層を備えた感熱性イメージング材料についても提供する。これに適した基材には、紙、ラミネートおよび上述の種類のフィルムが含まれる。本発明の別の側面として、モリブデン酸アミンを含み、基材上に結合される熱性イメージング材料がある。
【0024】
モリブデン酸アミンは、サーモグラフィック層中で分散された形態でも有益となりえる。そのうちの幾つかは水中で容易に分散し、つや消し層を提供するために紙などの不透明基材上で用いることができる。従って、モリブデン酸アミンは、透明な/光沢のある材料および不透明な/光沢のない材料の両方に対し、状況に応じ用いることができる。
【0025】
固溶体中の、または熱可塑性ポリマーを含む溶融材料内で分散状体のモリブデン酸アミンを含んだ熱性イメージング材料は、転がして平らにする間、または容器等の形状に形成する間に、冷却によって生成されてもよい。
溶液中の、または光重合性液体組成物内で分散状体のモリブデン酸アミンを含んだ熱性イメージング材料は、組成物の光重合によって生成されてもよい。
【0026】
イメージング層中に様々な種類の添加剤が混合可能であり、それが特定の環境下では有益であることは、技術的通常スキルの1つによって理解されるであろう。例えばそのような添加剤としては、ポリマー結合剤、サーマルプリンタの性能を促進する穏やかな還元剤、染料または顔料などの着色剤、酸化防止剤および他の既知の安定剤、滑石または二酸化珪素などのブロッキング防止材料、およびレーザイメージングの熱分解生成物の吸着剤またはこの反応性物質が含まれる。
【0027】
溶液または懸濁液または分離層中で特に役立つ添加剤に、しばしばカラー生成剤として知られる電子供与性の染料前駆体がある。モリブデン酸アミンが、層の中でこのようなカラー生成剤と混合され、熱によりイメージングされた場合、例えばCOレーザの使用時に、カラー像が得られる場合がある。この色は、特定のフェノール等の一般的な顕色剤を使用する際に得られる色に相当する。弱いブロック像は、例えば100から120C(訳注:℃の誤記と推定)および1から10秒の接触時間でヒートシーラを用いることでも得られる場合がある。従って、モリブデン酸アミンは、少なくとも幾つかのこれらカラー生成剤のために、電子受容体および顕色剤として機能する。モリブデン酸アミンの低融点は、要求時にはモリブデン酸アミンがカラー生成剤と共に溶解され得ることを意味している。
【0028】
保護ポリマーまたはイメージング層上の他の層は、幾つかの環境下で有益となりえる。例えばこのような層は、感熱下にあるまたは感熱下にない、本発明の感熱層への機械的または化学的な損傷を防ぐまたは低減することができる。サーマルプリンタの性能促進のために、穏やかな還元剤を含む層を加えてもよい。このような層は、レーザイメージングの熱分解生成物であるエマナチオンを減少させるように機能することができる。このような層は、ラミネーションまたはコーティング等の既知の方法で適用され得る。
【0029】
上述の様に、像は熱の作用によって形成される。好ましくは、レーザ照射により部分的に熱を作用させるのがよい。これに適したレーザは、Nd−YAGレーザおよびCOレーザを含み高エネルギで照射するもので、最近の典型例は10,600nmの波長のものである。多くの場合、一般的に800〜1500nmの領域の波長で照射するダイオードレーザのような低エネルギレーザの使用が望まれる。一定の条件下では、要求される反応を引き起こすのにこのエネルギ入力では不十分であり、照射される組成物は適当な吸着剤を含むことが好ましい。
【0030】
IR吸着剤は、既知のものである。一般的に、本発明の目的に適した物質が混合され、また技術的通常スキルの1つによって選択され得る。本発明の使用で特に好ましいIR吸着剤は導電性ポリマーであり、これにより重合状態では、共役された結合モノマー(概してリング状)を含む材料を生じ、従って非局在化/正または負電化伝導を許容する。共役は、照射波長に適用されるよう制御され得る吸収シフトを可能とし、これはまたポリマー濃度にも依存する。
【0031】
適切な導電性ポリマーを供給するために共役され得るモノマーの例として、アニリン、チオフェン、ピロール、フランおよびその置換された誘導体がある。このようなポリマーは、低出力レーザからの望ましい熱伝達手段を提供することに加え、コーティング材から容易に拡散しないという利点を有している。これらは、さらにポリマー結合剤としても機能できる。しかしながら、これら物質の別の利点は、高負荷(重量で5%まで)であっても無色なことで、フタロシアニン(phthylocyanine(訳注:phthalocyanineの誤記と推定))等の従来使用されてきたモノマー種が、0.1%の重量負荷で、800nm付近にて吸収し、組成物に緑がかった色合いを与えるのとは対照的である。
【0032】
照射される成分に応じて、黒またはカラーの像が得られる。カラーは照射出力に依存しており、例えば青色は黒以上の出力が与えられる。
複合カラープリントは、例えば異なった照射波長に反応する異なるカラー生成剤(および必要なら吸収剤)を用いることで実施される。例えば、適切な異なるカラー生成剤を、基材上の異なった/重複する場所で供給することで、3色プリントを提供するために、UV、ダイオードおよびCOレーザが用いられてもよい。
【0033】
コーティングおよび活性化によって像化される初期カラーに制限はない。理論的に、初期または最終カラー(赤、青、緑、その他)は達成可能であり、像の発生に必要とされるエネルギ(例えば100〜140℃/2〜4ワット)は範囲内で制御可能である。加えて、生成される像のカラーのステップ変化を活性化(150〜200℃/3〜5ワット)により制御でき、同じコーティングから1つ以上の明瞭なカラーを得ることができる。
【0034】
一般に、顕色剤は、モリブデン酸アミンとして1つまたはそれ以上の範囲の水融和性遷移金属錯体がなりえる。
カラー生成剤は、フルオラン、フタリド、他等の、1つまたはそれ以上の範囲の安定した塩基性染料がなりえる。
【0035】
結合剤は、1つまたはそれ以上の範囲で、水分散インク用に水溶性またはアミン安定化エマルションポリマー、または溶媒分散または溶液インク用に溶媒可溶性ポリマーがなりえる。各ケースにおいてアクリルポリマーが使用可能である。
顔料は、炭酸カルシウム等の水分散性の無機または有機添加剤がなりえる。
ステアリン酸亜鉛等の界面活性剤または潤滑剤を含んで、1つまたはそれ以上の範囲の添加剤が利用できる。
【0036】
IR感応コーティングは、フラッドコーティング、フレキソ印刷/グラビア印刷等の一連の方法によって適用され得る。
IR感応コーティングは、接着性ラベル等の一連の基材に適用できる。
フィルムを形成する水性トップコートインクの保護層は、IR感応コーティング上に適用可能である。
【0037】
IR吸収剤は、1つまたはそれ以上の範囲で、水分散インク用に水親和性の有機または無機材料、または溶媒分散または溶液インク用(後述のケースでは、溶媒可溶性材料が好ましい)に溶媒親和性の有機または無機材料がなりえる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明について説明する。
〔実施例1〕オクタモリブデン酸ビス(2−エチルヘキシル)アミン
以下の合成は、US−A−4217292(実施例3)で示されている方法を、オクタモリブデン酸ドデシルアンモニウム用に適合させたものである。
【0039】
500mlのフランジフラスコ容器中には、酸化モリブデン(15.53g;アルドリッチ99%;フィッシャーのサブシーブ整粒器による10〜20μm粒径)、脱イオン水(300g)および塩化アンモニウム(8.6g)(アルドリッチ試薬)が入っている。ここにビス(2−エチルヘキシル)アミン(13.03g;アルドリッチ)を滴らせながら10分以上加え、その間、混合物を勢いよく攪拌した。その際、容器の中身は加熱され、攪拌とともに4時間かけて還流された。すると、容器の壁に付着して、ぼんやりとした青緑のタール素材が生成された。反応混合物を室温まで冷却すると、タール生成物はガラス状の固体を生成した。この固体は、多少の損失を伴いつつも濾過によって集められ、下漬けされ、引き続き脱イオン水で最終的にはイソプロパノールで洗浄された。ぼんやりとした青緑のタール生成物は、最後に65℃で24時間以上乾燥された。収量は26.2gであった。そして2−ブタノンに溶けて、淡緑色の溶液となった。白色素材(恐らくMoO)の痕跡が溶解せずに残った。
【0040】
〔実施例2〕ポリマー結合剤を用いないコーティング組成物
オクタモリブデン酸ビス(2−エチルヘキシル)アミン(10g)が、2−ブタノン(30g)に溶解された。溶解しない白色の固体不純物の痕跡が溶液から分離され、本発明のコーティング組成物として用いられる溶液を供した。
【0041】
〔実施例3〕熱性イメージング材料
実施例2で準備された溶液が、4つの基材、すなわち不透明な白色(二酸化チタン含有)マイラーフィルム、透き通ったマイラー(ポリエチレンテレフタラート)フィルム、家庭用アルミニウムホイル、およびポリプロピレンパッケージフィルム(UCB)それぞれにコーティングされた。ワイヤコーティングバーを使用して、ウェットフィルム上に12μmだけ供し、これを暖気で乾燥して、熱性イメージング材料材が与えられた。
【0042】
いずれのケースも、連続して光沢があり十分に接着されたフィルムが得られた。透き通ったマイラーおよびポリプロピレン上のコーティングは透明で、冷却時にも粘着性は有していなかった。乾燥されたコーティングの重量は、約3g/mであった。最終的にコーティングされた材料は、1000mm/secの走査速度で、直径0.3mmのCOスクライビングレーザビームにさらされた。マイラーおよびアルミニウムホイル基材用に3〜4ワットのエネルギをセットすると、グレー〜黒色の明瞭な英数文字像が得られた。半最適な適用である2ワット時には、像の読み取り性が低下する。ポリプロピレン基材の場合は、約6ワットで像が得られた。
【0043】
〔実施例4〕ポリマー結合剤を含んだコーティング組成物
オクタモリブデン酸ビス(2−エチルヘキシル)アミン(10g)の溶液が、2−ブタノン(30g)に溶解された。溶解しない白色の固体不純物の痕跡が溶液から分離された。この溶液4gは、重量で15%である4gのエルバサイト2041(イネオス(INEOS)製のメタクリル酸メチルホモポリマー樹脂のグレード)結合剤と共に混合され、コーティング溶液を供した。
【0044】
〔実施例5〕熱性イメージングフィルム
実施例4の溶液を、ワイヤ巻付けバー(通常12μm厚のウェットフィルムを供する)を使用してパッケージンググレードのポリプロピレンフィルム上にコーティングし、暖気で乾燥させることで、透明コーティングフィルムが生じた。観測された透明性は、モリブデン酸アミンおよびアクリル結合剤との十分な親和性を示している。乾燥コーティングの重量は2.8g/mであった。本発明の最終的なコーティングフィルムは、高い透明性を有していた。そしてこれは、1000mm/secの走査速度で、像を形成するように、直径0.3mmのCOスクライビングレーザビームにさらされた。3〜4ワットのエネルギセット時に、グレー〜黒色の明瞭な英数文字像が得られた。4ワット時は、やや像が向上しているのが観察された。2ワット時には像の読み取り性が低下し、適用が不十分であることが示された。
【0045】
〔実施例6〕赤色サーモグラフィックフィルム
2−ブタノン中のオクタモリブデン酸ビス(2−エチルヘキシル)アミン溶液の25%重量である0.4gまでが加えられ、2−ブタノン中のエルバサイト2044溶液(エルバサイト2044は、イネオス・アクリリックス(INEOS Acrylics)製のn−ブチルメタクリル酸ベースアクリル樹脂)の33%重量である1.0gと混合された。この組成物中には、市販用の電子供与性カラー生成剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製パルガスクリプト(Pergascript)赤I−6Bであり、ビスインドリルフタリド化合物と記述される)が溶解していた。結果的に淡い黄色がかったピンク色の溶液が、25ワイヤバーを用いて透き通ったマイラーフィルム上にコーティングされ、暖気によって乾燥された。透明フィルムが生じた。
【0046】
フィルムに対するヒートシーラを用いた100℃、接触時間10秒のブロックイメージングによって、淡い赤色の像が生じた。明瞭な赤色の像は、1000mm/secの走査速度および3ワットの出力で、直径0.3mmのCOスクライビングレーザビームを用いたイメージングから生じた。
【0047】
〔実施例7〕水分散インク
本発明のインク調合物中におけるIR吸収剤の存在効果が測定された。水ベースの青及び赤色のPVOH安定化分散(PBI2RNまたはPRI6Bカラー生成剤を含む)アクリル酸エマルションインクが評価された。
【0048】
以下の成分特性(% w/w)を備えた、本発明の“標準的”調合物が用いられた:
結合剤 16.0
活性顔料 7.0
カラー生成剤 7.0
流体 70.0
【0049】
様々な“活性”調合物が用いられ、それぞれIR吸収剤であるバイトロン(Baytron)P(HC スタルク(Starck))、導電性ポリマーを含んでいた。用いられたIR吸収剤の比率は、1.0,2.5および5.0%(w/w)であった。例えば、5.0%のバイトロンPを含む調合物中の組成物は:
結合剤 15.2
活性顔料 6.7
カラー生成剤 6.7
流体 64.4
IR吸収剤 5.0
であった。
【0050】
成分は:
結合剤 ゴーセノール(Gohsenol) GK−17
ポリビニルアルコールおよびテキシクリルアクリル酸エマルション
活性顔料 オクタモリブデン酸ビス(2−エチルヘキシル)アミン
およびオクタモリブデン酸ジ(シクロヘキシルアミン)
カラー生成剤 パルガスクリプト 青 I−2RN クリスタルバイオレット
ラクトン および 赤 I−6B;
流体 水、希釈水酸化アンモニウム、等;および
IR吸収剤 バイトロンP
から選択先された。
【0051】
940nmのロフィン・ディラス(Rofin Dilas)ダイオードレーザ、およびK−バー・2.5(K-Bar 2.5)のコーティング基材が像の形成に用いられた。
その結果を表1に示す。バイトロンPが存在する場合には、適切な像が得られた。
【0052】
【表1】

【0053】
青色インク調合物の試料は、ラファルタクラフラコート((Rafaltac Raflacoat)RC)およびHi−Fiポリエステル(PE)基材上で、K−バー・2.5によりコーティングされた。そして、コーティングされた基材は、Nd:YAG(1064nm)レーザでのテキストイメージングに用いられた。2つの調合物はバイトロンPを含んでおり、2つは含んでいなかった。その結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
バイトロンPが中に存在しないコーティングは、像を全く生じないまたは極わずかな文字を生じたのみであった。PEベースの試料では、RCベースのものよりもよい結果が得られた。像が得られた場合(すなわちバイトロンPの存在時)には、その像は鮮明かつ明確であった。
【0056】
〔実施例8〕溶媒分散インク
溶媒ベースのインクが用いられている点を除き、実施例7と同様の実験が行われた。
“標準的な”調合物の構成(% w/w)には:
結合剤 21.7
活性顔料 9.6
カラー生成剤 9.6
流体 59.1
が含まれていた。
【0057】
“活性”調合物は、IR吸収剤イリオディン(Iriodin)LS820(メルク(Merck))を含んでいた。5%(w/w)の“活性”調合物の組成は:
結合剤 19.5
活性顔料 8.6
カラー生成剤 8.6
流体 53.3
IR吸収剤 10.0
であった。
その結果を表3に示す。再度述べるが、IR吸収剤は像の形成を可能とする。
【0058】
【表3】

【0059】
〔実施例9〕溶媒分散溶液インク
アクリル酸メチルエチルケトン(MEK)溶液中の溶媒ベースのインクが用いられている点を除き、実施例7および8と同様の実験が行われた。
【0060】
インク調合物は、0.1%(w/w)プロ−ジェット(Pro-Jet)900NP(アヴェシア(Avecia))、IR吸収剤を含んでいた。幾つかの調合物は、さらにUV吸収剤を含んでいた。幾つかのケースでは、カラー生成剤(CF)は活性顔料(CD)と1:1または1:2の比率で存在していた。典型的な調合物は、以下で構成されていた(% w/w):
結合剤 23.7
活性顔料 4.6
カラー生成剤 4.6
UV吸収剤 6.7
流体 60.3
IR吸収剤 0.1
その結果を表4に示す。概して、十分な像が得られた。
【0061】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に像を形成する方法であって、
加熱または照射により色が変化する、モリブデン、タングステンまたはバナジウムのアミン化合物の有機溶媒溶液による基材のコーティングと、
前記コーティングに対する加熱または照射と、を備えるもの。
【請求項2】
基材上に像を形成する方法であって、
加熱または照射により色が変化する、モリブデン、タングステンまたはバナジウムのアミン化合物の分散水または懸濁液による基材のコーティングと、
前記コーティングに対する加熱または照射と、を備えるもの。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法において、
前記アミン化合物がモリブデン(VI)に対するもの。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記アミンは各アルキル基が12までの炭素原子を有する第2級または第3級アルキルアミンであり、
前記アミンは24までの炭素原子を有するもの。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法において、
前記コーティングは、有機ポリマー結合剤の使用も含むもの。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法において、
前記コーティングは、実質的に無色である電子供与性の染料前駆体を例とするカラー生成剤の使用も含むもの。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法において、
前記基材は可視光に対し十分に透明であるもの。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法において、
前記コーティングはレーザで照射されるもの。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記レーザ光は800〜1500nmの波長を有するもの。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の方法において、
前記コーティングは、レーザ照射を吸収するIR吸収剤をさらに含むもの。
【請求項11】
コーティングされた基材であって、
前記コーティングは、請求項1から請求項4のいずれかに定義されたアミン化合物を含み、可視光に対し十分に透明な層であるもの。
【請求項12】
請求項11に記載のコーティングされた基材において、
前記コーティングは、請求項5または請求項6で定義された成分をさらに含むもの。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載のコーティングされた基材において、
前記基材も可視光に対し十分に透明であるもの。
【請求項14】
請求項11から請求項13のいずれかに記載のコーティングされた基材において、
加熱または照射によりその内部に形成される像をも含むもの。
【請求項15】
請求項11から請求項14のいずれかに記載のコーティングされた基材において、
前記コーティングは、レーザ照射を吸収するIR吸収剤をさらに含むもの。
【請求項16】
請求項1から請求項4のいずれかで定義されたアミン化合物と、熱可塑性モノマーとの溶液。
【請求項17】
請求項1から請求項4のいずれかで定義されたアミン化合物と、光重合性モノマーとの溶液。
【請求項18】
請求項17に記載の溶液において、
前記溶液は、150℃またはそれ以下の流体であるもの。

【公表番号】特表2006−506259(P2006−506259A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506667(P2005−506667)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004894
【国際公開番号】WO2004/043704
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(503310545)シャーウッド・テクノロジー・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】