先進の血管内移植片
【課題】血管の形態に合致するデバイスを提供する。
【解決手段】身体通路、特に血管疾病を有する血管を治療するシステムであって、該システムは、低プロフィルの投入形態と、治療されるべき血管もしくは身体通路の形態に合致する展開形態とを有する血管内移植片(10)、ならびに、種々のコネクタ部材(24)およびステント(40)を含む。上記移植片(10)は膨張可能移植片本体区画(13)から作成されると共に、二分岐とされ得る。移植片本体区画(13)の各端部には一個以上の膨張可能環状部(16)が配設される。各膨張可能環状部(16)の間にはこれらの環状部と流体連通する少なくとも一本の膨張可能チャネル(22)が配設される。
【解決手段】身体通路、特に血管疾病を有する血管を治療するシステムであって、該システムは、低プロフィルの投入形態と、治療されるべき血管もしくは身体通路の形態に合致する展開形態とを有する血管内移植片(10)、ならびに、種々のコネクタ部材(24)およびステント(40)を含む。上記移植片(10)は膨張可能移植片本体区画(13)から作成されると共に、二分岐とされ得る。移植片本体区画(13)の各端部には一個以上の膨張可能環状部(16)が配設される。各膨張可能環状部(16)の間にはこれらの環状部と流体連通する少なくとも一本の膨張可能チャネル(22)が配設される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2001年12月20日にチョボトフ等(Chobotov et al.)により出願されて”先進の血管内移植片(Advanced Endovascular Graft)”と称された米国特許出願第10/029,559号の継続出願である2002年3月5日にチョボトフ等により出願されて”先進の血管内移植片”と称された米国特許出願第10/091,641号の一部継続出願であるが、それらの全ての開示内容は言及したことにより本明細書中に援用される。
本出願はまた、チョボトフ等による”血管内移植片材料を成形する方法および装置(Method and Apparatus for Shape Forming Endovascular Graft Material)”と称された米国特許出願第10/029,570号、チョボトフ等による”血管内移植片接合部および製造方法(Endovascular Graft Joint and Method for Manufacture)”と称された米国特許出願第10/029,584号、チョボトフ等による”血管内移植片区画を製造する方法および装置(Method and Apparatus for Manufacturing an Endovascular
Graft Section)”と称された米国特許出願第10/029,557号にも関連する。上記出願の全ては本出願と同様に本出願人が所有すると共に、2001年12月20日に出願されている。また上記各出願は言及したことにより夫々全体的に本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、血管系の障害を治療するシステムに関する。より詳細には本発明は、身体における流れ管路を可能的に阻害する疾患もしくは損傷を治療するシステムに関する。たとえば本発明の実施例は、消化器系および増殖器系における徴侯(indication)、ならびに、胸部および腹部大動脈瘤、(外傷により引き起こされたものなどの)動脈解離などの心血管系における徴侯などを治療する上で有用である。斯かる心臓血管徴侯は、多くの場合には死亡であるという結果の過酷さの故に、介在的処置を必要とすることが多い。
【背景技術】
【0003】
腹部大動脈瘤などの徴侯に対し、動脈瘤破裂のリスクが手術の不利益より重要であるという時点まで動脈瘤のサイズが成長したときには依然として、習用の開腹手術が従来的で最も広く利用される治療である。外科的修復は、動脈瘤が形成された血管の区画を移植片で置換する段階を包含する。手術処置の例は、1986年の”大動脈瘤の手術治療(Surgical Treatment of Aortic Aneurysms)”(ダブルビー・ソーンダーズ社[W.B. Saunders Company])においてコーレイ(Cooley)により記述されている。
【0004】
しかし、その利点に関わらず開腹手術は、主として処置の侵襲的で複雑な性質の故に高い罹患率および死亡率を伴う。手術に伴う合併症としてはたとえば、動脈瘤破裂の可能性、末梢部に対する血液流の長期間の制限に関する機能喪失、失血、心筋硬塞、鬱血性心不全、不整脈、および、汎用的な麻酔および機械的な人工呼吸システムの使用に伴う合併症が挙げられる。これに加え、動脈瘤の修復を要する典型的な患者は高齢であり健康状態が不十分であることから、これらの事実により合併症の可能性は相当に大きくなる。
【0005】
外科的介在のリスクおよび複雑さの故に、斯かる障害を治療する代替的方法を開発する種々の試みが為されてきた。一定度合の成功を収めた斯かる方法のひとつは、大腿動脈を介して二分岐ステント/移植片(bifurcated stent−graft)をカテーテル式に投入して大動脈内の動脈瘤を排除するものである。
【0006】
大動脈瘤の血管内修復は、従来の外科的修復技術に対する有望で魅力的な代替策である。該処置の低侵襲的性質の故に、医療的合併症のリスクは相当に減少する。また回復期間も相当に短くなり、付随的に入院の長さおよび費用も減少する。たとえば開腹手術は平均で6日間の入院と、集中治療室における1日以上とを要する。対照的に血管内修復は典型的に、2、3日の入院を必要とする。また一旦退院したなら、手術による患者は6〜8週間を要するが血管内修復により利益を得る患者は2週間以内に完全に回復し得る。
【0007】
しかし、これらのおよび他の相当の利点にも関わらず、血管内式システムは多くの欠点を有する。現在の二分岐ステント/移植片は、多くの場合に24フレンチ以上の直径である比較的に大寸の投入カテーテルを必要とする。これらのカテーテルはまた、大きな曲げ剛性を有する傾向がある。斯かる制約により、ステント/移植片を投入する上では外科的な静脈切開(cut−down)が結果的に必要となり、且つ、多くの場合には狭幅で不規則な罹患血管の動脈を通しての投入が困難となる。この故に大動脈瘤疾患の血管内的治療は、該治療により利益を得るであろう多くの患者に利用できるものでない。たとえば女性は統計的に更に小寸の血管を有する傾向があるので、一定の女性はこの理由のためだけに現在の多くの血管内的治療から排除される。故に、更に小寸で更に撓曲可能な投入カテーテルを介して投入され得る血管内ステント/移植片に対する要望が在る。また、斯かる血管内ステント/移植片が経皮的に投入され得るなら、更に大きな利点が実現され得る。
【0008】
更に、血管内ステント/移植片は血管内に着座かつシールされたままで相当の期間に亙り相当の拍動力に耐えねばならない。これらの目的を達成するために、種々の構成部材および/または材料から成り得るデバイスは原型を保たねばならない。上記デバイスは展開の部位において相当の拍動力を受け乍ら軸心方向移動に抗せねばならず、且つ、該デバイスは、(正味力が逆行性であり得る)該デバイスの近位端部もしくは頭部端部ならびに遠位端部もしくは尾部端部の両方にてまたは各端部にて該デバイスと血管壁との間の血液漏出を防止すべく、該デバイスが当該血管の内部で展開されるという血管の解剖学的構造に対して合致すべく径方向の十分な追従性を有さねばならない。また斯かるデバイスは、患者の生涯に亙り捻(ねじ)れもしくは捩(よじ)れなしで治療済血管の形態に合致せねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−23031号公報
【特許文献2】米国特許第6312462号明細書
【特許文献3】米国特許第6319276号明細書
【特許文献4】特表平11−501526号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は概略的に、血管などの体腔内に植設可能な医療デバイスを用いるという、身体通路の血管内的治療に対する方法およびシステムに関する。本発明の一定の実施例は、血管疾病を治療する血管内移植片を含む。
【0011】
一実施例は、近位端部および遠位端部を有する移植片本体区画を備えた移植片であって、一個以上のコネクタ部材側コネクタ要素を有するコネクタ部材が少なくとも一端に配設された移植片を含む。上記コネクタ部材は、上記移植片本体区画の複数層内に埋設され得る。上記一個以上のコネクタ部材側コネクタ要素に対しては、一個以上のステント側コネクタ要素を介してステントが連結もしくは固着され得る。上記移植片は、近位側ステントおよびコネクタ部材のみ、遠位側ステントおよびコネクタ部材のみ、または、近位側および遠位側ステントの両者およびそれらのコネクタ部材を含み得る。
【0012】
上記コネクタ部材側コネクタ要素および上記ステント側コネクタ要素は両者ともに、対向ショルダ部分を夫々備える近位端部および遠位端部を有し得る。上記移植片は更に、上記一個以上のコネクタ部材側コネクタ要素を上記一個以上のステント側コネクタ要素に連結もしくは接続すべく構成されたワイヤ・コイルなどの一個以上の連結部材を有し得る。
【0013】
上記コネクタ部材は、一個以上の頂点を有する蛇行リングの形態を取り得る。他の実施例において上記コネクタ部材は、複数の個別コネクタ部材要素とされ得る。
【0014】
上記個別コネクタ部材要素は種々の形状を取り得るが、(牽引荷重などの)種々の荷重下で上記移植片からの分離に抵抗すべく設計されねばならない。たとえば上記個別コネクタ部材要素の一個以上は、任意の組合せにて”V”もしくは”T”形状を取り得る。上記個別コネクタ部材要素の各々は、少なくとも一個のコネクタ要素を有すべきである。但し、上記コネクタ部材要素の各々に対して連結されるコネクタ要素の個数は、コネクタ部材要素の形状および移植片直径などの種々の要因に依存する。
【0015】
連続的なリング・コネクタ部材と比較し、本明細書中に記述された如く上記移植片において複数の個別取付用コネクタ部材要素を用いると、移植片近位側ネック部分における材料の量が減少される傾向となり、更に小径の移植片プロフィルが許容される。それはまた近位側ネック部分長さを減少し得ることから広範囲なAAA患者の治療を許容する、と言うのも、遠位側腎動脈と動脈瘤との間の短寸の大動脈ネック長は以下に相当に詳細に記述される如く対処され得るからである。所望であれば上記コネクタ部材要素は、上記移植片の遠位側ネック部分上にて、且つ、上述の改良との任意の組合せにて、本明細書中に記述されたステント/移植片の任意のものの上で腸骨肢(iliac limb)の少なくとも一方上にても使用され得る。
【0016】
関連する蛇行リング・コネクタ部材の一方は、上記ステントの頂点の2倍の頂点を有し得る。別実施例において上記移植片は、第1領域においては第2領域における頂点の2倍の頂点を備えるという二段式遠位側および/または近位側ステントを有する一方、関連するコネクタ部材は上記ステントの上記第1領域における頂点の2倍の個数を有する。たとえば、有用な実施例とは、近位側もしくは遠位側ステントの第1の六頂点もしくは六冠部領域に対して十二頂点コネクタ部材が接続されると共に上記ステントは上記六冠部領域と一体的なもしくはそれに対して接合された第2の三頂点もしくは三冠部領域を有するという実施例である。別の有用な実施例とは、八頂点コネクタ部材(または8個のコネクタ部材要素を有するコネクタ部材)が近位側ステントの第1の八頂点もしくは八冠部領域に接続され、且つ、そのステントは上記八冠部領域と一体的もしくはそれに対して接合された第2の四頂点もしくは四冠部領域を有する一方、少なくとも一個の遠位側ステントは五頂点コネクタ部材(もしくは5個のコネクタ部材要素を有するコネクタ部材)に接続された五頂点または五冠部領域を有する。
【0017】
代替実施例においては、関連するコネクタ部材を備えた単段式および多段式の近位側および遠位側ステントの種々の組み合わせを含む移植片が可能である。
【0018】
上記ステントはまた、一個以上の逆棘も含み得る。典型的に、近位側ステント上の逆棘は遠位方向に配向されることで、移植片が典型的に配設される近位側から遠位側への流れ場における組織に対して上記ステントを係合させる。同様に、腹部もしくは胸部大動脈瘤を治療すべく移植片が展開される用途において一個以上の遠位側ステント上の逆棘は典型的に近位方向に配向されることで上記ステントを組織壁部内に係合させて、典型的には逆行性の移動力に抗するが、一個以上の遠位側ステントは、たとえば、投入カテーテルおよび/またはバルーン操作に関連する周縁処置的な遠位方向力に抗すべく遠位方向に配向された一個以上の逆棘も含み得る。上記逆棘は、約1mm乃至約5mmの長さに亙り得る。上記逆棘は典型的には夫々のステントの長手軸心から外径方向に突出すると共に、ステントが生体内で展開されたときに移植片近位側ネック部分取入口軸心に関して約10°乃至約45°の逆棘径方向角度を形成する。上記逆棘はまた、上記逆棘反跳角度を形成すべく上記逆棘径方向角度が形成された平面に直交する平面内において側方にもバイアスされ得る。
【0019】
上記(近位側および/または遠位側の)単一もしくは複数のステントは、近位側ステントが減少プロフィル投入形態に在るときに各逆棘が当該ステント支柱により保持される如く、当該支柱に一体化された一個以上の選択的な逆棘包み込みパッドを有する支柱を備え得る。上記血管内移植片が展開形態に在るときに、上記一個以上の逆棘は解放される。
【0020】
上記単一もしくは複数のステントはまた、該ステントが投入形態に在るときに各逆棘がスロットにより保持される如く上記逆棘を受容すべく構成された選択的な逆棘包み込みスロットも備え得る。展開形態において、上記各逆棘はそれらの対応逆棘包み込みスロットから解放される。
【0021】
これに加え、上記単一もしくは複数のステントは溝を備え得る。典型的な投入システムにおいては、血管内移植片をその圧縮投入形態に保持するのを助力すべく、一定形式のベルトもしくは縫合糸が使用され得る。上記溝は、上記デバイスの小径投入を大径化することなくこれらのベルトもしくは縫合糸を収容し得ると共に、ステントに対するベルトの確実な位置も提供し得る。
【0022】
上記移植片本体区画はまた、該移植片本体区画の近位端部、遠位端部もしくは両者上にまたはその近傍に配設された一個以上の膨張可能環状部も有し得る。該膨張可能環状部は、膨張されたときに移植片本体区画の支持を助力する十分に強靱な構造を提供すると共に、移植片が内部で展開される血管の内側表面に対して移植片をシールする形状適合的な表面を提供する。
【0023】
一定の実施例において上記膨張可能環状部は、上記移植片本体の近位端部および/または遠位端部の回りに軸心対称円筒パターンで配設され得る。
【0024】
他の実施例において上記近位側および遠位側シール用環状部は、鋸歯状形態を取り得る。鋸歯状膨張可能環状部は圧縮折畳みを受けにくいという利点があることから、上記移植片は体腔の直径の変化に影響されにくい。上記鋸歯状膨張可能環状部は、複数の頂点を画成するジグザグ・チャネルから成り得る。
【0025】
膨張されたときに本発明の鋸歯状膨張可能環状部は、体腔と移植片の径方向干渉により引き起こされ得る陥入を受けにくい。一定の形態において上記鋸歯状膨張可能環状部は鋸歯部における可変半径を備えることで、不都合な陥入の可能性を更に減少し得る。
【0026】
上記移植片本体区画は、一本以上の膨張可能チャネルも含み得る。上記単一もしくは複数のチャネルは典型的に、近位側および遠位側膨張可能環状部の間に配設され且つそれらのいずれかもしくは両方と流体連通され得る。上記単一もしくは複数のチャネルは、その膨張時に移植片本体区画の剛性を強化し、移植片本体区画の捻れの防止を助力し、且つ、患者の身体通路内において移植片の展開を促進もし得る。上記単一もしくは複数の膨張可能チャネルは移植片本体区画に関して長手および/または線形形態とされ得るが、代替的には螺旋形態もしくは円周方向形態またはその一定の組み合わせを取り得る。相互接続されたグリッドもしくはリングなどの他の配向もまた、単独で、または他の形態の任意のものとの組み合わせで適切であり得る。
【0027】
上記膨張可能チャネルはまた、捻れ抵抗力もしくは折畳み抵抗力を提供する鋸歯状パターンも有し得る。上記鋸歯状膨張可能チャネルは、螺旋的に、円周方向に、または、環状リブおよび背柱の形態などで配設され得る。斯かる膨張可能チャネルの捻れ抵抗力は、長手折畳部の形成を防止すべく枢動する上記鋸歯部の機能に依り強化され得る。一定の形態において上記鋸歯部は、異なる内側および外側半径を有し得る。
【0028】
隣り合う(鋸歯状もしくは非鋸歯状の円周方向リングのいずれかである)各膨張可能チャネルを接続する上記チャネルは代替的に、移植片の本体または肢部の可撓性を促進すべく、交互配置されまたは不連続な長手チャネルもしくは背柱を有し得る。
【0029】
上記血管内移植片は一本以上の膨張可能長手チャネルもしくは背柱および一本以上の円周方向膨張可能チャネルを有し得るが、その任意のものは、患者の血管もしくは体腔の長さおよび蛇行性における差を不適切な捻れなしで調節すべく短寸化および長寸化する能力を有すべく設計され得る。上記長手チャネルもしくは背柱は、たとえば隣り合う円周方向膨張可能チャネル間に配設された一個以上の所定の”捻れ箇所”を備え得る。上記長手チャネルは各円周方向膨張可能チャネル間において一回以上捻れるべく構成されることから、移植片内孔内への各捻れの貫入の量が減少され得る。
【0030】
上記各膨張可能チャネル(および近位側および遠位側の環状部)を相互接続する上記長手チャネルもしくは背柱はまた、移植片長手方向における優れた圧縮を許容すべく、非線形もしくは波状の形態も取り得る。斯かる形態は、縮小の間において移植片が捻れる可能性を更に減少し得る。
【0031】
上記移植片の展開の間において膨張可能な単一もしくは複数の環状部および単一もしくは複数のチャネルは、固体、流体(気体および/または液体)、ゲルもしくは他の媒体から成り得る材料により膨張もしくは注入され得る。本発明に依れば有用な膨張媒体としては、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、ペンタエリトリトール・テトラ−3(メルカプトプロピオネート)、および、リン酸塩で緩衝された塩水中のグリシルグリシンもしくはトリエタノールアミンなどの緩衝液、の組み合わせが挙げられる。この三成分膨張媒体に対しては、膨張媒体の全体積の約60%までの量で塩水もしくは他の不活性生体適合液体が添加され得る。上記膨張媒体を螢光透視鏡下で可視とすべく、該三成分媒体に対しては典型的に上記緩衝液内にて、タンタル、ヨウ化造影剤、硫酸バリウムなどが添加され得る。
【0032】
本発明の別実施例において上記移植片は、本体部分と、当該連続内孔を通る流体流を局限すべく構成された連続内孔を形成する第1二分岐部分とを備え得る。上記移植片はまた、上記本体部分と流体連通する第2二分岐部分も含み得る。上記本体部分の近位端部および上記第1二分岐部分の遠位端部のいずれかもしくは両方には、少なくとも一個の膨張可能環状部が配設され得る。先に記述された如く各膨張可能環状部間には一本以上の膨張可能チャネルが配設され得ると共に、該チャネルは上記本体部分の一定部分もしくは全てに亙り延在し得る。上記環状部およびチャネルは、上述された如く塩水もしくは他の液体などの不活性生体材料により選択的に希釈された膨張媒体により充填され得る。
【0033】
本発明の更に別の実施例において上記移植片は、当該連続的二分岐内孔を通る流体流を局限すべく構成された連続的二分岐内孔を形成すべく第1および第2二分岐部分と流体連通する本体を備え得る。上記本体部分の近位端部および上記第1および第2二分岐部分の遠位端部のいずれかもしくは両方にてまたはその近傍には、少なくとも一個の膨張可能環状部が配設され得る。先に記述された如く各膨張可能環状部間には一本以上の膨張可能チャネルが配設され得ると共に、該チャネルは上記本体部分の一定部分もしくは全てに亙り延在し得る。
【0034】
上記本体部分の上記近位端部は、一個以上のコネクタ要素を備えるコネクタ部材と、上記一個以上のコネクタ要素に連結された近位側ステントとを有し得る。同様に、上記第1および/または第2二分岐部分の一方もしくは両方は、夫々の遠位端部上に配設された一個以上のコネクタ要素を備える第1および/または第2の遠位側コネクタ部材と、該第1および/または第2の遠位側コネクタ部材に連結された遠位側ステントとを有し得る。
【0035】
本発明はまた、壁部を有する体腔内に管状医療デバイスを植設するシステムであって、上記体腔壁部に上記医療デバイスを固着するステントと、上記ステントを上記医療デバイスに連結するコネクタ部材とを備え、上記ステントおよびコネクタ部材は少なくとも一群のコネクタ要素により相互に連結されるというシステムでもある。
【0036】
このシステムには、一個以上の逆棘も含められ得る。これに加えて一個以上の逆棘包み込みパッドも包含可能であり、その場合に上記一個以上の逆棘は、当該システムが投入形態に在るときには上記一個以上の逆棘包み込みパッドにより保持され且つ当該システムが展開形態に在るときには上記一個以上の逆棘包み込みパッドにより解放される如く構成される。上記ステントは当該システムが投入形態に在るときに上記逆棘を受容すべく構成された選択的スロットを更に含み得ると共に、上記逆棘は当該システムが展開形態に在るときに上記スロットから解放されるべく構成される。
【0037】
本発明はまた、近位端部および遠位端部を備えた移植片本体区画と、該移植片本体区画の上記近位端部に固着された近位側コネクタ部材とを備える血管内移植片も包含する。上記近位側コネクタ部材は一個以上のコネクタ要素を有し得る。
【0038】
上記移植片はまた、遠位方向に配向された一個以上の逆棘、および、上記一個以上の近位側コネクタ部材側コネクタ要素に連結された一個以上の近位側ステント側コネクタ要素を備える近位側ステントと、上記移植片本体区画の上記遠位端部に固着された遠位側コネクタ部材とを有し得る。上記遠位側コネクタ部材は、一個以上のコネクタ要素を含み得る。
【0039】
この実施例の移植片は更に、近位方向もしくは遠位方向に配向された一個以上の逆棘を備える遠位側ステントであって、上記一個以上の遠位側コネクタ部材側コネクタ要素に連結された一個以上の遠位側ステント側コネクタ要素を備える遠位側ステントと、上記移植片本体区画の上記近位端部および遠位端部の各々にもしくはその近傍に配設された一個以上の膨張可能環状部とを備え、上記移植片本体区画は上記近位側および遠位側の環状部と流体連通する膨張可能チャネルを備える。
【0040】
これに加え、上記近位側および遠位側コネクタ部材側コネクタ要素は各々がそれらの近位端部および遠位端部上に対向ショルダ部分を有し得ると共に、上記近位側および遠位側ステント側コネクタ要素も同様である。一個以上の連結部材は、上記近位側コネクタ部材側コネクタ要素を上記近位側ステント側コネクタ要素に連結し得ると共に、上記一個以上の遠位側コネクタ部材側コネクタ要素を上記一個以上の遠位側ステント側コネクタ要素に連結し得る。
【0041】
上記膨張可能チャネル、上記遠位側膨張可能環状部および上記近位側膨張可能環状部の少なくともひとつは、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、ペンタエリトリトール・テトラ−3(メルカプトプロピオネート)および緩衝液の組み合わせから成る膨張媒体を収容し得る。
【0042】
この実施例の上記近位側ステント逆棘は、約1mm乃至約5mmの長さを有し得ると共に、上記移植片本体区画はePTFEから成り得る。
【0043】
本発明の更に別の二分岐実施例において上記デバイスは、遠位端部と、コネクタ部材が配設された近位端部とを備える本体部分を含む。上記コネクタ部材は、一個以上のコネクタ要素を含み得る。
【0044】
この実施例の上記近位側ステントは、遠位方向に配向された一個以上の逆棘と、上記コネクタ部材側コネクタ要素に連結された一個以上の近位側ステント側コネクタ要素とを備え得る。
【0045】
この実施例は更に、上記本体部分と共に連続内孔を形成する第1二分岐部分および第2二分岐部分を含む。この内孔は、該内孔自体を通る流体流を局限すべく構成される。
【0046】
上記第1および第2二分岐部分の各々の遠位端部上には、遠位側コネクタ部材が配設され得る。これらの遠位側コネクタ部材の各々は、一個以上のコネクタ要素を含む。これに加えてこの実施例は、近位方向に配向された少なくとも一個の逆棘を有する一個以上の遠位側ステントであって一個以上の遠位側ステント側コネクタ要素を備える一個以上の遠位側ステントを有する。上記遠位側ステント側コネクタ要素は、上記第1および第2二分岐部分の一方もしくは両方にて上記遠位側コネクタ部材側コネクタ要素に連結される。
【0047】
この実施例はまた、上記第1および第2二分岐部分の一方もしくは両方から上記本体部分まで延在する少なくとも一本の膨張可能チャネルと、該少なくとも一本のチャネルと流体連通すべく上記本体部分の近位端部にもしくはその近傍に配設された少なくとも一個の膨張可能環状部と、上記第1および第2二分岐部分の各々の遠位端部にもしくはその近傍に配設された膨張可能環状部とを含む。
【0048】
上記近位側および遠位側コネクタ部材側コネクタ要素は各々、それらの近位端部および遠位端部上に対向ショルダ部分を有し得ると共に、上記近位側および遠位側ステント側コネクタ要素も同様である。一個以上の連結部材が、上記近位側コネクタ部材側コネクタ要素を上記近位側ステント側コネクタ要素に対して連結し得ると共に、上記一個以上の遠位側コネクタ部材側コネクタ要素を上記一個以上の遠位側ステント側コネクタ要素に同様に連結し得る。
【0049】
上記膨張可能チャネル、上記第1二分岐部分遠位側膨張可能環状部、上記第2二分岐部分遠位側膨張可能環状部および上記近位側膨張可能環状部の少なくともひとつは、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、ペンタエリトリトール・テトラ−3(メルカプトプロピオネート)および緩衝液の組み合わせから成る膨張媒体を収容し得る。
【0050】
上記近位側および/または遠位側ステント逆棘は、約1mm乃至約5mmの長さを有し得る。上記移植片本体部分ならびに上記第1および第2二分岐部分はePTFEから成り得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例に係る血管内移植片を示す図である。
【図1A】本発明の実施例の移植片上でステント逆棘が配向され得る2つの角度の詳細図である。
【図1B】本発明の実施例の移植片上でステント逆棘が配向され得る2つの角度の詳細図である。
【図2】本発明の実施例に係る第2の血管内移植片を示す図である。
【図2A】選択的な交互配置長手チャネルもしくは背柱と共に選択的な鋸歯状膨張可能チャネルを有する血管内移植片を示す図である。
【図2B】複数の膨張可能チャネルおよび波状もしくは蛇行背柱を有する血管内移植片を示す図である。
【図3A】図2の血管内移植片の構成要素の平坦パターンを示す図である。
【図3B】複数の個別繋止部および連結要素を備えるコネクタ部材の実施例を示す図である。
【図3C】図3Bの個々の繋止部および連結要素を示す図である。
【図3D】複数の個別V状コネクタ部材要素を備えたコネクタ部材の実施例を示す図である。
【図4】図2の血管内移植片の別の構成要素の平坦パターンを示す図である。
【図5】図2の血管内移植片の一部の平坦パターンを示す図である。
【図5A】図5の詳細箇所Aにおける拡大側面図である。
【図6】本発明の実施例の特徴を有する血管内移植片の一部の拡大斜視図である。
【図7】本発明の実施例に係る二分岐式血管内移植片の示す図である。
【図7A】隣り合うチャネル間に捻れを呈する移植片の区画を示す図である。
【図7B】隣り合うチャネル間に捻れを呈する移植片の区画を示す図である。
【図7C】隣り合うチャネル間に所定の捻れ箇所を有する移植片の区画の捻れ挙動を示す図である。
【図7D】隣り合うチャネル間に所定の捻れ箇所を有する移植片の区画の捻れ挙動を示す図である。
【図8】図2の血管内移植片の更に別の構成要素の平坦パターンを示す図である。
【図9】図2の血管内移植片の別の構成要素の平坦パターンを示す図である。
【図10】オフセットされた円形および楕円形半径を備えたステント頂点の詳細を示す図である。
【図11】オフセットされた夫々の円形半径を備えたステント頂点の詳細を示す図である。
【図12】テーパ付き支柱区画を備えるステント区画の詳細を示す図である。
【図13】テーパ付き支柱区画の別の形態を備えるステント区画の詳細を示す図である。
【図14】本発明の二段式ステントの実施例を示す図である。
【図15】本発明の別の二段式ステントの実施例を示す図である。
【図16A】膨張可能環状部が血管もしくは他の体腔内に配設されたときの移植片部分直径に対して、上記環状部が自由空間内で膨張されたときの移植片部分直径を比較すべく、上記環状部の近傍において理想化された本発明の血管内移植片の一部の長手断面の概略図である。
【図16B】自由空間内で制約なしで膨張された環状部表面と比較して移植片が血管または他の体腔内に配設されたときの膨張済環状部の外側面における不都合な折り重なり部の可能的生成を例証する図16AのA−A線に沿った理想化移植片部分の概略的な横断面図である。
【図16C】移植片が異なる直径とされたときにおける本発明の選択的な鋸歯状の膨張可能環状部の枢動挙動の概略図である。
【図16D】移植片が異なる直径とされたときにおける本発明の選択的な鋸歯状の膨張可能環状部の枢動挙動の概略図である。
【図16E】本発明の選択的な鋸歯状の膨張可能環状部もしくはチャネルの外側および内側枢動部分間における異なる曲率半径を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明のこれらのおよび他の利点は、添付の例示的図面に関して以下の本発明の詳細な説明から更に明らかとなろう。
【0053】
図1は、展開形態に在る血管内移植片10を示している。本明細書中では特に言及されなければ、”移植片(graft)”もしくは”血管内移植片(endovascular graft)”という語句は、罹患血管もしくはその一部を修復且つ/又は置換し得る人工器官であって、概略的に管状のデバイスおよび二分岐デバイスならびにそれらに対して取付けられもしくはそれらと一体的な任意の構成要素を包含する人工器官を指すべく用いられる。例示目的のため、以下に記述される移植片の実施例は腹部大動脈瘤[abdominal aortic aneurysm](AAA)の血管内的治療において最も有用であると想定される。本出願の目的に関し、血管内移植片デバイスに対する”近位(proximal)”という語句は、該デバイスが身体通路内で展開されたときに典型的には血液である体液の到来流に向けて配向される移植片の端部を表す。故に”遠位(distal)”という語句は、近位端部と逆の移植片端部を表す。最後に、種々の図面は本発明の種々の実施例の正確な表現であるが、その種々の構成要素の比率は任意の所定図面において且つそれらの図面間で必ずしも厳密な縮尺では示されない。
【0054】
移植片10は、近位端部11および遠位端部12を有すると共に、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)などの溶融性材料の一層以上から成る概略的に管状の構造すなわち移植片本体区画13を含む。移植片本体区画13の近位端部14にはもしくはその近傍には近位側膨張可能環状部16が配設され、且つ、選択的な遠位側膨張可能環状部17は移植片本体区画遠位端部15にもしくはその近傍に配設される。移植片本体区画13は、自身内を貫通する流体流を局限すべく構成された長手内孔22を形成すると共に、長さは約5cm〜約30cm、特に約10cm〜約20cmに亙り得る。
【0055】
図1に示され且つ理想化形態で図16Aに概略的に示された如く、更には以下において更に詳細に記述される如く、自由空間内で環状部16、17が膨張されたとき(すなわち移植片10が血管もしくは他の体腔内に配設されないとき)、これらの環状部は(特に移植片本体区画13が非拘束状態に在るときに)概略的に半円形の長手断面を有する概略的に環状のもしくは円環状の形状を取る。但し膨張可能環状部16、17は概略的に、当該血管の内部で該環状部が展開される血管の形状に合致する。完全に膨張されたときに環状部16、17は、約10mm〜約45mm、特に約16mm〜約32mmに亙る外径を有し得る。
【0056】
近位側膨張可能環状部16と遠位側膨張可能環状部17との間には少なくともひとつの膨張可能チャネル18が配設されると共に、これらの環状部と流体連通し得る。膨張可能チャネル18は、膨張媒体を収容すべく膨張されたときに移植片本体区画13に対する構造的支持を提供する。膨張可能チャネル18は更に、管状構造もしくは移植片本体区画が角度的もしくは屈曲的な解剖学的構造内で展開されたとき、ならびに、内部にて移植片10が展開される(大動脈および腸骨動脈などの)身体通路を再構成する間に、該管状構造もしくは移植片本体区画の捻れおよび捩れを防止する。近位側および遠位側環状部16および17と共に、膨張可能チャネル18は相互に流体連通する膨張可能な環状部およびチャネルのネットワークを形成する。
【0057】
本発明者等は、高度に角度的で屈曲的な解剖学的構造が見られることの多いAAAなどの疾患身体通路を効果的に治療するために必要な捻れ耐性を提供する上で、図1の実施例のチャネル18の螺旋形態が特に有効なことを見出した。但し代替実施例においては、他の環状部およびチャネル形態が可能である。膨張可能チャネル18は図1に示された如く螺旋的に配設され得るが、それは図2の実施例に示された如く更に円周的もしくは環状的なリブおよび背柱形態または別形態を取り得る。図2Aに示された別実施例において、膨張可能チャネル18(もしくはチャネル58)または環状部16の一箇所以上の部分は選択的に、図16C乃至図16Eに関して以下に記述される如くジグザグもしくは鋸歯状の形態を取り得る。斯かる形態は、同様の所望の捻れ耐性または陥入に対する耐性を提供すべく使用され得る。
【0058】
図2Aに示された如く一定の形態においては、移植片本体区画13(または膨張可能チャネル18および当該背柱20が内部に配設される他の移植片部分)の可撓性を促進すべく、交互配置された長手チャネルすなわち背柱20が単独でまたは鋸歯状膨張可能チャネル18、58と共に使用され得る。背柱20は勿論、図2Aの鋸歯状チャネル18、58に関してたとえば図1の実施例に示された如く連続的ともされ得る。膨張可能チャネル18の長手寸法および径方向寸法は、移植片10による治療が意図された徴侯に依存し、異なる移植片本体区画間で且つ単一の移植片本体区画内においてさえも必要に応じて変更され得る。更に、膨張可能チャネル18は移植片本体区画13の長手軸心25に関して種々の角度で配向され得ると共に、そのピッチ(チャネル18の螺旋的もしくは平行的な巻回間の距離)は必要に応じて変更され得る。
【0059】
図1の実施例において各螺旋状膨張可能チャネル18の巻回間のチャネルピッチもしくは距離は、移植片本体区画13の全体的サイズおよび捻れ耐性の所望度合いに依存し、約2mm〜約20mmに亙り得る。本発明者等は、本発明の管状実施例に対しては約4mm〜約10mmのピッチが有効であり、且つ、二分岐移植片実施例においては約3mm〜約10mmのピッチが有用であることを見出した。(移植片本体区画長手軸心25に直交する平面に関して測定された)各チャネル巻回の螺旋角度は、管状および二分岐移植片実施例において約10°〜約45°、より詳細には約20°〜約35°に亙り得る。最後に、膨張可能チャネル18の幅は典型的に、約1mm〜約8mm、より詳細には約2mm〜約4mmに亙る。
【0060】
移植片本体区画すなわち管状構造13およびその関連構成要素は、超高分子量ポリエチレン、ポリエステルなどの種々の適切な材料から作成され得る。先に論じられた如く本発明者等は、基本的に一層以上のePTFEにより移植片本体区画13を構築することが特に有用であることを見出した。移植片10(ならびに、本明細書中で論じられる他の移植片の全て)が如何に作製され得るかの詳細は、各々が2001年12月20日に出願された同時係属の米国特許出願第10/029,557号、第10/029,570号および第10/029,584号に更に十分に記述される。これに加え、その各々の全ての開示内容は言及したことにより本明細書中に援用される、1998年2月9日に出願されて”血管内移植片(Endovascular Graft)”と称されたチョボトフの米国特許出願第09/133,978号、および、2001年7月27日に出願されて”二分岐ステント/移植片投入システムおよび方法(Bifurcated Stent−Graft Delivery System and Method)”と称された同時係属のチョボトフ等の米国特許出願第09/917,371号は夫々、有用な血管内ステント/移植片および投入システムを教示している。
【0061】
移植片本体区画近位端部14の近傍には近位側ネック部分23が配設され、該部分は、身体通路の内側に対する展開済み移植片のシールを助力する付加的手段の役割を果たす。近位側ネック部分23は、移植片本体区画長手軸心25に関して取入口軸心角度αを形成する取入口軸心27を有する。この角度付けされた取入口軸心27によれば上記移植片は、腹部大動脈瘤のネック領域において多くの場合にそうである様に角度付けされた血管形態を有する患者において該患者の血管系の形態に対し、更に良好に合致し得る。取入口軸心角度αは長手軸心25に関する任意方向において、約0°〜約90°、好適には約20°〜約30°に亙り得る。近位側ネック部分23は近位方向における更なる大径へとテーパ付けされまたは拡開されることで、このシール機能を促進し得る。近位側ネック部分23はまた、移植片内孔22内への円滑な流体流を提供する手段の役割も果たす。
【0062】
膨張可能環状部16、17およびチャネル18の上記ネットワークは最も好適には生体内にて、環状部17および関連環状部/チャネルネットワークと流体連通する注入ポート33を通して所定材料もしくは媒体を導入もしくは注入することで膨張され得る。上記材料は、固体、流体(気体および/または液体)、ゲルもしくは他の媒体のひとつ以上から成り得る。上記材料は、患者の身体内でデバイスが展開される間に該デバイスの撮像を促進する造影剤を含み得る。たとえば、ビスマス、バリウム、金、ヨウ素、白金、タンタルなどの元素を含む放射線不透過性材料は特に、膨張媒体の一部として液体、粉末もしくは他の適切な形態で使用され得る。斯かる撮像を促進するためには、液体ヨウ化造影剤が特に適切な材料である。同一目的で移植片10の任意の部分上または該部分内もしくは該部分上には、放射線不透過性マーカも配設または一体形成され得ると共に、該マーカは生体適合性の放射線不透過性材料の任意の組合せで作成され得る。
【0063】
移植片本体区画13に対しては、図1に示された如く移植片本体区画近位端部14および近位側ネック部分23にてもしくはそれらの近傍にて、コネクタ部材24が固着もしくは一体形成される。図1の実施例においてコネクタ部材24は、各頂点28を備えた蛇行リング構造である。コネクタ部材24の他の実施例は異なる形態を取り得る。コネクタ部材24は拘束状態からの膨張を許容する任意の適切な材料から作成され得るが、ニッケル・チタン(NiTi)などの如く超弾性特性を有する形状記憶合金が最も好適である。他の適切なコネクタ部材24の材料としては、ステンレス鋼、MP35Nなどのニッケル−コバルト合金、タンタルおよびその合金、ポリマ材料、複合材料などが挙げられる。コネクタ部材24(ならびに本明細書中に記述されるステントおよびコネクタ部材の全て)は、径方向拘束状態から自己拡開すべく構成され得るか、または、(膨張済みバルーンからなどの)付与力、もしくは、一定の形状記憶材料の場合には温度変化の結果として拡開すべく構成され得る。
【0064】
図1に示されたコネクタ部材24の形態は8個の頂点28を備える(更に厳密に表現すると図1のコネクタ部材24は8個の近位側頂点および8個の遠位側頂点を備える;しかし、別段の言及がなければ、この状況における”頂点”という語句は単一のコネクタ部材、ステントもしくはステント部分の近位側もしくは遠位側の頂点群のいずれかを指す)。図2、図3Aおよび図4乃至図7には特に有用な別形態が示され、この場合にコネクタ部材は12個の頂点を備える。コネクタ部材24においては、24個以上までの任意数の頂点が使用され得る。概略的表現においては、コネクタ部材24上の頂点28の個数が多いほど、コネクタ部材24が径方向拘束状態から拡開されたときに血管壁に対して該コネクタ部材は大きな合致性を呈する。
【0065】
存在する頂点の個数に関わらずにコネクタ部材24のひとつの機能は、先に記述された如く、該コネクタ部材が典型的に埋設された近位側ネック23と協働することで、展開済み移植片を身体通路の内側にシールするのを助力することである。それはまた、移植片10を血管壁内の所定位置に保持するのを助力する役割も演じ得ると共に、展開の間において移植片本体区画近位端部14の開成も促進し得る。
【0066】
幾つかの頂点28は、図2の実施例に関して以下に更に十分に記述されるコネクタ部材側コネクタ要素30も構成し得る。コネクタ部材24が8個の(近位側)頂点28を有するという図1の実施例においては、1個置きの頂点28上にコネクタ要素30が分布される。本発明者等は、本発明の種々の性能要件を満足する上でこの形態が適切であることを見出した。1個置きの頂点28上に分布された6個のコネクタ要素30を備えるという図2、図3Aおよび図4乃至図7に示された12個の頂点のコネクタ部材24を含め、他の形態が可能である。たとえばコネクタ要素が全ての頂点、3個もしくは4個毎の頂点上にまたは他の任意のパターンで分布されるという他の形態は、本発明の有効範囲内である。
【0067】
移植片10は更に、近位端部42および遠位端部44を有する近位側ステント40を備える。他の形態が可能ではあるが、図1の実施例における近位側ステント40は、4個の頂点46、すなわち、コネクタ部材24の頂点28の半数の頂点を有する蛇行リングから成る。尚、図1における近位側ステント40は、該ステントの直径がその丈に沿い変化するという選択的なチューリップ状のテーパ付きプロフィル(profile)を取ることを銘記されたい。斯かるプロフィルは、移植片10が内部で展開される血管もしくは内腔の壁部に対して該移植片10をステント40の径方向拡開時に信頼性高く繋止するに十分な径方向力を呈する役割を果たす一方、移植片本体区画13の近傍におけるステント40のテーパ付き遠位端部にては、近位側環状部16、近位側ネック部分23およびコネクタ部材24により実施されるシール機能との干渉を抑制する。このプロフィルはまた、受入れ側の血管もしくは内腔内に存在し得る一切のテーパにも適応する。
【0068】
図1に示された如く近位側ステント40は概略的に、移植片本体区画13およびコネクタ部材24の近位側に配設される。必須ではないが近位側ステント40は典型的に、以下において詳細に記述される如くコネクタ要素を介してコネクタ部材24に固着もしくは接続されることで、移植片10の一部を構成する。近位側ステント40はまた、近位側ネック部分23および/または移植片本体区画13の他の部分に対して固着されまたはその内部に直接的に埋設され得る。これに加えて本発明は、コネクタ部材および近位側ステントは相互に対して機械的にまたは別様に締着されるのでなく一体化され、NiTiなどのモノリシックな材料片で形成されるという実施例を包含する。
【0069】
近位側ステント40、コネクタ部材24、近位側ネック部分23および近位側環状部16のこの構成によれば、移植片10が内部で展開される血管壁に対して過剰な径方向力なしで合致および装着を必要とする近位側環状部16のシール機能は、近位側ステント40の繋止機能から容易に分離され得る(コネクタ部材24および近位側ネック部分23は媒介的役割を演ずる)。これにより、シール機能および繋止機能は他方を阻害せずに、相互に対して最適化され得る。これに加え、部分的には近位側ステント40、コネクタ部材24および膨張可能環状部16が移植片本体区画長手軸心25に沿い長手方向に分布されるが故に、約10フレンチ〜約16フレンチに亙る、好適には12フレンチ以下である更に小寸で更に撓曲可能な投入プロフィルが可能である。
【0070】
近位側ステント40は、コネクタ部材24に対して適切な任意の材料から製造され得る。NiTiなどの様に超弾性特性を有する形状記憶合金から製造されたとき、近位側ステント40は拘束状態からの解除時に自己拡開すべく構成され得る。
【0071】
近位側ステント40は更に、図2乃至図6に関して以下で更に十分に記述される如く連結部材を介してコネクタ部材側コネクタ要素30に固着された近位側ステント側コネクタ要素48を備える。図1の実施例においては、全てのコネクタ部材側コネクタ要素30に対して1個の近位側ステント側コネクタ要素48が在ることを銘記されたい。
【0072】
近位側ステント40はまた、支柱41も備えると共に、一本以上の逆棘43も備え得る。逆棘(barb)とは、内部で移植片10が展開される身体通路(典型的には腹部大動脈などの血管の内膜層および中間層)を少なくとも部分的に貫通し得る鋭角的先端で終端すべく外方に向けられた任意の突出部であり得る。
【0073】
たとえば典型的には動脈瘤および任意の疾患組織の近位側の箇所にて近位側ステント40が腹部大動脈内で展開されたとき、各逆棘43はこの箇所において遠位側に配向された血液の流れ場と協働することで組織を貫通すると共に、移植片10の軸心方向移動を防止すべく設計される。その理由は、図1の実施例における各逆棘43は移植片本体区画13に関して遠位方向に配向されるからである。
【0074】
代替実施例においては近位側ステント40の製造において用いられる材料に依存して、臨床的要望および他の要因、すなわち血管内における移植片10の位置の保持を逆棘43が助力する度合いは変更され得る。故に、逆棘43の個数、寸法、形態および配向は相当に変更され得るが、依然として本発明の有効範囲内である。
【0075】
本発明の任意の実施例における逆棘43の長さは、約1mm〜約5mm、より詳細には約2mm〜約4mmに亙り得る。
【0076】
図1における自由拡開形態において示された如く且つ図1Aにおいて相当に詳細に示された如く逆棘43は、遠位方向に配向され得ると共に支柱41の長手軸心29に関して約10°〜約45°以上に亙る仰角βを形成し、近位側ネック取入口軸心27から離間すべく移植片内孔22から概略的に外径方向に突出する。上記各逆棘を角度βにて配設すると、内部で移植片10が展開される血管もしくは内腔内へと該移植片10を繋止するに必要な埋設力が提供される。各図では示されていないが、逆棘仰角は、近位側ネック取入口軸心27に対して第2角度β’まで移植片10が体腔もしくは血管内で生体内展開された場合にも記述され得る。この第2の逆棘仰角β’は典型的に、約5°〜約45°の範囲である。逆棘仰角βおよびβ’の両者に対し、本発明の他の実施例においては逆棘と共に同様の配向が見られる。
【0077】
概略的には、各逆棘43は内部にてそれらが展開される内腔の軸心に対して概略的に平行な位置に配向されることで、該逆棘が一定用途における生体内での流れ場により課される抗力負荷(drag load)に最適に耐えるのが好適である。この目的の為に本発明者等は、図1Bに示された如く支柱長手軸心29に関して選択的な第2逆棘方位角すなわち”反跳”角度γを一個以上の逆棘43に対して形成するのが有用であることを見出した。この図において逆棘43は、支柱41の外側面37に対して接する平面内であって、角度γが形成される平面に概略的に直交する平面内において側方にバイアスされている。尚、”支柱の外側面”という表現は概略的に、近位側ネック取入口軸心27の逆側に配置された支柱41の表面の一部、または、展開されたときに血管もしくは内腔の壁部と直接接触する支柱41の一部を指す。本発明者等はまた、逆棘43に対して側方反跳角度γを配備すると、減径投入形態に在る近傍の支柱もしくは包み込みパッドの背後に逆棘が包み込まれたときに大きな逆棘安定性に寄与することも見出した。近位側ステント40においてγは、支柱軸心41に対して約5°〜約70°に亙り得る。本発明の他の実施例においては、逆棘に対して同様の配向が見られる。
【0078】
逆棘の本数、各逆棘の長さ、上述の逆棘角度の各々、および、逆棘配向は、単一のステントにおいてまたは単一の移植片の複数のステント間において、逆棘毎に変更され得る。
【0079】
尚、本明細書中で論じられる種々の逆棘(および以下で論じられる包み込みパッド45)はステント支柱41に取付けられまたは固定され得るが、本発明者等は、種々の図に示された如くそれらはステント支柱の一部として一体形成されるのが有用であることを見出したことを銘記されたい。換言するとそれらは支柱の単なる延長部であり、その場合に接合部または他の接続は存在しない。接合部が無いので、本発明者等は逆棘/支柱の接合領域の強度は非常に高く、逆棘の疲労耐性も同様であることを見出した。逆棘を支柱に接合する機械的接続部が無いので、逆棘/支柱接合領域の信頼性は更に高くなる。これに加え、溶接もしくはろう付け接合部の機械的特性が悪影響され得るという熱影響域が無いということは、逆棘および包み込みパッドをステントに対して一体化したことの別の相当な利点である。
【0080】
支柱41はまた、各逆棘43に対向して配設された選択的な一体的包み込みパッド45も備える。上記逆棘の場合と同様に、逆棘包み込みパッド45の個数、寸法、形態および配向は相当に変更され得る。
【0081】
移植片10(故に、近位側ステント40)をその減径投入形態へと準備する間に各逆棘43は対応する支柱41(および、もし存在するなら選択的包み込みパッド45)の背後に載置されることから、その逆棘は、デバイスの投入の間に投入鞘体もしくはカテーテルの内側に対する接触、および、血管壁の内側に対する不都合な接触が阻止される。その全ての開示内容は言及したことにより本明細書中に援用されるチョボトフ等に対する同時係属の米国特許出願第09/917,371号に記述された如く、支柱41上に配設されたひとつ以上の溝35内に配設された解除ベルトは近位側ステント40をこの投入形態に保持する。
【0082】
(典型的にはこのベルトおよび他のベルトの解除により部分的に達成される)移植片10の展開時に、より詳細には近位側ステント40の展開時に、該ステント40の径方向拡開は支柱41の変位に帰着することから、各支柱間の距離は増大する。最終的にこの変位は、近傍の支柱(および、もし存在するなら選択的包み込みパッド45)の背後から逆棘を自由にし且つ治療されつつある内腔の壁部に係合させるに十分なほど大きくなる。本明細書中に記述された逆棘を有する頬のステントが拘束投入形態から解放されて拡開もしくは展開形態を取るという実験の間において、高速のビデオによれば、逆棘はステントの径方向拡開に関連する時定数よりも略々1桁小さい時定数により解放される傾向があることが確認された。換言すると、ステント展開プロセスの間において、ステントが完全に拡開される前にその逆棘は展開を完了することから、逆棘は最大の有効性を以て血管もしくは内腔の壁部に係合し得る。
【0083】
代替的に、且つ、特に近位側ステント40に対してステンレス鋼などの異なる材料が用いられたときには、ステント40を拡開して逆棘43をその包み込みパッド45から解放し且つ所望に応じて逆棘43を組織に係合させるべく、選択的バルーンが使用され得る。移植片10において超弾性の自己拡開近位側ステント40が用いられるときでさえも、逆棘43をその所望位置に更に植設するのを助力して移植片10の適切な載置を確実にすべく、斯かるバルーンが使用され得る。
【0084】
次に図2に戻ると、本発明の特徴を有する別の血管内移植片が示される。移植片50は、近位端部51および遠位端部52を備えると共に、近位端部54および遠位端部55有する管状構造すなわち移植片本体区画53を備える。図1の実施例と同様に移植片本体区画53は、自身を貫通する流体流を局限すべく構成された長手内孔73を形成すると共に、長さは約5〜約30cm、特に約10cm〜約20cmに亙り得る。近位側膨張可能環状部56および選択的な遠位側膨張可能環状部57は膨張されたときにシールを形成することで、近位側および遠位側の環状部の間の領域における内腔もしくは血管の壁部に対する圧力(流体が血液の場合には血行圧力)の伝達の防止を助力する。これに加え、上記各環状部は移植片本体区画53の外側面の回りにおける血液などの流体の流れ防止を助力する。
【0085】
膨張可能チャネル58は、略々平行で膨張可能な一連の円周方向チャネルもしくはリブと流体連通する膨張可能長手チャネルすなわち背柱20を備える。本発明者等は、更に粘度の高い膨張材料を用いるときに環状部およびチャネルの迅速で比較的に容易な膨張を許容し乍ら有効な捻れ耐性を提供する上で、この構成が特に有用であることを見出した。図2Bに示された如く代替実施例において、長手チャネルもしくは背柱20は波状形態を取り得る。一定の臨床条件下でこの形態は、長手チャネルもしくは背柱20が側方に短縮されるのを許容し且つそれが移植片内孔内で直接的に捻れる可能性を減少することで、付加的な捻れ耐性を提供し得る。これに加え、この形態によれば、医師もしくは操作者は移植片50を血管もしくは体腔内に植設することで、植設の間に必要に応じて原位置で移植片長さの微調整を行うことで不都合な捻れなしで最適な移植片載置を確実と得る。
【0086】
チャネル58は近位側および遠位側環状部56および57と流体連通することで、相互に流体連通する膨張可能環状部およびチャネルのネットワークを形成する。遠位側環状部57、膨張可能チャネル58および近位側環状部56に対して充填ポート59が流体連通することで、移植片本体区画53内への膨張媒体の導入に対して該ネットワークを増強する。図2のデバイスにおいては、本明細書中で論じられない図1の実施例の特徴が存在し得る。
【0087】
図2の移植片50はまた、12個の冠部もしくは12個の頂点を有する近位側コネクタ部材60、6個の冠部および3個の冠部を有する二段式の近位側ステント70、遠位側ネック部分77、遠位側コネクタ部材124および遠位側ステント128を備える。遠位側コネクタ部材124および遠位側ステント128は、図2の実施例における遠位側ステントが単段式であり且つその選択的逆棘が近位側ステント70の逆棘74に対して逆方向すなわち近位方向を向くことを除き、コネクタ部材60および近位側ステント70と類似している。遠位側コネクタ部材124は遠位側ステント128に固着されもしくは取付けられるが、その両者は夫々図8および図9に示された本発明の二分岐形態に関して更に十分に記述される。遠位側コネクタ部材124および遠位側ステント128は、コネクタ部材60および近位側ステント70に対して適切な材料で且つそれに対して適切な方法に従い製造され得る。更に、遠位側コネクタ部材124は、管状構造すなわち移植片本体区画53、または更に典型的には遠位側ネック部分77に対し、取付けられ、固着され、または、一体形成され得る。遠位側コネクタ部材124は更に、充填ポート・ブリッジ132を備える。
【0088】
図3Aは、図2に示された近位側コネクタ部材60の詳細な平坦パターンを示す図である、近位側コネクタ部材60は、12個の冠部もしくは頂点65を有する遠位端部66および近位端部64を備える。交互的な近位側頂点65は、近位側コネクタ部材側コネクタ要素62を備える。これらのコネクタ要素62は各々、近位端部61、遠位端部63、および、遠位端部63の近傍に配設された選択的耳部80を備える。耳部80は、コネクタ要素62に対して大きな表面積を提供することでコネクタ要素と移植片近位側ネック部分との間の結合の強度の最大化を助力し、更に、一個以上の選択的開孔82を備えることで、先に論じられた如く斯かる結合を更に強化する。対向する各ショルダ部分84は、それらが絡まり、裂開し、または別様に移植片の他の構成要素もしくは内部で該移植片が展開される内腔の他の構成要素と干渉する可能性を最小化すべく、丸み付けられた角隅部を有し得る。ショルダ部分84はまた、一個以上の選択的ショルダ孔85も有する。これらのショルダ孔85は、近位側ステント70および近位側コネクタ部材60の各デバイスが図5Aに関して以下で論じられる如く組立てられる間に該ステント70および部材60の安定化を助力する上で有用である。
【0089】
AAAを治療する移植片に対し、重要な解剖学的寸法パラメータは、治療可能最小ネック長(minimum treatable neck length)である。概略的に、治療されるべき動脈瘤もしくは疾患領域の近位側の腹部大動脈において、このパラメータは解剖学的に、最遠位側の腎動脈心門(renal artery ostium)の遠位側縁部(たとえば、動脈瘤組織に最も近い心門の部分)と、上記移植片が近位側シールを生成することが意図された大動脈内の箇所との間の距離として記述され得る。同様に、治療されるべき動脈瘤または疾患領域の遠位側の腸骨動脈領域においてこのパラメータは、各内部腸骨動脈のいずれか(すなわち同側もしくは対側の内腸骨動脈)の心門近位側縁部と、移植片による遠位側シールの生成が意図された血管箇所との間の距離として記述され得る。概略的には、更に短寸の治療可能最小ネック長を治療すべく設計された移植片は、その様に設計されない移植片よりも多数の患者を治療すべく使用され得ることから、臨床的かつ商的に更に好適なデバイスに帰着する。
【0090】
一例として、このネック長を図7の二分岐移植片に関して記述した場合、対応寸法は2つの主要成分を有する。一方の成分は、移植片ネック部分の自由縁部(たとえば近位側ネック部分縁部109)と、接続部材の逆端部(たとえば、図3Aに示された近位側接続部材60の遠位端部66または図8に示された遠位側接続部材124の近位端部127)との間の距離である。この距離は、図3Bの代替的コネクタ部材実施例において長さL1として示される。上記接続部材の長手寸法は、この第1成分を支配する。
【0091】
第2成分は、(上述された如く)接続部材の逆端部と、血管壁をシールする膨張可能環状部の部分(たとえば近位側膨張可能環状部111または選択的な遠位側膨張可能環状部117)との間の距離である。この距離は、図3Bの近位側ネック部分23において長さL2として示される。近位側もしくは遠位側のネック部分の領域における移植片の長手寸法は、この第2成分を支配する。
【0092】
本発明の移植片が投入鞘体もしくはカテーテル内に装填されたとき、その対応接続部材は第1拡開形態から第2折畳み形態へと移動する。図1、図2乃至図3Aおよび図5乃至図8の接続部材の長さは典型的に、それらの冠部もしくは頂点において蒙る歪みが所定の分析的スレッショルド値を超えない点まで最小化される。
【0093】
図3B乃至図3Cは、上述された如き歪みスレッショルド値により制限されないという点において好適である代替的コネクタ部材設計態様を示している。コネクタ部材89は、連続的リングではなく、図3Bの平坦投影図に概略的に示された如く移植片近位側ネック部分23に埋設された個別繋止部91の形態の一個以上の個別コネクタ部材要素から成る。図3Cには、同様の単一繋止部91の更に詳細な例が示される。一個以上の繋止部91を備えるコネクタ部材89のこの実施例は、単独で、または、本明細書中に開示されたひとつ以上の連続的リング実施例と組み合わされて、本明細書中で論じられた任意の移植片実施例において使用され得る。
【0094】
繋止部91は示された如き形状とされることで、高牽引荷重下で移植片ネック部分23からの引張り出しに対する抵抗力を最大化し得る。各々は、遠位側部分95、中間部分96およびコネクタ要素97から成る。図3Bおよび図3Cの図示繋止部実施例においてコネクタ部材要素91は”T”形状を取り、その場合に近位端部96は、ネック部分23に一体化されたときに移植片ネック部分23の縁部109を越えて延在する。遠位側区画95は、引張り出し抵抗を増進すべく拡大される。繋止部91は、NiTi、ステンレス鋼、その合金などの如き本明細書中で論じられた材料の内の任意の材料であってコネクタ部材および/またはステントに対して適切な材料から成り得る。
【0095】
図3Cは、コネクタ部材の他の実施例に関して本明細書中で論じられる特徴の付加的な詳細を示している。たとえばコネクタ要素97は選択的耳部101および選択的開孔103を備えることで、コネクタ要素89と移植片ネック部分との間の結合の強度を最大化し得る。対向するショルダ部分105もまた、一個以上の選択的ショルダ孔107を有し得る。これらの特徴に対する利点は、本明細書中の他の箇所にて、および、血管内移植片ネック部分に対する繋止部91の取付方法を教示する同時係属の米国特許出願第10/029,584号にて更に十分に記述される。
【0096】
繋止部91は冠部を有さないので、リング形式のコネクタ部材実施例において発生する歪みに関する設計態様および性能の問題は関係しない。故に、ネック部分23内に埋設される各繋止部91の長さL1は相当程度まで、移植片ネック部分23内に対する繋止部91の十分な固定度合いを達成するに必要な材料の量により支配される。組立ての間に移植片材料が重ね付けられる耳部101、および、(移植片層内に繋止部91を固定する所定形式の接着剤の役割を果たす)フッ素化エチレン・プロピレン共重合体(FEP)水性分散液が貫通浸入し得る孔などの特徴によれば、最小限の距離で適切な固定が達成され得る。適切な固定が達成される限りにおいて、移植片フラップの縁部から繋止部の埋設端部までの長さは任意に短寸とされることで、移植片ネック長の成分が容易に最小化され、上述の臨床的および商的な利点が可能とされ得る。
【0097】
各繋止部は、約0.5mm〜約7mm以上に亙る長手方向の長さL1を有し得る。これにより概略的に、たとえばコネクタ部材60に依るよりも広範囲の患者が治療され得る。用いられる繋止部91の個数は、移植片、所望される繋止強度の程度などにより変化する。ひとつの形態において移植片は約4個の繋止部から約10個の繋止部を備え得る一方、他の移植片実施例はそれより多数のまたは少数の繋止部91を有し得る。図7に関して論じられる如き二分岐移植片実施例において本発明者等は、遠位側コネクタ部材124および150に対する代替策として、第1および第2の二分岐部分遠位端部の一方もしくは両方にコネクタ部材89を取入れれば有用であることを見出した。二分岐部分114、115の少なくとも一方内にコネクタ部材89を取入れると、コネクタ部材89の近傍における移植片および部分114、115の遠位側ネック部分154は更に小寸の直径へと圧縮されることから、更に小さいプロフィルの投入鞘体もしくはカテーテルを使用する可能性が与えられ得る。移植片の各脚部の一方もしくは両方内に5個のコネクタ要素を有する遠位側ステントに関して5個の遠位側繋止部91が用いられ得るという二分岐移植片形態は、特に好適である。理解され得る如く繋止部91は、リング形式のコネクタ部材と共にまたはそれら無しでの任意の組合せにて、図1、図2および図7に示された血管内移植片のいずれの端部にも使用され得る。
【0098】
コネクタ部材89に対するこの特定設計態様の別の利点は、概略的にコネクタ部材89が、近位側コネクタ部材60(図3、図5)または遠位側コネクタ部材124(図8)などの同等のリング設計態様よりも少ない材料から成るという事実から生ずる。これにより、コネクタ部材89および近位側ネック部分の近傍において移植片の圧縮直径は比較的に小寸とされることから、更に小さいプロフィルの投入鞘体もしくはカテーテルを使用する可能性が与えられ得る。この利点は、図7の二分岐移植片100の短寸の第2脚部115の遠位側ネック部分154において、投入カテーテルまたは鞘体内への装填時に、遠位側ステント128と第2二分岐部分115に関連する遠位側接続部材150とが第1二分岐部分114における移植片材料に寄り掛かるという事実に依り、特に有用であり得る。一定の鞘体もしくはカテーテルの移植片装填形態において、この領域はプロフィル制限的であり、且つ、実際に移植片に対して用いられる投入カテーテルまたは鞘体の直径を決定し得る。更に小寸のプロフィルの機能は最終的に、更に小寸の体腔内へアクセスする能力に帰着し、その他の場合に可能であるよりも広範囲の患者を治療し得るという利点に繋がる。
【0099】
図3Dに示された実施例において上記コネクタ部材は、単独でまたは繋止部91と組み合わされて、一個以上の個別V形状コネクタ部材要素98を備え得る。図示実施例においてV形状コネクタ部材要素98は、該V状コネクタ部材要素の各側部99上に配設されたコネクタ要素97を有し得る。移植片に取付けられる要素97の個数は取付け方式および移植片直径に依存するが、典型的には8〜10個のコネクタ要素97(たとえば、4個または5個のV状コネクタ部材要素)が在る。他の形態においてコネクタ要素97は、所望であれば、上記V状コネクタ部材要素の1個置きの側部99上に分布され得る。
【0100】
上記コネクタ部材は、種々の形式のステントと共に使用され得る。たとえば一定の実施例において上記コネクタ部材は、単段式もしくは二段式のステントと共に使用され得る。図4乃至図5および図6乃至図7に示された如く二段式近位側ステント70は、近位端部76と、近位側ステント側コネクタ要素72を備えた遠位端部79とを有する。近位側ステント側コネクタ要素72は、遠位側ステント側コネクタ要素62のショルダ部分84とミラー対向し得る対向ショルダ部分78を有する。
【0101】
近位側ステント70は支柱71を備え、該支柱の任意のひとつは一個以上の逆棘74を更に備え得る。各逆棘の近傍の選択的な逆棘包み込みパッド86は、移植片50がその減径投入形態に在るときに逆棘74を遮蔽する役割を果たす。支柱71または包み込みパッド86はまた、移植片50(および、故に近位側ステント70)がその投入形態に在る間に逆棘74の保持を助力する選択的な逆棘包み込みスロット83も含み得る。図1に関して前述された如き移植片50の展開時に、逆棘74は逆棘包み込みスロット83から解放され、且つ、図2および図6に示された如きそれらの動作形態もしくは展開形態で載置される。患者の血管内でその様に展開されたときに近位側ステント70は拡開されることで逆棘74を少なくとも部分的に血管壁内へと押しやることから、移植片50は其処に据え付けられ、且つ、その他の場合には移植片50を移動させ得る流体流の力が阻まれる。
【0102】
近位側ステント70は、先に論じられた如くデバイス解放バンドを収納する一群以上の選択的な溝87も備え得る。
【0103】
しかし、図1の近位側ステント40と異なり、近位側ステント70は第1の六冠部領域90および第2の三冠部領域92を有する二段式構成要素である。第1の六冠部領域90は、6個の頂点94(すなわち6個の遠位側頂点および6個の近位側頂点)を有する蛇行リングから成る。同様に第2の三冠部領域92は3個の頂点93を有する蛇行リングから成り、その遠位側頂点は六冠部領域90の1個置きの近位側頂点94に接続している。尚、近位側ステント70は典型的に、各段の間に(機械的接続部もしくは溶接部などの)接合部もしくは接続部が無い様に、単一片の材料から作成されることを銘記されたい。但し、別体の部材もしくはステントから2つ以上の段が接合もしくは接続されて単一ステントを形成し得るという他の形態が可能であり、同様に、2段以上を有する単一片ステントも可能である。
【0104】
近位側ステント70は三冠部領域92にて、六冠部領域90におけるよりも大きな外径方向力を呈し得る。斯かる設計態様は特に、疾患の部位から更に離間した血管の更に健康な区画内にて斯かる外径方向力の付与が所望されるという臨床的設定において有用である。故に近位側ステント70は、斯かる径方向力に適応し得る血管の部分内において繋止機能を履行し得る。
【0105】
図5は、近位側ステント70に接合されるコネクタ部材60の平坦パターン図である。この実施例に対してはコネクタ部材60および二段式の近位側ステント70の種々の頂点65、93および94の間に、12個のコネクタ部材頂点65、近位側ステントの第1の六冠部領域90ににおける6個の頂点94、および、近位側ステントの第2の三冠部領域92における3個の頂点93が在る、という関係がある。
【0106】
先に論じられた如く頂点の実際の個数は変化し得るのであるが、このことは、種々の頂点間の関係が記述され得るという本発明の有用な規約を更に一般的に例証するものであり;たとえば、コネクタ部材60の頂点65の個数を”n”と表現するなら、”n/2”は近位側ステント70の第1の六冠部領域90の頂点94の個数を表し、且つ、”n/4”は近位側ステント70の第2の三冠部領域92の頂点93の個数を表す。他の有用な実施例としては、”n”個のコネクタ部材頂点、”n”個の近位側ステント第1領域頂点および”n/2”個の近位側ステント第2領域頂点が在るという実施例が挙げられる。これらの比率は適切であれば変更可能であり;これらの特定の比率群は例示的にすぎない。
【0107】
また図5においては、コネクタ部材側コネクタ要素62は連結部材54を介して近位側ステント側コネクタ要素72に連結されることを銘記されたい。
【0108】
図5Aは、近位側ステント側コネクタ要素72、コネクタ部材側コネクタ要素62および連結部材32の側面図である。連結部材32は、重なり合うコネクタ部材側コネクタ要素62および近位側ステント側コネクタ要素72の回りにコイルを形成することでコネクタ部材60を近位側ステント70に機械的に接合すべく巻回されたワイヤもしくは同様の要素である。代替的に、移植片50のこれらの構成要素を接合すべく溶接、ろう付け、半田付け、機械的手段、接着剤などの他の任意の適切な接合技術が使用され得る。但し本発明者等は連結部材32などの機械的手段が最も有用であることを見出した、と言うのも、溶接などの技術によれば特にステント/コネクタ要素材料がニッケル・チタンであるときに接合部から一定距離離間した可能的な熱影響域が該材料に悪影響することから、接合強度、疲労寿命および最終的には移植片50の完全性に悪影響があるからである。
【0109】
連結部材32に対しては任意の適切な部材が使用され得るが、本発明者等は、(任意の形状が使用され得るが)円形断面形状を有するワイヤもしくはワイヤ状部材が有用であることを見出した。最適には、ワイヤ連結部材32はニッケル、ステンレス鋼、ニッケル・チタンなどの適切な金属から形成され得る。上記ワイヤは、約0.05mm(0.002インチ)〜約0.15mm(0.006インチ)、より詳細には約0.07mm(0.003インチ)〜約0.12mm(0.005インチ)に亙る直径を有し得る。
【0110】
コネクタ要素62および72を相互に対して固定すべく、整合された各コネクタ要素の回りに連結部材32は1回以上巻回され得る。本発明者等は、巻線がショルダ78、84からショルダ78、84に亙り相互に直近となることでワイヤの単一層を呈するほど十分な巻線を配備すれば、移植片50の新規な設計態様により与えられる低い投入プロフィルを損なわずに、この様に生成された接合部に対して十分な強度および剛性が提供されることを見出した。故に、最適な巻回の数は移植片毎に変化するが、典型的には殆どの用途において約6〜18巻回の範囲である。連結部材32を所定位置とすれば、コネクタ部材側コネクタ要素62および近位側ステント側コネクタ要素72は相互に対して確実に連結される。本明細書中で論じられた連結部材32の特徴および利点は、本明細書中で論じられた本発明の実施例の任意のものにより利用され得る。
【0111】
図6は、この様にして近位側ステント70に接合されたコネクタ部材60の拡開もしくは展開形態における斜視図である。図示の明瞭化のために移植片本体区画53および他の移植片構成要素は除去されている。逆棘74は、選択的な逆棘包み込みパッド86から解放された展開状態で示される。図示実施例において12頂点コネクタ部材60は近位側もしくは遠位側ステントの第1の六頂点または六冠部領域90に接続され、且つ、そのステントは上記六冠部領域と一体的なまたはそれに対して接合された第2の三頂点もしくは三冠部領域92を有する。示されてはいないが別の有用な実施例は、八頂点コネクタ部材(すなわち八個のコネクタ部材要素を有するコネクタ部材)が近位側ステントの第1の八頂点もしくは八冠部領域に接続され且つそのステントは上記八冠部領域と一体的なもしくはそれに対して接合された第2の四頂点もしくは四冠部領域を有する、という実施例である。
【0112】
図7は、二分岐式血管内移植片100の形態である本発明の別実施例を示している。血管内移植片100などの二分岐デバイスは、たとえば、治療されるべき動脈瘤が解剖学的二分岐部内へとまたは二分岐部への腸骨動脈の一方もしくは両方内へと延在し得るという腹部大動脈瘤の場合などにおいて血管内の二分岐部におけるもしくはその近傍の疾患内腔を修復すべく利用され得る。以下の検討においては特に言及がなければ、二分岐移植片100の実施例においては先に論じられた移植片実施例の種々の特徴が必要に応じて使用され得る。
【0113】
移植片100は、第1二分岐部分114、第2二分岐部分115および本体部分116を備える。二分岐部分114および115のサイズおよび角度配向は、部分114および115の間においてさえ、移植片投入システム要件および種々の臨床的要求に適応すべく変更され得る。たとえば各二分岐部分もしくは脚部は図7において異なる長さを有して示されるが、これは必須ではない。第1および第2二分岐部分114および115は概略的に、患者の腸骨動脈の内径と適合する外側膨張直径を有すべく構成される。第1および第2二分岐部分114および115はまた、一定の用途において湾曲し且つ屈曲的でさえある解剖学的構造に更に良好に適応すべく湾曲形状にも形成され得る。
【0114】
内孔22および73と同様に、本体部分116および第1および第2二分岐部分114および115は協働して、自身を貫通する流体流を局限すべく構成される連続的な二分岐内孔を形成する。また図7では不図示であるが移植片100は第2二分岐部分115を有さず、その場合に二分岐内孔は本体部分116と第1二分岐部分114との間に形成される。
【0115】
第1および第2二分岐部分114および115は各々、図2の実施例に関して論じられた如く膨張可能チャネル113などの膨張可能環状部およびチャネルのネットワークを備える。チャネル113は一本以上の略平行な膨張可能円周方向チャネル144と流体連通する一本以上の選択的な膨張可能長手チャネル110(たとえば背柱)を備えるが、それらの全ては選択的な遠位側膨張可能環状部117および119と流体連通する。チャネル110は、線形もしくは曲線的な(たとえば波形状の)構成を取り得る。
【0116】
先に論じられた実施例と同様に、膨張可能円周方向チャネル144の本数は、所定徴侯に適合した移植片の特定形態により変更され得る。但し概略的に、一個の二分岐部分当たりの膨張可能円周方向チャネル144の本数は1本〜約30本、好適には約10本〜約20本に亙り得る。同様に、円周方向膨張可能チャネル144の寸法、間隔、角度配向なども変更され得る。
【0117】
たとえば、各円周方向膨張可能チャネル144間の距離および各チャネルの幅は、移植片の長さに沿い変化し得るかまたは一定とされ得る。ピッチまたはリング間距離は約2mm乃至約20mmに亙り得ると共に、特に約3mm乃至約10mmに亙り得る。円周方向膨張可能チャネル144は各々が典型的に約2mm乃至約4mmの幅であるが、約1mm乃至約8mmの幅とされ得る。各長手チャネル110は典型的に約2mm乃至約4mmの幅であるが、相互にまたは個別に、約1mm乃至約8mmの幅となるべく変更され得る。
【0118】
図7の実施例においてチャネル113は、第1二分岐部分114から本体部分116を通り第2二分岐部分115まで延在する連続的な環状部およびチャネルのネットワークを形成する。故に膨張可能チャネル113は、近位側膨張可能環状部111、二次的近位側環状部112、円周方向膨張可能チャネル144、選択的な遠位側膨張可能環状部117および選択的な遠位側膨張可能環状部119を流体的に接続してネットワークとする。尚、背柱もしくは長手チャネル110は環状部111および112と流体連通されるべく本体部分116に沿い近位方向に延在することを銘記されたい。
【0119】
一定の実施例においては多くの場合、特に図7に示された如き二分岐実施例などの本発明の移植片に対しては、不適切な捻れなしで当該移植片が内部載置されるべき血管もしくは体腔の長さもしくは蛇行性を補償する機能を備えることが好適である。これは特に、その他の場合には蛇行性の解剖学的構造が血管内治療の可能性を妨げ得るというAAAの治療に対して好適である。
【0120】
本発明者等は、たとえば図7に対して記述された如き移植片の縮小能力は移植片膨張可能背柱もしくは長手チャネル110により課される制限により支配されると確信する。故に、たとえば図7の移植片に見られる背柱110の設計態様に対して考案された代替策によれば、(臨床的に不都合な移植片内孔内への貫入に帰着して遠隔血管の潅流に影響し得る)不適切なレベルの捻れなしで長寸化もしくは短寸化するという本発明の移植片脚部114、115の機能が改善され得る。
【0121】
長手チャネルもしくは背柱110は、各膨張可能チャネル144間でチャネル110が予測可能的に1回以上捻れるのを許容する一個以上の所定捻れ箇所を生成する溶接もしくは継目パターンにより構築され得る結果、移植片の脚部および/または本体部分としての各捻れに関して移植片内孔内への移植片材料の貫入は少なくなる。
【0122】
図7A乃至図7Bは、所定捻れ箇所を有さない本発明の移植片を概略的形態で示している。たとえば図7Aには、図7の二分岐移植片100の第1二分岐部分114の移植片チャネル・パターンの概略的平坦図が示される。長手移植片チャネルすなわち背柱110は、第1二分岐部分114の丈を垂直下方に延在し、且つ、対称的な一連の膨張可能チャネルもしくはリング113と交差する。各チャネル113間には、移植片100の膨張不能区画201が示される。図7Bにおいて、斯かる2本のチャネル113間の長手断面を取ると、移植片内孔22を備えた第1二分岐部分114は移植片脚部捻れと共に示される。縮小の間においてチャネルもしくは背柱110は、移植片壁部の膨張不能区画において隣り合う膨張可能チャネル113間の略中点125にて捻れ得る。図7Bの例における縮小の量は、捻れが生じる前の箇所Aおよび箇所Cの間の距離と比較して今や短寸化された同一の各箇所間の距離により示される。このおよび他の捻れは、背柱110が受ける長手方向の縮小の総量に寄与する。捻れの量は、移植片第1二分岐部分114のいずれかの側の箇所Bが内孔22内へ貫入する量に対応する。
【0123】
図7Cに示された如く各チャネル113間にて長手チャネルもしくは背柱110の丈に沿いひとつ以上の捻れ箇所123’を有すべく該背柱110のパターンを構成すると、移植片内孔22内へと形成される一切の捻れの貫入は減少される。図7Dに示された如く2個の指定点123’の夫々には捻れ123が示され、隣り合うチャネル113間の同一長さにおいて捻れの個数が倍加されている。各図にては示されないが、捻れ箇所123’は種々の単純なまたは複雑な形状を取り得る。たとえば捻れ箇所123’は単一のラインとされ得るか、または、それは三角形、矩形、半円形または他の形状を取り得る。また捻れ箇所123’は、図7Cに示された如く背柱110の各側部上に対称的に配設される必要もなく、たとえば、本明細書中に記述された如く捻れを開始する所期機能の役割を果たす限りにおいて、隣り合うチャネル間において背柱110の片側の単一の捻れ箇所で十分である。
【0124】
尚、図7Dに示された各捻れにおける箇所B’の内孔貫入の量は図7Bの箇所Bに対するものよりも小さいことを銘記されたい。もし内孔22内への更に少ない貫入が所望であれば、各膨張可能チャネル113間において長手内孔110上には更に多数個の所定捻れ箇所が生成され得る。所定捻れ箇所は主として図7の二分岐移植片に関して論じられたが、図1および図2の実施例に対して所定捻れ箇所が設計され得ることを理解すべきである。
【0125】
図7の移植片ならびに図1および図2のそれに対する代替実施例においては、多数の他の膨張可能チャネルおよび環状部形態が可能である。たとえば上記膨張可能チャネルは、長手方向に、水平に、螺旋様式で、鋸歯状に、ジグザグに、または別様に配設され得る。二分岐部分114および115のいずれかもしくは両方ならびに本体部分116上には、一個以上の付加的環状部が配設され得る。他の実施例において移植片100は、膨張のための複数の部位を必要とする区画化チャネルおよび環状部を有し得ると共に、各領域における特性を最適化すべく複数の膨張材料を使用し得る。
【0126】
第2二分岐部分115は、第1二分岐部分114と同様の構成とされ得る。図7の移植片100の実施例において第2二分岐部分115は、第1二分岐部分114および本体部分116と単一的で連続的な構成である。代替的に第1および第2二分岐部分114および115は、単一的にもしくは共同的に本体部分から別体的に形成され得ると共に、身体通路内において展開の前に又は斯かる展開の後で生体内で上記本体部分に接合され得る。
【0127】
第1および第2二分岐部分114および115は、展開されたときに概略的に円筒状であり得ると共に、これらが内部展開される血管内部の形状に概略的に合致する。本体部分116から測定されたそれらの長さは、約1cm乃至約10cm以上に亙り得る。環状部117および119における第1および第2二分岐部分114および115の夫々の遠位端部の名目的膨張外径は、約2mm乃至約30mm、好適には約5mm乃至約20mmに亙り得る。
【0128】
本体部分116は、一本以上の膨張可能長手チャネル110と流体連通する近位側膨張可能環状部111および選択的な二次的近位側膨張可能環状部112を備える。他の実施例と同様に、近位側環状部111は基本的に移植片100を内腔壁部に対して堅固にシールする役割を果たす。二次的近位側膨張可能環状部112は、移植片が内部にて展開される血管が高度に角度付けられまたは屈曲的であるという臨床的用途において特に、移植片100に対する付加的捻れ抵抗力を付与することが見出された。二次的近位側膨張可能環状部112の名目的膨張外径は約10mm乃至約45mm、好適には約15mm乃至約30mmに亙り得る一方、近位側環状部111の名目的膨張外径は約10mm乃至約45mm、好適には約16mm乃至約32mmに亙り得る。本体部分116の長さは約2cm乃至約10cm、好適には約4cm乃至約8cmに亙り得る。
【0129】
血管内移植片100は近位側コネクタ部材118、近位側ステント120および近位側ネック部分146を更に備えるが、それらの全ては図2乃至図6に関して上記で論じられた構成要素と同様とされ得る。(不図示の)連結部材は、図1乃至図6の実施例に関して論じられた如く近位側ステント120および近位側コネクタ部材118を接合し得る。図1および図2の実施例に関して論じられた如き近位側コネクタ部材、近位側コネクタ部材要素および近位側ステントもまた、二分岐移植片100での使用が可能である。
【0130】
取入口軸心角度を形成するバイアス近位端部も有するという本発明の特徴を有する移植片の二分岐実施例において、バイアスもしくは角度付けの方向は、移植片と展開部位の形態との間の適切な嵌合の達成に関して重要であり得る。概略的に、移植片の近位端部、近位側ネック部分または近位側繋止部の角度的バイアスは、任意方向とされ得る。好適には上記角度的バイアスは、移植片による治療が意図された種類の病巣(たとえば腹部大動脈瘤)の平均的角度状態に一致した方向および大きさである。
【0131】
図2および図4乃至図6に示された実施例の近位側ステント70と同様に近位側ステント120は、たとえば腹部大動脈瘤を治療すべく腹部大動脈内に当該デバイスが植設されたときに生体内での拍動力の方向に対する信頼性の高い繋止のために遠位方向に配向される逆棘121を備える。
【0132】
二分岐部分114および/または115の一方もしくは両方は、遠位側コネクタ部材124および/または150、遠位側ステント128および遠位側ネック部分154を更に備え得る。図7の実施例は、第1および第2二分岐部分114および115の各々の遠位端部に配設された遠位側コネクタ部材124および遠位側ステント128を夫々有する。遠位側コネクタ部材124および遠位側ステント128は、図8および図9に相当に詳細に示される。
【0133】
図2の実施例に関して論じられた如く且つ図8に更に明確に示された如く、第1二分岐部分114にまたはその近傍に配設された遠位側コネクタ部材124は、遠位側コネクタ部材側コネクタ要素130および選択的な充填ポート・ブリッジ132を備える。充填ポート・ブリッジ132は、遠位側コネクタ部材124の連続リング構造を保持し乍ら、遠位側コネクタ部材124が移植片100の製造と膨張媒体の注入とに対して干渉するのを防止する役割を果たす。
【0134】
膨張可能チャネル113(および本発明の他の膨張可能部材)は、遠位側膨張可能環状部117を介して充填ポート160と連通する。充填ポート160は、代替的に第2二分岐部分115もしくは移植片本体部分116上に配設され得ると共に、一個以上の充填ポートが使用され得る。先に論じられた如く充填ポート160は、流体(気体および/または液体)、粒子、ゲルまたはその組み合わせの加圧源を受け入れるべく構成される。
【0135】
図2の実施例に関して論じられた如く、図9は遠位側ステント側コネクタ要素134を含む遠位側ステント128の平坦パターンの詳細である。遠位側コネクタ部材側コネクタ要素150は、図1乃至図6の実施例に関して論じられたのと同様に(不図示の)連結部材を介して遠位側ステント側コネクタ要素134に連結されるべく構成される。遠位側ステント128は、一個以上の選択的な遠位側ステント逆棘136、一個以上の選択的な遠位側ステント逆棘包み込みパッド138、および、デバイス解放バンドを収納する選択的な一群以上の溝140を備えるが、それらの各々は上記で論じられた各実施例の対応特徴と類似様式で機能する。遠位側ステント逆棘136は逆棘121の配向の方向と逆に近位方向に配向されることで、生体内にて二分岐部分114および115を近位方向に移動させ得るという腸骨動脈にて多くの場合に見られる環境に適応する。遠位側逆棘136はまた、(不図示の様に)遠位側ステント128においてまたは本明細書中で論じられた遠位側ステント実施例の任意のものにおいて遠位方向に配向され得る。尚、本発明の図7の実施例には多数が示されるにも関わらず、図9においては図示明瞭化のために2個の遠位側ステント逆棘136のみが示されることを銘記されたい。本発明の全ての実施例は近位側ステントおよび遠位側ステントを含み、その各々が選択的に1個、2個、または任意数の逆棘を備え得ると共に、それらの任意の組合せが遠位方向、近位方向または他の任意の方向に配向され得ることは理解される。
【0136】
図1および図2の実施例と同様に、遠位側ステント128は二分岐部分114、115の一方もしくは両方に連結され得る。ステント128は、遠位側コネクタ部材124、150または一個以上の個別コネクタ部材要素89(図3B乃至図3D)により二分岐部分114、115に連結され得る。ひとつの有用な実施例において、ステントおよびコネクタ部材(またはコネクタ部材要素)の任意のものは近位側ネック部分146上に配設され得ると共に、二分岐部分114、115の一方もしくは両方は五頂点もしくは五冠部領域を有する遠位側ステント128に連結された五頂点コネクタ部材(または5個のコネクタ部材要素を有する接続部材)を有し得る。理解され得る如く、本明細書中に記述されたステント、コネクタ部材およびコネクタ部材要素の任意のものはコネクタ部材頂点、コネクタ部材要素およびステント冠部の個数の任意の組合せと共に、任意の組合せにて二分岐部分114、115の一方もしくは両方と共に使用され得る。
【0137】
図7の実施例において第2二分岐部分115の遠位端部152にてまたはその近傍に配設された選択的な遠位側コネクタ部材150は、充填ポート・ブリッジ132が無いこと以外、第1二分岐部分114の遠位側コネクタ部材124のそれと同様である構造を有する。本発明の他の実施例としては、遠位側コネクタ部材150が充填ポート・ブリッジを含むという二分岐移植片が挙げられる。
【0138】
図10乃至図16Eは、本発明の種々のステント、チャネル、環状部およびコネクタ部材の任意のものにおいて任意の組合せにて使用され得る本発明の付加的な選択的特徴を示している。
【0139】
図10に戻ると、近位側ステント70の第2の三冠部領域92の近位側頂点93の簡略化詳細が示される。頂点93の外側面170は、半径r1を有する円172により定義された円形の曲率半径を取る。ステント支柱頂点93の内面174は、楕円176により示された楕円形を取る。図10の形態において円172および楕円176は参照番号177により示される如くオフセットしているが、それらは共通の中心を共有し得る。半径r4は楕円176の焦点の一方にて示され、これらの焦点は図10において距離171だけ分離される。
【0140】
本発明者等は、本発明で用いられるNiTiステントに対して斯かる構成は、ステントにおいて更に分散した歪み分布を提供すると共に組立ての間かつ生体内で蒙るピーク歪みを減少する一方、特に近位側ステント70の第2の三冠部領域92の近位側頂点93において他の構成と比較して更に小寸の投入プロフィルも許容することを見出した。但し、図10のステント頂点形態は、本明細書中に記述された他の任意のステントもしくはコネクタ部材頂点において使用され得ると共に、NiTi以外の材料から成る構成要素に対して用いられ得る。
【0141】
近位側頂点93または第2の三冠部領域92の図10の例において本発明者等は、NiTi構成要素に対しては約0.76mm(0.030インチ)乃至約1.77mm(0.070インチ)、特に約1.27mm(0.050インチ)の半径r1が有用である一方、約ゼロ乃至約1.27mm(0.050インチ)、特に約0.06mm(0.0025インチ)のオフセット171が有効であることを見出した。約0.25mm(0.010インチ)乃至約0.76mm(0.030インチ)、特に約0.50mm(0.020インチ)の半径r4も有用である。
【0142】
図11は代替的なオフセット円形頂点形態の詳細である。此処では、近位側ステント70の第1の六冠部領域90における近位側頂点94の簡略化詳細が(図示明瞭化のために、たとえば図4に見られる第2もしくは三冠ステント領域に対する遷移領域無しで)示される。頂点94の外側面180は、半径r2を有する円182により定義される円形の曲率半径を取る。頂点94の内面184は、半径r3を有する円186により定義された円形の曲率半径を取る。半径r2は、半径r3と等しくまたはそれより大きくされ得ると共に、本発明の有効範囲内とされ得る。円182および186の中心は、図11において参照番号188により示された如く相互からオフセットされる。このオフセット188は、頂点94の領域において支柱71の幅に等しく、それより大きくもしくは小さくされ得る。
【0143】
本発明者等は、斯かる形態が、本発明のステントおよびコネクタ部材に対してNiTiが用いられたときに、特に近位側ステント70の第1の六冠部領域90の近位側頂点94において他の形態と比較して、生ずるピーク歪みを頂点94からステント支柱71まで分布させるに有効であることを見出した。但し図11のオフセット円形頂点形態は、本明細書中に記述された他の任意のステントもしくはコネクタ部材頂点において使用され得ると共に、NiTi以外の材料から成る構成要素に対して用いられ得る。近位側ステントの第1の六冠部領域90の近位側頂点94において用いられたときに、本発明者等は、約16mm乃至約26mmの範囲の拡開もしくは展開直径を有するNiTiステントにおいては、約ゼロ乃至約0.76mm(0.030インチ)、特に約0.50mm(0.020インチ)の範囲のオフセット値が有効であることを見出した。本発明者等はまた、半径r2が約0.50mm(0.020インチ)乃至約1.01mm(0.040インチ)、より詳細には約0.88mm(0.035インチ)に亙り且つ半径r3は約0.12mm(0.005インチ)乃至約0.50mm(0.020インチ)、特に約0.25mm(0.010インチ)に亙る形態が有効であることも見出した。
【0144】
本発明の種々のステント実施例の支柱41および71ならびに種々の近位側および遠位側コネクタ部材に対しては、選択的な単一もしくは複数のテーパが取入れられ得る。概略的に、近位側および遠位側ステントの両者上の支柱に一個以上のテーパを取入れると、テーパ領域には、逆棘および包み込みパッドなどの代替的特徴を収容する大きなスペースが提供される。これにより、上記構成要素が径方向に折り畳まれた投入形態とされたときに更に小寸の展開プロフィルが許容される。本発明者等は、本発明の種々のステントおよびコネクタ要素をこの減径投入プロフィルへと構成したときに、ステントは多くの場合に不十分にもしくは局所的に分布される大きな度合いの屈曲歪みを受けることを見出した。特定箇所における一定のステント支柱をテーパ付けすると、容易に、ステントもしくはコネクタ部材の全体に亙りこの歪みが更に均一に分布されると共に、ピーク歪みが管理される。次に、以下においては図12および図13の例が導入されて論じられる。
【0145】
図12には近位側ステント70の第2の三冠部領域92の単純化区画が示され、その場合にステント支柱71は(頂点93の領域において支柱71の幅と等しくてもそうでなくても良い)最大幅190から最小幅192までテーパ付けされる。最小幅192に対する最大幅190の比率として表現される上記選択的テーパは、上記ステントもしくはコネクタ部材の特定領域、用いられる材料、および他の要因に依存して広範に変更され得る。1〜約10以上のテーパ比率は、本発明の有効範囲内である。ステント支柱71がテーパを呈さないことも本発明の有効範囲内である。
【0146】
たとえばNiTiから作成された近位側ステント70の三冠部領域92において本発明者等は、約0.40mm(0.016インチ)乃至約0.81mm(0.032インチ)、特に約0.55mm(0.022インチ)乃至約0.71mm(0.028インチ)に亙る最大支柱幅190、および、約0.25mm(0.010インチ)乃至約0.66mm(0.026インチ)、特に約0.30mm(0.012インチ)乃至約0.55mm(0.022インチ)の最小支柱幅192が有効であることを見出した。本明細書中に記述されると共に図12に示された選択的なテーパ支柱の特徴は、本明細書中に記述された他の任意のステントもしくはコネクタ部材頂点において使用され得ると共に、NiTi以外の材料から成る構成要素に対して用いられ得る。
【0147】
次に図13を参照すると、遠位側ステント128の単純化区画が、非対称的冠部に帰着する選択的テーパ付けの例として示される。この例において遠位側ステント128は、幅198を呈する遠位側頂点もしくは冠部196、および、更に小寸の幅202を呈する近位側頂点もしくは冠部200を備える(図示明瞭化のためにコネクタ要素134は除去されている)。幅198および幅202が等しいことは本発明の有効範囲内である。
【0148】
特に本発明の遠位側ステントに対して本発明者等は、遠位側頂点200が近位側頂点196のそれよりも小寸の支柱幅を有するという非対称的冠部は、近位側および遠位側頂点の各々の間に及ぼされる拡開力の差に帰着することを見出した。この構成を有するステントの近位側頂点は、疾患内腔もしくは血管内で展開されたときに、移植片シール領域の近傍に更に小さい拡開力を及ぼす傾向があることから、環状部の近傍の(更に脆弱で更なる疾患組織が存在しやすい)シール領域における組織に対して斯かるステントが損傷を引き起こす可能性が減少される。斯かる構成によれば、上記構成要素が減径投入プロフィルから拡開治療プロフィルまで移動したときに、一貫して安全で予測可能な展開も促進される。最後に、斯かるテーパは遠位側頂点200により呈される拡開を減少し、これにより、上記遠位側ステントが減径形態とされたときに遠位側ステント投入プロフィルは更に小寸となる。(幅198と幅202との間の比率と同様の様式で定義される)1乃至約10以上のテーパ比率は、本発明の有効範囲内である。
【0149】
NiTiから成る遠位側ステント128に対し、本発明者等は約0.25mm(0.010インチ)乃至約0.66mm(0.026インチ)、特に約0.30mm(0.012インチ)乃至約0.60mm(0.024インチ)の範囲の幅202が有用であることを見出し、且つ、本発明者等は、約0.40mm(0.016インチ)乃至約0.81mm(0.032インチ)、特に約0.43mm(0.017インチ)乃至約0.71mm(0.028インチ)の範囲の幅198が有用であることを見出した。
【0150】
勿論、種々の形式のオフセット半径および楕円および円形頂点半径の組み合わせは、これらのテーパおよび比率を実施することで、減径投入形態への組立ての間における所望挙動、効率的な投入および生体内での性能を更に提供する。
【0151】
図14および図15は、本発明の移植片の任意のものと共に用いられ得る低プロフィルの二段式ステントの2つの付加的実施例を示している。図14および図15の二段式ステントは、移植片本体に対する十分な支持を提供し乍ら、移植片の近位側(もしくは遠位側)ネック部分におけるステント材料、移植片材料および一切の接着剤の量を減少する可能性を有する。斯かる材料の減少によれば、更に小寸のプロフィルの移植片が提供される。故に、更に小寸の体腔にアクセスすべく、更に小寸のプロフィルの投入デバイスが使用され得る。以下の記述は近位側ネック部分を備えたステントの使用に焦点を合わせるが、斯かるステントは容易に血管内移植片の遠位側ステントとしても用いられ得ることを理解すべきである。
【0152】
概略的に低プロフィルの二段式ステントは、血管内移植片の近位側ネックに埋設もしくは別様に取付けられた低プロフィルの取付繋止部と、低プロフィルの遠位側ステントと共に用いられる。図14に示された如くステント210は、近位側ステント212および遠位側ステント214から成る。近位側ステント212は、冠部もしくは頂点218を画成する複数の支柱216から成る蛇行リングの形態とされ得る。同様に、遠位側ステント214もまた、遠位側頂点222を画成する支柱220から成る蛇行リングの形状とされ得る。一形態において近位側支柱216は、近位側ネック部分に配設される材料の量が減少される如く、遠位側支柱220よりも広幅である。代替的形態において近位側ステント212および遠位側ステント214の支柱幅は、所望であれば同一とされ得る。理解され得る如く、図10乃至図13に関して上述された支柱の寸法および形態もまた、近位側ステント212および遠位側ステント214に適用可能である。
【0153】
一形態において近位側ステント212はコネクタ要素224の近位端部に連結され得ると共に、遠位側ステント216はコネクタ要素224の遠位端部に連結され得る。コネクタ要素224は典型的に、血管内移植片の全体的ネック部分長を最小化すべく、近位側ネック部分226の近位側縁部225の近傍に位置決めされる。近位側ステント212は典型的に、体腔壁部の表面に対してコネクタ部材224および遠位側ステント214の両者を付勢するに十分な径方向力を提供すべく構成される。一実施例において遠位側ステント214は移植片近位側ネック部分226の外側面に沿い位置決めされ得る。但し他の実施例において遠位側ステント214は、移植片近位側ネック部分内に埋設され得るか、または、移植片ネック部分の内面に沿い配設され得る。
【0154】
コネクタ要素224は、血管内移植片の近位側ネック部分226に取付けられたコネクタ部材228に対して二段式ステント210を取付けるべく使用され得る。上述された如くコネクタ要素224は、コネクタ部材228の(不図示の)対応コネクタ要素に対して連結部材230により取付けられ得る。図示実施例において各コネクタ部材は、血管内移植片の近位側ネック部分226に埋設された複数の個別取付繋止部の形態である。但し他の実施例において、上記コネクタ部材は他の形態を取り得る。
【0155】
コネクタ要素224の個数は特定の繋止部形状および移植片直径に依存するが、約4個〜約10個のコネクタ部材が在ることが企図される。但し、本発明によれば任意数のコネクタ部材が用いられ得ることを理解すべきである。
【0156】
先に論じられた如く、近位側ステント212および遠位側ステント214上の頂点の個数は変更され得る。図14には近位側ステントおよび遠位側ステントにおける頂点の比率のひとつの例示的実施例が示され、”n”個のコネクタ要素224が在る。遠位側ステント214には約”n”個〜約”3n”個の遠位側頂点222(典型的には”2n”個の遠位側頂点)があり、且つ、近位側ステント212には”n”個の近位側頂点218が在る。但し他の実施例においては、(たとえば2n個以上の)更なる近位側頂点218が在る。これらの比率は適切であれば変更され得ると共に、これらの特定群の比率は例示的にすぎない。図示実施例においては、隣り合う繋止部228の各々を接続する遠位側ステント214が在る。但し他の形態においては、1個置きの繋止部などの間にのみ遠位側ステントが在り得る。
【0157】
図15は、二段式ステント210の別実施例を示している。近位側ステント212および遠位側ステント214は、図14のステントと実質的に同一の形態を有する。たとえば近位側ステント212はコネクタ要素224の近位端部に連結され、且つ、遠位側ステント216はコネクタ要素224の遠位端部に連結される。各実施例間の基本的な差は、近位側ステントおよび遠位側ステントを移植片近位側ネック部分226に対して取付けるべく用いられる複数の個別V形状コネクタ部材要素240の使用である。V形状コネクタ部材要素240の端部242、244の各々は、近位側ステント212および遠位側ステント214の接続要素224に取付けられ得るコネクタ要素を備える。但し図示実施例において遠位側ステントは、上記近位側ネック部分を体腔壁部に対して保持すべく、隣り合う各V形状コネクタ部材要素240間に位置される。
【0158】
図示実施例においては”n”個毎のコネクタ要素224に対し、”n/2”個のV形状コネクタ部材要素240が在る。隣り合う各V形状コネクタ部材要素間の全てのスペースに対しては、各V形状コネクタ部材要素240のコネクタ要素の間に遠位側ステント214が位置決めされ且つ該コネクタ要素に対して連結され得る。上記遠位側ステントは任意数の遠位側冠部222を有し得るが、典型的には”n”個乃至”3n”個の遠位側冠部、好適には約”2n”個の遠位側冠部を有する。一実施例において近位側ステント212は”n”個の近位側頂点218を有するが、所望であれば更なる(たとえば2n個以上の)近位側頂点を有し得る。
【0159】
近位側および遠位側ステント212、214は、本明細書中に記述されたステントもしくはコネクタ部材に対して適切な任意の従来材料から製造され得る。NiTiなどの超弾性特性を有する形状記憶合金から製造されたとき、上記ステントは拘束状態からの解放時に自己拡開すべく構成され得る。
【0160】
不図示ではあるが、近位側ステント212および/または遠位側ステント214は本明細書中に記述されたステントの任意のものの形状を取り得ると共に、本明細書中に記述された逆棘、包み込みパッドまたはステントの他の要素の任意の組合せも備え得る。
【0161】
図16A乃至図16Eは、本発明の移植片の任意のものに取入れられ得る代替的な環状部設計態様を示している。参照を容易とするため、各図には1個の環状部16のみが示される。但し図16A乃至図16Eに示された代替的な環状部設計態様は、環状部17において、または、本明細書中に記述された他の環状部の任意のものにおいて用いられ得ることを理解すべきである。図16Aにおいて直径D2により概略的に示された如く、(図16Aにおいて参照番号16’で表される)軸心対称環状部を有する移植片本体区画近位端部14の自由サイズは、移植片10が配設されるべき血管もしくは体腔の直径より大きく設計されることで、適切なシールを形成し、たとえば疾患動脈瘤血管壁が血液流から排除されるのを確実とし得る。図16Aは、直径D1を有する不図示の血管もしくは他の体腔の内壁に対して配設された場合に圧縮されたときの移植片本体区画近位端部14および関連して膨張された環状部16’を示している。環状部16のプロフィルと比較して環状部16’の膨張済プロフィルは平坦であることから、血管壁に対するシール的装着を表す。
【0162】
図1および図16Aに示された環状部16、16’(および環状部17)、図2の環状部56、57、および、図7の環状部111、117および119の設計態様は本明細書中に記述された如く高度に信頼性の高い流体シールを提供する上で臨床的に好適であることが判明したが、膨張された環状部を血管もしくは体腔の壁部に対して押圧してそのシールを生成すると、(同時係属の米国特許出願第10/029,570号、第10/029,584号および第10/029,557号に記述された如く)上記環状部構造のメンブレン性質により該環状部の折畳み部が形成される可能性がある。図16Bは図16Aの理想化移植片部分の横断面を概略的に示すことで、環状部が自由空間内で膨張されたときの膨張済環状部の(点線D2で示された)外側面と比較して、移植片が生体内に配設されたときの膨張済環状部の(実線D1で示された)外側面にて斯かる折畳部もしくは縮れ部31が如何にして生ずるかを概念的に例証している。これらの折畳部もしくは縮れ部31は、種々の実験室内実験で例証されると共に、シールを通る不都合な流体漏出を生成する可能性を有する。
【0163】
図16Cおよび図16Dにおいて、環状部16は円筒対称的でなく、ジグザグもしくは鋸歯状を取るという移植片本体区画13の近位端部14の理想化概略図には、斯かる折畳部もしくは縮れ部31の可能性に対処した代替的な環状部設計態様が示される。この選択的な形態によれば、環状部が膨張されたときに所期のシール機能が提供されるが、該形態は血管もしくは体腔壁部に対する環状部16の径方向干渉により生じ得る折畳部により影響されにくくなる。図16Cおよび図16Dに概略的に示された如く、鋸歯状環状部16の一実施例は環状部頂点19がヒンジとして作用する機能により移植片10の可能的な陥入を減少することから、たとえば図16Cのそれから図16Dのそれへの移植片直径減少に適応し得る。
【0164】
図16Eは更に、陥入を最小化すべく鋸歯状環状部16が如何に設計され得るかを示している。此処で内側曲率半径R1は、各頂点19における外側曲率半径R2に向かう方向にオフセットされる。内側曲率半径R1をこの様にオフセットするとR1はオフセット無しの場合よりも大きくされ得ることから、頂点19における”ヒンジ”の同一の角度変化に対して頂点19にて生成される歪みは小さくなり、メンブレン・ヒンジもしくは頂点19が不都合な陥入を蒙る可能性は付随的に低くなる。図16C乃至図16Eのこの代替的な鋸歯状環状部の設計態様はまた、本発明の移植片の捻れ抵抗力を好適に増進し得る、と言うのも、頂点19のヒンジ作用により移植片本体の長手折畳みを防止すると移植片本体13における不都合な捻れの開始も防止され易いからである。
【0165】
有用な膨張媒体としては概略的に、複数の成分の混合により形成されると共に、数分から数十分、好適には約3分乃至約12分の範囲の硬化時間を有するものが挙げられる。斯かる材料は、生体適合性であり、長期安定性(好適には生体内で少なくとも10年のオーダー)を示し、与える塞栓のリスクは可及的に低いものであり、且つ、生体内における本発明の移植片の運用に適切となるべく硬化前および硬化後のいずれにおいても適切な機械的特性を呈すべきである。たとえば斯かる材料は、凝固もしくは硬化の以前には比較的に低い粘度を有することで、移植片環状部およびチャネルの充填プロセスを促進せねばならない。斯かる膨張媒体の硬化後の好適な弾性率は344.73kPa(50psi)乃至約2757.90kPa(400psi)であり、生体内において適切なシールを形成するという充填済移植片の必要性に調和する一方、移植片の臨床的に適切な捻れ抵抗力を維持する。上記膨張媒体は理想的には短期的にも長期的に放射線不透過性とされるべきであるが、これは絶対的に必要なものではない。
【0166】
本発明における膨張媒体として適切な組成物の詳細は、2000年2月1日に出願されると共に”共役不飽和基に対する求核付加反応により形成された生体材料(Biomaterials Formed by Nucleophilic Addition Reaction to Conjugated Unsaturated Groups)”と称されたフッベル等(Hubbell et al.)に対する米国特許出願第09/496,231号、および、2000年6月2日に出願されると共に”医薬的に活性な化合物の制御式投与に対する共役付加反応(Conjugate Addition Reactions for the Controlled Delivery of
Pharmaceutically Active Compounds)”と称されたフッベル等に対する米国特許出願第09/586,937号に相当に詳細に記述されている。これらの特許出願の各々の全体は、言及したことにより本明細書中に援用される。
【0167】
本発明者等は、本発明に対する膨張媒体の役割を果たすにはマイケル付加プロセス(Michael addition process)により形成された特定の三成分媒体が特に有用であることを見出した。この媒体は、
【0168】
(1)約50〜約55重量%の割合、特に約52重量%の割合で存在するポリエチレングリコール・ジアクリレート(PEGDA);
【0169】
(2)約22〜約27重量%の範囲の割合、特に約24重量%の割合で存在するペンタエリトリトール・テトラ−3(メルカプトプロピオネート);および、
【0170】
(3)約22〜約27重量%の範囲の割合、特に約24重量%の割合で存在するグリシルグリシン緩衝液;
【0171】
から成る。
【0172】
適切であれば、両件ともにフッベル等に対する同時係属の米国特許出願第09/496,231号および第09/586,937号に記述された、これらの成分および他の配合の変更例が使用され得る。これに加えて本発明者等は、約350〜約850の範囲の分子量を有するPEGDAが有用であり、約440〜約560の範囲の分子量を有するPEGDAが特に有用であることを見出した。
【0173】
この三成分系に対しては、先に論じられた如き放射線不透過性材料が添加され得る。本発明者等は、グリシルグリシン緩衝液に対して硫酸バリウム、タンタル粉末などの放射線不透過剤(radiopacifier)およびヨウ素化合物などの可溶材料を添加することが有用であることを見出した。
【0174】
本発明者等は、リン酸塩で緩衝された塩水中のトリエタノールアミンは上述の第3成分としてグリシルグリシン緩衝液に対する代替物として使用されることで、本発明の各実施例で使用されるに適した代替的な硬化可能ゲルを形成し得ることを見出した。
【0175】
これらの三成分系に対する代替物は、生体適合溶媒からポリマ沈降で作成されたゲルである。斯かる適切なポリマの例としては、エチレン・ビニルアルコールおよび酢酸セルロースが挙げられる。また斯かる適切な生体適合溶媒の例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n−メチル・ピロリドン(NMP)およびその他が挙げられる。斯かるポリマおよび溶媒は、適切であれば種々の組み合わせで使用され得る。
【0176】
代替的に、膨張ゲルとして種々のシロキサンが使用され得る。その例としては、(カリフォルニア、サンラモンのダンヴィル・マテリアル(Danville Materials of San Ramon, California)からのSTAR−VPS、および、カリフォルニア、サンタバーバラのニューシル・インク(NuSil, Inc. of Santa Barbara, California)により製造された如き種々のシリコーン製品などの)親水性シロキサンおよびポリビニル・シロキサンが挙げられる。
【0177】
本発明に対する膨張媒体もしくは材料として有用な他のゲル系としては、加熱もしくは冷却時に初期の液体もしくは揺変状態からゲル化する相変化系が挙げられる。たとえば、約500〜約1,200の範囲の分子量を有するn−イソプロピル−ポリアクリルアミド(NIPAM)、BASF F−127プルロニック・ポリオキサマ(pluronic
polyoxyamer)、および、ポリエチレングリコール(PEG)化学物質が適切である。
【0178】
有効なゲルはまた十分な剪断流動化(shear−thinning)を受ける揺変性材料から成ることから、それは投入カテーテルなどの管路を通して容易に注入され得るが、本発明の種々のチャネルおよび環状部内に存在するときにはゼロもしくは低い剪断速度にて実質的にゲル状と成り得る。
【0179】
上述の三成分PEDGA−QT−グリシルグリシンの配合物の場合には、適切な混合、投入および最終的な臨床的効力を確実にすべく、慎重な調製および投入手順が追随されねばならない。上記三成分の各々は典型的に、血管内移植片を展開する適時まで、注入器などの無菌容器内に別体的に収納される。上記QTおよび緩衝液(典型的にはグリシルグリシン)は先ず、典型的には約2分間に亙り夫々の注入器間で連続的かつ十分に混合される。次に、結果的な二成分混合物に対しては約3分間に亙りPEGDAが十分に混合される。この結果的な三成分混合物は次に移植片本体区画内への導入の準備ができる、と言うのも、それは所望特性を有するゲルへと次の数分間内に硬化するからである。硬化時間は、臨床的設定の要件に従い、上記配合物、混合手順および他の変数を調節することで適合調整され得る。これらの材料に対する適切な投入手順の詳細は、チョボトフ等に対する同時係属の米国特許出願第09/917,371号において論じられる。
【0180】
本発明者等は、これらのゲルの硬化後の機械的特性が上記配合物に対するそれほどの変更なしで高度に適合調整可能であることを見出した。たとえばこれらのゲルは数百kPa乃至数千kPa(数十psi乃至数百psi)に亙る弾性率を呈し得るものであり、上述の配合物は約30〜約50%に亙る破損伸びにより約1206.58kPa(175psi)〜約1723.69kPa(250psi)の弾性率を呈する。
【0181】
特に本発明者等は、上記膨張材料に対して不活性生体材料を添加することが有用であることを見出した。特に本発明者等は、塩水などの流体を(典型的には当該配合物が混合されたが十分な硬化が生ずる前に)PEGDA−QT−グリシルグリシン配合物に対して添加すると、該配合物の粘度が低くなり、且つ、該配合物の所望の物理的、化学的および機械的特性もしくはその臨床的効力を犠牲にすることなく膨張済環状部およびチャネルの移植片本体区画ネットワーク内へと該配合物が結果的に非常に容易に注入されることを見出した。適切な体積割合にて塩水などの材料を添加すると、溢流または漏出の場合にPEGDA−QT−グリシルグリシンなどの膨張材料が塞栓のリスクを引き起こす可能性も減少され得る。最終的な塩水/三成分配合物の組み合わせの体積割合としての塩水濃度は、ゼロ乃至60%以上までにも亙り得ると共に、特に適切なのは約20〜約40%の範囲の塩水濃度である。本発明者等は、約30%の塩水体積濃度が最も適切であることを見出した。塩水に対する代替物としては、グリシルグリシンの如き緩衝液などの生体適合液体が挙げられる。
【0182】
更に概略的な表現では、当該膨張媒体の成分の各々が生体適合性であり血液に可溶性であるという膨張媒体を使用するのが好適である。膨張媒体が偶発的に患者の血管系に放出された場合の一切の毒性リスクを管理すべく、生体適合性膨張媒体が望ましい。斯かる膨張媒体は、硬化の前に血液流内に溢流しても分散、ゲル化または凝固してはならない。而して溢流の場合には、通常の血液流が上記各構成要素を迅速に分散し、且つ、それらの濃度は架橋して固体を形成するに必要なレベル未満まで低下する。これらの構成要素は次に、患者に対して塞栓リスクを課さずに標準的な系路を通して身体により排除される。全ての成分が血液に可溶性であるという膨張媒体の例の多くの可能性の中には、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、チオール化ポリエチレンアミン(thiolated polyethyleneamine)および緩衝液の組み合わせが在る。
【0183】
先に論じられた如く、一種類以上の膨張媒体、または、一種類の膨張媒体の一種類以上の変更例が単一移植片で使用されることで、該移植片が配設される領域における移植片特性が最適化され得る。
【0184】
たとえば本発明の種々の実施例の近位側および遠位側の環状部において上記膨張材料は形状適合可能なシール媒体の役割を果たすことで、内腔壁部に対するシールを提供する。故に上記近位側および遠位側の環状部内の膨張媒体に対して望ましい機械的特性としては、環状部が(石灰質化したプラーク凹凸などの)一切の内腔不整の回りにおいて変形して内腔プロフィルに合致するのを可能とする低い剪断応力、ならびに、後事における一切の内腔拡張に適応してシールを維持すべく充填材料が必要なだけ環状部を拡開するのを許容する大きな体積圧縮性が挙げられる。
【0185】
対照的に、単一もしくは複数のチャネルにおいて上記膨張媒体は基本的に、移植片が内部載置される内腔に対する構造的支持と、移植片に対する捻れ抵抗力とを提供する。故に単一もしくは複数のチャネルにおける上記膨張媒体の望ましい機械的特性としては、(たとえば新内膜過増殖[neointimal hyperproliferation]に起因する)血管もしくは内腔からの外部圧縮力によるチャネルもしくはチャネルセグメントの非弾性変形を防止するための高い剪断応力、および、相互に圧縮接触し得る隣接チャネルもしくはチャネルセグメント同士に対して安定な支持を提供することで移植片に対する捻れ抵抗力を提供するための低い体積圧縮性が挙げられる。
【0186】
これらの対照的な要件を考慮すると、近位側および遠位側の環状部に対する第1の膨張媒体および単一もしくは複数のチャネルに対する第2の膨張媒体などの様に、移植片の異なる部分に対して異なる膨張材料を充填するのが有用であり得る。
【0187】
本発明の種々の実施例においては、移植片環状部およびチャネルが膨張媒体により充填されつつあるという展開時の間において螢光透視鏡などの技術を使用して膨張媒体が可視とされるのが望ましい。斯かる可視性によれば臨床医は、環状部およびチャネルが正しく充填されていることを確認すると共に、そうでない場合には充填手順を調節し得る。それによれば、移植片からの膨張材料の一切の漏出もしくは別様の不都合な流れを検出する機会が提供されることから、注入は停止され得ることで漏出膨張材料の量が最小化される。
【0188】
移植片が患者内へと展開された後、コンピュータ断層撮影(CT)などの追跡撮像技術を用いて移植片を可視とするのが望ましい。但しこの時点において膨張材料は理想的には、血液を造影剤により不透明化することで視覚化される臨床的に重要な内部漏出を可能的に覆い隠す如き稠密なCT画像を生成するほどには、放射線不透過性とはされない。
【0189】
但しこれらの2つの目的のバランスを取ることは困難である、と言うのも、少量の放射線不透過物を検出する上でCT技術は螢光透視鏡技術よりも相当に感度が高いからである。ひとつの解決策は、たとえば一種類以上の放射線不透過性材料が膨張媒体から経時的に拡散することで膨張媒体の放射線不透過性が減少するという放射線不透過性材料の配合物を使用するなどして、経時的に放射線不透過性が少なくなる膨張媒体を使用することである。たとえば、ヨウ化水溶液などの可溶性造影剤と硫酸バリウムなどの不溶性造影剤との配合物は、この目的に対して有用である。上記可溶性造影剤は移植片が植設された後の一定時点にて移植片本体区画の細孔から拡散する結果、膨張材料の放射線不透過性は経時的に漸減する。この機能に対しては、約2%(重量)の硫酸バリウムおよび約20%(重量)のヨウ化対照液の組み合わせから調製された充填材料用放射線不透過剤が有用である。
【0190】
本発明の特定形態が図示かつ記述されたが、本発明の精神および有効範囲から逸脱せずに種々の改変が為され得ることは明らかである。
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2001年12月20日にチョボトフ等(Chobotov et al.)により出願されて”先進の血管内移植片(Advanced Endovascular Graft)”と称された米国特許出願第10/029,559号の継続出願である2002年3月5日にチョボトフ等により出願されて”先進の血管内移植片”と称された米国特許出願第10/091,641号の一部継続出願であるが、それらの全ての開示内容は言及したことにより本明細書中に援用される。
本出願はまた、チョボトフ等による”血管内移植片材料を成形する方法および装置(Method and Apparatus for Shape Forming Endovascular Graft Material)”と称された米国特許出願第10/029,570号、チョボトフ等による”血管内移植片接合部および製造方法(Endovascular Graft Joint and Method for Manufacture)”と称された米国特許出願第10/029,584号、チョボトフ等による”血管内移植片区画を製造する方法および装置(Method and Apparatus for Manufacturing an Endovascular
Graft Section)”と称された米国特許出願第10/029,557号にも関連する。上記出願の全ては本出願と同様に本出願人が所有すると共に、2001年12月20日に出願されている。また上記各出願は言及したことにより夫々全体的に本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、血管系の障害を治療するシステムに関する。より詳細には本発明は、身体における流れ管路を可能的に阻害する疾患もしくは損傷を治療するシステムに関する。たとえば本発明の実施例は、消化器系および増殖器系における徴侯(indication)、ならびに、胸部および腹部大動脈瘤、(外傷により引き起こされたものなどの)動脈解離などの心血管系における徴侯などを治療する上で有用である。斯かる心臓血管徴侯は、多くの場合には死亡であるという結果の過酷さの故に、介在的処置を必要とすることが多い。
【背景技術】
【0003】
腹部大動脈瘤などの徴侯に対し、動脈瘤破裂のリスクが手術の不利益より重要であるという時点まで動脈瘤のサイズが成長したときには依然として、習用の開腹手術が従来的で最も広く利用される治療である。外科的修復は、動脈瘤が形成された血管の区画を移植片で置換する段階を包含する。手術処置の例は、1986年の”大動脈瘤の手術治療(Surgical Treatment of Aortic Aneurysms)”(ダブルビー・ソーンダーズ社[W.B. Saunders Company])においてコーレイ(Cooley)により記述されている。
【0004】
しかし、その利点に関わらず開腹手術は、主として処置の侵襲的で複雑な性質の故に高い罹患率および死亡率を伴う。手術に伴う合併症としてはたとえば、動脈瘤破裂の可能性、末梢部に対する血液流の長期間の制限に関する機能喪失、失血、心筋硬塞、鬱血性心不全、不整脈、および、汎用的な麻酔および機械的な人工呼吸システムの使用に伴う合併症が挙げられる。これに加え、動脈瘤の修復を要する典型的な患者は高齢であり健康状態が不十分であることから、これらの事実により合併症の可能性は相当に大きくなる。
【0005】
外科的介在のリスクおよび複雑さの故に、斯かる障害を治療する代替的方法を開発する種々の試みが為されてきた。一定度合の成功を収めた斯かる方法のひとつは、大腿動脈を介して二分岐ステント/移植片(bifurcated stent−graft)をカテーテル式に投入して大動脈内の動脈瘤を排除するものである。
【0006】
大動脈瘤の血管内修復は、従来の外科的修復技術に対する有望で魅力的な代替策である。該処置の低侵襲的性質の故に、医療的合併症のリスクは相当に減少する。また回復期間も相当に短くなり、付随的に入院の長さおよび費用も減少する。たとえば開腹手術は平均で6日間の入院と、集中治療室における1日以上とを要する。対照的に血管内修復は典型的に、2、3日の入院を必要とする。また一旦退院したなら、手術による患者は6〜8週間を要するが血管内修復により利益を得る患者は2週間以内に完全に回復し得る。
【0007】
しかし、これらのおよび他の相当の利点にも関わらず、血管内式システムは多くの欠点を有する。現在の二分岐ステント/移植片は、多くの場合に24フレンチ以上の直径である比較的に大寸の投入カテーテルを必要とする。これらのカテーテルはまた、大きな曲げ剛性を有する傾向がある。斯かる制約により、ステント/移植片を投入する上では外科的な静脈切開(cut−down)が結果的に必要となり、且つ、多くの場合には狭幅で不規則な罹患血管の動脈を通しての投入が困難となる。この故に大動脈瘤疾患の血管内的治療は、該治療により利益を得るであろう多くの患者に利用できるものでない。たとえば女性は統計的に更に小寸の血管を有する傾向があるので、一定の女性はこの理由のためだけに現在の多くの血管内的治療から排除される。故に、更に小寸で更に撓曲可能な投入カテーテルを介して投入され得る血管内ステント/移植片に対する要望が在る。また、斯かる血管内ステント/移植片が経皮的に投入され得るなら、更に大きな利点が実現され得る。
【0008】
更に、血管内ステント/移植片は血管内に着座かつシールされたままで相当の期間に亙り相当の拍動力に耐えねばならない。これらの目的を達成するために、種々の構成部材および/または材料から成り得るデバイスは原型を保たねばならない。上記デバイスは展開の部位において相当の拍動力を受け乍ら軸心方向移動に抗せねばならず、且つ、該デバイスは、(正味力が逆行性であり得る)該デバイスの近位端部もしくは頭部端部ならびに遠位端部もしくは尾部端部の両方にてまたは各端部にて該デバイスと血管壁との間の血液漏出を防止すべく、該デバイスが当該血管の内部で展開されるという血管の解剖学的構造に対して合致すべく径方向の十分な追従性を有さねばならない。また斯かるデバイスは、患者の生涯に亙り捻(ねじ)れもしくは捩(よじ)れなしで治療済血管の形態に合致せねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−23031号公報
【特許文献2】米国特許第6312462号明細書
【特許文献3】米国特許第6319276号明細書
【特許文献4】特表平11−501526号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は概略的に、血管などの体腔内に植設可能な医療デバイスを用いるという、身体通路の血管内的治療に対する方法およびシステムに関する。本発明の一定の実施例は、血管疾病を治療する血管内移植片を含む。
【0011】
一実施例は、近位端部および遠位端部を有する移植片本体区画を備えた移植片であって、一個以上のコネクタ部材側コネクタ要素を有するコネクタ部材が少なくとも一端に配設された移植片を含む。上記コネクタ部材は、上記移植片本体区画の複数層内に埋設され得る。上記一個以上のコネクタ部材側コネクタ要素に対しては、一個以上のステント側コネクタ要素を介してステントが連結もしくは固着され得る。上記移植片は、近位側ステントおよびコネクタ部材のみ、遠位側ステントおよびコネクタ部材のみ、または、近位側および遠位側ステントの両者およびそれらのコネクタ部材を含み得る。
【0012】
上記コネクタ部材側コネクタ要素および上記ステント側コネクタ要素は両者ともに、対向ショルダ部分を夫々備える近位端部および遠位端部を有し得る。上記移植片は更に、上記一個以上のコネクタ部材側コネクタ要素を上記一個以上のステント側コネクタ要素に連結もしくは接続すべく構成されたワイヤ・コイルなどの一個以上の連結部材を有し得る。
【0013】
上記コネクタ部材は、一個以上の頂点を有する蛇行リングの形態を取り得る。他の実施例において上記コネクタ部材は、複数の個別コネクタ部材要素とされ得る。
【0014】
上記個別コネクタ部材要素は種々の形状を取り得るが、(牽引荷重などの)種々の荷重下で上記移植片からの分離に抵抗すべく設計されねばならない。たとえば上記個別コネクタ部材要素の一個以上は、任意の組合せにて”V”もしくは”T”形状を取り得る。上記個別コネクタ部材要素の各々は、少なくとも一個のコネクタ要素を有すべきである。但し、上記コネクタ部材要素の各々に対して連結されるコネクタ要素の個数は、コネクタ部材要素の形状および移植片直径などの種々の要因に依存する。
【0015】
連続的なリング・コネクタ部材と比較し、本明細書中に記述された如く上記移植片において複数の個別取付用コネクタ部材要素を用いると、移植片近位側ネック部分における材料の量が減少される傾向となり、更に小径の移植片プロフィルが許容される。それはまた近位側ネック部分長さを減少し得ることから広範囲なAAA患者の治療を許容する、と言うのも、遠位側腎動脈と動脈瘤との間の短寸の大動脈ネック長は以下に相当に詳細に記述される如く対処され得るからである。所望であれば上記コネクタ部材要素は、上記移植片の遠位側ネック部分上にて、且つ、上述の改良との任意の組合せにて、本明細書中に記述されたステント/移植片の任意のものの上で腸骨肢(iliac limb)の少なくとも一方上にても使用され得る。
【0016】
関連する蛇行リング・コネクタ部材の一方は、上記ステントの頂点の2倍の頂点を有し得る。別実施例において上記移植片は、第1領域においては第2領域における頂点の2倍の頂点を備えるという二段式遠位側および/または近位側ステントを有する一方、関連するコネクタ部材は上記ステントの上記第1領域における頂点の2倍の個数を有する。たとえば、有用な実施例とは、近位側もしくは遠位側ステントの第1の六頂点もしくは六冠部領域に対して十二頂点コネクタ部材が接続されると共に上記ステントは上記六冠部領域と一体的なもしくはそれに対して接合された第2の三頂点もしくは三冠部領域を有するという実施例である。別の有用な実施例とは、八頂点コネクタ部材(または8個のコネクタ部材要素を有するコネクタ部材)が近位側ステントの第1の八頂点もしくは八冠部領域に接続され、且つ、そのステントは上記八冠部領域と一体的もしくはそれに対して接合された第2の四頂点もしくは四冠部領域を有する一方、少なくとも一個の遠位側ステントは五頂点コネクタ部材(もしくは5個のコネクタ部材要素を有するコネクタ部材)に接続された五頂点または五冠部領域を有する。
【0017】
代替実施例においては、関連するコネクタ部材を備えた単段式および多段式の近位側および遠位側ステントの種々の組み合わせを含む移植片が可能である。
【0018】
上記ステントはまた、一個以上の逆棘も含み得る。典型的に、近位側ステント上の逆棘は遠位方向に配向されることで、移植片が典型的に配設される近位側から遠位側への流れ場における組織に対して上記ステントを係合させる。同様に、腹部もしくは胸部大動脈瘤を治療すべく移植片が展開される用途において一個以上の遠位側ステント上の逆棘は典型的に近位方向に配向されることで上記ステントを組織壁部内に係合させて、典型的には逆行性の移動力に抗するが、一個以上の遠位側ステントは、たとえば、投入カテーテルおよび/またはバルーン操作に関連する周縁処置的な遠位方向力に抗すべく遠位方向に配向された一個以上の逆棘も含み得る。上記逆棘は、約1mm乃至約5mmの長さに亙り得る。上記逆棘は典型的には夫々のステントの長手軸心から外径方向に突出すると共に、ステントが生体内で展開されたときに移植片近位側ネック部分取入口軸心に関して約10°乃至約45°の逆棘径方向角度を形成する。上記逆棘はまた、上記逆棘反跳角度を形成すべく上記逆棘径方向角度が形成された平面に直交する平面内において側方にもバイアスされ得る。
【0019】
上記(近位側および/または遠位側の)単一もしくは複数のステントは、近位側ステントが減少プロフィル投入形態に在るときに各逆棘が当該ステント支柱により保持される如く、当該支柱に一体化された一個以上の選択的な逆棘包み込みパッドを有する支柱を備え得る。上記血管内移植片が展開形態に在るときに、上記一個以上の逆棘は解放される。
【0020】
上記単一もしくは複数のステントはまた、該ステントが投入形態に在るときに各逆棘がスロットにより保持される如く上記逆棘を受容すべく構成された選択的な逆棘包み込みスロットも備え得る。展開形態において、上記各逆棘はそれらの対応逆棘包み込みスロットから解放される。
【0021】
これに加え、上記単一もしくは複数のステントは溝を備え得る。典型的な投入システムにおいては、血管内移植片をその圧縮投入形態に保持するのを助力すべく、一定形式のベルトもしくは縫合糸が使用され得る。上記溝は、上記デバイスの小径投入を大径化することなくこれらのベルトもしくは縫合糸を収容し得ると共に、ステントに対するベルトの確実な位置も提供し得る。
【0022】
上記移植片本体区画はまた、該移植片本体区画の近位端部、遠位端部もしくは両者上にまたはその近傍に配設された一個以上の膨張可能環状部も有し得る。該膨張可能環状部は、膨張されたときに移植片本体区画の支持を助力する十分に強靱な構造を提供すると共に、移植片が内部で展開される血管の内側表面に対して移植片をシールする形状適合的な表面を提供する。
【0023】
一定の実施例において上記膨張可能環状部は、上記移植片本体の近位端部および/または遠位端部の回りに軸心対称円筒パターンで配設され得る。
【0024】
他の実施例において上記近位側および遠位側シール用環状部は、鋸歯状形態を取り得る。鋸歯状膨張可能環状部は圧縮折畳みを受けにくいという利点があることから、上記移植片は体腔の直径の変化に影響されにくい。上記鋸歯状膨張可能環状部は、複数の頂点を画成するジグザグ・チャネルから成り得る。
【0025】
膨張されたときに本発明の鋸歯状膨張可能環状部は、体腔と移植片の径方向干渉により引き起こされ得る陥入を受けにくい。一定の形態において上記鋸歯状膨張可能環状部は鋸歯部における可変半径を備えることで、不都合な陥入の可能性を更に減少し得る。
【0026】
上記移植片本体区画は、一本以上の膨張可能チャネルも含み得る。上記単一もしくは複数のチャネルは典型的に、近位側および遠位側膨張可能環状部の間に配設され且つそれらのいずれかもしくは両方と流体連通され得る。上記単一もしくは複数のチャネルは、その膨張時に移植片本体区画の剛性を強化し、移植片本体区画の捻れの防止を助力し、且つ、患者の身体通路内において移植片の展開を促進もし得る。上記単一もしくは複数の膨張可能チャネルは移植片本体区画に関して長手および/または線形形態とされ得るが、代替的には螺旋形態もしくは円周方向形態またはその一定の組み合わせを取り得る。相互接続されたグリッドもしくはリングなどの他の配向もまた、単独で、または他の形態の任意のものとの組み合わせで適切であり得る。
【0027】
上記膨張可能チャネルはまた、捻れ抵抗力もしくは折畳み抵抗力を提供する鋸歯状パターンも有し得る。上記鋸歯状膨張可能チャネルは、螺旋的に、円周方向に、または、環状リブおよび背柱の形態などで配設され得る。斯かる膨張可能チャネルの捻れ抵抗力は、長手折畳部の形成を防止すべく枢動する上記鋸歯部の機能に依り強化され得る。一定の形態において上記鋸歯部は、異なる内側および外側半径を有し得る。
【0028】
隣り合う(鋸歯状もしくは非鋸歯状の円周方向リングのいずれかである)各膨張可能チャネルを接続する上記チャネルは代替的に、移植片の本体または肢部の可撓性を促進すべく、交互配置されまたは不連続な長手チャネルもしくは背柱を有し得る。
【0029】
上記血管内移植片は一本以上の膨張可能長手チャネルもしくは背柱および一本以上の円周方向膨張可能チャネルを有し得るが、その任意のものは、患者の血管もしくは体腔の長さおよび蛇行性における差を不適切な捻れなしで調節すべく短寸化および長寸化する能力を有すべく設計され得る。上記長手チャネルもしくは背柱は、たとえば隣り合う円周方向膨張可能チャネル間に配設された一個以上の所定の”捻れ箇所”を備え得る。上記長手チャネルは各円周方向膨張可能チャネル間において一回以上捻れるべく構成されることから、移植片内孔内への各捻れの貫入の量が減少され得る。
【0030】
上記各膨張可能チャネル(および近位側および遠位側の環状部)を相互接続する上記長手チャネルもしくは背柱はまた、移植片長手方向における優れた圧縮を許容すべく、非線形もしくは波状の形態も取り得る。斯かる形態は、縮小の間において移植片が捻れる可能性を更に減少し得る。
【0031】
上記移植片の展開の間において膨張可能な単一もしくは複数の環状部および単一もしくは複数のチャネルは、固体、流体(気体および/または液体)、ゲルもしくは他の媒体から成り得る材料により膨張もしくは注入され得る。本発明に依れば有用な膨張媒体としては、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、ペンタエリトリトール・テトラ−3(メルカプトプロピオネート)、および、リン酸塩で緩衝された塩水中のグリシルグリシンもしくはトリエタノールアミンなどの緩衝液、の組み合わせが挙げられる。この三成分膨張媒体に対しては、膨張媒体の全体積の約60%までの量で塩水もしくは他の不活性生体適合液体が添加され得る。上記膨張媒体を螢光透視鏡下で可視とすべく、該三成分媒体に対しては典型的に上記緩衝液内にて、タンタル、ヨウ化造影剤、硫酸バリウムなどが添加され得る。
【0032】
本発明の別実施例において上記移植片は、本体部分と、当該連続内孔を通る流体流を局限すべく構成された連続内孔を形成する第1二分岐部分とを備え得る。上記移植片はまた、上記本体部分と流体連通する第2二分岐部分も含み得る。上記本体部分の近位端部および上記第1二分岐部分の遠位端部のいずれかもしくは両方には、少なくとも一個の膨張可能環状部が配設され得る。先に記述された如く各膨張可能環状部間には一本以上の膨張可能チャネルが配設され得ると共に、該チャネルは上記本体部分の一定部分もしくは全てに亙り延在し得る。上記環状部およびチャネルは、上述された如く塩水もしくは他の液体などの不活性生体材料により選択的に希釈された膨張媒体により充填され得る。
【0033】
本発明の更に別の実施例において上記移植片は、当該連続的二分岐内孔を通る流体流を局限すべく構成された連続的二分岐内孔を形成すべく第1および第2二分岐部分と流体連通する本体を備え得る。上記本体部分の近位端部および上記第1および第2二分岐部分の遠位端部のいずれかもしくは両方にてまたはその近傍には、少なくとも一個の膨張可能環状部が配設され得る。先に記述された如く各膨張可能環状部間には一本以上の膨張可能チャネルが配設され得ると共に、該チャネルは上記本体部分の一定部分もしくは全てに亙り延在し得る。
【0034】
上記本体部分の上記近位端部は、一個以上のコネクタ要素を備えるコネクタ部材と、上記一個以上のコネクタ要素に連結された近位側ステントとを有し得る。同様に、上記第1および/または第2二分岐部分の一方もしくは両方は、夫々の遠位端部上に配設された一個以上のコネクタ要素を備える第1および/または第2の遠位側コネクタ部材と、該第1および/または第2の遠位側コネクタ部材に連結された遠位側ステントとを有し得る。
【0035】
本発明はまた、壁部を有する体腔内に管状医療デバイスを植設するシステムであって、上記体腔壁部に上記医療デバイスを固着するステントと、上記ステントを上記医療デバイスに連結するコネクタ部材とを備え、上記ステントおよびコネクタ部材は少なくとも一群のコネクタ要素により相互に連結されるというシステムでもある。
【0036】
このシステムには、一個以上の逆棘も含められ得る。これに加えて一個以上の逆棘包み込みパッドも包含可能であり、その場合に上記一個以上の逆棘は、当該システムが投入形態に在るときには上記一個以上の逆棘包み込みパッドにより保持され且つ当該システムが展開形態に在るときには上記一個以上の逆棘包み込みパッドにより解放される如く構成される。上記ステントは当該システムが投入形態に在るときに上記逆棘を受容すべく構成された選択的スロットを更に含み得ると共に、上記逆棘は当該システムが展開形態に在るときに上記スロットから解放されるべく構成される。
【0037】
本発明はまた、近位端部および遠位端部を備えた移植片本体区画と、該移植片本体区画の上記近位端部に固着された近位側コネクタ部材とを備える血管内移植片も包含する。上記近位側コネクタ部材は一個以上のコネクタ要素を有し得る。
【0038】
上記移植片はまた、遠位方向に配向された一個以上の逆棘、および、上記一個以上の近位側コネクタ部材側コネクタ要素に連結された一個以上の近位側ステント側コネクタ要素を備える近位側ステントと、上記移植片本体区画の上記遠位端部に固着された遠位側コネクタ部材とを有し得る。上記遠位側コネクタ部材は、一個以上のコネクタ要素を含み得る。
【0039】
この実施例の移植片は更に、近位方向もしくは遠位方向に配向された一個以上の逆棘を備える遠位側ステントであって、上記一個以上の遠位側コネクタ部材側コネクタ要素に連結された一個以上の遠位側ステント側コネクタ要素を備える遠位側ステントと、上記移植片本体区画の上記近位端部および遠位端部の各々にもしくはその近傍に配設された一個以上の膨張可能環状部とを備え、上記移植片本体区画は上記近位側および遠位側の環状部と流体連通する膨張可能チャネルを備える。
【0040】
これに加え、上記近位側および遠位側コネクタ部材側コネクタ要素は各々がそれらの近位端部および遠位端部上に対向ショルダ部分を有し得ると共に、上記近位側および遠位側ステント側コネクタ要素も同様である。一個以上の連結部材は、上記近位側コネクタ部材側コネクタ要素を上記近位側ステント側コネクタ要素に連結し得ると共に、上記一個以上の遠位側コネクタ部材側コネクタ要素を上記一個以上の遠位側ステント側コネクタ要素に連結し得る。
【0041】
上記膨張可能チャネル、上記遠位側膨張可能環状部および上記近位側膨張可能環状部の少なくともひとつは、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、ペンタエリトリトール・テトラ−3(メルカプトプロピオネート)および緩衝液の組み合わせから成る膨張媒体を収容し得る。
【0042】
この実施例の上記近位側ステント逆棘は、約1mm乃至約5mmの長さを有し得ると共に、上記移植片本体区画はePTFEから成り得る。
【0043】
本発明の更に別の二分岐実施例において上記デバイスは、遠位端部と、コネクタ部材が配設された近位端部とを備える本体部分を含む。上記コネクタ部材は、一個以上のコネクタ要素を含み得る。
【0044】
この実施例の上記近位側ステントは、遠位方向に配向された一個以上の逆棘と、上記コネクタ部材側コネクタ要素に連結された一個以上の近位側ステント側コネクタ要素とを備え得る。
【0045】
この実施例は更に、上記本体部分と共に連続内孔を形成する第1二分岐部分および第2二分岐部分を含む。この内孔は、該内孔自体を通る流体流を局限すべく構成される。
【0046】
上記第1および第2二分岐部分の各々の遠位端部上には、遠位側コネクタ部材が配設され得る。これらの遠位側コネクタ部材の各々は、一個以上のコネクタ要素を含む。これに加えてこの実施例は、近位方向に配向された少なくとも一個の逆棘を有する一個以上の遠位側ステントであって一個以上の遠位側ステント側コネクタ要素を備える一個以上の遠位側ステントを有する。上記遠位側ステント側コネクタ要素は、上記第1および第2二分岐部分の一方もしくは両方にて上記遠位側コネクタ部材側コネクタ要素に連結される。
【0047】
この実施例はまた、上記第1および第2二分岐部分の一方もしくは両方から上記本体部分まで延在する少なくとも一本の膨張可能チャネルと、該少なくとも一本のチャネルと流体連通すべく上記本体部分の近位端部にもしくはその近傍に配設された少なくとも一個の膨張可能環状部と、上記第1および第2二分岐部分の各々の遠位端部にもしくはその近傍に配設された膨張可能環状部とを含む。
【0048】
上記近位側および遠位側コネクタ部材側コネクタ要素は各々、それらの近位端部および遠位端部上に対向ショルダ部分を有し得ると共に、上記近位側および遠位側ステント側コネクタ要素も同様である。一個以上の連結部材が、上記近位側コネクタ部材側コネクタ要素を上記近位側ステント側コネクタ要素に対して連結し得ると共に、上記一個以上の遠位側コネクタ部材側コネクタ要素を上記一個以上の遠位側ステント側コネクタ要素に同様に連結し得る。
【0049】
上記膨張可能チャネル、上記第1二分岐部分遠位側膨張可能環状部、上記第2二分岐部分遠位側膨張可能環状部および上記近位側膨張可能環状部の少なくともひとつは、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、ペンタエリトリトール・テトラ−3(メルカプトプロピオネート)および緩衝液の組み合わせから成る膨張媒体を収容し得る。
【0050】
上記近位側および/または遠位側ステント逆棘は、約1mm乃至約5mmの長さを有し得る。上記移植片本体部分ならびに上記第1および第2二分岐部分はePTFEから成り得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例に係る血管内移植片を示す図である。
【図1A】本発明の実施例の移植片上でステント逆棘が配向され得る2つの角度の詳細図である。
【図1B】本発明の実施例の移植片上でステント逆棘が配向され得る2つの角度の詳細図である。
【図2】本発明の実施例に係る第2の血管内移植片を示す図である。
【図2A】選択的な交互配置長手チャネルもしくは背柱と共に選択的な鋸歯状膨張可能チャネルを有する血管内移植片を示す図である。
【図2B】複数の膨張可能チャネルおよび波状もしくは蛇行背柱を有する血管内移植片を示す図である。
【図3A】図2の血管内移植片の構成要素の平坦パターンを示す図である。
【図3B】複数の個別繋止部および連結要素を備えるコネクタ部材の実施例を示す図である。
【図3C】図3Bの個々の繋止部および連結要素を示す図である。
【図3D】複数の個別V状コネクタ部材要素を備えたコネクタ部材の実施例を示す図である。
【図4】図2の血管内移植片の別の構成要素の平坦パターンを示す図である。
【図5】図2の血管内移植片の一部の平坦パターンを示す図である。
【図5A】図5の詳細箇所Aにおける拡大側面図である。
【図6】本発明の実施例の特徴を有する血管内移植片の一部の拡大斜視図である。
【図7】本発明の実施例に係る二分岐式血管内移植片の示す図である。
【図7A】隣り合うチャネル間に捻れを呈する移植片の区画を示す図である。
【図7B】隣り合うチャネル間に捻れを呈する移植片の区画を示す図である。
【図7C】隣り合うチャネル間に所定の捻れ箇所を有する移植片の区画の捻れ挙動を示す図である。
【図7D】隣り合うチャネル間に所定の捻れ箇所を有する移植片の区画の捻れ挙動を示す図である。
【図8】図2の血管内移植片の更に別の構成要素の平坦パターンを示す図である。
【図9】図2の血管内移植片の別の構成要素の平坦パターンを示す図である。
【図10】オフセットされた円形および楕円形半径を備えたステント頂点の詳細を示す図である。
【図11】オフセットされた夫々の円形半径を備えたステント頂点の詳細を示す図である。
【図12】テーパ付き支柱区画を備えるステント区画の詳細を示す図である。
【図13】テーパ付き支柱区画の別の形態を備えるステント区画の詳細を示す図である。
【図14】本発明の二段式ステントの実施例を示す図である。
【図15】本発明の別の二段式ステントの実施例を示す図である。
【図16A】膨張可能環状部が血管もしくは他の体腔内に配設されたときの移植片部分直径に対して、上記環状部が自由空間内で膨張されたときの移植片部分直径を比較すべく、上記環状部の近傍において理想化された本発明の血管内移植片の一部の長手断面の概略図である。
【図16B】自由空間内で制約なしで膨張された環状部表面と比較して移植片が血管または他の体腔内に配設されたときの膨張済環状部の外側面における不都合な折り重なり部の可能的生成を例証する図16AのA−A線に沿った理想化移植片部分の概略的な横断面図である。
【図16C】移植片が異なる直径とされたときにおける本発明の選択的な鋸歯状の膨張可能環状部の枢動挙動の概略図である。
【図16D】移植片が異なる直径とされたときにおける本発明の選択的な鋸歯状の膨張可能環状部の枢動挙動の概略図である。
【図16E】本発明の選択的な鋸歯状の膨張可能環状部もしくはチャネルの外側および内側枢動部分間における異なる曲率半径を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明のこれらのおよび他の利点は、添付の例示的図面に関して以下の本発明の詳細な説明から更に明らかとなろう。
【0053】
図1は、展開形態に在る血管内移植片10を示している。本明細書中では特に言及されなければ、”移植片(graft)”もしくは”血管内移植片(endovascular graft)”という語句は、罹患血管もしくはその一部を修復且つ/又は置換し得る人工器官であって、概略的に管状のデバイスおよび二分岐デバイスならびにそれらに対して取付けられもしくはそれらと一体的な任意の構成要素を包含する人工器官を指すべく用いられる。例示目的のため、以下に記述される移植片の実施例は腹部大動脈瘤[abdominal aortic aneurysm](AAA)の血管内的治療において最も有用であると想定される。本出願の目的に関し、血管内移植片デバイスに対する”近位(proximal)”という語句は、該デバイスが身体通路内で展開されたときに典型的には血液である体液の到来流に向けて配向される移植片の端部を表す。故に”遠位(distal)”という語句は、近位端部と逆の移植片端部を表す。最後に、種々の図面は本発明の種々の実施例の正確な表現であるが、その種々の構成要素の比率は任意の所定図面において且つそれらの図面間で必ずしも厳密な縮尺では示されない。
【0054】
移植片10は、近位端部11および遠位端部12を有すると共に、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)などの溶融性材料の一層以上から成る概略的に管状の構造すなわち移植片本体区画13を含む。移植片本体区画13の近位端部14にはもしくはその近傍には近位側膨張可能環状部16が配設され、且つ、選択的な遠位側膨張可能環状部17は移植片本体区画遠位端部15にもしくはその近傍に配設される。移植片本体区画13は、自身内を貫通する流体流を局限すべく構成された長手内孔22を形成すると共に、長さは約5cm〜約30cm、特に約10cm〜約20cmに亙り得る。
【0055】
図1に示され且つ理想化形態で図16Aに概略的に示された如く、更には以下において更に詳細に記述される如く、自由空間内で環状部16、17が膨張されたとき(すなわち移植片10が血管もしくは他の体腔内に配設されないとき)、これらの環状部は(特に移植片本体区画13が非拘束状態に在るときに)概略的に半円形の長手断面を有する概略的に環状のもしくは円環状の形状を取る。但し膨張可能環状部16、17は概略的に、当該血管の内部で該環状部が展開される血管の形状に合致する。完全に膨張されたときに環状部16、17は、約10mm〜約45mm、特に約16mm〜約32mmに亙る外径を有し得る。
【0056】
近位側膨張可能環状部16と遠位側膨張可能環状部17との間には少なくともひとつの膨張可能チャネル18が配設されると共に、これらの環状部と流体連通し得る。膨張可能チャネル18は、膨張媒体を収容すべく膨張されたときに移植片本体区画13に対する構造的支持を提供する。膨張可能チャネル18は更に、管状構造もしくは移植片本体区画が角度的もしくは屈曲的な解剖学的構造内で展開されたとき、ならびに、内部にて移植片10が展開される(大動脈および腸骨動脈などの)身体通路を再構成する間に、該管状構造もしくは移植片本体区画の捻れおよび捩れを防止する。近位側および遠位側環状部16および17と共に、膨張可能チャネル18は相互に流体連通する膨張可能な環状部およびチャネルのネットワークを形成する。
【0057】
本発明者等は、高度に角度的で屈曲的な解剖学的構造が見られることの多いAAAなどの疾患身体通路を効果的に治療するために必要な捻れ耐性を提供する上で、図1の実施例のチャネル18の螺旋形態が特に有効なことを見出した。但し代替実施例においては、他の環状部およびチャネル形態が可能である。膨張可能チャネル18は図1に示された如く螺旋的に配設され得るが、それは図2の実施例に示された如く更に円周的もしくは環状的なリブおよび背柱形態または別形態を取り得る。図2Aに示された別実施例において、膨張可能チャネル18(もしくはチャネル58)または環状部16の一箇所以上の部分は選択的に、図16C乃至図16Eに関して以下に記述される如くジグザグもしくは鋸歯状の形態を取り得る。斯かる形態は、同様の所望の捻れ耐性または陥入に対する耐性を提供すべく使用され得る。
【0058】
図2Aに示された如く一定の形態においては、移植片本体区画13(または膨張可能チャネル18および当該背柱20が内部に配設される他の移植片部分)の可撓性を促進すべく、交互配置された長手チャネルすなわち背柱20が単独でまたは鋸歯状膨張可能チャネル18、58と共に使用され得る。背柱20は勿論、図2Aの鋸歯状チャネル18、58に関してたとえば図1の実施例に示された如く連続的ともされ得る。膨張可能チャネル18の長手寸法および径方向寸法は、移植片10による治療が意図された徴侯に依存し、異なる移植片本体区画間で且つ単一の移植片本体区画内においてさえも必要に応じて変更され得る。更に、膨張可能チャネル18は移植片本体区画13の長手軸心25に関して種々の角度で配向され得ると共に、そのピッチ(チャネル18の螺旋的もしくは平行的な巻回間の距離)は必要に応じて変更され得る。
【0059】
図1の実施例において各螺旋状膨張可能チャネル18の巻回間のチャネルピッチもしくは距離は、移植片本体区画13の全体的サイズおよび捻れ耐性の所望度合いに依存し、約2mm〜約20mmに亙り得る。本発明者等は、本発明の管状実施例に対しては約4mm〜約10mmのピッチが有効であり、且つ、二分岐移植片実施例においては約3mm〜約10mmのピッチが有用であることを見出した。(移植片本体区画長手軸心25に直交する平面に関して測定された)各チャネル巻回の螺旋角度は、管状および二分岐移植片実施例において約10°〜約45°、より詳細には約20°〜約35°に亙り得る。最後に、膨張可能チャネル18の幅は典型的に、約1mm〜約8mm、より詳細には約2mm〜約4mmに亙る。
【0060】
移植片本体区画すなわち管状構造13およびその関連構成要素は、超高分子量ポリエチレン、ポリエステルなどの種々の適切な材料から作成され得る。先に論じられた如く本発明者等は、基本的に一層以上のePTFEにより移植片本体区画13を構築することが特に有用であることを見出した。移植片10(ならびに、本明細書中で論じられる他の移植片の全て)が如何に作製され得るかの詳細は、各々が2001年12月20日に出願された同時係属の米国特許出願第10/029,557号、第10/029,570号および第10/029,584号に更に十分に記述される。これに加え、その各々の全ての開示内容は言及したことにより本明細書中に援用される、1998年2月9日に出願されて”血管内移植片(Endovascular Graft)”と称されたチョボトフの米国特許出願第09/133,978号、および、2001年7月27日に出願されて”二分岐ステント/移植片投入システムおよび方法(Bifurcated Stent−Graft Delivery System and Method)”と称された同時係属のチョボトフ等の米国特許出願第09/917,371号は夫々、有用な血管内ステント/移植片および投入システムを教示している。
【0061】
移植片本体区画近位端部14の近傍には近位側ネック部分23が配設され、該部分は、身体通路の内側に対する展開済み移植片のシールを助力する付加的手段の役割を果たす。近位側ネック部分23は、移植片本体区画長手軸心25に関して取入口軸心角度αを形成する取入口軸心27を有する。この角度付けされた取入口軸心27によれば上記移植片は、腹部大動脈瘤のネック領域において多くの場合にそうである様に角度付けされた血管形態を有する患者において該患者の血管系の形態に対し、更に良好に合致し得る。取入口軸心角度αは長手軸心25に関する任意方向において、約0°〜約90°、好適には約20°〜約30°に亙り得る。近位側ネック部分23は近位方向における更なる大径へとテーパ付けされまたは拡開されることで、このシール機能を促進し得る。近位側ネック部分23はまた、移植片内孔22内への円滑な流体流を提供する手段の役割も果たす。
【0062】
膨張可能環状部16、17およびチャネル18の上記ネットワークは最も好適には生体内にて、環状部17および関連環状部/チャネルネットワークと流体連通する注入ポート33を通して所定材料もしくは媒体を導入もしくは注入することで膨張され得る。上記材料は、固体、流体(気体および/または液体)、ゲルもしくは他の媒体のひとつ以上から成り得る。上記材料は、患者の身体内でデバイスが展開される間に該デバイスの撮像を促進する造影剤を含み得る。たとえば、ビスマス、バリウム、金、ヨウ素、白金、タンタルなどの元素を含む放射線不透過性材料は特に、膨張媒体の一部として液体、粉末もしくは他の適切な形態で使用され得る。斯かる撮像を促進するためには、液体ヨウ化造影剤が特に適切な材料である。同一目的で移植片10の任意の部分上または該部分内もしくは該部分上には、放射線不透過性マーカも配設または一体形成され得ると共に、該マーカは生体適合性の放射線不透過性材料の任意の組合せで作成され得る。
【0063】
移植片本体区画13に対しては、図1に示された如く移植片本体区画近位端部14および近位側ネック部分23にてもしくはそれらの近傍にて、コネクタ部材24が固着もしくは一体形成される。図1の実施例においてコネクタ部材24は、各頂点28を備えた蛇行リング構造である。コネクタ部材24の他の実施例は異なる形態を取り得る。コネクタ部材24は拘束状態からの膨張を許容する任意の適切な材料から作成され得るが、ニッケル・チタン(NiTi)などの如く超弾性特性を有する形状記憶合金が最も好適である。他の適切なコネクタ部材24の材料としては、ステンレス鋼、MP35Nなどのニッケル−コバルト合金、タンタルおよびその合金、ポリマ材料、複合材料などが挙げられる。コネクタ部材24(ならびに本明細書中に記述されるステントおよびコネクタ部材の全て)は、径方向拘束状態から自己拡開すべく構成され得るか、または、(膨張済みバルーンからなどの)付与力、もしくは、一定の形状記憶材料の場合には温度変化の結果として拡開すべく構成され得る。
【0064】
図1に示されたコネクタ部材24の形態は8個の頂点28を備える(更に厳密に表現すると図1のコネクタ部材24は8個の近位側頂点および8個の遠位側頂点を備える;しかし、別段の言及がなければ、この状況における”頂点”という語句は単一のコネクタ部材、ステントもしくはステント部分の近位側もしくは遠位側の頂点群のいずれかを指す)。図2、図3Aおよび図4乃至図7には特に有用な別形態が示され、この場合にコネクタ部材は12個の頂点を備える。コネクタ部材24においては、24個以上までの任意数の頂点が使用され得る。概略的表現においては、コネクタ部材24上の頂点28の個数が多いほど、コネクタ部材24が径方向拘束状態から拡開されたときに血管壁に対して該コネクタ部材は大きな合致性を呈する。
【0065】
存在する頂点の個数に関わらずにコネクタ部材24のひとつの機能は、先に記述された如く、該コネクタ部材が典型的に埋設された近位側ネック23と協働することで、展開済み移植片を身体通路の内側にシールするのを助力することである。それはまた、移植片10を血管壁内の所定位置に保持するのを助力する役割も演じ得ると共に、展開の間において移植片本体区画近位端部14の開成も促進し得る。
【0066】
幾つかの頂点28は、図2の実施例に関して以下に更に十分に記述されるコネクタ部材側コネクタ要素30も構成し得る。コネクタ部材24が8個の(近位側)頂点28を有するという図1の実施例においては、1個置きの頂点28上にコネクタ要素30が分布される。本発明者等は、本発明の種々の性能要件を満足する上でこの形態が適切であることを見出した。1個置きの頂点28上に分布された6個のコネクタ要素30を備えるという図2、図3Aおよび図4乃至図7に示された12個の頂点のコネクタ部材24を含め、他の形態が可能である。たとえばコネクタ要素が全ての頂点、3個もしくは4個毎の頂点上にまたは他の任意のパターンで分布されるという他の形態は、本発明の有効範囲内である。
【0067】
移植片10は更に、近位端部42および遠位端部44を有する近位側ステント40を備える。他の形態が可能ではあるが、図1の実施例における近位側ステント40は、4個の頂点46、すなわち、コネクタ部材24の頂点28の半数の頂点を有する蛇行リングから成る。尚、図1における近位側ステント40は、該ステントの直径がその丈に沿い変化するという選択的なチューリップ状のテーパ付きプロフィル(profile)を取ることを銘記されたい。斯かるプロフィルは、移植片10が内部で展開される血管もしくは内腔の壁部に対して該移植片10をステント40の径方向拡開時に信頼性高く繋止するに十分な径方向力を呈する役割を果たす一方、移植片本体区画13の近傍におけるステント40のテーパ付き遠位端部にては、近位側環状部16、近位側ネック部分23およびコネクタ部材24により実施されるシール機能との干渉を抑制する。このプロフィルはまた、受入れ側の血管もしくは内腔内に存在し得る一切のテーパにも適応する。
【0068】
図1に示された如く近位側ステント40は概略的に、移植片本体区画13およびコネクタ部材24の近位側に配設される。必須ではないが近位側ステント40は典型的に、以下において詳細に記述される如くコネクタ要素を介してコネクタ部材24に固着もしくは接続されることで、移植片10の一部を構成する。近位側ステント40はまた、近位側ネック部分23および/または移植片本体区画13の他の部分に対して固着されまたはその内部に直接的に埋設され得る。これに加えて本発明は、コネクタ部材および近位側ステントは相互に対して機械的にまたは別様に締着されるのでなく一体化され、NiTiなどのモノリシックな材料片で形成されるという実施例を包含する。
【0069】
近位側ステント40、コネクタ部材24、近位側ネック部分23および近位側環状部16のこの構成によれば、移植片10が内部で展開される血管壁に対して過剰な径方向力なしで合致および装着を必要とする近位側環状部16のシール機能は、近位側ステント40の繋止機能から容易に分離され得る(コネクタ部材24および近位側ネック部分23は媒介的役割を演ずる)。これにより、シール機能および繋止機能は他方を阻害せずに、相互に対して最適化され得る。これに加え、部分的には近位側ステント40、コネクタ部材24および膨張可能環状部16が移植片本体区画長手軸心25に沿い長手方向に分布されるが故に、約10フレンチ〜約16フレンチに亙る、好適には12フレンチ以下である更に小寸で更に撓曲可能な投入プロフィルが可能である。
【0070】
近位側ステント40は、コネクタ部材24に対して適切な任意の材料から製造され得る。NiTiなどの様に超弾性特性を有する形状記憶合金から製造されたとき、近位側ステント40は拘束状態からの解除時に自己拡開すべく構成され得る。
【0071】
近位側ステント40は更に、図2乃至図6に関して以下で更に十分に記述される如く連結部材を介してコネクタ部材側コネクタ要素30に固着された近位側ステント側コネクタ要素48を備える。図1の実施例においては、全てのコネクタ部材側コネクタ要素30に対して1個の近位側ステント側コネクタ要素48が在ることを銘記されたい。
【0072】
近位側ステント40はまた、支柱41も備えると共に、一本以上の逆棘43も備え得る。逆棘(barb)とは、内部で移植片10が展開される身体通路(典型的には腹部大動脈などの血管の内膜層および中間層)を少なくとも部分的に貫通し得る鋭角的先端で終端すべく外方に向けられた任意の突出部であり得る。
【0073】
たとえば典型的には動脈瘤および任意の疾患組織の近位側の箇所にて近位側ステント40が腹部大動脈内で展開されたとき、各逆棘43はこの箇所において遠位側に配向された血液の流れ場と協働することで組織を貫通すると共に、移植片10の軸心方向移動を防止すべく設計される。その理由は、図1の実施例における各逆棘43は移植片本体区画13に関して遠位方向に配向されるからである。
【0074】
代替実施例においては近位側ステント40の製造において用いられる材料に依存して、臨床的要望および他の要因、すなわち血管内における移植片10の位置の保持を逆棘43が助力する度合いは変更され得る。故に、逆棘43の個数、寸法、形態および配向は相当に変更され得るが、依然として本発明の有効範囲内である。
【0075】
本発明の任意の実施例における逆棘43の長さは、約1mm〜約5mm、より詳細には約2mm〜約4mmに亙り得る。
【0076】
図1における自由拡開形態において示された如く且つ図1Aにおいて相当に詳細に示された如く逆棘43は、遠位方向に配向され得ると共に支柱41の長手軸心29に関して約10°〜約45°以上に亙る仰角βを形成し、近位側ネック取入口軸心27から離間すべく移植片内孔22から概略的に外径方向に突出する。上記各逆棘を角度βにて配設すると、内部で移植片10が展開される血管もしくは内腔内へと該移植片10を繋止するに必要な埋設力が提供される。各図では示されていないが、逆棘仰角は、近位側ネック取入口軸心27に対して第2角度β’まで移植片10が体腔もしくは血管内で生体内展開された場合にも記述され得る。この第2の逆棘仰角β’は典型的に、約5°〜約45°の範囲である。逆棘仰角βおよびβ’の両者に対し、本発明の他の実施例においては逆棘と共に同様の配向が見られる。
【0077】
概略的には、各逆棘43は内部にてそれらが展開される内腔の軸心に対して概略的に平行な位置に配向されることで、該逆棘が一定用途における生体内での流れ場により課される抗力負荷(drag load)に最適に耐えるのが好適である。この目的の為に本発明者等は、図1Bに示された如く支柱長手軸心29に関して選択的な第2逆棘方位角すなわち”反跳”角度γを一個以上の逆棘43に対して形成するのが有用であることを見出した。この図において逆棘43は、支柱41の外側面37に対して接する平面内であって、角度γが形成される平面に概略的に直交する平面内において側方にバイアスされている。尚、”支柱の外側面”という表現は概略的に、近位側ネック取入口軸心27の逆側に配置された支柱41の表面の一部、または、展開されたときに血管もしくは内腔の壁部と直接接触する支柱41の一部を指す。本発明者等はまた、逆棘43に対して側方反跳角度γを配備すると、減径投入形態に在る近傍の支柱もしくは包み込みパッドの背後に逆棘が包み込まれたときに大きな逆棘安定性に寄与することも見出した。近位側ステント40においてγは、支柱軸心41に対して約5°〜約70°に亙り得る。本発明の他の実施例においては、逆棘に対して同様の配向が見られる。
【0078】
逆棘の本数、各逆棘の長さ、上述の逆棘角度の各々、および、逆棘配向は、単一のステントにおいてまたは単一の移植片の複数のステント間において、逆棘毎に変更され得る。
【0079】
尚、本明細書中で論じられる種々の逆棘(および以下で論じられる包み込みパッド45)はステント支柱41に取付けられまたは固定され得るが、本発明者等は、種々の図に示された如くそれらはステント支柱の一部として一体形成されるのが有用であることを見出したことを銘記されたい。換言するとそれらは支柱の単なる延長部であり、その場合に接合部または他の接続は存在しない。接合部が無いので、本発明者等は逆棘/支柱の接合領域の強度は非常に高く、逆棘の疲労耐性も同様であることを見出した。逆棘を支柱に接合する機械的接続部が無いので、逆棘/支柱接合領域の信頼性は更に高くなる。これに加え、溶接もしくはろう付け接合部の機械的特性が悪影響され得るという熱影響域が無いということは、逆棘および包み込みパッドをステントに対して一体化したことの別の相当な利点である。
【0080】
支柱41はまた、各逆棘43に対向して配設された選択的な一体的包み込みパッド45も備える。上記逆棘の場合と同様に、逆棘包み込みパッド45の個数、寸法、形態および配向は相当に変更され得る。
【0081】
移植片10(故に、近位側ステント40)をその減径投入形態へと準備する間に各逆棘43は対応する支柱41(および、もし存在するなら選択的包み込みパッド45)の背後に載置されることから、その逆棘は、デバイスの投入の間に投入鞘体もしくはカテーテルの内側に対する接触、および、血管壁の内側に対する不都合な接触が阻止される。その全ての開示内容は言及したことにより本明細書中に援用されるチョボトフ等に対する同時係属の米国特許出願第09/917,371号に記述された如く、支柱41上に配設されたひとつ以上の溝35内に配設された解除ベルトは近位側ステント40をこの投入形態に保持する。
【0082】
(典型的にはこのベルトおよび他のベルトの解除により部分的に達成される)移植片10の展開時に、より詳細には近位側ステント40の展開時に、該ステント40の径方向拡開は支柱41の変位に帰着することから、各支柱間の距離は増大する。最終的にこの変位は、近傍の支柱(および、もし存在するなら選択的包み込みパッド45)の背後から逆棘を自由にし且つ治療されつつある内腔の壁部に係合させるに十分なほど大きくなる。本明細書中に記述された逆棘を有する頬のステントが拘束投入形態から解放されて拡開もしくは展開形態を取るという実験の間において、高速のビデオによれば、逆棘はステントの径方向拡開に関連する時定数よりも略々1桁小さい時定数により解放される傾向があることが確認された。換言すると、ステント展開プロセスの間において、ステントが完全に拡開される前にその逆棘は展開を完了することから、逆棘は最大の有効性を以て血管もしくは内腔の壁部に係合し得る。
【0083】
代替的に、且つ、特に近位側ステント40に対してステンレス鋼などの異なる材料が用いられたときには、ステント40を拡開して逆棘43をその包み込みパッド45から解放し且つ所望に応じて逆棘43を組織に係合させるべく、選択的バルーンが使用され得る。移植片10において超弾性の自己拡開近位側ステント40が用いられるときでさえも、逆棘43をその所望位置に更に植設するのを助力して移植片10の適切な載置を確実にすべく、斯かるバルーンが使用され得る。
【0084】
次に図2に戻ると、本発明の特徴を有する別の血管内移植片が示される。移植片50は、近位端部51および遠位端部52を備えると共に、近位端部54および遠位端部55有する管状構造すなわち移植片本体区画53を備える。図1の実施例と同様に移植片本体区画53は、自身を貫通する流体流を局限すべく構成された長手内孔73を形成すると共に、長さは約5〜約30cm、特に約10cm〜約20cmに亙り得る。近位側膨張可能環状部56および選択的な遠位側膨張可能環状部57は膨張されたときにシールを形成することで、近位側および遠位側の環状部の間の領域における内腔もしくは血管の壁部に対する圧力(流体が血液の場合には血行圧力)の伝達の防止を助力する。これに加え、上記各環状部は移植片本体区画53の外側面の回りにおける血液などの流体の流れ防止を助力する。
【0085】
膨張可能チャネル58は、略々平行で膨張可能な一連の円周方向チャネルもしくはリブと流体連通する膨張可能長手チャネルすなわち背柱20を備える。本発明者等は、更に粘度の高い膨張材料を用いるときに環状部およびチャネルの迅速で比較的に容易な膨張を許容し乍ら有効な捻れ耐性を提供する上で、この構成が特に有用であることを見出した。図2Bに示された如く代替実施例において、長手チャネルもしくは背柱20は波状形態を取り得る。一定の臨床条件下でこの形態は、長手チャネルもしくは背柱20が側方に短縮されるのを許容し且つそれが移植片内孔内で直接的に捻れる可能性を減少することで、付加的な捻れ耐性を提供し得る。これに加え、この形態によれば、医師もしくは操作者は移植片50を血管もしくは体腔内に植設することで、植設の間に必要に応じて原位置で移植片長さの微調整を行うことで不都合な捻れなしで最適な移植片載置を確実と得る。
【0086】
チャネル58は近位側および遠位側環状部56および57と流体連通することで、相互に流体連通する膨張可能環状部およびチャネルのネットワークを形成する。遠位側環状部57、膨張可能チャネル58および近位側環状部56に対して充填ポート59が流体連通することで、移植片本体区画53内への膨張媒体の導入に対して該ネットワークを増強する。図2のデバイスにおいては、本明細書中で論じられない図1の実施例の特徴が存在し得る。
【0087】
図2の移植片50はまた、12個の冠部もしくは12個の頂点を有する近位側コネクタ部材60、6個の冠部および3個の冠部を有する二段式の近位側ステント70、遠位側ネック部分77、遠位側コネクタ部材124および遠位側ステント128を備える。遠位側コネクタ部材124および遠位側ステント128は、図2の実施例における遠位側ステントが単段式であり且つその選択的逆棘が近位側ステント70の逆棘74に対して逆方向すなわち近位方向を向くことを除き、コネクタ部材60および近位側ステント70と類似している。遠位側コネクタ部材124は遠位側ステント128に固着されもしくは取付けられるが、その両者は夫々図8および図9に示された本発明の二分岐形態に関して更に十分に記述される。遠位側コネクタ部材124および遠位側ステント128は、コネクタ部材60および近位側ステント70に対して適切な材料で且つそれに対して適切な方法に従い製造され得る。更に、遠位側コネクタ部材124は、管状構造すなわち移植片本体区画53、または更に典型的には遠位側ネック部分77に対し、取付けられ、固着され、または、一体形成され得る。遠位側コネクタ部材124は更に、充填ポート・ブリッジ132を備える。
【0088】
図3Aは、図2に示された近位側コネクタ部材60の詳細な平坦パターンを示す図である、近位側コネクタ部材60は、12個の冠部もしくは頂点65を有する遠位端部66および近位端部64を備える。交互的な近位側頂点65は、近位側コネクタ部材側コネクタ要素62を備える。これらのコネクタ要素62は各々、近位端部61、遠位端部63、および、遠位端部63の近傍に配設された選択的耳部80を備える。耳部80は、コネクタ要素62に対して大きな表面積を提供することでコネクタ要素と移植片近位側ネック部分との間の結合の強度の最大化を助力し、更に、一個以上の選択的開孔82を備えることで、先に論じられた如く斯かる結合を更に強化する。対向する各ショルダ部分84は、それらが絡まり、裂開し、または別様に移植片の他の構成要素もしくは内部で該移植片が展開される内腔の他の構成要素と干渉する可能性を最小化すべく、丸み付けられた角隅部を有し得る。ショルダ部分84はまた、一個以上の選択的ショルダ孔85も有する。これらのショルダ孔85は、近位側ステント70および近位側コネクタ部材60の各デバイスが図5Aに関して以下で論じられる如く組立てられる間に該ステント70および部材60の安定化を助力する上で有用である。
【0089】
AAAを治療する移植片に対し、重要な解剖学的寸法パラメータは、治療可能最小ネック長(minimum treatable neck length)である。概略的に、治療されるべき動脈瘤もしくは疾患領域の近位側の腹部大動脈において、このパラメータは解剖学的に、最遠位側の腎動脈心門(renal artery ostium)の遠位側縁部(たとえば、動脈瘤組織に最も近い心門の部分)と、上記移植片が近位側シールを生成することが意図された大動脈内の箇所との間の距離として記述され得る。同様に、治療されるべき動脈瘤または疾患領域の遠位側の腸骨動脈領域においてこのパラメータは、各内部腸骨動脈のいずれか(すなわち同側もしくは対側の内腸骨動脈)の心門近位側縁部と、移植片による遠位側シールの生成が意図された血管箇所との間の距離として記述され得る。概略的には、更に短寸の治療可能最小ネック長を治療すべく設計された移植片は、その様に設計されない移植片よりも多数の患者を治療すべく使用され得ることから、臨床的かつ商的に更に好適なデバイスに帰着する。
【0090】
一例として、このネック長を図7の二分岐移植片に関して記述した場合、対応寸法は2つの主要成分を有する。一方の成分は、移植片ネック部分の自由縁部(たとえば近位側ネック部分縁部109)と、接続部材の逆端部(たとえば、図3Aに示された近位側接続部材60の遠位端部66または図8に示された遠位側接続部材124の近位端部127)との間の距離である。この距離は、図3Bの代替的コネクタ部材実施例において長さL1として示される。上記接続部材の長手寸法は、この第1成分を支配する。
【0091】
第2成分は、(上述された如く)接続部材の逆端部と、血管壁をシールする膨張可能環状部の部分(たとえば近位側膨張可能環状部111または選択的な遠位側膨張可能環状部117)との間の距離である。この距離は、図3Bの近位側ネック部分23において長さL2として示される。近位側もしくは遠位側のネック部分の領域における移植片の長手寸法は、この第2成分を支配する。
【0092】
本発明の移植片が投入鞘体もしくはカテーテル内に装填されたとき、その対応接続部材は第1拡開形態から第2折畳み形態へと移動する。図1、図2乃至図3Aおよび図5乃至図8の接続部材の長さは典型的に、それらの冠部もしくは頂点において蒙る歪みが所定の分析的スレッショルド値を超えない点まで最小化される。
【0093】
図3B乃至図3Cは、上述された如き歪みスレッショルド値により制限されないという点において好適である代替的コネクタ部材設計態様を示している。コネクタ部材89は、連続的リングではなく、図3Bの平坦投影図に概略的に示された如く移植片近位側ネック部分23に埋設された個別繋止部91の形態の一個以上の個別コネクタ部材要素から成る。図3Cには、同様の単一繋止部91の更に詳細な例が示される。一個以上の繋止部91を備えるコネクタ部材89のこの実施例は、単独で、または、本明細書中に開示されたひとつ以上の連続的リング実施例と組み合わされて、本明細書中で論じられた任意の移植片実施例において使用され得る。
【0094】
繋止部91は示された如き形状とされることで、高牽引荷重下で移植片ネック部分23からの引張り出しに対する抵抗力を最大化し得る。各々は、遠位側部分95、中間部分96およびコネクタ要素97から成る。図3Bおよび図3Cの図示繋止部実施例においてコネクタ部材要素91は”T”形状を取り、その場合に近位端部96は、ネック部分23に一体化されたときに移植片ネック部分23の縁部109を越えて延在する。遠位側区画95は、引張り出し抵抗を増進すべく拡大される。繋止部91は、NiTi、ステンレス鋼、その合金などの如き本明細書中で論じられた材料の内の任意の材料であってコネクタ部材および/またはステントに対して適切な材料から成り得る。
【0095】
図3Cは、コネクタ部材の他の実施例に関して本明細書中で論じられる特徴の付加的な詳細を示している。たとえばコネクタ要素97は選択的耳部101および選択的開孔103を備えることで、コネクタ要素89と移植片ネック部分との間の結合の強度を最大化し得る。対向するショルダ部分105もまた、一個以上の選択的ショルダ孔107を有し得る。これらの特徴に対する利点は、本明細書中の他の箇所にて、および、血管内移植片ネック部分に対する繋止部91の取付方法を教示する同時係属の米国特許出願第10/029,584号にて更に十分に記述される。
【0096】
繋止部91は冠部を有さないので、リング形式のコネクタ部材実施例において発生する歪みに関する設計態様および性能の問題は関係しない。故に、ネック部分23内に埋設される各繋止部91の長さL1は相当程度まで、移植片ネック部分23内に対する繋止部91の十分な固定度合いを達成するに必要な材料の量により支配される。組立ての間に移植片材料が重ね付けられる耳部101、および、(移植片層内に繋止部91を固定する所定形式の接着剤の役割を果たす)フッ素化エチレン・プロピレン共重合体(FEP)水性分散液が貫通浸入し得る孔などの特徴によれば、最小限の距離で適切な固定が達成され得る。適切な固定が達成される限りにおいて、移植片フラップの縁部から繋止部の埋設端部までの長さは任意に短寸とされることで、移植片ネック長の成分が容易に最小化され、上述の臨床的および商的な利点が可能とされ得る。
【0097】
各繋止部は、約0.5mm〜約7mm以上に亙る長手方向の長さL1を有し得る。これにより概略的に、たとえばコネクタ部材60に依るよりも広範囲の患者が治療され得る。用いられる繋止部91の個数は、移植片、所望される繋止強度の程度などにより変化する。ひとつの形態において移植片は約4個の繋止部から約10個の繋止部を備え得る一方、他の移植片実施例はそれより多数のまたは少数の繋止部91を有し得る。図7に関して論じられる如き二分岐移植片実施例において本発明者等は、遠位側コネクタ部材124および150に対する代替策として、第1および第2の二分岐部分遠位端部の一方もしくは両方にコネクタ部材89を取入れれば有用であることを見出した。二分岐部分114、115の少なくとも一方内にコネクタ部材89を取入れると、コネクタ部材89の近傍における移植片および部分114、115の遠位側ネック部分154は更に小寸の直径へと圧縮されることから、更に小さいプロフィルの投入鞘体もしくはカテーテルを使用する可能性が与えられ得る。移植片の各脚部の一方もしくは両方内に5個のコネクタ要素を有する遠位側ステントに関して5個の遠位側繋止部91が用いられ得るという二分岐移植片形態は、特に好適である。理解され得る如く繋止部91は、リング形式のコネクタ部材と共にまたはそれら無しでの任意の組合せにて、図1、図2および図7に示された血管内移植片のいずれの端部にも使用され得る。
【0098】
コネクタ部材89に対するこの特定設計態様の別の利点は、概略的にコネクタ部材89が、近位側コネクタ部材60(図3、図5)または遠位側コネクタ部材124(図8)などの同等のリング設計態様よりも少ない材料から成るという事実から生ずる。これにより、コネクタ部材89および近位側ネック部分の近傍において移植片の圧縮直径は比較的に小寸とされることから、更に小さいプロフィルの投入鞘体もしくはカテーテルを使用する可能性が与えられ得る。この利点は、図7の二分岐移植片100の短寸の第2脚部115の遠位側ネック部分154において、投入カテーテルまたは鞘体内への装填時に、遠位側ステント128と第2二分岐部分115に関連する遠位側接続部材150とが第1二分岐部分114における移植片材料に寄り掛かるという事実に依り、特に有用であり得る。一定の鞘体もしくはカテーテルの移植片装填形態において、この領域はプロフィル制限的であり、且つ、実際に移植片に対して用いられる投入カテーテルまたは鞘体の直径を決定し得る。更に小寸のプロフィルの機能は最終的に、更に小寸の体腔内へアクセスする能力に帰着し、その他の場合に可能であるよりも広範囲の患者を治療し得るという利点に繋がる。
【0099】
図3Dに示された実施例において上記コネクタ部材は、単独でまたは繋止部91と組み合わされて、一個以上の個別V形状コネクタ部材要素98を備え得る。図示実施例においてV形状コネクタ部材要素98は、該V状コネクタ部材要素の各側部99上に配設されたコネクタ要素97を有し得る。移植片に取付けられる要素97の個数は取付け方式および移植片直径に依存するが、典型的には8〜10個のコネクタ要素97(たとえば、4個または5個のV状コネクタ部材要素)が在る。他の形態においてコネクタ要素97は、所望であれば、上記V状コネクタ部材要素の1個置きの側部99上に分布され得る。
【0100】
上記コネクタ部材は、種々の形式のステントと共に使用され得る。たとえば一定の実施例において上記コネクタ部材は、単段式もしくは二段式のステントと共に使用され得る。図4乃至図5および図6乃至図7に示された如く二段式近位側ステント70は、近位端部76と、近位側ステント側コネクタ要素72を備えた遠位端部79とを有する。近位側ステント側コネクタ要素72は、遠位側ステント側コネクタ要素62のショルダ部分84とミラー対向し得る対向ショルダ部分78を有する。
【0101】
近位側ステント70は支柱71を備え、該支柱の任意のひとつは一個以上の逆棘74を更に備え得る。各逆棘の近傍の選択的な逆棘包み込みパッド86は、移植片50がその減径投入形態に在るときに逆棘74を遮蔽する役割を果たす。支柱71または包み込みパッド86はまた、移植片50(および、故に近位側ステント70)がその投入形態に在る間に逆棘74の保持を助力する選択的な逆棘包み込みスロット83も含み得る。図1に関して前述された如き移植片50の展開時に、逆棘74は逆棘包み込みスロット83から解放され、且つ、図2および図6に示された如きそれらの動作形態もしくは展開形態で載置される。患者の血管内でその様に展開されたときに近位側ステント70は拡開されることで逆棘74を少なくとも部分的に血管壁内へと押しやることから、移植片50は其処に据え付けられ、且つ、その他の場合には移植片50を移動させ得る流体流の力が阻まれる。
【0102】
近位側ステント70は、先に論じられた如くデバイス解放バンドを収納する一群以上の選択的な溝87も備え得る。
【0103】
しかし、図1の近位側ステント40と異なり、近位側ステント70は第1の六冠部領域90および第2の三冠部領域92を有する二段式構成要素である。第1の六冠部領域90は、6個の頂点94(すなわち6個の遠位側頂点および6個の近位側頂点)を有する蛇行リングから成る。同様に第2の三冠部領域92は3個の頂点93を有する蛇行リングから成り、その遠位側頂点は六冠部領域90の1個置きの近位側頂点94に接続している。尚、近位側ステント70は典型的に、各段の間に(機械的接続部もしくは溶接部などの)接合部もしくは接続部が無い様に、単一片の材料から作成されることを銘記されたい。但し、別体の部材もしくはステントから2つ以上の段が接合もしくは接続されて単一ステントを形成し得るという他の形態が可能であり、同様に、2段以上を有する単一片ステントも可能である。
【0104】
近位側ステント70は三冠部領域92にて、六冠部領域90におけるよりも大きな外径方向力を呈し得る。斯かる設計態様は特に、疾患の部位から更に離間した血管の更に健康な区画内にて斯かる外径方向力の付与が所望されるという臨床的設定において有用である。故に近位側ステント70は、斯かる径方向力に適応し得る血管の部分内において繋止機能を履行し得る。
【0105】
図5は、近位側ステント70に接合されるコネクタ部材60の平坦パターン図である。この実施例に対してはコネクタ部材60および二段式の近位側ステント70の種々の頂点65、93および94の間に、12個のコネクタ部材頂点65、近位側ステントの第1の六冠部領域90ににおける6個の頂点94、および、近位側ステントの第2の三冠部領域92における3個の頂点93が在る、という関係がある。
【0106】
先に論じられた如く頂点の実際の個数は変化し得るのであるが、このことは、種々の頂点間の関係が記述され得るという本発明の有用な規約を更に一般的に例証するものであり;たとえば、コネクタ部材60の頂点65の個数を”n”と表現するなら、”n/2”は近位側ステント70の第1の六冠部領域90の頂点94の個数を表し、且つ、”n/4”は近位側ステント70の第2の三冠部領域92の頂点93の個数を表す。他の有用な実施例としては、”n”個のコネクタ部材頂点、”n”個の近位側ステント第1領域頂点および”n/2”個の近位側ステント第2領域頂点が在るという実施例が挙げられる。これらの比率は適切であれば変更可能であり;これらの特定の比率群は例示的にすぎない。
【0107】
また図5においては、コネクタ部材側コネクタ要素62は連結部材54を介して近位側ステント側コネクタ要素72に連結されることを銘記されたい。
【0108】
図5Aは、近位側ステント側コネクタ要素72、コネクタ部材側コネクタ要素62および連結部材32の側面図である。連結部材32は、重なり合うコネクタ部材側コネクタ要素62および近位側ステント側コネクタ要素72の回りにコイルを形成することでコネクタ部材60を近位側ステント70に機械的に接合すべく巻回されたワイヤもしくは同様の要素である。代替的に、移植片50のこれらの構成要素を接合すべく溶接、ろう付け、半田付け、機械的手段、接着剤などの他の任意の適切な接合技術が使用され得る。但し本発明者等は連結部材32などの機械的手段が最も有用であることを見出した、と言うのも、溶接などの技術によれば特にステント/コネクタ要素材料がニッケル・チタンであるときに接合部から一定距離離間した可能的な熱影響域が該材料に悪影響することから、接合強度、疲労寿命および最終的には移植片50の完全性に悪影響があるからである。
【0109】
連結部材32に対しては任意の適切な部材が使用され得るが、本発明者等は、(任意の形状が使用され得るが)円形断面形状を有するワイヤもしくはワイヤ状部材が有用であることを見出した。最適には、ワイヤ連結部材32はニッケル、ステンレス鋼、ニッケル・チタンなどの適切な金属から形成され得る。上記ワイヤは、約0.05mm(0.002インチ)〜約0.15mm(0.006インチ)、より詳細には約0.07mm(0.003インチ)〜約0.12mm(0.005インチ)に亙る直径を有し得る。
【0110】
コネクタ要素62および72を相互に対して固定すべく、整合された各コネクタ要素の回りに連結部材32は1回以上巻回され得る。本発明者等は、巻線がショルダ78、84からショルダ78、84に亙り相互に直近となることでワイヤの単一層を呈するほど十分な巻線を配備すれば、移植片50の新規な設計態様により与えられる低い投入プロフィルを損なわずに、この様に生成された接合部に対して十分な強度および剛性が提供されることを見出した。故に、最適な巻回の数は移植片毎に変化するが、典型的には殆どの用途において約6〜18巻回の範囲である。連結部材32を所定位置とすれば、コネクタ部材側コネクタ要素62および近位側ステント側コネクタ要素72は相互に対して確実に連結される。本明細書中で論じられた連結部材32の特徴および利点は、本明細書中で論じられた本発明の実施例の任意のものにより利用され得る。
【0111】
図6は、この様にして近位側ステント70に接合されたコネクタ部材60の拡開もしくは展開形態における斜視図である。図示の明瞭化のために移植片本体区画53および他の移植片構成要素は除去されている。逆棘74は、選択的な逆棘包み込みパッド86から解放された展開状態で示される。図示実施例において12頂点コネクタ部材60は近位側もしくは遠位側ステントの第1の六頂点または六冠部領域90に接続され、且つ、そのステントは上記六冠部領域と一体的なまたはそれに対して接合された第2の三頂点もしくは三冠部領域92を有する。示されてはいないが別の有用な実施例は、八頂点コネクタ部材(すなわち八個のコネクタ部材要素を有するコネクタ部材)が近位側ステントの第1の八頂点もしくは八冠部領域に接続され且つそのステントは上記八冠部領域と一体的なもしくはそれに対して接合された第2の四頂点もしくは四冠部領域を有する、という実施例である。
【0112】
図7は、二分岐式血管内移植片100の形態である本発明の別実施例を示している。血管内移植片100などの二分岐デバイスは、たとえば、治療されるべき動脈瘤が解剖学的二分岐部内へとまたは二分岐部への腸骨動脈の一方もしくは両方内へと延在し得るという腹部大動脈瘤の場合などにおいて血管内の二分岐部におけるもしくはその近傍の疾患内腔を修復すべく利用され得る。以下の検討においては特に言及がなければ、二分岐移植片100の実施例においては先に論じられた移植片実施例の種々の特徴が必要に応じて使用され得る。
【0113】
移植片100は、第1二分岐部分114、第2二分岐部分115および本体部分116を備える。二分岐部分114および115のサイズおよび角度配向は、部分114および115の間においてさえ、移植片投入システム要件および種々の臨床的要求に適応すべく変更され得る。たとえば各二分岐部分もしくは脚部は図7において異なる長さを有して示されるが、これは必須ではない。第1および第2二分岐部分114および115は概略的に、患者の腸骨動脈の内径と適合する外側膨張直径を有すべく構成される。第1および第2二分岐部分114および115はまた、一定の用途において湾曲し且つ屈曲的でさえある解剖学的構造に更に良好に適応すべく湾曲形状にも形成され得る。
【0114】
内孔22および73と同様に、本体部分116および第1および第2二分岐部分114および115は協働して、自身を貫通する流体流を局限すべく構成される連続的な二分岐内孔を形成する。また図7では不図示であるが移植片100は第2二分岐部分115を有さず、その場合に二分岐内孔は本体部分116と第1二分岐部分114との間に形成される。
【0115】
第1および第2二分岐部分114および115は各々、図2の実施例に関して論じられた如く膨張可能チャネル113などの膨張可能環状部およびチャネルのネットワークを備える。チャネル113は一本以上の略平行な膨張可能円周方向チャネル144と流体連通する一本以上の選択的な膨張可能長手チャネル110(たとえば背柱)を備えるが、それらの全ては選択的な遠位側膨張可能環状部117および119と流体連通する。チャネル110は、線形もしくは曲線的な(たとえば波形状の)構成を取り得る。
【0116】
先に論じられた実施例と同様に、膨張可能円周方向チャネル144の本数は、所定徴侯に適合した移植片の特定形態により変更され得る。但し概略的に、一個の二分岐部分当たりの膨張可能円周方向チャネル144の本数は1本〜約30本、好適には約10本〜約20本に亙り得る。同様に、円周方向膨張可能チャネル144の寸法、間隔、角度配向なども変更され得る。
【0117】
たとえば、各円周方向膨張可能チャネル144間の距離および各チャネルの幅は、移植片の長さに沿い変化し得るかまたは一定とされ得る。ピッチまたはリング間距離は約2mm乃至約20mmに亙り得ると共に、特に約3mm乃至約10mmに亙り得る。円周方向膨張可能チャネル144は各々が典型的に約2mm乃至約4mmの幅であるが、約1mm乃至約8mmの幅とされ得る。各長手チャネル110は典型的に約2mm乃至約4mmの幅であるが、相互にまたは個別に、約1mm乃至約8mmの幅となるべく変更され得る。
【0118】
図7の実施例においてチャネル113は、第1二分岐部分114から本体部分116を通り第2二分岐部分115まで延在する連続的な環状部およびチャネルのネットワークを形成する。故に膨張可能チャネル113は、近位側膨張可能環状部111、二次的近位側環状部112、円周方向膨張可能チャネル144、選択的な遠位側膨張可能環状部117および選択的な遠位側膨張可能環状部119を流体的に接続してネットワークとする。尚、背柱もしくは長手チャネル110は環状部111および112と流体連通されるべく本体部分116に沿い近位方向に延在することを銘記されたい。
【0119】
一定の実施例においては多くの場合、特に図7に示された如き二分岐実施例などの本発明の移植片に対しては、不適切な捻れなしで当該移植片が内部載置されるべき血管もしくは体腔の長さもしくは蛇行性を補償する機能を備えることが好適である。これは特に、その他の場合には蛇行性の解剖学的構造が血管内治療の可能性を妨げ得るというAAAの治療に対して好適である。
【0120】
本発明者等は、たとえば図7に対して記述された如き移植片の縮小能力は移植片膨張可能背柱もしくは長手チャネル110により課される制限により支配されると確信する。故に、たとえば図7の移植片に見られる背柱110の設計態様に対して考案された代替策によれば、(臨床的に不都合な移植片内孔内への貫入に帰着して遠隔血管の潅流に影響し得る)不適切なレベルの捻れなしで長寸化もしくは短寸化するという本発明の移植片脚部114、115の機能が改善され得る。
【0121】
長手チャネルもしくは背柱110は、各膨張可能チャネル144間でチャネル110が予測可能的に1回以上捻れるのを許容する一個以上の所定捻れ箇所を生成する溶接もしくは継目パターンにより構築され得る結果、移植片の脚部および/または本体部分としての各捻れに関して移植片内孔内への移植片材料の貫入は少なくなる。
【0122】
図7A乃至図7Bは、所定捻れ箇所を有さない本発明の移植片を概略的形態で示している。たとえば図7Aには、図7の二分岐移植片100の第1二分岐部分114の移植片チャネル・パターンの概略的平坦図が示される。長手移植片チャネルすなわち背柱110は、第1二分岐部分114の丈を垂直下方に延在し、且つ、対称的な一連の膨張可能チャネルもしくはリング113と交差する。各チャネル113間には、移植片100の膨張不能区画201が示される。図7Bにおいて、斯かる2本のチャネル113間の長手断面を取ると、移植片内孔22を備えた第1二分岐部分114は移植片脚部捻れと共に示される。縮小の間においてチャネルもしくは背柱110は、移植片壁部の膨張不能区画において隣り合う膨張可能チャネル113間の略中点125にて捻れ得る。図7Bの例における縮小の量は、捻れが生じる前の箇所Aおよび箇所Cの間の距離と比較して今や短寸化された同一の各箇所間の距離により示される。このおよび他の捻れは、背柱110が受ける長手方向の縮小の総量に寄与する。捻れの量は、移植片第1二分岐部分114のいずれかの側の箇所Bが内孔22内へ貫入する量に対応する。
【0123】
図7Cに示された如く各チャネル113間にて長手チャネルもしくは背柱110の丈に沿いひとつ以上の捻れ箇所123’を有すべく該背柱110のパターンを構成すると、移植片内孔22内へと形成される一切の捻れの貫入は減少される。図7Dに示された如く2個の指定点123’の夫々には捻れ123が示され、隣り合うチャネル113間の同一長さにおいて捻れの個数が倍加されている。各図にては示されないが、捻れ箇所123’は種々の単純なまたは複雑な形状を取り得る。たとえば捻れ箇所123’は単一のラインとされ得るか、または、それは三角形、矩形、半円形または他の形状を取り得る。また捻れ箇所123’は、図7Cに示された如く背柱110の各側部上に対称的に配設される必要もなく、たとえば、本明細書中に記述された如く捻れを開始する所期機能の役割を果たす限りにおいて、隣り合うチャネル間において背柱110の片側の単一の捻れ箇所で十分である。
【0124】
尚、図7Dに示された各捻れにおける箇所B’の内孔貫入の量は図7Bの箇所Bに対するものよりも小さいことを銘記されたい。もし内孔22内への更に少ない貫入が所望であれば、各膨張可能チャネル113間において長手内孔110上には更に多数個の所定捻れ箇所が生成され得る。所定捻れ箇所は主として図7の二分岐移植片に関して論じられたが、図1および図2の実施例に対して所定捻れ箇所が設計され得ることを理解すべきである。
【0125】
図7の移植片ならびに図1および図2のそれに対する代替実施例においては、多数の他の膨張可能チャネルおよび環状部形態が可能である。たとえば上記膨張可能チャネルは、長手方向に、水平に、螺旋様式で、鋸歯状に、ジグザグに、または別様に配設され得る。二分岐部分114および115のいずれかもしくは両方ならびに本体部分116上には、一個以上の付加的環状部が配設され得る。他の実施例において移植片100は、膨張のための複数の部位を必要とする区画化チャネルおよび環状部を有し得ると共に、各領域における特性を最適化すべく複数の膨張材料を使用し得る。
【0126】
第2二分岐部分115は、第1二分岐部分114と同様の構成とされ得る。図7の移植片100の実施例において第2二分岐部分115は、第1二分岐部分114および本体部分116と単一的で連続的な構成である。代替的に第1および第2二分岐部分114および115は、単一的にもしくは共同的に本体部分から別体的に形成され得ると共に、身体通路内において展開の前に又は斯かる展開の後で生体内で上記本体部分に接合され得る。
【0127】
第1および第2二分岐部分114および115は、展開されたときに概略的に円筒状であり得ると共に、これらが内部展開される血管内部の形状に概略的に合致する。本体部分116から測定されたそれらの長さは、約1cm乃至約10cm以上に亙り得る。環状部117および119における第1および第2二分岐部分114および115の夫々の遠位端部の名目的膨張外径は、約2mm乃至約30mm、好適には約5mm乃至約20mmに亙り得る。
【0128】
本体部分116は、一本以上の膨張可能長手チャネル110と流体連通する近位側膨張可能環状部111および選択的な二次的近位側膨張可能環状部112を備える。他の実施例と同様に、近位側環状部111は基本的に移植片100を内腔壁部に対して堅固にシールする役割を果たす。二次的近位側膨張可能環状部112は、移植片が内部にて展開される血管が高度に角度付けられまたは屈曲的であるという臨床的用途において特に、移植片100に対する付加的捻れ抵抗力を付与することが見出された。二次的近位側膨張可能環状部112の名目的膨張外径は約10mm乃至約45mm、好適には約15mm乃至約30mmに亙り得る一方、近位側環状部111の名目的膨張外径は約10mm乃至約45mm、好適には約16mm乃至約32mmに亙り得る。本体部分116の長さは約2cm乃至約10cm、好適には約4cm乃至約8cmに亙り得る。
【0129】
血管内移植片100は近位側コネクタ部材118、近位側ステント120および近位側ネック部分146を更に備えるが、それらの全ては図2乃至図6に関して上記で論じられた構成要素と同様とされ得る。(不図示の)連結部材は、図1乃至図6の実施例に関して論じられた如く近位側ステント120および近位側コネクタ部材118を接合し得る。図1および図2の実施例に関して論じられた如き近位側コネクタ部材、近位側コネクタ部材要素および近位側ステントもまた、二分岐移植片100での使用が可能である。
【0130】
取入口軸心角度を形成するバイアス近位端部も有するという本発明の特徴を有する移植片の二分岐実施例において、バイアスもしくは角度付けの方向は、移植片と展開部位の形態との間の適切な嵌合の達成に関して重要であり得る。概略的に、移植片の近位端部、近位側ネック部分または近位側繋止部の角度的バイアスは、任意方向とされ得る。好適には上記角度的バイアスは、移植片による治療が意図された種類の病巣(たとえば腹部大動脈瘤)の平均的角度状態に一致した方向および大きさである。
【0131】
図2および図4乃至図6に示された実施例の近位側ステント70と同様に近位側ステント120は、たとえば腹部大動脈瘤を治療すべく腹部大動脈内に当該デバイスが植設されたときに生体内での拍動力の方向に対する信頼性の高い繋止のために遠位方向に配向される逆棘121を備える。
【0132】
二分岐部分114および/または115の一方もしくは両方は、遠位側コネクタ部材124および/または150、遠位側ステント128および遠位側ネック部分154を更に備え得る。図7の実施例は、第1および第2二分岐部分114および115の各々の遠位端部に配設された遠位側コネクタ部材124および遠位側ステント128を夫々有する。遠位側コネクタ部材124および遠位側ステント128は、図8および図9に相当に詳細に示される。
【0133】
図2の実施例に関して論じられた如く且つ図8に更に明確に示された如く、第1二分岐部分114にまたはその近傍に配設された遠位側コネクタ部材124は、遠位側コネクタ部材側コネクタ要素130および選択的な充填ポート・ブリッジ132を備える。充填ポート・ブリッジ132は、遠位側コネクタ部材124の連続リング構造を保持し乍ら、遠位側コネクタ部材124が移植片100の製造と膨張媒体の注入とに対して干渉するのを防止する役割を果たす。
【0134】
膨張可能チャネル113(および本発明の他の膨張可能部材)は、遠位側膨張可能環状部117を介して充填ポート160と連通する。充填ポート160は、代替的に第2二分岐部分115もしくは移植片本体部分116上に配設され得ると共に、一個以上の充填ポートが使用され得る。先に論じられた如く充填ポート160は、流体(気体および/または液体)、粒子、ゲルまたはその組み合わせの加圧源を受け入れるべく構成される。
【0135】
図2の実施例に関して論じられた如く、図9は遠位側ステント側コネクタ要素134を含む遠位側ステント128の平坦パターンの詳細である。遠位側コネクタ部材側コネクタ要素150は、図1乃至図6の実施例に関して論じられたのと同様に(不図示の)連結部材を介して遠位側ステント側コネクタ要素134に連結されるべく構成される。遠位側ステント128は、一個以上の選択的な遠位側ステント逆棘136、一個以上の選択的な遠位側ステント逆棘包み込みパッド138、および、デバイス解放バンドを収納する選択的な一群以上の溝140を備えるが、それらの各々は上記で論じられた各実施例の対応特徴と類似様式で機能する。遠位側ステント逆棘136は逆棘121の配向の方向と逆に近位方向に配向されることで、生体内にて二分岐部分114および115を近位方向に移動させ得るという腸骨動脈にて多くの場合に見られる環境に適応する。遠位側逆棘136はまた、(不図示の様に)遠位側ステント128においてまたは本明細書中で論じられた遠位側ステント実施例の任意のものにおいて遠位方向に配向され得る。尚、本発明の図7の実施例には多数が示されるにも関わらず、図9においては図示明瞭化のために2個の遠位側ステント逆棘136のみが示されることを銘記されたい。本発明の全ての実施例は近位側ステントおよび遠位側ステントを含み、その各々が選択的に1個、2個、または任意数の逆棘を備え得ると共に、それらの任意の組合せが遠位方向、近位方向または他の任意の方向に配向され得ることは理解される。
【0136】
図1および図2の実施例と同様に、遠位側ステント128は二分岐部分114、115の一方もしくは両方に連結され得る。ステント128は、遠位側コネクタ部材124、150または一個以上の個別コネクタ部材要素89(図3B乃至図3D)により二分岐部分114、115に連結され得る。ひとつの有用な実施例において、ステントおよびコネクタ部材(またはコネクタ部材要素)の任意のものは近位側ネック部分146上に配設され得ると共に、二分岐部分114、115の一方もしくは両方は五頂点もしくは五冠部領域を有する遠位側ステント128に連結された五頂点コネクタ部材(または5個のコネクタ部材要素を有する接続部材)を有し得る。理解され得る如く、本明細書中に記述されたステント、コネクタ部材およびコネクタ部材要素の任意のものはコネクタ部材頂点、コネクタ部材要素およびステント冠部の個数の任意の組合せと共に、任意の組合せにて二分岐部分114、115の一方もしくは両方と共に使用され得る。
【0137】
図7の実施例において第2二分岐部分115の遠位端部152にてまたはその近傍に配設された選択的な遠位側コネクタ部材150は、充填ポート・ブリッジ132が無いこと以外、第1二分岐部分114の遠位側コネクタ部材124のそれと同様である構造を有する。本発明の他の実施例としては、遠位側コネクタ部材150が充填ポート・ブリッジを含むという二分岐移植片が挙げられる。
【0138】
図10乃至図16Eは、本発明の種々のステント、チャネル、環状部およびコネクタ部材の任意のものにおいて任意の組合せにて使用され得る本発明の付加的な選択的特徴を示している。
【0139】
図10に戻ると、近位側ステント70の第2の三冠部領域92の近位側頂点93の簡略化詳細が示される。頂点93の外側面170は、半径r1を有する円172により定義された円形の曲率半径を取る。ステント支柱頂点93の内面174は、楕円176により示された楕円形を取る。図10の形態において円172および楕円176は参照番号177により示される如くオフセットしているが、それらは共通の中心を共有し得る。半径r4は楕円176の焦点の一方にて示され、これらの焦点は図10において距離171だけ分離される。
【0140】
本発明者等は、本発明で用いられるNiTiステントに対して斯かる構成は、ステントにおいて更に分散した歪み分布を提供すると共に組立ての間かつ生体内で蒙るピーク歪みを減少する一方、特に近位側ステント70の第2の三冠部領域92の近位側頂点93において他の構成と比較して更に小寸の投入プロフィルも許容することを見出した。但し、図10のステント頂点形態は、本明細書中に記述された他の任意のステントもしくはコネクタ部材頂点において使用され得ると共に、NiTi以外の材料から成る構成要素に対して用いられ得る。
【0141】
近位側頂点93または第2の三冠部領域92の図10の例において本発明者等は、NiTi構成要素に対しては約0.76mm(0.030インチ)乃至約1.77mm(0.070インチ)、特に約1.27mm(0.050インチ)の半径r1が有用である一方、約ゼロ乃至約1.27mm(0.050インチ)、特に約0.06mm(0.0025インチ)のオフセット171が有効であることを見出した。約0.25mm(0.010インチ)乃至約0.76mm(0.030インチ)、特に約0.50mm(0.020インチ)の半径r4も有用である。
【0142】
図11は代替的なオフセット円形頂点形態の詳細である。此処では、近位側ステント70の第1の六冠部領域90における近位側頂点94の簡略化詳細が(図示明瞭化のために、たとえば図4に見られる第2もしくは三冠ステント領域に対する遷移領域無しで)示される。頂点94の外側面180は、半径r2を有する円182により定義される円形の曲率半径を取る。頂点94の内面184は、半径r3を有する円186により定義された円形の曲率半径を取る。半径r2は、半径r3と等しくまたはそれより大きくされ得ると共に、本発明の有効範囲内とされ得る。円182および186の中心は、図11において参照番号188により示された如く相互からオフセットされる。このオフセット188は、頂点94の領域において支柱71の幅に等しく、それより大きくもしくは小さくされ得る。
【0143】
本発明者等は、斯かる形態が、本発明のステントおよびコネクタ部材に対してNiTiが用いられたときに、特に近位側ステント70の第1の六冠部領域90の近位側頂点94において他の形態と比較して、生ずるピーク歪みを頂点94からステント支柱71まで分布させるに有効であることを見出した。但し図11のオフセット円形頂点形態は、本明細書中に記述された他の任意のステントもしくはコネクタ部材頂点において使用され得ると共に、NiTi以外の材料から成る構成要素に対して用いられ得る。近位側ステントの第1の六冠部領域90の近位側頂点94において用いられたときに、本発明者等は、約16mm乃至約26mmの範囲の拡開もしくは展開直径を有するNiTiステントにおいては、約ゼロ乃至約0.76mm(0.030インチ)、特に約0.50mm(0.020インチ)の範囲のオフセット値が有効であることを見出した。本発明者等はまた、半径r2が約0.50mm(0.020インチ)乃至約1.01mm(0.040インチ)、より詳細には約0.88mm(0.035インチ)に亙り且つ半径r3は約0.12mm(0.005インチ)乃至約0.50mm(0.020インチ)、特に約0.25mm(0.010インチ)に亙る形態が有効であることも見出した。
【0144】
本発明の種々のステント実施例の支柱41および71ならびに種々の近位側および遠位側コネクタ部材に対しては、選択的な単一もしくは複数のテーパが取入れられ得る。概略的に、近位側および遠位側ステントの両者上の支柱に一個以上のテーパを取入れると、テーパ領域には、逆棘および包み込みパッドなどの代替的特徴を収容する大きなスペースが提供される。これにより、上記構成要素が径方向に折り畳まれた投入形態とされたときに更に小寸の展開プロフィルが許容される。本発明者等は、本発明の種々のステントおよびコネクタ要素をこの減径投入プロフィルへと構成したときに、ステントは多くの場合に不十分にもしくは局所的に分布される大きな度合いの屈曲歪みを受けることを見出した。特定箇所における一定のステント支柱をテーパ付けすると、容易に、ステントもしくはコネクタ部材の全体に亙りこの歪みが更に均一に分布されると共に、ピーク歪みが管理される。次に、以下においては図12および図13の例が導入されて論じられる。
【0145】
図12には近位側ステント70の第2の三冠部領域92の単純化区画が示され、その場合にステント支柱71は(頂点93の領域において支柱71の幅と等しくてもそうでなくても良い)最大幅190から最小幅192までテーパ付けされる。最小幅192に対する最大幅190の比率として表現される上記選択的テーパは、上記ステントもしくはコネクタ部材の特定領域、用いられる材料、および他の要因に依存して広範に変更され得る。1〜約10以上のテーパ比率は、本発明の有効範囲内である。ステント支柱71がテーパを呈さないことも本発明の有効範囲内である。
【0146】
たとえばNiTiから作成された近位側ステント70の三冠部領域92において本発明者等は、約0.40mm(0.016インチ)乃至約0.81mm(0.032インチ)、特に約0.55mm(0.022インチ)乃至約0.71mm(0.028インチ)に亙る最大支柱幅190、および、約0.25mm(0.010インチ)乃至約0.66mm(0.026インチ)、特に約0.30mm(0.012インチ)乃至約0.55mm(0.022インチ)の最小支柱幅192が有効であることを見出した。本明細書中に記述されると共に図12に示された選択的なテーパ支柱の特徴は、本明細書中に記述された他の任意のステントもしくはコネクタ部材頂点において使用され得ると共に、NiTi以外の材料から成る構成要素に対して用いられ得る。
【0147】
次に図13を参照すると、遠位側ステント128の単純化区画が、非対称的冠部に帰着する選択的テーパ付けの例として示される。この例において遠位側ステント128は、幅198を呈する遠位側頂点もしくは冠部196、および、更に小寸の幅202を呈する近位側頂点もしくは冠部200を備える(図示明瞭化のためにコネクタ要素134は除去されている)。幅198および幅202が等しいことは本発明の有効範囲内である。
【0148】
特に本発明の遠位側ステントに対して本発明者等は、遠位側頂点200が近位側頂点196のそれよりも小寸の支柱幅を有するという非対称的冠部は、近位側および遠位側頂点の各々の間に及ぼされる拡開力の差に帰着することを見出した。この構成を有するステントの近位側頂点は、疾患内腔もしくは血管内で展開されたときに、移植片シール領域の近傍に更に小さい拡開力を及ぼす傾向があることから、環状部の近傍の(更に脆弱で更なる疾患組織が存在しやすい)シール領域における組織に対して斯かるステントが損傷を引き起こす可能性が減少される。斯かる構成によれば、上記構成要素が減径投入プロフィルから拡開治療プロフィルまで移動したときに、一貫して安全で予測可能な展開も促進される。最後に、斯かるテーパは遠位側頂点200により呈される拡開を減少し、これにより、上記遠位側ステントが減径形態とされたときに遠位側ステント投入プロフィルは更に小寸となる。(幅198と幅202との間の比率と同様の様式で定義される)1乃至約10以上のテーパ比率は、本発明の有効範囲内である。
【0149】
NiTiから成る遠位側ステント128に対し、本発明者等は約0.25mm(0.010インチ)乃至約0.66mm(0.026インチ)、特に約0.30mm(0.012インチ)乃至約0.60mm(0.024インチ)の範囲の幅202が有用であることを見出し、且つ、本発明者等は、約0.40mm(0.016インチ)乃至約0.81mm(0.032インチ)、特に約0.43mm(0.017インチ)乃至約0.71mm(0.028インチ)の範囲の幅198が有用であることを見出した。
【0150】
勿論、種々の形式のオフセット半径および楕円および円形頂点半径の組み合わせは、これらのテーパおよび比率を実施することで、減径投入形態への組立ての間における所望挙動、効率的な投入および生体内での性能を更に提供する。
【0151】
図14および図15は、本発明の移植片の任意のものと共に用いられ得る低プロフィルの二段式ステントの2つの付加的実施例を示している。図14および図15の二段式ステントは、移植片本体に対する十分な支持を提供し乍ら、移植片の近位側(もしくは遠位側)ネック部分におけるステント材料、移植片材料および一切の接着剤の量を減少する可能性を有する。斯かる材料の減少によれば、更に小寸のプロフィルの移植片が提供される。故に、更に小寸の体腔にアクセスすべく、更に小寸のプロフィルの投入デバイスが使用され得る。以下の記述は近位側ネック部分を備えたステントの使用に焦点を合わせるが、斯かるステントは容易に血管内移植片の遠位側ステントとしても用いられ得ることを理解すべきである。
【0152】
概略的に低プロフィルの二段式ステントは、血管内移植片の近位側ネックに埋設もしくは別様に取付けられた低プロフィルの取付繋止部と、低プロフィルの遠位側ステントと共に用いられる。図14に示された如くステント210は、近位側ステント212および遠位側ステント214から成る。近位側ステント212は、冠部もしくは頂点218を画成する複数の支柱216から成る蛇行リングの形態とされ得る。同様に、遠位側ステント214もまた、遠位側頂点222を画成する支柱220から成る蛇行リングの形状とされ得る。一形態において近位側支柱216は、近位側ネック部分に配設される材料の量が減少される如く、遠位側支柱220よりも広幅である。代替的形態において近位側ステント212および遠位側ステント214の支柱幅は、所望であれば同一とされ得る。理解され得る如く、図10乃至図13に関して上述された支柱の寸法および形態もまた、近位側ステント212および遠位側ステント214に適用可能である。
【0153】
一形態において近位側ステント212はコネクタ要素224の近位端部に連結され得ると共に、遠位側ステント216はコネクタ要素224の遠位端部に連結され得る。コネクタ要素224は典型的に、血管内移植片の全体的ネック部分長を最小化すべく、近位側ネック部分226の近位側縁部225の近傍に位置決めされる。近位側ステント212は典型的に、体腔壁部の表面に対してコネクタ部材224および遠位側ステント214の両者を付勢するに十分な径方向力を提供すべく構成される。一実施例において遠位側ステント214は移植片近位側ネック部分226の外側面に沿い位置決めされ得る。但し他の実施例において遠位側ステント214は、移植片近位側ネック部分内に埋設され得るか、または、移植片ネック部分の内面に沿い配設され得る。
【0154】
コネクタ要素224は、血管内移植片の近位側ネック部分226に取付けられたコネクタ部材228に対して二段式ステント210を取付けるべく使用され得る。上述された如くコネクタ要素224は、コネクタ部材228の(不図示の)対応コネクタ要素に対して連結部材230により取付けられ得る。図示実施例において各コネクタ部材は、血管内移植片の近位側ネック部分226に埋設された複数の個別取付繋止部の形態である。但し他の実施例において、上記コネクタ部材は他の形態を取り得る。
【0155】
コネクタ要素224の個数は特定の繋止部形状および移植片直径に依存するが、約4個〜約10個のコネクタ部材が在ることが企図される。但し、本発明によれば任意数のコネクタ部材が用いられ得ることを理解すべきである。
【0156】
先に論じられた如く、近位側ステント212および遠位側ステント214上の頂点の個数は変更され得る。図14には近位側ステントおよび遠位側ステントにおける頂点の比率のひとつの例示的実施例が示され、”n”個のコネクタ要素224が在る。遠位側ステント214には約”n”個〜約”3n”個の遠位側頂点222(典型的には”2n”個の遠位側頂点)があり、且つ、近位側ステント212には”n”個の近位側頂点218が在る。但し他の実施例においては、(たとえば2n個以上の)更なる近位側頂点218が在る。これらの比率は適切であれば変更され得ると共に、これらの特定群の比率は例示的にすぎない。図示実施例においては、隣り合う繋止部228の各々を接続する遠位側ステント214が在る。但し他の形態においては、1個置きの繋止部などの間にのみ遠位側ステントが在り得る。
【0157】
図15は、二段式ステント210の別実施例を示している。近位側ステント212および遠位側ステント214は、図14のステントと実質的に同一の形態を有する。たとえば近位側ステント212はコネクタ要素224の近位端部に連結され、且つ、遠位側ステント216はコネクタ要素224の遠位端部に連結される。各実施例間の基本的な差は、近位側ステントおよび遠位側ステントを移植片近位側ネック部分226に対して取付けるべく用いられる複数の個別V形状コネクタ部材要素240の使用である。V形状コネクタ部材要素240の端部242、244の各々は、近位側ステント212および遠位側ステント214の接続要素224に取付けられ得るコネクタ要素を備える。但し図示実施例において遠位側ステントは、上記近位側ネック部分を体腔壁部に対して保持すべく、隣り合う各V形状コネクタ部材要素240間に位置される。
【0158】
図示実施例においては”n”個毎のコネクタ要素224に対し、”n/2”個のV形状コネクタ部材要素240が在る。隣り合う各V形状コネクタ部材要素間の全てのスペースに対しては、各V形状コネクタ部材要素240のコネクタ要素の間に遠位側ステント214が位置決めされ且つ該コネクタ要素に対して連結され得る。上記遠位側ステントは任意数の遠位側冠部222を有し得るが、典型的には”n”個乃至”3n”個の遠位側冠部、好適には約”2n”個の遠位側冠部を有する。一実施例において近位側ステント212は”n”個の近位側頂点218を有するが、所望であれば更なる(たとえば2n個以上の)近位側頂点を有し得る。
【0159】
近位側および遠位側ステント212、214は、本明細書中に記述されたステントもしくはコネクタ部材に対して適切な任意の従来材料から製造され得る。NiTiなどの超弾性特性を有する形状記憶合金から製造されたとき、上記ステントは拘束状態からの解放時に自己拡開すべく構成され得る。
【0160】
不図示ではあるが、近位側ステント212および/または遠位側ステント214は本明細書中に記述されたステントの任意のものの形状を取り得ると共に、本明細書中に記述された逆棘、包み込みパッドまたはステントの他の要素の任意の組合せも備え得る。
【0161】
図16A乃至図16Eは、本発明の移植片の任意のものに取入れられ得る代替的な環状部設計態様を示している。参照を容易とするため、各図には1個の環状部16のみが示される。但し図16A乃至図16Eに示された代替的な環状部設計態様は、環状部17において、または、本明細書中に記述された他の環状部の任意のものにおいて用いられ得ることを理解すべきである。図16Aにおいて直径D2により概略的に示された如く、(図16Aにおいて参照番号16’で表される)軸心対称環状部を有する移植片本体区画近位端部14の自由サイズは、移植片10が配設されるべき血管もしくは体腔の直径より大きく設計されることで、適切なシールを形成し、たとえば疾患動脈瘤血管壁が血液流から排除されるのを確実とし得る。図16Aは、直径D1を有する不図示の血管もしくは他の体腔の内壁に対して配設された場合に圧縮されたときの移植片本体区画近位端部14および関連して膨張された環状部16’を示している。環状部16のプロフィルと比較して環状部16’の膨張済プロフィルは平坦であることから、血管壁に対するシール的装着を表す。
【0162】
図1および図16Aに示された環状部16、16’(および環状部17)、図2の環状部56、57、および、図7の環状部111、117および119の設計態様は本明細書中に記述された如く高度に信頼性の高い流体シールを提供する上で臨床的に好適であることが判明したが、膨張された環状部を血管もしくは体腔の壁部に対して押圧してそのシールを生成すると、(同時係属の米国特許出願第10/029,570号、第10/029,584号および第10/029,557号に記述された如く)上記環状部構造のメンブレン性質により該環状部の折畳み部が形成される可能性がある。図16Bは図16Aの理想化移植片部分の横断面を概略的に示すことで、環状部が自由空間内で膨張されたときの膨張済環状部の(点線D2で示された)外側面と比較して、移植片が生体内に配設されたときの膨張済環状部の(実線D1で示された)外側面にて斯かる折畳部もしくは縮れ部31が如何にして生ずるかを概念的に例証している。これらの折畳部もしくは縮れ部31は、種々の実験室内実験で例証されると共に、シールを通る不都合な流体漏出を生成する可能性を有する。
【0163】
図16Cおよび図16Dにおいて、環状部16は円筒対称的でなく、ジグザグもしくは鋸歯状を取るという移植片本体区画13の近位端部14の理想化概略図には、斯かる折畳部もしくは縮れ部31の可能性に対処した代替的な環状部設計態様が示される。この選択的な形態によれば、環状部が膨張されたときに所期のシール機能が提供されるが、該形態は血管もしくは体腔壁部に対する環状部16の径方向干渉により生じ得る折畳部により影響されにくくなる。図16Cおよび図16Dに概略的に示された如く、鋸歯状環状部16の一実施例は環状部頂点19がヒンジとして作用する機能により移植片10の可能的な陥入を減少することから、たとえば図16Cのそれから図16Dのそれへの移植片直径減少に適応し得る。
【0164】
図16Eは更に、陥入を最小化すべく鋸歯状環状部16が如何に設計され得るかを示している。此処で内側曲率半径R1は、各頂点19における外側曲率半径R2に向かう方向にオフセットされる。内側曲率半径R1をこの様にオフセットするとR1はオフセット無しの場合よりも大きくされ得ることから、頂点19における”ヒンジ”の同一の角度変化に対して頂点19にて生成される歪みは小さくなり、メンブレン・ヒンジもしくは頂点19が不都合な陥入を蒙る可能性は付随的に低くなる。図16C乃至図16Eのこの代替的な鋸歯状環状部の設計態様はまた、本発明の移植片の捻れ抵抗力を好適に増進し得る、と言うのも、頂点19のヒンジ作用により移植片本体の長手折畳みを防止すると移植片本体13における不都合な捻れの開始も防止され易いからである。
【0165】
有用な膨張媒体としては概略的に、複数の成分の混合により形成されると共に、数分から数十分、好適には約3分乃至約12分の範囲の硬化時間を有するものが挙げられる。斯かる材料は、生体適合性であり、長期安定性(好適には生体内で少なくとも10年のオーダー)を示し、与える塞栓のリスクは可及的に低いものであり、且つ、生体内における本発明の移植片の運用に適切となるべく硬化前および硬化後のいずれにおいても適切な機械的特性を呈すべきである。たとえば斯かる材料は、凝固もしくは硬化の以前には比較的に低い粘度を有することで、移植片環状部およびチャネルの充填プロセスを促進せねばならない。斯かる膨張媒体の硬化後の好適な弾性率は344.73kPa(50psi)乃至約2757.90kPa(400psi)であり、生体内において適切なシールを形成するという充填済移植片の必要性に調和する一方、移植片の臨床的に適切な捻れ抵抗力を維持する。上記膨張媒体は理想的には短期的にも長期的に放射線不透過性とされるべきであるが、これは絶対的に必要なものではない。
【0166】
本発明における膨張媒体として適切な組成物の詳細は、2000年2月1日に出願されると共に”共役不飽和基に対する求核付加反応により形成された生体材料(Biomaterials Formed by Nucleophilic Addition Reaction to Conjugated Unsaturated Groups)”と称されたフッベル等(Hubbell et al.)に対する米国特許出願第09/496,231号、および、2000年6月2日に出願されると共に”医薬的に活性な化合物の制御式投与に対する共役付加反応(Conjugate Addition Reactions for the Controlled Delivery of
Pharmaceutically Active Compounds)”と称されたフッベル等に対する米国特許出願第09/586,937号に相当に詳細に記述されている。これらの特許出願の各々の全体は、言及したことにより本明細書中に援用される。
【0167】
本発明者等は、本発明に対する膨張媒体の役割を果たすにはマイケル付加プロセス(Michael addition process)により形成された特定の三成分媒体が特に有用であることを見出した。この媒体は、
【0168】
(1)約50〜約55重量%の割合、特に約52重量%の割合で存在するポリエチレングリコール・ジアクリレート(PEGDA);
【0169】
(2)約22〜約27重量%の範囲の割合、特に約24重量%の割合で存在するペンタエリトリトール・テトラ−3(メルカプトプロピオネート);および、
【0170】
(3)約22〜約27重量%の範囲の割合、特に約24重量%の割合で存在するグリシルグリシン緩衝液;
【0171】
から成る。
【0172】
適切であれば、両件ともにフッベル等に対する同時係属の米国特許出願第09/496,231号および第09/586,937号に記述された、これらの成分および他の配合の変更例が使用され得る。これに加えて本発明者等は、約350〜約850の範囲の分子量を有するPEGDAが有用であり、約440〜約560の範囲の分子量を有するPEGDAが特に有用であることを見出した。
【0173】
この三成分系に対しては、先に論じられた如き放射線不透過性材料が添加され得る。本発明者等は、グリシルグリシン緩衝液に対して硫酸バリウム、タンタル粉末などの放射線不透過剤(radiopacifier)およびヨウ素化合物などの可溶材料を添加することが有用であることを見出した。
【0174】
本発明者等は、リン酸塩で緩衝された塩水中のトリエタノールアミンは上述の第3成分としてグリシルグリシン緩衝液に対する代替物として使用されることで、本発明の各実施例で使用されるに適した代替的な硬化可能ゲルを形成し得ることを見出した。
【0175】
これらの三成分系に対する代替物は、生体適合溶媒からポリマ沈降で作成されたゲルである。斯かる適切なポリマの例としては、エチレン・ビニルアルコールおよび酢酸セルロースが挙げられる。また斯かる適切な生体適合溶媒の例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n−メチル・ピロリドン(NMP)およびその他が挙げられる。斯かるポリマおよび溶媒は、適切であれば種々の組み合わせで使用され得る。
【0176】
代替的に、膨張ゲルとして種々のシロキサンが使用され得る。その例としては、(カリフォルニア、サンラモンのダンヴィル・マテリアル(Danville Materials of San Ramon, California)からのSTAR−VPS、および、カリフォルニア、サンタバーバラのニューシル・インク(NuSil, Inc. of Santa Barbara, California)により製造された如き種々のシリコーン製品などの)親水性シロキサンおよびポリビニル・シロキサンが挙げられる。
【0177】
本発明に対する膨張媒体もしくは材料として有用な他のゲル系としては、加熱もしくは冷却時に初期の液体もしくは揺変状態からゲル化する相変化系が挙げられる。たとえば、約500〜約1,200の範囲の分子量を有するn−イソプロピル−ポリアクリルアミド(NIPAM)、BASF F−127プルロニック・ポリオキサマ(pluronic
polyoxyamer)、および、ポリエチレングリコール(PEG)化学物質が適切である。
【0178】
有効なゲルはまた十分な剪断流動化(shear−thinning)を受ける揺変性材料から成ることから、それは投入カテーテルなどの管路を通して容易に注入され得るが、本発明の種々のチャネルおよび環状部内に存在するときにはゼロもしくは低い剪断速度にて実質的にゲル状と成り得る。
【0179】
上述の三成分PEDGA−QT−グリシルグリシンの配合物の場合には、適切な混合、投入および最終的な臨床的効力を確実にすべく、慎重な調製および投入手順が追随されねばならない。上記三成分の各々は典型的に、血管内移植片を展開する適時まで、注入器などの無菌容器内に別体的に収納される。上記QTおよび緩衝液(典型的にはグリシルグリシン)は先ず、典型的には約2分間に亙り夫々の注入器間で連続的かつ十分に混合される。次に、結果的な二成分混合物に対しては約3分間に亙りPEGDAが十分に混合される。この結果的な三成分混合物は次に移植片本体区画内への導入の準備ができる、と言うのも、それは所望特性を有するゲルへと次の数分間内に硬化するからである。硬化時間は、臨床的設定の要件に従い、上記配合物、混合手順および他の変数を調節することで適合調整され得る。これらの材料に対する適切な投入手順の詳細は、チョボトフ等に対する同時係属の米国特許出願第09/917,371号において論じられる。
【0180】
本発明者等は、これらのゲルの硬化後の機械的特性が上記配合物に対するそれほどの変更なしで高度に適合調整可能であることを見出した。たとえばこれらのゲルは数百kPa乃至数千kPa(数十psi乃至数百psi)に亙る弾性率を呈し得るものであり、上述の配合物は約30〜約50%に亙る破損伸びにより約1206.58kPa(175psi)〜約1723.69kPa(250psi)の弾性率を呈する。
【0181】
特に本発明者等は、上記膨張材料に対して不活性生体材料を添加することが有用であることを見出した。特に本発明者等は、塩水などの流体を(典型的には当該配合物が混合されたが十分な硬化が生ずる前に)PEGDA−QT−グリシルグリシン配合物に対して添加すると、該配合物の粘度が低くなり、且つ、該配合物の所望の物理的、化学的および機械的特性もしくはその臨床的効力を犠牲にすることなく膨張済環状部およびチャネルの移植片本体区画ネットワーク内へと該配合物が結果的に非常に容易に注入されることを見出した。適切な体積割合にて塩水などの材料を添加すると、溢流または漏出の場合にPEGDA−QT−グリシルグリシンなどの膨張材料が塞栓のリスクを引き起こす可能性も減少され得る。最終的な塩水/三成分配合物の組み合わせの体積割合としての塩水濃度は、ゼロ乃至60%以上までにも亙り得ると共に、特に適切なのは約20〜約40%の範囲の塩水濃度である。本発明者等は、約30%の塩水体積濃度が最も適切であることを見出した。塩水に対する代替物としては、グリシルグリシンの如き緩衝液などの生体適合液体が挙げられる。
【0182】
更に概略的な表現では、当該膨張媒体の成分の各々が生体適合性であり血液に可溶性であるという膨張媒体を使用するのが好適である。膨張媒体が偶発的に患者の血管系に放出された場合の一切の毒性リスクを管理すべく、生体適合性膨張媒体が望ましい。斯かる膨張媒体は、硬化の前に血液流内に溢流しても分散、ゲル化または凝固してはならない。而して溢流の場合には、通常の血液流が上記各構成要素を迅速に分散し、且つ、それらの濃度は架橋して固体を形成するに必要なレベル未満まで低下する。これらの構成要素は次に、患者に対して塞栓リスクを課さずに標準的な系路を通して身体により排除される。全ての成分が血液に可溶性であるという膨張媒体の例の多くの可能性の中には、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、チオール化ポリエチレンアミン(thiolated polyethyleneamine)および緩衝液の組み合わせが在る。
【0183】
先に論じられた如く、一種類以上の膨張媒体、または、一種類の膨張媒体の一種類以上の変更例が単一移植片で使用されることで、該移植片が配設される領域における移植片特性が最適化され得る。
【0184】
たとえば本発明の種々の実施例の近位側および遠位側の環状部において上記膨張材料は形状適合可能なシール媒体の役割を果たすことで、内腔壁部に対するシールを提供する。故に上記近位側および遠位側の環状部内の膨張媒体に対して望ましい機械的特性としては、環状部が(石灰質化したプラーク凹凸などの)一切の内腔不整の回りにおいて変形して内腔プロフィルに合致するのを可能とする低い剪断応力、ならびに、後事における一切の内腔拡張に適応してシールを維持すべく充填材料が必要なだけ環状部を拡開するのを許容する大きな体積圧縮性が挙げられる。
【0185】
対照的に、単一もしくは複数のチャネルにおいて上記膨張媒体は基本的に、移植片が内部載置される内腔に対する構造的支持と、移植片に対する捻れ抵抗力とを提供する。故に単一もしくは複数のチャネルにおける上記膨張媒体の望ましい機械的特性としては、(たとえば新内膜過増殖[neointimal hyperproliferation]に起因する)血管もしくは内腔からの外部圧縮力によるチャネルもしくはチャネルセグメントの非弾性変形を防止するための高い剪断応力、および、相互に圧縮接触し得る隣接チャネルもしくはチャネルセグメント同士に対して安定な支持を提供することで移植片に対する捻れ抵抗力を提供するための低い体積圧縮性が挙げられる。
【0186】
これらの対照的な要件を考慮すると、近位側および遠位側の環状部に対する第1の膨張媒体および単一もしくは複数のチャネルに対する第2の膨張媒体などの様に、移植片の異なる部分に対して異なる膨張材料を充填するのが有用であり得る。
【0187】
本発明の種々の実施例においては、移植片環状部およびチャネルが膨張媒体により充填されつつあるという展開時の間において螢光透視鏡などの技術を使用して膨張媒体が可視とされるのが望ましい。斯かる可視性によれば臨床医は、環状部およびチャネルが正しく充填されていることを確認すると共に、そうでない場合には充填手順を調節し得る。それによれば、移植片からの膨張材料の一切の漏出もしくは別様の不都合な流れを検出する機会が提供されることから、注入は停止され得ることで漏出膨張材料の量が最小化される。
【0188】
移植片が患者内へと展開された後、コンピュータ断層撮影(CT)などの追跡撮像技術を用いて移植片を可視とするのが望ましい。但しこの時点において膨張材料は理想的には、血液を造影剤により不透明化することで視覚化される臨床的に重要な内部漏出を可能的に覆い隠す如き稠密なCT画像を生成するほどには、放射線不透過性とはされない。
【0189】
但しこれらの2つの目的のバランスを取ることは困難である、と言うのも、少量の放射線不透過物を検出する上でCT技術は螢光透視鏡技術よりも相当に感度が高いからである。ひとつの解決策は、たとえば一種類以上の放射線不透過性材料が膨張媒体から経時的に拡散することで膨張媒体の放射線不透過性が減少するという放射線不透過性材料の配合物を使用するなどして、経時的に放射線不透過性が少なくなる膨張媒体を使用することである。たとえば、ヨウ化水溶液などの可溶性造影剤と硫酸バリウムなどの不溶性造影剤との配合物は、この目的に対して有用である。上記可溶性造影剤は移植片が植設された後の一定時点にて移植片本体区画の細孔から拡散する結果、膨張材料の放射線不透過性は経時的に漸減する。この機能に対しては、約2%(重量)の硫酸バリウムおよび約20%(重量)のヨウ化対照液の組み合わせから調製された充填材料用放射線不透過剤が有用である。
【0190】
本発明の特定形態が図示かつ記述されたが、本発明の精神および有効範囲から逸脱せずに種々の改変が為され得ることは明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内デバイスを供給する供給方法において、
生体適合性材料、膨張可能なチャネルおよび拡開可能なステントを含む管状の血管内デバイスを提供し、
複数の成分を含む膨張材料を提供し、
該膨張材料でもって前記膨張可能なチャネルを膨張させて、膨張されたチャネルを提供し、該膨張されたチャネルは体腔に対して固定できるようにした、供給方法。
【請求項2】
さらに、前記膨張可能なチャネルを膨張させる前に、前記膨張材料の成分を混合することを含む、請求項1に記載の供給方法。
【請求項3】
さらに、前記膨張可能なチャネルを膨張させつつ、前記膨張材料の成分を混合することを含む、請求項1に記載の供給方法。
【請求項4】
前記膨張材料が硬化可能材料である請求項1に記載の供給方法。
【請求項5】
さらに、前記硬化可能材料を硬化させることを含む請求項4に記載の供給方法。
【請求項6】
さらに、前記硬化可能材料を約3分から約12分、硬化させることを含む請求項5に記載の供給方法。
【請求項7】
前記膨張材料の一つの成分は、放射線不透過性成分を含む請求項1に記載の供給方法。
【請求項8】
前記膨張材料の一つの成分は、造影剤を含む請求項1に記載の供給方法。
【請求項9】
前記膨張材料は、さらに不活性生体適合材料を含む請求項1に記載の供給方法。
【請求項10】
前記不活性生体適合材料は塩水を含む請求項9に記載の供給方法。
【請求項11】
前記不活性生体適合材料は緩衝液を含む請求項9に記載の供給方法。
【請求項12】
前記膨張材料の成分は、生体適合性であって血液に可溶性である請求項1に記載の供給方法。
【請求項13】
前記膨張材料の成分は、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、チオール化ポリエチレンアミン(thiolated polyethyleneamine)および緩衝液を含む請求項12に記載の供給方法。
【請求項14】
前記膨張材料の成分は、
ポリエチレングリコール・ジアクリレートと、
ペンタエリトリトール・テトラ−3(メルカプトプロピオネート)と、
緩衝液または塩水とを含む請求項1に記載の供給方法。
【請求項15】
前記膨張されたチャネルは、血液流から体腔をシールする請求項1に記載の供給方法。
【請求項16】
前記膨張されたチャネルは、体腔の展開部位の形態に一致する請求項1に記載の供給方法。
【請求項17】
前記生体適合材料は、超高分子量ポリエチレン、ポリエステル、および発泡ポリテトラフルオロエチレンから構成されるグループより選択される、請求項1に記載の供給方法。
【請求項18】
前記膨張可能なチャネルは環状部を含む請求項1に記載の供給方法。
【請求項19】
血管内デバイスを供給する供給方法において、
生体適合性材料、膨張可能なチャネルおよび拡開可能なステントを含む管状の血管内デバイスを提供し、
不活性生体適合流体を提供し、
該不活性生体適合流体でもって前記膨張可能なチャネルを膨張させ、
複数の成分を含む硬化可能な膨張材料を提供し、
該硬化可能な膨張材料でもって前記膨張されたチャネルを膨張させ、
前記硬化可能な膨張材料を硬化させ、前記膨張されたチャネルを体腔に対して固定できるようにした、供給方法。
【請求項20】
前記不活性生体適合流体は塩水を含む請求項19に記載の供給方法。
【請求項21】
前記不活性生体適合流体は塩水および造影剤を含む請求項19に記載の供給方法。
【請求項22】
さらに、前記膨張可能なチャネルを膨張させる前に、前記硬化可能な膨張材料の成分を混合することを含む、請求項19に記載の供給方法。
【請求項23】
さらに、前記膨張可能なチャネルを膨張させつつ、前記硬化可能な膨張材料の成分を混合することを含む、請求項19に記載の供給方法。
【請求項24】
前記植設されて膨張されたチャネルは体腔を血液流からシールする請求項19に記載の供給方法。
【請求項25】
前記植設されて膨張されたチャネルは体腔の展開部位の形態に一致する請求項19に記載の供給方法。
【請求項26】
前記生体適合材料は、超高分子量ポリエチレン、ポリエステル、および発泡ポリテトラフルオロエチレンから構成されるグループより選択される、請求項19に記載の供給方法。
【請求項27】
前記硬化可能な膨張材料の成分は、生体適合性であって血液に可溶性である請求項19に記載の供給方法。
【請求項28】
前記硬化可能な膨張材料の成分は、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、チオール化ポリエチレンアミン(thiolated polyethyleneamine)および緩衝液を含む請求項27に記載の供給方法。
【請求項29】
前記硬化可能な膨張材料の成分は、
ポリエチレングリコール・ジアクリレートと、
ペンタエリトリトール・テトラ−3(メルカプトプロピオネート)と、
緩衝液または塩水とを含む請求項19に記載の供給方法。
【請求項1】
血管内デバイスを供給する供給方法において、
生体適合性材料、膨張可能なチャネルおよび拡開可能なステントを含む管状の血管内デバイスを提供し、
複数の成分を含む膨張材料を提供し、
該膨張材料でもって前記膨張可能なチャネルを膨張させて、膨張されたチャネルを提供し、該膨張されたチャネルは体腔に対して固定できるようにした、供給方法。
【請求項2】
さらに、前記膨張可能なチャネルを膨張させる前に、前記膨張材料の成分を混合することを含む、請求項1に記載の供給方法。
【請求項3】
さらに、前記膨張可能なチャネルを膨張させつつ、前記膨張材料の成分を混合することを含む、請求項1に記載の供給方法。
【請求項4】
前記膨張材料が硬化可能材料である請求項1に記載の供給方法。
【請求項5】
さらに、前記硬化可能材料を硬化させることを含む請求項4に記載の供給方法。
【請求項6】
さらに、前記硬化可能材料を約3分から約12分、硬化させることを含む請求項5に記載の供給方法。
【請求項7】
前記膨張材料の一つの成分は、放射線不透過性成分を含む請求項1に記載の供給方法。
【請求項8】
前記膨張材料の一つの成分は、造影剤を含む請求項1に記載の供給方法。
【請求項9】
前記膨張材料は、さらに不活性生体適合材料を含む請求項1に記載の供給方法。
【請求項10】
前記不活性生体適合材料は塩水を含む請求項9に記載の供給方法。
【請求項11】
前記不活性生体適合材料は緩衝液を含む請求項9に記載の供給方法。
【請求項12】
前記膨張材料の成分は、生体適合性であって血液に可溶性である請求項1に記載の供給方法。
【請求項13】
前記膨張材料の成分は、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、チオール化ポリエチレンアミン(thiolated polyethyleneamine)および緩衝液を含む請求項12に記載の供給方法。
【請求項14】
前記膨張材料の成分は、
ポリエチレングリコール・ジアクリレートと、
ペンタエリトリトール・テトラ−3(メルカプトプロピオネート)と、
緩衝液または塩水とを含む請求項1に記載の供給方法。
【請求項15】
前記膨張されたチャネルは、血液流から体腔をシールする請求項1に記載の供給方法。
【請求項16】
前記膨張されたチャネルは、体腔の展開部位の形態に一致する請求項1に記載の供給方法。
【請求項17】
前記生体適合材料は、超高分子量ポリエチレン、ポリエステル、および発泡ポリテトラフルオロエチレンから構成されるグループより選択される、請求項1に記載の供給方法。
【請求項18】
前記膨張可能なチャネルは環状部を含む請求項1に記載の供給方法。
【請求項19】
血管内デバイスを供給する供給方法において、
生体適合性材料、膨張可能なチャネルおよび拡開可能なステントを含む管状の血管内デバイスを提供し、
不活性生体適合流体を提供し、
該不活性生体適合流体でもって前記膨張可能なチャネルを膨張させ、
複数の成分を含む硬化可能な膨張材料を提供し、
該硬化可能な膨張材料でもって前記膨張されたチャネルを膨張させ、
前記硬化可能な膨張材料を硬化させ、前記膨張されたチャネルを体腔に対して固定できるようにした、供給方法。
【請求項20】
前記不活性生体適合流体は塩水を含む請求項19に記載の供給方法。
【請求項21】
前記不活性生体適合流体は塩水および造影剤を含む請求項19に記載の供給方法。
【請求項22】
さらに、前記膨張可能なチャネルを膨張させる前に、前記硬化可能な膨張材料の成分を混合することを含む、請求項19に記載の供給方法。
【請求項23】
さらに、前記膨張可能なチャネルを膨張させつつ、前記硬化可能な膨張材料の成分を混合することを含む、請求項19に記載の供給方法。
【請求項24】
前記植設されて膨張されたチャネルは体腔を血液流からシールする請求項19に記載の供給方法。
【請求項25】
前記植設されて膨張されたチャネルは体腔の展開部位の形態に一致する請求項19に記載の供給方法。
【請求項26】
前記生体適合材料は、超高分子量ポリエチレン、ポリエステル、および発泡ポリテトラフルオロエチレンから構成されるグループより選択される、請求項19に記載の供給方法。
【請求項27】
前記硬化可能な膨張材料の成分は、生体適合性であって血液に可溶性である請求項19に記載の供給方法。
【請求項28】
前記硬化可能な膨張材料の成分は、ポリエチレングリコール・ジアクリレート、チオール化ポリエチレンアミン(thiolated polyethyleneamine)および緩衝液を含む請求項27に記載の供給方法。
【請求項29】
前記硬化可能な膨張材料の成分は、
ポリエチレングリコール・ジアクリレートと、
ペンタエリトリトール・テトラ−3(メルカプトプロピオネート)と、
緩衝液または塩水とを含む請求項19に記載の供給方法。
【図1】
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【公開番号】特開2010−131434(P2010−131434A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41226(P2010−41226)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【分割の表示】特願2008−303094(P2008−303094)の分割
【原出願日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【出願人】(504234657)トリバスキュラー2,インコーポレイティド (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【分割の表示】特願2008−303094(P2008−303094)の分割
【原出願日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【出願人】(504234657)トリバスキュラー2,インコーポレイティド (7)
【Fターム(参考)】
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