説明

光コネクタ

【課題】光コネクタについて、光ファイバケーブルの延出方向と交差する方向の力による不具合を抑制する。
【解決手段】ハウジング23は、被収容部11の延出方向の全体に亘って設けられ、かつ、被収容部11の周方向における少なくとも一部を露出状態とする第1ハウジング24と、露出状態とされた被収容部11を覆うように第1ハウジング24に組み付けられる第2ハウジング44と、を備え、ハウジング23の外面には、第1ハウジング24と第2ハウジング44との組み付け状態を保持する保持部55が外方側に突出して設けられており、ハウジング23の外面のうち、保持部55が形成された面における保持部55の近傍には、作業者が摘むことが可能な摘み部38が外方側に突出して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光コネクタとして、特許文献1に記載のものが知られている。この光コネクタは、四角型筒状の前部プラグハウジングの軸線方向の後方に四角形状のエクステンダが配されており、これらの間にフェルール組立体が収容されている。そして、光コネクタの後端から光ファイバケーブル(光ファイバコード)が延出されている、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−8209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車などの車両の内部に光コネクタが配される場合には、光ファイバケーブルを配策する際に、光ファイバケーブルが当該光ファイバケーブルの延出方向(軸線方向)に対して交差する方向に引っ張られることがある。また、車両の走行時の振動などによっても、同様な力が加わることも考えられる。
【0005】
ここで、特許文献1のように、光コネクタが前部プラグハウジングとエクステンダによって延出方向(軸線方向)に分割された構成であると、光ファイバケーブルについて延出方向(軸線方向)と交差する方向の力が生じると、この力が前部プラグハウジングとエクステンダとの境界部分に及んで当該境界部分が折曲がる方向の力を受け、内部のフェルール組立体や光ファイバ等に不具合が生じることが懸念される。特許文献1では、エクステンダの後方に設けられた回動枢軸部が回動軸を中心に回動するように構成されており、前部プラグハウジングの軸線方向(延出方向)と交差する方向の力等をある程度吸収することができると考えられるが、この場合、回動枢軸部を設ける分だけ光コネクタの構成が複雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、光ファイバケーブルの延出方向と交差する方向の力による不具合を抑制することが可能な光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光ファイバケーブルの端末部から露出させた光ファイバを収容するフェルールから前記光ファイバケーブルの端末部に亘って延出された被収容部と、前記被収容部を収容するハウジングと、を備える光コネクタであって、前記ハウジングは、前記被収容部の延出方向の全体に亘って設けられ、かつ、前記被収容部の周方向における少なくとも一部を露出状態とする第1ハウジングと、前記露出状態とされた前記被収容部を覆うように前記第1ハウジングに組み付けられる第2ハウジングと、を備え、前記ハウジングの外面には、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの組み付け状態を保持する保持部が外方側に突出して設けられており、前記ハウジングの外面のうち、前記保持部が形成された面における前記保持部の近傍には、作業者が摘むことが可能な摘み部が外方側に突出して設けられているところに特徴を有する。
【0008】
本構成によれば、ハウジングは、被収容部の延出方向の全体に亘って設けられるため、光ファイバケーブルについて延出方向に対して交差する方向の力を受けたとしても、複数のハウジングが延出方向に分断された構成と比較して、被収容部側に力が与えられにくい。よって、光ファイバケーブルの延出方向と交差する方向の力による不具合を抑制することが可能となる。
また、第1ハウジングについて被収容部の周方向における少なくとも一部を露出状態とし、第2ハウジングについて露出状態とされた被収容部を覆うように第1ハウジングに組み付けるようにすることで、被収容部を保持する構成を簡素化することが容易になる。
【0009】
ここで、ハウジングの外面には、第1ハウジングと第2ハウジングとの組み付け状態を保持する保持部が外方側に突出して設けられる場合がある。
この場合、相手側の光コネクタを嵌合させる際に、作業者が、ハウジングの外面の保持部を摘んでしまうと、その力により、第1ハウジングと第2ハウジングとの組み付け状態が解除されるという不具合が生じることが懸念される。
【0010】
本構成によれば、ハウジングの外面のうち、保持部が形成された面における保持部の近傍には、作業者が摘むことが可能な摘み部が外方側に突出して設けられているため、この摘み部を摘むことで、第1ハウジングと第2ハウジングとの組み付け状態が解除されるという不具合を抑制することが可能になる。
【0011】
上記構成の実施態様として以下の構成を有すれば好ましい。
・前記摘み部は、前記被収容部の延出方向に沿って設けられるとともに、前記光ファイバケーブル側に向けて段差状に突出寸法を小さくした滑り防止部が設けられている。
このようにすれば、相手側コネクタとの嵌合の際に滑り防止部を摘むようにすれば、手の滑りが抑制され、相手側コネクタとの嵌合が容易になる。
【0012】
・前記摘み部は、前記保持部の縁部に沿って設けられている。
このようにすれば、摘み部が保持部の縁部に沿って設けられているため、より確実に保持部の係止状態が解除される不具合を防止することが可能になる。
【0013】
・前記摘み部は、鉤状に設けられている。
このようにすれば、摘み部は、保持部の縁部に沿った鉤状に設けられているため、摘み易くなるだけでなく、ハウジングの強度を高めることが可能になる。
【0014】
・前記保持部は、前記第1ハウジングに設けられる被係止突部と、前記第2ハウジングに設けられ係止孔が貫通形成された係止枠とからなり、前記被係止突部に前記係止孔の孔縁が係止されることにより第1ハウジングと第2ハウジングとの組み付け状態が保持されるものであり、前記保持部は、前記係止枠の近傍に設けられている。
このようにすれば、係止枠の被係止突部への係止が解除される不具合を抑制することが可能になる。
【0015】
・前記摘み部の突出寸法は、前記保持部における前記ハウジングの外面からの寸法とほぼ等しいか、又は、前記保持部における前記ハウジングの外面からの寸法より大きく設定されている。
このようにすれば、第1ハウジングと第2ハウジングとの組み付け状態が解除される不具合を、より一層抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光コネクタについて、光ファイバケーブルの延出方向と交差する方向の力による不具合を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る光コネクタを示す背面図
【図2】光コネクタを示す底面図
【図3】図2のA−A断面図
【図4】第1ハウジングを示す平面図
【図5】第1ハウジングを示す側面図
【図6】第1ハウジングを示す底面図
【図7】第1ハウジングを示す正面図
【図8】第1ハウジングを示す背面図
【図9】図4のB−B断面図
【図10】図4のC−C断面図
【図11】図5のD−D断面図
【図12】図7のE−E断面図
【図13】第2ハウジングを示す平面図
【図14】第2ハウジングを示す側面図
【図15】図13のF−F断面図
【図16】第2ハウジングを示す底面図
【図17】第2ハウジングを示す正面図
【図18】第2ハウジングを示す背面図
【図19】図13のG−G断面図
【図20】図17のH−H断面図
【図21】第1ハウジングに被収容部が露出状態で収容された状態を示す底面図
【図22】第2ハウジングを傾斜した姿勢で第1ハウジングに組み付けようとする状態を示す図
【図23】コイルばねが挿通凹部の支持部に当接した状態を示す図
【図24】コイルばねを弾性収縮させた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図1から図24を参照して説明する。
本実施形態の光コネクタ10は、自動車等の車両の情報通信機器に接続されて車両内に配策された光ファイバケーブル間を接続するものである。以下では、上下方向については、図3を基準とし、図3の左方を前方、右方を後方として説明する。
【0019】
光コネクタ10は、図3に示すように、フェルール12から光ファイバケーブル17の端末部に亘って延出された被収容部11と、被収容部11が収容されるハウジング23とを有する。
被収容部11は、光ファイバ17Aの先端部を収容するフェルール12と、フェルール12を後方から付勢するコイルばね16(弾性部材)と、光ファイバケーブル17の端末部に取り付けられるケーブル固定部材18とを備える。
【0020】
フェルール12は、光ファイバ17Aの先端部を保持するものであり、フェルール12の中央に形成されたファイバ保持孔に光ファイバ17Aが接着剤などによって固定されている。
フェルール12は、棒状部13と、棒状部13の後方に連なり棒状部13よりも径が大きい鍔状部14と、鍔状部14の後方にて段差状に径が小さくなりコイルばね16が通されるバネ挿通部15とを備える。
【0021】
棒状部13は、円筒形状であって、その先端部の周縁には全周に傾斜面が形成されている。
鍔状部14は、棒状部13よりも径が大きくされており、先端側には、棒状部13に連なり全周に亘って傾斜状に径が大きくなる傾斜部が形成されている。
バネ挿通部15は、円柱状であって、コイルばね16の内側に挿通可能な外径で形成されている。
【0022】
コイルばね16は、被収容部11がハウジング23に収容された状態では、弾性収縮した状態で第2ハウジング44に後方から支持されている。
光ファイバケーブル17は、光ファイバ17Aと、光ファイバケーブル17の引っ張り強度を確保する補強素線17Bと、これらを覆うシース17Cとを有する。
【0023】
光ファイバケーブル17は、中心を通る光ファイバ17Aと、光ファイバ17Aの周面を包囲する補強素線17Bと、光ファイバ17A及び補強素線17Bの外周を覆う絶縁被覆であるシース17Cとからなる。
光ファイバ17Aは、光ファイバケーブル17の先端から所定長さ露出しており、その露出した先端部がフェルール12に保持されている。
光ファイバケーブル17のシース17Cは、先端側から所定長さのスリット状の切り込み(図示しない)が形成されている。シース17Cの内側の補強素線17Bは、切り込みを通して、シース17Cの外側に出されている。
光ファイバケーブル17の端末部(シース17Cの先端部)には、ケーブル固定部材18が取り付けられている。
【0024】
ケーブル固定部材18は、カシメリング19とストップリング20とからなる。
カシメリング19は、例えばアルミニウムで形成された段差のある筒状の部材であり、円筒形状の大径筒部19Aと、大径筒部19Aから段差状に径が小さくされた円筒形状の小径筒部19Bとからなる。小径筒部19Bの内周には、シース17Cに固定するための食い込み凸部19Cが形成されている。
ストップリング20は、例えばステンレスや真鍮で形成された筒状の部材である。
【0025】
ケーブル固定部材18の光ファイバケーブル17への固定は、カシメリング19を光ファイバケーブル17の外周に挿通するとともに、ストップリング20を光ファイバケーブル17の外周に挿通する。次に、ストップリング20の外周と、カシメリング19の大径筒部19Aとの間に補強素線17Bを挟む。この状態で、カシメリング19の大径筒部19Aをかしめ付けると補強素線17Bがカシメリング19とストップリング20との間に固定される。また、小径筒部19Bをかしめ付けることで食い込み凸部がシース17Cに食い込み、カシメリング19が光ファイバケーブル17に固定される。即ち、光ファイバケーブル17の端末部がケーブル固定部材18に固定される。なお、カシメリング19の大径筒部19Aの内側、および、ストップリング20の外側に、例えばローレット加工などを施し、これらの間に挟み込まれる補強素線17Bが抜けにくいようにするとよい。
【0026】
そして、このようなケーブル固定部材18を光ファイバケーブル17に固定することで、光ファイバケーブル17の端末部には、ストップリング20、補強素線17B、及び、大径筒部19Aによって、シース17Cの外周面よりも光ファイバケーブル17の径方向に突き出た環状凸部21が形成されている。
【0027】
ハウジング23は、合成樹脂製であって、被収容部11の延出方向の全体に亘って被収容部11の周方向の少なくとも一部を覆うように設けられ、かつ、被収容部11の周方向における少なくとも一部を露出状態とする第1ハウジング24と、露出状態とされた被収容部11を覆うように第1ハウジング24に組み付けられる第2ハウジング44と、を備えている。
【0028】
第1ハウジング24は、フェルール12について周方向の全周に亘って包囲した状態で収容する包囲収容部25と、包囲収容部25の後方側に連なり、光ファイバケーブル17の端末部について周方向の一部を露出状態で収容する露出収容部33と、が一体に形成されている。
【0029】
包囲収容部25は、箱形状をなしており、この包囲収容部25の外面が相手側コネクタ(図示しない)と嵌合する嵌合部26となる。
包囲収容部25は、図7に示すように、それぞれ被収容部11の前方側を収容可能な左右2個(複数)の第1収容室27を備えている。
【0030】
各第1収容室27は、被収容部11が収容可能な空間を包囲する隔壁34を有しており、図12に示すように、前端の開口部28Aから露出収容部33側に設けられた後端の開口部28Bまで連通する連通孔28を有する。
隔壁34は、前後方向の中間部に、連通孔28の孔径を段差状に縮径してフェルール12の前方への位置決めをする前止まり部30を備えている。
【0031】
前止まり部30は、隔壁34を全周に亘って内方側に突出させたものであり、前端が段差状に突出するとともに、後方側には、傾斜状に突出寸法が小さくなる傾斜面が形成されている。そして、棒状部13が前止まり部30の内側を通って前方の連通孔28内に突出している。
包囲収容部25の上面部には、前端部を基端として後方の露出収容部33側まで延出されてなるロックアーム31が設けられている。ロックアーム31は、相手側の雄型の光コネクタとの嵌合状態のロック及びその解除のために設けられており、相手側の光コネクタの筒状に開口するフード部(図示しない)に係止するロック凸部32を有する。
【0032】
露出収容部33は、包囲収容部25の底面25Aを無くして被収容部11を露出させる形状である。
露出収容部33の底面33Aは、平坦な形状であって、光ファイバケーブル17の端末部のうち環状凸部21が配される位置には、円弧状の内面を有するように厚肉とされた第1凹状部35が形成されている。
【0033】
第1凹状部35のうち、上端部分は、第1凹状部35を貫通する貫通孔36が形成されている。
露出収容部33の両側面には、上方に起立する保護壁43が設けられている。保護壁43がロックアーム31の両側に設けられることで、ロックアーム31に誤って触れないようになっている。
【0034】
保護壁43の外面には、図5に示すように、被係止突部37が側方側に突出している。
被係止突部37は、上端が段差状に外方に突出し、下方側に向けて突出寸法が傾斜状に小さくなる傾斜面を有する。
また、保護壁43の外面には、作業者が摘むことが可能なL字状(鉤状)の摘み部38が外方に突出形成されている。
【0035】
摘み部38は、第2ハウジング44の係止枠53が配される部分の近傍であって、係止枠53の縁部に沿うように設けられており、前後方向(係止枠53の並び方向)に延びる第1摘み部39と、第1摘み部39の前端に連なり下方に延びる第2摘み部42とからなる。
第1摘み部39の後端部には、階段状(カスケード状)に突出寸法が小さくなる滑り防止部40が設けられている。
【0036】
滑り防止部40は、後方側に向けて階段状に突出寸法を小さくする3個の段差部41A〜41Cが等間隔で並んで設けられている。
第2摘み部42は、露出収容部33の前端部に設けられており、相手側光コネクタ10との嵌合の際には、相手側光コネクタ10の後端部が、この第2摘み部42に近い前方に配される。
摘み部38の突出寸法は、段差部41A〜41C以外の突出寸法が一定であって、図1に示すように、被係止突部37の突出寸法よりも大きく、(第2ハウジング44が組み付けられた際の)係止枠53の厚み寸法(第1ハウジング24からの突出寸法)とほぼ等しい寸法とされている。
【0037】
第2ハウジング44は、図15に示すように、第1ハウジング24の露出収容部33を覆うカバー部45と、カバー部45の側端部から起立する複数の係止枠53とを備えており、この第2ハウジング44が第1ハウジング24に組み付けられることで、被収容部11の後方側が収容される第2収容室54が形成される。
【0038】
カバー部45は、前端部に設けられコイルばね16が挿通される挿通凹部46と、後端部に設けられ光ファイバケーブル17の端末部を保持する保持凹部49と、挿通凹部46と保持凹部49との間に設けられ第1ハウジング24との間に光ファイバ17Aが挿通される空間を形成する板状部51とを備える。
【0039】
挿通凹部46は、内面が円弧状の隔壁47と、隔壁47の後端部において内方側に縮径してコイルばね16を後方から支持する支持部48とを有する。隔壁47は、その先端部が前方に突出する形状をなしており、第2ハウジング44が第1ハウジング24に組み付けられると、隔壁47の先端部(挿通凹部46の前端部)は、第1収容室27内に配される。
【0040】
挿通凹部46の前端のうちの幅方向の中間部には、後方に切欠かれた切欠き部46Aが設けられており、この切欠き部46Aの後端は、第2ハウジング44の組み付けの際に第1ハウジング24に当接して第2ハウジング44の前端位置を定める位置決め部46Bとされている。
保持凹部49は、光ファイバケーブル17の端末部の周方向の下側部分が嵌まり込んで保持されるものであり、環状凸部21が嵌まり込む第2凹状部50を備える。
【0041】
第2凹状部50は、円弧状の内面を有し、その下端に第2凹状部50を貫通する長方形状の貫通孔50Aが形成されている。
そして、この第2凹状部50と第1ハウジング24の第1凹状部35とが環状に連なることで環状凸部21が嵌まり込む環状凹部52が形成され、環状凸部21が嵌まり込んだ状態では、環状凸部21の外周面の上端部及び下端部が貫通孔36,50Aに露出する。
係止枠53は、カバー部45の左右にそれぞれ、前後一対設けられている。各係止枠53は、コ字状であって、その内側に上下方向に長い長方形状の係止孔53Aが貫通形成されている。そして、第1ハウジング24の被係止突部37が第2ハウジング44の係止枠53の係止孔53Aの孔縁に係止されることにより、第1ハウジング24と第2ハウジング44とが組み付け状態に保持されるようになっており、係止枠53及び係止突部37が第1ハウジング24と第2ハウジング44とを組み付け状態に保持する保持部55とされる。
【0042】
次に、光コネクタ10の組み付けについて説明する。
ケーブル固定部材18を光ファイバケーブル17の端末部に固定し、光ファイバケーブル17から所定長むき出しにした光ファイバ17Aにコイルばね16を挿通して光ファイバ17Aの先端部をフェルール12内部に装着する。そして、このフェルール12を第1ハウジング24の第1収容室27内に突き当たるまで挿入し、コイルばね16の先端側をバネ挿通部15に挿通する。また、光ファイバケーブル17の端末部の環状凸部21を第1ハウジング24の第1凹状部35に嵌め込む(図21)。
【0043】
次に、図22に示すように、第2ハウジング44を傾斜した姿勢で第1ハウジング24の開口部28Bに近づける。そして、コイルばね16が挿通凹部46に挿通され、さらに第2ハウジング44が近づくと、図23に示すように、支持部48がコイルばね16の後端部に当接してコイルばね16を弾性収縮させる。そして、コイルばね16を弾性収縮させていくと、第1ハウジング24の開口部28Bが挿通凹部46の位置決め部46Bに当接する(図24)。なお、挿通凹部46の先端の逃げ部46Cを露出収容部33の底面33Aから連通孔28にかけて摺接させて第2ハウジング44を組み付けるようにしてもよい。
そして、この状態から第2ハウジング44の位置決め部46Bを支点として回転させ、第2ハウジング44を露出状態の被収容部11を覆うように被せる。このとき、係止枠53が被係止突部37に当接して撓み変形し、係止枠53が復元変形すると被係止突部37が係止孔53Aの孔縁に係止されて第2ハウジング44が第1ハウジング24に組み付けられた状態に保持される(図3)。このとき、環状凸部21は、貫通孔36,50Aにより外部に露出する。
【0044】
本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏する。
(1)光ファイバケーブル17の端末部から露出させた光ファイバ17Aを収容するフェルール12から光ファイバケーブル17の端末部に亘って延出された被収容部11と、被収容部11を収容するハウジング23と、を備える光コネクタ10であって、ハウジング23は、被収容部11の延出方向の全体に亘って設けられ、かつ、被収容部11の周方向における少なくとも一部を露出状態とする第1ハウジング24と、露出状態とされた被収容部11を覆うように第1ハウジング24に組み付けられる第2ハウジング44と、を備え、ハウジング23の外面には、第1ハウジング24と第2ハウジング44との組み付け状態を保持する保持部55が外方側に突出して設けられており、ハウジング23の外面のうち、保持部55が形成された面における保持部55の近傍には、作業者が摘むことが可能な摘み部38が外方側に突出して設けられている。
【0045】
本実施形態によれば、ハウジング23は、被収容部11の延出方向の全体に亘って設けられるため、光ファイバケーブル17について延出方向に対して交差する方向の力を受けたとしても、複数のハウジング23が延出方向に分断された構成と比較して、被収容部11側に力が与えられにくい。よって、光ファイバケーブル17の延出方向と交差する方向の力による不具合を抑制することが可能となる。
また、第1ハウジング24について被収容部11の周方向における少なくとも一部を露出状態とし、第2ハウジング44について露出状態とされた被収容部11を覆うように第1ハウジング24に組み付けるようにすることで、被収容部11を保持する構成を簡素化することが容易になる。
【0046】
ここで、ハウジング23の外面には、第1ハウジング24と第2ハウジング44との組み付け状態を保持する保持部55が外方側に突出して設けられる場合がある。
この場合、相手側の光コネクタを嵌合させる際に、作業者が、ハウジング23の外面の保持部55を摘んでしまうと、その力により、両コネクタの組み付け状態が解除されるという不具合が生じることが懸念される。
本実施形態によれば、ハウジング23の外面のうち、保持部55が形成された面における保持部55の近傍には、作業者が摘むことが可能な摘み部38が外方側に突出して設けられているため、この摘み部38を摘むことで、第1ハウジング24と第2ハウジング44との組み付け状態が解除されるという不具合を抑制することが可能になる。
【0047】
(2)摘み部38は、被収容部11の延出方向に沿って設けられるとともに、光ファイバケーブル17側に向けて階段状(段差状)に突出寸法を小さくした滑り防止部40が設けられている。
このようにすれば、相手側コネクタとの嵌合の際に滑り防止部40を摘むようにすれば、手の滑りが抑制され、相手側コネクタとの嵌合が容易になる。
【0048】
(3)摘み部38は、保持部55の縁部に沿って設けられている。
このようにすれば、摘み部38が保持部55の縁部に沿って設けられているため、より確実に係止状態が解除される不具合を防止することが可能になる。
【0049】
(4)摘み部38は、L字状(鉤状)に設けられている。
このようにすれば、摘み部38は、保持部55の縁部に沿ったL字状に設けられているため、摘み易くなるだけでなく、第1ハウジング24の強度を高めることが可能になる。
【0050】
(5)保持部55は、第1ハウジング24に設けられる被係止突部37と、第2ハウジング44に設けられ係止孔53Aが貫通形成された係止枠53とからなり、被係止突部37に係止孔53Aの孔縁が係止されることにより第1ハウジング24と第2ハウジング44との組み付け状態が保持されるものであり、保持部55は、係止枠53の近傍に設けられている。
このようにすれば、係止枠53の被係止突部37への係止が解除される不具合を抑制することが可能になる。
【0051】
(6)摘み部38の突出寸法は、係止枠53(保持部55)における第1ハウジング24(ハウジング)の外面からの寸法とほぼ等しく設定されている。
このようにすれば、第1ハウジング24と第2ハウジング44との組み付け状態が解除される不具合を、より一層抑制することが可能になる。
【0052】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、第1ハウジング24には、被収容部11のうちフェルール12について周方向の全周に亘って包囲した状態で収容する包囲収容部25を設けることとしたが、これに限られない。例えば、第1ハウジングに包囲収容部25を設けず、第1ハウジングを被収容部11の延出方向の全体を露出状態で収容するように構成し、第2ハウジングについては被収容部11の露出状態とされた延出方向の全体を覆うようにしてもよい。
【0053】
(2)上記実施形態では、摘み部38の第1ハウジング24の外面からの突出寸法を係止枠53の厚み寸法とほぼ等しい寸法としたが、これに限られない。例えば、摘み部38の突出寸法を係止枠53の厚み寸法(第1ハウジング24の外面からの突出寸法)より小さくしたり、大きくしてもよい。なお、この場合、摘み部38の突出寸法を係止枠53の厚み寸法(保持部の突出寸法)より大きくした方が、より第1ハウジングと第2ハウジングとの組み付け状態が解除されるという不具合を抑制できるため好適である。
【0054】
(3)第2ハウジング44を組み付け状態に保持する構成として、第1ハウジング24に被係止突部37を設け、第2ハウジング44に係止枠53を設ける構成としたが、これに限られず、第1ハウジングと第2ハウジングとの組み付け状態が保持される構成であればよい。例えば、第1ハウジング側に係止枠を設け、第2ハウジング側に係止突部を設けるようにしてもよい。即ち、第1ハウジング及び第2ハウジングに互いに保持し合う保持部を設けるようにすればよい。
【0055】
(4)上記実施形態では、摘み部38は、L字状としたが、これに限られない。例えば、90度以外の所定の角度を有して屈曲した鉤状や、湾曲した曲線形状であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…光コネクタ
11…被収容部
12…フェルール
16…コイルばね(弾性部材)
17…光ファイバケーブル
17A…光ファイバ
17B…補強素線(包囲部材)
17C…シース
18…ケーブル固定部材
19…カシメリング
19A…大径筒部
19B…小径筒部
20…ストップリング
21…環状凸部
23…ハウジング
24…第1ハウジング
25…包囲収容部
27…第1収容室
28…連通孔
28A,28B…開口部
30…前止まり部
30A…段差部
30B…傾斜面
31…ロックアーム
33…露出収容部
33A…底面
34…隔壁
35…第1凹状部
36…貫通孔
37…被係止突部
38…摘み部
39…第1摘み部
40…滑り防止部
41A〜41C…段差部
42…第2摘み部
43…保護壁
44…第2ハウジング
45…カバー部
46…挿通凹部
46A…切欠き部
46B…位置決め部
46C…逃げ部
47…隔壁
48…支持部
49…保持凹部
50…第2凹状部
50A…貫通孔
52…環状凹部
53…係止枠
53A…係止孔
54…第2収容室
55…保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルの端末部から露出させた光ファイバを収容するフェルールから前記光ファイバケーブルの端末部に亘って延出された被収容部と、前記被収容部を収容するハウジングと、を備える光コネクタであって、
前記ハウジングは、前記被収容部の延出方向の全体に亘って設けられ、かつ、前記被収容部の周方向における少なくとも一部を露出状態とする第1ハウジングと、前記露出状態とされた前記被収容部を覆うように前記第1ハウジングに組み付けられる第2ハウジングと、を備え、
前記ハウジングの外面には、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの組み付け状態を保持する保持部が外方側に突出して設けられており、
前記ハウジングの外面のうち、前記保持部が形成された面における前記保持部の近傍には、作業者が摘むことが可能な摘み部が外方側に突出して設けられている光コネクタ。
【請求項2】
前記摘み部は、前記被収容部の延出方向に沿って設けられるとともに、前記光ファイバケーブル側に向けて段差状に突出寸法を小さくした滑り防止部が設けられている請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記摘み部は、前記保持部の縁部に沿って設けられている請求項1または請求項2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記摘み部は、鉤状に設けられている請求項3に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記保持部は、前記第1ハウジングに設けられる被係止突部と、前記第2ハウジングに設けられ係止孔が貫通形成された係止枠とからなり、前記被係止突部に前記係止孔の孔縁が係止されることにより第1ハウジングと第2ハウジングとの組み付け状態が保持されるものであり、
前記保持部は、前記係止枠の近傍に設けられている請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記摘み部の突出寸法は、前記保持部における前記ハウジングの外面からの寸法とほぼ等しいか、又は、前記保持部における前記ハウジングの外面からの寸法より大きく設定されている請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の光コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−83881(P2013−83881A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224999(P2011−224999)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】