説明

充電方法

【課題】 蓄電池を劣化させることなく、設定した時刻に充電を完了させる充電方法を提供することができる。
【解決手段】 全末期充電時間Te=We/Ieを求め、これを末期充電の繰り返し回数Nで割算すると、一回当たりの末期充電時間ΔTe=Te/Nが求められる。末期充電許容時間Taと全末期充電時間Teとを比較し、末期充電許容時間Taが大きい場合には、繰り返し末期充電が行われ、N回繰り返された後に充電完了となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的大きな定電流で初期充電を行い、満充電に近い状態にした後、小さな定電流で末期充電を行って充電を終了する充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉛蓄電池に対する充電を比較的大きな定電流で行うと、充電末期や過充電時に、正極で多量の酸素ガスを発生し、これを水に十分還元できないため電解液中の水分量が減少し、電池の寿命が短くなる。また充電量を減らして電解液中の水分量の減少を抑制すると、充電量不足のため、負極が劣化し、充放電反応が起こり難くなって、電池寿命が短くなる。このような点より例えば特許文献1に示すように、比較的大きな定電流で満充電に近い状態まで充電し、その後、小さな定電流で全充電量が放電量の110%になるまで末期充電を行うことが提案されている。
【特許文献1】特開2001−339871号公報段落[0019]〜[0022]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の充電方法では末期充電が終ると充電を完了してしまう。充電終了後においては、わずかではあるが自然放電があるため、電終了後長い時間、その蓄電池を使用しないと、その蓄電池の電力により動作させる機器を十分動作させることができず、例えば予定していた時間動作させずに、蓄電池が充電を必要とする状態になってしまう。また充電終了後、使用までの時間が長いと、蓄電池の電解液の温度が低下し過ぎて、十分な電力を供給することができなくなる。
【0004】
また従来においては末期充電の電流値は例えば1Aの一定値とされていた。この電流値によれば末期充電期間は短くてすむが、1回の末期充電ごとに蓄電池の電解液の温度が15℃程度上昇し、蓄電池の電解液の温度は1日に平均的に約10℃低下する。従って例えばこの蓄電池の電力で動作する機器を毎日使用し、毎日充電を行うと、電解液温度が毎日約5℃累積加算上昇することになり、電解液温度が高温になり過ぎ、蓄電池が劣化する。
【0005】
そこで本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであって、蓄電池を劣化させることなく、設定した時刻または設定した時間で充電を完了させる充電方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1に記載した充電方法は、
電池電圧が所定電圧になるまで初期定電流で初期充電を行い、その初期充電の充電量に応じた末期充電を所定の末期定電流で充電する充電方法において、
前記初期充電が終了した時刻から、予め設定されている充電終了時刻まで、所定回数に亘って繰り返し末期充電を行う、
ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のうちで請求項2に記載した充電方法は、請求項1に記載した充電方法に加えて、
前記繰り返し行われる末期充電の一回当たりの充電時間は、
前記初期充電の充電量から算出される末期充電量と、前記所定回数と、前記所定の末期定電流とから求められる、
ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のうちで請求項3に記載した充電方法は、請求項2に記載した充電方法に加えて、
前記初期充電が終了してから充電終了時刻になるまでの時間が一定時間を超えた場合には、前記繰り返し行われる末期充電の全末期充電時間が延長される、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した充電方法によれば、
充電終了時刻まで繰り返し充電を行っているので、蓄電池の冷却を防止することができる。特に使用者の長期休暇等により、しばらく蓄電池を使用しない場合においても蓄電池の冷却を防止するとともに、自然放電を防止することができる。また、末期電流を連続して供給していないので、蓄電池の電解液温度の上昇が過度にならないため、電解液の減少を抑制することが可能となるとともに、蓄電池寿命を延ばすことができる。
【0010】
請求項2に記載した充電方法によれば、
繰り返し行われる末期充電の一回当たりの充電時間は、初期充電の充電量から算出される末期充電量と、所定の繰り返し回数と、所定の末期定電流とから求められる。即ち、この末期充電量を所定の末期定電流で割算することにより、全末期充電時間が求められる。この全末期充電時間を所定の繰り返し回数で割算することにより、一回当たりの末期充電時間を求めることができる。
【0011】
請求項3に記載した充電方法によれば、
前記初期充電が終了してから充電終了時刻になるまでの時間が一定時間を超えた場合、例えば12時間以上の場合では、繰り返し行われる末期充電における充電休止期間内に、自然に放電する量が多くなる。これを防止するために、全末期充電時間を延長することにより、自然放電した分をこの延長した充電時間分で補うことが可能となる。
【0012】
以上の発明によれば、蓄電池を劣化させることなく、設定した時刻または設定した時間で充電を完了させる充電方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の充電方法について具体化した実施形態を図面を参照して詳細に説明する。最初に図1〜図5を用いて本実施形態の構成および作動を説明する。
(実施例1)
【0014】
本発明の実施例1の手順を図1および図2に、また、本実施例1の方法が適用される充電器のブロック図を図3に示す。商用3相交流電源11より、交流電力が全波整流部12に供給され、その全波整流部12の直流−直流変換部13で直流電力の変換がなされる。全波整流部12の出力はインバータ14で高周波の交流電力に変換され、この高周波交流電力はトランス15で昇圧されて整流部16へ供給される。整流部16から、直流電力が電流検出部17を通じて蓄電池18へ供給され、蓄電池18が充電される。電流検出部17で充電電流が検出され、この充電電流が設定値になるように、インバータ制御部19はインバータ14のスイッチング素子に対するスイッチング幅を制御する。
【0015】
蓄電池18の電圧(電池電圧)Vcが電圧検出部21で検出され、この検出された電池電圧Vcは充電の進行と共に上昇するが、電池電圧Vcがあらかじめ決めた所定電圧Vfになると所定電圧検出部22で検出される。この所定電圧Vfは、電池電圧Vcの上昇曲線における変曲点と想定される電圧とすることが多いが、必ずしもその変曲点電圧でなく、例えば変曲点電圧以下の適当な値としてもよく、厳密な値に固定する必要はない。充電器全体の充電制御は主制御部23により行われ、各種表示が表示部24に表示される。起動スイッチなどの開始設定部25により充電動作が開始される。また時刻を出力する時計26、記憶部27が設けられ、末期定電流値Ie、末期充電の繰り返し回数N等の所定値が記憶されている。所定電圧検出部22には前記所定電圧Vfが設定されている。
【0016】
本実施例においては終了時刻設定部31が設けられ、充電を終了させたい時刻を設定できるようにされる。終了時刻設定部31はディジスイッチ、キーボードスイッチ、マウスなどのコンピュータを用いた入力手段など各種のものを用いることができる。更に初期充電量算出部32、末期充電時間算出部33が設けられている。
【0017】
次に本実施例の手順について図1および図2により説明する。図3の充電器が交流電源11に接続されたかを調べ(S1)、接続されていると、充電の開始設定が設定部25になされたか、例えば開始スイッチがONにされたか調べ(S2)、開始設定がなされると蓄電池18に対し、定電流で初期充電を開始する(S3)。蓄電池18に許される範囲で大きな電流、例えば400Ah蓄電池においては80Aの定電流Iiで充電を行う。つまりこのような定電流Iiが蓄電池18へ供給されるように、インバータ制御部19はインバータ14を制御する。また初期充電の時間を検出するため、充電開始時刻tsを記憶部27に記憶する(S4)。
【0018】
所定電圧検出部22で電池電圧Vcが所定電圧Vfに達したかを調べる(S5)。電池電圧Vcは図4〜6に示すように、充電が開始されると上昇し、満充電に比較的近くなると、充電時間に対する電池電圧Vcの上昇曲線36において変曲点Pfが生じる。この時の電圧がいわゆる充電上昇曲線36における変曲点電圧である。電池電圧Vcが所定電圧Vf、例えば変曲点電圧と想定されるあらかじめ決めた電圧になったことが検出されると、末期充電時間算出部33で全末期充電時間Teを算出する(S6)。詳細に説明すると、初期充電終了時刻tfから記憶部27内の充電開始時刻tiを差し引いて初期充電を行った時間Tiを求め、この初期充電時間Tiと初期充電における充電電流Iiとを乗算して初期充電の充電量Wiを求める。この初期充電量Wiは一般的に、また経験的に満充電の80〜90%程度であることが知られている。また満充電の105〜120%程度に充電をしておくのがよいとされている。従って、例えば初期充電により満充電の80%まで充電されたとし、末期充電により、満充電の110%まで充電すると末期充電による充電量はWe=(30/80)×Wiであるので、末期充電における末期定電流値Ieでこれを割算すると、全末期充電時間Teが求められる。即ち、Te=We/Ieとなる。
【0019】
次に、終了時刻teが設定されているかを調べ(S7)、終了時刻teが設定されてあれば、記憶部27より、末期定電流値Ieおよび末期充電の繰り返し回数Nを読み出し(S8)、末期充電時間算出部33で、全末期充電時間Teを末期充電の繰り返し回数Nで割算することによって、一回当たりの末期充電時間ΔTeが求められる(S9)。即ち、ΔTe=Te/Nとなる。これらのTeおよびΔTeは、末期充電時間算出部34で計算される。
【0020】
その後、充電終了時刻teから初期充電終了時刻tfを引き算して、末期充電許容時間Taを算出(S10)する。即ち、Ta=te−tfとなる。末期充電許容時間Taと全末期充電時間Teとを比較し(S11)、末期充電許容時間Taの方が大きい場合には、繰り返し行われる末期充電の一回当たりの休止時間が算出される(S12)。即ち、ΔTb=(Ta−Te)/(N−1)となる。その後、繰り返し末期充電が行われ(S13〜S17)、N回繰り返された後に充電完了となる(S18、図4参照)。
【0021】
このように充電終了時刻teまで繰り返し充電を行っているので、蓄電池18の冷却を防止することができる。特に使用者の長期休暇等により、しばらく蓄電池18を使用しない場合においても蓄電池18の冷却を防止することに加えて、自然放電を防止することができる。また、末期電流を連続して供給していないので、蓄電池18の電解液温度の上昇が過度にならないため、電解液の減少を抑制することが可能となるとともに、蓄電池寿命を延ばすことができる。
【0022】
一方、ステップS7において充電終了時刻teが設定されていない場合には、末期定電流Ieで全末期充電時間Teだけ連続充電して(S19)、充電完了となる(S18、図5参照)。
【0023】
また、ステップS11において、末期充電許容時間Taが全末期充電時間Te以下の場合には、末期定電流Ieで末期充電許容時間Taだけ連続充電して(S20)、充電完了となる(S18、図6参照)。
(実施例2)
【0024】
次に、実施例1に加えて、繰り返し行われる末期充電の休止期間内に起きる自然放電を防止するために、次のようにすることが可能である。即ち、初期充電がで終了してから充電終了時刻teになるまでの時間Taが非常に長く一定時間を超えた場合には、全末期充電時間Teを延長することによってこれを防止することが可能となる。即ち、Te=We/Ie+αとする。延長時間αに算定には様々な方法があるが、例えば、末期充電許容時間Taが12時間を超える場合には、12時間を超える毎に約10分の延長時間とする方法が採られる。この時間は、12時間内に自然放電する放電量を補う分の充電量に相当するものである。即ち、所定時間Tc(この場合12時間)とし、単位延長時間をTd(この場合10分)とする。B=Ta/Tcを算出し、この値Bの整数部分をMとして、α=M×Tdと決定する。例えば、Ta=25時間とした場合、B=25/12=2.083・・・となるので、M=2となる。従って、α=2×10分=20分となる。このように、実施例1におけるステップS6において、Te=We/Ie+αとすることも可能である。
【0025】
(応用例等)
なお、本発明は上記の実施例に限定するものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な実施が可能である。例えば、実施例1において、充電終了時刻teを設定するかわりに、充電終了時間、つまり充電を開始してから充電が終了するまでの時間Tgを設定してもよい。この場合は実施例1のステップS7においては、充電終了時間Tgが設定されているかどうかを判定し、ステップS10において、末期充電許容時間Taの算出を、初期充電時間Tiを時間Tgから差し引いた残りTa=Tg−Tiとすればよい。
【0026】
また、初期充電における定電流は、初期充電時間Tiの間、必ずしも一定にしておくことなく、例えば特許文献1に示すように、適当に段階的に定電流値を減少させてもよい。また蓄電池18の電力を利用する機器を動作させている間における放電量を求めておき、この放電量を、初期充電における充電流Wiとして用いてもよい。本発明は3相交流電力のみならず単相交流電力を整流して充電する場合にも適用できる。
【0027】
また、図3に示した充電器はコンピュータにより機能させることもできる。この場合は図1および図2に示した各ステップをコンピュータに実行させるための充電プログラムをCD−ROM、磁気ディスクなどの記録媒体から、あるいは通信回線を介してコンピュータにダウンロードして、そのプログラムを実行させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1を示す流れ図である。
【図2】実施例1を示す流れ図である。
【図3】実施例1の充電器のブロック図である。
【図4】実施例1の充電開始からの蓄電池電圧の変化特性例を示す図である。
【図5】実施例1の充電開始からの蓄電池電圧の変化特性例を示す図である。
【図6】実施例1の充電開始からの蓄電池電圧の変化特性例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
11 交流電源、12 全波整流部、13 直流−直流変換部、14 インバータ、15 トランス、16 整流部、17 電流検出部、18 蓄電池、19 インバータ制御部、21 電圧検出部、22 所定電圧検出部、23 主制御部、24 表示部、25 開始設定部、26 時計、27 記憶部、28 貫通孔、31 終了時刻設定部、32 初期充電量算出部、33 末期充電時間算出部、36 充電上昇曲線、37 初期充電定電流値。
【0030】
Vc 充電電圧、Vf 所定電圧、Pf 変曲点電圧、Ii 初期定電流値、Ie 末期定電流値、ti 充電開始時刻、tf 初期充電終了時刻、te 充電終了時刻、Wi 初期充電量、We 末期充電量、N 末期充電繰り返し回数、J 末期充電カウント回数、Ti 初期充電時間、Te 全末期充電時間、ΔTe 一回当たりの末期充電時間、ΔTb 一回当たりの末期充電休止時間、Ta 末期充電許容時間、Tc 所定時間、B 時間比率、M 整数部分、Tg 充電終了時間、α 延長時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池電圧が所定電圧になるまで初期定電流で初期充電を行い、その初期充電の充電量に応じた末期充電を所定の末期定電流で充電する充電方法において、
前記初期充電が終了した時刻から、予め設定されている充電終了時刻まで、所定回数に亘って繰り返し末期充電を行う、
ことを特徴とする充電方法。
【請求項2】
前記繰り返し行われる末期充電の一回当たりの充電時間は、
前記初期充電の充電量から算出される末期充電量と、前記所定回数と、前記所定の末期定電流とから求められる、
ことを特徴とする請求項1に記載の充電方法。
【請求項3】
前記初期充電が終了してから充電終了時刻になるまでの時間が一定時間を超えた場合には、前記繰り返し行われる末期充電の全末期充電時間が延長される、
ことを特徴とする請求項2に記載の充電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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