光ディスク装置およびアクチュエータ制御方法
【課題】トラッキングアクチュエータの感度に影響を及ぼす温度変化を検知し、光ディスクのトラック情報のない面を走査する場合でも精度のよいトラッキングアクチュエータ制御を行うことができる光ディスク装置およびアクチュエータ制御方法を提供する。
【解決手段】駆動信号に基づいて、レーザ光を照射するピックアップの対物レンズを駆動するトラッキングアクチュエータ18aと、トラッキングアクチュエータ18aの感度に影響を及ぼす温度変化を検出または推定する検出手段と、前記状態検出手段によって検出または推定された情報に基づいて、前記駆動信号を補正する補正手段と、を具備する。
【解決手段】駆動信号に基づいて、レーザ光を照射するピックアップの対物レンズを駆動するトラッキングアクチュエータ18aと、トラッキングアクチュエータ18aの感度に影響を及ぼす温度変化を検出または推定する検出手段と、前記状態検出手段によって検出または推定された情報に基づいて、前記駆動信号を補正する補正手段と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に係わり、特に装置の温度変化に応じてピックアップ駆動制御を補正することが可能な光ディスク装置およびアクチュエータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に光ディスクのレーベル面に画像情報等を記録する場合、例えば、特開2003−203348号公報に開示されているように、光ディスクのレーベル面にはトラック情報がないため、画像情報形成時のピックアップの光ディスクの径方向における走査は、まず、ステッピングモータにより任意の位置に移動を行う。そして、ステッピングモータの移動分解能の最小移動分解能以上の微細な移動を行う場合は、さらにトラッキングアクチュエータを駆動させることによりレーザ光を任意の記録位置に移動させる。
【特許文献1】特開2003−203348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の技術においては、光ディスクのレーベル面に情報を記録する場合、トラッキングアクチュエータを駆動させることによりレーザ光を任意の記録位置に移動させる。この場合、トラッキングアクチュエータの移動量が小さいため移動量の正確さが要求される。しかし、トラッキングアクチュエータのコイルおよびアクチュエータマグネット等の温度上昇により、情報記録を開始した時点と所定の時間が経過した時点とでは、トラッキングアクチュエータの感度が異なるため、記録精度が低下してしまう。
【0004】
本発明の目的は、トラッキングアクチュエータの感度に影響を及ぼす温度変化を検知し、光ディスクのトラック情報のない面を走査する場合でも精度のよいトッラキングアクチュエータ制御を行うことができる光ディスク装置およびアクチュエータ制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、光ディスクのレーベル面にレーザ光を照射し、情報の記録を行う光ディスク装置であって、駆動信号に基づいて、前記レーザ光を照射するピックアップの対物レンズを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの前記駆動信号に対する感度に影響を及ぼす温度変化を検出または推定する検出手段と、前記検出手段によって検出または推定された情報に基づいて、前記駆動信号を補正する補正手段とを具備することを特徴とする光ディスク装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明を用いることにより、トラッキングアクチュエータの感度に影響を及ぼす温度変化を検知し、光ディスクのトラック情報のない面を走査する場合でも精度のよいトラッキングアクチュエータ制御を行うことができる光ディスク装置およびアクチュエータ制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0008】
図1には、本発明の第1実施形態に係る情報処理装置のシステム構成図が示されている。この情報処理装置は、例えばノートブック型コンピュータ10として実現されている。
【0009】
図1に示すように、コンピュータ10は、コンピュータ本体と、ディスプレイユニット12とから構成されている。ディスプレイユニット12にはLCD(Liquid Crystal Display)からなる表示画面121が組み込まれている。
【0010】
コンピュータ10は、パワーボタン9、LED表示部(表示手段)220、キーボード8、タッチパッド7、光ディスク装置11等を備えている。
【0011】
光ディスク装置11は、図2に示すように、イジェクトボタン11aを備えており、このイジェクトボタン11aを押下する等により、ドロワー部11bが図3に示すように射出される。
【0012】
図4は、本発明に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【0013】
光ディスク装置11にセットされた光ディスク30は、ユーザデータを記録可能な光ディスクあるいは読出し専用の光ディスクであるが、この実施形態では記録可能な光ディスクとして説明する。なお、光ディスクとしては、DVD−R等が挙げられるが、これに限らずレーベル面に記録可能な光ディスクであればよい。
【0014】
光ディスク30は、レーベル面30aを光ピックアップ53に対向するようにディスクモータ31に装着される。ディスクモータ31は、コントローラ22の指令により、FG(モータ回転数パルス出力部)54のパルス信号の周波数が所定の値になるように回転制御される。この所定の値は、光ディスク30の半径方向の記録する位置に対応して変化するように制御され、これによりCLV(Constant Linear Velocity)制御による記録を行う。
【0015】
光ピックアップ53は、フォーカス方向およびトラック方向に対物レンズを移動可能な2軸アクチュエータである、トラッキングアクチュエータ18aおよびフォーカスアクチュエータ19aによって駆動される。トラッキングアクチュエータ18aおよびフォーカスアクチュエータ19aは、コントローラ22からの指令に基づいて、トラッキングドライバ18およびフォーカスドライバ19により制御される。これらのアクチュエータは、例えば、ムービングコイル式でありマグネットは固定されている形式を用いる。
【0016】
また光ピックアップ53は、半導体レーザの出射光をモニターするためのディテクタ(図示せず)を備えている。また、光ディスク30からの反射光を検出するディテクタは、多分割された構造をしており(後述)、RFアンプ20で必要な演算処理が行われる。
【0017】
また光ピックアップ53には、ピックアップ位置検出器16が備えられている。このピックアップ位置検出器16は、光ディスク30のレーベル面30aにおいて半径方向の位置情報を検出する、例えばリニアセンサである。ピックアップ位置検出器16によって検出された位置情報は、コントローラ22に送られる。コントローラ22は、この位置情報と目的位置とを比較して位置誤差信号を検出し、この位置誤差信号の値が少なくなるように送りドライバ17を介して送りモータ15を駆動し、送りモータ15の回転運動をリードスクリュー14によって直線運動へと変換し、光ピックアップ53を移動する。この際、送りモータ15からリードスクリュー14を介した光ピックアップ53の移動には、主にガタ等の理由により、位置情報と目的位置との誤差を0にするように光ピックアップ53を移動することができない。また送りモータ15がステッピングモータである場合は、摩擦等の影響で上述した誤差が大きくなる傾向にある。この誤差は、例えば100μm程度となると、温度や経年劣化等により大きく変化する場合がある。
【0018】
このような影響を避けるために、コントローラ22は、位置誤差信号を適切な増幅度でトラッキングドライバ18に供給し、トラッキングアクチュエータ18aを制御し、光ピックアップ53からのレーザスポットの位置を目的の位置に制御する。なお、本実施形態では、レーザスポットの位置を検出する手段を備えていないため、発生する誤差は、上述した増幅度とトラッキングアクチュエータ18aの感度に依存する。
【0019】
図示しないホストコントローラからの画像情報は、所定のインターフェイスを介してコントローラ22に伝達される。伝達された画像情報は、コントローラ22により、光ディスク30の回転角および半径位置に応じて、レーザドライバモニター21を介して、光ピックアップ53からレーベル面30aにレーザ光を照射し、画像等を形成する。
【0020】
図5は、トラッキングアクチュエータの感度変化に対する補正処理を説明するための機能ブロック図である。
【0021】
はじめに、本実施形態でのフォーカス制御について説明する。なお、本実施形態では、光ピックアップのフォーカスエラー検出方法に非点収差法を用いた場合について説明する。
【0022】
光ピックアップ53から出射されたレーザ光は、光ディスク30で反射され、ディテクタ24に照射される。ディテクタ24は、図示したように分割された構造をしており、例えばA,B,C,Dの4つの領域に分割されている。
【0023】
ディテクタ24の分割領域AおよびCの信号を加算した信号を演算増幅器25のプラス側に、ディテクタ24の分割領域BおよびDの信号を加算した信号を演算増幅器25のマイナス側に入力する。演算増幅器25からの信号は、位相補償等の位置制御の安定化のためのイコライザ26を介して、切り替え手段27を通りフォーカスドライバ19に伝達され、フォーカスアクチュエータ19aを駆動し対物レンズを移動させることにより、フォーカス制御を行う。また、コントローラ22には、ピックアップ位置検出器16、FG54、光ディスク30の一回転分の情報等を記録するメモリ23、切り替え手段27、比較回路28、基準電圧値記憶手段29、可変増幅回路18b、送りドライバ17等が接続されている。
【0024】
光ディスク30のデータ記録面に情報を記録および再生する場合、演算増幅器25によって生成されるフォーカスエラー信号に基づいてフォーカスアクチュエータ19aが駆動されるように、コントローラ22によって切り替え手段27が制御され、これによってフォーカスサーボループが構成される。
【0025】
一方、光ディスク30のレーベル面30aに画像情報等を記録する場合、フォーカス制御は、上述した光ディスク30に情報を記録する場合と同様の光学系を使用する。このため、光ディスク30上のレーザ光の合焦点において、光学収差によりフォーカスエラー信号のセンターと反射光の最大点とがオフセットする。なお、反射光の最大点は、最も効率よく記録可能なフォーカス点である。このように、フォーカスエラー信号がオフセットしているため、閉ループでのフォーカスサーボの安定性が確保できない。また、光ディスク30の表面は、画像情報等の記録を行うところであるが、キズの影響を受けやすいため、ディスク表面の面精度が悪く、フォーカスエラー検出に影響を及ぼす。一方、反射光の最大点でも集光スポットサイズが光学収差により20μm程度にしか集光できない。フォーカス深度もプラスマイナス20μm程度になり、フォーカス制御精度は、ある程度ラフでもよいため、開ループ制御を使用する。
【0026】
次に、フォーカス駆動信号の学習機能について説明する。演算増幅器25の演算比を変えてフォーカスエラー信号センターにおいてフォーカスサーボを起動し、FG54からの情報に応じたタイミングでフォーカスドライバ19の入力信号について、光ディスク30の一回転分のデータをメモリ23に記録する。光ディスク30の一回転分のデータは、例えば不要な高周波成分を所定のフィルター等で除去したものとして記録するのが好ましい。このようにすることで、フォーカスアクチュエータ19aの加熱を低減することができる。
【0027】
次に、開ループフォーカスサーボの機能について説明する。光ディスク30のレーベル面30aに画像情報等を記録する場合、フォーカスサーボは、切り替え手段28によりメモリ23に記録された光ディスク30の一回転分のデータを、FG54からのタイミング情報に応じて一回転ごとにフォーカスドライバ19に出力する。このとき、反射光の最大点に応じたオフセット分を加算して出力する。光ディスク30の半径位置が異なった場合は、メモリ23に記録されている光ディスク30の一回転分のデータと実際の値とのズレが大きくなるため、コントローラ22は、処理を止めて再度学習処理を行い、光ディスク30の一回転分のデータをメモリ23に記録することになる。
【0028】
次に、トラッキングドライバによって駆動されるトラッキングアクチュエータ18aの感度変化を補正する処理について説明する。ピックアップ位置検出器16からの情報と目標位置とから検出された誤差信号は、コントローラ22を介して送りドライバ17と可変増幅回路18bに送られる。コントローラ22は、後述する温度変化の検出方法による検出結果に基づいて、可変増幅回路18bの増幅幅を変更して、トラッキングアクチュエータ18aの感度補正を行う。
【0029】
図6は、フォーカスアクチュエータの駆動電圧と、これによって上下方向に移動する対物レンズ100と光ディスク30との距離の関係を示す模式図である。当該図面では、光ディスク30に外周面で0.5mmの反りが発生している。また、光ディスク30に情報を記録する際の対物レンズ100のディスク半径方向の位置をA〜Eで示している。
【0030】
対物レンズ100が位置Aにあるときは、通常のデータ記録面への情報の記録・再生の位置(情報記録位置)である。対物レンズ100が位置B〜Eであるときは、レーベル面30aに記録するときの位置である(レーベル記録位置)。よって対物レンズ100の位置は、光ディスク30の厚みを例えば1.2mmとすると、情報記録位置とレーベル記録位置との差は、約0.76mmとなる。なお、このときの屈折率は1.57である。
【0031】
また図6ではフォーカスアクチュエータ19aの駆動電圧を縦軸に示している。対物レンズ100の位置が、位置A〜Eで異なっている場合は、光ディスク30の内周ほどフォーカスアクチュエータ19aの駆動電圧が高いことを示している。
【0032】
図7は、フォーカスアクチュエータ及びトラッキングアクチュータの駆動原理を説明する模式図である。当該図面では、フォーカスアクチュエータを例にして、更に説明を簡便にするために、開ループ制御時の共振周波数以下の低周波領域の処理のみを図示している。なお、トラッキングアクチュータの場合も同じ駆動原理である。
【0033】
フォーカスアクチュエータ19aは、フォーカス駆動電圧Vが印加されると、可動コイルの抵抗Rにより電流Iがコイルに流れる。電流Iが流れると、マグネットの磁束密度Bとその他の定数Kに比例した力Fが発生する。この力Fが加わるとバネ定数Kfにより対物レンズに変位Zが発生する。バネ定数Kfは、実際には一定ではなく、変位Zが大きくなるとバネ定数Kfは増大する。
【0034】
アクチュエータの感度を補正する場合は、上記のバネ定数Kfの変動も考慮して補正することが望ましい。
【0035】
図8は、フォーカス(FO)コイルに1Vで5kHzの電圧を加えた場合のトラッキングアクチュエータの変位(移動感度)の変化を実測した模式図である。
【0036】
トラッキングアクチュエータ18aを例えば、約160μm変位させておき、フォーカスドライバ19に駆動電圧を加えた場合、トラッキングアクチュエータ18aの変位が少なくなっていることを示している。つまり、フォーカスコイルが加熱されるとフォーカスコイルに密着しているトラッキング(TR)コイルが加熱され抵抗値が増大し、トラッキングアクチュエータ18aの感度が低下していることがわかる。上述したようなフォーカス制御を行った場合、それがトラッキングアクチュエータの感度に影響することになる。
【0037】
また図9を用いて、フォーカスコイルの発熱を検証した結果を説明する。図9は、フォーカスアクチュエータにある抵抗の変化の実測を示す模式図である。ここでは、フォーカスコイルに0.5Ωの抵抗を直列に接続し、その両端に1Vで5kHzのFO駆動信号を加えた場合の波形を示している。この図9から、0.5Ωの抵抗をもったフォーカスコイルの両端電圧が時間経過で下がってくる様子がわかる。つまり、これはフォーカスコイルが発熱し、その影響で抵抗値が増大していることを意味している。
【0038】
ここで、温度変化に対するアクチュエータの感度補正について説明する。アクチュエータのコイル(銅線の場合)の温度係数は、例えば0.393%/℃である。また、アクチュエータのマグネット(ネオジマグネットの場合)の磁束密度の温度係数は、例えば−0.13%/℃である。この場合、アクチュエータに電圧を加えた際の変位感度の温度係数は、−0.523%/℃になる。ただし、これは共振周波数よりも低い周波数領域においてバネ定数が温度変化しないものと仮定した場合である。
【0039】
温度変化に対して、アクチュエータに印加する駆動電圧の増幅度を調整し、アクチュエータの感度を補正する場合、次の式に基づいて増幅度を決めればよい。ここで、アクチュエータの感度の温度係数をKt(%/℃)、検出温度の初期の温度をT、変化後の温度をT1、感度補正用増幅器の初期増幅度をA、補正された増幅度をA1とすると、温度変化後の(つまり補正された)増幅度A1は、
A1=A[1−Kt(T1−T)/100]
となる。
【0040】
図10は、トラッキングアクチュエータの感度補正を行う回路を模式的に示した図である。FO(フォーカス)駆動信号41は、パワーアンプ43を経由してFOC(フォーカス駆動コイル)41に印可される。またTR(トラッキング)駆動信号31は、可変増幅アンプ32、パワーアンプ42を経由してTRC(トラッキング駆動コイル)45に印可される。FO駆動信号41をLPF(ローパス・フィルタ)により低周波信号のみを取りだし、基準電圧値記憶手段29に記憶されている基準電圧値と比較回路28によって比較し、比較結果に応じて可変増幅アンプ32の増幅度を変更し、TRC45に印加するTR駆動信号を補正する。つまり、これによりトラッキングアクチュエータの感度補正を行う。なお、LPFは例えばコントローラ22によってソフトウェアによる処理でも実現可能である。ここでは、トラッキングアクチュエータの感度が熱により変化するため、その熱発生の原因となる隣接するFOCの駆動状況をFO駆動信号41をモニターすることにより検知し、FOCの駆動に応じてトラッキングアクチュエータの感度を補正している。
【0041】
なお、このようにトラッキングアクチュエータの感度補正を行う場合、リアルタイムに補正を行う必要はない。感度補正で補償すべきものは熱であるため、応答速度が遅いため、実質的には0.1秒程度ごとの補正で十分であると思われる。
【0042】
次に図11は、トラッキングアクチュエータの感度補正を行う他の回路(他の実施形態)を模式的に示した図である。図10との主な違いは、トラッキングアクチュエータ18aへの温度影響をサーミスタ(RTH)で検出する点である。
【0043】
TR(トラッキング)駆動信号31は、可変増幅アンプ32、パワーアンプ33を経由してTRC35に印可される。TRC35はRTH39に接続され、他端に電圧を発生するための抵抗RREおよび固定電源VRが接続される。RTH39の電圧は、基準電圧値記憶部29に記憶されている基準電圧値と比較回路28によって比較し、比較結果に応じて可変増幅アンプ32の増幅度を変更する。つまり、TRC35の温度変化をRTH39を用いて直接的に検出し、その検出結果に基づいてトラッキングアクチュエータ18aの感度補正を行う。なお、RTH39は、TRCの温度を精度良く検出するためにTRC近傍に設置するのが望ましい。しかしRTH39は、トラッキングアクチュエータ18aの温度を推定できる程度の性能でよいため、例えばセット筐体内部であれば設置場所は問わない。
【0044】
図12は、トラッキングアクチュエータの感度補正を行う更に他の回路(更に他の実施形態)を模式的に示した図である。図10の実施形態及び図11の実施形態との主な違いは、トラッキングコイル(TRC)の抵抗値を用いて可変増幅アンプの増幅幅を制御する点である。
【0045】
DC(直流)信号であるTR駆動信号31は、可変増幅アンプ32を経由し、交流信号VOSが加えられ、パワーアンプ33を経由してTRC35に印可される。このときパワーアンプ33の駆動電圧からVOS信号がHPF(ハイ・パス・フィルタ)49で取り出され、除算回路50に入力される。また、トラッキングアクチュエータ18aの電流検出抵抗(RC)51からのVOS信号がHPF52で取り出し、除算回路50に入力する。
【0046】
除算回路50では、入力された2つのVOS信号の比率を判別することにより、可変増幅アンプ32の増幅度を変更し、トラッキングアクチュエータ18aの感度補正を行う。なお、VOS信号は、トラッキングアクチュエータ18aの変位を少なくし、かつ検出感度を向上させるには、できるだけ高周波であることが望ましい。また、本実施形態でも、上述した実施形態と同様に、増幅幅の補正をリアルタイムに行う必要はない。
【0047】
以上説明した各種実施形態により、トラッキングアクチュエータの感度に影響する温度変化を検知または推定し、温度変化に応じてトラッキング駆動信号の増幅幅を制御することにより、トラッキングアクチュエータの感度を補正することができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に関する光ディスク装置を搭載したノート型のパーソナルコンピュータを示した模式図。
【図2】本発明の実施形態に関する光ディスク装置の外観の一例を示した模式図。
【図3】図2の光ディスク装置からドロワー部が射出した状態を示した模式図。
【図4】本発明の実施形態に関する光ディスク装置の全体の構成を示すブロック図。
【図5】本発明の実施形態に関する光ディスク装置の要部構成を示すブロック図。
【図6】フォーカスアクチュエータの駆動電圧と、光ディスクと対物レンズの距離の関係を示す模式図。
【図7】フォーカスアクチュエータの駆動原理を説明する模式図。
【図8】フォーカスアクチュエータに電圧を印加した場合のトッラッキングアクチュエータの変位を実測した模式図。
【図9】フォーカスアクチュエータに電圧を印加した場合の抵抗値変化の影響を実測した模式図。
【図10】本発明の実施形態に関するトラッキングアクチュエータの感度補正を行う回路を模式的に示した図。
【図11】本発明の他の実施形態に関するトラッキングアクチュエータの感度補正を行う回路を模式的に示した図。
【図12】本発明の更に他の実施形態に関するトラッキングアクチュエータの感度補正を行う回路を模式的に示した図。
【符号の説明】
【0050】
10…コンピュータ、11…光ディスク装置、14…リードスクリュー、15…送りモータ、16…ピックアップ位置検出器、17…送りドライバ、18a…トラッキングアクチュエータ、18…トラッキングドライバ、18b…可変増幅回路、19a…フォーカスアクチュエータ、19…フォーカスドライバ、21…レーザドライバモニター、22…コントローラ、23…メモリ、24…ディテクタ、25…演算増幅器、26…イコライザ、27…手段、28…比較回路、29…基準電圧値記憶手段、30…光ディスク、30a…レーベル面、31…ディスクモータ、32…可変増幅アンプ、35…TRC、39…RTH、41…FOC、45…TRC、49…HPF、50…除算回路、52…HPF。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に係わり、特に装置の温度変化に応じてピックアップ駆動制御を補正することが可能な光ディスク装置およびアクチュエータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に光ディスクのレーベル面に画像情報等を記録する場合、例えば、特開2003−203348号公報に開示されているように、光ディスクのレーベル面にはトラック情報がないため、画像情報形成時のピックアップの光ディスクの径方向における走査は、まず、ステッピングモータにより任意の位置に移動を行う。そして、ステッピングモータの移動分解能の最小移動分解能以上の微細な移動を行う場合は、さらにトラッキングアクチュエータを駆動させることによりレーザ光を任意の記録位置に移動させる。
【特許文献1】特開2003−203348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の技術においては、光ディスクのレーベル面に情報を記録する場合、トラッキングアクチュエータを駆動させることによりレーザ光を任意の記録位置に移動させる。この場合、トラッキングアクチュエータの移動量が小さいため移動量の正確さが要求される。しかし、トラッキングアクチュエータのコイルおよびアクチュエータマグネット等の温度上昇により、情報記録を開始した時点と所定の時間が経過した時点とでは、トラッキングアクチュエータの感度が異なるため、記録精度が低下してしまう。
【0004】
本発明の目的は、トラッキングアクチュエータの感度に影響を及ぼす温度変化を検知し、光ディスクのトラック情報のない面を走査する場合でも精度のよいトッラキングアクチュエータ制御を行うことができる光ディスク装置およびアクチュエータ制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、光ディスクのレーベル面にレーザ光を照射し、情報の記録を行う光ディスク装置であって、駆動信号に基づいて、前記レーザ光を照射するピックアップの対物レンズを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの前記駆動信号に対する感度に影響を及ぼす温度変化を検出または推定する検出手段と、前記検出手段によって検出または推定された情報に基づいて、前記駆動信号を補正する補正手段とを具備することを特徴とする光ディスク装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明を用いることにより、トラッキングアクチュエータの感度に影響を及ぼす温度変化を検知し、光ディスクのトラック情報のない面を走査する場合でも精度のよいトラッキングアクチュエータ制御を行うことができる光ディスク装置およびアクチュエータ制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0008】
図1には、本発明の第1実施形態に係る情報処理装置のシステム構成図が示されている。この情報処理装置は、例えばノートブック型コンピュータ10として実現されている。
【0009】
図1に示すように、コンピュータ10は、コンピュータ本体と、ディスプレイユニット12とから構成されている。ディスプレイユニット12にはLCD(Liquid Crystal Display)からなる表示画面121が組み込まれている。
【0010】
コンピュータ10は、パワーボタン9、LED表示部(表示手段)220、キーボード8、タッチパッド7、光ディスク装置11等を備えている。
【0011】
光ディスク装置11は、図2に示すように、イジェクトボタン11aを備えており、このイジェクトボタン11aを押下する等により、ドロワー部11bが図3に示すように射出される。
【0012】
図4は、本発明に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【0013】
光ディスク装置11にセットされた光ディスク30は、ユーザデータを記録可能な光ディスクあるいは読出し専用の光ディスクであるが、この実施形態では記録可能な光ディスクとして説明する。なお、光ディスクとしては、DVD−R等が挙げられるが、これに限らずレーベル面に記録可能な光ディスクであればよい。
【0014】
光ディスク30は、レーベル面30aを光ピックアップ53に対向するようにディスクモータ31に装着される。ディスクモータ31は、コントローラ22の指令により、FG(モータ回転数パルス出力部)54のパルス信号の周波数が所定の値になるように回転制御される。この所定の値は、光ディスク30の半径方向の記録する位置に対応して変化するように制御され、これによりCLV(Constant Linear Velocity)制御による記録を行う。
【0015】
光ピックアップ53は、フォーカス方向およびトラック方向に対物レンズを移動可能な2軸アクチュエータである、トラッキングアクチュエータ18aおよびフォーカスアクチュエータ19aによって駆動される。トラッキングアクチュエータ18aおよびフォーカスアクチュエータ19aは、コントローラ22からの指令に基づいて、トラッキングドライバ18およびフォーカスドライバ19により制御される。これらのアクチュエータは、例えば、ムービングコイル式でありマグネットは固定されている形式を用いる。
【0016】
また光ピックアップ53は、半導体レーザの出射光をモニターするためのディテクタ(図示せず)を備えている。また、光ディスク30からの反射光を検出するディテクタは、多分割された構造をしており(後述)、RFアンプ20で必要な演算処理が行われる。
【0017】
また光ピックアップ53には、ピックアップ位置検出器16が備えられている。このピックアップ位置検出器16は、光ディスク30のレーベル面30aにおいて半径方向の位置情報を検出する、例えばリニアセンサである。ピックアップ位置検出器16によって検出された位置情報は、コントローラ22に送られる。コントローラ22は、この位置情報と目的位置とを比較して位置誤差信号を検出し、この位置誤差信号の値が少なくなるように送りドライバ17を介して送りモータ15を駆動し、送りモータ15の回転運動をリードスクリュー14によって直線運動へと変換し、光ピックアップ53を移動する。この際、送りモータ15からリードスクリュー14を介した光ピックアップ53の移動には、主にガタ等の理由により、位置情報と目的位置との誤差を0にするように光ピックアップ53を移動することができない。また送りモータ15がステッピングモータである場合は、摩擦等の影響で上述した誤差が大きくなる傾向にある。この誤差は、例えば100μm程度となると、温度や経年劣化等により大きく変化する場合がある。
【0018】
このような影響を避けるために、コントローラ22は、位置誤差信号を適切な増幅度でトラッキングドライバ18に供給し、トラッキングアクチュエータ18aを制御し、光ピックアップ53からのレーザスポットの位置を目的の位置に制御する。なお、本実施形態では、レーザスポットの位置を検出する手段を備えていないため、発生する誤差は、上述した増幅度とトラッキングアクチュエータ18aの感度に依存する。
【0019】
図示しないホストコントローラからの画像情報は、所定のインターフェイスを介してコントローラ22に伝達される。伝達された画像情報は、コントローラ22により、光ディスク30の回転角および半径位置に応じて、レーザドライバモニター21を介して、光ピックアップ53からレーベル面30aにレーザ光を照射し、画像等を形成する。
【0020】
図5は、トラッキングアクチュエータの感度変化に対する補正処理を説明するための機能ブロック図である。
【0021】
はじめに、本実施形態でのフォーカス制御について説明する。なお、本実施形態では、光ピックアップのフォーカスエラー検出方法に非点収差法を用いた場合について説明する。
【0022】
光ピックアップ53から出射されたレーザ光は、光ディスク30で反射され、ディテクタ24に照射される。ディテクタ24は、図示したように分割された構造をしており、例えばA,B,C,Dの4つの領域に分割されている。
【0023】
ディテクタ24の分割領域AおよびCの信号を加算した信号を演算増幅器25のプラス側に、ディテクタ24の分割領域BおよびDの信号を加算した信号を演算増幅器25のマイナス側に入力する。演算増幅器25からの信号は、位相補償等の位置制御の安定化のためのイコライザ26を介して、切り替え手段27を通りフォーカスドライバ19に伝達され、フォーカスアクチュエータ19aを駆動し対物レンズを移動させることにより、フォーカス制御を行う。また、コントローラ22には、ピックアップ位置検出器16、FG54、光ディスク30の一回転分の情報等を記録するメモリ23、切り替え手段27、比較回路28、基準電圧値記憶手段29、可変増幅回路18b、送りドライバ17等が接続されている。
【0024】
光ディスク30のデータ記録面に情報を記録および再生する場合、演算増幅器25によって生成されるフォーカスエラー信号に基づいてフォーカスアクチュエータ19aが駆動されるように、コントローラ22によって切り替え手段27が制御され、これによってフォーカスサーボループが構成される。
【0025】
一方、光ディスク30のレーベル面30aに画像情報等を記録する場合、フォーカス制御は、上述した光ディスク30に情報を記録する場合と同様の光学系を使用する。このため、光ディスク30上のレーザ光の合焦点において、光学収差によりフォーカスエラー信号のセンターと反射光の最大点とがオフセットする。なお、反射光の最大点は、最も効率よく記録可能なフォーカス点である。このように、フォーカスエラー信号がオフセットしているため、閉ループでのフォーカスサーボの安定性が確保できない。また、光ディスク30の表面は、画像情報等の記録を行うところであるが、キズの影響を受けやすいため、ディスク表面の面精度が悪く、フォーカスエラー検出に影響を及ぼす。一方、反射光の最大点でも集光スポットサイズが光学収差により20μm程度にしか集光できない。フォーカス深度もプラスマイナス20μm程度になり、フォーカス制御精度は、ある程度ラフでもよいため、開ループ制御を使用する。
【0026】
次に、フォーカス駆動信号の学習機能について説明する。演算増幅器25の演算比を変えてフォーカスエラー信号センターにおいてフォーカスサーボを起動し、FG54からの情報に応じたタイミングでフォーカスドライバ19の入力信号について、光ディスク30の一回転分のデータをメモリ23に記録する。光ディスク30の一回転分のデータは、例えば不要な高周波成分を所定のフィルター等で除去したものとして記録するのが好ましい。このようにすることで、フォーカスアクチュエータ19aの加熱を低減することができる。
【0027】
次に、開ループフォーカスサーボの機能について説明する。光ディスク30のレーベル面30aに画像情報等を記録する場合、フォーカスサーボは、切り替え手段28によりメモリ23に記録された光ディスク30の一回転分のデータを、FG54からのタイミング情報に応じて一回転ごとにフォーカスドライバ19に出力する。このとき、反射光の最大点に応じたオフセット分を加算して出力する。光ディスク30の半径位置が異なった場合は、メモリ23に記録されている光ディスク30の一回転分のデータと実際の値とのズレが大きくなるため、コントローラ22は、処理を止めて再度学習処理を行い、光ディスク30の一回転分のデータをメモリ23に記録することになる。
【0028】
次に、トラッキングドライバによって駆動されるトラッキングアクチュエータ18aの感度変化を補正する処理について説明する。ピックアップ位置検出器16からの情報と目標位置とから検出された誤差信号は、コントローラ22を介して送りドライバ17と可変増幅回路18bに送られる。コントローラ22は、後述する温度変化の検出方法による検出結果に基づいて、可変増幅回路18bの増幅幅を変更して、トラッキングアクチュエータ18aの感度補正を行う。
【0029】
図6は、フォーカスアクチュエータの駆動電圧と、これによって上下方向に移動する対物レンズ100と光ディスク30との距離の関係を示す模式図である。当該図面では、光ディスク30に外周面で0.5mmの反りが発生している。また、光ディスク30に情報を記録する際の対物レンズ100のディスク半径方向の位置をA〜Eで示している。
【0030】
対物レンズ100が位置Aにあるときは、通常のデータ記録面への情報の記録・再生の位置(情報記録位置)である。対物レンズ100が位置B〜Eであるときは、レーベル面30aに記録するときの位置である(レーベル記録位置)。よって対物レンズ100の位置は、光ディスク30の厚みを例えば1.2mmとすると、情報記録位置とレーベル記録位置との差は、約0.76mmとなる。なお、このときの屈折率は1.57である。
【0031】
また図6ではフォーカスアクチュエータ19aの駆動電圧を縦軸に示している。対物レンズ100の位置が、位置A〜Eで異なっている場合は、光ディスク30の内周ほどフォーカスアクチュエータ19aの駆動電圧が高いことを示している。
【0032】
図7は、フォーカスアクチュエータ及びトラッキングアクチュータの駆動原理を説明する模式図である。当該図面では、フォーカスアクチュエータを例にして、更に説明を簡便にするために、開ループ制御時の共振周波数以下の低周波領域の処理のみを図示している。なお、トラッキングアクチュータの場合も同じ駆動原理である。
【0033】
フォーカスアクチュエータ19aは、フォーカス駆動電圧Vが印加されると、可動コイルの抵抗Rにより電流Iがコイルに流れる。電流Iが流れると、マグネットの磁束密度Bとその他の定数Kに比例した力Fが発生する。この力Fが加わるとバネ定数Kfにより対物レンズに変位Zが発生する。バネ定数Kfは、実際には一定ではなく、変位Zが大きくなるとバネ定数Kfは増大する。
【0034】
アクチュエータの感度を補正する場合は、上記のバネ定数Kfの変動も考慮して補正することが望ましい。
【0035】
図8は、フォーカス(FO)コイルに1Vで5kHzの電圧を加えた場合のトラッキングアクチュエータの変位(移動感度)の変化を実測した模式図である。
【0036】
トラッキングアクチュエータ18aを例えば、約160μm変位させておき、フォーカスドライバ19に駆動電圧を加えた場合、トラッキングアクチュエータ18aの変位が少なくなっていることを示している。つまり、フォーカスコイルが加熱されるとフォーカスコイルに密着しているトラッキング(TR)コイルが加熱され抵抗値が増大し、トラッキングアクチュエータ18aの感度が低下していることがわかる。上述したようなフォーカス制御を行った場合、それがトラッキングアクチュエータの感度に影響することになる。
【0037】
また図9を用いて、フォーカスコイルの発熱を検証した結果を説明する。図9は、フォーカスアクチュエータにある抵抗の変化の実測を示す模式図である。ここでは、フォーカスコイルに0.5Ωの抵抗を直列に接続し、その両端に1Vで5kHzのFO駆動信号を加えた場合の波形を示している。この図9から、0.5Ωの抵抗をもったフォーカスコイルの両端電圧が時間経過で下がってくる様子がわかる。つまり、これはフォーカスコイルが発熱し、その影響で抵抗値が増大していることを意味している。
【0038】
ここで、温度変化に対するアクチュエータの感度補正について説明する。アクチュエータのコイル(銅線の場合)の温度係数は、例えば0.393%/℃である。また、アクチュエータのマグネット(ネオジマグネットの場合)の磁束密度の温度係数は、例えば−0.13%/℃である。この場合、アクチュエータに電圧を加えた際の変位感度の温度係数は、−0.523%/℃になる。ただし、これは共振周波数よりも低い周波数領域においてバネ定数が温度変化しないものと仮定した場合である。
【0039】
温度変化に対して、アクチュエータに印加する駆動電圧の増幅度を調整し、アクチュエータの感度を補正する場合、次の式に基づいて増幅度を決めればよい。ここで、アクチュエータの感度の温度係数をKt(%/℃)、検出温度の初期の温度をT、変化後の温度をT1、感度補正用増幅器の初期増幅度をA、補正された増幅度をA1とすると、温度変化後の(つまり補正された)増幅度A1は、
A1=A[1−Kt(T1−T)/100]
となる。
【0040】
図10は、トラッキングアクチュエータの感度補正を行う回路を模式的に示した図である。FO(フォーカス)駆動信号41は、パワーアンプ43を経由してFOC(フォーカス駆動コイル)41に印可される。またTR(トラッキング)駆動信号31は、可変増幅アンプ32、パワーアンプ42を経由してTRC(トラッキング駆動コイル)45に印可される。FO駆動信号41をLPF(ローパス・フィルタ)により低周波信号のみを取りだし、基準電圧値記憶手段29に記憶されている基準電圧値と比較回路28によって比較し、比較結果に応じて可変増幅アンプ32の増幅度を変更し、TRC45に印加するTR駆動信号を補正する。つまり、これによりトラッキングアクチュエータの感度補正を行う。なお、LPFは例えばコントローラ22によってソフトウェアによる処理でも実現可能である。ここでは、トラッキングアクチュエータの感度が熱により変化するため、その熱発生の原因となる隣接するFOCの駆動状況をFO駆動信号41をモニターすることにより検知し、FOCの駆動に応じてトラッキングアクチュエータの感度を補正している。
【0041】
なお、このようにトラッキングアクチュエータの感度補正を行う場合、リアルタイムに補正を行う必要はない。感度補正で補償すべきものは熱であるため、応答速度が遅いため、実質的には0.1秒程度ごとの補正で十分であると思われる。
【0042】
次に図11は、トラッキングアクチュエータの感度補正を行う他の回路(他の実施形態)を模式的に示した図である。図10との主な違いは、トラッキングアクチュエータ18aへの温度影響をサーミスタ(RTH)で検出する点である。
【0043】
TR(トラッキング)駆動信号31は、可変増幅アンプ32、パワーアンプ33を経由してTRC35に印可される。TRC35はRTH39に接続され、他端に電圧を発生するための抵抗RREおよび固定電源VRが接続される。RTH39の電圧は、基準電圧値記憶部29に記憶されている基準電圧値と比較回路28によって比較し、比較結果に応じて可変増幅アンプ32の増幅度を変更する。つまり、TRC35の温度変化をRTH39を用いて直接的に検出し、その検出結果に基づいてトラッキングアクチュエータ18aの感度補正を行う。なお、RTH39は、TRCの温度を精度良く検出するためにTRC近傍に設置するのが望ましい。しかしRTH39は、トラッキングアクチュエータ18aの温度を推定できる程度の性能でよいため、例えばセット筐体内部であれば設置場所は問わない。
【0044】
図12は、トラッキングアクチュエータの感度補正を行う更に他の回路(更に他の実施形態)を模式的に示した図である。図10の実施形態及び図11の実施形態との主な違いは、トラッキングコイル(TRC)の抵抗値を用いて可変増幅アンプの増幅幅を制御する点である。
【0045】
DC(直流)信号であるTR駆動信号31は、可変増幅アンプ32を経由し、交流信号VOSが加えられ、パワーアンプ33を経由してTRC35に印可される。このときパワーアンプ33の駆動電圧からVOS信号がHPF(ハイ・パス・フィルタ)49で取り出され、除算回路50に入力される。また、トラッキングアクチュエータ18aの電流検出抵抗(RC)51からのVOS信号がHPF52で取り出し、除算回路50に入力する。
【0046】
除算回路50では、入力された2つのVOS信号の比率を判別することにより、可変増幅アンプ32の増幅度を変更し、トラッキングアクチュエータ18aの感度補正を行う。なお、VOS信号は、トラッキングアクチュエータ18aの変位を少なくし、かつ検出感度を向上させるには、できるだけ高周波であることが望ましい。また、本実施形態でも、上述した実施形態と同様に、増幅幅の補正をリアルタイムに行う必要はない。
【0047】
以上説明した各種実施形態により、トラッキングアクチュエータの感度に影響する温度変化を検知または推定し、温度変化に応じてトラッキング駆動信号の増幅幅を制御することにより、トラッキングアクチュエータの感度を補正することができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に関する光ディスク装置を搭載したノート型のパーソナルコンピュータを示した模式図。
【図2】本発明の実施形態に関する光ディスク装置の外観の一例を示した模式図。
【図3】図2の光ディスク装置からドロワー部が射出した状態を示した模式図。
【図4】本発明の実施形態に関する光ディスク装置の全体の構成を示すブロック図。
【図5】本発明の実施形態に関する光ディスク装置の要部構成を示すブロック図。
【図6】フォーカスアクチュエータの駆動電圧と、光ディスクと対物レンズの距離の関係を示す模式図。
【図7】フォーカスアクチュエータの駆動原理を説明する模式図。
【図8】フォーカスアクチュエータに電圧を印加した場合のトッラッキングアクチュエータの変位を実測した模式図。
【図9】フォーカスアクチュエータに電圧を印加した場合の抵抗値変化の影響を実測した模式図。
【図10】本発明の実施形態に関するトラッキングアクチュエータの感度補正を行う回路を模式的に示した図。
【図11】本発明の他の実施形態に関するトラッキングアクチュエータの感度補正を行う回路を模式的に示した図。
【図12】本発明の更に他の実施形態に関するトラッキングアクチュエータの感度補正を行う回路を模式的に示した図。
【符号の説明】
【0050】
10…コンピュータ、11…光ディスク装置、14…リードスクリュー、15…送りモータ、16…ピックアップ位置検出器、17…送りドライバ、18a…トラッキングアクチュエータ、18…トラッキングドライバ、18b…可変増幅回路、19a…フォーカスアクチュエータ、19…フォーカスドライバ、21…レーザドライバモニター、22…コントローラ、23…メモリ、24…ディテクタ、25…演算増幅器、26…イコライザ、27…手段、28…比較回路、29…基準電圧値記憶手段、30…光ディスク、30a…レーベル面、31…ディスクモータ、32…可変増幅アンプ、35…TRC、39…RTH、41…FOC、45…TRC、49…HPF、50…除算回路、52…HPF。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクのレーベル面にレーザ光を照射し、情報の記録を行う光ディスク装置であって、
駆動信号に基づいて、前記レーザ光を照射するピックアップの対物レンズを駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータの前記駆動信号に対する感度に影響を及ぼす温度変化を検出または推定する検出手段と、
前記検出手段によって検出または推定された情報に基づいて、前記駆動信号を補正する補正手段と、
を具備することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、
前記アクチュエータはトラッキングアクチュエータであり、前記検出手段は前記対物レンズを駆動するフォーカスアクチュエータの駆動信号に基づいて温度変化を推定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ディスク装置において、
前記アクチュエータはトラッキングアクチュエータであり、前記検出手段は温度検出素子によって温度変化を検出することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光ディスク装置において、
前記アクチュエータはトラッキングアクチュエータであり、前記検出手段は前記トラッキングアクチュエータのコイル抵抗を測定することにより温度変化を推定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
光ディスクのレーベル面にレーザ光を照射し、情報の記録を行う光ディスク装置のアクチュエータ制御方法であって、
駆動信号に基づいて、前記レーザ光を照射するピックアップの対物レンズをトラッキングアクチュエータによって前記光ディスクの半径方向に移動させるステップと、
前記トラッキングアクチュエータの前記駆動信号に対する感度に影響を及ぼす温度変化を検出または推定するステップと、
前記検出または推定された温度変化の情報に基づいて、前記駆動信号を補正するステップと、
を含むことを特徴とするアクチュエータ制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のアクチュエータ制御方法において、
前記温度変化を検出または推定するステップでは、前記対物レンズを駆動するフォーカスアクチュエータの駆動信号に基づいて温度変化を推定することを特徴とするアクチュエータ制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載のアクチュエータ制御方法において、
前記温度変化を検出または推定するステップでは、温度検出素子によって温度変化を検出することを特徴とするアクチュエータ制御方法。
【請求項8】
請求項5に記載のアクチュエータ制御方法において、
前記温度変化を検出または推定するステップでは、前記トラッキングアクチュエータのコイル抵抗を測定することにより温度変化を推定することを特徴とするアクチュエータ制御方法。
【請求項1】
光ディスクのレーベル面にレーザ光を照射し、情報の記録を行う光ディスク装置であって、
駆動信号に基づいて、前記レーザ光を照射するピックアップの対物レンズを駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータの前記駆動信号に対する感度に影響を及ぼす温度変化を検出または推定する検出手段と、
前記検出手段によって検出または推定された情報に基づいて、前記駆動信号を補正する補正手段と、
を具備することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、
前記アクチュエータはトラッキングアクチュエータであり、前記検出手段は前記対物レンズを駆動するフォーカスアクチュエータの駆動信号に基づいて温度変化を推定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ディスク装置において、
前記アクチュエータはトラッキングアクチュエータであり、前記検出手段は温度検出素子によって温度変化を検出することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光ディスク装置において、
前記アクチュエータはトラッキングアクチュエータであり、前記検出手段は前記トラッキングアクチュエータのコイル抵抗を測定することにより温度変化を推定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
光ディスクのレーベル面にレーザ光を照射し、情報の記録を行う光ディスク装置のアクチュエータ制御方法であって、
駆動信号に基づいて、前記レーザ光を照射するピックアップの対物レンズをトラッキングアクチュエータによって前記光ディスクの半径方向に移動させるステップと、
前記トラッキングアクチュエータの前記駆動信号に対する感度に影響を及ぼす温度変化を検出または推定するステップと、
前記検出または推定された温度変化の情報に基づいて、前記駆動信号を補正するステップと、
を含むことを特徴とするアクチュエータ制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のアクチュエータ制御方法において、
前記温度変化を検出または推定するステップでは、前記対物レンズを駆動するフォーカスアクチュエータの駆動信号に基づいて温度変化を推定することを特徴とするアクチュエータ制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載のアクチュエータ制御方法において、
前記温度変化を検出または推定するステップでは、温度検出素子によって温度変化を検出することを特徴とするアクチュエータ制御方法。
【請求項8】
請求項5に記載のアクチュエータ制御方法において、
前記温度変化を検出または推定するステップでは、前記トラッキングアクチュエータのコイル抵抗を測定することにより温度変化を推定することを特徴とするアクチュエータ制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−257790(P2007−257790A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83261(P2006−83261)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(504224854)東芝サムスン ストレージ・テクノロジー株式会社 (74)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(504224854)東芝サムスン ストレージ・テクノロジー株式会社 (74)
【Fターム(参考)】
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