説明

光ディスク装置、利得設定方法、およびプログラム

【課題】光ディスク装置、利得設定方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】収音部と、前記収音部により収音された音を光ディスクへ音声データとしてレーザ光により記録する光ピックアップ210と、フォーカス駆動信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部により生成された前記フォーカス駆動信号に基づいて前記レーザ光の焦点位置を調節するフォーカス調節部と、前記光ディスクのトラックを前記光ピックアップに追従させるトラッキング制御部224と、前記収音部により収音された音から前記フォーカス調節部の動作音を抽出する動作音抽出部と、前記フォーカス調節部による前記レーザ光の焦点位置の調節が行なわれており、かつ、前記トラッキング制御部による制御が行なわれていない期間における前記フォーカス駆動信号の利得を、前記動作音抽出部により抽出される動作音の音量に応じて変化させる利得設定部と、を備える光ディスク装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置、利得設定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近日、映像データや音声データなどの各種データを光ディスクに記録可能な光ディスク装置が広く普及している。当該光ディスク装置は、データの記録再生に際し、光ピックアップからレーザ光を照射し、光ディスクからのフォーカスエラー信号に基づいて光ピックアップを移動させてレーザ光の焦点位置を合わせるフォーカスサーボを行なう。その後、光ディスク装置は、同様に光ディスクからのトラッキングエラー信号に基づいてレーザ光が光ディスクのトラックを追従するようトラッキングサーボを行なう。こうしてフォーカスサーボおよびトラッキングサーボが行なわれている状態で、光ディスク装置は光ディスクにデータを記録したり、光ディスクに記録されているデータを再生することができる。
【0003】
このような光ディスク装置は、家庭用映像レコーダ、PC(Personal Comouter)の他、従来DV(Digital Video)テープなどの磁気テープを利用していた携帯用撮像機器にも実装されつつある。光ディスクに動画データを記録可能な携帯用撮像機器は、ランダムアクセス能力に優れる、記録した動画を迅速に再生できる、データの転送、編集が容易であるなど、従来の方式の携帯用撮像機器よりユーザの利便性が高いという利点を有する。
【0004】
一方、光ディスク装置が実装されている携帯用撮像機器においては、フォーカスサーボが行なわれており、トラッキングサーボが行なわれていない間に発生する光ピックアップの動作音が問題視される場合がある。当該動作音は、トラッキングサーボが行なわれていない間のトラッキングエラー信号がフォーカスエラー信号に漏れこみ、漏れこんだ信号に対しても光ピックアップが応答しようとして動作するために発生する。
【0005】
したがって、光ディスク装置が実装されている携帯用撮像機器は、本来収音して記録されるべき音声に加え、このような動作音も光ディスクに記録してしまいかねないため、かかる問題を是正する技術が研究されている。例えば特許文献1には、フォーカスサーボが行なわれており、トラッキングサーボが行なわれていない間、フォーカスエラー信号に対する利得を事前に設定した値に低下させて焦点位置を調整するためのフォーカス駆動信号を生成する光ディスク装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−135644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、光ディスクに記録される動作音の音量は、マイクロホンと光ピックアップの距離、光ピックアップの特性、光ディスクのチャッキングのばらつきなどの影響を受けるため、フォーカスエラー信号に対するフォーカス駆動信号の利得を事前に適切な値に設定することは困難であった。また、フォーカスエラー信号に対するフォーカス駆動信号の利得を過剰に低下させると、フォーカスサーボの安定性に問題が生じてしまうという事情があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、フォーカスエラー信号に対するフォーカス駆動信号の利得を動的に設定することが可能な、新規かつ改良された光ディスク装置、利得設定方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、収音部と、前記収音部により収音された音を光ディスクへ音声データとしてレーザ光により記録する光ピックアップと、フォーカスエラー信号に対して所定の利得を有するフォーカス駆動信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部により生成された前記フォーカス駆動信号に基づいて前記レーザ光の焦点位置を調節するフォーカス調節部と、前記光ディスクに形成されているトラックを前記光ピックアップが追従するよう制御するトラッキング制御部と、前記収音部により収音された音から前記フォーカス調節部の動作音を抽出する動作音抽出部と、前記フォーカス調節部による前記レーザ光の焦点位置の調節が行なわれており、かつ、前記トラッキング制御部による制御が行なわれていない第1の期間における前記フォーカス駆動信号の利得を、前記動作音抽出部により抽出される動作音の音量に応じて変化させる利得設定部と、を備える光ディスク装置が提供される。
【0010】
かかる構成においては、利得設定部が、動作音抽出部により抽出されたフォーカス調節部の実際の動作音の音量に応じて、上記第1の期間におけるフォーカス駆動信号の利得を変化させる。したがって、当該光ディスク装置は、上記第1の期間におけるフォーカス駆動信号の利得を事前に設定することなく、フォーカス調節部の実際の動作音の音量に応じて動的に設定することができる。
【0011】
前記利得設定部は、前記第1の期間における前記フォーカス駆動信号の利得を、前記フォーカス調節部による前記レーザ光の焦点位置の調節が行なわれており、かつ、前記トラッキング制御部による制御が行なわれている第2の期間より低い利得に設定してもよい。ここで、動作音は、フォーカス駆動信号の利得が高い方が大きく、フォーカス駆動信号の利得が低い方が小さいと考えられる。したがって、上記のように第1の期間における前記フォーカス駆動信号の利得を第2の期間より低い利得に設定することにより、第1の期間において光ディスクに記録される動作音を抑制することができる。
【0012】
前記利得設定部は、前記第1の期間における前記フォーカス駆動信号の利得を、前記動作音が所定音量以下となる利得に設定してもよい。かかる構成においては、光ディスクに記録される動作音の音量を所定音量以下に制限することができる。また、前記利得設定部は、前記第1の期間に、前記動作音が所定音量以下になるまで前記フォーカス駆動信号の利得を下げてもよい。
【0013】
前記利得設定部は、前記第1の期間であって、かつ、前記収音部による収音が行なわれている場合にのみ、前記動作音の音量に応じて前記フォーカス駆動信号の利得を変化させてもよい。かかる構成においては、収音部による収音が行われていない間に不要にフォーカス駆動信号の利得が低下され、フォーカスサーボの安定性が悪化してしまう場合を防止できる。
【0014】
前記光ディスク装置は、前記収音部により収音された音を音声データとして一時的に保持するメモリを更に備え、前記光ピックアップは、前記メモリに一時的に保持されている音声データを前記レーザ光により間欠的に前記光ディスクに記録し、前記フォーカス調節部による前記レーザ光の焦点位置の調節が開始された後に前記トラッキング制御部による制御が開始され、さらに前記トラッキング制御部による制御が開始された後に、前記光ピックアップによる前記音声データの前記光ディスクへの記録が開始されてもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、収音部と、前記収音部により収音された音を光ディスクへ音声データとしてレーザ光により記録する光ピックアップと、フォーカスエラー信号に対して所定の利得を有するフォーカス駆動信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部により生成された前記フォーカス駆動信号に基づいて前記レーザ光の焦点位置を調節するフォーカス調節部と、前記光ディスクに形成されているトラックを前記光ピックアップが追従するよう制御するトラッキング制御部と、を備える光ディスク装置に設けられるコンピュータを、前記収音部により収音された音から前記フォーカス調節部の動作音を抽出する動作音抽出部と、前記フォーカス調節部による前記レーザ光の焦点位置の調節が行なわれており、かつ、前記トラッキング制御部による制御が行なわれていない第1の期間における前記フォーカス駆動信号の利得を、前記動作音抽出部により抽出される動作音の音量に応じて変化させる利得設定部と、として機能させるためのプログラムが提供される。
【0016】
かかるプログラムは、例えばCPU、ROMまたはRAMなどを含むコンピュータのハードウェア資源に、上記のような動作音抽出部、および利得設定部の機能を実行させることができる。すなわち、当該プログラムを用いるコンピュータを、上述の動作音抽出部、および利得設定部として機能させることが可能である。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、収音部と、前記収音部により収音された音を光ディスクへ音声データとしてレーザ光により記録する光ピックアップと、フォーカスエラー信号に対して所定の利得を有するフォーカス駆動信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部により生成された前記フォーカス駆動信号に基づいて前記レーザ光の焦点位置を調節するフォーカス調節部と、前記光ディスクに形成されているトラックを前記光ピックアップが追従するよう制御するトラッキング制御部と、を備える光ディスク装置において実行される利得設定方法であって、前記収音部により収音された音から前記フォーカス調節部の動作音を抽出するステップと、前記フォーカス調節部による前記レーザ光の焦点位置の調節が行なわれており、かつ、前記トラッキング制御部による制御が行なわれていない第1の期間における前記フォーカス駆動信号の利得を、前記動作音の音量に応じて変化させるステップと、を含む利得設定方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明にかかる光ディスク装置、利得設定方法、およびプログラムによれば、フォーカスエラー信号に対するフォーカス駆動信号の利得を動的に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
また、以下に示す項目順序に従って当該「発明を実施するための最良の形態」を説明する。
〔1〕本実施形態にかかる光ディスク装置の概要
〔2〕本実施形態に至る経緯
〔3〕本実施形態にかかる光ディスク装置の機能
〔4〕本実施形態にかかる光ディスク装置の動作
〔5〕まとめ
【0021】
〔1〕本実施形態にかかる光ディスク装置の概要
まず、図1を参照し、本実施形態にかかる光ディスク装置20の構成を概略的に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態にかかる光ディスク装置20の外観を示した説明図である。図1に示したように、光ディスク装置20は、レンズ部22と、ビューファインダ24と、表示部26と、記録ボタン34と、再生ボタン36と、を備える。
【0023】
レンズ部22は、被写体から発せられる光を集光し、光ディスク装置20内の適切な位置に被写体の像を形成させる。ビューファインダ24には被写体の映像が映し出され、ユーザはかかるビューファインダ24に映し出される映像を確認しながらレンズ部22を向ける方向を調整することができる。
【0024】
表示部26は映像を表示する表示部としての機能を有する。例えば、表示部26は、現在レンズ部22により集光されている被写体の映像や、過去に記録済みの映像を表示することが可能である。
【0025】
記録ボタン34は、光ディスク装置20による映像や音声などのデータの光ディスク(図5における符号40)への記録の開始を指示するユーザ操作を検出する。また、ユーザは、データの記録中に記録ボタン34を押圧することにより、データの記録の一時停止を指示することもできる。また、データの記録の一時停止中に、データ記録の開始指示以外の処理が要求された場合、次のデータ記録のための待機状態が解除される、すなわち、一時停止状態が解除される。
【0026】
再生ボタン36は、光ディスク装置20に内蔵されている光ディスクに記録されている映像や音声などのデータの再生開始を指示するユーザ操作を検出する。また、ユーザは、データの再生中に再生ボタン36を押圧することにより、データ再生の一時停止を指示することもできる。
【0027】
なお、図1においては、光ディスク装置20の一例として携帯型撮像機器を示したに過ぎず、光ディスク装置20は携帯型撮像機器に限定されない。例えば、光ディスク装置20は、PC(Personal Computer)、家庭用映像処理装置(DVDレコーダ、ビデオデッキなど)、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、PDA(Personal Digital Assistants)、家庭用ゲーム機器、携帯用ゲーム機器、家電機器などの情報処理装置であってもよい。
【0028】
〔2〕本実施形態に至る経緯
以上、図1を参照して本実施形態にかかる光ディスク装置20について概略的に説明した。続いて、図2〜図4を参照し、本実施形態にかかる光ディスク装置20を創作するに至った経緯について説明する。
【0029】
図2は、従来の光ディスク装置21の構成を示した機能ブロック図である。図2に示したように、従来の光ディスク装置21は、スピンドルモータ404と、スピンドルサーボ部408と、光ピックアップ410と、信号検出部414と、制御部420と、駆動部430と、アドレス復号回路440と、コントローラ450と、スレッドモータ454と、スレッドサーボ部458と、イコライザ462と、2値化部466と、メモリ470と、再生信号処理部474と、音声出力部478と、操作部482と、撮像素子486と、マイクロホン490と、記録信号処理部492と、表示部27と、を備える。
【0030】
(記録モード時の動作)
従来の光ディスク装置21は、記録モード時、撮像素子486で取り込まれた被写体像の映像データおよびマイクロホン490で取り込まれた外部音の音声データは記録信号処理部492へ入力される。記録信号処理部492は、入力された映像データおよび音声データを光ディスク40へ記録可能なフォーマットに変換する。そして、記録信号処理部492により変換されたデータはメモリ470に一時的に蓄えられる。メモリ470に蓄えられたデータ量が所定量を超えると、コントローラ450により、メモリ470から映像データおよび音声データが読み出され、レーザ制御部494へ送られる。
【0031】
また、コントローラ450は、映像データおよび音声データを光ディスク40に記録するために、スピンドルサーボ部408にスピンドルモータ404を駆動させる。その後、コントローラ450は、レーザ制御部494に光ピックアップ410からレーザーを発光させる。そして、コントローラ450は、フォーカス制御部422およびフォーカス駆動部432にビームスポットを光ディスク40の所定の記録位置に移動させるためにフォーカスサーボを行なわせる。
【0032】
具体的には、フォーカスエラー信号がフォーカス制御部422へ供給され、フォーカス制御部422は、供給されたフォーカスエラー信号に対して所定のゲインを有するフォーカス駆動信号の生成をフォーカス駆動部434に指示する。そして、フォーカス駆動部434がフォーカス制御部422による制御に基づいてフォーカス駆動信号を生成し、光ピックアップ410はフォーカス制御部422により生成されたフォーカス駆動信号に基づいてビームスポットの位置を調整する。
【0033】
その後、コントローラ450は、スレッドサーボ部458にスレッドモータ454を駆動させて光ピックアップを光ディスク40の径方向へ移動させる。なお、図2においては、図面の明瞭性の観点からコントローラ450をCを丸で囲った記号で示している箇所がある。
【0034】
ビームスポットが所定の記録位置に到達した後、トラッキング制御部424およびトラッキング駆動部454がトラッキングサーボを行い、ビームスポットを光ディスク40のトラックに追従させる。そして、レーザ制御部494は、光ピックアップ410から照射されるレーザを制御し、メモリ470から転送された映像データおよび音声データを光ディスク40の記録トラックに書き込む。
【0035】
なお、光ディスク40に対する映像データおよび音声データの書き込みに付随して、光ディスク40からサーボエラー信号が読み出されて信号検出部414へ供給される。そして、このサーボエラー信号は信号検出部414から制御部420へ供給され、光ピックアップ410によるフォーカスサーボ制御およびトラッキングサーボ制御が行われる。
【0036】
ここで、記録信号処理部492からメモリ470へデータの転送速度に対して、メモリ470から光ディスク40へデータの書き込み速度の方が速い。したがって、光ディスク40へデータを書き込むに従ってメモリ470に蓄積されたデータは減少する。そして、データ蓄積量が所定量以下になった場合、コントローラ450はレーザ光制御部494に光ディスク40へのデータ書き込みを中断させる。さらに、コントローラ450は消費電力低減のため、フォーカスサーボ、トラッキングサーボをオフし、レーザを消光し、光ピックアップ410の動作を停止させる。
【0037】
そして引き続き映像データおよび音声データが撮像素子486およびマイクロホン490により取得され、メモリ470へのデータ蓄積量が所定量を超えると、コントローラ450が光ピックアップ410の動作が開始させ、再び上述したような光ディスク40へのデータ書き込みが開始される。したがて、従来の光ディスク装置21においては、記録モード時、上述したような光ディスク40へのデータ記録が間欠的に行われる。
【0038】
(再生モード時)
一方、再生モード時では、光ディスク40に記録された映像データおよび音声データが光ピックアップ410を介して読み出される。光ピックアップ410を介して読み出されたデータは、イコライザ462および2値化部466における処理を経て、メモリ470に蓄積される。そして、コントローラ450により、メモリ470に蓄積された映像データおよび音声データが再生信号処理部474に供給される。
【0039】
再生信号処理部474は、メモリ470から供給される映像データおよび音声データのフォーマットを再生用フォーマットに変換し、音声出力部478および表示部27へ供給する。なお、映像データおよび音声データの読み出し時に光学ピックアップ410によって検出されたサーボエラー信号は信号検出部414を介して制御部420へ供給され、制御部420および駆動部430が、光ピックアップ410によるトラッキングサーボ制御およびフォーカスサーボ制御を行わせる。
【0040】
ここで、再生モードにおいては、光ディスク40からメモリ470への映像データおよび音声データの転送速度の方が、メモリ470から表示部27および音声出力部478へのデータの転送速度よりも速い。したがって、光ディスク40からデータを読み出すに従いメモリ470に蓄積されるデータ量は増加する。そして、データ蓄積量が所定量以上になった場合、コントローラ450は光ディスク40からのデータ読み出しを中断し、光ピックアップ410の動作を停止させる。さらに引き続き再生が行われ、メモリ470のデータ蓄積量が所定以下となると、コントローラ450は光ピックアップ410の動作を開始され、再び上述した光ディスク40からのデータ読み出し制御が行われる。このように、従来の光ディスク装置21においては、再生モード時、上述したような光ディスク40からのデータ読み出しが間欠的に行われる。
【0041】
以上説明したように、光ディスク装置21においては、記録モード時、映像データおよび音声データの取得が続けられている間に、光ピックアップ410により映像データおよび音声データが光ディスク40へ間欠的に記録される。このため、光ピックアップ410の動作の開始に伴うフォーカスサーボおよびトラッキングサーボの開始、光ピックアップ410の動作の停止に伴うフォーカスサーボおよびトラッキングサーボの停止が頻繁に繰り返される。すなわち、従来の光ディスク装置21においては、記録モード時にフォーカスサーボおよびトラッキングサーボのオン、オフが頻繁に切替えられる。
【0042】
(従来の光ディスク装置21の問題)
しかし、従来の光ディスク装置21においては、フォーカスサーボが開始され、トラッキングサーボが開始される前までの第1の期間に、光ピックアップの動作音がマイクロホン490により収音され、音声データと共に光ディスク40へ記録されてしまう問題があった。かかる問題について図3および図4を参照して説明する。
【0043】
図3は、第1の期間におけるフォーカス駆動信号、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号の関係を示した説明図である。図3に示したように、フォーカスエラー信号には、光学的な要因のため、本来のフォーカス方向のサーボの取れ残りを示す信号に加えて、トラッキングエラー信号が漏れこむ。したがって、フォーカスサーボが開始され、トラッキングサーボが開始される前のトラッキングエラー信号の振幅が大きい第1の期間では、トラッキングエラー信号のフォーカスエラー信号への漏れこみ量が大きくなる。
【0044】
フォーカス制御部422による制御に基づき、フォーカス駆動部432は上記漏れこんだ信号にも応答しようとしてフォーカス駆動信号を生成するため、図3に示したようにフォーカス駆動信号の振幅が大きくなってしまう。光ピックアップ410のビームスポット位置を調整するためのアクチュエータはフォーカス駆動信号に基づいて動作するため、フォーカス駆動信号の振幅が大きさに応じて上記アクチュエータの動作音も大きくなる。その結果、上記アクチュエータの動作音がマイクロホン490に収音され、光ディスク40に記録されてしまう。
【0045】
一方、フォーカスサーボが行なわれ、さらにトラッキングサーボが行なわれている第2の期間においては、図4に示すようにアクチュエータの動作音に関する問題が改善される。
【0046】
図4は、第2の期間におけるフォーカス駆動信号、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号の関係を示した説明図である。図4に示したように、トラッキングサーボが開始された場合、トラッキングエラー信号の振幅が小さくなるため、トラッキングエラー信号のフォーカスエラー信号への漏れこみが小さくなる。その結果、フォーカス駆動部432により生成されるフォーカス駆動信号の振幅も小さくなり、上記アクチュエータの動作音もほとんど問題にならなくなる。
【0047】
以上説明した第1の期間におけるトラッキングエラー信号のフォーカスエラー信号への漏れこみは光学的に発生するため、完全に除去することは困難であった。
【0048】
これに対し、動作音の発生源であるアクチュエータを含む光ピックアップ410とマイクロホン490との距離を十分に設ければ、マイクロホン490に収音される動作音を抑制することも可能である。しかし、近年、携帯性および操作性の観点から携帯用撮像機器である光ディスク装置21の小型化が要求されており、限られた筐体の空間内に各構成が収納されるため、光ピックアップ410とマイクロホン490を十分に離隔して配置することも困難であった。また、マイクロホン490への動作音の混入を抑制するための遮音材を設ける方法も考えられるが、光ディスク装置21全体が大型化してしまう。
【0049】
また、第1の期間における動作音を抑制するために、フォーカス制御部422がフォーカス駆動部432に、事前に設定した第2の期間より低いゲインでフォーカス駆動信号を生成させる方法も考えられる。
【0050】
しかし、光ディスク40に記録される動作音の音量は、マイクロホン490と光ピックアップ410の距離、光ピックアップ410の特性、光ディスク40のチャッキングのばらつきなどの影響を受けるため、フォーカスエラー信号に対するフォーカス駆動信号のゲインを事前に適切な値に設定することは困難であった。また、フォーカスエラー信号に対するフォーカス駆動信号のゲインを過剰に低下させると、フォーカスサーボの安定性に問題が生じてしまうという事情があった。
【0051】
そこで、上記事情に鑑みて本実施形態にかかる光ディスク装置20を創作するに至った。本実施形態にかかる光ディスク装置20によれば、光ピックアップの動作音が所定音量以下になるように動的にフォーカス駆動信号のゲインを設定することが可能である。以下、このような光ディスク装置20について、図5〜図9を参照して詳細に説明する。
【0052】
〔3〕本実施形態にかかる光ディスク装置の機能
図5は、本実施形態にかかる光ディスク装置20の構成を示した機能ブロック図である。図5に示したように、本実施形態にかかる光ディスク装置20は、スピンドルモータ204と、スピンドルサーボ部208と、光ピックアップ210と、信号検出部214と、制御部220と、駆動部230と、アドレス復号回路240と、コントローラ250と、スレッドモータ254と、スレッドサーボ部258と、イコライザ262と、2値化部266と、メモリ270と、再生信号処理部274と、音声出力部278と、操作部282と、撮像素子286と、マイクロホン288と、記録信号処理部290と、動作音抽出部294と、フォーカスゲイン保持部296と、フォーカスゲイン設定部298と、表示部26と、を備える。
【0053】
スピンドルモータ204は、装着されている光ディスク40を、スピンドルサーボ部208から入力される制御信号に基づいて回転駆動する。なお、光ディスク40としては、CD−R(Compact Disc Recordable)/RW(ReWritable)、DVD−R(Digital Versatile Disc Recordable)/RW/+R/+RW/RAM(Ramdom Access Memory)およびBD(Blu−Ray Disc(登録商標))―R/BD−REなどがあげられる。
【0054】
また、光ディスク40に記録されるデータは、音楽、講演およびラジオ番組などの音楽データや、映画、テレビジョン番組、ビデオプログラム、写真、文書、絵画および図表などの映像データや、ゲームおよびソフトフェアなどの任意のデータであってもよい。
【0055】
光ピックアップ210は、光ディスク40に対してレーザ光を照射し、光ディスク40からの反射光を電気信号に変換して出力する。以下、図6を参照して光ピックアップ210の詳細な構成を説明する。
【0056】
図6は、光ピックアップ210の構成を示した説明図である。図6に示したように、光ピックアップ210は、LD(Laser Diode)302と、PBS(Polarizing Beam Splitter)304と、1/4波長板306と、対物レンズ308と、2軸アクチュエータ310と、PD(Photodiode)312と、を備える。
【0057】
LD302は、レーザ制御部292による制御に基づき光ディスク40の種類に応じた波長を有するレーザ光を発光する。PBS304は、LD302により発光されたレーザ光のうちで一方向に振動する成分を透過し、他方向に振動する成分を反射させる。1/4波長板306は、直線偏光を円偏光に、円偏光を直線偏光に変換する。対物レンズ308は、LD302から発光され、PBS304および1/4波長板306を透過したレーザ光を集光し、光ディスク40の記録層44にビームスポットを形成する。
【0058】
2軸アクチュエータ310は、フォーカス駆動部232により生成されるフォーカス駆動信号に基づき、対物レンズ308を光ディスク40との離隔方向に移動させる。すなわち、2軸アクチュエータ310は、ビームスポットの位置を調節するフォーカス調節部としての機能を有する。また、2軸アクチュエータ310は、トラッキング駆動部234により生成されるトラッキング駆動信号に基づき、対物レンズ308を光ディスク40の半径方向に移動させる。
【0059】
PD312は、光ディスク40の表面層42や記録層44などからの反射光が対物レンズ308、1/4波長板306、およびPBS304を介して入射され、入射された反射光を電気信号に変換する光電変換部として機能する。
【0060】
ここで、図5を参照して光ディスク装置20の構成の説明に戻ると、信号検出部214は、光ピックアップ210のPD312から入力される電気信号から、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、およびデータ信号などの信号を検出する。
【0061】
制御部220は、フォーカス制御部222およびトラッキング制御部224を備え、光ピックアップ210によるフォーカスサーボおよびトラッキングサーボを制御する。具体的には、フォーカス制御部222は、信号検出部214により検出されたフォーカスエラー信号に対して所定のゲイン(フォーカスゲイン、利得)を有するフォーカス駆動信号の生成をフォーカス駆動部232に指示する。本実施形態においては、後述するように、フォーカスサーボが行なわれておりトラッキングサーボが行なわれていない第1の期間におけるフォーカス駆動信号のフォーカスエラー信号に対するゲインの設定方法が重要である。また、トラッキング制御部224は、信号検出部214により検出されたトラッキングエラー信号に応じたトラッキング駆動信号の生成をトラッキング駆動部234に指示する。
【0062】
駆動部230は、フォーカス駆動部232およびトラッキング駆動部234を備え、制御部220により指示された駆動信号を生成する信号生成部としての機能を有する。具体的には、フォーカス駆動部232はフォーカス制御部222により指示されたフォーカス駆動信号を生成し、トラッキング駆動部234はトラッキング制御部224により指示されたトラッキング駆動信号を生成する。光ピックアップ210内の2軸アクチュエータ310は、駆動部230により生成されたフォーカス駆動信号およびトラッキング駆動信号に基づいて対物レンズを移動させ、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボを実現する。
【0063】
アドレス復号回路240は、光ディスク40に事前にトラックを蛇行させて記録されているアドレス情報をトラッキング信号(PP信号)として入力され、アドレス情報を復号してコントローラ250に供給する。
【0064】
コントローラ250は、アドレス復号回路240から供給されるアドレス情報に基づいて、光ピックアップ210を所望の位置へ移動させるよう例えばスレッドサーボ部258を制御する。また、コントローラ250は、図7を参照して後述するように、レーザ制御部292、フォーカス制御部222、およびトラッキング制御部224を制御し、レーザ光の照射、フォーカスサーボ、およびトラッキングサーボのオンオフを順次切替える。
【0065】
イコライザ262は光ピックアップ210から読み出された映像や音声などのデータ信号(RF信号)の波形整形を行い、2値化部266は波形整形されたデータ信号をデジタル形式に変換して映像データや音声データとしてメモリ270に供給する。
【0066】
再生信号処理部274は、メモリ270に蓄えられている映像データおよび音声データに、例えばEFMプラス復調、誤り訂正、デコード処理などを施し、映像データは表示部26へ、音声データは音声出力部278へ供給する。表示部26は再生信号処理部274から供給される映像データに基づいて映像を表示し、イヤホンやスピーカなどの音声出力部278は再生信号処理部274から供給される音声データに基づいて音声を出力する。
【0067】
操作部282は、図1に示した記録ボタン34や再生ボタン36などのユーザインターフェースに対応し、ユーザからの各種指示を検出する。各種指示としては、映像データおよび音声データの再生/一時停止/早送り/巻き戻し/音量調整等があげられる。
【0068】
撮像素子286は、レンズ部22により集光された被写体の映像を、電気信号である映像データに変換する。例えば、撮像素子286は、CMOS撮像素子であっても、LBCAST撮像素子であっても、CCD(Charge Coupled Device)であってもよい。マイクロホン288は、周囲で発せられた音を電気信号である音声データに変換する収音部としての機能を有する。記録信号処理部290は、撮像素子286で取り込まれた被写体像の映像データおよびマイクロホン288で取り込まれた外部音の音声データを、光ディスク40への記録用のフォーマットに変換する。
【0069】
続いて、光ディスク装置20の記録モード時、および再生モード時の動作について説明する。
【0070】
(記録モード時の動作)
光ディスク装置20は、記録モード時、撮像素子286で取り込まれた被写体像の映像データおよびマイクロホン288で取り込まれた外部音の音声データは記録信号処理部290へ入力される。記録信号処理部290は、入力された映像データおよび音声データを光ディスク40へ記録可能なフォーマットに変換する。そして、記録信号処理部290により変換されたデータはメモリ270に一時的に蓄えられる。メモリ270に蓄えられたデータ量が所定量を超えると、コントローラ250により、メモリ270から映像データおよび音声データが読み出され、レーザ制御部292へ送られる。
【0071】
また、コントローラ250は、映像データおよび音声データを光ディスク40に記録するために、スピンドルサーボ部208にスピンドルモータ204を駆動させる。その後、コントローラ250は、レーザ制御部292に光ピックアップ210からレーザーを発光させる。そして、コントローラ250は、フォーカス制御部222およびフォーカス駆動部232にビームスポットを光ディスク40の所定の記録位置に移動させるためにフォーカスサーボを行なわせる。
【0072】
その後、コントローラ250は、スレッドサーボ部258にスレッドモータ254を駆動させて光ピックアップ210を光ディスク40の径方向へ移動させる。なお、図5においては、図面の明瞭性の観点からコントローラ250をCを丸で囲った記号で示している箇所がある。
【0073】
ビームスポットが所定の記録位置に到達した後、トラッキング制御部224およびトラッキング駆動部234がトラッキングサーボを行い、ビームスポットを光ディスク40のトラックに追従させる。そして、レーザ制御部292は、光ピックアップ210から照射されるレーザ光を変調し、メモリ270から転送された映像データおよび音声データを光ディスク40の記録トラックに書き込む。
【0074】
なお、光ディスク40に対する映像データおよび音声データの書き込みに付随して、光ディスク40からサーボエラー信号が読み出されて信号検出部214へ供給される。そして、このサーボエラー信号は信号検出部214から制御部220へ供給され、光ピックアップ210によるフォーカスサーボ制御およびトラッキングサーボ制御が行われる。
【0075】
ここで、記録信号処理部290からメモリ270へデータの転送速度に対して、メモリ270から光ディスク40へデータの書き込み速度の方が速い。したがって、光ディスク40へデータを書き込むに従ってメモリ270に蓄積されたデータは減少する。そして、データ蓄積量が所定量以下になった場合、コントローラ250はレーザ光制御部292に光ディスク40へのデータ書き込みを中断させる。さらに、コントローラ250は消費電力低減のため、フォーカスサーボ、トラッキングサーボをオフし、レーザを消光し、光ピックアップ210の動作を停止させる。
【0076】
そして引き続き映像データおよび音声データが撮像素子286およびマイクロホン288により取得され、メモリ270へのデータ蓄積量が所定量を超えると、コントローラ250が光ピックアップ210の動作が開始させ、再び上述したような光ディスク40へのデータ書き込みが開始される。したがって、本実施形態にかかる光ディスク装置20においても、記録モード時、上述したような光ディスク40へのデータ記録が間欠的に行われる。
【0077】
(再生モード時)
一方、再生モード時では、光ディスク40に記録された映像データおよび音声データが光ピックアップ210を介して読み出される。光ピックアップ210を介して読み出されたデータは、イコライザ262および2値化部266における処理を経て、メモリ270に蓄積される。そして、コントローラ250により、メモリ270に蓄積された映像データおよび音声データが再生信号処理部274に供給される。
【0078】
再生信号処理部274は、メモリ270から供給される映像データおよび音声データのフォーマットを再生用フォーマットに変換し、音声出力部278および表示部26へ供給する。なお、映像データおよび音声データの読み出し時に光ピックアップ210によって検出されたサーボエラー信号は信号検出部214を介して制御部220へ供給され、制御部220および駆動部230が、光ピックアップ210によるトラッキングサーボ制御およびフォーカスサーボ制御を行わせる。
【0079】
ここで、再生モードにおいては、光ディスク40からメモリ270への映像データおよび音声データの転送速度の方が、メモリ270から表示部26および音声出力部278へのデータの転送速度よりも速い。したがって、光ディスク40からデータを読み出すに従いメモリ270に蓄積されるデータ量は増加する。そして、データ蓄積量が所定量以上になった場合、コントローラ250は光ディスク40からのデータ読み出しを中断し、光ピックアップ210の動作を停止させる。さらに引き続き再生が行われ、メモリ270のデータ蓄積量が所定以下となると、コントローラ250は光ピックアップ210の動作を開始され、再び上述した光ディスク40からのデータ読み出し制御が行われる。このように、本実施形態にかかる光ディスク装置20においても、再生モード時、上述したような光ディスク40からのデータ読み出しが間欠的に行われる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態にかかる光ディスク装置20においては、記録モード時、映像データおよび音声データの取得が続けられている間に、光ピックアップ210により映像データおよび音声データが光ディスク40へ間欠的に記録される。このため、光ピックアップ210の動作の開始に伴うフォーカスサーボおよびトラッキングサーボの開始、光ピックアップ210の動作の停止に伴うフォーカスサーボおよびトラッキングサーボの停止が頻繁に繰り返される。すなわち、従来の光ディスク装置21においては、記録モード時にフォーカスサーボおよびトラッキングサーボのオン、オフが頻繁に切替えられる。
【0081】
また、コントローラ250は、図7に示すように、フォーカスサーボを開始させた後にトラッキングサーボを開始させ、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボが行なわれている状態で光ピックアップ210による映像データおよび音声データの記録を開始させる。
【0082】
図7は、映像データおよび音声データの記録が開始される際の各機能の状態を示した説明図である。図7に示したように、映像データおよび音声データなどを含む入力信号の光ディスク40への記録は間欠的に行なわれ、例えばタイミングt5において開始される。
【0083】
また、光ディスク40への記録に先立つタイミングt1においてフォーカスサーボが開始され、タイミングt1より後のタイミングt2にトラッキングサーボが開始される。そして、タイミングt7において光ディスク40への記録、フォーカスサーボ、およびトラッキングサーボがオフされる。
【0084】
なお、本明細書においては、フォーカスサーボが開始されてからトラッキングサーボが開始されるまでの期間(t1〜t3)を第1の期間と称し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボが行なわれている期間(t3=t7)を第2の期間と称する。
【0085】
ここで図5に戻り、上記第1の期間におけるトラッキング駆動信号の利得設定に関する動作音抽出部294、フォーカスゲイン保持部296、およびフォーカスゲイン設定部298の機能について説明する。
【0086】
動作音抽出部294は、マイクロホン288により収音された音声から、光ピックアップ210のフォーカス駆動信号に基づく動作音、すなわち2軸アクチュエータ310の動作音を抽出し、フォーカスゲイン設定部298に出力する。具体的には、動作音抽出部294は、バンドパスフィルタを用い、マイクロホン288により収音された音声から2軸アクチュエータ310の動作音の周波数帯域(例えば、1000Hz)の成分を抽出する。2軸アクチュエータ310の動作音の周波数帯域は、フォーカス駆動信号の周波数帯域と一致または近似するため特定可能である。また、動作音抽出部294は、高速フーリエ変換を施すことにより2軸アクチュエータ310の動作音の周波数帯域の成分を抽出してもよい。
【0087】
なお、光ディスク装置20の周囲で恒常的な音声が発生している場合、2軸アクチュエータ310の動作音の周波数帯域の成分を抽出しても、2軸アクチュエータ310の動作音のみを抽出したことにならない場合がある。したがって、動作音抽出部294は、2軸アクチュエータ310の動作音が発生すると考えられる第1の期間における動作音を、第2の期間において抽出した2軸アクチュエータ310の動作音の周波数帯域の成分との差分を計算して求めてもよい。
【0088】
フォーカスゲイン保持部296には、初期ゲイン値および固定ゲイン値が格納されている。フォーカスゲイン設定部298は、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボが行なわれている第2の期間においては上記固定ゲイン値をフォーカス制御部222に出力する利得設定部としての機能を有する。その結果、第2の期間においては、フォーカス駆動部232が、フォーカスエラー信号を上記固定ゲイン値で増幅したフォーカス駆動信号を生成する。
【0089】
一方、フォーカスゲイン設定部298は、フォーカスサーボが開始されてからトラッキングサーボが開始されるまでの第1の期間においては、動作音抽出部294により抽出される動作音の音量に基づいて上記初期ゲイン値を随時変更してフォーカス制御部222に出力する。
【0090】
例えば、フォーカスゲイン設定部298は、図8に示すように、動作音量が所定値以下になるまでフォーカスゲインを初期ゲイン値から減少させてもよい。
【0091】
図8は、第1の期間におけるフォーカスゲインの変化の様子を示した説明図である。図8の下段に示したように、フォーカスゲイン設定部298は、第1の期間の開始時点であるタイミングt1におけるフォーカスゲインを初期ゲイン値x1に設定する。しかし、動作音量が所定値ythを上回っているため、動作音量が所定値yth以下になるまでフォーカスゲインを減少させる。
【0092】
そして、タイミングt2において動作音量が所定値yth以下になったため、フォーカスゲイン設定部298は、タイミングt2におけるフォーカスゲインx2を第1の期間の残りの期間のゲイン値として設定する。そして、第2の期間の開始時点であるタイミングt3になると、フォーカスゲイン設定部298はフォーカスゲインを固定値x3に設定する。固定値x3はフォーカスゲインx2より大きいが、トラッキングサーボが行なわれているため、動作音は問題を生じるほどの大きさに至らないものと想定される。
【0093】
なお、図8においては、フォーカスゲイン設定部298によるフォーカスゲインの設定方法の一例を示したに過ぎず、本発明が係る例に限定されることはない。例えば、上記では動作音量が所定値yth以下になったタイミングt2におけるフォーカスゲインを第1の期間の残りの期間のゲイン値として設定する例を説明したが、フォーカスゲイン設定部298は、第1の期間にわたって動作音量が所定値yth以下になるようにフォーカスゲインを動的に設定し続けてもよい。
【0094】
また、上記ではフォーカスゲイン設定部298がフォーカスゲインを初期ゲイン値x1から除除に下げることによりフォーカスゲインx2に至る例を説明したが、フォーカスゲイン設定部298は異なる方法で動作音量が所定値yth以下になるフォーカスゲインx2を特定してもよい。例えば、フォーカスゲイン設定部298は、初期ゲイン値x1の半分の値にフォーカスゲインを設定し、動作音量が所定値yth以下であればフォーカスゲインを所定倍にし、動作音量が所定値yth以上であればフォーカスゲインをさらに半分にしてもよい。かかる構成によれば、フォーカスゲインx2に至るまでに要する時間を短縮することができる。
【0095】
また、フォーカスゲイン設定部298は、動作音量にフォーカスゲインの減少量が対応付けられているゲインテーブルを保持しておき、最適な速度設定値を選択してもよい。
【0096】
また、上記ではフォーカスゲインx2が第2の期間における固定ゲイン値x3より小さい場合を説明したが、動作音量が所定値yth以下となるのであれば、フォーカスゲインx2は固定ゲイン値x3より大きくてもよい。
【0097】
また、フォーカスゲインの下限値を設け、フォーカスゲイン設定部298は第1の期間におけるフォーカスゲインを下限値を下回らない範囲で設定してもよい。かかる構成によれば、フォーカスゲインが過度に減少することにより、フォーカスサーボの安定性が過度に悪化してしまう場合を防止することができる。
【0098】
なお、フォーカスゲイン設定部298は、前記第1の期間であって、かつ、マイクロホン288による収音が行なわれている場合にのみ、動作音の音量に応じてフォーカス駆動信号のゲインを変化させてもよい。かかる構成においては、マイクロホン288による収音が行われていない間に不要にフォーカス駆動信号のゲインが低下され、フォーカスサーボの安定性が悪化してしまう場合を防止できる。
【0099】
〔4〕本実施形態にかかる光ディスク装置の動作
以上、本実施形態にかかる光ディスク装置20の構成および機能について説明した。続いて、図9を参照して本実施形態にかかる光ディスク装置20において実行されるゲイン設定方法を説明する。
【0100】
図9は、光ディスク装置20において実行されるゲイン設定方法の流れを示したフローチャートである。図9に示したように、まず、第1の期間が到来すると(S504)、フォーカスゲイン設定部298はフォーカスゲイン保持部296から初期ゲイン値を読出し、初期ゲイン値をフォーカスゲインとして設定する(S508)。その後、コントローラ250はスピンドルモータ204、レーザ光の照射、およびフォーカスサーボが開始されるよう制御する(S512)。
【0101】
そして、マイクロホン288により収音された音から動作音抽出部294が2軸アクチュエータ310の動作音を抽出する(S516)。続いて、フォーカスゲイン設定部298は、動作音抽出部294により抽出された動作音が所定音量以下であるか否かを判断し(S520)、所定音量以下でない場合にはフォーカスゲインを現在設定値より低い値に設定する(S524)。さらに、フォーカスゲイン設定部298は、フォーカスゲインが下限値に達したか否かを判断し(S528)、下限値に達していない場合にはS516からの処理が繰り返される。
【0102】
一方、フォーカスゲイン設定部298は、S520において動作音抽出部294により抽出された動作音が所定音量以下であると判断した場合、またはS528フォーカスゲインが下限値に達したとにおいて判断した場合、フォーカスゲインの現在設定値を第1の期間の残り期間のフォーカスゲインとして設定する(S532)。
【0103】
〔5〕まとめ
以上説明したように、本実施形態にかかる光ディスク装置20においては、フォーカスゲイン設定部298が、動作音抽出部294により抽出された2軸アクチュエータ310の実際の動作音の音量に応じて、第1の期間におけるフォーカス駆動信号のゲインを変化させる。したがって、当該光ディスク装置20は、第1の期間におけるフォーカス駆動信号の利得を事前に設定することなく、2軸アクチュエータ310の実際の動作音の音量に応じて動的に設定することができる。
【0104】
また、フォーカスゲイン設定部298は、第1の期間におけるフォーカス駆動信号のゲインを、動作音が所定音量以下となる利得に設定する。したがって、光ディスク40に記録される動作音の音量を所定音量以下に制限することができる。
【0105】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0106】
例えば、本明細書の光ディスク装置20の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、光ディスク装置20の処理における各ステップは、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)を含んでもよい。また、光ディスク装置20に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した光ディスク装置20の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。また、図5の機能ブロック図で示したそれぞれの機能ブロックをハードウェアで構成することで、一連の処理をハードウェアで実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本実施形態にかかる光ディスク装置20の外観を示した説明図である。
【図2】従来の光ディスク装置21の構成を示した機能ブロック図である。
【図3】第1の期間におけるフォーカス駆動信号、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号の関係を示した説明図である。
【図4】第2の期間におけるフォーカス駆動信号、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号の関係を示した説明図である。
【図5】本実施形態にかかる光ディスク装置20の構成を示した機能ブロック図である。
【図6】光ピックアップ210の構成を示した説明図である。
【図7】映像データおよび音声データの記録が開始される際の各機能の状態を示した説明図である。
【図8】第1の期間におけるフォーカスゲインの変化の様子を示した説明図である。
【図9】光ディスク装置20において実行されるゲイン設定方法の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
20、21 光ディスク装置
40 光ディスク
210 光ピックアップ
222 フォーカス制御部
224 トラッキング制御部
232 フォーカス駆動部
234 トラッキング駆動部
250 コントローラ
288 マイクロホン
294 動作音抽出部
296 フォーカスゲイン保持部
298 フォーカスゲイン設定部
310 2軸アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収音部と;
前記収音部により収音された音を光ディスクへ音声データとしてレーザ光により記録する光ピックアップと;
フォーカスエラー信号に対して所定の利得を有するフォーカス駆動信号を生成する信号生成部と;
前記信号生成部により生成された前記フォーカス駆動信号に基づいて前記レーザ光の焦点位置を調節するフォーカス調節部と;
前記光ディスクに形成されているトラックを前記光ピックアップが追従するよう制御するトラッキング制御部と;
前記収音部により収音された音から前記フォーカス調節部の動作音を抽出する動作音抽出部と;
前記フォーカス調節部による前記レーザ光の焦点位置の調節が行なわれており、かつ、前記トラッキング制御部による制御が行なわれていない第1の期間における前記フォーカス駆動信号の利得を、前記動作音抽出部により抽出される動作音の音量に応じて変化させる利得設定部と;
を備えることを特徴とする、光ディスク装置。
【請求項2】
前記利得設定部は、前記第1の期間における前記フォーカス駆動信号の利得を、前記フォーカス調節部による前記レーザ光の焦点位置の調節が行なわれており、かつ、前記トラッキング制御部による制御が行なわれている第2の期間より低い利得に設定することを特徴とする、請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記利得設定部は、前記第1の期間における前記フォーカス駆動信号の利得を、前記動作音が所定音量以下となる利得に設定することを特徴とする、請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記利得設定部は、前記第1の期間に、前記動作音が所定音量以下になるまで前記フォーカス駆動信号の利得を下げることを特徴とする、請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記利得設定部は、前記第1の期間であって、かつ、前記収音部による収音が行なわれている場合にのみ、前記動作音の音量に応じて前記フォーカス駆動信号の利得を変化させることを特徴とする、請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記光ディスク装置は、前記収音部により収音された音を音声データとして一時的に保持するメモリを更に備え、
前記光ピックアップは、前記メモリに一時的に保持されている音声データを前記レーザ光により間欠的に前記光ディスクに記録し、
前記フォーカス調節部による前記レーザ光の焦点位置の調節が開始された後に前記トラッキング制御部による制御が開始され、さらに前記トラッキング制御部による制御が開始された後に、前記光ピックアップによる前記音声データの前記光ディスクへの記録が開始されることを特徴とする、請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項7】
収音部と、前記収音部により収音された音を光ディスクへ音声データとしてレーザ光により記録する光ピックアップと、フォーカスエラー信号に対して所定の利得を有するフォーカス駆動信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部により生成された前記フォーカス駆動信号に基づいて前記レーザ光の焦点位置を調節するフォーカス調節部と、前記光ディスクに形成されているトラックを前記光ピックアップが追従するよう制御するトラッキング制御部と、を備える光ディスク装置に設けられるコンピュータを、
前記収音部により収音された音から前記フォーカス調節部の動作音を抽出する動作音抽出部と;
前記フォーカス調節部による前記レーザ光の焦点位置の調節が行なわれており、かつ、前記トラッキング制御部による制御が行なわれていない第1の期間における前記フォーカス駆動信号の利得を、前記動作音抽出部により抽出される動作音の音量に応じて変化させる利得設定部と;
として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
収音部と、前記収音部により収音された音を光ディスクへ音声データとしてレーザ光により記録する光ピックアップと、フォーカスエラー信号に対して所定の利得を有するフォーカス駆動信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部により生成された前記フォーカス駆動信号に基づいて前記レーザ光の焦点位置を調節するフォーカス調節部と、前記光ディスクに形成されているトラックを前記光ピックアップが追従するよう制御するトラッキング制御部と、を備える光ディスク装置において実行される利得設定方法であって:
前記収音部により収音された音から前記フォーカス調節部の動作音を抽出するステップと;
前記フォーカス調節部による前記レーザ光の焦点位置の調節が行なわれており、かつ、前記トラッキング制御部による制御が行なわれていない第1の期間における前記フォーカス駆動信号の利得を、前記動作音の音量に応じて変化させるステップと;
を含むことを特徴とする、利得設定方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−146545(P2009−146545A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325223(P2007−325223)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】