説明

光ディスク装置及び記録再生方法

【課題】光ディスク装置において、セットアップ時からの温度変化に対して、対物レンズのチルト量を的確に補正する。
【解決手段】光ディスクの再生又は記録を行う光ディスク装置100は、前記光ディスクに光源からの光を照射する対物レンズ103と、前記光ディスクの径方向における前記対物レンズ103の傾きをチルト量に制御するアクチュエータ160と、前記装置内部の温度を検出する温度センサ164と、前記光ディスクの装填の際に実施される初期調整時からの温度変化に応じて前記チルト量を補正する制御部114と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置及び記録再生方法に関する。特に、光ディスク装置の対物レンズのチルト制御(傾き制御)に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクは、光ピックアップからのレーザ光の光軸に対して垂直方向から傾くと、正確な情報の記録再生が行われなくなる。そこで、一般的に、光ピックアップの対物レンズのチルト(傾き)制御が実施される。
【0003】
従来技術として、特許文献1は、光ディスク装填の際の初期調整(セットアップ)時に、チルト量を調整することを開示する。特許文献2は、光ディスクの記録中に、反射光量から最適なチルト量を温度に対して学習することを開示する。特許文献3は、温度変化に伴う光ディスクのチルトに対してトラックオフセット量及びフォーカスオフセット量を制御することにより、光ディスクのチルトに対する対策を間接的に実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−305264号公報
【特許文献2】特開2005−216331号公報
【特許文献3】特開平4−307431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、セットアップ時にチルト量を調整しても、その後温度変化があるとチルト量を補正する必要が生じる。また、温度変化に対応するため、特許文献2のチルト学習・制御を温度ごとに実施すると、学習時の再生又は記録の停止が発生することが問題となる。また、特許文献3では、トラック制御用信号とフォーカス制御用信号にそれぞれのオフセット量を加減算するような2次元的な制御のため、誤差が大きくなる可能性がある。
【0006】
従って、従来技術では、再生又は記録開始後に、セットアップ時からの温度変化に対してチルト量を好適に補正することができないおそれがある。
【0007】
本発明は、初期調整時(セットアップ時)からの温度変化に対して、チルト量を的確に補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、光ディスクの再生又は記録を行う光ディスク装置であって、前記光ディスクに光源からの光を照射する対物レンズと、前記光ディスクの径方向における前記対物レンズの傾きをチルト量に制御するアクチュエータと、前記装置内部の温度を検出する温度センサと、前記光ディスクの装填の際に実施される初期調整時からの温度変化に応じて前記チルト量を補正する制御部と、を備えることを特徴とする光ディスク装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によると、初期調整時からの温度変化に対して、対物レンズのチルト量を的確に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一実施形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】光ディスクの温度による変形の様子を例示する図である。
【図3】温度と対物レンズのチルト量の関係を例示する図である。
【図4】チルト量をシンボルエラーレートから求める方法を示す図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係るチルト制御のフローチャートである。
【図6】本発明の第一実施形態に係る、光ディスクの種類ごとに比例係数を定める参照テーブルを示す図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る、光ディスクの種類に応じてチルト補正量(絶対値)を定める参照テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一実施形態]
図1は、本発明の実施の形態の光ディスク記録再生装置100(以下、光ディスク装置と呼ぶ)の構成を示すブロック図である。
【0012】
本実施形態の光ディスク装置100は、ホストコンピュータ150と接続され、装填された光ディスク101(例えば、ブルーレイディスク)から再生したデータをホストコンピュータ150へ出力する。なお、光ディスク装置100は、ホストコンピュータ150から入力されるデータを書き込み可能な光ディスク101に記録する機能も有する。
【0013】
本実施形態の光ディスク装置100は、スピンドルモータ102、I/V変換回路109、信号処理回路110、復調回路111、光ディスク判別部112、レーザドライバ113、システムコントローラ(制御部)114、メモリ115、データバス116、光ピックアップ120及びレーザパワー制御回路123を備える。
【0014】
スピンドルモータ102は、光ディスク装置100に装填された光ディスク101を回転駆動する。
【0015】
光ピックアップ120は、対物レンズ103、スプリッタ104、コリメートレンズ105、集光レンズ106、光電変換素子107、レーザ光源108等を備える。光ピックアップ120は、光ディスク101からデータを再生する時には、レーザ光源108からの弱いレーザ光を光ディスク101に照射し、そのレーザ光の反射光により、光ディスク101に記録されているデータを再生し、反射光に対応するRF信号を出力する。
【0016】
レーザ光源108は、記録及び再生のために所定の強度のレーザ光を発生する半導体レーザであり、光ディスク装置に装填される光ディスクの種類(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc))毎に定められた波長のレーザ光を発光する。レーザ光源108から発光されたレーザ光は、コリメートレンズ105及び対物レンズ103を介して光ディスク101の記録面の所定半径の位置に照射される。
【0017】
また、レーザ光源108は、光ディスク101にデータを記録する時には、再生時より強いレーザ光を光ディスク101に照射する。光ディスク101は、レーザ光が照射された部分の熱による相変化等によって記録層に記録ピットを形成し、記録層の反射率を変化させてデータを記録する。
【0018】
光ディスク101の記録面で反射したレーザ光は、スプリッタ104で分離され、集光レンズ106で集光され、光電変換素子107に導かれる。光電変換素子107は、受光した反射光を電気信号(RF信号)に変換し、反射光に対応するRF信号を出力する。
【0019】
対物レンズ103は、アクチュエータ160によってディスクの径方向(ラジアルチルト方向)に傾き(チルト)が制御される。また、対物レンズ103は、光ディスク面上にレーザ光が合焦するように移動調整される。アクチュエータ160は、ディスクの径方向に対物レンズ103の傾きを変化させるチルトコイル、ディスク回転軸方向に平行に対物レンズ103を移動させるフォーカスコイル、ディスク半径方向(トラッキング方向)に対物レンズ103を移動させるトラッキングコイルを有するものでよい。駆動回路162は、システムコントローラ114からの指令に応じて、アクチュエータ160に駆動電流を供給する。
【0020】
温度センサ164は、光ディスク装置内の温度を検出する。温度センサ164として、レーザ光源108の温度を検出するため光ピックアップ120に設けられる温度センサ等の既存の温度センサを用いてもよいし、光ディスク近傍の温度を検出する温度センサを新たに設けてもよい。
【0021】
I/V変換回路109は、光電変換素子107から出力された電流信号を電圧信号に変換し、増幅する。信号処理回路110は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)であり、光電変換素子107から出力されたRF信号をデジタルデータに変換する。また、信号処理回路110は、光ディスクの種類や製造者を示すディスクIDによって異なる光ディスク判別用信号、光ビームの焦点を調整するためのフォーカス誤差信号、光ディスク101のトラックに追従するためのトラッキング誤差信号等を出力する。
【0022】
復調回路111は、信号処理回路110から出力されたデジタルデータを光ディスクの種類毎に定められたフォーマットに従って復調し、エラー検出及びエラー訂正を行う。復調されたデータは、メモリ115(バッファ)に一時的に格納される。
【0023】
光ディスク判別部112は、信号処理回路110から出力される光ディスク判別用信号によって、光ディスク装置に装填された光ディスク101の種類や、光ディスク101の製造者を示すディスクIDを判別する。光ディスク判別部112は、本実施形態では、回路として構成されているが、システムコントローラ114によって実行されるプログラムによって構成してもよい。
【0024】
光ディスクの種類として、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc)に大別され、さらにCD、DVD、BDの中でもROM、−R、−RE(RW)等の種類に分類される。光ディスクの判別手法は、種々の公知の手法を用いることができる。例えば、RF信号の振幅、フォーカスエラー信号、光ディスクに記録された管理情報(BCA)に基づいて、光ディスク判別用信号を生じさせることができる。なお、製造者を示すディスクIDが管理情報として光ディスクに通常記録されているため、管理情報に関する信号を光ディスク判別用信号として用いてディスクIDを判別できる。
【0025】
光ディスク判別部112から出力される光ディスク101の判別結果は、データバス116を介してシステムコントローラ114に入力される。システムコントローラ114は光ディスクの判別結果に基づいて、判別された光ディスクに最適な条件(再生条件、書込条件)になるように、各回路を制御する。
【0026】
レーザドライバ113は、光ピックアップ120のレーザ光源108を駆動するためのレーザ駆動信号117を出力する。レーザパワー制御回路123は、光ディスク判別部112による光ディスクの種類の判別結果に従って、再生時又は書込時のレーザパワー目標値を設定する。
【0027】
システムコントローラ114は、光ディスク装置100の動作を制御するマイクロプロセッサ及びメモリ(RAM、ROM等)を備える。システムコントローラ114のメモリは、実行されるプログラム、及び、該プログラムを実行する際に必要なデータを格納する。システムコントローラ114は、光ディスク装置100と接続されるホストコンピュータ150との間のデータ及びコマンドの送受信を制御するインターフェースを備える。また、システムコントローラ114は、メモリ115に一時的に記憶されたデータの読み出し、及びメモリ115へのデータの書き込みを制御する。また、システムコントローラ114は、ホストコンピュータ150から受信したコマンドを解釈し、受信したコマンドに従った処理を行う。
【0028】
メモリ115は、バッファ領域を含み、光ディスク101から再生されたデータをバッファ領域に一時的に記憶する。データバス116は、光ディスク装置100の各回路に接続する。
【0029】
次に、対物レンズ103のチルト制御について説明する。図2のように、光ディスク101は、温度に依存して、水平方向(ディスク回転軸に垂直な方向)に対してある傾斜角γだけ傾く。これは、光ディスク101の上面側と下面側の熱膨張率の違いなどによって、温度変化に伴って、光ディスク101が、上面側又は下面側に反って変形するためである。例えば、光ディスク101は、温度がある基準温度より低い場合(例えば0℃)に下面側に反り、温度が基準温度より高い場合(例えば50℃)に上面側に反る。この場合、反射光に対応する信号を最大にするために、対物レンズ103をこの傾斜角γに応じたチルト量θだけディスクの径方向に傾ける必要がある。
【0030】
図3は、光ディスクに対して、最適なチルト量θの温度依存性を実験的に求めたものである。なお、対物レンズの傾きとシンボルエラーレート(SER)の関係を、図4のように各温度で実験的に求めることにより、チルト量θは決定される。図4で、シンボルエラーレート(SER)は、対物レンズの傾きの所定の範囲(SER−Margin)においてほぼ最小値をとるが、この所定の範囲の中心の値が、チルト量θに設定される。なお、シンボルエラーレートの最小値が明らかであれば、その最小値をとる対物レンズの傾きをチルト量θとして決定することもできる。
【0031】
このようにして求められたチルト量θは、温度Tの関数となる(即ち、θ=θ(T))。従って、光ディスクの装填の際の初期調整(セットアップ)の時点で対物レンズのチルト量θの適切に調整しても、初期調整の時点から温度変化ΔTがあると、チルト量を補正させることが必要になる。補正量Δθは、初期調整時の温度T0とすると、θ(T0+ΔT)−θ(T0)となる。なお、図3のように、実験結果ではチルト量θが温度Tに比例する。チルト量θが温度Tに比例する場合(θ=αT+β)には、補正量Δθは、αΔTで与えられる。なお、比例係数αと定数βは光ディスクの種類やディスクIDに依存する。
【0032】
図5は、システムコントローラ114が実施するチルト制御の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、光ディスクが装填された時に開始する。光ディスクの装填は図示しないセンサ等により検出され、検出信号がシステムコントローラ114に入力される。
【0033】
ステップS1において、スピンドルモータ102が回転され、光ディスク装填の際の光ディスク装置100の各種初期調整が実施される。初期調整として、装填された光ディスク101の種類の判別や光ピックアップ120の調整などが実施される。光ピックアップ120の調整として、レーザパワーの調整、フォーカス調整、光ディスク装填時のチルト調整が実施される。ここでのチルト調整(初期チルト調整)は、対物レンズ103を傾けてRF信号の振幅が最大になるチルト量θsを探索し、対物レンズ103の傾きを、探索されたチルト量θs(基準チルト量)に調整するとよい。さらに、温度センサ164を介して、初期調整時(特にチルト調整時)の光ディスク装置内の温度T0が検出される。
【0034】
ステップS2において、ステップS1で調整・設定された条件で、光ディスクの再生又は記録が開始される。
【0035】
ステップS3において、温度センサ164を介して、再生又は記録中の光ディスク装置内の温度T1が検出される。
【0036】
ステップS4において、光ディスク装填の際(再生又は記録前)の初期調整時の温度T0と、再生又は記録時の光ディスク装置内の温度T1との温度差ΔT(=T1−T0)が演算される。さらに、この温度差の絶対値|T1−T0|と所定値Xが比較され、温度差の絶対値|T1−T0|が所定値X以上か否か判断される。例えば、所定値Xは、BD−Rに対して15度(℃)である。
【0037】
温度差の絶対値が所定値X以上(|T1−T0|≧X)の場合、チルト補正量Δθを演算するために、ルーチンはステップS5に進む。一方、温度差の絶対値が所定値Xより小さい(|T1−T0|<X)場合、チルト補正量Δθをゼロに設定した後、ルーチンはステップS6に進む。このように、調整時の温度T0と再生又は記録時の温度T1との温度差が少ない場合には、チルト量θを補正しない(Δθ=0)。このため、再生又は記録時のチルト補正動作の回数を必要最小限にでき、安定的に再生又は記録ができる。
【0038】
なお、例えば、所定値Xを光ディスク装置100の再生動作又は記録動作に起因する温度変化量として定めることができる。この温度変化量は、再生又は記録時のレーザ照射などに起因する温度変化量である。このようにすれば、光ディスク装置の再生動作又は記録動作に起因する温度変化の他に光ディスク装置外部の周囲温度の変化があった場合にのみ、チルト量θの補正をすることができ、光ディスク装置周囲の環境温度の変化に対してチルト量を補正できる。また、所定値Xは、再生又は記録のエラーが生じない温度変化量に定めてよい。なお、所定値Xは、光ディスクの種類やディスクID(製造者)ごとに定めて、システムコントローラ114のメモリに記憶しておいてもよい。
【0039】
ステップS5において、チルト補正量Δθが求められる。チルト量θが温度Tに対して比例する場合には、チルト補正量Δθは、温度差(温度変化)ΔTに比例係数αを掛けた値αΔTとなる(即ち、Δθ=α×(T1−T0))。補正量の指標としての比例係数αは光ディスクの種類に依存するため、例えば図6に示す光ディスクの種類ごとに比例係数αを定める参照テーブルに基づいて、比例係数αが光ディスクの種類に応じて決定できる。参照テーブルは、事前に作成されシステムコントローラ114のメモリに記憶されるため、初期調整時や再生又は記録時に学習により作成する必要がなく簡便である。
【0040】
なお、同じ種類の光ディスクであれば、ディスクID(製造者)によらず比例係数αは略一定であるため、本実施形態のチルト制御では、ディスクIDごとに比例係数αを定めて補正量を算出しない。しかし、ディスクIDごとに比例係数αを定めて、ディスクIDごとに補正量を算出することも可能である。
【0041】
さらに、CD、DVD、BDごとに、補正量の温度依存性は同様の傾向を示すため、CD、DVD、BDごとに、1つの比例係数αを定めて補正量を算出することもできる。さらに、光ディスクが、その径方向の断面が曲線状になるように変形し、光ディスクの半径Rに依存して光ディスクの反り(傾き)が変化する場合がある。この場合には、レーザの照射位置における光ディスクの半径R(又はゾーン)ごとに図6のような参照テーブルを作成して、この半径Rに応じて比例係数αから補正量を算出することも可能である。一例として、BD−Rの場合、比例係数α3は約−0.01(deg/℃)程度である。
【0042】
ステップS6において、ステップS1の基準チルト量θSに補正量Δθを加えた値にチルト量θが設定され、アクチュエータ160を介して光ディスクの径方向における対物レンズ103の傾きはこのチルト量(θ=θS+Δθ)に制御される。このため、このチルト量θに対応する指令信号が、システムコントローラ114から駆動回路162に送出される。なお、|T1−T0|<Xの場合、Δθ=0のため、チルト量は基準チルト量θSに維持される。
【0043】
ステップS7において、光ディスクの再生又は記録される次のエリアが存在するか判断される。次のエリアが存在する場合には、ルーチンは、ステップS2に戻り、光ディスクの次のエリアが再生又は記録される。次のエリアが存在しない場合には、ルーチンは、終了する。
【0044】
−作用効果−
以上説明したように、第一実施形態によると、初期調整後に、システムコントローラ(制御部)は、光ディスクの装填の際に実施する初期調整の時点からの温度変化に応じて補正量を演算し、アクチュエータを介してチルト量を補正量に応じて変化させる。これにより、初期調整時からの温度変化に対して、チルト量を的確に補正することができる。さらに、補正量を光ディスクの種類又はディスクIDごとに演算することにより、光ディスクの種類又はディスクIDごとに温度変化による光ディスクの変形が異なる場合にも的確にチルト量を補正できる。また、再生動作又は記録動作に起因する温度変化量に相当する所定値以上の温度変化があった場合にチルト量を変化させるなら、装置外部の温度変化があった場合にのみチルト量θの補正をすることができる。
【0045】
[第二実施形態]
第一実施形態において、チルト量θは温度Tに比例するとして、光ディスクの種類等に応じて比例係数αを定める参照テーブルを用いて、比例係数αと温度差ΔTからチルト補正量Δθを求めた。しかし、第二実施形態において、補正量の演算を簡略化する。このため、光ディスクの種類等に応じてチルト補正量(絶対値)Δθ’を定める参照テーブルを用いて、光ディスクの種類等に応じて直接的にチルト補正量Δθ’を定める。これは、実際には、温度に対して細かくチルト量θを補正する必要がなく、又、想定される温度変化も過度に大きくないためである。他の構成は、第一実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0046】
ステップS4で温度差ΔTの絶対値が所定値X以上(|T1−T0|≧X)の場合、チルト補正量Δθを演算するために、ルーチンはステップS5に進む。例えば、所定値Xは、再生動作又は記録動作に起因する温度変化量に相当するものでよい。この場合、装置外部の温度変化があった場合のみチルト量θの補正をすることができる。
【0047】
ステップS5において、補正量は、図7のような参照テーブルから、ディスクの種類等に応じて直接的に求められる。参照テーブルは、事前に作成されシステムコントローラ114のメモリに記憶されるため、初期調整時や再生又は記録時に学習により作成する必要がなく簡便である。
【0048】
ステップS6では、チルト量θが設定され、アクチュエータ160を介して対物レンズの傾きは設定されたチルト量θに制御される。ここで、光ディスク装置内の温度T1が初期調整時の温度T0よりもX度以上低くなった場合(T0−T1≧Xの場合)に、チルト量θは、基準チルト量θSに補正量Δθ’を加算した値に設定される(θ=θS+Δθ’)。逆に、光ディスク装置内の温度T1が初期調整時の温度T0よりもX度以上高くなった場合(T1−T0≧Xの場合)に、チルト量θは、基準チルト量θSに補正量Δθ’を減算した値に設定される(θ=θS−Δθ’)。これらは、初期調整の時点からの温度変化に応じて最終的な補正量(+Δθ’、−Δθ’)を演算して、基準チルト量θSに加算することに相当する。一例として、BD−Rの場合、X=15度に対して、補正量Δθ’は約0.2(deg)である。
【0049】
なお、ここでは、光ディスク101が、温度がある基準温度より低い時に下面側に反り、温度が基準温度より高い時に上面側に反る場合を想定している。逆に、光ディスク101がある基準温度より低い時に上面側に反り、温度が基準温度より高い時に下面側に反る場合においては、加算と減算を入れ替えればよい。
【0050】
−作用効果−
以上説明したように、第二実施形態では、第一実施形態の効果を有する他、補正量を直接的に参照テーブルにより定めるため、補正量の演算が簡略化できる。
【符号の説明】
【0051】
100 光ディスク装置
103 対物レンズ
114 システムコントローラ(制御部)
160 アクチュエータ
164 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの再生又は記録を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクに光源からの光を照射する対物レンズと、
前記光ディスクの径方向における前記対物レンズの傾きをチルト量に制御するアクチュエータと、
前記装置内部の温度を検出する温度センサと、
前記光ディスクの装填の際に実施される初期調整時からの温度変化に応じて前記チルト量を補正する制御部と、
を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記初期調整時からの前記温度変化が、前記光ディスクの再生又は記録に起因する温度変化量を超える場合に、前記制御部が前記チルト量を補正することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記チルト量の補正量を前記光ディスクの種類又はディスクIDごとに演算することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記チルト量の補正量を演算し、前記初期調整時に設定された基準チルト量に前記補正量を加算した値を新たなチルト量に設定することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記温度変化に比例するように前記チルト量の補正量を演算することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
光ディスクの再生又は記録を行う光ディスク装置に使用する記録再生方法であって、
前記光ディスクの装填の際に実施される初期調整時に、前記装置内部の温度を検出する第一の温度検出ステップと、
前記初期調整後に、前記装置内部の温度を検出する第二の温度検出ステップと、
前記光ディスクに光源からの光を照射する対物レンズの光ディスク径方向における傾きをチルト量に制御する制御ステップと、
前記光ディスクの再生又は記録を行う記録再生ステップと、を含み、
前記制御ステップでは、第一の温度検出ステップで検出された温度と第二の温度検出ステップで検出された温度との変化に応じて、前記チルト量を補正することを特徴とする記録再生方法。
【請求項7】
前記制御ステップでは、前記変化が、前記光ディスクの再生又は記録に起因する温度変化量を超える場合に、前記チルト量を補正することを特徴とする請求項6に記載の記録再生方法。
【請求項8】
前記制御ステップでは、前記チルト量の補正量を前記光ディスクの種類又はディスクIDごとに演算することを特徴とする請求項6に記載の記録再生方法。
【請求項9】
前記制御ステップでは、前記チルト量の補正量を演算し、前記初期調整時に設定された基準チルト量に前記補正量を加算した値を新たなチルト量に設定することを特徴とする請求項6に記載の記録再生方法。
【請求項10】
前記制御ステップでは、前記温度変化に比例するように前記チルト量の補正量を演算することを特徴とする請求項6に記載の記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−170904(P2011−170904A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31178(P2010−31178)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】