説明

光クロージャ

【課題】配線形態の変化に対応でき、しかも幹線側の作業者と引き落とし側の作業者との責任分界点を明確にできる光クロージャの提供。
【解決手段】第1の光ファイバケーブル11が引き込まれるケース本体部2と、ケース本体部2に対し開閉自在とされた蓋部3と、これらの間に着脱自在に介装可能な中間介装体4とを備えた光クロージャ1。蓋部3には、第2の光ファイバケーブル12が引き込まれる。中間介装体4は、ケーブル11とケーブル12との間に介在可能な接続用光ファイバ13を備えている。ケース本体部2と蓋部3とを直接連結したときには、ケーブル11の光ファイバとケーブル12の光ファイバとを直接接続可能であり、ケース本体部2と蓋部3との間に中間介装体4を介装させたときには、ケーブル11の光ファイバとケーブル12の光ファイバとを、接続用光ファイバ13を介して接続可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光クロージャに関し、特に、光ファイバケーブルと該光ファイバケーブルに接続される別の光ファイバケーブルとの接続点に設けられる光クロージャに関する。
【背景技術】
【0002】
架空光ファイバケーブルと該光ファイバケーブルから分岐される光ドロップケーブルとの接続点に設けられる架空用の光クロージャについては、数多くの提案がある(例えば特許文献1、2参照)。
従来の光クロージャは、クロージャスリーブ内に収納したトレーに、光ファイバケーブルの光ファイバと光ドロップケーブルの光ファイバとの接続部を余長とともに収納する構造が一般的である。
【0003】
回線設備を持たない第2種通信事業者が、回線設備を持つ第1種通信事業者から光通信回線を借りてアクセス系を構築する場合には、引き落とし側の作業者である第2種通信事業者は光クロージャを設置し、この光クロージャから光ドロップケーブル等により利用者宅に回線を引き落とす。
幹線側の作業者である第1種通信事業者によって架設された幹線側光ファイバケーブルから引き出された光ファイバは、光クロージャ内で第2種通信事業者側の光ファイバと接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−121773号公報
【特許文献2】特開2007−298921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の光クロージャでは、配線数の増減や、中間後分岐の必要が生じるなどの配線形態の変化に対応するのが難しかった。
また、幹線側の光ファイバケーブルと、引き落とし側の光ファイバとを接続する場合には、光クロージャ内における幹線側の作業者と引き落とし側の作業者との責任分界点(POI:Point Of Interface)を明確にする必要がある。このため、この責任分界点を明確化できる光クロージャが求められていた。
また、各作業者が作業に関係のない配線に触れることによる通信障害等のトラブルを未然に防ぐことで作業の安全性を高めることも課題となっている。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、配線形態の変化に対応でき、しかも幹線側の作業者と引き落とし側の作業者との責任分界点を明確にでき、かつ各作業者が作業に関係ない配線に触れるのを回避できる光クロージャの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は、第1の光ファイバケーブルと前記第1の光ファイバケーブルに接続される第2の光ファイバケーブルとの接続点に設けられる光クロージャであって、前記第1の光ファイバケーブルが引き込まれるケース本体部と、前記ケース本体部に対し開閉自在とされた蓋部と、これらケース本体部と蓋部との間に着脱自在に介装可能な中間介装体とを備え、前記蓋部が、前記第2の光ファイバケーブルを引き込みできるように構成されており、前記中間介装体が、前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバと、前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバとの間に介在可能な接続用光ファイバを備え、前記ケース本体部と蓋部とを直接連結したときに、前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバと前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバとを直接接続可能であり、前記ケース本体部と蓋部との間に前記中間介装体を介装させたときに、前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバと前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバとを、前記接続用光ファイバを介して接続可能である光クロージャを提供する。
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1において、前記接続用光ファイバは、前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバを分岐して前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバに接続する分岐用光ファイバである光クロージャを提供する。
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または2において、前記ケース本体部に対して前記中間介装体を閉じ、かつ前記中間介装体に対して前記蓋部を開いたときに、前記接続用光ファイバと前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバとの接続部が露出せず、前記接続用光ファイバを前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバにコネクタ接続するための光コネクタが露出するように構成されている光クロージャを提供する。
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1〜3のうちいずれか1項において、前記ケース本体部に対して前記中間介装体を開き、かつ前記中間介装体に対して前記蓋部を閉じたときに、前記接続用光ファイバと前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバとの接続部が露出し、かつ前記接続用光ファイバを前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバにコネクタ接続するための光コネクタが露出しないように構成されている光クロージャを提供する。
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1〜4のうちいずれか1項において、前記中間介装体は、前記ケース本体部と蓋部との間に介装させたときに、前記第1の光ファイバケーブルが引き込まれるケース本体部側の空間と、第2の光ファイバケーブルが引き込まれる蓋部側の空間とを区画する区分け壁を有し、前記接続用光ファイバと前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバとの接続部が、前記区分け壁のケース本体部側に配置され、前記接続用光ファイバを前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバにコネクタ接続するための光コネクタが、前記区分け壁の蓋部側に配置される光クロージャを提供する。
本発明の請求項6に係る発明は、請求項5において、前記中間介装体は、前記区分け壁を有する基体部と、前記区分け壁の蓋部側に設けられたケース状の接続用モジュールとを備え、前記接続用モジュールは、前記接続用光ファイバを前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバにコネクタ接続するための光コネクタを備えている光クロージャを提供する。
本発明の請求項7に係る発明は、請求項6において、前記接続用モジュールは、前記基体部にヒンジ部によって回動自在に連結されている光クロージャを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケース本体部と蓋部との間に、接続用光ファイバを備えた中間介装体を着脱自在に介装可能であるので、要求される配線形態に応じて、中間介装体を介装した形態と、中間介装体を用いない形態とを使い分けることができる。よって、配線数の増減や、中間後分岐の必要が生じるなどの配線形態の大きな変化に対応可能である。
また、ケース本体部と蓋部との間に中間介装体を介装させることによって、ケース本体部側の空間と蓋部側の空間とを隔てることができるため、幹線側の作業者と引き落とし側の作業者との責任分界点を明確にできる。
また、中間介装体によって幹線側と引き落とし側とが隔てられるため、幹線側の作業者は引き落とし側の配線に触れることがなく、引き落とし側の作業者は幹線側の配線に触れることがない。
従って、各作業者が作業に関係のない配線に触れることによる通信障害等のトラブルを未然に防ぎ、かつ配線作業の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る光クロージャを一方側から見た全体斜視図である。
【図2】光クロージャを他方側から見た全体斜視図である。
【図3】ケース本体部に対し中間介装体を開いた状態を示す斜視図である。
【図4】ケース本体部に対し中間介装体を開いた状態を示す正面図である。
【図5】中間介装体に対し蓋部を開いた状態を示す斜視図である。
【図6】接続用モジュールを回動させた状態を示す斜視図である。
【図7】蓋部を直接ケース本体部に連結した状態の光クロージャを一方面側から見た斜視図である。
【図8】蓋部を直接ケース本体部に連結した状態の光クロージャを他方面側から見た斜視図である。
【図9】蓋部を直接ケース本体部に連結した光クロージャにおいて蓋部を開いた状態を示す斜視図である。
【図10】接続用光ファイバとして光スプリッタを用いた例を示す光配線図である。
【図11】接続用光ファイバとしてファンアウト光ファイバを用いた例を示す光配線図である。
【図12】第2の光ファイバケーブルの先端に取り付ける外被把持形光コネクタの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施した光クロージャについて、図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る光クロージャ1を一方側から見た全体斜視図、図2は光クロージャ1を他方側から見た全体斜視図、図3はケース本体部2に対し中間介装体4を開いた状態を示す斜視図である。図4は、ケース本体部2に対し中間介装体4を開いた状態を示す正面図である。図5は、中間介装体4に対し蓋部3を開いた状態を示す斜視図である。図6は、接続用モジュール44を回動させた状態を示す斜視図である。
【0010】
図1および図2に示すように、光クロージャ1は、幹線側の光ファイバケーブル11(第1の光ファイバケーブル)と光ファイバケーブル11から分岐される光ドロップケーブル12(第2の光ファイバケーブル)との接続点に設けられるものであって、光ファイバケーブル11が引き込まれるケース本体部2と、ケース本体部2に対し開閉自在とされた蓋部3と、ケース本体部2と蓋部3との間に着脱自在に介装可能な中間介装体4とを備えている。
以下、ケース本体部2と蓋部3との間に中間介装体4を介装した形態を第1形態という。
【0011】
図3および図4に示すように、ケース本体部2は、略長方形の面板21の周縁に側板22が形成されたトレー状とされている。
面板21の内面には、接続部ホルダ23が形成されている。接続部ホルダ23は、光ファイバケーブル11から引き出された光ファイバ11aと接続用光ファイバ13との接続部14を着脱可能に保持できる。
【0012】
ケース本体部2の両端部には、光ファイバケーブル11をケース本体部2に挿通するケーブル通過口20と、光ドロップケーブル12等を挿通するケーブル通過口24が形成されている。
面板21の内面には、ケーブル通過口24を通るケーブル(光ドロップケーブル12等)の被覆部分が嵌め込まれる嵌め込み溝25aを有するケーブル保持部25が設けられている。
図3に示すように、ケーブル保持部25は、中間介装体4を閉じたときに、中間介装体4の基板41に形成された隔壁41aとともに、略三角形の防水スペース28を形成する。
【0013】
図1に示すように、ケース本体部2と中間介装体4とは、ヒンジ26によって回動自在に互いに連結されており、中間介装体4はケース本体部2に対し開閉自在である。
ヒンジ26は、中間介装体4の側板42外面の突壁部26aから延出する軸部26bが、ケース本体部2の側板22外面の支持体26cの軸受部26dに回動自在に嵌合して構成されている。
突壁部26aは、中間介装体4の基板41の一方の長辺に設けられた側板42に形成されている。
支持体26cは、ケース本体部2の面板21の一方の長辺に設けられた側板22に形成されている。
【0014】
図2および図3に示す符号27は、ケース本体部2に対して中間介装体4の開放を許可する位置と開放を規制する位置との間でスライド移動可能なロック片である。
ロック片27は面板21の他方の長辺に設けられた側板22の外面側に形成され、中間介装体4の係止片42aに係脱可能とされ、係止片42aに係止したときに中間介装体4の開放を規制し、解除されたときに開放を許可する。
【0015】
図5および図6に示すように、中間介装体4は、略長方形の基板41の周縁に側板42が形成されたトレー状の基体部43と、基体部43の蓋部3側の面に設けられたケース状の接続用モジュール44とを備えている。
基板41は、光クロージャ1の内部空間を、光ファイバケーブル11が引き込まれるケース本体部2側の空間(第1収納空間51)(図3参照)と、光ドロップケーブル12が引き込まれる蓋部3側の空間(第2収納空間52)(図5および図6参照)とに隔てる区分け壁として機能する。
【0016】
接続用モジュール44は、略矩形状の内板45と、内板45の両側縁に立設された側板46、46と、内板45の両端縁に立設された端板47、47と、内板45に対向する外板48とからなるケース体である。
接続用モジュール44は、基板41の一方の長辺に設けられた側板42に沿って設けられ、この側板42に、ヒンジ49によって回動自在に連結されており、これによって、基板41に沿う位置(図5参照)と、手前に倒した位置(図6参照)との間で回動自在である。
【0017】
端板47、47には、それぞれ複数の光コネクタアダプタ50、・・・(光コネクタ)が設けられている。図示例の光コネクタアダプタ50は、光ドロップケーブル12から引き出された光ファイバ12aの先端の光コネクタ15(光コネクタプラグ)が接続可能である。
【0018】
図5および図6に示すように、蓋部3は、略長方形の面板31の周縁に側板32が形成されたトレー状とされている。
蓋部3と中間介装体4とは、ヒンジ36によって互いに回動自在に互いに連結されており、蓋部3は中間介装体4に対し開閉自在である。
【0019】
図1に示すように、ヒンジ36は、蓋部3の側板32外面の突壁部36aから延出する軸部36bが、中間介装体4の側板42外面の支持体36cの軸受部36dに回動自在に嵌合して構成されている。
突壁部36aは、蓋部3の面板31の一方の長辺に設けられた側板32に形成されている。
支持体26cは、中間介装体4の基板41の一方の長辺に設けられた側板42に形成されている。
【0020】
図5および図6に示す符号37は、中間介装体4に対して蓋部3の開放を許可する位置と開放を規制する位置との間でスライド移動可能なロック片である。
ロック片37は面板41の他方の長辺に設けられた側板42の外面側に形成され、蓋部3の係止片32aに係脱可能とされ、係止片32aに係止したときに蓋部3の開放を規制し、解除されたときに開放を許可する。
【0021】
接続用光ファイバ13は、端部に、光コネクタアダプタ50に挿入して接続される光コネクタ16(光コネクタプラグ)が取り付けられたコネクタ付き光ファイバである。
接続用光ファイバ13は、光コネクタ16が設けられた端部とは反対側の端部(以下、接続端部)を光ファイバケーブル11の光ファイバ11aと接続することで、光ファイバケーブル11の光ファイバ11aを、光ドロップケーブル12に対してコネクタ接続可能に成端する機能を果たす。
【0022】
図4に示すように、接続用光ファイバ13と光ファイバケーブル11の光ファイバ11aとの接続は、例えば、融着接続である。
接続用光ファイバ13と光ファイバ11aとの接続部14は、ケース本体部2の接続部ホルダ23に着脱可能に保持される。
なお、接続用光ファイバ13と光ファイバ11aとの接続は、融着接続に限らず、メカニカルスプライス等を利用した機械的接続であってもよい。また、コネクタ接続を採用することもできる。
【0023】
図3および図4に示す状態では、ケース本体部2に対して中間介装体4は開いており、かつ中間介装体4に対して蓋部3は閉じている。
この状態では、接続用光ファイバ13の一端側の接続部(図4に示す光ファイバ11aとの接続部14)は露出しており、他端側の接続部(図5および図6に示す光コネクタアダプタ50)は露出していない。
【0024】
図6に示すように、接続用光ファイバ13は、中間介装体4の基板41の開口部53、54等を通過し、図示せぬ開口部を通して接続用モジュール44内に導入されている。
図5に示すように、接続用光ファイバ13の光コネクタ16は、接続用モジュール44内側から光コネクタアダプタ50に接続される。
光コネクタアダプタ50に光コネクタ15を接続すると、光ドロップケーブル12の光ファイバ12aと接続用光ファイバ13とが光接続される。
【0025】
図5、図6に示す状態では、ケース本体部2に対して中間介装体4は閉じており、かつ中間介装体4に対して蓋部3は開いている。
この状態では、接続用光ファイバ13の一端側の接続部(図4に示す接続部14)は露出しておらず、他端側の接続部(図5および図6に示す光コネクタアダプタ50)は露出している。
【0026】
光ファイバケーブル11としては、例えば鋼線などの抗張力体を備えた支持線部とケーブル本体部とを連結した自己支持構造の光ファイバケーブルを使用できる。光ファイバケーブル11としては、心数の少ない(例えば1心〜24心程度)、細径の光ファイバケーブルが好ましい。
光ファイバケーブル11の光ファイバ11aは、ここでは多心光ファイバテープ心線である。
光ドロップケーブル12は、例えば光ファイバ素線(あるいは光ファイバ心線)を樹脂中に埋設してなる細径の単心光ファイバケーブルである。なお、第2の光ファイバケーブルとしては、ドロップケーブルに限定されず、他の汎用の光ファイバケーブルを使用できる。
【0027】
図10は、接続用光ファイバ13として、基端側光ファイバ13aと、基端側光ファイバ13aに設けられた分岐結合部13b(スプリッタ本体)と、分岐結合部13bを介して基端側光ファイバ13aから分岐された複数本の分岐側光ファイバ13cとを備えた光スプリッタを採用した例である。
基端側光ファイバ13aと分岐側光ファイバ13cは単心光ファイバである。光コネクタ16は、分岐結合部13bから延出する各分岐側光ファイバ13cの先端に取り付けられている。
本例では、多心光ファイバテープ心線である光ファイバ11aの1心に、接続用光ファイバ13の基端側光ファイバ13aを接続しており、光ファイバケーブル11の1心に、複数本の光ドロップケーブル12が、光スプリッタ13を介して接続されることになる。
【0028】
図11は、接続用光ファイバ13として、ファンアウト光ファイバを採用したものである。この例の接続用光ファイバ13は、多心光ファイバテープ心線である多心光ファイバ部13dから、複数本の単心光ファイバ部13eに分岐されている。光コネクタ16は、多心光ファイバ部13dから延びる各単心光ファイバ部13eの先端に取り付けられている。
本例では、多心光ファイバテープ心線である光ファイバ11aに、接続部18において多心光ファイバ部13dを接続しており、光ファイバケーブル11の多心の光ファイバ11aの各心に、光ドロップケーブル12が一本ずつ接続される。
【0029】
図12は、光ドロップケーブル12の先端の光コネクタ15の一例を示すものである。
光コネクタ15は、外被把持形の光コネクタであって、フェルール61を収納したハウジング62に、光ドロップケーブル12先端部の外被に固定した固定ブロック12bを引き留める引留部63を備えている。
引留部63は、ハウジング62に回動自在に枢着されている回動カバーである。この引留部63には、固定ブロック12bに係合する係合部63aが設けられている。
光コネクタ15を光ドロップケーブル12先端に取り付けるには、光ドロップケーブル12先端に口出しした光ファイバ12aを、ハウジング62に後端側から挿入して、フェルール61に予め内挿固定しておいた光ファイバ64(裸光ファイバ)と、ハウジング62内の調心機構(図示略)にて突き合わせ接続する。
引留部63を回動して、係合部63aを、光ドロップケーブル12先端部の外被に予め固定しておいた固定ブロック12bに係合することで、ハウジング62に光ドロップケーブル12をハウジング62から引き抜かれないように引き留める。これにより、光コネクタ15が光ドロップケーブル12の先端に取り付けられる。
【0030】
接続用光ファイバ13の光コネクタ16(光コネクタプラグ)、光コネクタアダプタ50としては、例えば、SC形光コネクタ(JIS C 5973に制定されるF04形光コネクタ。SC:Single fiberCoupling optical fiber connector)の光コネクタプラグ、光コネクタアダプタを採用できる。この場合、光ドロップケーブル12先端の光コネクタ15としても、SC形光コネクタ(光コネクタプラグ)が採用される。
【0031】
光クロージャ1は、回線設備を持たない第2種通信事業者が、回線設備を持つ第1種通信事業者から光通信回線を借りてアクセス系を構築する場合に使用できる。
以下、光回線を引き落とす手順の一例を説明する。
図3および図4に示すように、第1種通信事業者は、ケース本体部2に対して中間介装体4を開き、ケース本体部2内(第1収納空間51)に光ファイバケーブル11を引き込み、光ファイバケーブル11の光ファイバ11aと接続用光ファイバ13とを接続し、この接続部14をケース本体部2に収納する。
【0032】
図5および図6に示すように、第2種通信事業者は、中間介装体4をケース本体部2に対して閉じ、蓋部3を中間介装体4に対し開いた状態で、光ドロップケーブル12の光ファイバ12a先端の光コネクタ16を、光コネクタアダプタ50に挿入して接続する。
これによって、光ファイバケーブル11の光ファイバ11aに光ドロップケーブル12の光ファイバ12aが光接続され、光回線の引き落としを行うことができる。
【0033】
光クロージャ1は、中間介装体4を使用せず、蓋部3を直接ケース本体部2に連結した形態で使用することもできる。
図7は、蓋部3を直接ケース本体部2に連結した状態の光クロージャ1を一方面側から見た斜視図である。図8は、この光クロージャ1を他方面側から見た斜視図である。図9は、蓋部3を開いた状態を示す斜視図である。
【0034】
図7〜図9に示す形態では、光クロージャ1は、ケース本体部2と、ケース本体部2に対し開閉自在とされた蓋部3とを備えている。
ケース本体部2と蓋部3は、ヒンジ56によって回動自在に互いに連結されている。
図7に示すように、ヒンジ56は、蓋部3の側板32外面の突壁部36aから延出する軸部36bが、ケース本体部2の側板22外面の支持体26cの軸受部26dに回動自在に嵌合して構成されている。
以下、このように、中間介装体4を介在させず、ケース本体部2と蓋部3とを直接連結した形態を第2形態という。
【0035】
この形態の光クロージャ1を組み立てるには、図1に示す形態の光クロージャ1において、支持体36cから軸部36bを引き抜いて蓋部3と中間介装体4とを分離可能とするとともに、支持体26cから軸部26bを引き抜いてケース本体部2と中間介装体4とを分離可能とする。
これによって、中間介装体4をケース本体部2および蓋部3から取り外すことができる。
蓋部3の軸部36bを、ケース本体部2の支持体26cの軸受部26dに挿通することによって、蓋部3をケース本体部2に対し開閉自在に連結することができる。
【0036】
図8および図9に示すように、ケース本体部2のロック片27は、蓋部3の係止片32bに係脱可能とされ、係止片32bに係止したときに蓋部3の開放を規制し、解除されたときに開放を許可する。
【0037】
図9に示すように、第2形態の光クロージャ1においては、ケース本体部2に光ファイバケーブル11を引き込み、この光ファイバケーブル11の光ファイバ11aと光ドロップケーブル12の光ファイバ12aを融着接続等により接続する。
光ファイバ11aと光ファイバ12aの接続部17は、ケース本体部2の接続部ホルダ23に着脱可能に保持される。
【0038】
図3および図4に示すように、光クロージャ1は、ケース本体部2に、一方のケーブル通過口20から導入されて他方のケーブル通過口20から導出されるように通した光ファイバケーブル11に吊支させて使用することができる。
この場合には、吊支された状態のケース本体部2に対して、中間介装体4または蓋部3を開閉できる。
また、ケース本体部2に取り付けられた吊り具(図示略)を介して架空支持線(図示略)に吊支させて設置することもできる。
【0039】
光クロージャ1は、ケース本体部2と蓋部3との間に中間介装体4を着脱自在に介装可能であるので、要求される配線形態に応じて、中間介装体4を介装した第1形態(図1〜図6)と、中間介装体4を用いない第2形態(図7〜図9)とを使い分けることができる。
例えば、中間後分岐が必要ない場合や配線数が少ない場合は、第2形態において、光ファイバケーブル11の光ファイバ11aを光ドロップケーブル12の光ファイバ12aに直接接続する。
中間後分岐が必要となる場合や配線数が多い場合には、第1形態において、光ファイバ11aを光スプリッタ(図10参照)である接続用光ファイバ13を介して光ファイバ12aに接続することができる。
このように、配線数の増減や、中間後分岐の必要が生じるなどの配線形態の大きな変化に対応可能である。
【0040】
光クロージャ1では、ケース本体部2に対し中間介装体4を閉じ、かつ中間介装体4に対し蓋部3を開いた状態(図5および図6)では、接続用光ファイバ13の一端側の接続部14は基板41(区分け壁)の裏側にあって露出せず、他端側の光コネクタアダプタ50は基板41の表側にあって露出する。
このため、光ドロップケーブル12の光ファイバ12aを接続用光ファイバ13に接続する際に、引き落とし側の作業者(第2種通信事業者)が幹線側の光ファイバ11a等に触れることがない。
また、中間介装体4を開き、蓋部3を閉じた状態(図3および図4)では、接続部14は露出し、光コネクタアダプタ50は露出しないため、光ファイバ11aと接続用光ファイバ13との接続作業において、幹線側の作業者(第1種通信事業者)が引き落とし側の光ファイバ12a等に触れることがない。
このため、幹線側の作業者と引き落とし側の作業者との責任分界点が明確になる。
また、中間介装体によって幹線側と引き落とし側とが隔てられるため、幹線側の作業者は引き落とし側の配線に触れることがなく、引き落とし側の作業者は幹線側の配線に触れることがない。
従って、通信障害等のトラブルを未然に防ぐことができる。また、配線作業の安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0041】
1・・・光クロージャ、2・・・ケース本体部、3・・・蓋部、4・・・中間介装体、11・・・第1の光ファイバケーブル、12・・・光ドロップケーブル(第2の光ファイバケーブル)、11a・・・光ファイバ、12a・・・光ファイバ、14・・・接続部、41・・・基板(区分け壁)、43・・・基体部、44・・・接続用モジュール、49・・・ヒンジ、50・・・光コネクタアダプタ(光コネクタ)、51・・・第1収納空間、52・・・第2収納空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光ファイバケーブル(11)と前記第1の光ファイバケーブルに接続される第2の光ファイバケーブル(12)との接続点に設けられる光クロージャであって、
前記第1の光ファイバケーブルが引き込まれるケース本体部(2)と、前記ケース本体部に対し開閉自在とされた蓋部(3)と、これらケース本体部と蓋部との間に着脱自在に介装可能な中間介装体(4)とを備え、
前記蓋部が、前記第2の光ファイバケーブルを引き込みできるように構成されており、
前記中間介装体が、前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバ(11a)と、前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバ(12a)との間に介在可能な接続用光ファイバ(13)を備え、
前記ケース本体部と蓋部とを直接連結したときに、前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバと前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバとを直接接続可能であり、
前記ケース本体部と蓋部との間に前記中間介装体を介装させたときに、前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバと前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバとを、前記接続用光ファイバを介して接続可能であることを特徴とする光クロージャ(1)。
【請求項2】
前記接続用光ファイバは、前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバを分岐して前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバに接続する分岐用光ファイバであることを特徴とする請求項1に記載の光クロージャ。
【請求項3】
前記ケース本体部に対して前記中間介装体を閉じ、かつ前記中間介装体に対して前記蓋部を開いたときに、前記接続用光ファイバと前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバとの接続部(14)が露出せず、前記接続用光ファイバを前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバにコネクタ接続するための光コネクタ(50)が露出するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光クロージャ。
【請求項4】
前記ケース本体部に対して前記中間介装体を開き、かつ前記中間介装体に対して前記蓋部を閉じたときに、前記接続用光ファイバと前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバとの接続部が露出し、かつ前記接続用光ファイバを前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバにコネクタ接続するための光コネクタが露出しないように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の光クロージャ。
【請求項5】
前記中間介装体は、前記ケース本体部と蓋部との間に介装させたときに、前記第1の光ファイバケーブルが引き込まれるケース本体部側の空間(51)と、第2の光ファイバケーブルが引き込まれる蓋部側の空間(52)とを区画する区分け壁(41)を有し、
前記接続用光ファイバと前記第1の光ファイバケーブルの光ファイバとの接続部が、前記区分け壁のケース本体部側に配置され、
前記接続用光ファイバを前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバにコネクタ接続するための光コネクタが、前記区分け壁の蓋部側に配置されることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の光クロージャ。
【請求項6】
前記中間介装体は、前記区分け壁を有する基体部(43)と、前記区分け壁の蓋部側に設けられたケース状の接続用モジュール(44)とを備え、
前記接続用モジュールは、前記接続用光ファイバを前記第2の光ファイバケーブルの光ファイバにコネクタ接続するための光コネクタを備えていることを特徴とする請求項5に記載の光クロージャ。
【請求項7】
前記接続用モジュールは、前記基体部にヒンジ部(49)によって回動自在に連結されていることを特徴とする請求項6に記載の光クロージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−262115(P2010−262115A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112266(P2009−112266)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人電子情報通信学会、2009年電子情報通信学会総合大会講演論文集、平成21年3月4日
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】