説明

光コネクタ組立治具

【課題】 従来の光コネクタにおけるフェルールの着脱治具の欠点を改良し、光コネクタの安易な組立および分解を行う組立冶具を提供すること。
【解決手段】 光コネクタを組み立てる組立治具100において、前記光コネクタは、光ファイバを保持したフェルールを保持し弾性を有する一対の梁部を備え、
前記組立冶具は、本体部と、前記本体部に移動自在に保持され前記光コネクタを収容する光コネクタ収容部10と、前記本体部に移動自在に保持され前記フェルールを収容するフェルール収容部20と、一対の梁部と当接し、前記一対の梁部を外方へ広げる当接部30とを有し、前記光コネクタを前記光コネクタ収容部20に収容保持し、前記光コネクタ収容部10を移動させて前記当接部30により前記一対の梁部を外方へ広げ、前記フェルールを前記フェルール収容部20に収容保持し、前記フェルール収容部20を前記光コネクタ収容部10に向けて移動させることにより、光コネクタを組み立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを有するフェルールを収容保持する光コネクタの組立治具に関し、詳しくは、組立を安易に行える組立冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光コネクタにおける着脱治具は、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0003】
図10(a)は、特許文献1の光コネクタ105のフェルール抜き出し状態を示す図で、図10(b)は、図10(a)の光コネクタ105の一部破断側面図である。
【0004】
図10(a)及び図10(b)を参照すると、光コネクタ105は、ハウジング110と、このハウジング110へ装着されるフェルール120とからなる。
【0005】
ハウジング110は、相手光コネクタとの接続側に、1対の係止片111を備えている。各係止片111は、相手光コネクタとの接続側に係止部112を有している。この係止部112は、係止片111が互いに閉じた位置において、フェルール120のフランジ部123を係止することにより、図10(b)に示すように、フェルール120の装着状態を保持させる作用をする。また、係止片111は、フェルール120の装着状態を解除しうる解除位置へと前述の閉じた位置から弾性的に開き得るようなものとされている。
【0006】
フェルール120は、光コネクタ105の光ファイバの接続側に位置する接続側部121と、光コネクタ105の接続側とは反対側の相手光コネクタとの嵌合側に位置する嵌合側部122と、接続側部121及び嵌合側部122の間に配置されたフランジ部123とを有している。このフェルール120には、光ファイバ106が接続される。
【0007】
図10(a)にて示されるように、フェルール着脱工具125は、プラスチック材料にて一体成形されたものであり、全体として断面コの字状に形成されている。このフェルール着脱工具125の右端の基部側には、操作者が指で把持するための把持部と、先端側に把持部に連接してフェルール120の接続側部を挟持しうる1対の弾性挟持片126とを備えている。この弾性挟持片126の厚みは、この弾性挟持片126が1対の係止片111の対向している間へと挿入されフェルール120の接続側部121を挟持した状態において、係止片111を解除位置へと開かせうるようなものとされている。また、弾性挟持片126には、フェルール120の接続側部121を挟持した状態において弾性挟持片126が1対の係止片111の対向していない間へと挿入されたときに、係止片111を解除位置へと開かせないようにする切欠き部が形成されている。
【0008】
フェルール着脱工具125においては、切欠き部が両側脚部の先端部のみの両側に形成され、底部は、切欠き部に相当する部分が切り欠かれている。
【0009】
次に、このような構成のフェルール着脱工具125を用いて、光コネクタ105のフェルール120を着脱する操作について説明する。
【0010】
先ず、図10(b)に示されるようにハウジング110内に装着されたフェルール120を抜き外すには、操作者は、フェルール着脱工具125を、光コネクタ105に対して、1対の弾性挟持片126が光コネクタ105の1対の係止片111の対向している間へと挿入されうる向きにして、把持部を把持する。操作者は、このようにフェルール着脱工具125を把持した状態で、1対の弾性挟持片126がフェルール120の接続側部121を挟持し且つ光コネクタ105の1対の係止片111の対向している間へ、弾性挟持片126の先端面がフェルール120のフランジ部123の当接面に突き当たるまでと押し込む。この押し込み状態において、フェルール120の接続側部121が弾性挟持片126の間に完全に挟持された状態となると同時に、1対の係止片111は、フェルール120のフランジ部123に対する係止部112による係止が解除された解除位置まで外側へ押し広げられた状態となるから、操作者がそのフェルール着脱工具126を後退させることにより、図10(a)に示すように、フェルール120を光コネクタ105のハウジング110から抜き出すことができる。
【0011】
次に、このようにして抜き出したフェルール120を再び光コネクタ100のハウジング110に対して装着する場合には、操作者は、1対の弾性挟持片126の間にフェルール120が挟持されたままの状態で、1対の弾性挟持片126が光コネクタ105の1対の係止片111の対向していない間へと挿入されうる向きとなるように、フェルール着脱工具125を90度回転させるようにして、把持部を持ち替え、フェルール120の嵌合側部122が1対の係止片111の間へ挿入され、フェルール120のフランジ部123によって1対の係止片111の係止部112を押し広げるようにして、光コネクタ100のハウジング110内へと押し込んでいき、フェルール120のフランジ部123が係止片111の係止部112を乗り越えたところで、フェルール着脱工具125を後退させて引き抜くようにすればよい。この時、フェルール着脱工具125の1対の弾性挟持片126の先端両側には、切欠き部が設けられているので、1対の係止片111は閉じた位置のままである。したがって、フェルール120のフランジ部123が係止片111の係止部112によって係止されるので、フェルール120は、ハウジング110内の装着位置に残されて、フェルール着脱工具125の弾性挟持片126に挟持されたままの状態で、抜き出されてしまうようなことはない。
【0012】
図11(a)は特許文献2による光コネクタおよび分解治具の斜視図、図11(b)はストッパー4がコイルスプリング5の反力(拡張力)によって外郭部材2から押し出された状態を示す図である。
【0013】
図11(a)及び図11(b)に示すように、分解治具151は、本体152と、本体152の両側にそれぞれ2本のねじ153によって固定された解除部154とから構成される。各解除部154の先端には、テーパ部154aと凹部(溝)154bとが設けられる。
【0014】
光コネクタ141は、外郭部材(プラグフレーム)142と、外郭部材142に収容される内部部材(図示せず)と、外郭部材142に取り付けられるストッパー144と、内部部材とストッパー144の間に介在するコイルスプリングとから構成される。
【0015】
内部部材には、光ファイバ150が接続され、コイルスプリングは、内部部材を相手側光コネクタとの嵌合方向に常時押圧する。
【0016】
外郭部材142の一端側の両側部には、スリット(挿入部)142aが設けられ、また、外郭部材142の一端側の上下両面には、それぞれ2つの窓(係合部)142bが設けられる。ストッパー144の形状は、上面から見ると台形、側面から見ると長方形である。ストッパー144の上下両面の先端付近の両側には、突出形状のロック部144aが設けられる。外郭部材2は合成樹脂から製造されて弾性変形可能であるので、各ロック部144aは各係合部142bに対して係合・解除することができる。
【0017】
次に、特許文献2による光コネクタ141を分解治具151によって分解する操作について説明する。
【0018】
まず、分解治具151の各テーパ部154aを外郭部材152の各スリット142aに挿入すると、各スリット142aは開き、ストッパー144は分解治具151の収容部151a内に収容される。
【0019】
各スリット142aが開くと、外郭部材142の上面側の各係合部142bは上方に移動し、下面側の各係合部142bは下方に移動するので、ストッパー144の各ロック部144aは各係合部142bから解除される。したがって、ストッパー144は、圧縮されているコイルスプリングの反力によって外郭部材152から離脱し、分解治具151の収容部151aの奥に進入する。
【0020】
次に、光ファイバ150と分解治具151とストッパー144を手指によって引くと、内部部材は外郭部材142から引き抜かれる。
【0021】
【特許文献1】特許第3354503号公報
【特許文献2】特開2005−292643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
特許文献1に記載されている光コネクタのためのフェルール着脱治具は、図10に示すような平面の接続側部121を有するフェルールにしか適用てきない構造になっている。
【0023】
現在主に単芯用光コネクタに使用されている多くのフェルールは平面の接続側部121は存在せず、円筒形のフランジ部を有している。
【0024】
つまり、特許文献1に記載された光コネクタのためのフェルール着脱治具では、円筒形のフランジ部を有しているフェルールを用いた光コネクタではフェルールが回転し、一定の方向に保持することが困難な状態になってしまう。
【0025】
また、特許文献1に記載されている光コネクタの着脱のためのフェルール着脱治具はプラスチック材料にて一体成形されているとあるが、プラスチック材料にて成形するために金属製の治具と比較して強度が低下し、該当治具の使用頻度が高い状況下では破損の可能性が高くなってしまう。
【0026】
また、特許文献2に記載されている光コネクタの分解治具は、光コネクタの分解にのみしか用いることが出来ない。また、内部にコイルスプリングを有していない光コネクタの場合、コイルスプリングの反発力を用いることが不可能であるために分解が困難である。
【0027】
以上述べたように、従来技術における光コネクタの組立及び分解治具は、ある特定のフェルールを用いた場合でしか用いることが出来ないことや分解時にしか用いることが出来ないこと、内部構造が変化した光コネクタの場合用いることが出来ない等の問題がある。
【0028】
そこで、本発明の技術的課題は、前記従来の光コネクタにおけるフェルールの着脱治具の欠点を改良し、光コネクタの安易な組立および分解を行う組立冶具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明によれば、光コネクタを組み立てる組立治具において、前記光コネクタは、光ファイバを保持したフェルールを保持し弾性を有する一対の梁部を備え、
前記組立冶具は、本体部と、前記本体部に移動自在に保持され前記光コネクタを収容する光コネクタ収容部と、前記本体部に移動自在に保持され前記フェルールを収容するフェルール収容部と、前記一対の梁部と当接し前記一対の梁部を外方へ広げる当接部とを有し、前記光コネクタを前記光コネクタ収容部に収容保持し、前記光コネクタ収容部を移動させて前記当接部により前記一対の梁部を外方へ広げ、前記フェルールを前記フェルール収容部に収容保持し、前記フェルール収容部を前記光コネクタ収容部に向けて移動させることにより、光コネクタを組み立てることを特徴とする光コネクタ組立治具が得られる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、光コネクタにおけるフェルールの着脱治具の欠点を改良し、光コネクタの安易な組立および分解を行うことができる組立冶具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施例に係る光コネクタを示している。なお、図1では、光コネクタをハウジングによって保持した光コネクタ装置を、アダプタに接続した状態を示している。図2は図1のコネクタのフェルールを示す斜視図である。図3(a)および(b)は、光コネクタ50を斜め正面および斜め背面からそれぞれ眺めた斜視図で当接部52は図示していない。図4は、図1に示した光コネクタ装置のハウジング80の一部の断面を示している。図5は、図1に示したハウジング80を180度回転した状態を示す斜視図である。 図1を参照して、光コネクタ装置は、光コネクタ部5と、光コネクタ部5を装着可能に保持するハウジング80とを有する。光コネクタ装置は、アダプタ90と接続することによって、アダプタ90を介して相手側光コネクタ(図示せず)と接続される。
【0033】
光コネクタ部5は、フェルール60と、フェルール60を保持するため保持部材としての光コネクタ50とを有する。このフェルール60を有する光コネクタ50を光コネクタ部5と呼ぶ。
【0034】
図2を参照すると、フェルール60は、円筒状のフェルール本体61と、フェルール本体61の光軸X(図4参照)方向の中間部分に設けられているフランジ部62を有する。実施例1におけるフェルール60は、PC(Physical Contact)研磨された単芯フェルールであるが、APC(Angled Physical Contact)研磨された単芯フェルールにも適用できる。
【0035】
フランジ部62は、フェルール本体65の外周面上で光軸Xと直交する方向へ延びている。フランジ部62には、光軸X周りの円周部63の複数個所を切り欠くことによって複数の被位置決め部(切欠き部)64が光軸X周りの円周部63に形成されている。したがって、フランジ部62の円周部63は、周方向に複数の円弧面が断続して形成されている形状となっている。
【0036】
フェルール本体61内には、光軸X方向の一端側から光ケーブル70の一端部が挿入されることにより光ケーブル70の一端部を保持している。光ケーブル70は、光ファイバ71を樹脂材によって被覆したものである。さらに、フェルール本体61の他端面には、フェルール本体61に挿入された光ファイバ71の先端面が露出するように位置している。光ファイバ71の先端面は、図示しない相手側光コネクタの相手側光ファイバの先端面と突き合わされて接続される部分である。
【0037】
図3を参照すると、光コネクタ50は、1枚の薄い弾性部材で構成されている。
【0038】
具体的には、長板状の第1及び第2の梁部57,58と、第1及び第2の梁部57,58の光軸X方向と直交する方向の一端辺を相互に接続している略四角板形状の基部56とを有する。一対の対向した第1の梁部57は弾性を有し、2つの対向する第1の梁部57の先端は幅が狭い首部54が設けられている。また、もう一対の第2の梁部58は弾性を有し、2つの対向する第1の梁部58の先端は幅が狭い首部54と首部54の先端には、幅が広くなるように両側に突出した結合部55が設けられている。
【0039】
一対の第2の梁部58には、切り込み及び内側に折り曲げることによって弾性片53が夫々形成されている。また、第1の梁部57には、凸部51が形成されている。
【0040】
光コネクタ50は、第1及び第2の梁部57,58と、基部56によって囲まれている部分がフェルール60を収容する収容部となる。
【0041】
光コネクタ50は、1枚の薄い板材のみによって構成され、板材として金属板を採用した場合には、プレスにより板材を所定の展開形状に打ち抜いた後に、曲げ加工を施すことによって保持部材の機能を有する。
【0042】
なお、実施例1においては、第1の梁部57のそれぞれが弾性を有するものであるが、これら第1の梁部57のうちの少なくとも一方が弾性を有するものであってもよい。
【0043】
一対の第2の梁部58には、片持ちバネ状に基部56側の一端が接続され、かつ第2の梁部58の内側へ自由端部が延びている位置決めするための弾性片53が夫々形成されている。
【0044】
弾性片53は弾性を有し、フェルール60のフランジ部62に形成されている切欠き部64と係合し当接することで、フェルール60の光軸Xと交差する方向へ倒れ込みや回転を防止する役目を果たす。なお、一対の弾性片53の内の一方が弾性を有するものであってもよい。
【0045】
さらに、第1の梁部57の首部54の基部側には、夫々第1の梁部57の板面と直交する方向へ曲げられて延びて、さらに梁部57の板面に対向するように曲げられている当接部52(図4参照)が夫々形成されている。
【0046】
当接部52は、フェルール60のフランジ部62の切欠き部64と光コネクタ50の弾性片53との夫々の係合を解除する役目を果たす。
【0047】
当接部52は、フェルール60のフランジ部62の円周部63に当接し、光軸Xと交差する方向に突出して弾性片53を有する第2の梁部58を外側方向へ押し広げる役目を果たす。なお、弾性片53は、一対の第2の梁部58のうちの一方のみに形成されているものであってもよい。また、当接部52は、これらを操作した際に、フランジ部62の円周部63に当接するようにしても良い。
【0048】
また、結合部55を夫々有する第2の梁部58から結合部55までの首部54の長さは、一方が他方よりも短い寸法に形成されている。
【0049】
光コネクタ50の基部56には、光ケーブル70を挿入したフェルール本体61の一端部を貫通させて保持する貫通孔が形成され、また、基部56には、貫通孔から基部56の一辺を切り欠くことによって切欠き部59が形成されている。
【0050】
図4及び図5をも参照して、ハウジング80は、略四角板形状のハウジング本体83と、ハウジング本体83の一面83aから突出している略四角板形状の嵌合部84とを有する。
【0051】
嵌合部84は、図4及び図5によってもっともよく分かるように、第1側面85aと、第1側面85aに対向している第2側面85bと、第1及び第2側面85a,85bのそれぞれと隣接する第3側面86a及び第4側面86bと、ハウジング本体83の一面83aに平行な嵌合面87とを有する。
【0052】
第1側面85aには、この第1側面85aよりも低い面とする第1溝部85cが形成されている。第1溝部85cは、光コネクタ50の梁部57の自由端側で
ある首部54の先端が入り込み第1梁部57に対応する形状となっている。第2側面85bには、この第2側面85bよりも低い面とする第2溝部85dが形成されている。第2溝部85dは、光コネクタ50の梁部57の自由端側が入り込み首部54の先端と対応する形状となっている。
【0053】
第3側面86aには、この第3側面86aよりも低い面をもつ第3溝部86cが形成されている。第3溝部86cは、光コネクタ50の第2の梁部58の自由端側が入り込みロックされるロック部となり、結合部55と対応する形状となっている。
【0054】
第4側面86bには、この第4側面86bよりも低い面をもつ第4溝部86dが形成されている。第4溝部86dは、第3溝部86cとは形状が異なっており、光コネクタ50のもう一つの第2の梁部58の自由端側である首部54先端が入り込みロックされるロック部となり、かつもう一つの結合部55と対応する形状となっている。
【0055】
嵌合部84には、嵌合部84の嵌合面87の中央部分からフェルール60のフェルール本体61を挿通するように、嵌合面87からハウジング本体83へ挿通孔87aが形成されている。ハウジング本体83には、挿通孔87aに挿通されるフェルール本体61の先端部分を挿通するハウジング孔(図示せず)が形成されている。
【0056】
アダプタ90は、図1に示したように、ハウジング80の一面83aとは反対となる面に当接されるアダプタハウジング93を有する。アダプタハウジング93の一対の側面には、レバー部材95がレバー軸部96に回動可能に取り付けられている。レバー部材95には、ハウジング83の一対の側面に設けられている軸部89に係合するレバー切欠き部97が形成されている。
【0057】
ハウジング83には、レバー部材95を所定方向(図1では時計方向)へ回転させることで、アダプタ90がハウジング80と一体に取り付けられる。
【0058】
以下、光コネクタ部5及び光コネクタ装置との組み立てについて説明する。
【0059】
フェルール60を光コネクタ50に組み込む際には、図4に示すように、一対の第2の梁部58を光軸Xと交差する離れる向きに開く。そして、光コネクタ50の内側を収容部とした弾性片53との間にフェルール60を収容する。このとき、フェルール60の回転を拘束するために弾性片53の先端部を、フェルール60のフランジ部62の切欠き部64に合わせる。
【0060】
光コネクタ5とハウジング80とを嵌合させる際は、第1の梁部57に設けてある凸部51を梁部側へ押すことにより、当接部52がフェルール60のフランジ部62の円周部分に沿って第2の梁部58を光軸Xと交差する離れる向きへ開く。第2の梁部58が光軸Xと交差する離れる向きへ開いた後、第2の梁部58の自由端部のそれぞれに形成されている結合部55がハウジング80の嵌合部84の第3及び第4側面86a,86bに沿ってスムーズに移動し嵌合できる。
【0061】
また、ハウジング80から光コネクタ部5を引き抜く際には、当接部52を有する第1の梁部57に設けてある凸部51を押すことにより、当接部52がフェルール60のフランジ部62の外周に沿って、弾性片53のある第2の梁部58を光軸Xから離れる向きへ開く。このとき、ハウジング80の嵌合部84にロックされている結合部55が外れるので、光コネクタ部5をハウジング80からスムーズに引き抜くことができる。
【0062】
図1乃至5に示した本発明の光コネクタは、特願2006−334694号に示すものと同様の構成を有している。本発明の実施例の組立治具は、この光コネクタを分解、組み立てに用いる。
【0063】
以下に、本発明の実施例に係る組立治具について説明する。
【0064】
図6は本発明の実施例1による組み立て冶具を示す斜視図である。図6を参照すると、組立治具100は、箱型の本体部40と、本体部40に移動自在に保持され光コネクタ部5、光コネクタ50を収容する光コネクタ収容部である光コネクタ受けスライド10と、本体部40に移動自在に保持されフェルール60を収容するフェルール収容部をなすフェルール受けスライド30と、テーパ部20とを備えている。この組立治具100は、光ファイバ71を有する光ケーブル70のフェルール60を光コネクタ50へ組み立てまたは分解に用いる。
【0065】
光コネクタ受けスライド10は、光コネクタ部5、光コネクタ50を組み込む際に光コネクタ部5、光コネクタ50を保持する光コネクタ受け凹部1と、フェルールの回転を防止するための突起部2とを備えている。
【0066】
テーパ部20は、一対の第2の梁部58と当接し、この一対の第2の梁部58を外方へ広げる機能を有する。また、テーパ部20は、長さ方向に設けられたガイド溝11を有し、前記ガイド溝11によって光コネクタ部5、光コネクタ50が治具から外れることを防止する。また、フェルール受けスライド30は、フェルール60の切欠き部64と係合しフェルール60の回転を防止するフェルール押さえ部21を有している。
【0067】
図7(a),(b)及び(c)及び図8(a),(b)及び(c)は図6の組立治具の使用例を示す斜視図である。
【0068】
図7(a)を参照すると、光コネクタ50を光コネクタ受け凹部1にセットする。
【0069】
図7(b)を参照すると、光コネクタ受けスライド10をテーパ部20方向へスライドし、光コネクタ50の第2の梁58をテーパ部20により広げる。
【0070】
図7(c)を参照すると、光ファイバ付きフェルール60の光ファイバ70を光コネクタ50に通す。
【0071】
図8(a)を参照すると、光ファイバ付きフェルール60をフェルール受けスライド30にセットする。
【0072】
図8(b)に示すように、光ファイバ付きフェルール60をフェルール受けスライド30とともに、矢印に示すようにスライドする。
【0073】
図8(c)を参照すると、組立治具100から光コネクタを取り外し、光コネクタ部5の完成となる。
【0074】
図9は本発明の実施例2による組立治具の斜視図である。図9を参照すると、本発明の実施例2による治具の実施例1との相違点は、フェルール押さえ部21の部分がガタツキ遊ばないように、かつ、光コネクタ受けスライド10がある側とは反対側に向けてフェルール受けスライド30を付勢するように、スプリング4等の弾性部材を内部に組み込んだ点である。
【0075】
ローレット3は、フェルール受けスライド30をスプリング4の付勢力に反して光コネクタ受けスライド10側に向けて、フェルール受けスライド30をスライド操作し易いようにするものである。
【0076】
以上説明したように、本発明によれば、スライド機構を用いることによって、光ファイバを保持するフェルールを有する特願2006−334694号に記載されているような、1枚の薄い弾性部材のみによって構成される光コネクタを組み立てる際において、PC(Physical Contact)研磨された単芯フェルール及びAPC(Angled Physical Contact)研磨された単芯フェルールに適用出来、部品点数を抑えることでコストを低減させ、組立・分解の両方に適用出来、コネクタの外郭部品点数が1点であるために内部構造の変化を危惧せずに光コネクタを組み立てられることが出来る。
【0077】
また、万が一テーパ部が破損しても交換可能になっており、メンテナンス性も確保している。
【0078】
また、本発明によれば、光コネクタ受けスライド10、フェルール受けスライド30等のスライド機構を用いることにより特願2006−334694号に記載される金属板1枚で形成される光コネクタを、場所を選ばずに簡単に組立・分解することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上の説明の通り、本発明のコネクタ組立治具によれば、光通信等に用いる光コネクタの組み立て分解に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施例に係る光コネクタを示す斜視図である。
【図2】図1のコネクタのフェルールを示す斜視図である。
【図3】(a)および(b)は、光コネクタ50を斜め正面および斜め背面からそれぞれ眺めた斜視図である。
【図4】図1に示した光コネクタ装置のハウジング80の一部の断面を示している。
【図5】図1に示したハウジング80を180度回転した状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態による組立冶具を示す斜視図である。
【図7】(a),(b)及び(c)は図6の組立治具の使用例を示す斜視図である。
【図8】(a),(b)及び(c)は図6の組立治具の使用例を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施例2による組立治具の斜視図である。
【図10】(a)は、特許文献1の光コネクタ105のフェルール抜き出し状態を示す図である。(b)は、特許文献1の光コネクタ105の一部破断側面図である。
【図11】(a)は特許文献2による全体の斜視図である。(b)はストッパー4がコイルスプリング5の反力(拡張力)によって外郭部材2から押し出された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 光コネクタ受け凹部
2 突起部
5 光コネクタ部
10 光コネクタ受けスライド(光コネクタ収容部)
11 ガイド溝
20 テーパ部(当節部)
21 フェルール押さえ部
30 フェルール受けスライド(フェルール収容部)
40 本体部
50 光コネクタ(保持部材)
51 凸部
52 当接部
53 弾性片
54 首部
55 結合部
56 基部
57 第1の梁部
58 第2の梁部
59 切欠き部
60 フェルール
61 フェルール本体
62 フランジ部
63 円周部
64 被位置決め部(切欠き部)
70 光ケーブル
71 光ファイバ
80 ハウジング
83 ハウジング本体
83a 一面
84 嵌合部
85a 第1側面
85b 第2側面
85c 第1溝部
85d 第2溝部
86a 第3側面
86b 第4側面
86c 第3溝部
86d 第4溝部
87 嵌合面
87a 挿通孔
90 アダプタ
100 組立治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コネクタを組み立てる組立治具において、前記光コネクタは、光ファイバを保持したフェルールを保持し弾性を有する一対の梁部を備え、
前記組立冶具は、本体部と、前記本体部に移動自在に保持され前記光コネクタを収容する光コネクタ収容部と、前記本体部に移動自在に保持され前記フェルールを収容するフェルール収容部と、前記一対の梁部と当接し前記一対の梁部を外方へ広げる当接部とを有し、
前記光コネクタを前記光コネクタ収容部に収容保持し、前記光コネクタ収容部を移動させて前記当接部により前記一対の梁部を外方へ広げ、前記フェルールを前記フェルール収容部に収容保持し、前記フェルール収容部を前記光コネクタ収容部に向けて移動させることにより、光コネクタを組み立てることを特徴とする光コネクタ組立治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−115864(P2009−115864A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285580(P2007−285580)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】