説明

光ディスク装置及び光ディスクの判別方法

【課題】光ディスクの判別において、使用する光ディスクの地域による偏りを考慮して、判別時間の短縮を図ること。
【解決手段】LPP信号生成部5は、光ディスク1の反射光信号からLPP(Land Pre−Pit)信号を生成し、ADIP信号生成部6は、反射光信号からADIP(Adress In Pre−groove)信号を生成する。信号判定部7は、生成された複数種類の信号について信号の有無やレベルを判定し、マイコン8は、信号判定部7の判定結果をもとに光ディスクの種類を判別する。マイコン8は、EEPROM9に格納されている光ディスク装置の地域情報を参照し、該地域情報に応じて信号判定部7に対し、複数種類の信号についてそれらを判定する順序を切り替えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着された光ディスクの種類をより迅速に判別可能な光ディスク装置及び光ディスクの判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクには様々な種類があり、これらの種類に対応して、情報の記録、再生の条件切り替える必要がある。その為に、複数の種類の光ディスクを装着可能な光ディスク装置では、装着された光ディスクの種類の判別を正確に行わねばならない。
【0003】
一般のディスクの判別方法は、光ディスクにレーザ光を照射し、反射光の和信号(PE)、反射光によって生成されるフォーカスエラー信号(FE)、トラッキングエラー信号(TE)等の検出レベルをしきい値と比較する。また、DVD−R/RWではランド領域にアドレス情報を示すピットを配置したLPP(Land Pre−Pit)方式を、DVD+R/RWではウォブル位相信号にアドレス情報を重畳したADIP(Adress In Pre−groove)方式を採用しており、これらのプリフォーマット信号の有無を検出する。これらの結果を組み合わせてディスクの判別を行うことができる。
【0004】
例えば特許文献1には、LPP方式とADIP方式の両方の光ディスクに対応できる装置において、ADIPビットの誤検出を防止する技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−123257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ディスク装置に光ディスクが装着されてから、実際にデータの記録、再生を開始するまでには、セットアップ処理のため装置内で多くの手続きが行われる。1台の装置で使用可能な光ディスクの種類が増加するにつれ、ディスクの判別処理が複雑になり時間も要することになる。一方、ユーザからはセットアップ時間の短縮が要求されており、ディスク判別時間の短縮が必要となっている。
【0007】
多種類の光ディスクの判別処理では、複数の判定ステップを組み合わせてディスクの種類を特定することになるが、各ステップの実行順序は判別時間の短縮の観点からは必ずしも適切とは言えなかった。すなわち、現実に使用される光ディスクの種類は地域によって偏りがある。例えば、日本では「マイナス系」と呼ばれるDVD−R/RW、欧米では「プラス系」と呼ばれるDVD+R/RWが主流となっている。よって、その傾向を捉えて判別ステップの順序を決めれば、無駄な工程がなく、より迅速に判別結果が得られることになる。従来の判別方法では、このような地域差に着目した判別方法は全く考慮されていなかった。
【0008】
本発明の目的は、光ディスクの判別において、使用する光ディスクの地域による偏りを考慮して、判別時間の短縮を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光ディスク装置は、光ディスクにレーザ光を照射しその反射光信号を検出する光ピックアップと、反射光信号からからFE(フォーカスエラー)信号を生成するFE信号生成部と、反射光信号からアドレス情報を示すLPP(Land Pre−Pit)信号を生成するLPP信号生成部と、反射光信号からアドレス情報を示すADIP(Adress In Pre−groove)信号を生成するADIP信号生成部と、生成された複数種類の信号について信号の有無やレベルを判定する信号判定部と、信号判定部の判定結果をもとに光ディスクの種類を判別するマイコンと、光ディスク装置の地域情報を格納しているEEPROMとを備える。マイコンは、EEPROMに格納されている地域情報を参照し、該地域情報に応じて信号判定部に対し、複数種類の信号についてそれらを判定する順序を切り替えさせる。
【0010】
前記地域情報がDVD−R/RW(マイナス系)が主に使用される地域である場合は、LPP信号の判定をADIP信号よりも先行させ、前記地域情報がDVD+R/RW(プラス系)が主に使用される地域である場合は、ADIP信号の判定をLPP信号よりも先行させる。
【0011】
本発明は、装着された光ディスクにレーザ光を照射しその反射光から複数種類の信号を検出して光ディスクの種類を判別する光ディスクの判別方法であって、光ディスク装置に設定された地域情報に応じて、複数種類の信号についてそれらを検出する順序を切り替える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光ディスク判別時間およびそれを含むセットアップ時間が短縮し、ユーザの使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による光ディスク装置の一実施例を示すブロック図。
【図2】光ディスク装置の地域情報(リージョンコード)の例を示す図。
【図3】ディスク判別のフローチャートの一例を示す図。
【図4】ディスク判別のフローチャートの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明による光ディスク装置の一実施例を示すブロック図である。本装置には、例えば、DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−R,DVD−RW,DVD+R,DVD+RWなどの各種の光ディスク1が装着可能であり、これらにレーザ光を照射してデータを記録再生する。
【0015】
光ディスク1は、スピンドルモータ2により回転される。光ピックアップ3は、装着された光ディスクを判別するため、所定強度のレーザ光を照射し、光ディスクからの反射光を検出して電気信号に変換する。この検出信号をもとに、FE信号生成部4はフォーカス制御のためのFE(フォーカスエラー)信号を、またアドレス制御のため、LPP信号生成部5はLPP(Land Pre−Pit)信号を、ADIP信号生成部6はADIP(Adress In Pre−groove)信号をそれぞれ生成する。信号判定部7はこれらの各信号の有無、レベルを判定してマイコン8に出力する。
【0016】
前記したように、LPP信号はDVD−R/RWにのみ、またADIP信号はDVD+R/RWにのみ存在する信号である。LPP信号生成部5では、反射光から検出されたプリフォーマット信号のうち、ランド領域に一定の規則で形成されたDVD−R/RW特有のピット(LPP)信号からアドレス情報を取得する。ADIP信号生成部6では、反射光から検出されたプリフォーマット信号について、DVD+R/RW特有のウォブル信号の位相反転を検出することでアドレス情報を取得する。
【0017】
マイコン8は、信号判定部7から送られる各信号の判定結果をもとに装着された光ディスク1の種類を判別する。そして、判別結果に応じて記録動作や再生動作の制御を行う。なお、この図では記録、再生処理回路や制御機構部は省略している。EEPROM9は、当該光ディスク装置の地域情報(リージョンコード)を格納している。この地域情報は、光ディスク装置の出荷時にその仕向地ごとに設定されたものである。あるいは、光ディスクを装着時にそのディスクに記述された地域情報(リージョンコード)を読み取り、読み取った地域情報をEEPROM9にコピーすることもできる。マイコン8は、EEPROM9に格納される地域情報を参照し、地域情報に応じてディスク判別工程(判定順序)を制御する。すなわち、信号判定部7に対して判定する信号(FE,LPP,ADIP)の順序を切り替える。
【0018】
ここにEEPROM9に格納される地域情報は、DVDディスク再生において著作権保護を行うために設けられているもので、各光ディスク装置には、地域情報として固有の地域番号が設定されている。著作権保護を行う場合には、設定された地域番号に対応した地域情報を有するDVDディスクのみが再生可能となる。本実施例では、この地域情報を利用してディスク判別を効率的に行うものである。
【0019】
図2は、EEPROM9に格納される光ディスク装置の地域情報(リージョンコード)の例を示す図である。ここには地域番号の定義例を示すもので、地域番号が1〜8まで設定され(このうち7,8は未使用)、全世界を6地域に分けてリージョンコードを付与している。この中で、例えば日本は地域番号2(リージョンコード「02h」)に属している。リージョンコード「02h」は、地域番号2のDVDを再生したときにEEPROM9に設定される。
【0020】
ここで、現実に使用される光ディスクの種類は地域によって偏りがある。例えば、日本では「マイナス系」と呼ばれるDVD−R/RW、欧米では「プラス系」と呼ばれるDVD+R/RWが主流となっている。よって、日本ではDVD+R/RWよりもDVD−R/RWが使用される可能性が高く、DVD−R/RWを判定する工程を優先させるようにする。日本以外では、DVD+R/RWが使用される可能性が高く、DVD+R/RWを判定する工程を優先させるようにする。どれを優先させるかは、装置に設定されている地域番号(リージョンコード)を参照して決定する。
【0021】
図3と図4は、ディスク判別のフローチャートの一例を分割して示す図である。ここではディスクの種類として、DVD−R,DVD+R,DVD−ROM(以上、第1グループ),DVD−RW,DVD+RW,DVD−RAM(以上、第2グループ)を判別する。判別工程の順序はマイコン8が制御する。
【0022】
光ディスクが装着されると、光ピックアップ3はそのディスク面からの反射光を検出してディスク判別を開始する。S100では、FE信号生成部4で生成したFE信号について信号判定部7にて振幅を閾値と比較する。閾値より大きければ第1グループ(DVD−R,DVD+R,DVD−ROM)、閾値より小さければ第2グループ(DVD−RW,DVD+RW,DVD−RAM)に属すると判定する。第1グループについては図3に、第2グループについては図4に示す。
【0023】
図3にてFE振幅が大きい第1グループの場合は、S101にて、EEPROM9からリージョンコードを読み出し、日本のコード値「02h」であるかどうかを判定する。コード値が「02h」であればS102へ進み、LPP信号生成部5で生成したLPP信号について、信号判定部7で信号の有無を判定する。LPP信号が存在すれば、S103にて当該ディスクはDVD−Rであると判別する(DVD+RやDVD−ROMではLPP信号を持たない)。LPP信号が存在しなければS104へ進み、ADIP信号生成部6で生成したADIP信号について、信号判定部7で信号の有無を判定する。ADIP信号が存在すれば、S105にて当該ディスクはDVD+Rであると判別する。ADIP信号が存在しなければ、S106にて当該ディスクはDVD−ROMであると判別する。
【0024】
一方、上記S101にてコード値が「02h」以外であればS107へ進み、ADIP信号生成部6で生成したADIP信号について、信号判定部7で信号の有無を判定する。ADIP信号が存在すれば、S108にて当該ディスクはDVD+Rであると判別する(DVD−RやDVD−ROMではADIP信号を持たない)。ADIP信号が存在しなければS109へ進み、LPP信号生成部5で生成したLPP信号について、信号判定部7で信号の有無を判定する。LPP信号が存在すれば、S110にて当該ディスクはDVD−Rであると判別する。LPP信号が存在しなければ、S111にて当該ディスクはDVD−ROMであると判別する。
【0025】
次に、図4にてFE振幅が小さい第2グループの場合は、S201にて、EEPROM9からリージョンコードを読み出し、日本のコード値「02h」であるかどうかを判定する。コード値が「02h」であればS202へ進み、LPP信号生成部5で生成したLPP信号について、信号判定部7で信号の有無を判定する。LPP信号が存在すれば、S203にて当該ディスクはDVD−RWであると判別する(DVD+RWやDVD−RAMではLPP信号を持たない)。LPP信号が存在しなければS204へ進み、ADIP信号生成部6で生成したADIP信号について、信号判定部7で信号の有無を判定する。ADIP信号が存在すれば、S205にて当該ディスクはDVD+RWであると判別する。ADIP信号が存在しなければ、S206にて当該ディスクはDVD−RAMであると判別する。
【0026】
一方、上記S201にてコード値が「02h」以外であればS207へ進み、ADIP信号生成部6で生成したADIP信号について、信号判定部7で信号の有無を判定する。ADIP信号が存在すれば、S208にて当該ディスクはDVD+RWであると判別する(DVD−RWやDVD−RAMではADIP信号を持たない)。ADIP信号が存在しなければS209へ進み、LPP信号生成部5で生成したLPP信号について、信号判定部7で信号の有無を判定する。LPP信号が存在すれば、S210にて当該ディスクはDVD−RWであると判別する。LPP信号が存在しなければ、S211にて当該ディスクはDVD−RAMであると判別する。
【0027】
このように本実施例では、S101またはS201にて装置のリージョンコードを判定して、その後の判定順序を切り替える。日本のコード値「02h」であればLPP信号の有無の判定を先行させ、日本のコード値「02h」以外であればADIP信号の有無の判定を先行させる。日本ではDVD−R/RWが使用される可能性が高いので、LPP信号の有無の判定(S102、S202)の段階で判別処理が終了することが多い。また、日本以外ではDVD+R/RWが使用される可能性が高いので、ADIP信号の有無の判定(S107、S207)の段階で判別処理が終了することが多い。よって、LPP信号とADIP信号の2回の判定を行う必要がないので、判別時間を短縮させることができる。
【0028】
上記実施例ではリージョンコードとして日本の属する「02h」であるか否かを条件とした。これは一例を述べたもので、各地域とそこで使用されるディスクの種類の関係に適応して、使用される可能性の高いディスクの種類の判定を先行するように判定順序を変更すれば良い。
【符号の説明】
【0029】
1…光ディスク、
2…スピンドルモータ、
3…光ピックアップ、
4…FE信号生成部、
5…LPP信号生成部、
6…ADIP信号生成部、
7…信号判定部、
8…マイコン、
9…EEPROM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着された光ディスクにレーザ光を照射しデータを記録再生する光ディスク装置において、
上記光ディスクにレーザ光を照射しその反射光信号を検出する光ピックアップと、
該反射光信号からからFE(フォーカスエラー)信号を生成するFE信号生成部と、
該反射光信号からアドレス情報を示すLPP(Land Pre−Pit)信号を生成するLPP信号生成部と、
該反射光信号からアドレス情報を示すADIP(Adress In Pre−groove)信号を生成するADIP信号生成部と、
上記生成された複数種類の信号について信号の有無やレベルを判定する信号判定部と、
該信号判定部の判定結果をもとに上記光ディスクの種類を判別するマイコンと、
当該光ディスク装置の地域情報を格納しているEEPROMとを備え、
上記マイコンは、上記EEPROMに格納されている地域情報を参照し、該地域情報に応じて上記信号判定部に対し、上記複数種類の信号についてそれらを判定する順序を切り替えさせることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、
前記地域情報がDVD−R/RW(マイナス系)が主に使用される地域である場合は、LPP信号の判定をADIP信号よりも先行させ、前記地域情報がDVD+R/RW(プラス系)が主に使用される地域である場合は、ADIP信号の判定をLPP信号よりも先行させることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
装着された光ディスクにレーザ光を照射しその反射光から複数種類の信号を検出して上記光ディスクの種類を判別する光ディスクの判別方法であって、
光ディスク装置に設定された地域情報に応じて、上記複数種類の信号についてそれらを検出する順序を切り替えることを特徴とする光ディスクの判別方法。
【請求項4】
請求項3に記載の光ディスクの判別方法において、
検出する前記複数種類の信号には、アドレス情報を示すLPP(Land Pre−Pit)信号とADIP(Adress In Pre−groove)信号とが含まれ、
前記地域情報がDVD−R/RW(マイナス系)が主に使用される地域である場合は、LPP信号の検出をADIP信号よりも先行させ、前記地域情報がDVD+R/RW(プラス系)が主に使用される地域である場合は、ADIP信号の検出をLPP信号よりも先行させることを特徴とする光ディスクの判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−182357(P2010−182357A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23800(P2009−23800)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】