説明

光ケーブル心線の識別表示方法および表示物

【課題】光ケーブル心線の多心化された素線について、どの素線が何番目でどこに配置されるのか、またそれが何色であるかについては、一目で識別または判別できる表示方法および表示物を提供する。
【解決手段】多数の素線を内蔵する光ケーブルについて、それらの素線を識別して表示する方法であって、光ケーブルは、その外周に添って均等的に溝型にして形成された複数のスロットと、それらスロット内に積層して配置される複数の薄型偏平形状のテープ心線と、これらのテープ心線内で一面状に並列して配置される複数の素線と、を有し、(1)複数のスロットについての、通し番号付けをしたスロット番号、(2)スロット内での積層配置される複数のテープ心線についての、スロット毎に通し番号付けをしたテープ心線番号、(3)各テープ心線に含まれる各素線についての、各テープ心線内での配置番号、素線毎の色表示と総素線通し番号、のすべてのデータを一覧形式によって表示する光ケーブルの素線識別表示方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブルのテープ心線や素線の識別表示にかかるものであり、より詳細には、近年の光ケーブルの多心化に伴い、多数の素線それぞれの識別や判別が難しくなってきており、光ケーブルを扱う現場作業や設計業務において、それら素線を識別する複雑さや手間を改善するための表示方法および表示物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、現在使われている光ケーブルの構造例を示す図であり、図3(1)は600心ケーブルの断面による構造図、図3(2)は400心ケーブルの断面による構造図である。
図3(1)の600心ケーブルは、その中心に金属撚線やFRPロッドからなるテンションメンバ61を有し、このテンションメンバ61の周囲には、合成樹脂からなるスペーサ62が内部を充填するように設けられている。
【0003】
このスペーサ62には、その外周側には複数の溝部(凹溝)が長手方向に向かって螺旋状または線状に形成されたスロット63が設けられており、これらスロット63には、光ファイバテープ心線64が複数枚積層された状態で配置されている。そして、600心ケーブルの外周は、押さえ巻き66を介して、ポリエチレンなどからなるシース65によって被覆されている。
【0004】
この600心ケーブルに用いられている光ファイバ8心テープ心線64は、次の図4(1)に示すような構造であって、光ファイバ素線を平面状に複数本平行に並べて、紫外線硬化性樹脂などからなる一括被覆層によって被覆されて形成されている。また、この600心ケーブルは、その他の構成要素として、図3(1)に示すように、溝No.1トレーサマーク68、溝No.2トレーサマーク69、引き裂き紐67を備えている。なお、この600心ケーブルの第8溝は、他の溝部に比べて溝部を浅く形成しているが、このような場合には介在物(ダミーテープ等)を実装するとよい。
【0005】
図3(2)の400心ケーブル構造図は、図3(1)の600心ケーブル構造図と心線の数が異なるだけで、基本的な構造図は同じであり、構成要素として、テンションメンバ41、スペーサ42、スロット(螺旋状の溝部)43、光ファイバテープ心線44、押さえ巻き46、シース45、溝No.1トレーサマーク48、溝No.2トレーサマーク49、引き裂き紐47を備えて構成されている。
【0006】
さて、図4(1)〜(3)を参照して、従来の技術の問題点について述べる。
図4(1)は8心テープ心線の断面による構造図であり、内部に8本の素線No.1〜No.8を平面状に並列配置した構成を有している。また、図4(3)の左図は80心光ユニットの構成図であり、この80心光ユニットは「8(素線)×10(テープ心線)」の80本の素線を有し、スロット内において8心テープ心線10枚のそれぞれを、No.1からNo.10までの各位置に上下に積層して配置したユニット構造を備えている。
【0007】
図4(2)は、この図4(3)の左図の80心光ユニットにおいて、光ファイバ素線の識別に用いられている素線識別表である。この素線識別表は、光ファイバの接続作業や管理等の際に従来から利用されているもので、テープ心線番号と素線番号とその色とを示した標準的な一覧表である。この一覧表によって、その素線が何番目の位置に配置され、その色が何色であるかについて、ある程度は判別することができた。
【0008】
しかしながら、多心化された光ケーブルにおいて、例えば80心光ユニットでは素線の数が80本あって、どの素線が何番目にくるのか、またそれが何色であるかについて、図4(2)の一覧表から一目で判別することは難しかった。近年はまた、光ケーブルの多心化傾向のために素線の数が大幅に増加しており、400心、600心、1000心などになると、心線(素線)の数があまりに多すぎるため、図4(2)の一覧表を見ても、どの素線が何番目にきてそれが何色であるかについては判別することは不可能であった。
【0009】
光ケーブルの多心化や心線の識別などに関連した技術内容を含む特許文献としては、例えば次のようなものがある。
【特許文献1】特開2004−309840号公報
【特許文献2】特開2004−309841号公報
【特許文献3】特開2004−266886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光ケーブル心線の多心化傾向に伴って素線(心線)の数が多くなり、作業現場において、どの素線が何番目にきてそれが何色であるかについて、一目で判別することは難しかった。そのため、光ケーブルの接続作業や管理業務などを行うにあたっては、それぞれの素線の識別が難しいので誤認しやすく、接続作業の効率が非常に悪くなってしまうという不具合があった。
【0011】
本発明による光ケーブル心線の識別表示方法および表示物は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、光ケーブル心線の多心化された素線について、どの素線が何番目でどこに配置されるのか、またそれが何色であるかについては、一目で識別または判別できる表示方法およびその表示物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]多数の素線を内蔵する光ケーブルについて、それらの素線を識別して表示する方法であって、
前記光ケーブルは、その外周に添って均等的に溝型にして形成された複数のスロットと、それらスロット内に積層して配置される複数の薄型偏平形状のテープ心線と、これらのテープ心線内で一面状に並列して配置される複数の素線と、を有し、
(1)複数のスロットについての、通し番号付けをしたスロット番号、
(2)スロット内での積層配置される複数のテープ心線についての、スロット毎に通し番号付けをしたテープ心線番号、
(3)各テープ心線に含まれる各素線についての、各テープ心線内での配置番号、素線毎の色表示と総素線通し番号、のすべてのデータを一覧形式によって表示する、光ケーブルの素線識別表示方法とした。
【0013】
[2]多数の素線を内蔵する光ケーブルについて、それらの素線を識別して表示する表示物であって、
前記光ケーブルは、その外周に添って均等的に溝型にして形成された複数のスロットと、それらスロット内に積層して配置される複数の薄型偏平形状のテープ心線と、これらのテープ心線内で一面状に並列して配置される複数の素線と、を有し、
(1)複数のスロットについての、通し番号付けをしたスロット番号、
(2)スロット内での積層配置される複数のテープ心線についての、スロット毎に通し番号付けをしたテープ心線番号、
(3)各テープ心線に含まれる各素線についての、各テープ心線内での配置番号、素線毎の色表示と総素線通し番号、のすべてのデータを一覧形式によって表示する、光ケーブルの素線識別表示用の表示物とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明による光ケーブル心線の識別表示方法および表示物によれば、光ケーブル心線の多心化された素線について、どの素線が何番目でどこに配置されるのか、またそれが何色であるかについては、一目で識別または判別して表示できる方法および表示物を提供することができた。この表示方法および表示物により、次のような格別な効果を奏する。
・現場作業に適合した様式とすることができ、作業の効率化を図ることができる。
・誤認による事故の防止に役立てることができる。
・工事計画や設計から日常保守まで広範に利用することができる。
・簡単かつ見やすく、少ない枚数で心線の表示をすることができる。
・他の通信事業者との共同使用をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明による光ケーブル心線の識別表示方法および表示物にかかる実施の形態について、添付の図1および図2を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる「SM型4心テープ心線素線識別表」である。ここで本願発明を適用した光ケーブルは300心タイプであって、テープ心線を配置するためのスロットを円周側に均等的に15箇所備えている。また、この光ケーブルのそれぞれのスロットは20心光ユニットとして構成されており、1スロットは、素線4本を有する4心テープ心線が、No.1〜No.5のような5段の積層構造で各スロット内に配列配置されている。
【0016】
図1の一覧表は、(1)複数のスロットについての、通し番号付けをしたスロット番号、(2)スロット内での積層配置された複数のテープ心線についての、スロット毎に通し番号付けをしたテープ心線番号、(3)各テープ心線に含まれる各素線についての、各テープ心線内での配置番号、素線毎の色表示と総素線通し番号、のすべてのデータを表形式によって表示した、光ケーブルの素線識別表示物である。
【0017】
図1の一覧表において、4心テープ心線のスロットNo.1については、次のように表示させた。
テープNo. 素線No. 1 2 3 4
1 青/1 白/2 青/3 灰/4
2 黄/5 白/6 黄/7 灰/8
3 緑/9 白/10 緑/11 灰/12
4 赤/13 白/14 赤/15 灰/16
5 紫/17 白/18 紫/19 灰/20
【0018】
また、4心テープ心線のスロットNo.15については、次のように表示させた。
テープNo. 素線No. 1 2 3 4
1 青/281 白/282 青/283 灰/284
2 黄/285 白/286 黄/287 灰/288
3 緑/289 白/290 緑/291 灰/292
4 赤/293 白/294 赤/295 灰/296
5 紫/297 白/298 紫/299 灰/300
【0019】
つぎの図2は、本発明の別の実施形態にかかる「SM型8心テープ心線素線識別表」である。ここで本願発明を適用した光ケーブルは1000心タイプであって、テープ心線を配置するためのスロットを、外周側に均等的に13箇所備えている。また、この光ケーブルのそれぞれのスロットは80心光ユニットとして構成されており、各スロットは、素線8本を有する8心テープ心線が、No.1〜No.10のような10段の積層構造でスロット内に配列配置されている。
【0020】
図2の一覧表において、8心テープ心線のスロットNo.1については、次のように表示した。
テープNo. 素線 No.1 2 3 4 5 6 7 8
1 青/1 白/2 白/3 桃/4 黄/5 白/6 白/7 桃/8
2 緑/9 白/10 白/11 桃/12 赤/13 白/14 白/15 桃/16
3 紫/17 白/18 白/19 桃/20 青/21 白/22 白/23 白/24
4 黄/25 白/26 白/27 白/28 緑/29 白/30 白/31 白/32
5 赤/33 白/34 白/35 白/36 紫/37 白/38 白/39 白/40
6 青/41 白/42 白/43 水/44 黄/45 白/46 白/47 水/48
7 緑/49 白/50 白/51 水/52 赤/53 白/54 白/55 水/56
8 紫/57 白/58 白/59 水/60 青/61 白/62 白/63 水/64
9 黄/65 白/66 白/67 茶/68 緑/69 白/70 白/71 茶/72
10 赤/73 白/74 白/75 茶/76 紫/77 白/78 白/79 茶/80
【0021】
また、8心テープ心線のスロットNo.12については、次のように表示した。
テープNo. 素線 No.1 2 3 4 5 6 7 8
1 青/881 白/882 白/883 桃/884 黄/885 白/886 白/887 桃/888
2 緑/889 白/890 白/891 桃/892 赤/893 白/894 白/895 桃/896
3 紫/897 白/898 白/899 桃/900 青/901 白/902 白/903 白/904
4 黄/905 白/906 白/907 白/908 緑/909 白/910 白/911 白/912
5 赤/913 白/914 白/915 白/916 紫/917 白/918 白/919 白/920
6 青/921 白/922 白/923 水/924 黄/925 白/926 白/927 水/928
7 緑/929 白/930 白/931 水/932 赤/933 白/934 白/935 水/936
8 紫/937 白/938 白/939 水/940 青/941 白/942 白/943 水/944
9 黄/945 白/946 白/947 茶/948 緑/949 白/950 白/951 茶/952
10 赤/953 白/954 白/955 茶/956 紫/957 白/958 白/959 茶/960
【0022】
図1または図2に示した表示例から明らかなように、本発明による光ケーブルの素線識別表示方法および表示物は、(1)複数のスロットについての、通し番号付けをしたスロット番号、(2)スロット内での積層配置される複数のテープ心線についての、スロット毎に通し番号付けをしたテープ心線番号、(3)各テープ心線に含まれる各素線についての、各テープ心線内での配置番号、素線毎の色表示と総素線通し番号、のすべてのデータを一覧形式によって表示することとしている。
【0023】
これらのデータは、パソコン装置と表計算ソフトを用いれば容易にデータを入力することが可能であって、パソコン装置に各種データを保存して管理しておくと便利である。また、これらデータを表示させるにあたっては、プリントアウトや印刷などによってペーパー状の表示物として用いてもよいし、携帯端末やパソコン装置などのディスプレイに表示させて用いてもよい。そして、本発明を適用したこのような表示物は、作業者らが所持しやすく、作業現場に持ち運んで活用しやすい形態とするのがよい。
【0024】
本発明による光ケーブル心線の識別表示を用いた一覧表を作業者らが所持して、アクセス系光ケーブル整備工事をした結果によれば、次のような実践的な効果を奏することがわかった。
・視覚的に素線を識別することがきわめて容易となったので、多心ケーブルの使用についての計画や設計を行いやすくなった。
・作業効率がよくなったことにより、コスト低減を図ることができた。
・表示物である紙面を持って作業をすることにより、光ケーブル心線(素線)を確実に確認ことができるようになり、誤認がなくなった。
・他の通信事業者との共同使用が可能であり、共同建設工事の設計から心線管理まで用途が広い。
・心線貸付け後におけるお客様サービスの向上として、作業効率が向上したことにより、回線停止時間の短縮化が図れ、誤切断や誤接続などの事故防止に役立てられる。
・光ケーブルの設計業務、現場作業、心線管理業務などにおいて、大きな効率アップが期待できる。
・職場環境を改善して、企業イメージの向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の光ケーブルの素線識別表示方法または表示物における一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の光ケーブルの素線識別表示方法または表示物における別の実施形態を示す図である。
【図3】光ケーブルの構造例を断面によって示す図であり、図3(1)は600心ケーブルの構造図、図3(2)は400心ケーブルの構造図である。
【図4】8心テープ心線の構造および従来の識別表示例を示す図であって、図4(1)は、8心テープ心線の断面による構造図であり、図4(2)は、8心テープ心線中の光ファイバ素線の識別に用いられている従来の素線識別表であり、また図4(3)は、80心光ユニットと40心光ユニットについての、スロット内のテープ心線の積層配置の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
61、41 テンションメンバ
62、42 スペーサ
63、43 スロット(溝部)
64、44 光ファイバテープ心線
65、45 シース
66、46 押さえ巻き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の素線を内蔵する光ケーブルについて、それらの素線を識別して表示する方法であって、
前記光ケーブルは、その外周に添って均等的に溝型にして形成された複数のスロットと、それらスロット内に積層して配置される複数の薄型偏平形状のテープ心線と、これらのテープ心線内で一面状に並列して配置される複数の素線と、を有し、
(1)複数のスロットについての、通し番号付けをしたスロット番号、
(2)スロット内での積層配置される複数のテープ心線についての、スロット毎に通し番号付けをしたテープ心線番号、
(3)各テープ心線に含まれる各素線についての、各テープ心線内での配置番号、素線毎の色表示と総素線通し番号、のすべてのデータを一覧形式によって表示する、ことを特徴とする光ケーブルの素線識別表示方法。
【請求項2】
多数の素線を内蔵する光ケーブルについて、それらの素線を識別して表示する表示物であって、
前記光ケーブルは、その外周に添って均等的に溝型にして形成された複数のスロットと、それらスロット内に積層して配置される複数の薄型偏平形状のテープ心線と、これらのテープ心線内で一面状に並列して配置される複数の素線と、を有し、
(1)複数のスロットについての、通し番号付けをしたスロット番号、
(2)スロット内での積層配置される複数のテープ心線についての、スロット毎に通し番号付けをしたテープ心線番号、
(3)各テープ心線に含まれる各素線についての、各テープ心線内での配置番号、素線毎の色表示と総素線通し番号、のすべてのデータを一覧形式によって表示する、ことを特徴とする光ケーブルの素線識別表示用の表示物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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