説明

充填剤入りポリマー材料の製造方法

本発明は、少なくとも一つの充填剤、好ましくは炭酸カルシウムCaCO3、を添加されており、加水分解を受けやすく、場合により吸湿性で重縮合により製造される熱可塑性ポリマー材料、特にPET、の製造方法において、未だ溶融していない、場合により軟化した、充填剤を含むポリマー材料が、真空条件、一定した攪拌又は混合及び高温の下に、製造され、この際、この目的で、添加の時に予備乾燥されておらず、500ppm超、特に1000ppm超の残留水分(HO)を有する充填剤が用いられる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの充填剤、好ましくは炭酸カルシウムCaCO3、が添加されており、加水分解を受けやすく、場合により吸湿性で、重縮合により製造される熱可塑性ポリマー材料、特にPET、の製造方法において、未だ溶融していない、場合により軟化したポリマー材料と充填剤との混合物が、減圧条件、一定した攪拌及び十分な混合並びに高温の下に製造され、その際この目的で、添加の時に予備乾燥されておらず、500ppmより多い、特に1000ppmより多い残留水分(HO)を有する充填剤が用いられる方法と、請求項13に従う使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
充填剤、例えば不活性な鉱物粉末、を添加した数多くのプラスチック及びポリマーが、技術水準から公知である。充填剤との混合は、通常、製品の平均コストを低くするため、又は製品にある性質を付与するために行われる。
【0003】
充填剤をポリマーに混入させることのできる数多くの方法も公知である。したがって、充填剤を、例えば、プラスチック溶融体に添加することができる。さらに、プラスチックと充填剤が低温で互いに混合され、次いで混合物が、加熱され溶融される「常温混合(cold mixing)」の可能性がある。
【0004】
加えて、充填剤を、予熱して柔らかくなったポリマー材料に添加し、この混合物を更なる工程になるまで溶融させない可能性がある。斯かる方法は、例えば、ヨーロッパ特許第1 401 623号から公知である。この特許においては、先ずはじめにポリマー材料を軟化した状態にし、次いで充填剤、この例においては炭酸カルシウム、を加えることによって、充填剤を、例えばポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィンに混入させる。次いで、混合物は、溶融及び/又は圧縮される。
【0005】
重縮合によって製造された熱可塑性材料、いわゆる重縮合物、特にポリエステル、とりわけPETを、充填剤、例えば、炭酸カルシウムと混合できることも、技術水準から公知である。斯かる充填剤入りポリエステルは、例えば、ボトルとして用いられる。
【0006】
しかしながら、重縮合物、特にポリエステルの場合、この種のプラスチックの特有の性質が、これらのプラスチックのリサイクリング及び/又は再生を扱いにくく問題の多いものにしていると一般的に考えられている。
【0007】
この点に関し、説明として、例えばPETは、二つの異なる構造で、即ち、非晶形又は結晶形又は部分的結晶形で、存在しうることに留意されたい。非晶質のPETは、通常、透明であり、結晶質のPETは、不透明又は白色である。非晶形又は結晶形で存在しうる全ての熱可塑性プラスチックの場合と同様に、PETに関しても100%の結晶化度は達成することができない。PETの構造の一部分のみが、配向することができる、即ち、結晶化する。結晶質及び非晶質の領域が交互に並んでいるため、部分結晶性の語を用いるのが正しい。PETに関して、約50%の結晶化度を達成することが可能である。このことは、この状態においては、分子鎖の半分が互いに配向している、即ち、それらの分子鎖が互いに平行に近接して並んでいる又は円状に巻き付いていることを意味する。したがって、分子鎖間の相互作用、特にファンデルワールス力が、部分的結晶質領域において必然的により大きくなる。分子鎖は、したがって相互に引き合い、よって分子鎖間の中間スペースがより小さくなる。
【0008】
しかしながら、PETの分子構造は、ある要因によって壊すことができる。
【0009】
第一の分解メカニズムは、分子鎖の熱分解によって引き起こされる。ここで、個々の分子間の結合は、過熱によって壊される。この理由で、質的に高級な製品を得るためには、適切な滞留時間及び適当な作業温度に注意するべきである。
【0010】
第二の関連する分解メカニズムは、加水分解である。すなわち、PETは、他の重縮合物と同様に、水及び/又は湿気の影響を受けやすいのである。
【0011】
水及び/又は湿気は、実質的に二つのソースから来る。一方では、PETは、吸水性の構造を有している。すなわち、PETは、水分を吸収する。この水分は、分子間中間スペースに埋め込まれており、いわゆる内在水分(inner moisture)としてポリマー自体内又はポリマーの内部にとどまる。元来のポリマーの内在水分は、その時その時の環境条件に依存する。PETは、約3000ppmの穏やかな範囲の或る内部平衡水分を有している。
【0012】
さらに、作業の間、やはり考慮しなければならない更なる水分が、ポリマー又はポリマーフレークの外側表面上に存在する(外在水分:outer moisture)。作業の間或いはPETのリサイクリング又は押し出しの間に、過剰の水分があると、どちらのソースからとは関係なく、PETのポリマー鎖は、加水分解により分解され、初期生成物、すなわち、テレフタル酸及びエチレングリコールが、化学反応において、部分的に再生成する。この分子の鎖長の加水分解は、最終製品の機械的性質の劣化及びプラスチックの性質にとっての不都合な変化の他に、激しい粘度の低下をもたらす。ダメージは、材料がもはやボトル、シート、その他の加工に用いることができないほど大きいことさえある。
【0013】
ポリエステルは、水分に対して、特に高温で、著しく敏感であり、特にポリマー溶融物は、約280℃で水と極めて早く反応し、PETは何秒かのうちに分解される。しかしながら、リサイクリングの間にPETを再び製造するためには、特に締めくくりの押出の間には、熱という形のエネルギーを、材料に必ず供給しなければならない。
【0014】
したがって、加水分解から重縮合物を守り、ポリマー鎖を維持するためには、再加工の前又は過剰な温度の上昇の前に全ての水分を可能な範囲まで材料から取り除かなければならず、作業の間、温度及び滞留時間の適当な調整に注意を払わなければならない。
【0015】
したがって、例えば、湿ったPETを加工又は製造する場合に、このPETが切断圧縮機(cutting compressor)に導入される場合には、ポリエステルに対する加水分解のダメージを防止する適当な対策による試みがなされなければならない。したがって、質的に適正な最終製品を得るためには、ポリエステルなどの敏感な重縮合物をリサイクル又は加工する場合には、プラスチックの表面に付着している外在水分だけでなく内在水分も、可能な範囲まで減らすことが必要である。先ずはじめに、適当な乾燥、特に100ppm未満、により、加水分解が限度内に維持される。
【0016】
このために、種々のプロセス工学的な可能性が利用できる。したがって、例えば、真空をかけることにより、又は温度を上げることにより、プラスチックに付着した外在水分を取り除くことを試みることができる。
【0017】
しかしながら、ここでは、他のプロセス工学的な問題も、確かに考慮しなければならない。そのため、例えば、非晶質のPETは、また、部分的に結晶質のPETも加熱されると付着する傾向があり、このことは、実際上大きな問題である。この問題は、一定した攪拌によってのみ解決される。
【0018】
さらに、ある種のプラスチックは、酸化的分解作用を受けやすく、その結果として、プラスチック分子の鎖長も短くなり、これが、プラスチックの性質、例えば、色、強度などに対する不都合な変化を引き起こすことがあることに留意すべきである。また、この酸化的分解を防止するため、斯かる敏感なプラスチックの加工を、空気回避の下で、例えば、不活性ガスの雰囲気下で実施するという可能性がある。
【0019】
したがって、効率的で経済的な重縮合物又はポリエステルの製造は、とりわけ、考慮に入れるべき多数の分解作用のために、極めて問題が多く、方法の特殊な実施の仕方を必要とする。全てのこの種のことが、重縮合物、特にポリエステル、殊にPETのリサイクリングを、とりわけ問題が多く扱いにくいものにしているので、斯かるプラスチックの経済的なリサイクリングは、方法の特殊な実施の仕方の開発で、初めて可能になる。
【0020】
もちろん、このことは、充填剤を添加した重縮合物及びポリエステルの製造にもあてはまる。しかしながら、充填剤入りの重縮合物の場合には、鎖長に対して悪影響のある多量の更なる水分がポリマーからだけでなく充填剤自体によっても導入されることを加えて考慮に入れなければならない。そのため、例えば、炭酸カルシウムは、非常に大きい比表面積を有しており、多量の水分、すなわち、20°及び60%の大気水分で100ppmを越える水分を結合する。
【0021】
従来、技術水準から公知のありふれた方法で、ポリマー材料から導入された外在及び内在水分を、ある程度効果的に取り除くことができたが、追加の更なる水分まで、充填剤経由で大量に導入され、これが困難をもたらし、斯かる方法が急速に不経済になり、得た製品、すなわち、充填剤を入りのポリマーの質が低下する。
【0022】
この問題は、充填剤を、添加する前に、別の工程で予め乾燥することで実際的に解決する。しかしながら、粉末状の充填剤の乾燥は、非常に困難で、複雑であり、費用がかかる。しかし、ポリマーの加水分解に関する上記の問題に起因して、斯かる予備乾燥を実施することは、そうしなければ重縮合物はあまりにもひどく分解し最終製品の質が低下するので、今まで実際問題として絶対に必要であった。さらに、このことは、全体の過程を長くする最初の追加の方法工程、すなわち、充填剤の予備乾燥を要するものである。
【0023】
そのほか、被覆された充填剤、すなわち、表面が被覆され、その結果として表面が相応して小さくなった充填剤を使用する可能性がある。斯かる被覆された充填剤は、水を結合するのがより少ないのでので、プラスチック材料に導入する水分がより少量である。しかしながら、斯かる被覆された充填剤は、やはり非常に高価であり、製造するのが複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、本発明は、充填剤入りで吸湿性の加水分解を受けやすい重縮合物、特にPETの製造方法であって、質的に高級な最終製品を供給し、同時に、迅速に経済的に効率的な態様で実施することのできる方法を創造するという課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この課題は、少なくとも一つの充填剤、好ましくは炭酸カルシウムCaCO3、が添加されており、加水分解を受けやすく、場合により吸湿性で、重縮合により製造される熱可塑性ポリマー材料、特にPET、の製造方法において、未だ溶融していない、場合により軟化したポリマー材料と充填剤との混合物が、減圧条件、一定した攪拌及び十分な混合並びに高温の下に製造され、その際この目的で、添加の時に予備乾燥されておらず、500ppmより多い、特に1000ppmより多い残留水分(HO)を有する充填剤が用いられる方法を提供することで解決される。
【0026】
驚くべきことに、試験により、吸湿性で加水分解を受けやすい重縮合物、特にPETを、本発明による方法を用いて、鎖長に悪影響を与えることなしに、予備乾燥していない未処理の充填剤とでさえ、たとえ500ppmを越える残留水分を有していても、混合及び/又は添加できることが、示されたのである。
【0027】
先に確認したように、ポリオレフィン又は他のプラスチックと比較して扱いにくい重縮合物の製造及び処理の際には、特にPETの場合には、より多くの特殊性を同様に考慮に入れなければならない。これらの特殊性は、重縮合物の加工を、非常に特殊なプロセスにしている。本発明による方法の実施は、適正な滞留時間で、当該方法が真空、高温、一定した攪拌下で実施されるように具体化されなければならない。
【0028】
厳密なパラメータは、ポリマー材料に依存するが、温度は、約110℃〜240℃の間であり、混合器具の周速度は、約2〜35m/秒の範囲である。約150ミリバール以下の真空にして、材料及び充填剤が、それらが圧縮される前に、約10分〜200分の平均滞留時間、反応器内にとどまる。しかし、これらの値は、単なる凡その指針である。
【0029】
その結果、重縮合物の酸化的分解とともに加水分解も妨げられ、ポリマーが、互いに付着するのが防げられる。充填剤との混合の際に、プラスチックは未だ溶融されていないこと、すなわち、充填剤は溶融物に添加されるのではないことが重要である。同時に、充填剤とポリマーとの間の激しい混合及び/又は予備均質化が行われ、その結果として、次の押し出しが容易になり、最終製品が質的により良くなる。
【0030】
この態様で、本発明による方法を行うことにより、充填剤の予備乾燥を全面的に省くことができ、未処理の予備乾燥をしていない充填剤でさえも、何ら複雑で費用のかかる熱前処理なしに使用することができ、このことが大きな経済的利点をもたらし、方法の実施を加速し、方法の全体の時間を短縮することを試験が示したのである。ポリマーの乾燥と充填剤の乾燥は、共通の工程で同時に行われて好都合である。ポリマーと充填剤との完成した最終混合物及び/又はマスターバッチの製造過程の少なくとも一部を、それにより、著しく簡易化し加速することができる。
【0031】
また、高価な予備乾燥した充填剤を使用すると、斯かる充填剤を乾燥した空気が充満したそれ自身のサイロに貯蔵しなければならないので、事業計画上の取り扱いが、より困難である。
【0032】
さらに、本発明の方法の実施においては、高価な被覆した又は層に覆われた充填剤の使用は必ずしも必要ではなく、方法の条件が守られている限り、すぐに利用することができて経済的な未処理の充填剤を、使用することができる。
【0033】
したがって、本発明による方法は、公知の方法よりも実務に関する幾つかの利点を有している。
【0034】
本方法の更なる有益な実施の形態が、従属請求項の特徴によりもたらされる。
【0035】
そのため、最終製品における良好な技術的性質をもたらす少なくとも一つの不活性な粉末状材料、例えば、カオリン、珪酸塩、二酸化チタン、好ましくは、炭酸カルシウムCaCOを、充填剤として用いることができる。
【0036】
表面処理をしていない又は被覆をしていない充填剤も、関連する加水分解を引き起こすことなしに、充填剤として好都合に用いることができ、既に上述したコストの低減になる。
【0037】
50μ未満、特に2〜15μの間の平均粒度又はD50値を有する充填剤を使用するのが好都合である。
【0038】
2〜11m/g、特に5〜9m/gの比表面積を有する充填剤を使用することも有益であり、その際、拡大された表面に結合されるより多量の水分は、本発明の方法にとっても不都合ではない。
【0039】
好都合な発明の実施によれば、充填剤の少なくとも部分量、特に全量の添加の時点で、ポリマー材料が、軟化した状態であるか、又は、30℃より上で、そのビカー軟化点未満であるが、なおその融点よりも約5℃だけ低い温度を示すかである。その結果、充填剤は、ポリマーフレークの表面に、よく付着し、均一によく分散することができる。ビカー軟化点は、ASTM DIN 1525;ISO 306により、「A」と決定される。製造者は、通常、ポリマーに関して、その値を表示する。
【0040】
場合により既に充填剤が添加されていてもよいポリマー材料の緩やかではあるが一定した運動は、本発明の方法にとって有益である。これが、粒子の表面の十分な結晶化が個々の粒子自体が互いに付着するのを妨げるまで、臨界温度領域における材料の凝集又は付着を防止する。さらに、この運動により、より高い加工温度が可能になる。同時に、処理容器又は切断圧縮機(cutting compressor)において、付着の停止に加えて穏やかで一定した運動のため、容器内の温度が、十分に高くなり、より正確にはその温度でとどまり、各粒子が、適正な温度まで保護されるように加熱され、より正確にはその温度を維持することを確実にする。その結果、充填剤も、ポリマーと緊密に混合され、ポリマーによって、特にポリマーの柔らかい周辺部によって取り込まれる。同時に、粒子の表面からの移動分子(migrating molecule)の分離が、上記運動によって促進される。この目的で、連続法では容器及び/又はバッチ法では混合器具のいろいろなレベルの器具が、好都合に使用される。温度をどのようにして材料に導入するかは、決定的なものではない。これは、前工程において又は処理容器内で、行うことができる。しかしながら、これは、回転混合器具それ自体によって行うのが好都合である。
【0041】
プラスチック材料の効率的な乾燥が、真空の助けにより達成される。また、この態様で行われる方法は、真空の使用により、比較することのできるシステムよりもエネルギーの使用がはるかに少なくてすむ。同時に、充填剤はポリマーとともに、残留水分を効果的に取り除かれる。また、施した真空は、材料からの汚染物の拡散過程を助け、また、汚染物の除去及びポリマーの汚染除去を確実にする。さらに、真空は、熱いポリマーの粒子及びフレークを酸化的な作用及び/又はダメージからも保護し、その結果、他のプラントシステムと比較してより高い粘度も達成することができる。基本的に、汚染除去は、いかなる不活性ガスを用いても可能であろう。しかし、これは、明らかにより高い費用を伴うものである。
【0042】
乾燥は、調節された温度及び選択された真空での材料の所定の好都合な最小滞留時間によって促進される。
【0043】
適正な滞留時間が、確実に、材料の最低限浄化が起こり、いろいろな基準、すなわち、対応するポリマーにおける移動生成物(migration products)の拡散速度及びポリマーの軟化温度又は溶融温度に従うようにする。
【0044】
本発明による方法は、基本的にバッチ法で又は連続的に行うことができる。温度、滞留時間及び真空等の方法の技術的パラメータが、全時間にわたって守られていることのみが確保されるべきであるのが好都合である。連続法が、規則正しい製造経過を保証するために、特に目的にかなったものであることが分かった。
【0045】
充填剤は、全システムにおける内在水分又は充填剤とポリマーとの混合物の水分が、100ppm未満であるような残留水分と量で用いられるのが好都合である。斯かる残留水分では、劣化が許容限界内に保たれる。充填剤は、通例、混合物の総重量に基づいて測定して最大約80重量%までの広い範囲で添加される。
【0046】
混合物又はポリマーが、全システムにおける残留水分が100ppmよりも明らかに少なく乾燥され、材料が、反応機内で、適正な時間である約1時間、適正な温度である約200℃未満に保たれていれば、それにより、粘度の上昇さえも達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明による方法は、いろいろな装置を用いて実施することができる。公報EP 123 771、EP 0 390 873、AT 396 900、AT 407 235、AT 407 970、AT 411 682、AT 411 235、AT 413 965、AT 413 673又はAT 501 154に綿密かつ具体的に記載された装置は、全てのそれらの有益な実施の形態とともに、本願開示に取り込まれており、本願開示の不可欠の構成要素である。斯かる装置はまた、実地に使用されており、例えば、「Erema Kunststoff Recycling System PC (Erema Plastic Recycling System PC)」として又は「ein- order zweistufige Vacurema-Anlagen (one-or two-stage Vacurema systems)」として知られている。
【0048】
使用されるポリマーに対する充填剤の投入点(dosing-in points)に応じて、混合の度合い、粘度及び添加の度合に関するいろいろな質を達成することができる。例えば、処理工程のための水分負荷を最小限にするため、幾つかの投入点を用いることも目的に通じることである。非常に高い添加の度合いを達成するためには、幾つかの投入点において同時に充填剤を投入することも同様に有用なことである。
【0049】
試験において、いろいろな変更形態が、吸湿性で加水分解を受けやすい熱可塑性重縮合物、特にPET、の添加するための方法を、どのようにして実施することができるかを証明した。
【0050】
そのため、充填剤の投入を、押出機の送り込み領域において行うことができる。押出機の前に接続された反応器の真空は、押出機のウォームまで作用する。そこでは、プラスチックフレークは、未だ完全には溶融していない。粉末状の予備乾燥していない充填剤は分散され、混合物は、真空及び温度の助けの下に、乾燥される。溶融までの滞留時間は、比較的短いが、より高い温度によって、部分的に補償される。水分を最小限にすることができ、それにより、重縮合物に対する悪影響も最小限にすることができる。重縮合物を、上流の処理工程で適正に乾燥し、結晶化することができ、場合に応じて、温度及び滞留時間を適正に選択することにより、その粘度を高めることさえできる。
【0051】
予備乾燥をしていない充填剤のこの供給の仕方は、特に非常に高い添加の度合いを達成するため、さらに下記に引用する以下の方法と組み合わせて用いることもできる。
【0052】
他の好都合な方法は、充填剤の投入が、反応器又は切断圧縮機(cutting compressor)内で行われることにある。全ての好都合な実施の形態における本発明による充填剤の混合並びに重縮合物の予備処理、仕上げ及び/又はリサイクリングのための方法は、通例、受け入れ容器又は反応器内で実施される。通例、少なくとも結晶化した、又は結晶化していない、又は非晶質の粒状物の形態の、新品として又は再生品として存在する、処理をするプラスチック材料は、この受け入れ容器又は反応器に入れられ、一定した混合又は運動及び/又は粉砕の下に高温で処理される。プラスチック材料の混合及び加熱のため、場合によっては幾つかの重なり合った平面上に配置され、垂直軸のまわりに回転することができ、粉砕しながら及び/又は混合しながら材料に作用する作業歯(working edges)を有する少なくとも一つの粉砕器具及び/又は混合器具が、反応器内に配置される。この粉砕器具及び/又は混合器具は、ポリマー材料に機械的エネルギーの負荷をかけ、これが、加熱とそれと同時のポリマー材料の混合及び運動を生じさせる。加熱は、その際、負荷された機械的なエネルギーの変換により又は摩擦により生じる。斯かる装置はまた、実地に使用されており、例えば、「Erema Kunststoff Recycling System PC (Erema Plastic Recycling System PC)」として又は「ein- order zweistufige Vacurema-Anlagen (one-or two-stage Vacurema systems)」として知られている。
【0053】
仕上げは、ポリマー材料の融解温度未満の、好ましくはガラス転移温度を超える温度で行われ、それにより、ポリマー材料は、均一かつ絶え間なく運動し、十分に混合される。その結果、プラスチック材料は、一工程で結晶化され、乾燥され、浄化される。
【0054】
充填剤の供給は、反応器の上から三分の一で行われる。これが、充填剤とフレークの乾燥及び混合に利用することのできる十分な滞留時間を可能にする。投入は、材料の最上面よりも下だけでなく、上でも行うことができる。最上面よりも下での投入が好ましい。
【0055】
利点は、前処理をする必要のない二以上の物質の流れの容易な処理にもある。充填剤も重縮合物も、適当に前処理又は予備乾燥をする必要がない。両方の物質の流れは、連続的に反応器内に運び込まれ、連続法で乾燥され及び/又は処理され、次の押出機に供給される。
【0056】
本発明による方法は、さらに別の方式にしたがい好都合な態様で、このために適正に設計された装置内で、二段階で行うこともできる。したがって、例えば、結晶化した及び結晶化していない粒状物又はフレークの混合物を、浄化する材料として、二段Vacurema反応器の結晶化乾燥器に入れることができる。
【0057】
積もる又は添加される重縮合物の二段処理がこの方法で行われ、それにより、前処理装置における前処理の間、材料の可塑化は生じず、真空下での同時の乾燥の際に、結晶化及び/又はある程度の予備圧縮が行われる。予備圧縮は、適正な温度で、機械的負荷及び/又は材料へのエネルギーの導入により引き起こされる。特に、温度の上昇又は調節は、材料の機械的負荷によって及び/又は少なくとも一つの混合要素及び/又は粉砕要素の回転エネルギーの、生じる摩擦損失に基づく熱エネルギーへの変換によって行われる。
【0058】
主処理装置における主処理の間、材料は、特に高温で−この温度は、主処理容器内の温度よりも低いか又はそれと同じでもよい−、さらに乾燥され、汚染除去され、必要であれば、結晶化され、高真空下で、ある一定の平均滞留時間保たれる。再び、機械的負荷又は材料の圧縮並びに少なくとも一つの混合要素又は粉砕要素によるエネルギーの導入が行われ、この要素は、その回転に基づき適正な熱エネルギーを材料に導入し、材料をさらに加熱する。真空下で行われる主処理は、残留水分を所定の平均値まで減少させ、揮発性の汚染物質が、材料から分離されることも引き起こす。主処理の間の温度は、材料の溶融温度未満に保たれる。しかしながら、この温度をできるだけ高く設定する試みはなされるべきである。
【0059】
ここでは、充填剤の投入は、結晶化乾燥器内で行われる。基本的に、例えば、上部、中間部又は底部などの全ての投入位置が可能である。表面処理をしていないため大きくなった表面を有し、そのためより多くの水分を吸収することも可能性な炭酸カルシウムを用いる場合は、滞留時間を高く保つため及び適正な乾燥を達成するためには、上から三分の一での投入が有効である。このバージョンでは、第二の主反応器容器が、充填剤及びポリマーのための更なる乾燥段階及び混合段階としての役割をする。
【0060】
この方法では、主処理装置だけでなく結晶化乾燥器も、連続的に稼働される。
【0061】
さらに別の変更形態が、主処理装置としての切断圧縮機の前に接続された二つの並列な結晶化乾燥器が、バッチ作業において稼働されていることにある。この例では、完成したポリマーと充填剤の混合物が、容器に充填され、真空下に加熱、乾燥、結晶化、混合などされる。規定のバッチ時間の後、前処理をした材料が、主処理装置に移される。しかし、前処理をした材料を、乾燥した空気の条件下で、外部の押出機に移すこともできる。バッチ法の利点は、非常に正確な混合比又は調節することのできる乾燥条件である。また、処理時間を、温度、排出空気水分及び/又は混合時間に応じて適合させることができる。結晶化乾燥器の充填は、標準大気下で行われるので、プラスチック及び/又は充填剤の投入は、問題を引き起こさない。投入のため、予め排気する必要がない。
【0062】
これらの全ての方法において、充填されたプラスチック材料は、締めくくりとして可塑化又は溶融され、この間に、プラスチック材料は、場合によっては濾過の後、特に真空条件下で、例えば押出機に供給され又は粒状物に加工される。
【0063】
さらに、本発明は、充填剤の特有の用途を提供するものである。この用途は、その好都合な実施の形態において、従属方法請求項の方法工程にしたがうものである。
【0064】
分散助剤の導入は、充填剤の高い割合を達成するための他の可能性である。助剤は、充填剤とともに、同じ処理工程において別々に又は前の処理工程において導入することができる。これらの分散助剤は、PETの表面を湿らせることになる。さらにこの結果として、この表面に粉末が付着する。この影響は、PETフレークの表面を体積に対して大きくするので、よりいっそう良く機能することが自明である。材料を節約するため、より薄いPETボトルがいつも製造されているので、この傾向は、均質化の有効性に適合するものである。分散助剤は、例えば、油質の、蝋質の、容易に付着する物質でよい。
【実施例】
【0065】
本発明による方法が、非限定の好都合な実施例を参照して、以下に示される。
実施例1:
粉砕された束(bunches)のフレークの形態のポリエチレンテレフタレート(PET)を、切断圧縮機内で100℃〜240℃、好ましくは130℃〜210℃まで加熱する。予備乾燥していない充填剤、すなわち、炭酸カルシウムCaCO3を上から、好ましくは材料の高さよりも下から添加する。粉砕器具又は混合器具の最外攪拌先端部の周速は、2〜35m/秒、好ましくは3〜20m/秒の範囲内である。150ミリバール以下、好ましくは50ミリバール以下、特に20ミリバール以下、とりわけ0.1〜2ミリバールの間の真空が、かけられる。PET材料及び充填剤は、10分〜200分、特に40分〜120分の平均滞留時間のあいだ反応器内にとどまり、次いでより低い領域に排出され、混合物を圧縮し溶融させる押出機に供給される。
【0066】
実施例2:
透明な、汚染物質を含まない、325kg/mの嵩密度、3500ppmの平均水分、及び0.74dl/gの平均固有粘度を有する飲料ボトルからの洗浄したポリエステル粉砕物を、銘柄Vacurema(登録商標) Basic 1108の切断圧縮機に導入する。材料混合物の平均予備処理温度は、約6ミリバールの減圧で、約200℃である。混合器具及び攪拌器具が、容器の内部で回転している。混合器具及び攪拌器具は、粉砕しながら材料に作用し、同時に、材料が摩擦により加熱されることを確実にする。これは、切断圧縮機内に混合塊を形成させ、その間に垂直方向の勾配が生じる。フレークは、ある一定の滞留時間で切断圧縮機を移動して通り抜ける。どちらかといえば、上部領域にある材料は、より粗くより低温であり、下部領域にある材料は、より柔らかくより小さな断片である。一定した運動によって、材料の凝集が防止され、ポリマーフレークは、終始自由に流動する状態のままである。
【0067】
さらに、粉末投入装置が、切断圧縮機に配置される。その装置により、655kg/mの嵩密度及び1280ppmの平均水分を有する被覆されたCaCOが、添加される。粉末状の形態の25%のCaCOの粉砕PET材料への投入が行われるが、より正確に言うと、材料が既に軟化した状態で存在する容器の下部領域に投入される。そのほか、添加は、上から行うこともできる。充填剤を、このようにして、軟化した材料とよく均質に混合し、次いで混合物を、押出機内で、溶融し、場合によりガス抜きをし、濾過し、粒状にする。
【0068】
押出機は、切断圧縮機に、その下部領域において、連結されている。混合器具は、軟化した材料を、145回転/分(rpm)のウォーム回転数、300kg/時間の押出量、295℃の溶融温度及び50/250メッシュの濾過で稼働される押出機の送り込み領域に移送する。
【0069】
実施例3:
この実施例は、わずかな違いがあるが、実施例2と同様に進行する。すなわち:
透明な、汚染物質を含まない、390kg/mの嵩密度、6500ppmの平均水分、及び0.75dl/gの平均固有粘度を有する飲料ボトルからの洗浄したポリエステル粉砕物を、銘柄Vacurema(登録商標) Basic 1108の切断圧縮機に導入する。材料混合物の平均前処理温度は、約7.1〜12ミリバールの真空で、約195℃である。
【0070】
さらに、820kg/mの嵩密度及び3280ppmの平均水分を有する被覆していないCaCOが、添加される。粉末状の形態の22%のCaCOのPET粉砕物への投入が行われる。
【0071】
押出機は、120回転/分(rpm)のウォーム回転数、294kg/時間の押出量、299℃の溶融温度及び50/250メッシュの濾過で稼働される。
【0072】
この態様で、質的に高級な、泡のない最終製品が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの充填剤、好ましくは炭酸カルシウムCaCO3、が添加されており、加水分解を受けやすく、場合により吸湿性で、重縮合により製造される熱可塑性ポリマー材料、特にPETの製造方法において、未だ溶融していない、場合により軟化したポリマー材料と充填剤の混合物が、真空条件、一定した攪拌及び十分な混合、並びに高温の下に製造され、その際、この目的で、添加の時に予備乾燥されておらず、500ppmより多い、特に1000ppmより多い残留水分(HO)を有する充填剤が用いられる方法。
【請求項2】
少なくとも一つの不活性な粉末状材料、例えば、カオリン、珪酸塩、二酸化チタン、好ましくは炭酸カルシウムCaCO3が、充填剤として使用されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表面処理をしていない又は被覆をしていない充填剤が、充填剤として使用されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
50μ未満、特に2〜15μの間の平均粒度又はD50値を有する及び/又は2〜11m/g、特に5〜9m/gの比表面積を有する充填剤が、充填剤として使用されていることを特徴とする請求項1〜3の一つに記載の方法。
【請求項5】
充填剤の少なくとも部分量、特に全量の添加の時に、ポリマー材料が、軟化した状態であるか、又は、30℃より上で、そのビカー軟化点(10N)未満であるが、なおその融点よりも低い温度を有していることを特徴とする請求項1〜4の一つに記載の方法。
【請求項6】
処理するプラスチック材料又は場合により既に充填剤と混合されたプラスチック材料が、一定した混合又は運動及び/又は粉砕の下にプラスチック材料の融解温度未満の、好ましくはガラス転移温度より上の温度で、排気することのできる少なくとも一つの受け入れ容器又は反応器内で加熱され、その結果、同時に、特に一つの工程で結晶化され、乾燥され及び/又は浄化され、その際、プラスチック材料の混合及び/又は加熱、特に70℃〜240℃、好ましくは130℃〜210℃の温度への加熱のため、場合により幾つかの互いに重なり合った平面上に配置され、特に垂直方向の軸の回りに回転することができ、粉砕及び/又は混合しながら材料に作用する作業歯(working edges)を備えた少なくとも一つの粉砕器具及び/又は混合器具が用いられ、それにより、加熱が、特に機械的エネルギーを負荷することにより行われ、それにより、好ましくは150ミリバール以下、好ましくは50ミリバール以下、特に20ミリバール以下、とりわけ0.1〜2ミリバールの間の真空下で処理が行われ、プラスチック材料が、10分〜200分、特に40分〜120分の平均滞留時間のあいだ反応器内にとどまることを特徴とする請求項1〜5の一つに記載の方法。
【請求項7】
方法が、一つの段階で、単一の反応器内で又は押出機の送り込み領域において行われ、場合により既に充填剤と混合されたプラスチック材料が、単一の作業工程で、特に単一の反応器内で加熱され、乾燥され、結晶化され、及び浄化され、及び/又はプラスチック材料の予備乾燥をして又はせずに及び/又は予備結晶化をして又はせずに、方法が行われることを特徴とする請求項1〜6に一つに記載の方法。
【請求項8】
方法が、幾つかの段階、特に二つの段階で行われ、その際、二以上の受け入れ容器又は反応器が、直列及び/又は並列に配置され、場合により既に充填剤と混合されている処理をするプラスチック材料が、これらの容器を順次通過し、それにより、好ましくは先行する請求項にしたがって処理条件が、少なくとも一つの、特に最後に充填される容器に関し及び/又はプラスチック材料が、特に主処理の処理温度に近い温度にされる前処理に関し、好ましくは上流の前処理において、適用されることを特徴とする請求項1〜7の一つに記載の方法。
【請求項9】
プラスチック材料が、第一の段階で、特に真空条件下、機械的エネルギーを負荷されることにより前処理を受け、その結果として、加熱され、高温で乾燥され、場合により同時に結晶化され、次いで、プラスチック材料の主処理が、起こりうる可塑化及び/又は溶融に先行する第二の段階で行われ、第二の段階において、特に真空条件下、運動下に機械的エネルギーを負荷することにより、プラスチック材料が再び乾燥され、さらに結晶化され、主処理は、特に前処理と比較して高温で行われ、主処理において主処理の温度は、特にプラスチック材料の可塑化温度及び/又は溶融温度より低く維持されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プラスチック材料が、連続的な流れにおいて前処理を受け及び/又は方法が、連続的に又は不連続的に又はバッチ法として行われることを特徴とする請求項1〜9の一つに記載の方法。
【請求項11】
充填剤が、全システムにおける水分及び混合物の水分が100ppm未満であるような残留水分及び量で使用されることを特徴とする請求項1〜10の一つに記載の方法。
【請求項12】
混合物が、仕上げが行われた後、締めくくりの、場合により圧縮工程、特に溶融及び/又は押出を受けることを特徴とする請求項1〜11の一つに記載の方法。
【請求項13】
添加の時に予備乾燥していない500ppmより多い残留水分を有する少なくとも一つの充填剤、好ましくは炭酸カルシウムCaCO、であって、この充填剤が添加され、加水分解を受けやすく、場合により吸湿性で、重縮合により製造される熱可塑性ポリマー材料、特にPETの、請求項1〜12の一つによる方法に従う製造のための充填剤の用途であって、それにより、未だ溶融していない、場合により軟化した充填剤入りポリマー材料が、特に排気することができ混合器具及び粉砕器具を備えた加熱可能な切断圧縮機内で、真空条件、一定した攪拌及び/又は十分な混合、及び高温の下に製造され、この混合物は、場合により締めくくりの圧縮工程を受ける充填剤の用途。

【公表番号】特表2011−516635(P2011−516635A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501059(P2011−501059)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国際出願番号】PCT/AT2009/000127
【国際公開番号】WO2009/121085
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(503433958)エレマ エンジニアリング リサイクリング マシネン ウント アンラーゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトフング (27)
【Fターム(参考)】