説明

優れた加工性を有する難燃性組成物

本発明は、(a)第1エチレンポリマー;(b)0.95g/cm3未満の密度で、不飽和脂肪族ニ酸無水物により変性されている第2エチレンポリマー;(c)難燃剤;及び(d)超高分子量ポリシロキサンを含む難燃性組成物である。本発明はまた、本難燃性組成物から製造される被膜、並びに本被膜をワイヤ又はケーブルの上に施すことにより製造されるワイヤ及びケーブル構造物も含む。本発明はまた、本難燃性組成物から製造される物品、例えば押出シート、熱成形シート、射出成形品、被覆布、建設資材、及び自動車用材料も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤ及びケーブル用途に有用な難燃性組成物に関する。本発明はまた、前記難燃性組成物から作られるワイヤ及びケーブル構造物に関する。さらに、本発明の難燃性組成物は、一般に、押出又は熱成形シート、射出成形品、被覆布、建設資材(例えば、屋根膜及び壁被覆材)、及び自動車用材料等の難燃性が必要な用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
一般に、ケーブルは、自動車、船舶、建物、及び工業用プラント等の密閉空間で用いるために難燃性でなければならない。このケーブルの難燃性の性能は、難燃性添加物とポリマー材料のブレンドからケーブル絶縁又は外部被覆物を作ることにより達成されることが多い。
【0003】
ポリマーと共に用いる難燃性添加物及び機構の例は、Menachem Lewis & Edward D.Weil, Mechanisms and Modes of Action in Flame Retardancy of Polymers, FIRE RETARDANT MATERIALS 31-68 (A.R.Horrocks & D.Price eds., 2001)、及びEdward D.Weil, Synergists, Adjuvants, and Antagonists in Flame-Retardant Systems, FIRE RETARDANCY OF POLYMERIC MATERIALS 115-145 (A.Grand and C.Wilke eds., 2000)に記載されている。
【0004】
ポリオレフィンベースの組成物中で用いる難燃性添加物は、金属水和物とハロゲン化化合物を含む。有用な金属水和物は水酸化マグネシウムと三水酸化アルミニウムを含み、有用なハロゲン化化合物はデカブロモジフェニルオキシドを含む。
【0005】
ポリオレフィンベースの組成物中の難燃性添加物量が、本組成物の難燃性性能に直接影響を与えうるため、本組成物中で高レベルの難燃剤添加物を用いる必要があることが多い。例えば、ワイヤ及びケーブル組成物は、75重量パーセントの無機充填剤又は25重量パーセントのハロゲン化添加物を含有し得る。残念なことに、高レベルの難燃性添加物を用いるとコストがかかることがあり、組成物の加工性が劣化し、並びに絶縁層又は被覆物層の電気的、物理的、及び機械的特性が劣化しうる。従って、コスト、加工特性、及び他の特性と難燃性性能の平衡を保つ必要があろう。とりわけ、高レベルの金属水和物は本組成物の粘度に著しく悪影響を及ぼし、それにより金属水和物の有用なレベルが制約され得る。
【0006】
ポリエチレンベースの組成物中の金属水和物の使用を開示する参考文献の例は、米国特許第5,317,051号、第5,707,732号、及び第5,889,087号を含む。これらの参考文献は、金属水和物の濃度を高め、望ましい機械的特性を保持する一方で、加工性の問題に適切に対処していない。
【0007】
とりわけ、米国特許第5,317,051号は、(a)ポリオレフィン樹脂、(b)不飽和カルボン酸により変性されたポリオレフィン、(c)難燃剤、及び(d)白化防止剤を含む組成物を開示する。この白化剤は、(1)鉱油、ワックス、又はパラフィン、(2)高級脂肪酸又はエステル、アミド又はこれらの金属塩、(3)シリコーン、(4)多価アルコールの部分脂肪族エステル又は脂肪族アルコール−、脂肪酸−、脂肪族アミノ−、脂肪酸アミド−、アルキルフェノール−、若しくはアルキルナフトール−エチレンオキシド付加物、及び(5)フルオロエラストマーからなる群から選択される。当該出願人は、シリコーン油、シリコーンオリゴマー、シリコーンゴム、及びシリコーン樹脂を当該発明で用いるシリコーンの例として開示した。最も好ましくは、高級脂肪酸により変性されたシリコーン油が同定された。
【0008】
米国特許第5,707,732号は、(a)ポリマーの1つを不飽和脂肪族ニ酸無水物により変性したエチレンポリマーのブレンドと、(b)金属水和物を含む組成物を開示する。この特許は、特許請求された組成物について有用であり得る慣用の添加物のリストを更に開示した。
【0009】
米国特許第5,889,087号は、(a)エチレンポリマーの1つを有機官能基により変性したエチレンポリマーのブレンド、(b)無機難燃剤、及び(c)シリコーン油を含む組成物を記載する。このシリコーン油の粘度は、25℃において0.65〜1,000,000センチストークスの範囲でもよく、好ましくは5,000〜100,000センチストークスの範囲、最も好ましくは10,000〜100,000センチストークスの範囲である。当該出願人は、高分子量ポリシロキサンを用いることにより達成されるいかなるメリットも教示しない。
【0010】
欧州特許第1116244Bl号の特許権者は、エチレンポリマーと金属水和物から作られるか、又はこれらを含有し、いくつかのエチレンポリマーが不飽和脂肪族ニ酸無水物を含有するポリマー組成物に関連する加工性の問題に着目した。加水分解型シラン基の効果を不飽和脂肪族ニ酸無水物の効果と対比すると、当該特許権者は、この加水分解型シラン基がこのポリマー組成物の望ましい機械的特及び天然充填剤のこのポリマーマトリックスとの相溶性を促進することを見出した。さらに、当該特許権者は、不飽和脂肪族ニ酸無水物がこのポリマー組成物の加工性に悪影響(すなわち、この溶融ポリマー混合物の不要な粘度増加)を及ぼすことを認めた。当該特許権者は、不飽和脂肪族ニ酸無水物を含有するエチレンポリマーの問題に取り組むのでなく、加水分解型シラン基を含有するポリマーに着目した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
望ましい難燃剤性能を保持しつつ、望ましい加工特性と従来の組成物以上のコスト利点があるポリマー組成物が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の難燃性組成物は、(a)第1エチレンポリマー;(b)0.95g/cm3未満の密度で、不飽和脂肪族ニ酸無水物により変性されている第2エチレンポリマー;(c)難燃剤;及び(d)超高分子量ポリシロキサンを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書で使用される第1エチレンポリマーという用語は、エチレンのホモポリマー又はエチレンのコポリマーと、低比率の1以上の3〜12個の炭素原子、好ましくは4〜8個の炭素原子を有するアルファ−オレフィンと、場合によってはジエン、又はこのようなホモポリマーとコポリマーの混合物若しくはブレンドである。この混合物は機械的ブレンド又は系内のブレンドであり得る。本アルファ−オレフィンの例は、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテンである。加えて、本第1エチレンポリマーは、エチレンのコポリマー及びビニルエステル(例えば、ビニルアセテート又はアクリル若しくはメタクリル酸エステル)等の不飽和エステル又はエチレンとビニルシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン)のコポリマーであり得る。
【0014】
本第1エチレンポリマーの密度は、1立方センチメートル当たり0.860〜0.950グラムの範囲、好ましくは1立方センチメートル当たり0.870〜0.930グラムの範囲でありうる。
【0015】
また、本エチレンポリマーのメルトインデックスは、10分間当たり0.1〜50グラムの範囲でありうる。本エチレンポリマーがホモポリマーである場合には、このメルトインデックスは好ましくは10分当たり0.75〜3グラムの範囲にある。メルトインデックスはASTM D-1238、条件E下で求められ、190℃及び2160グラムで測定される。
【0016】
エチレンと不飽和エステルからなる本第1エチレンポリマーのコポリマーは周知であり、従来の高圧法により製造しうる。本不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、又はビニルカルボキシレートであり得る。本アルキル基が有する炭素原子は1〜8個でもよく、好ましくは1〜4個である。本カルボキシレート基が有する炭素原子は2〜8個でもよく、好ましくは2〜5個である。本エステルコモノマーに帰属されるコポリマーの部分の範囲は、本コポリマーの重量基準で5〜50重量パーセントでもよく、好ましくは15〜40重量パーセントである。本アクリレート及びメタクリレートの例は、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートである。本ビニルカルボキシレートの例は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、及びビニルブタノエートである。本エチレン/不飽和エステルコポリマーのメルトインデックスの範囲は、10分当たり0.5〜50グラムでもよく、好ましくは10分当たり2〜25グラムである。
【0017】
エチレンとビニルシランからなる第1エチレンポリマーのコポリマーも周知である。好適なシランの例はビニルトリメトキシシランとビニルトリエトキシシランである。このポリマーは通常高圧法を用いて製造される。水分架橋型組成物を所望する場合は、このようなエチレンビニルシランコポリマーの使用が望ましい。場合により、水分架橋型組成物は、フリーラジカル開始剤の存在下でビニルシランによりグラフトされたエチレンポリマーを用いて得られうる。シラン含有エチレンポリマーを使用する場合には、本配合物中に架橋触媒(ジブチルスズジラウレート又はドデシルベンゼンスルホン酸等)又はもう1つのルイス若しくはブレンステッド酸又は塩基触媒を含むこともまた望ましい場合がある。
【0018】
好ましくは、本第1エチレンポリマーは、(i)0.92g/cm3未満の密度、90℃超のピーク示差走査熱量計(「DSC」)融点、及び多分散性指数(「Mw/Mn」)が3を超えるエチレンポリマー;(ii)0.90g/cm3未満の密度と多分散性指数が3未満であるエチレンポリマー;及び(iii)(i)と(ii)の混合物からなる群から選択される。
【0019】
本明細書で用いられる第2エチレンポリマーという用語は、(1)エチレンのホモポリマー又はエチレンと炭素原子が低比率で1以上の3〜12個であるアルファ−オレフィンと、場合によりジエンのコポリマーであり、(2)不飽和脂肪族ニ酸無水物により変性される。アルファ−オレフィンの例は、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンである。第2エチレンポリマーがエチレンと1以上のアルファ−オレフィンのコポリマーである場合、本アルファ−オレフィンの炭素原子は好ましくは4〜8個である。第2エチレンポリマーはまた、このホモポリマーとコポリマーの混合物又はブレンドであり得る。本混合物は機械的ブレンド又は系内ブレンドであり得る。好ましくは、第2エチレンポリマーはグラフト化又は共重合によって不飽和脂肪族ニ酸無水物により変性される。
【0020】
本第2エチレンポリマーの密度は、1立方センチメートル当たり0.95グラム未満でメルトインデックスは10分当たり0.1〜50グラムの範囲でありうる。
【0021】
本用語が第1か第2エチレンポリマーかに関係なく、エチレンポリマーは均質又は不均質であり得る。均質エチレンポリマーは、通常、多分散性(Mw/Mn)が1.5〜3.5で本質的に均一なコモノマー分布であり、示差走査熱量計で測定すると、単一で比較的低い融点を特徴とする。不均質エチレンポリマーは、通常、多分散性(Mw/Mn)が3.5を超え、コモノマー分布は均一でない。Mwは重量平均分子量として定義され、Mnは数平均分子量として定義される。
【0022】
低圧法又は高圧法は第1又は第2エチレンポリマーを製造しうる。これらは従来の方法により気相法又は液相法(すなわち、溶液又はスラリ法)で製造しうる。低圧法は、通常、1平方インチ当たり1000ポンド(「psi」)未満の圧力で行い、高圧法は、通常、15,000psi超の圧力で行う。
【0023】
これらのエチレンポリマーを製造するための典型的な触媒系は、マグネシウム/チタンベースの触媒系、バナジウムベースの触媒系、クロムベースの触媒系、メタロセン触媒系、及び他の遷移金属触媒系を含む。これらの触媒系の多くは、しばしば、チーグラー・ナッタ触媒系又はフィリップス触媒系と呼ばれる。有用な触媒系は、シリカ−アルミナ担体上のクロムあるいはモリブデンの酸化物を用いる触媒を含む。
【0024】
有用なエチレンポリマーは、高圧法により製造されるエチレンの低密度ホモポリマー(HP-LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びメタロセンコポリマーを含む。
【0025】
高圧法は、通常、典型的なフリーラジカル開始の重合であり、管状反応器又は撹拌式オートクレーブ中で行われる。管状反応器では、この圧力は25,000〜45,000psiの範囲内にあり、温度は200〜350℃の範囲にある。撹拌式オートクレーブでは、圧力は10,000〜30,000psiの範囲にあり、温度は175〜250℃の範囲にある。
【0026】
VLDPE又はULDPEは、エチレンと、炭素原子が3〜12個、好ましくは3〜8個である1以上のアルファ−オレフィンとのコポリマーでもよい。本VLDPE又はULDPEの密度は1立方センチメートル当たり0.870〜0.915グラムの範囲でもよい。本VLDPE又はULDPEのメルトインデックスは、10分当たり0.1〜20グラムの範囲でもよく、好ましくは10分当たり0.3〜5グラムの範囲である。エチレン以外のコモノマーに属するVLDPE又はULDPEの部分は、本コポリマーの重量基準で1〜49重量パーセントに範囲でもよく、好ましくは15〜40重量パーセントの範囲である。
【0027】
第3コモノマーは、例えば他のアルファ−オレフィン又は例えば、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、若しくはジシクロペンタジエンのジエンを含みうる。エチレン/プロピレンコポリマーは、一般にEPRといわれ、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマーは、一般にEPDMといわれる。第3コモノマーは、コポリマーの重量基準で1〜15重量パーセント量で存在でき、好ましくは1〜10重量パーセント量で存在する。本コポリマーはエチレンを含めて2又は3のコモノマーを含有するのが好ましい。
【0028】
本LLDPEは、直鎖状でもあるVLDPE、ULDPE、及びMDPEを含みうるが、一般に、密度は1立方センチメートル当たり0.916〜0.925グラムの範囲である。これはエチレンと、炭素原子が3〜12個、好ましくは3〜8個である1以上のアルファ−オレフィンのコポリマーであり得る。本メルトインデックスは、10分当たり1〜20グラムの範囲でもよく、好ましくは10分当たり3グラム〜10分当たり8グラムの範囲にある。
【0029】
好ましくは、第1及び第2エチレンポリマー基準の全ポリマー含量は、1重量パーセント〜35重量パーセントの範囲にある。
【0030】
好ましくは、本難燃剤は金属水和物であり、50重量パーセントから75重量パーセントの量で存在する。有用な金属水和物は、三水酸化アルミニウム(ATH又はアルミニウム三水和物としても知られる)と二水酸化マグネシウム(水酸化マグネシウムとしても知られる)を含む。当業者には他の難燃性金属水酸化物が既知である。これらの金属水酸化物の使用は本発明の範囲内にあると考えられる。
【0031】
本金属水酸化物の表面は、シラン、チタン酸塩、ジルコン酸塩、カルボン酸塩、及びマレイン酸無水物グラフトのポリマーを含む1以上の材料により被覆され得る。この平均粒子サイズは、0.1マイクロメートル未満〜50マイクロメートルの範囲であり得る。ある場合には、ナノスケールの粒子サイズを有する金属水酸化物を使用することが望ましいこともある。本金属水酸化物は天然起源あるいは合成のものであり得る。
【0032】
本難燃性組成物は他の難燃性添加物を含有し得る。他の好適な非ハロゲン化難燃剤添加物は、炭酸カルシウム、赤リン、シリカ、アルミナ、チタン酸化物、タルク、粘土、有機変性粘土、ホウ酸亜鉛、三酸化アンチモン、ウオラストナイト、雲母、マガジアイト、有機変性マガジアイト、シリコーンポリマー、リン酸エステル、ヒンダードアミン安定剤、オクタモリブデン酸アンモニウム、膨張性化合物、及び膨張性グラファイトを含む。好適なハロゲン化難燃剤添加物は、デカブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、及び1,4:7,10-ジメタノジベンゾ(a,e)シクロオクテン、1,2,3,4,7,8,9,10,13,13,14,14-ドデカクロロ-1,4,4a,5,6,7,10, 10a,11,12,12a-ドデカヒドロ−)を含む。
【0033】
好適な超高分子量ポリシロキサンは極めて高い粘度により示されるような超高分子量を有する。本超高ポリシロキサンの粘度は、室温で1,000,000センチストークス超、好ましくは5,000,000センチストークス超、最も好ましくは10,000,000センチストークス超である。好ましくは、本ポリシロキサンは0.2重量パーセントから15重量パーセントの量で存在する。好ましくは、本ポリシロキサンはポリジメチルシロキサンであり、メチル(トリメチルシロキシ末端基の場合)又はビニル(ビニルジメチルシロキシ末端基の場合)を含む種々の末端基で停止され得る。必要ではないが、材料の取り扱いの観点から、ポリエチレン又は他のポリマーキャリア中で超高分子量ポリシロキサンを濃縮物(マスターバッチ)として添加するのが有利である。
【0034】
加えて、本組成物は、酸化防止剤、安定剤、発泡剤、カーボンブラック、顔料、加工助剤、過酸化物、キュア促進剤、及び存在する充填剤を処理するための界面活性剤等の他の添加物を含有し得る。さらに、本組成物は熱可塑性あるいは架橋されたものであり得る。
【0035】
好ましい態様では、本難燃性組成物の限界酸素指数(「LOI」)は少なくとも37である。
【0036】
本発明のもう1つの態様では、好適なワイヤ及びケーブル構造物を製造するための種々の方法が意図され、当業者には容易に明白であろう。例えば、従来の押出法を使用して、ワイヤ又はケーブルに被せた被覆として難燃性組成物を施すことにより、難燃性のワイヤあるいはケーブル構造物を製造し得る。
【0037】
好適なワイヤ及びケーブル構造物は、ワイヤ又はケーブルに被せて被覆して製造され得るが、(a)銅電話ケーブル、同軸ケーブル、及び中〜低電圧の電力ケーブル用の絶縁及び被覆物と(b)光ファイバーバッファー及びコアチューブを含む。好適なワイヤ及びケーブル構造物の他の例は、ELECTRIC WIRE HANDBOOK (J.Gillett & M.Suba,eds.,1983)、及びPOWER AND COMMUNICATION CABLES THEORY AND APPLICATIONS (R.Bartnikas & K.Srivastava eds., 2000)に記載されている。さらに好適なワイヤ及びケーブル構造物の他の例は当業者に明白であろう。好都合には、これらのいかなる構造物も本発明の組成物により被覆可能である。
【0038】
本発明のもう1つの態様では、本発明は、1以上の電導体若しくは通信媒体、又は2以上の電導体若しくは通信媒体のコアを含む、各電導体、通信媒体、又はコアが(a)第1エチレンポリマー;(b)0.95g/cm3未満の密度で、不飽和脂肪族ニ酸無水物により変性されている第2エチレンポリマー;(c)難燃剤;及び(d)超高分子量ポリシロキサンを含む難燃性組成物により囲まれているケーブルである。
【0039】
本発明のさらにもう1つの態様では、本発明は、(a)第1エチレンポリマー;(b)0.95g/cm3未満の密度で、不飽和脂肪族ニ酸無水物により変性されている第2エチレンポリマー;(c)難燃剤;及び(d)超高分子量ポリシロキサンを含む難燃性組成物から製造されるか、あるいはこれを含有する製造物品である。好ましくは、本物品は、押出シート、熱成形シート、射出成形品、被覆布、建設資材、及び自動車用材料からなる群から選択される。
【実施例】
【0040】
次の非限定的な実施例は本発明を例示するものである。
【0041】
例示される化合物は、すべて、エチレンポリマーのブレンドにより製造され、(a)0.3重量パーセントのマレイン酸無水物グラフト、密度が0.899g/cm3、及びメルトインデックスが3.3グラム/10分である、10重量パーセントのDEFA-1373の超低密度エチレン/ブテンコポリマー、(b)Great Lakes Chemical Corporationから入手し得る0.20重量パーセントのジステアリル-3-3-チオジプロピオネート、及び(c)0.20重量パーセントのIrganox l0l0(商標)テトラキス[メチレン(3,5-シ゛-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロ-シンナメート)]メタンを含有した。Irganox 1010はCiba Specialty Chemicals Inc.から入手し得る。
【0042】
この例示される化合物において使用されるポリマーは、(a)28重量パーセントのビニルアセテートを含有し、6グラム/10分のメルトインデックスを有するエチレン−ビニルアセテートコポリマー(「EVA-1」);(b)9重量パーセントのビニルアセテートを含有し、2グラム/10分のメルトインデックスを有するエチレン−ビニルアセテートコポリマー(「EVA-2」);(c)Attane 4404(商標)ポリエチレン;及び(d)Affinity EG-8200(商標)ポリエチレンを含む。Attane 4404(商標)ポリエチレンは、4.0グラム/10分のメルトインデックス、0.904g/cm3の密度、124℃のピークDSC融点、及び3を超える多分散性指数のエチレン/オクテンコポリマーである。Affinity EG-8200(商標)ポリエチレンは、5.0グラム/10分のメルトインデックス、0.87g/cm3の密度、及び3未満の多分散性指数のエチレン/オクテンコポリマーである。4404(商標)ポリエチレン及びAffinity EG-8200(商標)ポリエチレンは両方ともThe Dow Chemical Companyから入手し得る。
【0043】
この化合物の混合物を260立方センチメートルのブラベンダーミキサー中175℃の最大溶融温度で製造した。混合後、本化合物をLOI又はUL-94垂直燃焼試験のために0.125インチのプラックに圧縮成形した。V0のUL-94等級は可能な限り最良の等級であり、材料が燃焼時に燃え上がる滴を出さずに急速に自己消火することを示す。トラウザー引き裂き、引張強さ、及び伸び試験のために、本混合物をプラックに圧縮成形するか、あるいはテープに押出した。
【0044】
超高分子量ポリジメチルシロキサンを含有する例示の材料について、本ポリジメチルシロキサン濃度は表に示した量の半分である。希釈剤がMB 50-002(商標)マスターバッチとしてDow Corning Corporationから入手し得る低密度ポリエチレンである50パーセントのマスターバッチの一部として本超高分子量ポリジメチルシロキサンを添加した。本ポリジメチルシロキサンは>1500万センチストークスのビニル終端したポリジメチルシロキサンであった。
【0045】
(比較例1〜5):超高分子量ポリシロキサン無添加
DEFA-1373超低密度ポリエチレンを含む比較例1〜5を全ポリマー含量が37.60重量パーセントであるように作製した。各例示の化合物も62.0重量パーセントの三水酸化アルミニウムを含有した。
【0046】
比較例1〜5を特定の物理的及び機械的特性並びに難燃性について評価した。当該評価の結果を表Iに示す。トラウザー引き裂き、引っ張り強さ、及び伸び試験のために、本混合物を0.02インチ厚のテープに押出した。
【表1】

【0047】
(比較例6〜9及び実施例10〜14)
トラウザー引き裂き、引っ張り強さ、及び伸び試験のために、比較例6〜9及び実施例10〜14に例示の化合物を0.02インチ厚のテープに押出した。本押出テープを179℃及び25rpmの押出速度で作製した。試料に対するブレーカープレート圧力を変えて表IIに示す。
当該試料も特定の機械的特性と難燃性について評価した。当該評価の結果も表IIに示す。
【表2】

【0048】
(比較例15〜18及び実施例19及び20)
上記成分と表IIIに示す成分に加え、比較例15〜18並びに実施例19及び20に対する例示の化合物は、0.38重量パーセントのステアリン酸と64.00重量パーセントの三水酸化アルミニウムを含有した。この評価シリコーン含有材料はDow Corning Corporation 4-7081(商標)樹脂変性剤とCrompton L45 60Kシリコーン流体を含んでいた。DC 4-7081は、Dow Corning Corporationによってメタクリレート官能基を持つ粉末化されたシロキサンとして記載されたシリコーンガムであった。Crompton L45 60Kは60,000センチストークスで、Crompton Corporationから入手し得るポリジメチルシロキサンである。
【0049】
トラウザー引き裂き、引っ張り強さ、及び伸び試験のために、例示の化合物を0.075インチの圧縮成形されたプラックに製造した。これらの例示の化合物を特定の機械的及び物理的特性と難燃性について評価し、この結果を表IIIに示す。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1エチレンポリマー;
(b)0.95g/cm3未満の密度で、不飽和脂肪族ニ酸無水物により変性されている第2エチレンポリマー;
(c)難燃剤;及び
(d)超高分子量ポリシロキサンを含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記第1エチレンポリマーがエチレンホモポリマー、エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、エチレン/不飽和エステルコポリマー、及びエチレン/ビニルシランコポリマーからなる群から選択される請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記第1エチレンポリマーが
(i)0.92g/cm3未満の密度、90℃超のピーク示差走査熱量計(「DSC」)の融点、及び多分散性指数(「Mw/Mn」)が3を超えるエチレンポリマー;
(ii)0.90g/cm3未満の密度と多分散性指数が3未満であるエチレンポリマー;及び
(iii)(i)と(ii)の混合物からなる群から選択される請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記第2エチレンポリマーがグラフト化又は共重合により変性されている、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
変性前の前記第2エチレンポリマーがエチレンホモポリマーとエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーからなる群から選択される請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記難燃剤が金属水和物である請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記金属水和物が三水酸化アルミニウムと二水酸化マグネシウムからなる群から選択される請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記金属水和物が50〜75重量パーセントの量で存在する請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリシロキサンがポリジメチルシロキサンである請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記組成物の限界酸素指数(「LOI」)が少なくとも37である請求項1〜9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
(a)(i)0.92g/cm3未満の密度、90℃超のピーク示差走査熱量計(「DSC」)の融点、及び多分散性指数(「Mw/Mn」)が3を超えるエチレンポリマー;
(ii)0.90g/cm3未満の密度と多分散性指数が3未満であるエチレンポリマー;及び
(iii)(i)と(ii)の混合物
〜なる群〜選択される第1エチレンポリマー;
(b)0.95g/cm3未満の密度で、不飽和脂肪族ニ酸無水物により変性されている第2エチレンポリマー;
(c)三水酸化アルミニウムと二水酸化マグネシウムからなる群から選択される金属水和物;及び
(d)超高分子量ポリシロキサン
を含む、限界酸素指数(「LOI」)が少なくとも37であるポリマー組成物。
【請求項12】
1以上の電導体若しくは通信媒体、又は2以上の電導体又は通信媒体のコアを含む、各電導体、通信媒体、又はコアが、
(a)第1エチレンポリマー;
(b)0.95g/cm3未満の密度で、不飽和脂肪族ニ酸無水物により変性されている第2エチレンポリマー;
(c)難燃剤;及び
(d)超高分子量ポリシロキサン
を含む難燃性組成物により囲まれているケーブル。
【請求項13】
前記第1エチレンポリマーがエチレンホモポリマー、エチレン/アルファ−オレフィンコポリマー、エチレン/不飽和エステルコポリマー、及びエチレン/ビニルシランコポリマーからなる群から選択される請求項12に記載のケーブル。
【請求項14】
前記第1エチレンポリマーが、
(i)0.92g/cm3未満の密度、90℃超のピーク示差走査熱量計(「DSC」)の融点、及び多分散性指数(「Mw/Mn」)が3を超えるエチレンポリマー;
(ii)0.90g/cm3未満の密度と多分散性指数が3未満であるエチレンポリマー;及び
(iii)(i)と(ii)の混合物
からなる群から選択される請求項12に記載のケーブル。
【請求項15】
前記第2エチレンポリマーがグラフト化又は共重合により変性されている請求項12に記載のケーブル。
【請求項16】
変性前の前記第2エチレンポリマーがエチレンホモポリマーとエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーからなる群から選択される請求項12に記載のケーブル。
【請求項17】
前記難燃剤が金属水和物である請求項12に記載のケーブル。
【請求項18】
前記金属水和物が三水酸化アルミニウムと二水酸化マグネシウムからなる群から選択される請求項17に記載のケーブル。
【請求項19】
前記金属水和物が50〜75重量パーセントの量で存在する請求項17に記載のケーブル。
【請求項20】
前記ポリシロキサンがポリジメチルシロキサンである請求項12に記載のケーブル。
【請求項21】
前記組成物の限界酸素指数(「LOI」)が少なくとも37である請求項12〜20に記載のケーブル。
【請求項22】
(a)第1エチレンポリマー;
(b)0.95g/cm3未満の密度で、不飽和脂肪族ニ酸無水物により変性されている第2エチレンポリマー;
(c)難燃剤;及び
(d)超高分子量ポリシロキサン
を含む難燃性組成物から製造されるか、又はこれを含有する製造物品。
【請求項23】
前記物品が、伸長又熱成形シート、射出成形品、被覆布、建設資材、及び自動車用材料からなる群から選択される請求項22に記載の物品。


【公表番号】特表2007−504339(P2007−504339A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526236(P2006−526236)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/029125
【国際公開番号】WO2005/023924
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(591123001)ユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスティックス・テクノロジー・コーポレイション (85)
【Fターム(参考)】