説明

光ディスク装置、フォーカスジャンプ方法及びプログラム

【課題】安定したフォーカスジャンプが可能となる光ディスク装置、フォーカスジャンプ方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】対物レンズ10は、複数の記録層を有する光ディスク1上にレーザ光を集光させることにより光スポットを形成する。アクチュエータ15は、入力されたパルス駆動信号に従って、対物レンズ10をそのフォーカス方向に駆動する。マイクロコンピュータ30(線速度取得部33)は、光ディスク1の回転数と、光ディスク1の半径方向に関する対物レンズ10の位置に基づいて、対物レンズ10の位置に対応する光ディスク1の線速度を取得する。マイクロコンピュータ30(生成部34)は、取得された線速度に基づいて、光スポットが記録層間を移動するフォーカスジャンプを行う際にアクチュエータ15に入力されるパルス駆動信号を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置、フォーカスジャンプ方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の記録層を有する光ディスクに対して再生又は記録を行う光ディスク装置では、再生又は記録用のレーザ光を対物レンズを介して集光させることにより形成される光スポットの合焦位置を下位レイヤから上位レイヤへ、又は上位レイヤから下位レイヤへ移動させる動作が行われる。この動作をフォーカスジャンプという。
【0003】
フォーカスジャンプでは、まず、対物レンズを駆動するフォーカスアクチュエータにキックパルスと呼ばれるパルス信号が加えられる。これにより、対物レンズがそのフォーカス方向に駆動される。その後、目標となる記録層のフォーカス誤差信号のS字状の変化が検出されると、キックパルスとは逆向きのブレーキパルスと呼ばれるパルス信号がフォーカスアクチュエータに加えられる。これにより、対物レンズを載置するレンズユニットが減速停止する。そして、この状態でフィードバック制御を行うフォーカスサーボが閉じられ、フォーカスジャンプが完了する。
【0004】
従来より、このフォーカスジャンプを安定して行う光ディスク装置が幾つか提案されている。
【0005】
例えば、対物レンズにかかる重力を考慮して上向きジャンプ(上方向のフォーカスジャンプ)のキックパルスを下向きジャンプ(下方向のフォーカスジャンプ)のキックパルスより大きくする光ディスク装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、アクチュエータの感度のばらつき及び光ディスクの記録層間のスペースレイヤの厚みのばらつきの影響を受けることなく正確かつ安定に行なえる光ディスク装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この光ディスク装置では、フォーカスジャンプする際に発生する複数のS字波形(光スポットが各記録層に近傍にあるときに現れるフォーカス誤差信号の変動波形)の時間間隔に基づいて、スペースレイヤの厚みの影響を含むアクチュエータの感度の高低が検出される。そして、検出された感度に基づいて、フォーカスジャンプのキックパルス、ブレーキパルスが補正される。より具体的には、アクチュエータの感度が高い時はキックパルス、ブレーキパルスを小さくし、アクチュエータの感度が低い時はキックパルス、ブレーキパルスを大きくする。このようにすれば、アクチュエータの感度のばらつきの影響を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−250467号公報
【特許文献2】特開2008−065885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最近では、光ディスクの回転数はますます増加する傾向にある。光ディスクの回転数が上がると、光ディスクの回転に伴うディスク面の空気の流れにより、光ディスクと光ピックアップとの間に負圧が発生する。この負圧は、光ディスクの回転数が上がれば上がるほど大きくなり、対物レンズが光ディスクに近づけば近づくほど大きくなる。
【0009】
この負圧により、光ピックアップには、光ディスクの方に向かう力が加えられる。この光ディスク向きの力は、フォーカスジャンプの精度低下の原因となる。しかしながら、上記特許文献1、2に開示された光ディスク装置をもってしても、負圧により発生する光ディスク向きの力によるフォーカスジャンプの精度低下を防止するのは困難である。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、安定したフォーカスジャンプが可能となる光ディスク装置、フォーカスジャンプ方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る光ディスク装置は、
複数の記録層を有する光ディスク上にレーザ光を集光させることにより光スポットを形成する対物レンズと、
入力された駆動信号に従って、前記対物レンズをそのフォーカス方向に駆動するフォーカスアクチュエータと、
前記対物レンズを前記光ディスクの半径方向に駆動するとともに、前記半径方向に関する前記対物レンズの位置を取得する駆動部と、
前記光ディスクを回転するとともに、前記光ディスクの回転数を検出する回転数検出部と、
前記回転数検出部によって検出された前記光ディスクの回転数と、前記駆動部によって取得された前記対物レンズの位置に基づいて、前記対物レンズの位置に対応する前記光ディスクの線速度を取得する線速度取得部と、
前記線速度取得部によって取得された線速度が大きくなればなるほど、前記光スポットが前記記録層間を移動する際の前記フォーカスアクチュエータの出力を小さくするように、前記フォーカスアクチュエータに入力されるキックパルス駆動信号を生成する生成部と、
を備える。
【0012】
この場合、前記生成部は、
前記線速度の自乗に係数を乗ずることにより、前記キックパルス駆動信号の補正量を求め、
前記線速度が0のときに、前記光スポットが前記記録層間を移動する際に前記フォーカスアクチュエータに入力される基準のキックパルス駆動信号から、前記補正量を差し引くことにより、前記キックパルス駆動信号を生成する、
こととしてもよい。
【0013】
この場合、前記生成部は、
上向きの前記フォーカスジャンプを行う場合には、前記線速度の自乗に第1の係数を乗ずることにより前記補正量を求め、
下向きの前記フォーカスジャンプを行う場合には、前記線速度の自乗に第2の係数を乗ずることにより前記補正量を求め、
前記基準のキックパルス駆動信号から、前記補正量を差し引くことにより、前記キックパルス駆動信号を生成する、
こととしてもよい。
【0014】
この場合、前記生成部は、
前記線速度が所定値以上の場合に、
前記基準のキックパルス駆動信号から、前記補正量を差し引くことにより、前記キックパルス駆動信号を生成する、
こととしてもよい。
【0015】
前記基準のキックパルス駆動信号の波高及び期間の少なくとも一方から、前記補正量を差し引くことにより、前記キックパルス駆動信号を生成する、
こととしてもよい。
【0016】
本発明の第2の観点に係るフォーカスジャンプ方法は、
複数の記録層を有する光ディスク上にレーザ光を集光させることにより光スポットを形成する対物レンズを、入力された駆動信号に従って、前記対物レンズのフォーカス方向に駆動して、前記光スポットが記録層間を移動するフォーカスジャンプ方法であって、
前記光ディスクの回転数と、前記光ディスクの半径方向に関する前記対物レンズの位置に基づいて、前記対物レンズの位置に対応する前記光ディスクの線速度を取得する線速度取得工程と、
前記線速度取得工程において取得された線速度が大きくなればなるほど、前記光スポットが前記記録層間を移動する際の前記フォーカスアクチュエータの出力を小さくするように、前記フォーカスアクチュエータに入力されるキックパルス駆動信号を生成する生成工程と、
を含む。
【0017】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、
複数の記録層を有する光ディスク上にレーザ光を集光させることにより光スポットを形成する対物レンズと、
入力された駆動信号に従って、前記対物レンズをそのフォーカス方向に駆動するフォーカスアクチュエータと、
前記対物レンズを前記光ディスクの半径方向に駆動するとともに、前記半径方向に関する前記対物レンズの位置を取得する駆動部と、
前記光ディスクを回転するとともに、前記光ディスクの回転数を検出する回転数検出部と、
を備える光ディスク装置を制御するコンピュータを、
前記回転数検出部によって検出された前記光ディスクの回転数と、前記駆動部によって取得された前記対物レンズの位置に基づいて、前記対物レンズの位置に対応する前記光ディスクの線速度を取得する線速度取得部と、
前記線速度取得部によって取得された線速度が大きくなればなるほど、前記光スポットが前記記録層間を移動する際の前記フォーカスアクチュエータの出力を小さくするように、前記フォーカスアクチュエータに入力されるキックパルス駆動信号を生成する生成部と、
して機能させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光ディスクの回転に伴って光ディスクと対物レンズとの間に発生する負圧により対物レンズに加えられる力を打ち消すように、すなわち対物レンズの位置における光ディスクの線速度が大きくなればなるほど、フォーカスアクチュエータの出力を小さくするように、フォーカスアクチュエータのキックパルス駆動信号が生成される。これにより、フォーカスジャンプに対する負圧の影響を打ち消すことができるので、安定したフォーカスジャンプが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る光ディスク装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】光ピックアップの構造を示す模式図(その1)である。
【図3】光ピックアップの構造を示す模式図(その2)である。
【図4】レンズユニットが一定速度でフォーカス方向に移動した場合のフォーカス誤差信号の変化を示すグラフである。
【図5】図5(A)は、フォーカスアクチュエータに入力されるキックパルス駆動信号を示すグラフである。図5(B)は、図5(A)のキックパルス駆動信号が入力されたときのフォーカス誤差信号の変化を示すグラフである。
【図6】光ディスクと光ピックアップとを上から見たときの模式図である。
【図7】フォーカスジャンプ処理のフローチャートである。
【図8】キックパルスの期間が補正される様子を示す図である。
【図9】キックパルスの波高が補正される様子を示す図である。
【図10】ブレーキパルスの期間が補正される様子を示す図である。
【図11】ブレーキパルスの波高が補正される様子を示す図である。
【図12】フォーカスジャンプ処理の他の例(その1)を示すフローチャートである。
【図13】線速度の自乗に基づく補正量と、線速度に基づく補正量との関係を示す図である。
【図14】線速度とキックパルスとの期間との関係を示すテーブルを示す図である。
【図15】フォーカスジャンプ処理の他の例(その2)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1には、本発明の実施の形態に係る光ディスク装置100の概略的な構成が示されている。図1に示すように、光ディスク装置100は、光ディスク1に対する情報の記録及び再生を行う。光ディスク1は、スパイラル状又は同心円状のトラックがそれぞれ形成された複数の記録層(以下、適宜「レイヤ」とも呼ぶ)を有する多層構造のディスク状の光記録媒体である。
【0022】
光ディスク装置100は、スピンドル駆動モータ2と、スピンドル駆動回路3と、ターンテーブル9と、を備える。ターンテーブル9には、光ディスク1が載置される。スピンドル駆動モータ2は、ターンテーブル9に載置された光ディスク1を回転させる。スピンドル駆動回路3は、スピンドル駆動モータ2を回転駆動する。
【0023】
スピンドル駆動モータ2には、その回転位置を検出するエンコーダ(不図示)が設けられている。エンコーダの出力信号は、スピンドル駆動回路3、後述するサーボ回路20を介して後述するマイクロコンピュータ30に出力されている。エンコーダの出力信号に基づいて、現在の光ディスク1の回転数を算出することができる。
【0024】
光ディスク装置100は、光ピックアップ4と、スレッド駆動モータ5と、スレッド駆動回路6と、をさらに備える。
【0025】
光ピックアップ4は、光ディスク1の複数の記録層のうちのいずれかの記録層(対象記録層)にレーザ光を集光させ光スポット(レーザ合焦点)を形成するとともに、光スポットが形成された記録層からの反射光を受光する。
【0026】
スレッド駆動モータ5は、光ピックアップ4を光ディスク1の半径方向(トラッキング方向)に移動させる。スレッド駆動モータ5としては、例えば、ステッピングモータが用いられる。
【0027】
スレッド駆動回路6は、スレッド駆動モータ5を回転駆動する。スレッド駆動モータ5がステッピングモータである場合には、スレッド駆動回路6は、移動させるべき距離に応じたパルス駆動信号を、スレッド駆動モータ5に供給する。
【0028】
光ピックアップ4が内周初期位置にあるか否かは、スレッド内周寄りに設けられたスイッチ(不図示)によって検出することができる。このスイッチの検出信号は、サーボ回路20を介してマイクロコンピュータ30に出力される。この内周初期位置を基準に、加えたパルス駆動信号の数と方向から、ディスク1の半径方向に関する光ピックアップ4の位置を算出することができる。
【0029】
光ピックアップ4についてさらに詳細に説明する。
【0030】
光ピックアップ4は、対物レンズ10と、CD(Compact Disc)レーザ発光部11と、DVD(Digital Versatile Disk)レーザ発光部12と、BD(Blu-ray Disc)レーザ発光部13と、光検出器14と、アクチュエータ15と、を備える。
【0031】
対物レンズ10は、入射したレーザ光束を集光して光ディスク1のいずれかの記録層にレーザ光を集光させることにより光スポットを形成する。
【0032】
CDレーザ発光部11は、CDの記録や再生に必要なレーザ光(例えば、波長780nm帯のレーザ光)を射出する。
【0033】
DVDレーザ発光部12は、DVDの記録や再生に必要なレーザ光(例えば、波長660nm帯のレーザ光)を射出する。
【0034】
BDレーザ発光部13は、BDの記録や再生に必要なレーザ光(例えば、波長407nm帯のレーザ光)を射出する。
【0035】
光検出器14は、光ディスク1の対象記録層で反射された戻り光束を受光する。光検出器14は、受光した戻り光束を、その受光強度に相当する電気信号に変換して出力する。この電気信号は、非点収差法や3ビーム法等を用いて取得される。このため、この電気信号には、光ディスク1のトラック上に記録されたデータやアドレス情報、そして光スポットと記憶層とのフォーカス誤差に関する情報や、光スポットとトラックとの誤差に関する情報などが含まれている。
【0036】
アクチュエータ15は、対物レンズ10と連結されている。アクチュエータ15は、対物レンズ10をフォーカス方向に駆動するフォーカスアクチュエータと、トラッキング方向に駆動するトラッキングアクチュエータと(図1ではいずれも不図示)を備えている。トラッキングアクチュエータにより、光スポットが、トラッキング方向に移動可能となる。また、フォーカスアクチュエータにより、光スポットの合焦位置が、対物レンズ10のフォーカス方向に移動可能となる。
【0037】
図2には、光ピックアップ4の構造が模式的に示されている。図2に示すように、光ピックアップ4は、光ピックアップ本体4Aと、レンズユニット10Aとを備える。図2では、x軸方向を光ディスク1の半径方向とし、z軸方向を鉛直上向きとしている。
【0038】
光ピックアップ本体4Aは、光ピックアップ4の本体である。この光ピックアップ本体4Aがスレッド駆動モータ5により、x軸方向に搬送される。
【0039】
レンズユニット10Aは、対物レンズ10を含む。レンズユニット10Aは、光ディスク1に近い側に設けられている。レンズユニット10Aは、アクチュエータ15(具体的にはフォーカスアクチュエータ)を構成するフォーカスコイル15Aとスプリング15Bとを介して、光ピックアップ本体4Aと接続されている。
【0040】
なお、図2では、フォーカスコイル15Aとスプリング15Bとが分離して示されているが、スプリング15Bは、フォーカスコイル15Aのばね力を模式的に示したものであり、実際には、フォーカスコイル15Aとスプリング15Bとは、一体としてフォーカスアクチュエータを構成している。
【0041】
フォーカスコイル15Aは、光ピックアップ本体4Aに対してレンズユニット10Aをz軸方向(対物レンズ10のフォーカス方向)に駆動する。スプリング15Bは、レンズユニット10Aを、光ディスク1の反対側に付勢する。
【0042】
図2には、フォーカスコイル15Aの駆動により、光スポットがL0層に合焦している様子が示されている。また、図3には、フォーカスコイル15Aの駆動により、光スポットがL1層に合焦している様子が示されている。
【0043】
図1に戻り、光ディスク装置100は、誤差検出回路7と、アクチュエータ駆動回路8と、をさらに備える。
【0044】
誤差検出回路7には、光検出器14から出力された電気信号が入力される。誤差検出回路7は、入力された電気信号に基づいて、再生RF信号を出力する。この再生RF信号には、再生されるデータとともに、そのデータが記録された位置の情報、すなわちアドレス情報が含まれている。このアドレス情報を参照すれば、光スポットが、いずれの記録層のいずれの位置に合焦しているかがわかるようになっている。
【0045】
さらに、誤差検出回路7は、入力された電気信号に基づいて光スポットと記録層とのフォーカス誤差を示すフォーカス誤差信号と、光スポットとトラックとの誤差を示すトラッキング誤差信号とを生成して出力する。
【0046】
図4には、フォーカスコイル15Aを駆動して、レンズユニット10Aをz軸方向に一定速度で移動させたときのフォーカス誤差信号の時間変化の一例が示されている。図4に示すように、フォーカス誤差信号は、2回ほどS字状に変動している。
【0047】
2回のS字状の変動は、光スポットの合焦位置がL1層、L0層を横切る前後で表れている。光スポットの合焦位置がL1層、L0層にあるときの前後で、フォーカス誤差信号は、負のピークと、正のピークとを有している。そして、両ピークの中間の0レベルで光スポットの合焦位置が、L1層又はL0層に合致している。
【0048】
図1に戻り、アクチュエータ駆動回路8は、アクチュエータ15を駆動して、対物レンズ10をフォーカス方向及びトラッキング方向に移動させる。
【0049】
光ディスク装置100は、サーボ回路20をさらに備える。サーボ回路20は、上述のスピンドル駆動回路3と、スレッド駆動回路6と、誤差検出回路7と、アクチュエータ駆動回路8と、接続されている。
【0050】
より具体的には、サーボ回路20は、スピンドル駆動回路3を介してスピンドル駆動モータ2を回転させることにより、光ディスク1の回転を制御する。例えば、CLV(Constant Linear Velocity)制御を行う際には、サーボ回路20は、光ピックアップ4の位置(正確には、光スポットが形成された位置)における線速度が常に一定となるような制御信号をスピンドル駆動回路3に出力する。この場合、光ディスク1の回転は、光スポットが光ディスク1の内周側にある場合には高速になり、光ディスク1の外周側にある場合には低速になるように制御される。
【0051】
また、サーボ回路20は、光ピックアップ4のCDレーザ発光部11、DVDレーザ発光部12又はBDレーザ発光部13のいずれかに対して発光部の選択信号を出力する。この選択信号により、CDレーザ発光部11、DVDレーザ発光部12、BDレーザ発光部13のいずれかが選択される。CDレーザ発光部11、DVDレーザ発光部12又はBDレーザ発光部13のうち、選択された発光部は、レーザ光を対物レンズ10に向けて射出する。
【0052】
さらに、サーボ回路20には、誤差検出回路7から出力されるフォーカス誤差信号及びトラッキング誤差信号が入力される。サーボ回路20は、これらの誤差信号に対し位相補償を行ってアクチュエータ駆動信号を生成し、アクチュエータ駆動回路8を介して光ピックアップ4のアクチュエータ15を駆動する。この結果、アクチュエータ15と連結された対物レンズ10の変位が、フォーカス方向、トラッキング方向にサーボ制御され、光スポット(レーザ合焦点)が光ディスク1の対象記録面のトラックを正確にトレースするようになる。この動作をトラッキングサーボ及びフォーカスサーボという。フォーカスサーボでは、図4に示すように、フォーカス誤差信号が負のピークと正のピークの中間の0レベルに維持されるようなフォーカス制御が行われる。
【0053】
光スポットが光ディスク1の対象記録面のトラックをトレースすると、誤差検出回路7から再生RF信号が出力されるようになる。再生RF信号は、マイクロコンピュータ30に出力される。
【0054】
さらに、サーボ回路20は、粗シークを行う。粗シークの場合、サーボ回路20は、トラッキング方向の移動距離に応じたパルス数を、スレッド駆動回路6に出力する。スレッド駆動回路6は、この駆動パルスに従ってスレッド駆動モータ5を駆動して、光ピックアップ4をトラッキング方向に移動させる。なお、この粗シークの場合、サーボ回路20は、トラッキングサーボをオフし、横切ったトラックの数をカウントすることなく(すなわち誤差検出回路7から出力されるトラッキング誤差信号を参照することなく)、オープンループにより、光ピックアップ4を移動させる。粗シークの場合、トラッキング誤差信号を検出する必要がないので、高速に光ピックアップ4を移動させることができる。
【0055】
さらに、サーボ回路20は、精シークを行う。精シークの場合、サーボ回路20は、誤差検出回路7によって検出されるトラッキング誤差信号に基づいて横切るトラックの本数をカウントしながら光ピックアップ4のアクチュエータ15(より具体的には、トラッキングアクチュエータ)を駆動することにより、光スポットの位置を、トラッキング方向に移動させる。精シークの場合、トラッキング誤差信号を検出する必要があるので、光スポットの移動速度に限界がある。
【0056】
さらに、サーボ回路20は、フォーカスジャンプを行う。フォーカスジャンプでは、サーボ回路20は、フォーカスサーボをオフして、誤差検出回路7によって検出されるフォーカス誤差信号に基づいて、光ピックアップ4のアクチュエータ15(より具体的には、フォーカスアクチュエータ)を駆動することにより、光スポットの合焦位置を、対物レンズ10の光軸方向(z軸方向)に移動させる。
【0057】
フォーカスジャンプは、フォーカスコイル15Aに電磁気パルスとしてのパルス駆動信号を与えることにより行われる。ここで、L1層からL0層にフォーカスジャンプする場合について説明する。図5(A)には、このフォーカスジャンプ時に、フォーカスアクチュエータに与えられるキックパルス駆動信号の一例が示されている。
【0058】
図5(A)に示すように、フォーカスジャンプ開始時に、キックパルスと呼ばれるパルス駆動信号がフォーカスコイル15Aに与えられる。キックパルスは、対物レンズ10をフォーカス方向に加速するためにフォーカスコイル15Aに与えられる。フォーカスジャンプ直前に対物レンズ10が受ける力は、後述の負圧による上向きの力、フォーカス制御によってフォーカスコイル15Aが発生する上向きの力、下向きの重力、フォーカスアクチュエータのスプリング15Bによる下向きのばね力であり、これらの合力が0になった状態である。この状態でフォーカスアクチュエータに印加されている電圧を基準にして、キックパルス及びブレーキパルスが加算される。このキックパルス及びブレーキパルスにより、レンズユニット10Aは、対物レンズ10の光軸方向(z軸方向)への移動を開始する。なお、キックパルスが与えられると、フォーカス誤差信号は、図5(B)に示すように、正側に変動し、再び0レベルとなる。
【0059】
キックパルスが与えられた後、光スポットの合焦位置がL0層に近づくと、再び、フォーカス誤差信号がS字状に変動する。このS字状の変動を検出すると、フォーカスコイル15Aには、キックパルスとは極性が逆のブレーキパルスが与えられる。このブレーキパルスにより、レンズユニット10Aは減速し、z軸方向に関して停止状態となる。
【0060】
その後、サーボ回路20は、再びフォーカスサーボをオンし、光スポットの合焦位置がL0層に合致させるようなフォーカス制御を行う。
【0061】
サーボ回路20には、上述のようなフォーカスジャンプを行うための各種パラメータが設定されている。このようなパラメータには、図5(A)に示すように、例えば、キックパルスの波高h1と期間w1、ブレーキパルスの波高h2と期間w2等がある。
【0062】
上記パラメータのうち、キックパルスの波高h1と期間w1、ブレーキパルスの波高h2と期間w2は、安定したフォーカスジャンプを行うためには、極めて重要なパラメータとなる。この波高h1と期間w1であるキックパルスが、標準のキックパルス駆動信号である。この実施の形態では、キックパルスの期間w1が補正される。
【0063】
例えば、キックパルスの波高h1又は期間w1がブレーキパルスの波高h2又は期間w2に対して過度に大きい場合には、ブレーキパルスの終了時点で対物レンズ10の速度が過大となり、フォーカスループを閉じても目標レイヤのS字の変動の内側で止まり切れず、フォーカス誤差信号のS字範囲の外側に飛び出して、いわゆるフォーカス外れが発生するおそれがある。
【0064】
また、目標となる記録層のフォーカス誤差信号のS字変動を検出した後、光スポット(レーザ合焦点)がS字変動範囲の内側にある間にブレーキパルスを終わらせる必要があるので、ブレーキパルスの期間w2として与えられる値にも限界がある。このため、キックパルスの波高h1及び期間w1も、その上限に見合ったものとする必要がある。
【0065】
また、キックパルスの波高h1又は期間w1が小さすぎると、目標となる記録層に向かう間に外力を受けてS字カーブを検出する前にタイムアウトになるか、または目標となる記録層のS字変動範囲の手前外側でフォーカスサーボのループを閉じることになり、この場合にもフォーカス外れが発生する。
【0066】
以上のような事情から、対物レンズ10が受ける外力等も考慮して慎重にパラメータを設定する必要がある。特に、光ディスク装置100が、高倍速モードにも対応し、光ディスク1の回転数が3000rpm以上10000rpm程度までの広い範囲で動作する場合には、光ディスク1の高速回転に伴って発生する対物レンズ10の周辺の負圧の影響も考慮する必要がある。
【0067】
光ディスク装置100において、光ディスク1が回転すると、光ディスク1のディスク面近傍の空気は、回転する光ディスク1のディスク面に引っ張られ、光ディスク1の接線方向にほぼその線速度に等しい流速を持つ。しかしながら、対物レンズ10と光ディスク1との間では、ワーキングディスタンスが小さいため、空気の流路が狭くなる。このため、対物レンズ10と光ディスク1との間では空気の流速が増すと同時に周囲よりも気圧が下がり、そこに負圧が発生する。
【0068】
ここで、任意の流路における空気の流量をLとする。また、空気の比重量をγとし、重力加速度をgとする。さらに、流路上の2点(点A及び点Bとする)での流路の断面積をそれぞれSaとSbとし、点A及び点Bでの圧力をPaとPbとする。流路上の点Aと点Bとで基準面からの高低差はなく、空気が理想に近い流体と考えれば、ベルヌーイの定理により次の関係が成り立つ。
【0069】
【数1】


ここで、図2に示すように、光ディスク1の奥側に有るL0層にフォーカシングしている場合と、図3に示すように、光ディスクの表面側に有るL1層にフォーカシングしている場合とを、それぞれ上式に当てはめてみる。
【0070】
図6には、光ディスク1と光ピックアップ4とを、光ディスク装置100の上方から見た様子が示されている。
【0071】
ここで、光ピックアップ4(より具体的には、レンズユニット10A)の半径方向の長さをMとし、接線方向の長さをNとする。また、図2に示すように、光ピックアップ4がL0層にフォーカシングしている時の光ディスク1のディスク面から光ピックアップ4の最上部にあるレンズユニット10Aの最上面(レンズプロテクタ)までの距離をz0とする。さらに、図3に示すように、光ピックアップ4が光ディスク1のL1層にフォーカシングしている時の光ディスク1の表面から光ピックアップ4の最上部にあるレンズユニット10Aの最上面(レンズプロテクタ)までの距離をz1とする。この時、光ピックアップ1の上部の流路の断面積はそれぞれ、M×z0、M×z1となる。これらの断面積では、共に等しい流量が通過していると考えられるので、各々の流路における圧力をP0、P1とすると、上記式(1)から次式が求められる。
【0072】
【数2】


流量Lが0に近づいた場合、上記式(2)より、P0/γ=P1/γ=C(一定)となる。したがって、流量Lが0での光ピックアップ4の下面にかかる圧力をP3とすると、P0/γ=P1/γ=P3/γとなるため、上記式(2)から、次式が求められる。
【0073】
【数3】

【0074】
上式より位置zにおける圧力Pは次式のようになる。
【数4】

【0075】
この時、光ピックアップ4にかかる上向きの力Fは、次式のようになる。
【数5】

【0076】
続いて、L0層にフォーカシングした状態で受ける力に対し、位置zにおいて受ける上向きの力の差分ΔF0は、次式のようになる。
【数6】

【0077】
同様に、L1層にフォーカシングした状態で受ける力に対し、位置zにおいて受ける上向きの力の差分ΔF1は、次式のようになる。
【数7】

【0078】
式(6)に示す力の差分ΔF0は、光スポット(レーザ合焦点)がL0層上にあり、光ピックアップ4への力が釣り合った状態から、キックパルスによってL1層に移動する過程で更にレンズユニット10Aに加わる。また、式(7)の力は、L1層からL0層への移動過程で更にレンズユニット10Aに加わる。流量Lは線速度の自乗にほぼ比例するので、式(6)、式(7)の値は線速度の自乗に比例する。
【0079】
上述式(6)、式(7)に示すように、光ディスクが高速回転している場合、光ディスク1の下面で発生する負圧によって、対物レンズ10は、線速度の自乗にほぼ比例し、光ディスク1との距離の自乗に反比例した上向きの力を受ける。従って、光ディスク1の回転数が低い状態のときに最適化されたジャンプ方向によらない標準キックパルスの期間w1を基準にして、負圧により発生する力を打ち消す方向にキックパルスを補正するには、線速度の自乗に適当な係数を乗じた値を標準キックパルスの期間w1から差し引けばよい。
【0080】
例えば、上向きのフォーカスジャンプの場合、光ディスク1に近づくことによって更に大きな負圧による上向きの力を受け、上向き加速度が過大となる。そこで、回転数が低い状態に対して最適化された標準キックパルスの期間w1から、線速度の自乗に比例する補正量を減算する。
【0081】
また、下向きのフォーカスジャンプの場合、光ディスク1から遠ざかることによって上向きの力が減ると、上向きの力が不足し、下向き加速度が過大となる。そこで、回転数が低い状態に対して最適化された標準キックパルスの期間w1から、線速度の自乗に比例する補正量を減算する。
【0082】
なお、上記式(6)に示す上向きの力の差分ΔF0と上記式(7)に示す上向きの力の差分ΔF1とは、それぞれ値が異なることから、上記係数は、ジャンプ方向によって異なったものにする必要がある。
【0083】
図1に戻り、光ディスク装置100は、不揮発性メモリ21と、メモリ22と、マイクロコンピュータ30と、をさらに備える。
【0084】
不揮発性メモリ21は、例えばフラッシュメモリである。不揮発性メモリ21には、マイクロコンピュータ30によって実行されるソフトウエアプログラムや、サーボ回路20におけるサーボ調整値、その他光ディスク装置100の動作に必要な各種情報が記憶されている。
【0085】
メモリ22には、マイクロコンピュータ30により、不揮発性メモリ21に格納されたソフトウエアプログラムや各種データが読み込まれる。各種データには、上述のフォーカスジャンプ時のパラメータが含まれている。
【0086】
マイクロコンピュータ30は、CPU(Central Processing Unit)である。マイクロコンピュータ30は、メモリ22に格納されたソフトウエアプログラムを実行することにより、光ディスク装置100を統括制御する制御部として動作する。
【0087】
例えば、マイクロコンピュータ30は、メモリ22等を用いて、再生RF信号に対して復調処理その他の信号処理を行うことにより、光ディスク1に記録されたデータを再生する。
【0088】
なお、光ディスク1からの再生RF信号の中には、再生されるデータの位置情報となるアドレス情報も含まれている。マイクロコンピュータ30は、シークコマンド(またはシークを伴うリード/ライト等のコマンド)及び目標アドレスが外部から入力されると、現在アドレス、即ち現在の光スポット(レーザ合焦点)の位置を目標アドレスに近づけるようにサーボ回路20に対して粗シーク、精シーク等のトラックジャンプを指示する。
【0089】
ここで、目標アドレスが、現在、光スポット(レーザ合焦点)が合焦している記録層とは異なる記録層にあることも有り得る。この場合、マイクロコンピュータ30は、サーボ回路20に、目標アドレスのある記録層へのフォーカスジャンプを指令する。
【0090】
また、マイクロコンピュータ30は、上述のソフトウエアプログラムの実行により、図1に示すように、駆動部31、回転数検出部32、線速度取得部33及び生成部34として機能する。
【0091】
駆動部31は、サーボ回路20、スレッド駆動回路6、スレッド駆動モータ5又はアクチュエータ15を介して、対物レンズ10を光ディスク1の半径方向に駆動する。これとともに、駆動部31は、再生されるアドレス情報、あるいはスレッド駆動回路6に与えたキックパルス駆動信号及びブレーキパルス駆動信号に基づいて、光ディスク1の半径方向に関する対物レンズ10の位置を取得する。
【0092】
回転数検出部32は、サーボ回路20を介して、光ディスク1を回転するとともに、スピンドル駆動モータ2のエンコーダの出力信号に基づいて、光ディスク1の回転数を検出する。
【0093】
さらに、線速度取得部33は、駆動部31によって取得された対物レンズ10の位置と、回転数検出部32によって検出された光ディスク1の回転数とに基づいて、対物レンズ10の位置に対応する光ディスク1の線速度を取得する。
【0094】
生成部34は、線速度取得部33によって取得された線速度が大きくなればなるほど、光スポットが記録層間を移動する際のフォーカスアクチュエータの出力信号を小さくするように、フォーカスアクチュエータに入力されるキックパルス駆動信号を生成する。より具体的には、生成部34は、キックパルスの期間w1を補正することによりキックパルスの信号波形を確定する。これを受けて、サーボ回路20が、確定された信号波形を有するキックパルスを生成して、アクチュエータ駆動回路8に出力する。
【0095】
より具体的には、生成部34は、線速度の自乗に係数を乗ずることにより、補正量を求め、標準のキックパルスの期間w1から、補正量を差し引くことにより、キックパルスの期間w1を補正し、これをもってキックパルス駆動信号を生成する。
【0096】
次に、本発明の実施の形態に係る光ディスク装置100によって行われるフォーカスジャンプ動作について説明する。
【0097】
図7には、フォーカスジャンプ動作時に実行されるマイクロコンピュータ30のフォーカスジャンプ処理が示されている。外部よりシークコマンド及び目標アドレスが供給され、外部から供給された目標アドレスが再生RF信号から得られる現在アドレスと同一レイヤにあるか否かが判定され、目標アドレスと現在アドレスとが同一レイヤにない(異なるレイヤにある)場合、マイクロコンピュータ30は、図7に示すフォーカスジャンプ処理の実行を開始する。
【0098】
まず、マイクロコンピュータ30(線速度取得部33)は、対物レンズ10の半径位置と光ディスク1の回転数とを駆動部31及び回転数検出部32から取得し、これらを乗算することにより、線速度を算出する(ステップS401)。
【0099】
続いて、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、フォーカスジャンプの方向が上向きであるか否かを判定する(ステップS402)。上向きの場合(ステップS402;Yes)、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、線速度の自乗に第1の補正係数α1を乗算することにより、上向きジャンプ用のキックパルス期間w1の補正量d1を求める(ステップS403)。
【0100】
一方、フォーカスジャンプの方向が上向きでなかった場合(ステップS402;No)、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、線速度の自乗に第2の補正係数α2を乗算することにより、下向きジャンプ用のキックパルス期間w1の補正量d2を求める(ステップS404)。
【0101】
ステップS402又はステップS403が終了した後、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、図8に示すように、上下方向で共通な標準キックパルスの期間w1から補正量d1又はd2を減算し、サーボ回路20に設定する補正後のキックパルスの期間w1’を求める(ステップS405)。これにより、フォーカスパラメータがすべて決定され、キックパルス駆動信号の信号波形が確定する。すなわち、フォーカスアクチュエータの出力を小さくするように、キックパルス駆動信号が補正される。
【0102】
続いて、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、求めた補正後のキックパルスの期間w1’を、他のフォーカスジャンプに関するパラメータとともにサーボ回路20に設定する(ステップS406)。続いて、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、サーボ回路20に対しフォーカスジャンプコマンドを発行する(ステップS407)。サーボ回路20は、設定されたパラメータに従って生成されたキックパルス及びブレーキパルスをアクチュエータ駆動回路8に出力し、フォーカスジャンプを実行する。
【0103】
このように、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、フォーカスジャンプに関するパラメータの設定時に、ドライブの倍速モード等は参照せず、対物レンズ10の周辺の負圧により受ける力に直接関係する、線速度とジャンプ方向のみからキックパルスの期間w1の補正量d1又はd2を求める。
【0104】
なお、今回は、補正対象としてキックパルスの期間w1を補正する場合について説明しているが、図9に示すように、キックパルスの波高h1を補正量d1(d2)で補正するようにしても構わない。また、キックパルスの期間w1と波高h1の両方を補正するようにしてもよい。
【0105】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、光ディスク1の回転に伴って光ディスク1と対物レンズ10との間に発生する負圧により対物レンズ10にかかる力を打ち消すように、フォーカスコイル15Aに入力されるキックパルス駆動信号が補正される。これにより、フォーカスジャンプに対する負圧の影響を打ち消すことができるので、安定したフォーカスジャンプが可能となる。
【0106】
また、本実施の形態によれば、線速度の自乗に係数を乗じた値を用いてキックパルス駆動信号の補正が行われる。光ディスク1と対物レンズ10との間に発生する負圧により対物レンズ10が受ける力は、線速度の自乗にほぼ比例しているため、補正により負圧の影響を低減することができる。
【0107】
また、本実施の形態によれば、上向きジャンプ時には線速度の自乗に第1の係数α1を乗じて上向きジャンプ用補正量d1を求め、下向きジャンプ時には線速度の自乗に第2の係数α2を乗じて下向きジャンプ用補正量d2を求める。このようにすれば、上向きジャンプと下向きジャンプとで、補正量を個別に調整することができるので、より高精度に負圧の影響を低減することができる。
【0108】
また、本実施の形態によれば、光ディスク1の線速度が0の状態に対して最適化された標準キックパルスの波高h1または期間w1を補正する。このようにすれば、負圧が発生しない回転数でのキックパルスを基準として、キックパルスを補正することができるので、より高精度に負圧の影響を低減することができる。
【0109】
また、本実施の形態によれば、キックパルスの波高h1及び期間w1の少なくとも一方を補正する。これらのパラメータは、フォーカスジャンプ時にレンズユニット10Aに加えられる力に対応するので、これらのパラメータを補正すれば負圧の影響を低減することができる。
【0110】
なお、本実施の形態では、キックパルスの期間w1を補正したが、図10、図11に示すように、ブレーキパルスの波高h2又は期間w2を補正するようにしてもよい。図10、図11に示すように、期間w2は補正量d1(d2)だけ高くなり、ブレーキパルスの波高h2も補正量d1(d2)だけ高くなる。図7に示す処理において、マイクロコンピュータ30は、ステップ405において、ブレーキパルスの波高h2又は期間w2に補正量d1(d2)を加算すればよい。すなわち、フォーカスアクチュエータの出力を大きくするように、ブレーキパルス駆動信号が補正される。
【0111】
また、キックパルスと、ブレーキパルスの両方を補正するようにしてもよい。要は、キックパルスは、線速度が大きくなるに従って小さくなる、より具体的にはジャンプ進行方向の加速度が小さくなるように補正されるようにすればよい。ブレーキパルスは、線速度が大きくなるに従って大きくなる、より具体的にはジャンプ進行方向の速度を止められるエネルギーを持つように補正されるようにすればよい。
【0112】
また、光ディスク1の線速度が所定値(例えば3000rpmに相当する線速度)以上となった場合にのみ、フォーカスジャンプのパラメータの補正を行うようにしてもよい。この場合、図12に示すように、マイクロコンピュータ30(線速度取得部33)が線速度を求めた後(ステップS401)、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、線速度が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS410)。線速度が所定値以上であれば(ステップS410;Yes)、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、ステップS402以降の処理(上記実施形態と同様の処理)を行う。一方、線速度が所定値以上でなければ(ステップS410;No)、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、サーボ回路20に、予め定められていたパラメータ(例えば、キックパルスの波高h1、期間w1をそのままにして)を、サーボ回路20に設定する(ステップS406)。これにより、実質的に、レンズユニット10Aが負圧の影響を受ける線速度の範囲でのみ、パラメータを補正することができるので、不要な補正によりフォーカスジャンプを不安定にすることを防ぐことができる場合もある。
【0113】
なお、上記実施の形態では、光ピックアップ4が、光ディスク1の下方に配置された光ディスク装置100について説明したが、本発明は、他のタイプの光ディスク装置に適用することができる。例えば、光ディスク1を縦置きに設置するタイプにものにも本発明を適用することができる。この場合にも、光ピックアップ4とレンズユニット10Aとの間には、光ディスク1の高速回転により負圧が発生するためである。
【0114】
また、上記実施の形態では、線速度の自乗に係数を乗じたものを補正量としたが、近似可能であれば、線速度に係数を乗じたものを補正量としてもよい。図13には、線速度の自乗に係数α1を乗じた補正量Aと、線速度にα1を乗じた補正量Bとが示されている。図13に示すように、補正量A、Bはともに、線速度が大きくなるにつれて増加していることから、補正量Bもフォーカスジャンプのパラメータの補正量として用いることができる。
【0115】
また、上記実施形態では、フォーカスジャンプを行う度に、線速度の自乗に係数α1(又は係数α2)を乗じて、補正量d1(d2)を算出し、基準のキックパルスの期間w1から補正量d1(d2)を差し引くことにより、補正後のキックパルスの期間w1’を算出した(図7参照)。しかしながら、図14に示すように、線速度と補正後のキックパルスの期間w1との関係を示すテーブルを、不揮発性メモリ21に記憶しておくようにしてもよい。このテーブルには、各線速度v1〜vNにそれぞれ対応する上向きキックパルスの期間w1’[1,0]〜w1’[N,0]と、下向きキックパルスのw1’[1,1]〜w1’[N,1]とが対応付けられて記憶されている。
【0116】
この場合、マイクロコンピュータ30(線速度取得部33)は、図15に示すように、まず、線速度を算出する(ステップS401)。続いて、ジャンプが上向きである場合(ステップS402;Yes)、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、テーブルから線速度に対応する上向きキックパルスの期間を読み出す(ステップS421)。一方、ジャンプが下向きである場合(ステップS402;No)、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、テーブルから線速度に対応する下向きキックパルスの期間を読み出す(ステップS422)。
【0117】
その後、マイクロコンピュータ30(生成部34)は、テーブルから読み出された期間を含むパラメータをサーボ回路20に設定し(ステップS406)、フォーカスジャンプコマンドをサーボ回路20に発行する。
【0118】
このように、キックパルス等は、線速度が大きくなるに従って、連続的にエネルギーが小さくなるように補正されるようにしたが、テーブルを用いて段階的に補正されるようにしてもよい。テーブルを用いれば、補正量やキックパルスの期間w1’などを算出するための演算処理が不要となるので、マイクロコンピュータ30の処理負荷を軽減し、処理時間を短縮し、結果的にシーク時間を短縮することができる。
【0119】
なお、ステップS401で算出された線速度が、テーブルに登録された2つの線速度の間にある場合、マイクロコンピュータ30は、2つの線速度にそれぞれ対応するキックパルスの期間を用いた補間演算により、算出された線速度に対応するキックパルスの期間w1’を求めるようにしてもよい。
【0120】
光ディスク1の種類は、複数の記録層を有する構造のものであればなんでもよい。例えば、DVDであってもよいし、ブルーレイディスクであってもよい。
【0121】
なお、上記実施の形態において、実行されるプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)、DVD、MO(Magneto-Optical Disc)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをインストールすることにより、上述のプログラムを実行するシステムを構成することとしてもよい。
【0122】
また、プログラムをインターネット等の通信ネットワーク上の所定のサーバ装置が有するディスク装置等に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、ダウンロード等するようにしてもよい。
【0123】
また、上述の機能を、OS(Operating System)が分担して実現する場合又はOSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、ダウンロード等してもよい。
【0124】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、複数の記録層を有する多層構造の光ディスクに対する情報の記録又は再生に好適である。
【符号の説明】
【0126】
1 光ディスク
2 スピンドル駆動モータ
3 スピンドル駆動回路
4 光ピックアップ
4A 光ピックアップ本体
5 スレッド駆動モータ
6 スレッド駆動回路
7 誤差検出回路
8 アクチュエータ駆動回路
9 ターンテーブル
10 対物レンズ
10A レンズユニット
11 CDレーザ発光部
12 DVDレーザ発光部
13 BDレーザ発光部
14 光検出器
15 アクチュエータ
15A フォーカスコイル
15B スプリング
20 サーボ回路
21 不揮発性メモリ
22 メモリ
30 マイクロコンピュータ
31 駆動部
32 回転数検出部
33 線速度取得部
34 生成部
100 光ディスク装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録層を有する光ディスク上にレーザ光を集光させることにより光スポットを形成する対物レンズと、
入力された駆動信号に従って、前記対物レンズをそのフォーカス方向に駆動するフォーカスアクチュエータと、
前記対物レンズを前記光ディスクの半径方向に駆動するとともに、前記半径方向に関する前記対物レンズの位置を取得する駆動部と、
前記光ディスクを回転するとともに、前記光ディスクの回転数を検出する回転数検出部と、
前記回転数検出部によって検出された前記光ディスクの回転数と、前記駆動部によって取得された前記対物レンズの位置に基づいて、前記対物レンズの位置に対応する前記光ディスクの線速度を取得する線速度取得部と、
前記線速度取得部によって取得された線速度が大きくなればなるほど、前記光スポットが前記記録層間を移動する際の前記フォーカスアクチュエータの出力を小さくするように、前記フォーカスアクチュエータに入力されるキックパルス駆動信号を生成する生成部と、
を備える光ディスク装置。
【請求項2】
前記生成部は、
前記線速度の自乗に係数を乗ずることにより、前記キックパルス駆動信号の補正量を求め、
前記線速度が0のときに、前記光スポットが前記記録層間を移動する際に前記フォーカスアクチュエータに入力される基準のキックパルス駆動信号から、前記補正量を差し引くことにより、前記キックパルス駆動信号を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記生成部は、
上向きの前記フォーカスジャンプを行う場合には、前記線速度の自乗に第1の係数を乗ずることにより前記補正量を求め、
下向きの前記フォーカスジャンプを行う場合には、前記線速度の自乗に第2の係数を乗ずることにより前記補正量を求め、
前記基準のキックパルス駆動信号から、前記補正量を差し引くことにより、前記キックパルス駆動信号を生成する、
ことを特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記生成部は、
前記線速度が所定値以上の場合に、
前記基準のキックパルス駆動信号から、前記補正量を差し引くことにより、前記キックパルス駆動信号を生成する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記基準のキックパルス駆動信号の波高及び期間の少なくとも一方から、前記補正量を差し引くことにより、前記キックパルス駆動信号を生成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
複数の記録層を有する光ディスク上にレーザ光を集光させることにより光スポットを形成する対物レンズを、入力された駆動信号に従って、前記対物レンズのフォーカス方向に駆動して、前記光スポットが記録層間を移動するフォーカスジャンプ方法であって、
前記光ディスクの回転数と、前記光ディスクの半径方向に関する前記対物レンズの位置に基づいて、前記対物レンズの位置に対応する前記光ディスクの線速度を取得する線速度取得工程と、
前記線速度取得工程において取得された線速度が大きくなればなるほど、前記光スポットが前記記録層間を移動する際の前記フォーカスアクチュエータの出力を小さくするように、前記フォーカスアクチュエータに入力されるキックパルス駆動信号を生成する生成工程と、
を含むフォーカスジャンプ方法。
【請求項7】
複数の記録層を有する光ディスク上にレーザ光を集光させることにより光スポットを形成する対物レンズと、
入力された駆動信号に従って、前記対物レンズをそのフォーカス方向に駆動するフォーカスアクチュエータと、
前記対物レンズを前記光ディスクの半径方向に駆動するとともに、前記半径方向に関する前記対物レンズの位置を取得する駆動部と、
前記光ディスクを回転するとともに、前記光ディスクの回転数を検出する回転数検出部と、
を備える光ディスク装置を制御するコンピュータを、
前記回転数検出部によって検出された前記光ディスクの回転数と、前記駆動部によって取得された前記対物レンズの位置に基づいて、前記対物レンズの位置に対応する前記光ディスクの線速度を取得する線速度取得部と、
前記線速度取得部によって取得された線速度が大きくなればなるほど、前記光スポットが前記記録層間を移動する際の前記フォーカスアクチュエータの出力を小さくするように、前記フォーカスアクチュエータに入力されるキックパルス駆動信号を生成する生成部と、
して機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−37752(P2013−37752A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175360(P2011−175360)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】