説明

充電器、携帯端末

【課題】通信中に充電を開始した場合に、通信を継続しながら経路を電力線通信に変更する。
【解決手段】本発明の充電器は、インターフェース変換手段を備える。インターフェース変換手段は、第1変換部と第2変換部とを有する。第1変換部は、端末通信信号とインターネットプロトコルを用いたIP通信信号との変換を行う。第2変換部は、IP通信信号と電力線通信信号との変換を行う。本発明の携帯端末は、無線通信手段、有線通信手段、通信インターフェース選択手段を備える。有線通信手段は、第1変換部とIPアドレス取得部を有する。IPアドレス取得部は、端末コネクタが接続されたことを検出したときに、第1変換部を介して、通信先の装置からIPアドレスを取得する。通信インターフェース選択手段は、無線通信手段での通信中にIPアドレス取得部がIPアドレスを取得した場合は、有線通信手段での通信に切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信手段と有線通信手段とを有する携帯端末と、その充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に従来の充電器と携帯端末の構成例を示す。充電器900は、AC/DCコンバータ910、充電コネクタ940、ケーブル部990を備える。AC/DCコンバータ910は、商用交流電力源322から供給された交流電力を直流電力に変換する。充電コネクタ940は、直流電力用の端子941、942を含んでおり、端子941、942は、ケーブル部990内の電源線991、992を介してAC/DCコンバータ910の直流電力の出力端子に接続されている。
【0003】
携帯端末800は、蓄電池810、充電回路820、端末本体モジュール805、端末コネクタ840を備える。端末コネクタ840は、直流電力用の端子841、842と有線通信用の端子843、844を含んでいる。充電回路820は、端末コネクタ840の直流電力用の端子841、842を介して外部から供給された直流電力を蓄電池810に充電する。端末本体モジュール805は、無線通信手段と有線通信手段(図示していない)を有している。無線通信手段は、3G無線通信や無線LAN通信を行うための手段である。有線通信手段は、携帯端末800内に記録された電話帳や各種設定を外部のコンピュータと、端末コネクタ840の有線通信用の端子843、844を介して通信するための手段である。例えば、USB(Universal Serial Bus)通信などが用いられている。
【0004】
近年、ホームネットワークの通信手段のひとつとして電力線通信(PLC:Power Line Communication)が注目されている。電力線通信は、通信装置を電源のコンセントに差し込むだけで通信経路を確保できる。この電力線通信は、給電とデータ通信を同一のケーブルで同時にできるため、例えば特許文献1では、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)等の携帯端末に電力線通信機能を持たせて充電と同時に通信を行う構成が開示されている。また、特許文献2では、充電器の内部に電力線通信機能を持たせ、携帯端末と充電器の通信は電力線通信とは異なる通信機能で通信する構成が開示されている。
【0005】
このような電力線通信機能を有する携帯端末および充電器を用いることで、携帯端末が充電中に電力線通信を用いて外部通信装置と通信できるようになる。これは消費電力の観点でも、無線通信を利用するより、有線通信を利用することで消費電力を低減できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−169004号公報
【特許文献2】特開2009−272769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術は充電を開始した状態から通信を開始する場合に有効な方法であり、通信中に充電を開始した場合には対応できない。例えば、携帯電話が着信を受けて通話が開始したときに、携帯電話のバッテリーの残量が少ない場合は、携帯電話を充電しながら通話を継続する場合が多々、見受けられる。実際に通話中にバッテリー残量が少なくなってきた場合には、通話を継続するために充電が必要と通知をする機能が多くの携帯電話に備わっている。同様に、携帯端末での通信中で充電が必要になることも多く、ほとんどの携帯端末は、充電が必要な状態になるとアラームで知らせる機能を有している。
【0008】
無線通信の利用を減らすことで消費電力を削減できるので、通信中に充電を開始した場合には、通信を継続させながら、充電ケーブルを利用した電力線通信に経路を変更できることが望ましい。
【0009】
本発明は、通信中に充電を開始した場合に、通信を継続しながら経路を電力線通信に変更できる携帯端末と充電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の充電器は、AC/DCコンバータ、インターフェース変換手段、充電コネクタを備える。AC/DCコンバータは、交流電力を直流電力に変換する。インターフェース変換手段は、第1変換部と第2変換部とを有し、携帯端末との有線通信の信号である端末通信信号と電力線通信の信号である電力線通信信号とを変換する。第1変換部は、端末通信信号とインターネットプロトコルを用いたIP通信信号との変換を行う。第2変換部は、IP通信信号と電力線通信信号との変換を行う。充電コネクタは、直流電力用の端子と端末通信信号用の端子を含んでいる。
【0011】
本発明の携帯端末は、蓄電池、充電回路、無線通信手段、有線通信手段、通信インターフェース選択手段、端末コネクタを備える。充電回路は、外部から供給された直流電力を蓄電池に充電する。有線通信手段は、第1変換部とIPアドレス取得部を有する。第1変換部は、有線通信の信号である端末通信信号とインターネットプロトコルを用いたIP通信信号との変換を行う。IPアドレス取得部は、端末コネクタが接続されたことを検出したときに、第1変換部を介して、通信先の装置からIPアドレスを取得する。通信インターフェース選択手段は、無線通信手段での通信中にIPアドレス取得部がIPアドレスを取得した場合は、有線通信手段での通信に切替える。端末コネクタは、直流電力用の端子と有線通信用の端子を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の充電器と携帯端末によれば、電力線通信を用いて通信先の装置からIPアドレスを取得できるので、通信中に充電を開始した場合に、通信を継続しながら経路を電力線通信に変更できる。また、従来の携帯端末の多くは、ハードウェアの構成としては、蓄電池、充電回路、無線通信手段、有線通信手段(ただし、第1変換部とIPアドレス取得部は有さない)、端末コネクタを備えている。本発明の充電器と携帯端末は、従来の携帯端末の構成を考慮した上で創作されているので、多くの携帯端末を、ソフトウェアの追加・変更だけで本発明の携帯端末に改造することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の充電器と携帯端末の構成例を示す図。
【図2】本発明の充電器と携帯端末の構成例を示す図。
【図3】本発明の携帯端末のより詳細な構成例を示す図。
【図4】本発明の充電器と携帯端末の使用例を説明するための図。
【図5】図4の場合の本発明の充電器と携帯端末の処理フローの概要を示す図。
【図6】本発明の充電器と携帯端末の別の使用例を説明するための図。
【図7】図6の場合の本発明の充電器と携帯端末の処理フローの概要を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付す。
【実施例1】
【0015】
図2に、本発明の充電器と携帯端末の構成例を示す。図3に本発明の携帯端末のより詳細な構成例を示す。充電器100は、AC/DCコンバータ910、インターフェース変換手段130、充電コネクタ140、ケーブル部190を備える。AC/DCコンバータ910は、商用交流電力源322から供給された交流電力を直流電力に変換する。インターフェース変換手段130は、第1変換部110と第2変換部120とを有し、携帯端末200との有線通信の信号である端末通信信号と電力線通信(PLC:Power Line Communication)の信号である電力線通信信号とを変換する。携帯端末200との有線通信としては、例えばUSB(Universal Serial Bus)通信などがある。第1変換部110は、端末通信信号とインターネットプロトコルを用いたIP通信信号との変換を行う。インターネットプロトコルを用いたインターフェースとしては、例えばEthernet(登録商標)を用いればよい。第2変換部120は、IP通信信号と電力線通信信号との変換を行う。第2変換部120の電力線通信用の端子は、AC/DCコンバータ910と商用交流電力源322とをつなぐ電力線に接続されている。充電コネクタ140は、直流電力用の端子941、942と端末通信信号用の端子143、144を含んでいる。端子941、942は、ケーブル部190内の電源線991、992を介してAC/DCコンバータ910の直流電力の出力端子に接続されている。端子143、144は、ケーブル部190内の通信線193、194を介して第1変換部に接続されている。
【0016】
携帯端末200は、蓄電池810、充電回路820、無線通信手段280、有線通信手段290、通信インターフェース選択手段230、端末コネクタ840を備える。無線通信手段280、有線通信手段290、通信インターフェース選択手段230は、端末本体モジュール205内に備えればよい。端末コネクタ840は、直流電力用の端子841、842と有線通信用の端子843、844を含んでいる。充電回路820は、端末コネクタ840の直流電力用の端子841、842を介して外部から供給された直流電力を蓄電池810に充電する。
【0017】
無線通信手段280は、3G無線通信や無線LAN通信を行うための手段である。有線通信手段290は、第1変換部210とIPアドレス取得部220を含んでいる。第1変換部210は、充電器100の第1変換部110と同じように、有線通信の信号である端末通信信号とインターネットプロトコルを用いたIP通信信号との変換を行う。IPアドレス取得部220は、端末コネクタ840が充電コネクタ140と接続されたことを検出したときに、第1変換部210を介して、通信先の装置からIPアドレスを取得する。
【0018】
より具体的には、以下のように処理すればよい。携帯端末200は、端末コネクタ840に、何らかのコネクタが接続され充電回路820によって蓄電池810への充電が開始されたことを検出する。有線通信手段290は、有線通信用の端子843、844に何らかのデバイスが接続されていることを検出すると、接続されたデバイスの情報を要求し(S110)、そのデバイスの情報を取得する(S120)。なお、充電器100と携帯端末200との間の有線通信にUSB通信を用いるのであれば、携帯端末200は、USB Device Descriptor要求を行えばよい。そして、充電器100は、USB Device Descriptor応答(クラスコード:0x02、サブクラスコード:0x02)を返せばよい。なお、充電器100がUSB Device Descriptor要求を行い、携帯端末200がUSB Device Descriptor応答を返す構成でもよい。接続されているデバイスが、インターネットプロトコルを用いた通信を行うデバイスであれば、端末コネクタ840が充電コネクタ140と接続されたと判断する。なお、インターネットプロトコルを用いたインターフェースとして、Ethernet(登録商標)を用いるのであれば、IPアドレス取得部220は、ブロードキャスト機能でDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol) Requestを送信し、DHCP Responseを受信すればよい。この処理によって、有線通信手段290は、インターネットプロトコルでの通信が可能となる。
【0019】
通信インターフェース選択手段230は、無線通信手段280での通信中にIPアドレス取得部220がIPアドレスを取得した場合は、有線通信手段290での通信に切替える。経路の変更は、Mobile IP(参考文献1:”IP Mobility Support for IPv4”, IETF, August 2002.)やマルチリンクPPP(参考文献2:特開2009−071803号公報)などの技術を用いればよい。
【0020】
このように、本発明の充電器と携帯端末は、電力線通信を用いて通信先の装置からIPアドレスを取得できるので、通信中に充電を開始した場合に、通信を継続しながら経路を電力線通信に変更できる。なお、図1の携帯端末と図2の携帯端末との相違点は、端末本体モジュールである。ところで、図1の端末本体モジュール805には、マイクロコンピュータが利用されていることが多く、この場合は、内部に具備されている手段はソフトウェアによって実現されている。つまり、端末本体モジュール805に対して、ソフトウェアの追加・変更を行えば、端末本体モジュール205に改造することが可能である。したがって、多くの携帯端末のユーザは、ハードウェアとしては充電器100を購入し、携帯端末のソフトウェアを追加・変更するだけで本発明を利用できる。
[具体的な処理フローの例1]
図4は、本発明の充電器と携帯端末の使用例を説明するための図である。図5は、図4の場合の本発明の充電器と携帯端末の処理フローの概要を示す図である。図4では、屋外受電盤310から商用交流電力が引き込まれ、商用交流電力源321、322、323から商用交流電力が提供される構成となっている。商用交流電力源323にはPLC装置330が接続されており、PLC装置330は、ホームネットワークから外部へのゲートウェイになっている。また、充電器100が商用交流電力源322に繋がっている。
【0021】
携帯端末200は、始めに無線通信手段を用いて3G無線通信を行っているとする。この通信中に、充電器100で充電を開始すると、上述の手順にしたがって、携帯端末200は、端末コネクタ840に何らかのコネクタが接続されたことを認識する。そして、携帯端末200は、デバイス情報を充電器100に要求する(S110)。充電器100は、当該充電器がインターネットプロトコルを用いた通信を行うデバイスであることを示す情報をデバイス情報応答として返す(S120)。次に、携帯端末200は、充電器100、PLC装置330を介して、外部通信装置500(図4には図示されていない)にIPアドレスを要求する(S130)。そして、携帯端末200は、外部通信装置500がIPアドレスを割り当てた結果を受け取る(S140)。携帯端末200は、3G無線通信を使った経路から電力線通信を使った経路に変更する(S150)。このようにして、充電開始をトリガとして通信手段が変更できる。
【0022】
なお、携帯端末200は、IPアドレス取得後に、ホームネットワーク内の他の通信装置に対してデータを要求する機能も有してもよい。例えば、図4では、ホームネットワーク内に電力線に接続された消費電力測定器340が備わっている。携帯端末200は、IPアドレス取得後に、消費電力測定器340に対して自動的に消費電力量の情報を要求する。消費電力測定器340は、消費電力量の情報を携帯端末200に送信する。これにより、携帯端末200は、充電開始とともに消費電力量情報を取得できる。
【0023】
[具体的な処理フローの例2]
図6は、本発明の充電器と携帯端末の別の使用例を説明するための図である。図7は、図6の場合の本発明の充電器と携帯端末の処理フローの概要を示す図である。図6でも、屋外受電盤310から商用交流電力が引き込まれ、商用交流電力源321、322、323から商用交流電力が提供される構成となっている。商用交流電力源323にはPLC装置330が接続されている。PLC装置330は、ホームネットワーク内のゲートウェイになっており、パソコンなどの通信端末360や無線LANアクセスポイント350と接続されている。また、充電器100が商用交流電力源322に繋がっている。
【0024】
携帯端末200の無線通信手段280には、無線LANの通信手段と3G無線の通信手段が備わっており、通信端末360のデータを無線LAN通信で受信し、3G無線通信側の通信機器へ転送するゲートウェイとして機能できるようになっているとする。
【0025】
携帯端末200が充電器100で充電を開始すると、携帯端末200は、端末コネクタ840に何らかのコネクタが接続されたことを認識する。そして、携帯端末200は、デバイス情報を充電器100に要求する(S110)。充電器100は、当該充電器がインターネットプロトコルを用いた通信を行うデバイスであることを示す情報をデバイス情報応答として返す(S120)。次に、携帯端末200は、充電器100、PLC装置330を介して、通信端末360にIPアドレスを要求する(S230)。そして、携帯端末200と通信端末360は、無線LAN通信のために設定していたIPアドレスを、電力線通信のために割り当て、無線LAN通信をOFFにする。(S240)。携帯端末200は、電力線通信を利用して通信端末360にデータを要求し(S250)、データを受け取る(S260)。携帯端末200は、通信端末360から電力線通信で受信したデータを3G無線通信で転送する。
【0026】
これにより、無線LAN通信と3G無線通信を利用してゲートウェイとして機能している携帯端末200も、充電時には無線LAN通信をOFFにし、有線通信にできるため、消費電力の削減が可能になる。
【符号の説明】
【0027】
100、900 充電器 110、210 第1変換部
120 第2変換部 130 インターフェース変換手段
140、940 充電コネクタ
143、144、841、842、843、844、941、942 端子
190、990 ケーブル部 193、194 通信線
200、800 携帯端末 205、805 端末本体モジュール
220 IPアドレス取得部 230 通信インターフェース選択手段
280 無線通信手段 290 有線通信手段
310 屋外受電盤 321、322、323 商用交流電力源
330 PLC装置 340 消費電力測定器
350 無線LANアクセスポイント 360 通信端末
500 外部通信装置 810 蓄電池
820 充電回路 840 端末コネクタ
910 AC/DCコンバータ 991、992 電源線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末用の充電器であって、
交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータと、
前記携帯端末との有線通信の信号である端末通信信号と電力線通信の信号である電力線通信信号とを変換するインターフェース変換手段と、
前記直流電力用の端子と前記端末通信信号用の端子を含んだ充電コネクタと
を備え、
前記インターフェース変換手段は、
前記端末通信信号とインターネットプロトコルを用いたIP通信信号との変換を行う第1変換部と、
前記IP通信信号と前記電力線通信信号との変換を行う第2変換部と
を有する
ことを特徴とする充電器。
【請求項2】
蓄電池と、
外部から供給された直流電力を前記蓄電池に充電する充電回路と、
無線通信を行うための無線通信手段と、
有線通信を行うための有線通信手段と、
前記直流電力用の端子と前記有線通信用の端子を含んだ端末コネクタと
を備えた携帯端末であって、
前記有線通信手段は、
前記有線通信の信号である端末通信信号とインターネットプロトコルを用いたIP通信信号との変換を行う第1変換部と、
前記端末コネクタが接続されたことを検出したときに、前記第1変換部を介して、通信先の装置からIPアドレスを取得するIPアドレス取得部と、
を具備し、
当該携帯端末は、さらに
前記無線通信手段での通信中に前記IPアドレス取得部がIPアドレスを取得した場合は、前記有線通信手段での通信に切替える通信インターフェース選択手段
も具備する
ことを特徴とする携帯端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−54637(P2012−54637A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193360(P2010−193360)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】