光ディスク装置
【課題】騒音が小さく、薄型に設計でき、組立作業性が良好で、コスト高にならず、摩耗も少ないディスククランパーを組み込んだ光ディスク装置を提供する。
【解決手段】中央にピン挿通孔８ｅを備え且つ外周部がクランパー支持体９の開口部９ａの周縁に係止されるクランパートップ８ａと、中央にスピンドルモータ６の出力軸６ａが挿入される軸挿入筒８ｋを備え且つクランパートップ８ａに下方から上下可動に組み付けられたクランパーボトム８ｂと、下部にバネ受けフランジ８ｇを備え且つピン挿通孔８ｅに下方から挿通されたピン８ｃと、バネ受けフランジ８ｇとクランパーボトム８ｂとの間に挟着された圧縮コイルバネ８ｄとで、ディスククランパー８を構成し、クランパー支持体の開口部９ａの上方にピン押さえ片９ｂを形成した光ディスク装置とする。
【解決手段】中央にピン挿通孔８ｅを備え且つ外周部がクランパー支持体９の開口部９ａの周縁に係止されるクランパートップ８ａと、中央にスピンドルモータ６の出力軸６ａが挿入される軸挿入筒８ｋを備え且つクランパートップ８ａに下方から上下可動に組み付けられたクランパーボトム８ｂと、下部にバネ受けフランジ８ｇを備え且つピン挿通孔８ｅに下方から挿通されたピン８ｃと、バネ受けフランジ８ｇとクランパーボトム８ｂとの間に挟着された圧縮コイルバネ８ｄとで、ディスククランパー８を構成し、クランパー支持体の開口部９ａの上方にピン押さえ片９ｂを形成した光ディスク装置とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ＤＶＤやＣＤなどの光ディスクに記録・再生を行う光ディスク装置に関し、特に、光ディスクをチャックするディスククランパーを改良した光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来の一般的な光ディスク装置は、光ピックアップとターンテーブルが搭載されたトラバースシャーシをその後端部でローダーシャーシに上下回動可能に取付け、ターンテーブルの上方にディスククランパーを配置してメインシャーシのクランパー支持体の開口部に回転自在に取付けている。そして、光ディスクをトレイに載せてターンテーブルとディスククランパーの間に送り込んだときに、トラバースシャーシをカムスライダーによって上昇（上方に回動）させ、ターンテーブルとディスククランパーとで光ディスクの中央開口縁を挟持して光ディスクを回転させながら、光ピックアップからレーザービームを光ディスクに照射して記録・再生を行うように構成されている。
【０００３】
このような光ディスク装置に組み込まれるディスククランパーには、クランパートップとクランパーボトムの間にマグネットとヨークを内蔵し、ターンテーブルの上面にヨークを設けたマグネット方式のクランパーと、一端をバネで下方に付勢した溝型のプレートによってクランパーの上面中央の突起を押さえるバネ方式のクランパーとがある。
【０００４】
一方、クランパーの中心に調芯部材を上下可動に配置し、上下動させるクランパー保持部材とクランパーとの間に、クランパーをターンテーブルの方へ付勢する圧縮コイルバネを配置したディスククランパーが知られている（特許文献１）。また、上部クランパーにマグネットを保持させると共にターンテーブルにヨークを設け、上部クランパーとバッククランパーとの間にコイルバネを設けたディスククランパーも知られている（特許文献２）。更に、クランパ本体にマグネットを取付けると共に、クランパ本体とクランパリングの間に３つのコイルスプリングを介在させたディスククランパーも知られている（特許文献３）。
【特許文献１】特開２００４−１７１６５１号公報
【特許文献２】特開２００３−１５７６００号公報
【特許文献３】実開昭６２−１８７４４４号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、従来のマグネット方式のディスククランパーは、薄型に設計できるという長所がある反面、クランパーがターンテーブルに磁着されたり離反したりするときの騒音（衝撃音）が大きく、しかも、マグネットやヨークを使用するのでコスト高になるという短所がある。また、従来のバネ方式のディスククランパーは、騒音が小さく、コスト高にならないという長所がある反面、プレートに弾接するクランパー上面中央の突起が回転に伴って摩耗し易く、薄型に設計することも難しいという短所がある。
【０００６】
これに対し、特許文献１のディスククランパーは、圧縮コイルバネを用いるため騒音を小さくできるけれども、圧縮コイルバネの他に調芯部材を組み込む必要があり、クランパー保持部材を上下動させる機構を設ける必要もあることから、コスト高になるという短所がある。また、特許文献２，３のディスククランパーはいずれも、マグネットとコイルバネを併用して組み込むものであるから、やはりコスト高になり、組立作業性も良くないという短所がある。
【０００７】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、騒音が小さく、薄型に設計でき、組立作業性が良好で、コスト高にならず、摩耗も少ないディスククランパーを組み込んだ光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を解決するため、本発明に係る光ディスク装置は、ターンテーブルを搭載したトラバースシャーシがその後端部でローダーシャーシに上下回動可能に取付けられ、ターンテーブルの上方にディスククランパーが配置されてローダーシャーシのクランパー支持体の開口部に回転自在に取付けられた光ディスク装置であって、上記ディスククランパーは、中央にピン挿通孔を備え且つ外周部が上記クランパー支持体の開口部の周縁に上方から係止されるクランパートップと、中央にスピンドルモータの出力軸の先端部が挿入される軸挿入筒を備え且つ上記クランパートップに下方から上下可動に組み付けられたクランパーボトムと、下部にバネ受けフランジを備え且つ上記クランパートップのピン挿通孔に下方から挿通されたピンと、このピンのバネ受けフランジと上記クランパーボトムとの間に挟着された圧縮コイルバネとで構成されており、上記クランパー支持体の開口部の上方には、上記ターンテーブルと上記クランパーボトムとで光ディスクを挟持したときに上記ピンの頂部を押さえるピン押さえ片が形成されていることを特徴とするものである。
【０００９】
本発明の光ディスク装置においては、上記ピンが耐摩耗材からなることが好ましい。そして、上記ピンの頂部が凸球面に形成され、この頂部とピン押さえ片との接触部分にグリースが塗布されていることが好ましい。
【００１０】
また、本発明の光ディスク装置においては、上記クランパートップの下面に、上記ピンのバネ受けフランジ部を挿入する環状凸部が上記ピン挿通孔と同心的に形成され、この環状凸部の内側に上記圧縮コイルバネの一端が嵌め込まれると共に、上記クランパーボトムから突き出した上記軸挿入筒の上部に上記圧縮コイルバネの他端が外嵌されていることが好ましい。
【００１１】
圧縮コイルバネとしては、一定のコイル径を有するものが組み込まれるが、一端から他端に近づくほどコイル径が大きくなる円錐コイルバネも好ましく組み込まれる。その場合は、上記クランパーボトムの軸挿入筒の周囲に環状溝を形成して該環状溝に円錐コイルバネのコイル径の大きい他端を嵌め込むと共に、上記ピンのバネ受けフランジより下方に突き出した下端部に円錐コイルバネのコイル径の小さい一端を外嵌して組み込むことが好ましい。
【００１２】
また、本発明の光ディスク装置においては、上記クランパートップの下面に、上記クランパー支持体の開口部の口径よりも少し小さい外径を有する筒状部が上記ピン挿通孔と同心的に形成され、この筒状部が上記開口部に上方から嵌め込まれると共に、上記クランパーボトムの上面から立ち上がる複数の起立片が上記筒状部の内面沿いに下方から挿入され、各起立片の上端の係止爪がクランパートップに形成された被係止部に係止されて、クランパーボトムがクランパートップに上下可動に組み付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【００１３】
本発明の光ディスク装置では、光ディスクがトレイに載置されてディスククランパーとターンテーブルの間に送られると、ターンテーブルを搭載したトラバースシャーシが上昇（上方へ回動）し、スピンドルモータの出力軸の先端がクランパーボトムの軸挿入筒に挿入されて、ディスククランパーとターンテーブルが同心的に位置決めされ、ターンテーブルとクランパーボトムによって光ディスクの中央開口縁が挟持されると共に、ディスククランパーがターンテーブルで持ち上げられて、クランパートップの外周部がクランパー支持体の開口部の周縁から浮上し、ピンの頂部がピン押さえ片に下方から当たる。このようにピンの頂部が当たると、クランパートップはそれ以上持ち上げられないが、クランパーボトムはターンテーブルによって更に持ち上げられて、圧縮コイルバネを押し縮める。そのため、この押し縮められた圧縮コイルバネの弾発力が作用するクランパーボトムとターンテーブルによって光ディスクが上下から強く挟持されて回転し、この光ディスクに光ピックアップからレーザービームが照射されて記録・再生が行われる。そして、記録・再生が終わると、上記と逆動作してディスククランパーとターンテーブルが離れ、光ディスクがトレイに載置されて取り出される。
【００１４】
本発明の光ディスク装置に取付けられるディスククランパーは、上記のようにクランパートップ中央のピン挿通孔に挿通されたピンの頂部をピン押さえ片で押さえ、このピンのバネ受けフランジとクランパーボトムとの間に挟着された圧縮コイルバネの弾発力を利用して、光ディスクをクランパーボトムとターンテーブルとで上下から挟持するものであるから、上述した光ディスクの一連の挟持動作中、及び、挟持解除動作中に発生する衝撃音などの騒音が、従来のマグネット方式のものに比べて、はるかに小さくなる。しかも、比較的安価な圧縮コイルバネとピンを組み込んでいるからコスト高になることはなく、従来の高価なマグネットやヨークを組み込んだディスククランパーに比べると、コストダウンを図ることができる。また、圧縮コイルバネをピンのバネ受けフランジとクランパーボトムの間に挟着して内蔵すると、従来のバネ方式のクランパーよりも薄型に設計できるようになる。
【００１５】
本発明の光ディスク装置に取付けられるディスククランパーは、クランパートップとピンを別部材としたため、ピンの材質を自由に選択できるようになり、このピンを耐摩耗材で作製したものは、ピン押さえ片との摩擦でピンの頂部が摩耗し難くなるため、ディスククランパーの耐久性が向上する。特に、ピンの頂部が凸球面に形成され、この頂部とピン押さえ片との接触部分にグリースが塗布されたものは、ピンの頂部がピン押さえ片に点接触に近い状態で接触し、且つ、グリースによって接触部分が潤滑されるので、ピン頂部の摩耗が実質的に生じなくなる。
【００１６】
また、本発明の光ディスク装置に取付けられるディスククランパーは、後述するように、クランパートップを裏返して、その中央のピン挿通孔にピンを上方から挿通し、このピンのバネ受けフランジにコイルバネを載置して、その上からクランパーボトムを裏返して組み付けることにより、簡単に組み立てることができるので、組立作業性が良好である。
【００１７】
本発明の光ディスク装置において、ディスククランパーのクランパートップの下面にピンのバネ受けフランジを挿入する環状凸部が形成され、この環状凸部の内側に圧縮コイルバネの一端が嵌め込まれると共に、クランパーボトムから突き出した軸挿入筒の上部に圧縮コイルバネの他端が外嵌されているものは、圧縮コイルバネの両端が環状凸部と軸挿入筒の上部によって位置決めされた状態で安定良く組み込まれるので、圧縮コイルバネがピンのバネ受けフランジとクランパーボトムの間から脱転する心配はなくなる。
【００１８】
また、本発明の光ディスク装置において、圧縮コイルバネとして一端から他端に近づくほどコイル径が大きくなる円錐コイルバネを使用し、クランパーボトムの軸挿入筒の周囲に環状溝を形成して該環状溝に円錐コイルバネのコイル径の大きい他端を嵌め込むと共に、ピンのバネ受けフランジより下方に突き出した下端部に円錐コイルバネのコイル径の小さい一端を外嵌して、円錐コイルバネを組み込んだものは、ストロークを長くできる分だけバネ定数が小さくなるので、光ディスクの挟持力（クランパーボトムの押圧力）を安定させることができ、しかも、円錐コイルバネの両端が環状溝とピン下端部によって位置決めされた状態で安定良く組み込まれるので、圧縮コイルバネが脱転する心配もなくなる。
【００１９】
更に、本発明の光ディスク装置において、ディスククランパーのクランパートップの下面に、クランパー支持体の開口部の口径よりも少し小さい外径を有する筒状部が形成され、この筒状部が上記開口部に上方から嵌め込まれると共に、上記クランパーボトムの上面から立ち上がる複数の起立片が上記筒状部の内面沿いに下方から挿入され、各起立片の上端の係止爪がクランパートップに形成された被係止部に係止されて、クランパーボトムがクランパートップに上下可動に組み付けられているものは、クランパーとターンテーブルが離れたときでも、クランパー支持体の開口部に嵌め込まれた筒状部によって、該開口部とディスククランパーがほぼ同心的な位置関係に保たれ、また、組立作業性にも優れるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【００２１】
図１は本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の斜視図、図２はターンテーブルが下降した状態にある同装置の部分断面図、図３はターンテーブルが上昇してディスククランパーとの間に光ディスクを挟持した状態にある同装置の部分断面図、図４は同装置のディスククランパーの分解斜視図である。
【００２２】
この光ディスク装置は、図１に示すように、合成樹脂製のローダーシャーシ１の内側に、合成樹脂製のトラバースシャーシ２を、その後端部の左右二箇所でゴムダンパーと取付ネジを用いて上下回動可能に取付けたものであって、このトラバースシャーシ２を上下に揺動させるカムスライダー３がメインシャーシ１の前枠部の内側に取付けられている。
【００２３】
このトラバースシャーシ２には、ターンテーブル４と光ピックアップ５が搭載されており、ターンテーブル４は、図２，図３に示すように、トラバースシャーシ２の前部に搭載されたスピンドルモータ６の出力軸６ａに固着されている。そして、光ピックアップ５は、図１に示すように、トラバースシャーシ２に取付けられた２本のガイド軸７，７（主軸と副軸）に沿ってターンテーブル４に対し接近・離反可能に搭載されている。
【００２４】
また、ローダーシャーシ１の内側には、光ディスクをターンテーブル４とディスククランパー８との間に送り込むトレイ１０が前後方向にスライド可能に取付けられており、更に、カムスライダー３、光ピックアップ５、トレイ１０を作動させる駆動モータ（不図示）と駆動力伝達歯車機構（不図示）が、ローダーシャーシ１とトラバースシャーシ２に設けられている。
【００２５】
図１，図２に示すように、ターンテーブル４の上方に配置されたディスククランパー８は、ローダーシャーシ１の左右側壁間に架設された板金製のクランパー支持体９の開口部９ａに回転自在に取付けられている。このクランパー支持体９には、図３に示すようにディスククランパー８とターンテーブル４とで光ディスクＤを挟持したときにディスククランパー８のピン８ｃの頂部を押さえる台形のピン押さえ片９ｂが、開口部９ｂを跨ぐように形成されている。
【００２６】
上記のディスククランパー８は、図２，図３，図４に示すように、クランパートップ８ａとクランパーボトム８ｂとピン８ｃと圧縮コイルバネ８ｄとで構成されており、従来のバネ方式のディスククランパーに比べると薄型になっている。
【００２７】
ディスククランパー８のクランパートップ８ａは合成樹脂で射出成形されたものであって、円形のクランパートップ８ａの中央にはピン挿通孔８ｅが形成されている。このクランパートップ８ａの下面には、ピン８ｃのバネ受けフランジ８ｇを挿入する環状凸部８ｈと、クランパー支持体９の開口部９ａの口径よりも少し小さい外径を有する筒状部８ｆが、ピン挿通孔８ｅと同心的に形成されており、この筒状部８ｆが上記開口部９ａに上方から嵌め込まれて、クランパートップ８ａの外周部が上記開口部９ａの周縁に上方から係止している。また、クランパートップ８ａの筒状部８ｆの上端内側には、円周方向に１２０°の間隔をあけて３つの起立片挿通口８ｉと被係止部８ｊが形成されている。この被係止部８ｊは、筒状部８ｆの上端を起立片挿通口８ｉに露出させて形成したものである。
【００２８】
ディスククランパー８のクランパーボトム８ｂも、クランパートップ８ａと同様の合成樹脂で射出成形されたものであって、この円形のクランパーボトム８ｂの中央には、スピンドルモータ６の出力軸６ａの先端が挿入される軸挿入筒８ｋが形成されている。そして、このクランパーボトム８ｂの外周側上面には、上端に係止爪８ｎを有する３つの起立片８ｍが１２０°の間隔をあけて形成されており、これらの起立片８ｍがクランパートップ８ａの筒状部８ｆの内面沿いに下方から起立片挿通口８ｉに挿通されると共に、係止爪８ｎが被係止部８ｊに係止されて、クランパーボトム８ｂがクランパートップ８ａに上下可動に且つ脱落しないように組み付けられている。また、このクランパーボトム８ｂの下面外周部には厚肉の環状リブ８ｐが形成されており、図３に示すように、この環状リブ８ｐとターンテーブル４の外周部上面の環状リブ４ａによって光ディスクＤの中央開口縁がしっかりと挟持されるようになっている。
【００２９】
ディスククランパー８のピン８ｃは、例えばＳＵＳ、焼結金属、硬質樹脂などの耐摩耗材で作製されたものであって、このピン８ｃの下部にはバネ受けフランジ８ｇが形成されており、このピン８ｃの頂部は凸球面に形成されている。このピン８ｃはクランパートップ８ａのピン挿通孔８ｅに下方から挿通されて、下部のバネ受けフランジ８ｇが環状凸部８ｈの内側に嵌め込まれており、図２に示すようにディスククランパー８とターンテーブル４が離れているときには、ピン８ｃの頂部とピン押さえ片９ｂとの間に隙間が存在しているが、図３に示すように光ディスクＤがクランパーボトム８ｂとターンテーブル４で挟持されてディスククランパー８が持ち上げられたときには、ピン８の頂部がピン押さえ片９ｂに下方から圧接するようになっている。このピン８ｃの頂部とクランパー支持体９のピン押さえ片９ｂとの接触部分には、潤滑用のグリース（不図示）が塗布されている。
【００３０】
圧縮コイルバネ８ｄは、その自然のバネ長がピン８ｃのバネ受けフランジ８ｇからクランパーボトム８ｂの上面（バネ受け面）までの間隔よりも少し長い、コイル径の一定したコイルバネであって、この圧縮コイルバネ８ｄの一端（上端）はクランパートップ８ａの環状凸部８ｈの内側に嵌め込まれてピン８ｃのバネ受けフランジ８ｇに圧接しており、他端（下端）はクランパーボトム８ｂから突き出した軸挿入筒８ｋの上部に外嵌されて、クランパーボトム８ｂのバネ受け面に圧接している。このように圧縮コイルバネ８ｄがバネ受けフランジ８ｇとクランパーボトム８ｂの間に挟着されると、圧縮コイルバネ８ｄの両端が環状凸部８ｈと軸挿入筒８ｋの上部によって位置決めされた状態で安定良く組み込まれることになるので、圧縮コイルバネ８ｄが脱転する心配はなくなる。
【００３１】
上記のディスククランパー８は、次の要領で作業性良く組み立てられてクランパー支持体９の開口部９ａに取付けられる。まず、クランパー支持体９とクランパートップ８ａを裏返して、クランパートップ８の筒状部８ｆを下方からクランパー支持体９の開口部９ａに嵌め込む。次いで、クランパートップ８のピン挿通孔８ｅにピン８ｃを上方から挿通し、更に圧縮コイルバネ８ｄの一端を上方からクランパートップ８の環状凸部８ｈの内側へ嵌め込んでピン８ｃのバネ受けフランジ８ｇに載置する。そして、クランパーボトム８ｂを裏返して、起立片８ｍをクランパートップ８ａの筒状部８ｆの内面に沿って起立片挿通口８ｉに挿通し、起立片の係止爪８ｎをクランパートップ８ａの被係止部８ｊに係止させると共に、クランパーボトム８ｂの軸挿入筒８ｋを圧縮コイルバネ８ｄの他端に嵌め込んで、クランパーボトム８ｂをクランパートップ８ａに上下可動に且つ脱落しないように組み付ける。
【００３２】
以上のようなディスククランパー８を取付けた光ディスク装置では、図１，図２に示すようにトラバースシャーシ２が下降（下方へ回動）してディスククランパー８とターンテーブル４が離れたトレイオープンの状態において、光ディスクをトレイ１０に載せてディスククランパー８とターンテーブル４の間に送り込むと、カムスライダー３がスライドして図３に示すようにトラバースシャーシ２が上昇（上方へ回動）し、スピンドルモータ６の出力軸６ａの先端がクランパーボトム８ｂの軸挿入筒８ｋに挿入されて、ディスククランパー８とターンテーブル４が同心的に位置決めされる。そして、クランパーボトム８ｂと上昇するターンテーブル４によって光ディスクＤの中央開口縁が挟持されると共に、ディスククランパー８がターンテーブル４で持ち上げられて、クランパートップ８ａの外周部がクランパー支持体９の開口部９ａの周縁から浮上し、ピン８ｃの頂部がピン押さえ片９ｂに下方から当たる。このときには、光ピックアップ５がガイド軸７，７に沿ってトラバースシャーシ２の後部へ移動する。
【００３３】
上記のようにピン８ｃの頂部がピン押さえ片９ｂに当たると、クランパートップ８ａはそれ以上持ち上げられないが、クランパーボトム８ｂはターンテーブル４によって更に持ち上げられて、圧縮コイルバネ８ｄを押し縮めるため、圧縮コイルバネ８ｄの弾発力が強くなり、この弾発力を受けるクランパーボトム８ｂとターンテーブル４によって光ディスクＤが上下から強く挟持されて回転する。すると、光ピックアップ７がガイド軸７，７に沿ってターンテーブル４の方に移動しながらレーザービームを光ディスクＤに照射し、記録・再生が行われる。そして、記録・再生が終わると、上記と逆動作してディスククランパー８とターンテーブル４が離れ、光ディスクＤがトレイ１０に載置されて取り出される。
【００３４】
この光ディスク装置に取付けられたディスククランパー８は、既述したようにクランパートップ８ａの中央のピン挿通孔８ｅに挿通されたピン８ｃの頂部をピン押さえ片９ｂで押さえ、このピン８ｃのバネ受けフランジ８ｇとクランパーボトム８ｂとの間に挟着された圧縮コイルバネ８ｄの弾発力を利用して、光ディスクＤをクランパーボトム８ｂとターンテーブル４とで上下から挟持して回転させものであるから、上述した光ディスクの一連の挟持動作中、及び、挟持解除動作中に発生する衝撃音などの騒音が、従来のマグネット方式のものに比べると遥かに小さくなり、しかも、従来の高価なマグネットやヨークを組み込んだディスククランパーに比べてコストダウンを図ることができ、従来のバネ方式のクランパーよりも薄型に設計することが可能となる。そして、クランパートップ８ａとピン８ｃを別部材としてピン８ｃを耐摩耗材で作製し、ピン８ｃの頂部を凸球面に形成すると共に、ピン頂部とピン押さえ片９ｂとの接触部分に潤滑用のグリースを塗布したため、ピン頂部の摩耗も生じ難くなる。
【００３５】
図５は本発明の他の実施形態に係る光ディスク装置の部分断面図であって、ターンテーブルが上昇してディスククランパーとの間に光ディスクを挟持したところを示している。
【００３６】
この光ディスク装置は、圧縮コイルバネとして、一端から他端に近づくほどコイル径が大きくなる円錐コイルバネ８０ｄを使用し、クランパーボトム８ｂの軸挿入筒８ｋの周囲に環状溝８ｑを形成して該環状溝に円錐コイルバネ８０ｄのコイル径の大きい他端を嵌め込むと共に、ピン８ｃのバネ受けフランジ８ｇより下方に突き出した下端部に円錐コイルバネ８０ｄのコイル径の小さい一端を外嵌して組み込んだものであり、環状溝８ｑの底部はターンテーブル４の隆起部４ｂに形成された凹部４ｃに嵌め込まれている。
【００３７】
上記のようなディスククランパー８を取付けた光ディスク装置は、前述した光ディスク装置の作用効果に加えて、ストロークを長くできる分だけ円錐コイルバネ８０ｄのバネ定数が小さくなるので、光ディスクＤの挟持力を安定させることができる。そして、円錐コイルバネ８０ｄの両端が環状溝８ｑとピン８ｃの下端部によって位置決めされた状態で安定良く組み込まれるので、円錐コイルバネ８０ｄが脱転する心配もない。
【００３８】
この光ディスク装置の他の構成は前述した光ディスク装置と同様であるので、図５において同一部材に同一符号を付し、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【００３９】
【図１】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の斜視図である。
【図２】ターンテーブルが下降した状態にある同装置の部分断面図である。
【図３】ターンテーブルが上昇してディスククランパーとの間に光ディスクを挟持した状態にある同装置の部分断面図である。
【図４】同装置のディスククランパーの分解斜視図である。
【図５】ターンテーブルが上昇してディスククランパーとの間に光ディスクを挟持した状態にある、本発明の他の実施形態に係る光ディスク装置の部分断面図である。
【符号の説明】
【００４０】
１ ローダーシャーシ
２ トラバースシャーシ
３ カムスライダー
４ ターンテーブル
５ 光ピックアップ
６ スピンドルモータ
６ａ 出力軸
８ ディスククランパー
８ａ クランパートップ
８ｂ クランパーボトム
８ｃ ピン
８ｄ 圧縮コイルバネ
８ｅ ピン挿通孔
８ｆ 筒状部
８ｇ バネ受けフランジ
８ｈ 環状凸部
８ｉ 起立片挿通口
８ｊ 被係止部
８ｋ 軸挿入筒
８ｍ 起立片
８ｎ 係止爪
８ｑ 環状溝
８０ｄ 円錐コイルバネ（圧縮コイルバネ）
９ クランパー支持体
９ａ 開口部
９ｂ ピン押さえ片
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ＤＶＤやＣＤなどの光ディスクに記録・再生を行う光ディスク装置に関し、特に、光ディスクをチャックするディスククランパーを改良した光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来の一般的な光ディスク装置は、光ピックアップとターンテーブルが搭載されたトラバースシャーシをその後端部でローダーシャーシに上下回動可能に取付け、ターンテーブルの上方にディスククランパーを配置してメインシャーシのクランパー支持体の開口部に回転自在に取付けている。そして、光ディスクをトレイに載せてターンテーブルとディスククランパーの間に送り込んだときに、トラバースシャーシをカムスライダーによって上昇（上方に回動）させ、ターンテーブルとディスククランパーとで光ディスクの中央開口縁を挟持して光ディスクを回転させながら、光ピックアップからレーザービームを光ディスクに照射して記録・再生を行うように構成されている。
【０００３】
このような光ディスク装置に組み込まれるディスククランパーには、クランパートップとクランパーボトムの間にマグネットとヨークを内蔵し、ターンテーブルの上面にヨークを設けたマグネット方式のクランパーと、一端をバネで下方に付勢した溝型のプレートによってクランパーの上面中央の突起を押さえるバネ方式のクランパーとがある。
【０００４】
一方、クランパーの中心に調芯部材を上下可動に配置し、上下動させるクランパー保持部材とクランパーとの間に、クランパーをターンテーブルの方へ付勢する圧縮コイルバネを配置したディスククランパーが知られている（特許文献１）。また、上部クランパーにマグネットを保持させると共にターンテーブルにヨークを設け、上部クランパーとバッククランパーとの間にコイルバネを設けたディスククランパーも知られている（特許文献２）。更に、クランパ本体にマグネットを取付けると共に、クランパ本体とクランパリングの間に３つのコイルスプリングを介在させたディスククランパーも知られている（特許文献３）。
【特許文献１】特開２００４−１７１６５１号公報
【特許文献２】特開２００３−１５７６００号公報
【特許文献３】実開昭６２−１８７４４４号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、従来のマグネット方式のディスククランパーは、薄型に設計できるという長所がある反面、クランパーがターンテーブルに磁着されたり離反したりするときの騒音（衝撃音）が大きく、しかも、マグネットやヨークを使用するのでコスト高になるという短所がある。また、従来のバネ方式のディスククランパーは、騒音が小さく、コスト高にならないという長所がある反面、プレートに弾接するクランパー上面中央の突起が回転に伴って摩耗し易く、薄型に設計することも難しいという短所がある。
【０００６】
これに対し、特許文献１のディスククランパーは、圧縮コイルバネを用いるため騒音を小さくできるけれども、圧縮コイルバネの他に調芯部材を組み込む必要があり、クランパー保持部材を上下動させる機構を設ける必要もあることから、コスト高になるという短所がある。また、特許文献２，３のディスククランパーはいずれも、マグネットとコイルバネを併用して組み込むものであるから、やはりコスト高になり、組立作業性も良くないという短所がある。
【０００７】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、騒音が小さく、薄型に設計でき、組立作業性が良好で、コスト高にならず、摩耗も少ないディスククランパーを組み込んだ光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を解決するため、本発明に係る光ディスク装置は、ターンテーブルを搭載したトラバースシャーシがその後端部でローダーシャーシに上下回動可能に取付けられ、ターンテーブルの上方にディスククランパーが配置されてローダーシャーシのクランパー支持体の開口部に回転自在に取付けられた光ディスク装置であって、上記ディスククランパーは、中央にピン挿通孔を備え且つ外周部が上記クランパー支持体の開口部の周縁に上方から係止されるクランパートップと、中央にスピンドルモータの出力軸の先端部が挿入される軸挿入筒を備え且つ上記クランパートップに下方から上下可動に組み付けられたクランパーボトムと、下部にバネ受けフランジを備え且つ上記クランパートップのピン挿通孔に下方から挿通されたピンと、このピンのバネ受けフランジと上記クランパーボトムとの間に挟着された圧縮コイルバネとで構成されており、上記クランパー支持体の開口部の上方には、上記ターンテーブルと上記クランパーボトムとで光ディスクを挟持したときに上記ピンの頂部を押さえるピン押さえ片が形成されていることを特徴とするものである。
【０００９】
本発明の光ディスク装置においては、上記ピンが耐摩耗材からなることが好ましい。そして、上記ピンの頂部が凸球面に形成され、この頂部とピン押さえ片との接触部分にグリースが塗布されていることが好ましい。
【００１０】
また、本発明の光ディスク装置においては、上記クランパートップの下面に、上記ピンのバネ受けフランジ部を挿入する環状凸部が上記ピン挿通孔と同心的に形成され、この環状凸部の内側に上記圧縮コイルバネの一端が嵌め込まれると共に、上記クランパーボトムから突き出した上記軸挿入筒の上部に上記圧縮コイルバネの他端が外嵌されていることが好ましい。
【００１１】
圧縮コイルバネとしては、一定のコイル径を有するものが組み込まれるが、一端から他端に近づくほどコイル径が大きくなる円錐コイルバネも好ましく組み込まれる。その場合は、上記クランパーボトムの軸挿入筒の周囲に環状溝を形成して該環状溝に円錐コイルバネのコイル径の大きい他端を嵌め込むと共に、上記ピンのバネ受けフランジより下方に突き出した下端部に円錐コイルバネのコイル径の小さい一端を外嵌して組み込むことが好ましい。
【００１２】
また、本発明の光ディスク装置においては、上記クランパートップの下面に、上記クランパー支持体の開口部の口径よりも少し小さい外径を有する筒状部が上記ピン挿通孔と同心的に形成され、この筒状部が上記開口部に上方から嵌め込まれると共に、上記クランパーボトムの上面から立ち上がる複数の起立片が上記筒状部の内面沿いに下方から挿入され、各起立片の上端の係止爪がクランパートップに形成された被係止部に係止されて、クランパーボトムがクランパートップに上下可動に組み付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【００１３】
本発明の光ディスク装置では、光ディスクがトレイに載置されてディスククランパーとターンテーブルの間に送られると、ターンテーブルを搭載したトラバースシャーシが上昇（上方へ回動）し、スピンドルモータの出力軸の先端がクランパーボトムの軸挿入筒に挿入されて、ディスククランパーとターンテーブルが同心的に位置決めされ、ターンテーブルとクランパーボトムによって光ディスクの中央開口縁が挟持されると共に、ディスククランパーがターンテーブルで持ち上げられて、クランパートップの外周部がクランパー支持体の開口部の周縁から浮上し、ピンの頂部がピン押さえ片に下方から当たる。このようにピンの頂部が当たると、クランパートップはそれ以上持ち上げられないが、クランパーボトムはターンテーブルによって更に持ち上げられて、圧縮コイルバネを押し縮める。そのため、この押し縮められた圧縮コイルバネの弾発力が作用するクランパーボトムとターンテーブルによって光ディスクが上下から強く挟持されて回転し、この光ディスクに光ピックアップからレーザービームが照射されて記録・再生が行われる。そして、記録・再生が終わると、上記と逆動作してディスククランパーとターンテーブルが離れ、光ディスクがトレイに載置されて取り出される。
【００１４】
本発明の光ディスク装置に取付けられるディスククランパーは、上記のようにクランパートップ中央のピン挿通孔に挿通されたピンの頂部をピン押さえ片で押さえ、このピンのバネ受けフランジとクランパーボトムとの間に挟着された圧縮コイルバネの弾発力を利用して、光ディスクをクランパーボトムとターンテーブルとで上下から挟持するものであるから、上述した光ディスクの一連の挟持動作中、及び、挟持解除動作中に発生する衝撃音などの騒音が、従来のマグネット方式のものに比べて、はるかに小さくなる。しかも、比較的安価な圧縮コイルバネとピンを組み込んでいるからコスト高になることはなく、従来の高価なマグネットやヨークを組み込んだディスククランパーに比べると、コストダウンを図ることができる。また、圧縮コイルバネをピンのバネ受けフランジとクランパーボトムの間に挟着して内蔵すると、従来のバネ方式のクランパーよりも薄型に設計できるようになる。
【００１５】
本発明の光ディスク装置に取付けられるディスククランパーは、クランパートップとピンを別部材としたため、ピンの材質を自由に選択できるようになり、このピンを耐摩耗材で作製したものは、ピン押さえ片との摩擦でピンの頂部が摩耗し難くなるため、ディスククランパーの耐久性が向上する。特に、ピンの頂部が凸球面に形成され、この頂部とピン押さえ片との接触部分にグリースが塗布されたものは、ピンの頂部がピン押さえ片に点接触に近い状態で接触し、且つ、グリースによって接触部分が潤滑されるので、ピン頂部の摩耗が実質的に生じなくなる。
【００１６】
また、本発明の光ディスク装置に取付けられるディスククランパーは、後述するように、クランパートップを裏返して、その中央のピン挿通孔にピンを上方から挿通し、このピンのバネ受けフランジにコイルバネを載置して、その上からクランパーボトムを裏返して組み付けることにより、簡単に組み立てることができるので、組立作業性が良好である。
【００１７】
本発明の光ディスク装置において、ディスククランパーのクランパートップの下面にピンのバネ受けフランジを挿入する環状凸部が形成され、この環状凸部の内側に圧縮コイルバネの一端が嵌め込まれると共に、クランパーボトムから突き出した軸挿入筒の上部に圧縮コイルバネの他端が外嵌されているものは、圧縮コイルバネの両端が環状凸部と軸挿入筒の上部によって位置決めされた状態で安定良く組み込まれるので、圧縮コイルバネがピンのバネ受けフランジとクランパーボトムの間から脱転する心配はなくなる。
【００１８】
また、本発明の光ディスク装置において、圧縮コイルバネとして一端から他端に近づくほどコイル径が大きくなる円錐コイルバネを使用し、クランパーボトムの軸挿入筒の周囲に環状溝を形成して該環状溝に円錐コイルバネのコイル径の大きい他端を嵌め込むと共に、ピンのバネ受けフランジより下方に突き出した下端部に円錐コイルバネのコイル径の小さい一端を外嵌して、円錐コイルバネを組み込んだものは、ストロークを長くできる分だけバネ定数が小さくなるので、光ディスクの挟持力（クランパーボトムの押圧力）を安定させることができ、しかも、円錐コイルバネの両端が環状溝とピン下端部によって位置決めされた状態で安定良く組み込まれるので、圧縮コイルバネが脱転する心配もなくなる。
【００１９】
更に、本発明の光ディスク装置において、ディスククランパーのクランパートップの下面に、クランパー支持体の開口部の口径よりも少し小さい外径を有する筒状部が形成され、この筒状部が上記開口部に上方から嵌め込まれると共に、上記クランパーボトムの上面から立ち上がる複数の起立片が上記筒状部の内面沿いに下方から挿入され、各起立片の上端の係止爪がクランパートップに形成された被係止部に係止されて、クランパーボトムがクランパートップに上下可動に組み付けられているものは、クランパーとターンテーブルが離れたときでも、クランパー支持体の開口部に嵌め込まれた筒状部によって、該開口部とディスククランパーがほぼ同心的な位置関係に保たれ、また、組立作業性にも優れるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２０】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【００２１】
図１は本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の斜視図、図２はターンテーブルが下降した状態にある同装置の部分断面図、図３はターンテーブルが上昇してディスククランパーとの間に光ディスクを挟持した状態にある同装置の部分断面図、図４は同装置のディスククランパーの分解斜視図である。
【００２２】
この光ディスク装置は、図１に示すように、合成樹脂製のローダーシャーシ１の内側に、合成樹脂製のトラバースシャーシ２を、その後端部の左右二箇所でゴムダンパーと取付ネジを用いて上下回動可能に取付けたものであって、このトラバースシャーシ２を上下に揺動させるカムスライダー３がメインシャーシ１の前枠部の内側に取付けられている。
【００２３】
このトラバースシャーシ２には、ターンテーブル４と光ピックアップ５が搭載されており、ターンテーブル４は、図２，図３に示すように、トラバースシャーシ２の前部に搭載されたスピンドルモータ６の出力軸６ａに固着されている。そして、光ピックアップ５は、図１に示すように、トラバースシャーシ２に取付けられた２本のガイド軸７，７（主軸と副軸）に沿ってターンテーブル４に対し接近・離反可能に搭載されている。
【００２４】
また、ローダーシャーシ１の内側には、光ディスクをターンテーブル４とディスククランパー８との間に送り込むトレイ１０が前後方向にスライド可能に取付けられており、更に、カムスライダー３、光ピックアップ５、トレイ１０を作動させる駆動モータ（不図示）と駆動力伝達歯車機構（不図示）が、ローダーシャーシ１とトラバースシャーシ２に設けられている。
【００２５】
図１，図２に示すように、ターンテーブル４の上方に配置されたディスククランパー８は、ローダーシャーシ１の左右側壁間に架設された板金製のクランパー支持体９の開口部９ａに回転自在に取付けられている。このクランパー支持体９には、図３に示すようにディスククランパー８とターンテーブル４とで光ディスクＤを挟持したときにディスククランパー８のピン８ｃの頂部を押さえる台形のピン押さえ片９ｂが、開口部９ｂを跨ぐように形成されている。
【００２６】
上記のディスククランパー８は、図２，図３，図４に示すように、クランパートップ８ａとクランパーボトム８ｂとピン８ｃと圧縮コイルバネ８ｄとで構成されており、従来のバネ方式のディスククランパーに比べると薄型になっている。
【００２７】
ディスククランパー８のクランパートップ８ａは合成樹脂で射出成形されたものであって、円形のクランパートップ８ａの中央にはピン挿通孔８ｅが形成されている。このクランパートップ８ａの下面には、ピン８ｃのバネ受けフランジ８ｇを挿入する環状凸部８ｈと、クランパー支持体９の開口部９ａの口径よりも少し小さい外径を有する筒状部８ｆが、ピン挿通孔８ｅと同心的に形成されており、この筒状部８ｆが上記開口部９ａに上方から嵌め込まれて、クランパートップ８ａの外周部が上記開口部９ａの周縁に上方から係止している。また、クランパートップ８ａの筒状部８ｆの上端内側には、円周方向に１２０°の間隔をあけて３つの起立片挿通口８ｉと被係止部８ｊが形成されている。この被係止部８ｊは、筒状部８ｆの上端を起立片挿通口８ｉに露出させて形成したものである。
【００２８】
ディスククランパー８のクランパーボトム８ｂも、クランパートップ８ａと同様の合成樹脂で射出成形されたものであって、この円形のクランパーボトム８ｂの中央には、スピンドルモータ６の出力軸６ａの先端が挿入される軸挿入筒８ｋが形成されている。そして、このクランパーボトム８ｂの外周側上面には、上端に係止爪８ｎを有する３つの起立片８ｍが１２０°の間隔をあけて形成されており、これらの起立片８ｍがクランパートップ８ａの筒状部８ｆの内面沿いに下方から起立片挿通口８ｉに挿通されると共に、係止爪８ｎが被係止部８ｊに係止されて、クランパーボトム８ｂがクランパートップ８ａに上下可動に且つ脱落しないように組み付けられている。また、このクランパーボトム８ｂの下面外周部には厚肉の環状リブ８ｐが形成されており、図３に示すように、この環状リブ８ｐとターンテーブル４の外周部上面の環状リブ４ａによって光ディスクＤの中央開口縁がしっかりと挟持されるようになっている。
【００２９】
ディスククランパー８のピン８ｃは、例えばＳＵＳ、焼結金属、硬質樹脂などの耐摩耗材で作製されたものであって、このピン８ｃの下部にはバネ受けフランジ８ｇが形成されており、このピン８ｃの頂部は凸球面に形成されている。このピン８ｃはクランパートップ８ａのピン挿通孔８ｅに下方から挿通されて、下部のバネ受けフランジ８ｇが環状凸部８ｈの内側に嵌め込まれており、図２に示すようにディスククランパー８とターンテーブル４が離れているときには、ピン８ｃの頂部とピン押さえ片９ｂとの間に隙間が存在しているが、図３に示すように光ディスクＤがクランパーボトム８ｂとターンテーブル４で挟持されてディスククランパー８が持ち上げられたときには、ピン８の頂部がピン押さえ片９ｂに下方から圧接するようになっている。このピン８ｃの頂部とクランパー支持体９のピン押さえ片９ｂとの接触部分には、潤滑用のグリース（不図示）が塗布されている。
【００３０】
圧縮コイルバネ８ｄは、その自然のバネ長がピン８ｃのバネ受けフランジ８ｇからクランパーボトム８ｂの上面（バネ受け面）までの間隔よりも少し長い、コイル径の一定したコイルバネであって、この圧縮コイルバネ８ｄの一端（上端）はクランパートップ８ａの環状凸部８ｈの内側に嵌め込まれてピン８ｃのバネ受けフランジ８ｇに圧接しており、他端（下端）はクランパーボトム８ｂから突き出した軸挿入筒８ｋの上部に外嵌されて、クランパーボトム８ｂのバネ受け面に圧接している。このように圧縮コイルバネ８ｄがバネ受けフランジ８ｇとクランパーボトム８ｂの間に挟着されると、圧縮コイルバネ８ｄの両端が環状凸部８ｈと軸挿入筒８ｋの上部によって位置決めされた状態で安定良く組み込まれることになるので、圧縮コイルバネ８ｄが脱転する心配はなくなる。
【００３１】
上記のディスククランパー８は、次の要領で作業性良く組み立てられてクランパー支持体９の開口部９ａに取付けられる。まず、クランパー支持体９とクランパートップ８ａを裏返して、クランパートップ８の筒状部８ｆを下方からクランパー支持体９の開口部９ａに嵌め込む。次いで、クランパートップ８のピン挿通孔８ｅにピン８ｃを上方から挿通し、更に圧縮コイルバネ８ｄの一端を上方からクランパートップ８の環状凸部８ｈの内側へ嵌め込んでピン８ｃのバネ受けフランジ８ｇに載置する。そして、クランパーボトム８ｂを裏返して、起立片８ｍをクランパートップ８ａの筒状部８ｆの内面に沿って起立片挿通口８ｉに挿通し、起立片の係止爪８ｎをクランパートップ８ａの被係止部８ｊに係止させると共に、クランパーボトム８ｂの軸挿入筒８ｋを圧縮コイルバネ８ｄの他端に嵌め込んで、クランパーボトム８ｂをクランパートップ８ａに上下可動に且つ脱落しないように組み付ける。
【００３２】
以上のようなディスククランパー８を取付けた光ディスク装置では、図１，図２に示すようにトラバースシャーシ２が下降（下方へ回動）してディスククランパー８とターンテーブル４が離れたトレイオープンの状態において、光ディスクをトレイ１０に載せてディスククランパー８とターンテーブル４の間に送り込むと、カムスライダー３がスライドして図３に示すようにトラバースシャーシ２が上昇（上方へ回動）し、スピンドルモータ６の出力軸６ａの先端がクランパーボトム８ｂの軸挿入筒８ｋに挿入されて、ディスククランパー８とターンテーブル４が同心的に位置決めされる。そして、クランパーボトム８ｂと上昇するターンテーブル４によって光ディスクＤの中央開口縁が挟持されると共に、ディスククランパー８がターンテーブル４で持ち上げられて、クランパートップ８ａの外周部がクランパー支持体９の開口部９ａの周縁から浮上し、ピン８ｃの頂部がピン押さえ片９ｂに下方から当たる。このときには、光ピックアップ５がガイド軸７，７に沿ってトラバースシャーシ２の後部へ移動する。
【００３３】
上記のようにピン８ｃの頂部がピン押さえ片９ｂに当たると、クランパートップ８ａはそれ以上持ち上げられないが、クランパーボトム８ｂはターンテーブル４によって更に持ち上げられて、圧縮コイルバネ８ｄを押し縮めるため、圧縮コイルバネ８ｄの弾発力が強くなり、この弾発力を受けるクランパーボトム８ｂとターンテーブル４によって光ディスクＤが上下から強く挟持されて回転する。すると、光ピックアップ７がガイド軸７，７に沿ってターンテーブル４の方に移動しながらレーザービームを光ディスクＤに照射し、記録・再生が行われる。そして、記録・再生が終わると、上記と逆動作してディスククランパー８とターンテーブル４が離れ、光ディスクＤがトレイ１０に載置されて取り出される。
【００３４】
この光ディスク装置に取付けられたディスククランパー８は、既述したようにクランパートップ８ａの中央のピン挿通孔８ｅに挿通されたピン８ｃの頂部をピン押さえ片９ｂで押さえ、このピン８ｃのバネ受けフランジ８ｇとクランパーボトム８ｂとの間に挟着された圧縮コイルバネ８ｄの弾発力を利用して、光ディスクＤをクランパーボトム８ｂとターンテーブル４とで上下から挟持して回転させものであるから、上述した光ディスクの一連の挟持動作中、及び、挟持解除動作中に発生する衝撃音などの騒音が、従来のマグネット方式のものに比べると遥かに小さくなり、しかも、従来の高価なマグネットやヨークを組み込んだディスククランパーに比べてコストダウンを図ることができ、従来のバネ方式のクランパーよりも薄型に設計することが可能となる。そして、クランパートップ８ａとピン８ｃを別部材としてピン８ｃを耐摩耗材で作製し、ピン８ｃの頂部を凸球面に形成すると共に、ピン頂部とピン押さえ片９ｂとの接触部分に潤滑用のグリースを塗布したため、ピン頂部の摩耗も生じ難くなる。
【００３５】
図５は本発明の他の実施形態に係る光ディスク装置の部分断面図であって、ターンテーブルが上昇してディスククランパーとの間に光ディスクを挟持したところを示している。
【００３６】
この光ディスク装置は、圧縮コイルバネとして、一端から他端に近づくほどコイル径が大きくなる円錐コイルバネ８０ｄを使用し、クランパーボトム８ｂの軸挿入筒８ｋの周囲に環状溝８ｑを形成して該環状溝に円錐コイルバネ８０ｄのコイル径の大きい他端を嵌め込むと共に、ピン８ｃのバネ受けフランジ８ｇより下方に突き出した下端部に円錐コイルバネ８０ｄのコイル径の小さい一端を外嵌して組み込んだものであり、環状溝８ｑの底部はターンテーブル４の隆起部４ｂに形成された凹部４ｃに嵌め込まれている。
【００３７】
上記のようなディスククランパー８を取付けた光ディスク装置は、前述した光ディスク装置の作用効果に加えて、ストロークを長くできる分だけ円錐コイルバネ８０ｄのバネ定数が小さくなるので、光ディスクＤの挟持力を安定させることができる。そして、円錐コイルバネ８０ｄの両端が環状溝８ｑとピン８ｃの下端部によって位置決めされた状態で安定良く組み込まれるので、円錐コイルバネ８０ｄが脱転する心配もない。
【００３８】
この光ディスク装置の他の構成は前述した光ディスク装置と同様であるので、図５において同一部材に同一符号を付し、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【００３９】
【図１】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の斜視図である。
【図２】ターンテーブルが下降した状態にある同装置の部分断面図である。
【図３】ターンテーブルが上昇してディスククランパーとの間に光ディスクを挟持した状態にある同装置の部分断面図である。
【図４】同装置のディスククランパーの分解斜視図である。
【図５】ターンテーブルが上昇してディスククランパーとの間に光ディスクを挟持した状態にある、本発明の他の実施形態に係る光ディスク装置の部分断面図である。
【符号の説明】
【００４０】
１ ローダーシャーシ
２ トラバースシャーシ
３ カムスライダー
４ ターンテーブル
５ 光ピックアップ
６ スピンドルモータ
６ａ 出力軸
８ ディスククランパー
８ａ クランパートップ
８ｂ クランパーボトム
８ｃ ピン
８ｄ 圧縮コイルバネ
８ｅ ピン挿通孔
８ｆ 筒状部
８ｇ バネ受けフランジ
８ｈ 環状凸部
８ｉ 起立片挿通口
８ｊ 被係止部
８ｋ 軸挿入筒
８ｍ 起立片
８ｎ 係止爪
８ｑ 環状溝
８０ｄ 円錐コイルバネ（圧縮コイルバネ）
９ クランパー支持体
９ａ 開口部
９ｂ ピン押さえ片
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ターンテーブルを搭載したトラバースシャーシがその後端部でローダーシャーシに上下回動可能に取付けられ、ターンテーブルの上方にディスククランパーが配置されてローダーシャーシのクランパー支持体の開口部に回転自在に取付けられた光ディスク装置であって、
上記ディスククランパーは、中央にピン挿通孔を備え且つ外周部が上記クランパー支持体の開口部の周縁に上方から係止されるクランパートップと、中央にスピンドルモータの出力軸の先端部が挿入される軸挿入筒を備え且つ上記クランパートップに下方から上下可動に組み付けられたクランパーボトムと、下部にバネ受けフランジを備え且つ上記クランパートップのピン挿通孔に下方から挿通されたピンと、このピンのバネ受けフランジと上記クランパーボトムとの間に挟着された圧縮コイルバネとで構成されており、上記クランパー支持体の開口部の上方には、上記ターンテーブルと上記クランパーボトムとで光ディスクを挟持したときに上記ピンの頂部を押さえるピン押さえ片が形成されていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項２】
上記ピンが耐摩耗材からなることを特徴とする請求項１に記載の光ディスク装置。
【請求項３】
上記ピンの頂部が凸球面に形成され、この頂部と上記ピン押さえ片との接触部分にグリースが塗布されていることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の光ディスク装置。
【請求項４】
上記クランパートップの下面に、上記ピンのバネ受けフランジを挿入する環状凸部が上記ピン挿通孔と同心的に形成され、この環状凸部の内側に上記圧縮コイルバネの一端が嵌め込まれると共に、上記クランパーボトムから突き出した上記軸挿入筒の上部に上記圧縮コイルバネの他端が外嵌されていることを特徴とする請求項１ないし請求項３のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項５】
上記圧縮コイルバネが、その一端から他端に近づくほどコイル径が大きくなる円錐コイルバネであることを特徴とする請求項１ないし請求項３のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項６】
上記クランパーボトムの軸挿入筒の周囲に環状溝が形成され、この環状溝に上記円錐コイルバネのコイル径の大きい他端が嵌め込まれると共に、上記ピンのバネ受けフランジより下方に突き出した下端部に上記円錐コイルバネのコイル径の小さい一端が外嵌されていることを特徴とする請求項５に記載の光ディスク装置。
【請求項７】
上記クランパートップの下面に、上記クランパー支持体の開口部の口径よりも少し小さい外径を有する筒状部が上記ピン挿通孔と同心的に形成され、この筒状部が上記開口部に上方から嵌め込まれると共に、上記クランパーボトムの上面から立ち上がる複数の起立片が上記筒状部の内面沿いに下方から挿入され、各起立片の上端の係止爪がクランパートップに形成された被係止部に係止されて、クランパーボトムがクランパートップに上下可動に組み付けられていることを特徴とする請求項１ないし請求項６のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項１】
ターンテーブルを搭載したトラバースシャーシがその後端部でローダーシャーシに上下回動可能に取付けられ、ターンテーブルの上方にディスククランパーが配置されてローダーシャーシのクランパー支持体の開口部に回転自在に取付けられた光ディスク装置であって、
上記ディスククランパーは、中央にピン挿通孔を備え且つ外周部が上記クランパー支持体の開口部の周縁に上方から係止されるクランパートップと、中央にスピンドルモータの出力軸の先端部が挿入される軸挿入筒を備え且つ上記クランパートップに下方から上下可動に組み付けられたクランパーボトムと、下部にバネ受けフランジを備え且つ上記クランパートップのピン挿通孔に下方から挿通されたピンと、このピンのバネ受けフランジと上記クランパーボトムとの間に挟着された圧縮コイルバネとで構成されており、上記クランパー支持体の開口部の上方には、上記ターンテーブルと上記クランパーボトムとで光ディスクを挟持したときに上記ピンの頂部を押さえるピン押さえ片が形成されていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項２】
上記ピンが耐摩耗材からなることを特徴とする請求項１に記載の光ディスク装置。
【請求項３】
上記ピンの頂部が凸球面に形成され、この頂部と上記ピン押さえ片との接触部分にグリースが塗布されていることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の光ディスク装置。
【請求項４】
上記クランパートップの下面に、上記ピンのバネ受けフランジを挿入する環状凸部が上記ピン挿通孔と同心的に形成され、この環状凸部の内側に上記圧縮コイルバネの一端が嵌め込まれると共に、上記クランパーボトムから突き出した上記軸挿入筒の上部に上記圧縮コイルバネの他端が外嵌されていることを特徴とする請求項１ないし請求項３のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項５】
上記圧縮コイルバネが、その一端から他端に近づくほどコイル径が大きくなる円錐コイルバネであることを特徴とする請求項１ないし請求項３のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項６】
上記クランパーボトムの軸挿入筒の周囲に環状溝が形成され、この環状溝に上記円錐コイルバネのコイル径の大きい他端が嵌め込まれると共に、上記ピンのバネ受けフランジより下方に突き出した下端部に上記円錐コイルバネのコイル径の小さい一端が外嵌されていることを特徴とする請求項５に記載の光ディスク装置。
【請求項７】
上記クランパートップの下面に、上記クランパー支持体の開口部の口径よりも少し小さい外径を有する筒状部が上記ピン挿通孔と同心的に形成され、この筒状部が上記開口部に上方から嵌め込まれると共に、上記クランパーボトムの上面から立ち上がる複数の起立片が上記筒状部の内面沿いに下方から挿入され、各起立片の上端の係止爪がクランパートップに形成された被係止部に係止されて、クランパーボトムがクランパートップに上下可動に組み付けられていることを特徴とする請求項１ないし請求項６のいずれかに記載の光ディスク装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２００８−２６９７２９（Ｐ２００８−２６９７２９Ａ）
【公開日】平成２０年１１月６日（２００８．１１．６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−１１３８８９（Ｐ２００７−１１３８８９）
【出願日】平成１９年４月２４日（２００７．４．２４）
【出願人】（０００２０１１１３）船井電機株式会社 (7,855)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年１１月６日（２００８．１１．６）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年４月２４日（２００７．４．２４）
【出願人】（０００２０１１１３）船井電機株式会社 (7,855)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]