説明

光および温度依存性信号を発生させる回路配置

【解決手段】光および温度に依存する信号を発生させる回路配置において、入射電磁放射線に応じた第1および第2電気信号を発生させる複数の第1および第2センサ素子を有する。第1センサ素子は、可視光の少なくとも大部分を含む第1波長範囲(62)から第1電気信号を発生させるように設計される。第2センサ素子は、主として赤外放射線を含む第2波長範囲(64)から第2電気信号を発生させるように設計される。第1波長範囲(62)は、第2波長範囲(64)と重複し、よって第1波長範囲(62)は第2波長葉に(64)と同様に赤外放射線を含む。
【効果】2つの種類の異なるセンサ素子を用いて、簡単でかつより費用対効果の高い構成で、精度の高い温度信号および画像信号を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の特性を表す光および温度依存性信号を発生させる回路配置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記のような回路配置は、特許文献1に開示されている。
特許文献1は、観察対象での物体の表面温度分布を決定するために用いる撮像パイロメータを記載している。この公知のパイロメータは、対象の「通常」光学画像を供給する。このことは、同文献で画素と呼ばれる複数のセンサ素子を含む光電子センサを有する公知のパイロメータによって達成される。
【0003】
光電子センサは、センサの表面に交互状に配置される3つの異なる種類のセンサ素子を有する。第1種のセンサ素子は、約1.06μmの非常に狭帯域波長範囲から発生する電磁放射線に依存して電気信号を発生させるように設計される。第2種のセンサ素子は、約0.99μmの第2狭帯域波長範囲からの電磁放射線に依存して電気信号を発生させるように設計される。2つの狭帯域幅範囲は、各々赤外線スペクトルのごく一部を含む。第3種のセンサ素子は、実質的に可視光のみを含む相対広帯域波長幅からの電磁放射線に依存して電気信号を発生させるように設計される。2つの赤外線範囲からの電気信号は、例えば、特許文献2に記載されるようなアルゴリズムに従って温度を決定するために用いられる。これは、商演算手法を含み、2つの狭帯域赤外線範囲からの信号同士の商が、その温度が決定される表面固有の発光特性を排除するために形成される。観察対象の「通常」光学画像だけが、可視光の波長範囲からの第3電気信号を用いて発生される。
【0004】
したがって、前記公知のセンサは、少なくとも部分的に異なる工程で製造されなければならず、かつセンサの表面に分布されなければならない3つの異なる種類のセンサ素子を有する。したがって、前記公知のセンサの製造は、むしろ複雑でかつ高価である。一方、前記公知のセンサの解像度は、視像に関しても温度分布に関しても、同じ種類の2つのセンサ素子間に、いずれの場合にも異なる種類のセンサ素子によって塞がれる「ギャップ」があるよう、異なるセンサ素子がセンサの表面上に並んで配置されるので、制限される。制限された解像度は、例えば、記録された物体の幾何学的特性を光学画像に基づいて決定したい場合には不利である。最後に、センサ素子のダイナミックレンジは、数回の異なる露光が観察対象での温度および放射線強度によっては必要とされるように、前記公知のセンサの場合にも制限される。したがって、画像記録が、煩雑になることがある。
【0005】
すでに上で引用したように、特許文献2は、いずれの場合にも狭帯域である2つの異なる波長範囲で電磁放射線を記録する複数のセンサ素子を含む商パイロメータを開示している。この公知のパイロメータは、温度分布を決定することができるが、観察対象の「通常」光学画像を記録することはできない。
さらに、商パイロメータは、さまざまな従来の文献がある。一例として、差が商の対数に対応する状態で、測定された値の対数を最初に決定し、かつその後対数間の差を計算するよう提案する特許文献3を参照する。該文献は、赤および青波長範囲からの電磁放射線を記録することを提案している。類似の提案は、赤および緑波長範囲からの電磁放射線を記録すべきであるという、特許文献4に見られる。
【0006】
特許文献5は、商パイロメータを開示しており、対象の実際の温度は、温度決定のための参照値を提供する別の温度冷却器を用いて決定される。
特許文献6は、商パイロメータを開示しており、シリコンからなる光電池が、放射線方向においてゲルマニウムダイオードの上流に配置される。シリコンは、フィルタ素子としての機能を果たし、かつ主に1.2μmより大きい波長を有する放射線のみを通過させる。ゲルマニウムダイオードは、約1.5μmの波長範囲において最大感度を有する。シリコンの光電池の最大感度は、ほぼ0.9μmである。観察対象の温度は、2つのセンサ素子の信号から決定される。
【0007】
特許文献7は、例えば、太陽電池として用いられる薄膜半導体部品を開示している。薄膜半導体部品は、半導体基板上に層状に構成される。
特許文献8は、積み重ねた形で上下に配置される複数のセンサ素子を含むカメラを開示している。一例として、カラーマトリックスセンサおよび白黒マトリックスセンサが、上下に垂直に配置され、かつ画素ごとに互いに整列される。センサの深部に積み重ねられるpn接合は、波長が長くなればなるほど、それだけ深く光学波長が材料を貫通するので、異なる波長に反応する。
【0008】
最後に、特許文献9は、画像記録チップのための画像セルを開示しており、フォトダイオードおよびMOS(金属酸化物半導体)トランジスタが、フォトダイオードに発生される電荷キャリアがMOSトランジスタのチャネルを流れていくようにして互いに接続される。MOSトランジスタは、画像セルの電気出力信号が入射放射線の強度に対数的に依存するという結果を伴う部分的閾値範囲と呼ばれる範囲で動作させられる。したがって、この公知の画像セルは、極めて動的な光信号を記録することができる。この技術を有する画像記録装置チップは、HDRC(登録商標)の商品名で、本出願人によって販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1134565B1号明細書
【特許文献2】米国特許第4,413,324号明細書
【特許文献3】ドイツ特許第1237804A1号明細書
【特許文献4】ドイツ特許第867453号明細書
【特許文献5】ドイツ特許第2427892A1号明細書
【特許文献6】ドイツ特許第1136135A号明細書
【特許文献7】ドイツ特許第3317108A1号明細書
【特許文献8】ドイツ特許第19650705A1号明細書
【特許文献9】ドイツ特許第4209536A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、光および温度依存性信号を発生させる回路配置を提供することであり、該回路配置を、対象における物体の異なる特性または特長を決定するために用いることができ、その特性または特長は、高精度にかつ費用効果的に放射線依存特性を含む。特に、本発明の目的は、撮像パイロメータを費用効果的に構築することを可能にする回路配置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本目的の回路配置は、入射電磁放射線に依存する複数の第1および第2電気信号を発生させる複数の第1および第2センサ素子を含み、第1センサ素子は、可視光の少なくとも大部分を含む第1波長範囲から第1電気信号を発生させるように設計され、かつ第2センサ素子は、主に赤外放射線を含む第2波長範囲から第2電気信号を発生させるように設計される。第1波長範囲は、第2波長範囲と重複し、よって第1波長範囲は赤外放射線を含む。
【0012】
本発明の回路配置は、2つの異なる波長範囲からの電磁放射線を記録する、それ自体公知の概念に基づいている。観察対象における物体の表面温度を、商を評価することによって決定することができる。表面の発光特性は、商演算のために排除される。しかしながら、先行技術の複数の回路配置とは対照的に、本発明の回路配置は、赤外放射線の範囲において重複する2つの広帯域波長範囲を用いる。さらに、第1波長範囲は、可視光の大部分をまた含む。驚くべきことに、波長範囲が赤外線範囲において重複しているにも関わらず、公知の商演算手法に従って高精度に温度を決定することができる。さらに、本発明の回路配置は、可視波長範囲からも信号を与える。したがって、本発明の回路配置は、温度を決定することを許可するだけでなく、観察対象の光学画像(従来のカメラ画像)を発生させる信号を与えることができる。
【0013】
特許文献1の回路配置とは対照的に、本発明の回路配置は、2つの異なる種類のセンサ素子で間に合う。したがって、実現するのはより簡単で、かつより費用効果が高い。好ましい実施形態では、第1センサ素子は、特定のフィルタなしに実現され、このことは、使用される材料を用いて一般的に検出することができる実質的な全波長範囲からの電磁放射線を記録することを意味している。言い換えると、特定のフィルタを、好ましくは、特に簡単な、かつ費用効果の高い設計を許可する第1センサ素子の場合には不要にする。
【0014】
2つの異なる種類のセンサ素子のみが必要とされるので、同じ種類のセンサ素子を、マトリックス状の画像センサの表面上に互いにより高密度に配置することができるのでより高解像度が可能である。したがって、観察物体の幾何学的特性を、記録された画像から高精度に決定することができる。しかしながら、原則的に、本発明の回路配置は、マトリックス状の画像センサの場合だけでなく、2つのセンサ素子または少数の第1および第2センサ素子を有するパイロメータの場合にも用いることができる。
【0015】
商演算手法に従って温度を決定するために、本発明の回路配置は、第1および第2センサ素子を用いて記録される第1および第2波長範囲が互いに異なるということを利用する。したがって、第1および第2センサ素子は、たとえ観察対象内の同一点で配向されても、異なる電気信号を供給する。異なる信号は、たとえ第1および第2波長範囲が、赤外放射線の配置内で重複しても、商演算手法に従って温度を決定することができる。
【0016】
したがって、上記の目的は、完全な形で達成される。
好ましい構成では、本発明の回路配置は、第1および第2信号依存的に対象の温度を決定するように設計される回路部を有する。
本構成では、回路部は、第1および第2電気信号を受信し、かつ観察対象における表面の発光特性を排除するために、商演算を実行する。放射表面の温度を決定するためのそれ自体公知の本方法を、本発明の回路配置を用いて非常に簡単にかつ費用効果的に実現することができる。好ましい構成では、温度を決定する回路部は、本発明の回路配置の一部である。しかしながら、これに代わるものとして、本発明の回路配置を、例えば、視像および赤外線画像を同時に記録するために、回路部とは別に用いることができる。
【0017】
さらなる構成では、本発明の回路配置は、半導体基板を含み、その上に複数の第1および第2センサ素子が並んで配置される。
好ましくは、第1および第2センサ素子は、マトリックス状に並んで配置される。それらは、画素の配列を含む画像センサを形成する。第1および第2センサ素子を、半導体基板の表面上に格子状パターンの形で交互に配置することができる。他の実施形態では、第1および第2センサ素子は、行ごとにまたは列ごとに交互に並ぶ。これらの構成は、可視光の範囲および赤外線範囲のいずれにおいても、観察対象の広域画像の迅速および一時的な同期記録を可能にする。異なる画像の互いの良好な整列は、同期記録の結果として可能である。
【0018】
本発明のさらなる構成では、第1および第2センサ素子は、上下に配置される。
本構成を、先行技術の構成と組み合わせて、非常に有利に用いることができるが、先行技術の構成なしで用いることもできる。
後者の場合には、本発明の回路配置は、例えば、対象でのスポット状の選択測定のために用いることができる、1つまたは2〜3の第1および第2センサ素子を有する。
【0019】
前者の場合、第1および第2センサ素子は、積み重ねた形で上下に配置され、複数のそのような対の積み重ねられた第1および第2センサ素子は、マトリックス状に並んで配置される。この場合、各対の第1および第2センサ素子は、マトリックスセンサの画素を形成し、それにより非常に高解像度が可能になる。各積重ねられた頂部のセンサ素子を形成する材料層が、底部センサ素子に達する放射線に関してフィルタ効果をすでに有しているのは有利である。
【0020】
さらに、すべてのセンサ素子を、本発明の回路配置全体の製造を簡略化する共通の工程ステップで製造することができる。しかしながら、本発明の回路配置が、マトリックスセンサのために用いられなくても、本構成により、非常に小さいセンサが可能になり、第1および第2センサ素子を、観察対象内の同一の測定点で配向することができる。
さらなる好ましい構成では、第1および第2センサ素子は、各々フォトダイオード、およびゲート端子、2つのさらなる端子、およびチャネルを有する少なくとも1つのMOSトランジスタを含み、フォトダイオードは、該フォトダイオードに発生される電荷キャリアがチャネルに流入するようにしてMOSトランジスタに結合され、かつゲート端子は、2つのさらなる端子の一方に導電接続される。
【0021】
本構成では、第1および第2センサ素子は、好ましくは、導入部で述べた上記特許文献9に記載されるような、HDRC(登録商標)の原理に従って構成される。MOSトランジスタは、センサ素子が各々対数特性曲線を有するように、部分的閾値範囲で有利に動作される。本構成は、複数の利点を有する。まず、それにより、対数化された信号間の差が信号の商の対数に対応するので、温度を決定するのに有利である商演算の代わりに、差演算を用いることが可能になる。差演算を、「真の」商演算より簡単にかつ迅速に実現することができる。さらに、本構成は、第1および第2センサ素子が、120dBまでの非常に大きな入力ダイナミックレンジを有するという利点がある。言い換えると、第1および第2センサ素子は、非常に低い強度を有する電磁放射線およびまた非常に高い強度を有する電磁放射線を検出しかつ処理することができる。このことは、大きな信号ダイナミックレンジにより、非常に明るい放射線集中物体を、暗い低放射線物体または領域に近接して記録することが可能になるので、撮像パイロメータにとって非常に有利である。本発明の回路配置が、その上で第1および第2センサ素子も実現される同じ半導体チップ上の第1および第2信号の一次信号処理をまた含む場合には特に有利である。
【0022】
一次信号処理は、好ましくは、ディジタル第1および第2信号がさらなる処理のためのセンサの出力で利用可能であるように、アナログ・ディジタル変換を含む。全体として、本構成により、非常に大きなダイナミックレンジにわたって、非常に正確な画像記録および温度測定が可能になる。
さらなる構成では、第1波長範囲は、第2波長範囲とほぼ完全に重複する。
【0023】
本構成では、第2波長範囲は、第1波長範囲の部分的範囲である。本構成により、第1および第2センサ素子は、該2つのセンサ素子を原則的に同一に構成することができ、かつそれらは、第2センサ素子に対する1つ以上のさらなるフィルタによってのみ互いに異なるので、非常に簡単にかつ費用効果的に実現することができる。
さらなる構成では、第2センサ素子は、第2波長範囲の下限を規定するカットフィルタを含む。好ましい実施形態では、該下限は、ほぼ660nmとほぼ740nmとの間に、好ましくは、ほぼ680nmとほぼ720nmの間に、かつより好ましくは、ほぼ700nmの領域にある。
【0024】
本構成の目的のためのカットフィルタは、第2波長範囲の下限を規定する伝送ジャンプを生じるフィルタである。特定された波長および波長範囲は、一方では、費用効果的に実現することができ、かつ他方では特に温度決定のための良好な測定結果を生じるので好ましい。カットフィルタの使用により、第1センサ素子が配置される同じ半導体基板上に第2センサ素子の非常に簡単なかつ費用効果の高い実現が可能になる。
【0025】
さらなる構成では、カットフィルタは、上下に配置される複数の材料層を有する誘電体干渉フィルタであり、該材料層は、実質的にシリコンおよび窒化ケイ素から形成される。好ましい一実施形態では、干渉フィルタは、その間にシリコン層が配置される2つの窒化ケイ素層からなる。
本構成により、第1および第2センサ素子を半導体基板上に製造するためにも用いられる工程シーケンス内で、干渉フィルタの非常に簡単なかつ費用効果の高い製造が可能になる。窒化ケイ素およびシリコンを含む特定された層構造を有するカットフィルタを、非常に簡単にかつ費用効果的に製造することができ、かつそれにより発明の実施形態において非常に良好な測定結果が可能になった。
【0026】
さらなる構成では、下限は、第1波長範囲に関してほぼ中央に位置決めされる。
本構成は、本発明の回路配置の簡単なかつ費用効果の高い製造にも寄与する。さらに、非常に良好な測定結果を、本構成を用いて達成することができる。形成される2つの波長範囲におけるエネルギー分布が、検出可能な光子束がより高波長で増加するので、商演算に非常に好適であるのは本明細書において有利である。
【0027】
さらなる構成では、本発明の回路配置は、第1および第2波長範囲からの電磁放射線から遮断される、少なくとも1つのさらなる感温センサ素子を有する。
好ましい実施形態では、前記感温センサ素子は、測定電流が流れるダイオードである。該ダイオードの感温性挙動により、第1および第2センサ素子の温度依存ドリフトを、第1および第2信号を温度について較正することによって修正することが可能になる。さらなる感温センサ素子が、画像センサの端縁領域におけるいわゆる工程制御構造として存在することがよくある1つ以上のダイオードを使って実現されるなら、特に有利である。そのような工程制御構造の上方に材料層を配置すれば十分であり、その材料層が、例えば、金属被覆層などの第1および第2波長範囲からの電磁放射線を遮断する。好ましい実施形態では、第1および第2信号の温度補償は、マトリックス状に並んで配置される複数のセンサ素子を含む画像センサの場合には、FPN(固定パターンノイズ)修正と同じようにして実行される。本構成により、温度測定中非常に高い測定精度が可能になる。
【0028】
上述した特長およびさらに以下で説明する特徴を、本発明の請求の範囲から逸脱することなく、それぞれ特定した組合せだけでなく、他の組合せでまたは単独で用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の回路配置の実施形態の模式図を示す。
【図2】本発明の回路配置の好ましい実施形態を図示するスペクトル図を示す。
【図3】第1および第2センサ素子の実現のための第1実施形態を示す。
【図4】第1および第2センサ素子の実現のための他の実施形態を示す。
【図5】第1および第2センサ素子の実現のためのさらに他の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態を、図面に図示し、かつ以下の説明でより詳細に説明する。
図1において、本発明の回路配置の実施形態を、全体として参照番号10で表記する。
第1センサ素子12および第2センサ素子14を持つ回路配置10を図示する。
該センサ素子の各々は、フォトダイオード16およびMOSトランジスタ18を有する。MOSトランジスタ18は、ゲート20、およびソースおよびドレインと通常呼ばれる2つのさらなる端子22,24を有する。好ましい実施形態では、ゲート端子20およびドレイン端子24が短絡されている。ソース端子22は、フォトダイオード16のカソードに接続される。
【0031】
この配置のために、電磁放射線28,30を入射した結果としてフォトダイオード16のpn接合の領域に発生される電荷キャリアは、MOSトランジスタ18のチャネル26に流れ込みかつ流れ、かつMOSトランジスタ18は、電磁放射線の強度に対数的に依存する大きさを有する出力電圧を発生させる。
センサ素子12,14を、本明細書では簡略化した形で図示する。さらに有利な詳細は、HDRC(登録商標)の商品名で本発明の出願人によって販売されている対数画像セルの基本原理を開示する特許文献9に記載されている。本発明の好ましい実施形態では、センサ素子のすべては、このHDRC(登録商標)の原理に従って構成される。しかしながら、センサ素子を、原則として、例えば線形CMOS(相補型金属酸化膜半導体)画像セルとしてまたはCCD(固体撮像素子)画像セルとして、異なるやり方で実現することもできる。
【0032】
2つのセンサ素子12,14のみを、図1に示す。しかしながら、好ましい実施形態では、本発明の回路配置10は、簡略化のために図1には示さない複数の第1および第2センサ素子12,14を有する。好ましい実施形態では、複数のセンサ素子12,14は、図2ないし図4を参照して以下で説明するように、半導体基板上に配置される。
図1の実施形態では、インピーダンス変換器32が、各センサ素子12,14の出力に配置され、該インピーダンス変換器32の出力は、マルチプレクサ34に接続される。マルチプレクサ34を使って、複数の電気信号を共通の信号処理回路に与えることが可能である。図1に示す好ましい一実施形態では、第1マルチプレクサ34は、第1センサ素子12の電気信号を組み合わせるために用いられ、一方第2マルチプレクサは、第2センサ素子14の電気信号を組み合わせるために用いられる。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明の回路配置10は、2つの平行信号処理チャネルを有する1つの信号処理チャネルは、第1センサ素子12の電気信号を処理し、一方他の信号処理チャネルは、センサ素子14の電気信号を処理する。2つの信号処理チャネルは、好ましくは同一に構成される。第1センサ素子12のための信号処理チャネルのみを、以下でより詳細に説明する。
【0034】
マルチプレクサ34の出力は、加算器36に接続される。加算器36は、それ自体公知の形で、固定パターンノイズの修正に役立つさらなる電気信号をD/A(ディジタル・アナログ)変換器38から受信する。
固定パターンノイズは、個々のセンサ素子の電気特性が製造許容差のために変動するので、複数のセンサ素子からなる画像センサにおいて生じることがある画像不均質(ノイズ)を示すものである。固定パターンノイズを、それぞれ個々のセンサ素子の電気信号に付加されている個々の修正信号によって修正することができる。修正信号は、個々のセンサ素子の電気特性が互いに一致されるように選択される。これらの修正信号を発生させるための修正係数は、この場合、D/A変換器38に接続されるメモリ40に記憶される。D/A変換器38は、メモリ40からの修正係数に基づいて、各センサ素子のための修正信号を発生させる。
【0035】
加算器36の出力は増幅器42を経て、個々のセンサ素子の修正されたアナログ信号を対応するディジタル信号45に変換するA/D(アナログ・ディジタル)変換器44に接続される。
ディジタル信号45は、マイクロコントローラ46に与えられる。マイクロコントローラの代わりに、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(書替え可能ゲートアレイ)、またはある他の信号処理回路を用いることも可能である。マイクロコントローラ46は、この場合、FPN修正のための修正係数をメモリ40に書き込むのにも役立つ。
【0036】
マイクロコントローラ46は、この場合、プロセッサ48にインタフェイス47を経て接続される。プロセッサ48は、すべての第1および第2センサ素子12,14の電気信号45を受信し、かつそれから、とりわけ温度値を公知の商演算手法に従って計算する。プロセッサ48は、画面52上に表示するためのディジタル信号を出力50に与える。
好ましい実施形態では、画面52は、可視波長範囲に観察対象の光学画像を表示するのに役立つ。プロセッサ48は、出力54に計算された温度を表す信号を与える。なお出力54を、さらなるディスプレイ56に接続することができる。その代わりとして、画像データおよび温度値を、画面52上に、交互にまたは一緒に表示することもできる。
【0037】
参照番号58は、好ましい実施形態では、電磁放射線28,30から遮断される感温センサ素子を表す。第1および第2センサ素子12,14がマトリックス画像センサの画像セル(画素)である場合、センサ素子58は、センサの感光性領域の端縁領域に配置される1つ以上のダイオードの形で実現されれば好ましい。このセンサ素子58は、センサの真性温度を表す温度情報を発生させる。
【0038】
本発明の回路配置の好ましい実施形態では、この温度情報は、信号が、個々のセンサ素子の温度ドリフトのための信号変化が補正されるようにして、個々のセンサ素子12,14の電気信号45をコンピュータで修正するために、制御装置46によって用いられる。
撮像パイロメータのための本発明の回路配置の好ましい使用に従って、第1センサ素子12および第2センサ素子14は、電磁放射線28,30を異なる波長範囲から記録するために設計される。
【0039】
好ましい実施形態では、第1センサ素子12は、電磁放射線28を、図2において実線で表す第1波長範囲62から記録するようにして設計される。
好ましい実施形態では、第1波長範囲62は、ほぼ280nmからほぼ1000nmまでの波長を含む。この第1波長範囲の最大感度は、ほぼ680nmにある。第1センサ素子12のそのような伝送特性は、第1センサ素子12のフォトダイオード16が、シリコン半導体材料における表面近くのpn接合として実現される場合に生じる。しかしながら、これらの制限は、正確に規定されず、むしろ用いられる材料および工程条件に依存している。
【0040】
好ましい実施形態では、第1波長範囲62は、特定フィルタなしで実現されるシリコンフォトダイオードの分光感度のために生じる波長範囲である。
第2センサ素子14は、電磁放射線30を、第1波長範囲62と異なる第2波長範囲64から記録するように設計される。好ましい実施形態では、第2波長範囲64は、第1波長範囲62の「上半分」である。例えば、第2波長範囲64は、第2センサ素子14のフォトダイオードにカットフィルタを設けることによって生じ、その伝送特性を、図2の点線66で表す。
【0041】
本明細書での伝送ジャンプ(カットオン)は、ほぼ680nmにある。すなわち680nm以下の波長を有する電磁放射線は、カットフィルタによって抑制される。ほぼ680nm以上の波長を有する電磁放射線のみが、第2センサ素子14のフォトダイオードに達する。
図3は、センサ素子12,14の実現のための第1の実施形態を示す。同一参照符号は、以前と同じ素子を表す。
【0042】
図3は、半導体基板70の一部を示す断面図である。一例として、半導体基板70は、この場合、pドープされたシリコン基板またはpドープ井戸である。nドープアイランド72は、pドープ基板70に配置される。さらなるpドープ層74は、各アイランド72の頂部側に配置される。したがって、2つのpn接合76,78が形成され、pn接合76は、pn接合78の上方にある。
【0043】
pn接合76は、第1センサ素子12のフォトダイオード16を形成し、一方pn接合78は、第2センサ素子14のフォトダイオード16を形成する。より長い波長の放射線30は、半導体材料により深く貫通し、ひいてはより深いpn接合78に達し、一方より短い波長の放射線28は、上方pn接合76にのみ達する。
本実施形態では、上方pn接合76の層は、下方pn接合78のためのフィルタを形成する。pn接合76,78の位置は、本明細書では、検出されるべき放射線の貫通深さに依存し選択される。
【0044】
図3に示すように、上下に積み重ねられる複数のそのようなフォトダイオードは、半導体基板70に並んで配置される。センサ素子12,14は、いずれの場合にも、マトリックスセンサの個々の画素を一緒に形成する。言うまでもなく、各画素は、MOSトランジスタ、インピーダンス変換器32などのさらなる部品を含む。本明細書では、これらのさらなる部品を、簡略化のために図示しない。
【0045】
図4は、上下に積み重ねられる第1および第2センサ素子12,14のさらなる実施形態を示す。本実施形態では、センサ素子12,14は、一例として、nドープ基板70’上に実現される。nドープ基板70’に配置されるのは、複数の真性導電半導体(空乏モード)層80であり、pドープ層82は、真性導電層80の上方にある。このようにして、第2センサ素子14のためのフォトダイオードとなる複数のpinダイオード84が形成される。
【0046】
二酸化ケイ素の連続絶縁層85は、pinダイオード84の上方に配置される。nドープシリコン86の層構造を有する複数のさらなるpinダイオード、真性導電シリコン88、およびpドープシリコン90は、絶縁層85上に配置される。層構造86,88、90を有するpinダイオードは、第1センサ素子12を形成する。好ましくは、層86,88,90は、CVD(化学気相成長)法を用いて製造される。図4に従う実現は、センサ素子12,14のフォトダイオードは、互いに積み重ねられるが、絶縁層85によって互いに電気的に絶縁されるという利点を有する。2つのセンサ素子12,14のフォトダイオードは、絶縁の結果としてポテンシャルフリーであり、よってそれを任意の所望の形で接続することができる。対照的に、図3の実施形態におけるアイランド72は、センサ素子12,14のための2つのフォトダイオードの共通の陰極端子を形成する。
【0047】
図5は、センサ素子12,14のフォトダイオードが上下に垂直でなく、水平に並んで配置される、他の実施形態を示す。この場合、センサ素子12,14のフォトダイオードは、ほぼ同一に構成される。この実施形態は、nドープシリコン基板70'に配置される層80,82を有するpinフォトダイオードをまた含む。異なる分光感度を達成するために、それぞれのフィルタ92は、第2センサ素子14のためのフォトダイオードの上方に配置され、該フィルタのフィルタ特性は、図2の点線66に対応する。フィルタ92は、例えば誘電体干渉フィルタとして実現され、かつ二酸化ケイ素の上方層94、シリコンの中間層96、および二酸化ケイ素の下方層98を有する。層94ないし98を、CVD法を用いて再び製造することができる。
【0048】
図5に従う実施形態では、センサ素子12,14を、行ごとまたは列ごとに交互に、または格子状パターンの形で、半導体基板70’の表面に配置することができる。図3または図4の実施形態に従うセンサと比較して、解像度は低い。
各センサ素子は、本明細書では、マトリックスセンサの専用画素を形成する。一方、センサ素子12,14を、本明細書では、共通の工程ステップで製造することができる。工程シーケンスを結論づけるために、第2センサ素子14のフォトダイオードを層94ないし98で被覆すれば十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の特性を表す光および温度依存性信号(45)を発生させる回路配置であって、入射電磁放射線(28,30)に応じた複数の第1および第2電気信号(45a,45b)を発生させる複数の第1および第2センサ素子(12,14)を備え、
前記第1センサ素子(12)は、可視光の少なくとも大部分を含む第1波長範囲(62)から、電磁放射線(28)に応じて前記第1電気信号(45a)を発生させるように設計され、かつ前記第2センサ素子(14)は、赤外放射線を含む第2波長範囲(64)から、電磁放射線(30)に応じて前記第2電気信号(45b)を発生させるように設計され、前記第1波長範囲(62)は、前記第2波長範囲(64)と一部重複し、前記第1波長範囲(62)は赤外放射線を含むことを特徴とする、回路配置。
【請求項2】
前記第1および第2信号(45a,45b)に応じて、前記対象の温度を決定するように設計される回路部(48)を特徴とする、請求項1に記載の回路配置。
【請求項3】
複数の第1および第2センサ素子(12,14)が並んで配置される半導体基板(70)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の回路配置。
【請求項4】
前記第1および第2センサ素子(12,14)は、上下に重ねて配置されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路配置。
【請求項5】
前記第1および第2センサ素子(12,14)は、フォトダイオード(16)と、ゲート端子(20)、2つの端子(22,24)およびチャネル(26)を有する少なくとも1つのMOSトランジスタ(18)とを含み、前記フォトダイオード(16)に発生される電荷キャリアが前記チャネル(26)に流入するようにして、前記MOSトランジスタ(18)に結合され、かつ前記ゲート端子(20)は、前記2つの端子の一方(24)に導電接続されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路配置。
【請求項6】
前記第1波長範囲(62)は、前記第2波長範囲(64)とほぼ完全に重複することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の回路配置。
【請求項7】
前記第2センサ素子(14)は、前記第2波長範囲(64)の下限を規定するカットフィルタ(92)を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の回路配置。
【請求項8】
前記カットフィルタ(92)は、上下に配置される複数の材料層(94〜98)を有する誘電体干渉フィルタであり、前記材料層(94〜98)は、実質的にシリコンおよび窒化ケイ素から形成されることを特徴とする、請求項7に記載の回路配置。
【請求項9】
前記下限(66)は、前記第1波長範囲(62)に関してほぼ中央に位置決めされることを特徴とする、請求項7に記載の回路配置。
【請求項10】
前記第1および第2波長範囲(62,64)の前記電磁放射線から遮断される、少なくとも1つのさらなる感温センサ素子(58)を特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の回路配置。
【請求項11】
特に撮像パイロメータのようなパイロメータとして、請求項1〜10のいずれか1項に記載の回路配置を用いる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−503560(P2011−503560A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532478(P2010−532478)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009167
【国際公開番号】WO2009/059721
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(502021291)インスティチュート フュア ミクロエレクトロニク シュトゥットガルト (3)
【Fターム(参考)】