説明

光コネクタ用屈折率整合剤、光コネクタ及び光コネクタ接続方法

【課題】本発明の課題は、光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤で光コネクタ端面を接続することにより、光コネクタ端面にゴミ等が進入するのを防止し、故障が起こりにくい光コネクタ用屈折率整合剤を提供することにある。
【解決手段】本発明は、光を透過するゲル状もしくは液体よりなり、空気または触媒液と反応すると固化して光コネクタ12,22端面を接着し、光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤16となることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過するゲル状もしくは液体よりなり、空気または触媒液と反応すると固化して光コネクタ端面を接着し、光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤となる光コネクタ用屈折率整合剤、前記光コネクタ用屈折率整合剤を用いた光コネクタ及び光コネクタ接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多心光コネクタは、光ファイバテープ心線を接続する光コネクタであり、主に光ファイバテープで構成した光ケーブルの接続に用いられている。その多心光コネクタの接続は、2本の嵌合ピンで光コネクタ同士の位置合わせをし、光コネクタの端面に屈折率整合剤を塗布したのち光コネクタ同士の接続を行い、クリップで光コネクタ同士の結合力を保持している。屈折率整合剤は、光コネクタの端面同士の僅かな間隙を埋めるために用いられ、特性はシリコン系を主とした光ファイバコアと同じ屈折率をもつゲル状のものである。
【0003】
このような多心光コネクタを用いた光ケーブル接続部は、電柱の上及びマンホール内にある。光ケーブル接続部の接続点は、外部からの損傷や、浸水を防ぐためクロージャと言う筐体の中にあり、光コネクタ等の接続部はビニール製の袋などに収納されている。
【0004】
クロージャの構造は、光ケーブルとクロージャの側面を密閉するクロージャ端面板と接続部全体を覆うためのクロージャスリーブから構成している。その光ケーブルを接続しているクロージャを設置するマンホールは、道路の下などに設置しているため雨等により浸水することがある。その場合、クロージャは浸水するが、クロージャ内部は浸水から保護する構造となっており、光ファイバ心線接続部は浸水しないようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−56907号公報
【非特許文献1】大久保勝彦著 「ISDN時代の光ファイバ技術」 理工学社出版 1991年12月25日 6−12頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、クロージャ組立時に、クロージャスリーブやクロージャ端面板の取り付け作業ミスにより、クロージャの密封状態が十分でない場合、光ファイバ心線接続部に浸水することがある。その結果、光ファイバ心線接続部の強度劣化や光損失増加を引き起こし、故障の原因となることがあるため、浸水したクロージャから水を取り除く必要があるが、多くの時間と費用がかかるという問題があった。
【0007】
クロージャ内の浸水した多心光コネクタの故障の原因の一つとして、多心光コネクタ端面にゴミ等が付着し光ファイバコア部を塞ぐことである。それは水中にあるゴミ等がゲル状の屈折率整合剤を介して多心光コネクタ端面に進入し、多心光コネクタ端面内でゴミが流動し光ファイバのコア部を覆うことで損失増加の要因となっている。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤を用いて光コネクタ端面を接続することにより、光コネクタ端面にゴミ等が進入するのを防止し、故障が起こりにくい光コネクタ用屈折率整合剤、前記光コネクタ用屈折率整合剤を用いた光コネクタ及び光コネクタ接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の光コネクタ用屈折率整合剤は、光を透過するゲル状もしくは液体よりなり、空気または触媒液と反応すると固化して光コネクタ端面を接着し、光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤となることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明は、前記光コネクタ用屈折率整合剤において、シリコーン樹脂の一部がフェニル基とメチル基で置き換えた化合物よりなることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明は、前記光コネクタ用屈折率整合剤において、フェニル基とメチル基の配合比がほぼ48:52(側鎖基の%)であることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明は、前記光コネクタ用屈折率整合剤において、屈折率がほぼ1.46でゴム弾性が得られる化合物よりなることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明は、前記光コネクタ用屈折率整合剤を用いて光コネクタの端面同士を接着することを特徴とするものである。
【0014】
また本発明は、前記光コネクタ用屈折率整合剤を用いて光コネクタの端面同士を接着して光コネクタを接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光コネクタ用屈折率整合剤は、光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤を用いて光コネクタ端面を接続することにより、光コネクタ端面にゴミ等が進入するのを防止し、且つ光コネクタの浸水時における損失変動が起こらないため、故障などを防ぐことができる。また、浸水したクロージャの修理をする期間を伸ばすことができるため、メンテナンスコストを減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る多心光コネクタの結合前の状態を示す斜視図である。すなわち、一方の光ファイバテープ11の先端には一方の多心光コネクタ12の後端が取り付けられ、多心光コネクタ12の先端面には光ファイバテープ11の複数の光ファイバ心線13の先端面が並列にして露出される。多心光コネクタ12の先端面で光ファイバ心線13の両側には嵌合ピン14,15が突出して設けられる。多心光コネクタ12の先端面には光ファイバ心線13の先端面を覆うようにして光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤16が塗布される。
【0017】
前記ゴム状屈折率整合剤16はシリカケトン等のシリコーン樹脂の側鎖の一部をフェニル基とメチル基で置き換えた化合物を用いることが有効であり、その中でもフェニル基とメチル基の配合比を48:52(側鎖基の%)とすることで特に好適な化合物(屈折率1.46でゴム弾性)が得られる。なお、前記ゴム状屈折率整合剤16は、光コネクタの端面接合時に使用する光ファイバコアとほぼ同じ屈折率を有し、かつ低損失で光を透過するゲル状または、液体の屈折率整合剤であり、空気または触媒液と反応すると固化して光コネクタ端面を接着し、脱着には端面同士が容易に離れ、かつ、アルコール等で拭取ることで固化した屈折率整合剤を除去できる光通信用として使用できる。
【0018】
また、他方の光ファイバテープ21の先端には他方の多心光コネクタ22の後端が取り付けられ、多心光コネクタ22の先端面には光ファイバテープ21の光ファイバ心線の先端面が並列にして露出される。多心光コネクタ22の先端面で光ファイバ心線の両側にはピン穴24,25が貫通して設けられる。多心光コネクタ22の先端面には光ファイバ心線の先端面を覆うようにして光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤が塗布される。
【0019】
前記ゴム状屈折率整合剤はシリカケトン等のシリコーン樹脂の側鎖の一部をフェニル基とメチル基で置き換えた化合物を用いることが有効であり、その中でもフェニル基とメチル基の配合比を48:52(側鎖基の%)とすることで特に好適な化合物(屈折率1.46でゴム弾性)が得られる。なお、前記ゴム状屈折率整合剤は、光コネクタの端面接合時に使用する光ファイバコアとほぼ同じ屈折率を有し、かつ低損失で光を透過するゲル状または、液体の屈折率整合剤であり、空気または触媒液と反応すると固化して光コネクタ端面を接着し、脱着には端面同士が容易に離れ、かつ、アルコール等で拭取ることで固化した屈折率整合剤を除去できる光通信用として使用できる。
【0020】
図2は本発明の実施形態に係る多心光コネクタの結合後の状態を示す斜視図である。すなわち、多心光コネクタ12,22の結合方法は、多心光コネクタ12,22の端面をアルコール等を含んだレンズペーパで清掃し、次に多心光コネクタ12,22の端面に光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤を光ファイバ心線の先端面を覆うようにして塗布して後、多心光コネクタ22のピン穴24,25に多心光コネクタ12の嵌合ピン14,15を挿入嵌合して結合する。その後、略コ字状の弾性体よりなるクリップ31,32を多心光コネクタ12,22のそれぞれ後端面に当接するように係止して軸方向に圧縮力を付与するように保持して取り付け、光コネクタの端面同士を接着して接続する。
【0021】
図3は本発明の実施形態に係る多心光コネクタの接着力の測定装置を示す構成説明図である。図3に示すように、測定装置として引張り圧縮試験機を用いた場合であり、本発明の実施形態に係る多心光コネクタ12,22同士を光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤を介在して接続し、光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤を空気または触媒液と反応させて固化しゴム状に変化させ多心光コネクタ12,22同士を接合した。その変化後の多心光コネクタ12,22端面間の接着力について測定した。
【0022】
すなわち、バイス治具41には多心光コネクタ12の一端を固定し、多心光コネクタ22の他端を上部チャック42で固定して上部チャック42側を矢印A方向に引張り多心光コネクタ12,22が剥がれたときの力を測定した。本実施形態で使用した光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤は、光を透過するゲル状もしくは液体よりなり、硬化までの時間が10分のものを用い、その特性について測定した。
【0023】
その結果、接続した多心光コネクタが10個の平均は、20N程度の接着力を有していることが分かった。これで、本実施形態で使用した光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤はゴム状に変化することで接着力を有し、浸水しても多心光コネクタ端面にゴミ等が進入することがないため損失変動は起こらないと想定できる。
【0024】
図4は本発明の実施形態に係る多心光コネクタの浸水試験測定系を示す構成説明図である。図4に示すように、本実施形態で使用した光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤で接続した多心光コネクタ12,22を5個ビーカ51に入れると共に、従来の整合剤で接続した多心光コネクタを5個ビーカ51に入れた後、ビーカ51の中に劣化を加速させるための試験水52を流し込み、室温にて3ヶ月間浸水させ、浸水前と浸水後での損失変動について測定し、浸水による劣化を確認した。
【0025】
図5は本発明の実施形態に係る多心光コネクタと従来の多心光コネクタの浸水試験測定結果を示す特性図である。すなわち、本発明の実施形態に係る光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤で接続した多心光コネクタ(発明品)と従来の整合剤で接続した多心光コネクタ(従来品)を3ヶ月間浸水した時の損失変動結果であり、従来品による損失増加は、1dB以上あり故障値とみられる損失増加が見られた。しかし、発明品を使用した場合では、最大0.4dB以下で故障といわれる損失増加は見られなかった。よって浸水しても損失が大きく変動することが少なく劣化が遅いことが分かる。
【0026】
以上のように本発明の実施形態は、光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤を用いて光コネクタ端面を接続することにより、端面からのゴミの付着・進入を防止すると共に、従来と同等以上の屈折率整合を行うことができる。また、屈折率整合剤を光通信のできる屈折率、着脱可能の特性を維持し、ゲル状である従来の特性を流動しない状態にするゴム状に変更し、またコネクタ同士を接着させることで外部から浸水しても遮断するものを使用する。
【0027】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る多心光コネクタの結合前の状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る多心光コネクタの結合後の状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る多心光コネクタの接着力の測定装置を示す構成説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る多心光コネクタの浸水試験測定系を示す構成説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る多心光コネクタと従来の多心光コネクタの浸水試験測定結果を示す特性図である。
【符号の説明】
【0029】
11,21…光ファイバテープ、12,22…多心光コネクタ、13…光ファイバ心線、14,15…嵌合ピン、16…屈折率整合剤、24,25…ピン穴、31,32…クリップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過するゲル状もしくは液体よりなり、空気または触媒液と反応すると固化して光コネクタ端面を接着し、光通信のできる屈折率を有するゴム状屈折率整合剤となることを特徴とする光コネクタ用屈折率整合剤。
【請求項2】
シリコーン樹脂の一部がフェニル基とメチル基で置き換えた化合物よりなることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ用屈折率整合剤。
【請求項3】
フェニル基とメチル基の配合比がほぼ48:52(側鎖基の%)であることを特徴とする請求項2に記載の光コネクタ用屈折率整合剤。
【請求項4】
屈折率がほぼ1.46でゴム弾性が得られる化合物よりなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の光コネクタ用屈折率整合剤。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光コネクタ用屈折率整合剤を用いて光コネクタの端面同士を接着することを特徴とする光コネクタ。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光コネクタ用屈折率整合剤を用いて光コネクタの端面同士を接着して光コネクタを接続することを特徴とする光コネクタ接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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