説明

光ディスク装置、チルト補正方法、プログラム、情報生成方法

【課題】対物レンズの偏重心や2軸アクチュエータの磁気推力偏りに起因して、対物レンズがトラッキング方向に偏倚したときにはチルトが発生する(ACチルト)。このACチルトの補正を実現する。
【解決手段】実際に対物レンズのトラッキング方向への偏倚量を測定し、当該測定したトラッキング偏倚量と、予め設定されたトラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を表す対応関係情報とに基づき、チルト補正を行う。これにより、トラッキングサーボ制御に伴って上記対物レンズがトラッキング方向に偏倚されることで生じるACチルトを補正することができる。また、上記対応関係情報を光ディスク装置自らが測定を行って作成するようにしておけば、光ディスク装置の個体ごとの特性に応じて正確なACチルト補正が行われるようにできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光ディスク記録媒体についての記録又は再生を行う光ディスク装置とそのチルト補正方法、及び光ディスク装置において実行されるべきプログラムに関する。また、対物レンズのトラッキング方向への偏倚に応じて生じるチルトの補正にあたって必要とされるトラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を表す対応関係情報の生成方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2000−207760号公報
【特許文献2】特開2010−257542号公報
【背景技術】
【0003】
例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-lay Disc:登録商標)などの光ディスク記録媒体(以下、光ディスクとも表記)が広く普及している。
【0004】
光ディスクについて記録又は再生を行う光ディスク装置では、光ディスクの記録面に対するレーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトを補正する機能を具備するものがある。チルトに伴い生じるコマ収差によりサーボや記録/再生性能の低下が生じることを防止するためである。
【0005】
なお、従来のチルト補正機能を具備する光ディスク装置については、例えば上記特許文献1や特許文献2にも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、従来、チルト補正と言ったときは、例えばディスクの反りに起因したもの(いわゆるディスクチルト)や光学部品の組み付け精度等に依存した対物レンズの傾きに起因したもの等の抑制を目的として為されるものを指す。
【0007】
しかしながら、チルトとしては、図17に示すような対物レンズユニット100の偏重心等に起因したものも生じ得ることが分かってきた。
図17において、対物レンズユニット100は、不図示の2軸アクチュエータによりトラッキング方向(紙面横方向)とフォーカス方向(紙面縦方向)とに変位可能に保持されている。図17では、対物レンズユニット100が上記2軸アクチュエータによってそのニュートラル位置(中心C)からトラッキング方向における各方向に偏倚された場合の様子を示している。
【0008】
図示するように対物レンズユニット100の重心に偏り(特にフォーカス方向における偏り)があると、2軸アクチュエータによりアームを介してトラッキング方向への推力が与えられた際、対物レンズユニット100には、その自重の作用により、重心を基点として回転する力も加わることになる。このような回転方向への力の発生により、対物レンズユニット100には、ニュートラル位置からトラッキング方向への偏倚に応じたチルトが生じることになる。
この際のチルト発生量は、トラッキング方向への偏倚量に応じた値となる。
【0009】
また、トラッキング偏倚に応じた対物レンズユニット100の傾きは、このような対物レンズユニット100の偏重心に起因したもの以外にも、2軸アクチュエータの磁気推力の偏りに起因して生じる場合もある。
つまり、トラッキング方向への偏倚に応じた対物レンズユニット100の傾きは、対物レンズユニット100の偏重心、2軸アクチュエータの磁気推力の偏りの2つの要因で主に生じるものであり、これらの偏りは個体ごとに異なるものであるから、個体ごとに異なる態様によるチルトが生じるものとなる。
なお、磁気推力の偏りに起因するものでも、偏重心の場合と同様に、対物レンズユニット100の傾き量はトラッキング偏倚量に応じた大きさとなる。
【0010】
ここで、光ディスク装置では、記録や再生時において、ディスク偏芯に追従するためのトラッキングサーボを行うようにされている。この点を考慮すると、上記のようにトラッキング方向への偏倚に応じて対物レンズユニット100に傾きが生じるということは、記録/再生時には、ディスク偏芯の周期に応じていわばAC的にチルトが生じるということになる(以下、ACチルトとも称する)。
【0011】
このようなACチルトの発生により、記録/再生時には周期的なコマ収差が生じるものとなり、結果、サーボ性能や再生信号の読み取り性能の悪化、及び記録信号品質の悪化等を招くという問題がある。
【0012】
本技術はかかる問題点に鑑み為されたものであり、対物レンズのトラッキング方向への偏倚に応じて生じるACチルトの補正を実現することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このため本技術では、光ディスク装置について、以下の第1の構成を提案する。
つまり、本技術の第1の構成としての光ディスク装置は、光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光照射を行うと共に、上記光ディスク記録媒体からの上記レーザ光の戻り光を上記対物レンズを介して受光する光照射/受光部を備える。
また、上記対物レンズを上記光ディスク記録媒体の半径方向に平行な方向であるトラッキング方向に変位させるトラッキング機構を備える。
また、上記光ディスク記録媒体の記録面に対する上記レーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトを調整するチルト調整機構を備える。
また、上記光照射/受光部が上記戻り光を受光して得られる受光信号に基づき、上記光ディスク記録媒体に形成されたトラックに対する上記レーザ光の照射スポットの上記トラッキング方向におけるずれ量を表すトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成部を備える。
また、上記トラッキングエラー信号に基づき上記対物レンズについてのトラッキングサーボ制御を行うトラッキングサーボ制御部を備える。
また、上記受光信号に基づき、上記トラッキング機構により保持される上記対物レンズのニュートラル位置からの上記トラッキング方向におけるずれ量としてのトラッキング偏倚量を測定する偏倚量測定部を備える。
また、少なくとも上記トラッキング偏倚量とその偏倚量に対応するチルト補正量との関係を示す対応関係情報が記憶された記憶部を備える。
また、上記偏倚量測定部が測定した上記トラッキング偏倚量と上記対応関係情報とから特定されるチルト補正量の値に基づいて、上記チルト調整機構が駆動されるように制御することで、上記対物レンズが上記ニュートラル位置から上記トラッキング方向に偏倚することで生じるチルトの補正を実行させる制御部を備えるようにした。
【0014】
また、本技術では、光ディスク装置として以下の第2の構成も提案する。
つまり、本技術の第2の構成としての光ディスク装置は、光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光照射を行うと共に、上記光ディスク記録媒体からの上記レーザ光の戻り光を上記対物レンズを介して受光する光照射/受光部を備える。
また、上記対物レンズを上記光ディスク記録媒体の半径方向に平行な方向であるトラッキング方向に変位させるトラッキング機構を備える。
また、上記光ディスク記録媒体の記録面に対する上記レーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトを調整するチルト調整機構を備える。
また、上記光照射/受光部が上記戻り光を受光して得られる受光信号に基づき、上記光ディスク記録媒体に形成されたトラックに対する上記レーザ光の照射スポットの上記トラッキング方向におけるずれ量を表すトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成部を備える。
また、上記トラッキングエラー信号に基づき上記対物レンズについてのトラッキングサーボ制御を行うトラッキングサーボ制御部を備える。
また、上記光照射/受光部が上記戻り光を受光して得られる受光信号に基づき、上記トラッキング機構により保持される上記対物レンズのニュートラル位置からの上記トラッキング方向におけるずれ量としてのトラッキング偏倚量を測定する偏倚量測定部を備える。
また、上記受光信号に基づき、チルトの発生量に応じてその値が変化するチルト発生量評価指標としてのチルト評価値を生成する評価値生成部を備える。
さらに、上記対物レンズが所定の偏倚量だけ偏倚した状態で上記評価値生成部にて得られたチルト評価値を取得し、取得したチルト評価値に基づいて上記所定の偏倚量に対応して設定されるべきチルト補正量を求め、この求めたチルト補正量と上記所定の偏倚量との対応関係に基づいて、少なくともトラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を示す対応関係情報を生成する対応関係情報生成部を備えるものである。
【0015】
上記第1の構成としての光ディスク装置では、実際に対物レンズのトラッキング方向への偏倚量を測定し、予め記憶部に記憶された、トラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を表した対応関係情報と、上記測定した偏倚量とから特定されるチルト補正量の値に基づいて、チルト補正を行うものとしている。
これにより、トラッキングサーボ制御に伴って上記対物レンズがトラッキング方向に偏倚されることで生じるACチルトを補正することができる。
【0016】
また、上記第2の構成としての光ディスク装置によれば、光ディスク装置の個体ごとに、その個体の特性に合った上記対応関係情報を作成することができる。つまりこの結果、対応関係情報を用いて行われるACチルトの補正が、その個体の特性に応じて正確に行われるようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
上記のように本技術によれば、対物レンズの偏重心や2軸アクチュエータの磁気推力の偏りに起因して生じるACチルトの補正を実現することができる。
また、ACチルトの補正値を得るにあたって参照する偏倚量/チルト補正量についての対応関係情報を個体ごとに作成することで、ACチルトの補正がより正確なものとなるようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態としての光ディスク装置の内部構成を示した図である。
【図2】偏倚/補正量対応情報の内容を示した図である。
【図3】第1の実施の形態としてのACチルト補正を実現するために実行されるべき処理の手順を示したフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態の光ディスク装置の構成について説明するための図である。
【図5】周波数/偏倚/補正量対応情報の内容を示した図である。
【図6】第2の実施の形態としてのACチルト補正を実現するために実行されるべき処理の手順を示したフローチャートである。
【図7】第3の実施の形態の光ディスク装置の内部構成を示した図である。
【図8】リファレンスデータを用いた実際の周波数/補正量カーブの算出手法について説明するための図である。
【図9】リファレンスデータに基づく実際の周波数/補正量カーブの算出例を示した図である。
【図10】線形補間のイメージを示した図である。
【図11】第3の実施の形態としての対応関係情報の作成手法を実現するために行われるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
【図12】第4の実施の形態の光ディスク装置の内部構成を示した図である。
【図13】トラッキングエラー信号振幅(トラッキング偏倚量)とRF信号振幅との関係を例示した図である。
【図14】第4の実施の形態としての対応関係情報の作成手法を実現するために行われるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
【図15】複数の測定点を用いた線形近似について説明するための図である。
【図16】回転周波数毎のトラッキング偏倚によるRF振幅変化例を示した図である。
【図17】トラッキング方向への偏倚に応じて対物レンズに傾きが生じる点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術に係る実施の形態について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。

<1.第1の実施の形態(偏倚量に応じたACチルト補正)>
[1-1.光ディスク装置の構成例]
[1-2.処理手順]
<2.第2の実施の形態(偏倚量及び回転周波数に応じたACチルト補正)>
<3.第3の実施の形態(対応関係情報の具体的作成例1)>
[3-1.光ディスク装置の構成例]
[3-2.対応関係情報の作成]
[3-3.処理手順]
<4.第4の実施の形態(対応関係情報の具体的作成例2)>
[4-1.光ディスク装置の構成例]
[4-2.対応関係情報の作成]
[4-3.処理手順]
<5.変形例>
【0020】
<1.第1の実施の形態(偏倚量に応じたACチルト補正)>
[1-1.光ディスク装置の構成例]

図1は、本技術に係る第1の実施の形態としての光ディスク装置(光ディスク装置1とする)の内部構成を示している。
先ず、図中の光ディスクDは、円盤状の光記録媒体(光ディスク記録媒体)である。ここで、光記録媒体とは、光の照射により情報の記録又は再生が行われる記録媒体を指す。
本例の光ディスク装置1は、光ディスクDとして、少なくともDVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)に対応してその記録又は再生が可能に構成されているとする。
【0021】
光ディスクDは、光ディスク装置1に装填されると、図中のスピンドルモータ(SPM)2により回転駆動される。
スピンドルモータ2は、後述するスピンドルサーボ回路15より供給される駆動信号に従って光ディスクDを回転駆動する。
【0022】
光ディスク装置1には、上記のように回転駆動される光ディスクDに対して情報の記録/再生を行うためのレーザ光の照射、及び光ディスクDに照射された当該レーザ光の反射光(戻り光)を受光するための光学ピックアップ3が設けられる。
光学ピックアップ3内には、上記レーザ光の光源となるレーザダイオードが設けられる。また、上記レーザ光を光ディスクDに集光するための対物レンズ(対物レンズユニット)4、及び当該対物レンズ4を光ディスクDに接離する方向(フォーカス方向)及び半径方向(トラッキング方向)に変位可能に保持する2軸アクチュエータ5が設けられる。さらには、上記反射光を受光するためのフォトディテクタ等が設けられる。また、光学ピックアップ3内には、上記レーザ光を上記レーザダイオードから上記対物レンズに導き且つ上記反射光を上記フォトディテクタに導くための光学系も備えられる。
【0023】
また、光学ピックアップ3全体は、図中のスライド駆動部6により、トラッキング方向にスライド移動可能に保持されている。
【0024】
光学ピックアップ3内における上記レーザダイオードは、レーザドライバ7により発光駆動される。記録時において、レーザドライバ7は、記録処理部8から入力される記録信号に従って上記レーザダイオードを発光駆動するようにされる。
記録処理部8は、入力された記録データに所定の記録変調符号化処理等を施して、上記記録信号を生成する。
【0025】
光学ピックアップ3内の上記フォトディテクタが上記反射光を受光して得られた受光信号は、マトリクス回路9に供給される。
マトリクス回路9は、上記フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
例えば再生データを得るための高周波信号(再生データ信号:以下RF信号と表記)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEを生成する。ここで、フォーカスエラー信号FEは、光ディスクDに形成された記録面(反射面)に対する上記レーザ光の合焦位置の誤差を表す信号である。またトラッキングエラー信号TEは、上記記録面に形成されたトラック(ピット列又はグルーブ)に対する上記レーザ光の照射スポットのトラッキング方向における位置誤差を表す信号となる。
また、マトリクス回路9は、グルーブのウォブリングに係る信号、すなわちウォブリングを検出する信号としてプッシュプル信号PPを生成する。
さらにマトリクス回路9は、レンズエラー信号LEを生成する。レンズエラー信号LEは、対物レンズ4のニュートラル位置からのトラッキング方向の駆動量を表す信号であり、例えばMPP(Main Push-Pull)信号とSPP(Side Push-Pull)信号とに基づいて生成できる。
【0026】
マトリクス回路9が生成したRF信号は再生処理部10へ、フォーカスエラー信号FE及びトラッキングエラー信号TEはサーボ回路13へ、またプッシュプル信号PPはウォブル回路11へそれぞれ供給される。
またレンズエラー信号LEは偏倚量サンプリング部20へ供給される。
【0027】
再生処理部10は、RF信号に対して2値化処理を行うと共に、PLL(Phase Locked Loop)による再生クロック生成処理等を行う。
再生処理部10で得られた再生データ(2値化データ)は、不図示の復調回路に供給され、エラー訂正処理等を施されることになる。
なお、再生処理部10で再生された上記クロックについてはCLK-Pと表記する。
【0028】
ウォブル回路11は、プッシュプル信号PPに基づき、グルーブのウォブリングにより記録されたアドレス情報を得るためのウォブル信号を生成する。
アドレスデコーダ12は、ウォブル回路11から供給されるウォブル信号に基づきアドレス検出を行う。検出されたアドレス情報はコントローラ21に供給される。
またアドレスデコーダ12は、ウォブル回路11から供給されるウォブル信号を用いたPLL処理でクロックCLK-Rを生成する。このクロックCLK-Rは、例えば記録時のエンコードクロック等として用いられる。
【0029】
サーボ回路13は、マトリクス回路9からのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEから、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボ信号を生成し、サーボ動作を実行させる。
すなわち、フォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEに応じてフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号をそれぞれ生成し、これらを2軸ドライバ14に与える。
2軸ドライバ14は、これらフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号に基づき生成したフォーカスドライブ信号、トラッキングドライブ信号により、2軸アクチュエータ5のフォーカスコイル、トラッキングコイルをそれぞれ駆動する。これにより、2軸アクチュエータ5→マトリクス回路9→サーボ回路13→2軸ドライバ14→2軸アクチュエータ5・・・によるフォーカスサーボループ及びトラッキングサーボループがそれぞれ形成される。
【0030】
また、サーボ回路13は、トラッキングエラー信号TEの低域成分として得られるスライドエラー信号や、コントローラ21からのアクセス実行制御などに基づいてスライドドライブ信号を生成し、スライド駆動部6を駆動する。スライド駆動部6は、図示は省略したが、光学ピックアップ3を保持するメインシャフト、スライドモータ、伝達ギア等による機構を有し、上記スライドドライブ信号に応じて上記スライドモータを駆動することで、光学ピックアップ3の所要のスライド移動を実現する。
【0031】
スピンドルサーボ回路15は、スピンドルモータ2をCLV回転(線速度一定回転)させる制御を行う。
スピンドルサーボ回路15は、前述のアドレスデコーダ12がウォブル信号に対するPLL処理で生成したクロックCLK-Rを現在のスピンドルモータ2の回転速度情報として得、これを所定のCLV基準速度情報と比較することで、スピンドルエラー信号を生成する。
またデータ再生時においては、再生処理部10のPLL処理によって生成されるクロックCLK-Pが、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報となるため、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成することもできる。
そしてスピンドルサーボ回路15は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルモータ2のCLV回転を実行させる。
またスピンドルサーボ回路15は、コントローラ21からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモータ2の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
【0032】
また、この場合の光ディスク装置1には、チルト補正のための構成として、チルト調整部16、補正ドライバ17、チルト補正部18、及び加算部19が備えられている。
チルト調整部16は、光ディスクDの記録面に対するレーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトを調整するように構成されている。本例において、チルト調整部16は、光学ピックアップ3を保持するスライド駆動部6を傾けることで、チルト角の調整を行うように構成されている。なおチルト調整部16は、対物レンズ4を直接傾けるように構成してもよい。
チルト調整部16は、補正ドライバ17からの駆動信号に基づいてチルト角の調整を行う。
【0033】
チルト補正部18は、補正ドライバ17に対してチルト補正量を指示することで、チルト補正を実行させる。
このチルト補正部18の指示に基づき行われるチルト補正は、ディスクチルトの補正となる。具体的に、チルト調整部18は、光ディスクDの半径位置に応じた補正量を補正ドライバ17に対して指示し、これによりディスクチルトについての補正を実行させる。なお、上記半径位置の情報は、コントローラ21より供給される。
【0034】
なお、本実施の形態の場合、チルト補正部18と補正ドライバ17との間には加算部19が挿入されるが、この加算部19を用いたチルト補正については後述する。
【0035】
また、光ディスク装置1には、偏倚量サンプリング部20が設けられる。
偏倚量サンプリング部20は、マトリクス回路9により生成されたレンズエラー信号LEの振幅値をサンプリングして、対物レンズ4のトラッキング方向への偏倚量を検出する。
【0036】
ここで、トラッキング方向への偏倚量とは、対物レンズ4がトラッキング方向に偏倚している量であり、具体的には、2軸アクチュエータ5により保持された対物レンズ4が、そのニュートラル位置からトラッキング方向に変位した量を指す。
【0037】
以上で説明してきたサーボ系及び記録再生系等の各部の動作は、コントローラ21により制御される。コントローラ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等のメモリに格納されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、光ディスク装置1の全体制御を行う。
例えばコントローラ21は、サーボ回路13に指示を出すことにより、スライド駆動部6によって所定のアドレスに光学ピックアップ3を移動させる。またコントローラ21は、スピンドルサーボ回路15に対し、前述したキック/ブレーキについての制御指示を行うと共に、スピンドルモータ2の回転速度(回転周波数)の設定制御も行う。
【0038】
コントローラ21に対しては、メモリ22が設けられる。
図示するようにこのメモリ22には、制御プログラム22a、偏倚/補正量対応情報22bが記憶されている。
制御プログラム22aは、後の図3に示す処理をコントローラ21に実行させるためのプログラムとなる。
【0039】
図2は、偏倚/補正量対応情報22bの内容を示している。
図示するように偏倚/補正量対応情報22bは、偏倚量とチルト補正量とを対応づけた情報とされる。偏倚量は、対物レンズ4のトラッキング方向への偏倚量である。
この偏倚/補正量対応情報22bにおいて、各偏倚量に対しては、その偏倚量のときに生じる対物レンズ4のチルトを補正することができるものとして予め実験等により導出されたチルト補正量が対応づけられている。
ここで、対物レンズ4の重心の偏りや2軸アクチュエータ5の磁気推力の偏りは、光ディスク装置1(光学ピックアップ3)の個体ごとに異なるものとなるので、偏倚/補正量対応情報22bについては、個体ごとに求められたものを格納しておくことが望ましい。
なお、図2においては、偏倚量とチルト補正量の極性が共に正となる場合を例示しているが、例えば図17に示すようなトラッキング偏倚とチルトとの関係性の場合(トラッキング偏倚の極性とチルトの極性とが異なる場合)、偏倚/補正量対応情報22bに格納される偏倚量とチルト補正量の組み合わせは、正と負の値の組み合わせとなる。或いは、偏倚量とチルト補正量の絶対値の関係は何れの場合も同様であるので、補正量を加算する際の極性をトラッキング偏倚とチルトとの関係性に応じて適切に変更するものとすれば、図17のようなチルトが生じる場合にも図2に示す偏倚/補正量対応情報を用いることは可能である。
【0040】
[1-2.処理手順]

図3は、図1に示した光ディスク装置1が、対物レンズ4の偏重心等に応じて生じるACチルトの補正を実現するために実行すべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なお、この図3に示す処理は、図1に示したコントローラ21が制御プログラム22aに従って実行するものである。
また、この図に示す処理が実行される際には、既にトラッキングサーボがONの状態にあるとする。
【0041】
図3において、先ずステップS101では、チルト補正を開始すべき状態となるまで待機する。
ここで、ACチルトの補正は、記録や再生動作の実行中をはじめとして、記録や再生の開始前におけるシーク時(アドレス読出時)においても行われるべきものとなる。この図に示すチルト補正のための処理を開始すべきタイミングとしては、少なくともこれらの期間中に補正が実行されるように設定すればよい。
【0042】
ステップS101において、チルト補正を開始すべき状態となったとされた場合は、ステップS102において、偏倚量を取得する。すなわち、偏倚量サンプリング部20により検出された対物レンズ4の偏倚量の値を取得する。
【0043】
続くステップS103では、対応する補正量を取得する。具体的には、図2に示した偏倚/補正量対応情報22bを参照して、ステップS102にて取得した偏倚量に対応づけられているチルト補正量の値を取得するものである。
【0044】
ステップS103において補正量を取得した後は、ステップS104において、補正量の加算処理を実行する。すなわち、ステップS103にて取得したチルト補正量の値を、加算部19に指示して、チルト補正部18からの補正量の値に加算させるものである。
これにより、チルト補正部18によりディスクチルトについての補正が行われつつ、対物レンズ4のACチルトについての補正も行われるようにできる。
【0045】
ステップS104の加算処理を実行した後は、ステップS105において、チルト補正を終了すべき状態となったか否かを判別する。
補正を終了すべき具体的なタイミングとしては、例えばディスクの回転停止のタイミングや、或いは記録/再生の速度(回転速度)が予め設定された補正不要とされる速度域に変更されたタイミング等を挙げることができる。
【0046】
ステップS104において、チルト補正を終了すべき状態とはなっていないとの否定結果が得られた場合は、先のステップS102に戻り、再び偏倚量の取得を実行する。
一方ステップS104において、チルト補正を終了すべき状態となったとして肯定結果が得られた場合は、この図に示す処理は終了となる。
【0047】
上記のように本実施の形態では、記録時や再生時に対応して、レンズエラー信号LEから対物レンズ4のトラッキング偏倚量を検出し、当該偏倚量と、各偏倚量とそれに対応して設定されるべきチルト補正量との対応関係を表す偏倚/補正量対応情報22bとに基づき、補正のために設定すべきチルト補正量を取得し、当該取得したチルト補正量によりチルト補正を行うものとしている。
これにより、対物レンズ4のトラッキング偏倚に起因して生じるACチルトを適切に補正することができる。
【0048】
ACチルトの補正が実現されることで、ACチルトに起因して生じていたサーボ性能の悪化や再生信号の読み取り性能の悪化、及び記録信号品質の悪化等の問題を解消することができる。
【0049】
<2.第2の実施の形態(偏倚量及び回転周波数に応じたACチルト補正)>

続いて、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、光ディスクDの回転周波数も考慮したACチルト補正を行うものである。
【0050】
ここで、記録時や再生時において、トラッキングサーボがONの状態では、光ディスクDの回転周波数が上昇すると、ディスク偏芯の周期が早まるので、対物レンズ4のトラッキング方向への駆動周波数が上昇することになる。
このとき、駆動周波数が2軸アクチュエータ5の固有振動数(共振周波数)に近づくと、チルト発生量は増大することになる。
【0051】
そこで、より正確なACチルト補正の実現にあたっては、検出した偏倚量のみに応じた補正とするのではなく、回転周波数も考慮したチルト補正とすることが有効となる。
【0052】
先ずは図4により、第2の実施の形態の光ディスク装置の構成について説明する。
図4では、第2の実施の形態の光ディスク装置の構成のうち第1の実施の形態の光ディスク装置1とは異なる部分を主に示しており、図のようにこの場合は、メモリ22に記憶される制御プログラム22aが制御プログラム22cに変更され、また偏倚/補正量対応情報22bに代えて周波数/偏倚/補正量対応情報22dが記憶される点が異なる。
【0053】
図5は、この場合のメモリ22に記憶された周波数/偏倚/補正量対応情報22dの内容を示している。
図示するように周波数/偏倚/補正量対応情報22dは、回転周波数、偏倚量、及びチルト補正量が対応づけられた情報となる。つまり、回転周波数及び偏倚量で特定される条件ごとに、それに対応して設定されるべきチルト補正量が対応づけられているものである。
このような周波数/偏倚/補正量対応情報22dについても、予め個体ごとに回転周波数及び偏倚量とそれに対応する最適なチルト補正量との対応関係を実験等により導出しておき、その結果を個体ごとに記憶させておくことが正確なチルト補正の実現の上で望ましい。
【0054】
図6は、回転周波数も考慮した第2の実施の形態としてのACチルト補正を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なお、この図6に示す処理は、コントローラ21が図4に示した制御プログラム22cに従って実行するものである。
また、この図においても、既にトラッキングサーボがONの状態にあるとする。
ここで、図6において、既に先の図3にて説明済みとなった処理と同様の処理については同一ステップ番号を付して説明を省略する。
【0055】
先の図3と比較して分かるように、この図6に示す処理では、ステップS103に代えてステップS201及びステップS202の処理が実行されることになる。
具体的にこの場合、ステップS102において偏倚量を取得した後は、ステップS201において、回転周波数を取得する処理を実行する。具体的に、例えば記録時であればアドレスデコーダ12で生成されたクロックCLK-Rに基づき回転周波数を取得し、再生時であれば、上記クロックCLK-R或いはROMディスクであれば再生処理部10により生成されたクロックCLK-Pに基づき回転周波数を取得する。
【0056】
そして、回転周波数を取得した後は、ステップS202において、対応する補正量を取得する。具体的にこの場合は、先の図5に示した周波数/偏倚/補正量対応情報22dを参照して、ステップS201で取得した回転周波数と、ステップS102にて取得した偏倚量との組に対して対応づけられているチルト補正量の値を取得する。
【0057】
補正量の取得後は、ステップS104において、補正量の加算処理を実行する。
この結果、この場合は現在の回転周波数と対物レンズ4のトラッキング偏倚量とに応じた適切な補正量により、対物レンズ4のACチルトについての補正が行われるようにできる。
【0058】
なおこの場合も、ステップS104の加算処理を実行した後は、ステップS105においてチルト補正を終了すべき状態となったか否かを判別し、終了すべき状態ではないとの否定結果が得られた場合は先のステップS102に戻り、一方、終了すべき状態であるとの肯定結果が得られた場合はこの図に示す処理は終了となる。
【0059】
上記のような第2の実施の形態としてのチルト補正手法により、例えば記録速度や再生速度の切り替えやCLV制御に伴う内/外周での回転周波数差等により、同じ偏倚量に対するACチルト量が変動するような場合でも、その変動を吸収し、より正確なチルト補正を実現することができる。
【0060】
<3.第3の実施の形態(対応関係情報の具体的作成例1)>
[3-1.光ディスク装置の構成例]

第3の実施の形態、及び後述する第4の実施の形態は、光ディスク装置の個々が自ら偏倚量とチルト補正量とについての対応関係情報を作成し、作成した対応関係情報を用いてACチルトの補正を行うものである。
先ず、第3の実施の形態では、このような対応関係情報の作成についての具体例1につき説明する。
【0061】
図7は、第3の実施の形態の光ディスク装置25の内部構成を示している。
なお第3の実施の形態において、既にこれまでで説明済みとなった部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
この図7と先の図1とを比較して分かるように、第3の実施の形態の光ディスク装置25は、第1の実施の形態の光ディスク装置1と比較して、再生処理部10に評価器10aが設けられた点と、メモリ22において制御プログラム22aに代えて制御プログラム22eが記憶された点とが異なる。
ここで、第3の実施の形態(第4の実施の形態も同様)においても、第2の実施の形態の場合と同様に、ACチルト補正としては回転周波数も考慮した補正を行うことを前提としている。このため、後述する第3の実施の形態としての対応関係情報作成例により作成しメモリ22に記憶される対応関係情報としては、第2の実施の形態の場合と同様、回転周波数と偏倚量とチルト補正量とが対応づけられた周波数/偏倚/補正量対応情報22dとなる。
【0063】
図7において、評価器10aは、RF信号の2値化処理で得られる2値化データについて、その再生性能についての評価指標となる再生性能評価値を測定(計算)する。換言すれば、この再生性能評価値は、2値化再生能力の評価指標となる評価値と表現することもできる。
本例の場合、この再生性能評価値としては、i−MLSE (Maximum Likelihood Sequence Estimation)を測定するものとしている。
ここで、評価器10aにおいて、i−MLSEの測定区間長は可変であるとする。当該測定区間長の指示は、コントローラ21により可能とされる。
図示するように評価器10aにて測定されたi−MLSEは、コントローラ21に対して供給される。
【0064】
[3-2.対応関係情報の作成]

第3の実施の形態の光ディスク装置25では、以下で説明するような手法によって周波数/偏倚/補正量対応情報22dを作成する。
先ず、対応情報22dの作成にあたって留意すべき点は、測定時間の短縮化という点である。
ここで、対応情報22dの最も単純な作成手法としては、想定され得る回転周波数と偏倚量の組み合わせごとに、チルト発生量を測定するという手法を挙げることができる。しかしながら、このような手法を採った場合には対応情報22dの作成に膨大な時間を要し、現実的とは言えない。
そこで本実施の形態では、比較的短時間での対応関係情報22dの作成が可能となるようにすべく、以下のような手法を採るものとしている。
【0065】
大まかには、以下の1)〜5)の手順に大別できる。

1)トラッキングサーボがONかつチルト補正部18によるチルト補正(定常チルトの補正)が実行されている状態で、回転周波数=第1の周波数の下で、スライド駆動部6のみを所定量Xだけトラッキング方向に強制的に変位させて対物レンズ4を偏倚量Xだけトラッキング方向に偏倚させた状態とする。この状態で、i−MLSEを指標として最適なチルト補正量を探索し、当該チルト補正量を、回転周波数=第1の周波数かつ偏倚量Xの条件に対応するチルト補正量として保持する。

2)回転周波数=第2の周波数の下で、上記1)と同様の手法で回転周波数=第2の周波数かつ偏倚量Xの条件に対応するチルト補正量を求める。

3)予め設定された、上記偏倚量Xのときの回転周波数とチルト補正量との標準的な対応関係を表す周波数/補正量カーブ(リファレンスデータ)と、上記1)及び2)で求まった各チルト補正量(チルト発生量)とに基づき、偏倚量Xのときの実際の周波数/補正量カーブを推定する(図8を参照)。

4)上記3)で求めた周波数/補正量カーブから、偏倚量方向の各チルト補正量の推定を行う。具体的に本例では、上記周波数/補正量カーブ上における各ポイント([周波数,チルト補正量]で特定されるポイント)を基準点、[偏倚量=0,チルト発生量=0]を原点として、これら原点と基準点とを用いた線形補間により、各回転周波数における偏倚量とチルト補正量との対応関係を推定する(図10を参照)。

5)上記4)により、各周波数ごとに、偏倚量とチルト補正量との対応関係が求まるので、それらの結果を用いて、周波数/偏倚/補正量対応情報22dを作成する。

なお、上記1)でチルト補正部18による定常チルトの補正を行っていることからも理解されるように、本実施の形態で求めるチルト補正量は、ACチルトについての補正量となる。従って以下、単に「チルト補正量(又はチルト発生量)」と言ったときは、ACチルトについての補正量(発生量)を意味するものとする。
【0066】
ここで、上記1)及び2)において、偏倚量Xとしては、例えば100μmと設定する。
また第1の周波数、第2の周波数はそれぞれ50Hz、100Hzであるとする。
【0067】
またこれら1),2)において、上記最適なチルト補正量の探索としては、i−MLSEの値が良好となる方向(つまり低下する方向)に徐々にチルト補正量を振っていき、i−MLSEの変極点(低下から上昇に転じる点)を探索するという手法を挙げることができるが、この際、トラッキング偏倚の方向と対物レンズ4のチルトの発生方向の関係が不明であるときには、i−MLSEが低下傾向となるチルト補正値の極性を特定するために、チルト補正値を+、−のそれぞれの方向に振る必要がある。但し、例えば製造データ等から予めトラッキング偏倚方向とチルト発生方向との関係が判明していて、i−MLSEを低下傾向とするチルト補正値の極性が特定されている場合には、チルトが発生する側とは逆方向にのみにチルトを振って、最適なチルト補正量の探索を行うことができる。つまり、その分高速な探索を実現できる。
【0068】
ここで、上記1)及び2)では、100μmのスライド強制移動により偏倚量X=100μmを設定するものとしているが、このとき、トラッキングサーボはONとされているので、当然のことながら偏芯に応じたトラッキング偏倚も併せて生じていることになる。つまり、スライド移動量=100μmに設定しても、常時偏倚量X=100μmとなるわけではない。
しかしながら、この場合に評価値として用いるi−MLSEは、或る程度の区間長を対象に測定されるものである。本例においては、i−MLSEの測定区間長は例えばディスク1周分の区間長となるように設定している。このことで、偏芯に伴う偏倚は平均化され、結果として、測定されたi−MLSEの値が、偏倚=100μmに対応する値を示すようにすることができる。
なお、評価値の測定区間がディスク1周分に満たない場合には、複数の測定区間にわたって評価値の測定を行い、それらの評価値を平均化することで偏芯の影響が排除されるようにすればよい。
【0069】
また、上記3)において、リファレンスデータを用いた実際の周波数/補正量カーブの算出は、以下のようにして行う。
図8は、リファレンスデータを用いた実際の周波数/補正量カーブの算出手法について説明するための図である。
先ず、図中の破線は、リファレンスデータとしての、標準的な周波数/補正量カーブ(周波数/発生量カーブ)を表している。換言すれば、各光ディスク装置25の平均的な周波数/補正量カーブである。当該リファレンスデータは、例えば複数の光ディスク装置25について実際に実験等を行って導出しておくか、或いは製造データ等から計算により導出することもできる。
本実施の形態では、このようなリファレンスデータが予め光ディスク装置25に対して設定されている(例えばメモリ22等に格納される)。
【0070】
リファレンスデータを用いた実際の周波数/補正量カーブの算出は、上記1)及び2)で得たチルト補正量の実測値から特定される点(測定点Si-1,測定点Si-2)を通過するカーブの形状が、上記リファレンスデータとしての周波数/補正量カーブの形状に近似したものとなるようにして行う。
具体的な手法として、先ず本例の場合、周波数/補正量カーブ上における回転周波数=0Hz時(つまり偏倚量X=100μmでの回転周波数=0Hz時)のチルト補正量は0、回転周波数=150Hz時のチルト補正量は0.3degで固定とみなす。
このように固定とみなす0Hz時、150Hz時のそれぞれの測定点Siを測定点Si-min、測定点Si-maxとおく。
そして、これら測定点Si-min,Si-maxと、実測の上記測定点Si-1,Si-2とを併せた0/50/100/150Hzの4点のチルト補正量を基に、リファレンスデータを基準として実際の周波数/補正量カーブを求める(推定する)。つまり、これら4点を通るカーブの形状として、リファレンスデータとしての周波数/補正量カーブの形状に近似した形状が得られるように、周波数/補正量カーブを求めるものである。
【0071】
図9は、リファレンスデータに基づく実際の周波数/補正量カーブの算出例を示している。
先ず、図示するように本例の場合、回転周波数については0Hz〜150Hzまでカバーするものとし、回転周波数方向の補正精度は10Hz刻みとしている。
前述のように回転周波数=0Hz時の測定点Si-min、150Hz時の測定点Si-maxとしての補正量は、それぞれ0degと0.3degで固定である。また、測定点Si-1、測定点Si-2としての補正量については実測値をそのまま採用する(図中0.47deg,3.20deg)。
【0072】
これら4点の測定点Si-min,Si-1,Si-2、Si-maxの間におけるそれぞれの回転周波数でのチルト補正量(図中グレーで示す部分)を、当該4つの測定点Siでのチルト補正量とリファレンスデータとを用いて算出(補間)することにより、周波数/補正量カーブを完成させる。
【0073】
ここで、上記4つの測定点Siの間のそれぞれの回転周波数(つまりチルト補正量を補間すべき各回転周波数)のうち、チルト補正量の算出(補間)対象として選択した回転周波数をfs-jとおく。
本例の場合、当該回転周波数fs-jのチルト補正量は、以下の5値を用いて算出する。
(a)リファレンスデータ上での回転周波数fs-jに対応するチルト補正量
(b)上記4つの測定点Siのうち、回転周波数fs-jに対して直近の関係となる2つの測定点Siでのそれぞれのチルト補正量
(c)上記直近の関係となる2つの測定点Siの回転周波数にそれぞれ対応するリファレンスデータ上の各チルト補正量
【0074】
例えば、具体的な算出手法の一例として、fs-j=80Hzの場合を例示すると、

{リファレンス80Hz×(リファレンス50Hz−測定点Si-1)/(リファレンス100Hz−測定点Si-2)}

となる。但し上式において、「リファレンス80Hz」「リファレンス50Hz」「リファレンス100Hz」はそれぞれリファレンスデータ上での80Hz時、50Hz時、100Hz時に対応するチルト補正量を指し、「測定点Si-1」「測定点Si-2」はそれぞれ測定点Si-1でのチルト補正量、測定点Si-2でのチルト補正量をそれぞれ指す。
【0075】
このように、各回転周波数fs-jでのチルト補正量は、当該回転周波数fs-jにおけるリファレンスデータ上でのチルト補正量に対して、回転周波数fs-jに直近となる2つの測定周波数におけるリファレンス補正量と実測値(0Hz,150Hzについては固定値となる)との差分を考慮した係数を乗じることにより算出するものとすればよい。具体的には、これらの差分の比率を上記係数として、回転周波数fs-jにおけるリファレンスデータ上でのチルト補正量に対して乗じるものとすればよい。
例えばこのような算出手法により、各回転周波数fs-jのチルト補正量を推定することで、測定点Si-1,Si-2を通る実際の周波数/補正量カーブとして、リファレンスとしての周波数/補正量カーブの形状に近似した形状による周波数/補正量カーブを求めることができる。
【0076】
このように偏倚量X=100μm時の周波数/補正量カーブを求めた後は、先の4)と示したように、当該周波数/補正量カーブから、偏倚量方向の各チルト補正量の推定を行う。
【0077】
ここで、偏倚量に対するチルト発生量(補正量)は、ほぼ線形な関係とみなすことができる。そこで本例では、図9のように求めた周波数/補正量カーブとしてのデータから、各回転周波数ごとに、[偏倚量=0,チルト発生量=0]を原点とする線形補間を行うことで、回転周波数ごとの偏倚量/補正量の対応関係情報を得る。
すなわち、対象とする回転周波数をfs-kとし、図9のように求めた周波数/補正量カーブにおける当該回転周波数fs-kのときのチルト補正量をT-kとおくと、[回転周波数fs-k,チルト補正量T-k]による点(基準点)と、上記原点とを用いた線形補間により、回転周波数fs-kのときの偏倚量/補正量についての対応関係情報を得る。
図10は、この際の線形補間のイメージを示している。
【0078】
このような線形補間を各回転周波数ごとに行う。これにより、各回転周波数ごとに偏倚量/補正量の対応関係情報を得ることができ、これらの対応関係情報を用いて、先の図5に示したような周波数/偏倚/補正量対応情報22dを作成することができる。
【0079】
[3-3.処理手順]

図11は、上記により説明した第3の実施の形態としての対応関係情報の作成手法を実現するために行われるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なお、この図11に示す処理は、コントローラ21がメモリ22に記憶された制御プログラム22eに基づき実行するものである。
また、この図に示す処理が実行されるにあたっても、既にトラッキングサーボはONの状態にあるとする。また、ACチルト成分のみを正確に測定できるように、チルト補正部18によるチルト補正(定常チルトの補正)が実行された状態にあるとする。
【0080】
図11において、ステップS201では、対応関係情報の作成を開始すべき状態となるまで待機する。
周波数/偏倚/補正量対応情報22dの作成処理を実行するタイミングとしては、例えば光ディスク装置25の起動時、光ディスクDの挿入時、所定時間おきなどを挙げることができる。ステップS201では、このような対応関係情報の作成を開始すべきとして予め定められた所定の条件が成立するまで待機することになる。
【0081】
対応関係情報の作成を開始すべき状態となったときは、ステップS202において、周波数設定識別値N=1に設定する。
なお、以下の説明で明らかとなるように、周波数設定識別値Nは、回転周波数として第1の周波数、第2の周波数を設定し分ける際にコントローラ21が用いる値となる。
【0082】
続くステップS203においては、偏倚量=Xとするためのスライド強制移動処理を実行する。具体的に本例においては、偏倚量=100μmとなるように、スライド駆動部6により光学ピックアップ3を強制移動させる処理となる。
【0083】
スライド強制移動処理を実行した後は、ステップS204において、回転周波数=第N周波数とするための処理を実行する。
前述のように本例の場合、対応関係情報の作成にあたって設定する回転周波数は第1の周波数と第2の周波数の2種としており、また第1の周波数=50Hz、第2の周波数=100Hzと設定される。
従ってこの場合のステップS204では、N=1であれば、スピンドルモータ2の回転周波数=50Hzとなるようにスピンドルサーボ回路15に指示を行う。或いはN=2であればスピンドルモータ2の回転周波数=100Hzとなるようにスピンドルサーボ回路15に指示を行う。
【0084】
ステップS204で回転周波数の設定を行った後は、ステップS205において、チルト調整・評価値参照により最適チルト補正量(チルト発生量)を求める処理を実行する。具体的には、先に述べたように評価器10aから供給されるi−MLSEの値が良好となる方向に徐々にチルト補正量を振っていき、i−MLSEの変極点を探索する。当該変極点において加算部19に指示していたチルト補正量が、上記最適とされるチルト補正量となる。
【0085】
続くステップS206においては、ステップS205で求めたチルト補正量を、例えばメモリ22等の所要のメモリに記憶する。
【0086】
ステップS206の記憶処理の実行後は、ステップS207において、N=上限値であるか否かを判別する。先の説明からも理解されるように、本例の場合、上限値=2であり、従ってステップS207ではN=2である否かを判別することになる。
【0087】
ステップS207において、N=上限値ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS208に進んでNの値をインクリメント(N←N+1)した後、先のステップS204に戻って回転周波数=第N周波数に設定する処理を実行する。つまりこれにより、新たな回転周波数の設定下での偏倚量X時の最適チルト補正量が求まることになる。
【0088】
一方ステップS207において、N=上限値であるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS209に進み、各測定点のチルト補正量とリファレンスデータとに基づき偏倚量Xのときの周波数/補正量カーブを算出する。
なお、当該周波数/補正量カーブの算出手法については既に説明済みであるため改めての記載は省略する。
【0089】
ステップS209で周波数/補正量カーブを算出した後は、ステップS210において、回転周波数ごとに、各偏倚量に対するチルト補正量を補間により算出する。
なお、このように周波数/補正量カーブに基づき回転周波数ごとの偏倚量/チルト補正量の対応関係情報を補間により求める手法についても既に説明済みであるため改めての記載は省略する。
【0090】
ステップS210の算出処理の実行後は、ステップS211において、周波数/偏倚/補正量対応情報22dを作成を行う。すなわち、ステップS210で求まった各回転周波数ごとの偏倚量/チルト補正量の対応関係情報に基づき、周波数/偏倚/補正量対応情報22dを作成するものである。このとき、作成した周波数/偏倚/補正量対応情報22dはメモリ22に記憶する。
【0091】
上記ステップS211の作成処理の実行後、この図に示す処理は終了となる。
【0092】
上記のように第3の実施の形態では、光ディスク装置25自らがチルト補正量を実測した結果に基づき、周波数/偏倚/補正量対応情報22dを作成するものとしている。
このように対応関係情報を光ディスク装置25自らが作成するということは、光ディスク装置25の個体ごとに、その個体の特性に合った対応関係情報を作成することができるということになる。つまりこの結果、対応関係情報を用いて行われるACチルトの補正が、個体ごとの特性に応じて正確に行われるようにすることができる。
【0093】
なお確認のために述べておくと、光ディスク装置25においても、第2の実施の形態の光ディスク装置と同様に、記録時や再生時等に対応して、メモリ22内に記憶された周波数/偏倚/補正量対応情報22dを用いてACチルトの補正を行うものである。
【0094】
<4.第4の実施の形態(対応関係情報の具体的作成例2)>
[4-1.光ディスク装置の構成例]

続いて、第4の実施の形態について説明する。
先の第3の実施の形態では、チルト発生量(チルト補正量)を推し測るための評価指標として、例えばi−MLSEなど、その測定に比較的長い区間長を要する評価値を用いて偏芯に伴うトラッキング偏倚が平均化されるようにし、所望の偏倚量Xのときの測定を実現するようにしていたが、第4の実施の形態は、これとは逆の発想で、偏芯に伴い生じるトラッキング偏倚を積極的に利用しようとするものである。
【0095】
図12は、第4の実施の形態の光ディスク装置30の内部構成を示した図である。
なお第4の実施の形態においても、既にこれまでで説明済みとなった部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0096】
先の図1と比較して分かるように、第4の実施の形態の光ディスク装置30は、第1の実施の形態の光ディスク装置1と比較してRF信号がコントローラ21に対しても入力される点と、メモリ22において制御プログラム22aに代えて制御プログラム22fが記憶された点とが異なる。
また、第4の実施の形態としても、第2の実施の形態の場合と同様にACチルト補正として回転周波数も考慮した補正を行うものであるため、メモリ22内には周波数/偏倚/補正量対応情報22dが記憶される。
【0097】
[4-2.対応関係情報の作成]

第4の実施の形態は、周波数/偏倚/補正量対応情報22dの作成にあたりRF信号を用いる点が第3の実施の形態の場合と大きく異なる。
ここで、図13Aは、回転周波数=第1周波数(50Hz)での、スライド量=0のときのトラッキングエラー信号TE、及びRF信号の各振幅を例示している。
先ず、図中の「センターレベル」(DCレベル)は、トラッキング誤差が無い状態でのトラッキングエラー信号TEのレベルとなる。
トラッキングサーボがONの状態では、対物レンズ4はディスク偏芯に追従するように駆動されるので、その際のトラッキングエラー信号TEとしては図のように周期的に増加/減少を繰り返す波形となる。
この場合、スライド量=0であるので、偏芯量=0の時点では、トラッキング偏倚量も0となり、従ってこの時点におけるトラッキングエラー信号TEの振幅はセンターレベル(例えば0)と一致する。
【0098】
ここで、偏芯量が0となり、これによりトラッキング偏倚量が0となれば、ACチルトの発生量も0となるため、RF信号振幅は最大値(例えば100%)となる。
一方、偏芯に追従してトラッキング偏倚が生じた場合には、ACチルトの発生に伴い、RF信号振幅は最大値から減衰することになる。この図では、第1周波数かつ偏芯が最大のときのRF信号振幅が90%(つまり減衰量=10%)であるものと示している。
【0099】
この図13Aからも明らかなように、RF信号は、チルトの発生量を推し測るための評価指標として用いることができる。
また図13Aによれば、ディスク偏芯を利用して、所望のトラッキング偏倚量のときのACチルト発生量を測定可能であることが分かる。
【0100】
これらの点を利用し、第4の実施の形態では、トラッキング偏倚量Xのときの第1の周波数及び第2の周波数のそれぞれでのチルト発生量(補正量)の測定を、偏芯に伴うトラッキング偏倚を利用し、かつRF信号をチルト発生量の評価指標として用いて行うものとしている。
【0101】
このとき、第3の実施の形態で設定していた100μmなどの比較的大きな偏倚量Xは、偏芯のみを利用して得ることができない場合もある。そこで、スライド移動を併用して所望のトラッキング偏倚量Xが得られるようにする。
具体的に本例の場合、X=100μmのトラッキング偏倚量が得られるようにするにあたり、偏芯分も考慮して、光学ピックアップ3を50μmスライド移動させるものとする。
【0102】
図13Bは、このように50μmのスライド強制移動を行った場合における、第1の周波数でのトラッキングエラー信号TE、RF信号の各振幅を例示している。
スライド強制移動が行われたことで、そのスライド移動量分のオフセットがトラッキングエラー信号TEに与えられる。例えば偏芯が最大±50μm生じる場合であれば、図のように、一方の方向(極性)に偏芯量が最大となったとき、トラッキングエラー信号TEの振幅はセンターレベル(トラッキング偏倚量=0)となる。これに対し、他方の方向に偏芯が最大となったとき、トラッキングエラー信号TEの振幅(絶対値)は最大値を示す。このとき、トラッキング偏倚量は、偏芯50μm+スライド移動50μmより100μmとなる。
なおこの図では、第1の周波数時における偏芯最大位置(偏倚量=100μm)でのRF信号振幅が、80%に減衰する(減衰量=20%)ものと示している。
【0103】
例えば上記のように偏芯が50μm以上生じる場合であれば、スライド移動量=50μmとすることで、ディスクが一周する間に、トラッキング偏倚量が目標とする100μmとなるポイントが必ず得られることになる。
そこで本実施の形態では、トラッキング偏倚量X=100μm時のチルト補正量を測定するにあたっては、偏倚量サンプリング部20からのトラッキング偏倚量をモニタし、当該トラッキング偏倚量が目標の100μmとなったときのRF信号振幅を取得する。
【0104】
ここで、前述のようにRF信号は、その減衰量がチルトの発生量と相関を持つものとなるが、これをそのままチルト発生量(チルト補正量)として用いるのは適切ではなく、チルト補正量への換算を行うことが望ましい。
このため第4の実施の形態では、RF信号振幅の減衰量(最大値を基準とした減衰量)とチルト補正量との対応関係を表す情報を予め光ディスク装置30に対して設定しておくことになる。
このようなRF信号振幅減衰量/チルト補正量の対応関係情報は、各個体に標準化されたものを設定してもよいし、個体ごとに求めたものを個別に設定しておくこともできる。
【0105】
以上を踏まえた上で、第4の実施の形態の対応関係情報作成の具体的手法について説明する。
第4の実施の形態の対応関係情報作成手法としても、RF信号を用い偏芯を利用するという点以外、大まかな流れとしては第3の実施の形態の作成手法と同様となる。
具体的には、以下の1')〜5')の手順に大別できる。

1')トラッキングサーボがONかつチルト補正部18による定常チルト補正が実行されている状態で、回転周波数=第1の周波数(この場合も50Hzとする)の下で、スライド駆動部6のみを所定量(この場合は上述のように50μmとする)だけトラッキング方向に強制的に変位させる。この状態で、偏倚量サンプリング部20からのトラッキング偏倚量をモニタし、その値が偏倚量X=100μmとなったときのRF信号振幅を取得する。このように取得したRF信号振幅からRF信号振幅減衰量を求め、上述のRF信号振幅減衰量/チルト補正量の対応関係情報から対応するチルト補正量を取得し、当該チルト補正量を偏倚量Xかつ第1の周波数でのチルト補正量として保持する。

2')回転周波数=第2の周波数(この場合も100Hzとする)の下で、上記1')と同様の手法で回転周波数=第2の周波数かつ偏倚量Xの条件に対応するチルト補正量を求める。

3')第3の実施の形態で用いていたリファレンスデータと同様に、偏倚量Xのときの回転周波数とチルト補正量との標準的な対応関係を表すリファレンスデータ(周波数/補正量カーブ)を基準として、上記1')及び2')で求まった各チルト補正量を基に偏倚量Xのときの実際の周波数/補正量カーブを推定する。

4')上記3')で求めた周波数/補正量カーブから、第3の実施の形態の場合と同様に偏倚量方向の各チルト補正量の推定を行う(線形補間)。

5')上記4')により求まった各周波数ごとの偏倚量/チルト補正量の対応関係情報に基づき、周波数/偏倚/補正量対応情報22dを作成する。
【0106】
なお、上記2')に関して、第2の周波数の設定下で得られるトラッキングエラー信号TEとRF信号との関係を図13Cに例示しておく。
トラッキングエラー信号TEの振幅については図13Bの場合と同様となるが、この場合は回転周波数が第1の周波数よりも高い状態にあるので、偏芯最大となる位置でのRF信号振幅減衰量は図13Bの場合よりも大きくなる。ここでは、第2の周波数時の偏芯最大位置でのRF信号振幅が50%に減衰するものと示している。
【0107】
上記により説明したような第4の実施の形態としての対応関係情報作成手法によれば、RF信号を用いたことで、ディスクが1周する間に所望の偏倚量Xでのチルト評価値を取得することができる。つまりこれにより、偏芯の影響を排除するためディスク1周以上の区間の測定を行う第3の実施の形態の場合と比較して、測定時間の短縮化が図られる。このような効果は、複数の偏倚量での測定を行うとした場合に特に顕著となる。
【0108】
[4-3.処理手順]

上記により説明した第4の実施の形態としての対応関係情報の作成手法を実現するために行われるべき具体的な処理の手順を、図14のフローチャートに示す。
なお、この図14に示す処理は、コントローラ21がメモリ22に記憶された制御プログラム22fに基づき実行するものである。
また、この図に示す処理が実行されるにあたっても、既にトラッキングサーボはONの状態にあり、また、チルト補正部18によるチルト補正が実行された状態にあるとする。
【0109】
図14において、ステップS301の待機処理、及びステップS302の周波数設定識別値Nの設定処理については、図11に示したステップS201、ステップS202の処理とそれぞれ同様の処理となる。
【0110】
この場合、ステップS302の設定処理の実行後は、ステップS303において、所定量のスライド強制移動処理を実行する。つまり本例では、スライド駆動部6により光学ピックアップ3を50μm分強制移動させる処理となる。
【0111】
ステップS303のスライド強制移動処理の実行後は、ステップS304にて回転周波数=第N周波数とする処理を実行した後、ステップS305において、偏倚量及びRF信号振幅のモニタを開始する。
そして、続くステップS306において、偏倚量=Xとなるまで待機する。
【0112】
ステップS306において、偏倚量=Xとなったとして肯定結果が得られた場合は、ステップS307において、RF信号振幅を取得する。
そして続くステップS308において、取得したRF信号振幅からRF信号振幅減衰量を計算し、これを例えばメモリ22等の所定のメモリに記憶する。
【0113】
ステップS308の処理の実行後は、ステップS309において、N=上限値であるか否かを判別し、N=上限値ではないとの否定結果が得られた場合はステップS310においてNの値をインクリメントした後ステップS304に戻り、またN=上限値であるとの肯定結果が得られた場合は、ステップS311に処理を進める。
【0114】
ステップS311では、各測定点のRF信号振幅減衰量とリファレンスデータとに基づき、偏倚量Xのときの周波数/補正量カーブを算出する。
このステップS311の処理では、各測定点のRF信号振幅減衰量(偏倚量X・第1の周波数時の減衰量、偏倚量X・第2の周波数時の減衰量)を、前述のRF信号振幅減衰量/チルト補正量の対応関係情報を用いてチルト補正量に換算する処理を行う。これにより、偏倚量X・第1の周波数時のチルト補正量、及び偏倚量X・第2の周波数時のチルト補正量が得られることになるが、これらの各測定点のチルト補正量を得た後の偏倚量/補正量カーブの算出処理は、先の図11におけるステップS209の偏倚量/補正量カーブの算出処理と同様となるので、改めての説明は省略する。
【0115】
ステップS311の算出処理の実行後は、ステップS312において、回転周波数ごとに、各偏倚量に対応するチルト補正量を補間により算出する。当該ステップS312の処理は、先のステップS210の処理と同様となる。
そして、続くステップS313においては、先のステップS211と同様に、周波数/偏倚/補正量対応情報22dを生成(及びメモリ22に記憶)する。
当該ステップS313の処理の実行後、この図に示す処理は終了となる。
【0116】
なお、上記では、RF信号を用いる例を挙げたが、プルイン(Pull-In)信号を用いることによっても同様の効果を得ることができる。
特に、プルイン信号を用いる場合には、未記録の光ディスクD(ブランクディスク)についても対応関係情報の作成が可能となる。
【0117】
また、上記では、スライド移動量は50μmとする場合を例示したが、これはあくまでも一例であり、スライド移動量は、最大偏芯量+スライド移動量≧Xとなるように定めればよいものである。
【0118】
<5.変形例>

以上、本技術に係る各実施の形態について説明したが、本技術はこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、偏倚量X=100μmの一点で周波数/補正量カーブを求めるものとしたので、各回転周波数ごとの偏倚/補正量の対応関係情報は、原点と基準点との2点を線形補間して求めるものとしたが、周波数/補正量カーブは、複数の偏倚量について求めることもできる。このように複数の偏倚量について周波数/補正量カーブを求めた際には、各回転周波数ごとの偏倚/補正量についての対応関係情報を求めるときに、図15に示すように複数の測定点を得ることができる。例えば図15の例では、0〜100μmの間における10μmの偏倚量ごとに測定点を得た(つまり10μm刻みで周波数/補正量カーブを求めた)場合を示している。
このように複数の測定点が得られるので、この場合は、線形補間ではなく、これらの測定点を用いた線形近似により偏倚/補正量の対応関係情報を算出することができる(図15中の実線)。
図15では、先の図10に示した線形補間の結果を破線により示しているが、この場合、基準点の測定が正確でなかった場合には、正しい対応関係情報を得ることができないこととなる。これに対し、線形近似した場合(実線)には、複数の測定結果に基づいてより正確な偏倚/補正量の対応関係情報を得ることができる。
【0119】
また、これまでの説明では、対応関係情報はテーブル情報として持つ場合を例示したが、例えば関数で持つことも可能である。その場合、ACチルト補正にあたっては、検出される偏倚量から逐次対応するチルト補正量を当該関数を用いて計算により求めることになる。
【0120】
また、これまでの説明では、対応関係情報の作成は、起動時やディスク挿入時等に対応して実行する場合を例示したが、対応関係情報の作成は、ディスク回転速度の切り替え時に対応して実行することもできる。
具体的にその場合は、速度切り替えを行うべき状態となったことに応じ、切り替え前の現在の回転周波数(第1の周波数)で測定を行い、切り替え後の回転周波数(第2の周波数)で測定を実行することで、2点の測定値を得ることができる。
【0121】
また、i−MLSEなどの評価値を用いる第3の実施の形態においても、第4の実施の形態のように、評価値の最良点からの減衰量を求め、この減衰量と予め定められた減衰量/補正量対応関係情報とから対応するチルト補正量を推定するという手法を採ることもできる。
【0122】
また、第4の実施の形態のようにRF信号(又はプルイン信号)を用いる場合、対応関係情報の作成は、以下のような手法で実現することもできる。
先ず、RF信号を用いることで、偏芯に伴うトラッキング偏倚を利用する点は第4の実施の形態の場合と同様となる。
具体的にこの場合、先ずは以下の手順により3点の測定値を得る。

1-1)トラッキングサーボがONかつチルト補正部18によるチルト補正が実行されている状態で、回転周波数=第1の周波数(この場合も例えば50Hzとする)の下で、偏倚量サンプリング部20からのトラッキング偏倚量をモニタし、その値が偏倚量X1(例えば50μmとする)となったときのRF信号振幅を取得する。すなわち、偏芯によるトラッキング偏倚のみを利用し、回転周波数=第1の周波数、偏倚量X1=50μmの条件下でのRF信号振幅を測定するものである。

1-2)上記1-1)の測定後、スライド駆動部6を所定量(この場合も50μmとする)だけトラッキング方向に強制的に変位させて、偏倚量サンプリング部20による偏倚量がX2(X1<X2:例えば100μmとする)となったときのRF信号振幅を取得する。つまり、回転周波数=第1の周波数、偏倚量X2=100μmの条件下でのRF信号振幅を測定するものである。

2'')回転周波数=第2の周波数(この場合も100Hzとする)の下で、上記1-2)と同様の手法でスライド強制移動を伴う偏倚量X2のときのRF信号振幅の取得を行う。すなわち、回転周波数=第2の周波数、偏倚量X2=100μmの条件下でのRF信号振幅を取得するものである。
【0123】
ここで、上記1-1)と上記1-2)とで取得したRF振幅測定値は、同一の回転周波数上で、それぞれ異なる偏倚量のときの測定値を表すものである。また、上記1-2)と上記2'')のRF振幅測定値は、同一の偏倚量上で、それぞれ異なる回転周波数のときの測定値を表すものである。
従って、上記1-1)と上記1-2)のRF振幅測定値を用いれば、トラッキング偏倚量に対するチルト変動の感度を推定できる。一方、上記1-2)と上記2'')のRF振幅測定値を用いれば、回転周波数に応じたチルト変動の感度を推定することができる。
【0124】
図16は、回転周波数毎のトラッキング偏倚によるRF振幅変化例を示している。
先ず、この図に示すように、トラッキング偏倚量とRF信号振幅の減衰量との関係は、トラッキング偏倚量とチルト発生量(補正量)との関係のような線形なものとはならず、二次曲線的な関係となる。また、回転周波数の上昇に応じてACチルトの発生量は増大するので、同じトラッキング偏倚量であっても回転周波数が高い場合の方がRF信号振幅の減衰量が大となる。
ここで、上記1-1)と上記1-2)のRF振幅測定値の関係は、図中における測定点S1と測定点S2との関係となる。また、上記1-2)と上記2'')のRF振幅測定値の関係は、測定点S2と測定点S3との関係となる。
これら各測定点Sの関係を参照して分かるように、上記1-1)と上記1-2)のRF振幅測定値を用いれば、トラッキング偏倚量に対するチルト変動の感度を推定でき、また上記1-2)と上記2'')のRF振幅測定値を用いれば、回転周波数に応じたチルト変動の感度を推定することができる。
【0125】
このように推定した各方向の感度情報を用いて、各回転周波数ごとのトラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係情報を求め、その結果から周波数/偏倚/補正量対応情報22dを生成することができる。
【0126】
また、これまでの説明では、2点の回転周波数で測定を行うものとしたが、2点より多くの回転周波数で測定を行うこともできる。測定点が増える分、より正確な対応関係情報の作成に資する。
或いは、精度は低下するが、1点の測定周波数の結果から対応関係情報を推測するものとしても良い。
【0127】
また、本技術は、以下の(1)〜(9)に示す構成とすることも可能である。
(1)
光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光照射を行うと共に、上記光ディスク記録媒体からの上記レーザ光の戻り光を上記対物レンズを介して受光する光照射/受光部と、
上記対物レンズを上記光ディスク記録媒体の半径方向に平行な方向であるトラッキング方向に変位させるトラッキング機構と、
上記光ディスク記録媒体の記録面に対する上記レーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトを調整するチルト調整機構と、
上記光照射/受光部が上記戻り光を受光して得られる受光信号に基づき、上記光ディスク記録媒体に形成されたトラックに対する上記レーザ光の照射スポットの上記トラッキング方向におけるずれ量を表すトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成部と、
上記トラッキングエラー信号に基づき上記対物レンズについてのトラッキングサーボ制御を行うトラッキングサーボ制御部と、
上記受光信号に基づき、上記トラッキング機構により保持される上記対物レンズのニュートラル位置からの上記トラッキング方向におけるずれ量としてのトラッキング偏倚量を測定する偏倚量測定部と、
少なくとも上記トラッキング偏倚量とその偏倚量に対応するチルト補正量との関係を示す対応関係情報が記憶された記憶部と、
上記偏倚量測定部が測定した上記トラッキング偏倚量と上記対応関係情報とから特定されるチルト補正量の値に基づいて、上記チルト調整機構が駆動されるように制御することで、上記対物レンズが上記ニュートラル位置から上記トラッキング方向に偏倚することで生じるチルトの補正を実行させる制御部と
を備える光ディスク装置。
(2)
上記光ディスク記録媒体の回転周波数を測定する回転周波数測定部をさらに備え、
上記記憶部には、上記対応関係情報として、
上記トラッキング偏倚量と上記光ディスク記録媒体の回転周波数とで特定される条件ごとに、対応するチルト補正量の関係を示す周波数/偏倚量/補正量対応関係情報が記憶されていると共に、
上記制御部は、
上記トラッキング偏倚量測定部が測定した上記トラッキング偏倚量と、上記回転周波数測定部が測定した上記光ディスク記録媒体の回転周波数と、上記周波数/偏倚量/補正量対応関係情報とから特定されるチルト補正量の値に基づいて、上記チルト調整機構が駆動されるように制御する
上記(1)に記載の光ディスク装置。
(3)
上記受光信号に基づき、チルトの発生量に応じてその値が変化するチルト発生量評価指標としてのチルト評価値を生成する評価値生成部をさらに備え、
上記制御部は、
上記対物レンズが所定の偏倚量だけ偏倚した状態で上記評価値生成部にて得られたチルト評価値を取得し、取得したチルト評価値に基づいて上記所定の偏倚量に対応して設定されるべきチルト補正量を求め、この求めたチルト補正量と上記所定の偏倚量との対応関係に基づいてトラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を求めることで、上記対応関係情報を生成する
上記(1)に記載の光ディスク装置。
(4)
上記制御部は、
トラッキング偏倚量=0とチルト補正量=0とで特定される点を原点、上記所定の偏倚量と当該所定の偏倚量に対して求めた上記チルト補正量とで特定される点を測定点とし、これら原点と測定点とに基づく線形補間又は線形近似によって上記トラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を算出する
上記(3)に記載の光ディスク装置。
(5)
上記光照射/受光部を上記トラッキング方向にスライド移動させるスライド機構をさらに備え、
上記評価値生成部は、
上記受光信号に基づき上記光ディスク記録媒体の記録データについての2値化再生処理を実行した結果から2値化再生能力の評価指標となる評価値を上記チルト評価値として生成するように構成されていると共に、
上記制御部は、
上記スライド機構により上記光照射/受光部を所定の第1の変位量だけ強制的に変位させて当該第1の変位量と同量の第1のトラッキング偏倚量が生じるようにした状態で、上記チルト調整機構を制御してチルト量を調整させながらそのときの上記チルト評価値を取得した結果に基づいて、上記第1のトラッキング偏倚量に対応して設定されるべき上記チルト補正量を求め、当該求めたチルト補正量に基づいて上記トラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を算出する
上記(3)及び(4)に記載の光ディスク装置。
(6)
上記評価値生成部は、
上記チルト評価値としてRF信号又はプルイン信号を生成し、
上記制御部は、
上記対物レンズのトラッキング偏倚量が上記所定の偏倚量とされた状態で得られる上記RF信号又はプルイン信号の減衰量を計算し、当該減衰量の値から上記所定の偏倚量に対応して設定されるべき上記チルト補正量を換算し、この換算したチルト補正量に基づいて上記トラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を算出する
上記(3)及び(4)に記載の光ディスク装置。
(7)
上記受光信号に基づき、チルトの発生量に応じてその値が変化するチルト発生量評価指標としてのチルト評価値を生成する評価値生成部をさらに備え、
上記制御部は、
上記対物レンズが所定の偏倚量だけ偏倚した状態で上記評価値生成部にて得られたチルト評価値を取得し、取得したチルト評価値に基づいて上記所定の偏倚量に対応して設定されるべきチルト補正量を求める処理を、上記光ディスク記録媒体の回転周波数としてそれぞれ異なる回転周波数が設定された下で実行することで、回転周波数ごとに、上記所定の偏倚量に対応して設定されるべきチルト補正量を取得すると共に、当該取得した回転周波数ごとのチルト補正量に基づいて、トラッキング偏倚量と回転周波数とで特定される条件ごとのチルト補正量の対応関係を求めて、上記周波数/偏倚量/補正量対応関係情報を生成する
上記(2)〜(6)に記載の光ディスク装置。
(8)
上記制御部は、
上記チルト補正量の取得を行ったそれぞれの上記回転周波数の値と、上記取得したチルト補正量とに基づき特定される点を測定点としたとき、上記所定の偏倚量のときの標準的な周波数とチルト補正量との対応関係を表すものとして予め定められたリファレンスデータとしての周波数/補正量カーブを基準とし、上記測定点を通過するカーブの形状が上記リファレンスデータとしての周波数/補正量カーブの形状に近似したものとなるようにして周波数/補正量カーブを算出すると共に、
当該算出した周波数/補正量カーブに基づき、上記周波数/偏倚量/補正量対応関係情報を生成する
上記(3)〜(6)に記載の光ディスク装置。
(9)
上記制御部は、
上記算出した周波数/補正量カーブにより特定される、上記所定の偏倚量のときの上記回転周波数ごとの上記チルト補正量の値をそれぞれ用いた線形補間又は線形近似によって、トラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を上記回転周波数ごとに算出することで、上記周波数/偏倚量/補正量対応関係情報を生成する
上記(8)に記載の光ディスク装置。
【符号の説明】
【0128】
1,25,30 光ディスク装置、2 スピンドルモータ(SPM)、3 光学ピックアップ、4 対物レンズ、5 2軸アクチュエータ、6 スライド駆動部、7 レーザドライバ、8 記録処理部、9 マトリクス回路、10 再生処理部、10a 評価器、11 ウォブル回路、12 アドレスデコーダ、13 サーボ回路、14 2軸ドライバ、15 スピンドルサーボ回路、16 チルト調整部、17 補正ドライバ、18 チルト補正部、19 加算部、20 偏倚量サンプリング部、21 コントローラ、22 メモリ、22a,22c,22e,22f 制御プログラム、22b 偏倚/補正量対応情報、22d 周波数/偏倚/補正量対応情報、D 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光照射を行うと共に、上記光ディスク記録媒体からの上記レーザ光の戻り光を上記対物レンズを介して受光する光照射/受光部と、
上記対物レンズを上記光ディスク記録媒体の半径方向に平行な方向であるトラッキング方向に変位させるトラッキング機構と、
上記光ディスク記録媒体の記録面に対する上記レーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトを調整するチルト調整機構と、
上記光照射/受光部が上記戻り光を受光して得られる受光信号に基づき、上記光ディスク記録媒体に形成されたトラックに対する上記レーザ光の照射スポットの上記トラッキング方向におけるずれ量を表すトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成部と、
上記トラッキングエラー信号に基づき上記対物レンズについてのトラッキングサーボ制御を行うトラッキングサーボ制御部と、
上記受光信号に基づき、上記トラッキング機構により保持される上記対物レンズのニュートラル位置からの上記トラッキング方向におけるずれ量としてのトラッキング偏倚量を測定する偏倚量測定部と、
少なくとも上記トラッキング偏倚量とその偏倚量に対応するチルト補正量との関係を示す対応関係情報が記憶された記憶部と、
上記偏倚量測定部が測定した上記トラッキング偏倚量と上記対応関係情報とから特定されるチルト補正量の値に基づいて、上記チルト調整機構が駆動されるように制御することで、上記対物レンズが上記ニュートラル位置から上記トラッキング方向に偏倚することで生じるチルトの補正を実行させる制御部と
を備える光ディスク装置。
【請求項2】
上記光ディスク記録媒体の回転周波数を測定する回転周波数測定部をさらに備え、
上記記憶部には、上記対応関係情報として、
上記トラッキング偏倚量と上記光ディスク記録媒体の回転周波数とで特定される条件ごとに、対応するチルト補正量の関係を示す周波数/偏倚量/補正量対応関係情報が記憶されていると共に、
上記制御部は、
上記トラッキング偏倚量測定部が測定した上記トラッキング偏倚量と、上記回転周波数測定部が測定した上記光ディスク記録媒体の回転周波数と、上記周波数/偏倚量/補正量対応関係情報とから特定されるチルト補正量の値に基づいて、上記チルト調整機構が駆動されるように制御する
請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
上記受光信号に基づき、チルトの発生量に応じてその値が変化するチルト発生量評価指標としてのチルト評価値を生成する評価値生成部をさらに備え、
上記制御部は、
上記対物レンズが所定の偏倚量だけ偏倚した状態で上記評価値生成部にて得られたチルト評価値を取得し、取得したチルト評価値に基づいて上記所定の偏倚量に対応して設定されるべきチルト補正量を求め、この求めたチルト補正量と上記所定の偏倚量との対応関係に基づいてトラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を求めることで、上記対応関係情報を生成する
請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
上記制御部は、
トラッキング偏倚量=0とチルト補正量=0とで特定される点を原点、上記所定の偏倚量と当該所定の偏倚量に対して求めた上記チルト補正量とで特定される点を測定点とし、これら原点と測定点とに基づく線形補間又は線形近似によって上記トラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を算出する
請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
上記光照射/受光部を上記トラッキング方向にスライド移動させるスライド機構をさらに備え、
上記評価値生成部は、
上記受光信号に基づき上記光ディスク記録媒体の記録データについての2値化再生処理を実行した結果から2値化再生能力の評価指標となる評価値を上記チルト評価値として生成するように構成されていると共に、
上記制御部は、
上記スライド機構により上記光照射/受光部を所定の第1の変位量だけ強制的に変位させて当該第1の変位量と同量の第1のトラッキング偏倚量が生じるようにした状態で、上記チルト調整機構を制御してチルト量を調整させながらそのときの上記チルト評価値を取得した結果に基づいて、上記第1のトラッキング偏倚量に対応して設定されるべき上記チルト補正量を求め、当該求めたチルト補正量に基づいて上記トラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を算出する
請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
上記評価値生成部は、
上記チルト評価値としてRF信号又はプルイン信号を生成し、
上記制御部は、
上記対物レンズのトラッキング偏倚量が上記所定の偏倚量とされた状態で得られる上記RF信号又はプルイン信号の減衰量を計算し、当該減衰量の値から上記所定の偏倚量に対応して設定されるべき上記チルト補正量を換算し、この換算したチルト補正量に基づいて上記トラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を算出する
請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項7】
上記受光信号に基づき、チルトの発生量に応じてその値が変化するチルト発生量評価指標としてのチルト評価値を生成する評価値生成部をさらに備え、
上記制御部は、
上記対物レンズが所定の偏倚量だけ偏倚した状態で上記評価値生成部にて得られたチルト評価値を取得し、取得したチルト評価値に基づいて上記所定の偏倚量に対応して設定されるべきチルト補正量を求める処理を、上記光ディスク記録媒体の回転周波数としてそれぞれ異なる回転周波数が設定された下で実行することで、回転周波数ごとに、上記所定の偏倚量に対応して設定されるべきチルト補正量を取得すると共に、当該取得した回転周波数ごとのチルト補正量に基づいて、トラッキング偏倚量と回転周波数とで特定される条件ごとのチルト補正量の対応関係を求めて、上記周波数/偏倚量/補正量対応関係情報を生成する
請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項8】
上記制御部は、
上記チルト補正量の取得を行ったそれぞれの上記回転周波数の値と、上記取得したチルト補正量とに基づき特定される点を測定点としたとき、上記所定の偏倚量のときの標準的な周波数とチルト補正量との対応関係を表すものとして予め定められたリファレンスデータとしての周波数/補正量カーブを基準とし、上記測定点を通過するカーブの形状が上記リファレンスデータとしての周波数/補正量カーブの形状に近似したものとなるようにして周波数/補正量カーブを算出すると共に、
当該算出した周波数/補正量カーブに基づき、上記周波数/偏倚量/補正量対応関係情報を生成する
請求項7に記載の光ディスク装置。
【請求項9】
上記制御部は、
上記算出した周波数/補正量カーブにより特定される、上記所定の偏倚量のときの上記回転周波数ごとの上記チルト補正量の値をそれぞれ用いた線形補間又は線形近似によって、トラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を上記回転周波数ごとに算出することで、上記周波数/偏倚量/補正量対応関係情報を生成する
請求項8に記載の光ディスク装置。
【請求項10】
光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光照射を行うと共に、上記光ディスク記録媒体からの上記レーザ光の戻り光を上記対物レンズを介して受光する光照射/受光部により得られる受光信号に基づき、トラッキング機構により保持される上記対物レンズのニュートラル位置からのトラッキング方向におけるずれ量としてのトラッキング偏倚量を測定する偏倚量測定手順と、
上記偏倚量測定手順により測定したトラッキング偏倚量と、少なくともトラッキング偏倚量とその偏倚量に対応するチルト補正量との関係を示す対応関係情報とから特定されるチルト補正量の値に基づいて、上記光ディスク記録媒体の記録面に対する上記レーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトを調整するチルト調整機構が駆動されるように制御することで、上記対物レンズが上記ニュートラル位置から上記トラッキング方向に偏倚することで生じるチルトの補正を実行させるチルト補正制御手順と
を有するチルト補正方法。
【請求項11】
光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光照射を行うと共に、上記光ディスク記録媒体からの上記レーザ光の戻り光を上記対物レンズを介して受光する光照射/受光部により得られる受光信号に基づき、トラッキング機構により保持される上記対物レンズのニュートラル位置からのトラッキング方向におけるずれ量としてのトラッキング偏倚量を測定する偏倚量測定処理と、
上記偏倚量測定処理により測定したトラッキング偏倚量と、少なくともトラッキング偏倚量とその偏倚量に対応するチルト補正量との関係を示す対応関係情報とから特定されるチルト補正量の値に基づいて、上記光ディスク記録媒体の記録面に対する上記レーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトを調整するチルト調整機構が駆動されるように制御することで、上記対物レンズが上記ニュートラル位置から上記トラッキング方向に偏倚することで生じるチルトの補正を実行させるチルト補正制御処理と
を光ディスク装置に実行させるプログラム。
【請求項12】
光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光照射を行うと共に、上記光ディスク記録媒体からの上記レーザ光の戻り光を上記対物レンズを介して受光する光照射/受光部と、
上記対物レンズを上記光ディスク記録媒体の半径方向に平行な方向であるトラッキング方向に変位させるトラッキング機構と、
上記光ディスク記録媒体の記録面に対する上記レーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトを調整するチルト調整機構と、
上記光照射/受光部が上記戻り光を受光して得られる受光信号に基づき、上記トラッキング機構により保持される上記対物レンズのニュートラル位置からの上記トラッキング方向におけるずれ量としてのトラッキング偏倚量を測定する偏倚量測定部と、
上記受光信号に基づき、チルトの発生量に応じてその値が変化するチルト発生量評価指標としてのチルト評価値を生成する評価値生成部と、
上記対物レンズが所定の偏倚量だけ偏倚した状態で上記評価値生成部にて得られたチルト評価値を取得し、取得したチルト評価値に基づいて上記所定の偏倚量に対応して設定されるべきチルト補正量を求め、この求めたチルト補正量と上記所定の偏倚量との対応関係に基づいて、少なくともトラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を示す対応関係情報を生成する対応関係情報生成部と
を備える光ディスク装置。
【請求項13】
光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光照射を行うと共に、上記光ディスク記録媒体からの上記レーザ光の戻り光を上記対物レンズを介して受光する光照射/受光部により得られる受光信号に基づいて生成されるものであって、上記光ディスク記録媒体の記録面に対する上記レーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトの発生量に応じてその値が変化するチルト発生量評価指標としてのチルト評価値を、トラッキング機構により保持される上記対物レンズがそのニュートラル位置から所定の偏倚量だけトラッキング方向に偏倚した状態で取得するチルト評価値取得手順と、
上記チルト評価値取得手順により取得したチルト評価値に基づいて上記所定の偏倚量に対応して設定されるべきチルト補正量を求め、この求めたチルト補正量と上記所定の偏倚量との対応関係に基づいて、少なくともトラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を示す対応関係情報を生成する情報生成手順と
を有する情報生成方法。
【請求項14】
光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光照射を行うと共に、上記光ディスク記録媒体からの上記レーザ光の戻り光を上記対物レンズを介して受光する光照射/受光部により得られる受光信号に基づいて生成されるものであって、上記光ディスク記録媒体の記録面に対する上記レーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトの発生量に応じてその値が変化するチルト発生量評価指標としてのチルト評価値を、トラッキング機構により保持される上記対物レンズがそのニュートラル位置から所定の偏倚量だけトラッキング方向に偏倚した状態で取得するチルト評価値取得処理と、
上記チルト評価値取得処理により取得したチルト評価値に基づいて上記所定の偏倚量に対応して設定されるべきチルト補正量を求め、この求めたチルト補正量と上記所定の偏倚量との対応関係に基づいて、少なくともトラッキング偏倚量とチルト補正量との対応関係を示す対応関係情報を生成する情報生成処理と
を光ディスク装置に実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−248238(P2012−248238A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116754(P2011−116754)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】