説明

光ディスク装置

【課題】チャッキング音を確実に小さくする。
【解決手段】モータの回転により、スライダ20が左スライド位置と右スライド位置との間でスライドする。スライダ20が右スライド位置までスライドすると、トラバースメカが退避位置から再生位置まで回転する。スライダ20に、トラバースメカの第1,第2リフターボス23a,23bが挿入される第1,第2カム孔20a,20dを形成する。スライダ20に、第1,第2変形部20b,20eを形成する。スライダ20が右スライド位置に向けてスライドして、トラバースメカが再生位置の直前まで回転すると、第1,第2変形部20b,20eにより、第1,第2リフターボス23a,23bに負荷が付与される。第1,第2リフターボス23a,23bに負荷が付与されている間は、トラバースメカ10の回転速度が低下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクに記録された情報の再生や記録を行う光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置には、CD、DVDなどの光ディスクが記憶媒体として用いられている。光ディスク装置は、光ディスクを装填するディスクトレイを、本体ケースに対して移動自在に組み込み、光ディスクの着脱時にはディスクトレイを本体ケース外部に引き出し、使用時にはディスクトレイを本体ケース内部に格納するように構成される。本体ケースの内部には、ディスクトレイ上に装填された光ディスクを高速で回転させるスピンドルモータが設けられている。スピンドルモータには、光ディスクを保持するとともに、磁石が埋め込まれたターンテーブルが取り付けられており、本体ケースの内部には、ターンテーブルの磁石の磁力により吸引される磁性体としての鉄板が設けられたクランパが配されている。
【0003】
スピンドルモータ及び光ピックアップを有するトラバースメカは、光ディスクの再生を行う再生位置とこの再生位置から退避した退避位置との間で回転可能に設けられており、ディスクトレイが本体ケース内部に格納された後、トラバースメカは再生位置まで回転する。トラバースメカが、再生位置まで回転すると、クランパの鉄板が、ターンテーブルの磁石の磁力により吸引され、光ディスクは、ターンテーブルとクランパとの間で挟持された状態となる。光ディスク交換時には、トラバースメカを退避位置まで変位させて、ターンテーブルとクランパとを引き離した後、ディスクトレイを本体ケース外部に引き出す。
【0004】
ターンテーブルの磁石の磁力によりクランパの鉄板を吸引するときにはチャッキング音が発生し、このチャッキング音は、ユーザに不快感を与えてしまうという問題があった。このため、チャッキング音の低減を図る技術が提案されている(例えば特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開2005−312148号公報
【特許文献2】特開2007−042189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、ローディング開始からの時間により、パルス周期を切り替えるようにしているため、ローディング時に操作者によってトレイが押されたときには、所望するタイミングとは異なるタイミングでパルス周期が切り替わり、パルス周期が切り替わる前にトラバースメカが再生位置まで回転してしまうという問題があった。この場合には、チャッキング音の低減を図ることができない。また、特許文献1では、検出手段を設け、検出手段により検出したときに、パルス周期を切り替えるようにしているが、検出手段の具体的な記載がない。さらには、検出手段を設けることにより、コストアップしてしまうという問題があった。
【0006】
また、特許文献2では、トレイの搬入搬出経路を複数区間に分け、区間毎にトレイの搬入搬出速度を切り換えており、搬入位置付近の区間では、トレイの搬入速度を低速にしている。トラバースメカは、トレイが搬入位置まで移動した後に、再生位置まで回転するものであり、トレイを搬入させるときのモータを駆動源として回転する。このため、搬入位置に移動するときのトレイ搬入速度を低速にした場合には、トラバースメカの回転速度が低速になり、モータの駆動力が足りずに、トラバースメカを再生位置まで回転させることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、チャッキング音を確実に小さくすることができる光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の光ディスク装置は、光ディスクを回転させるスピンドルモータを有するトラバースメカを、昇降手段により、前記光ディスクの再生を行う再生位置と、前記再生位置から下方に退避した退避位置との間で昇降させる光ディスク装置において、前記スピンドルモータに設けられ、前記光ディスクを保持するターンテーブルと;前記トラバースメカが前記再生位置まで上昇したときに前記ターンテーブルとの間に前記光ディスクを挟持するクランパと;前記トラバースメカが前記再生位置の直前まで上昇したときに、前記トラバースメカに負荷を付与して当該トラバースメカの上昇速度を低下させる負荷付与手段と;を備えたことを特徴とする。
【0009】
なお、前記トラバースメカの昇降は、回転や移動により行われるものである。また、前記光ディスクとしては、CD、DVD、デュアルディスク、SACD(ハイブリッド・ディスク)等が挙げられる。さらに、前記ターンテーブルと前記クランパとの一方に磁石を、他方に前記磁石の磁力により吸着される磁性部材を設けることが好ましい。
【0010】
また、前記昇降手段は、スライド自在に設けられたスライダと;前記トラバースメカに設けられたボス部と;前記スライダに設けられ、前記ボス部が挿通されるとともに、前記スライダのスライドに応じて前記ボス部を案内して前記トラバースメカを昇降させる昇降カム孔と;を備え、前記負荷付与手段は、前記スライダに設けられ、前記昇降カム孔の幅を前記ボス部よりも小さくする小形状と、前記昇降カム孔の幅を前記ボス部と略同一にして前記ボス部の通過を可能にする大形状とに変形可能な変形部と;前記変形部を前記小形状に向けて付勢する付勢手段と;を備えることが好ましい。
【0011】
さらに、前記変形部は、前記トラバースメカが前記再生位置の直前まで上昇したときに前記ボス部が通過する部分に設けられていることが好ましい。
【0012】
また、前記変形部は、前記スライダに一体的に形成されていること、または、前記スライダとは別に設けられ、前記スライダに取り付けられた変形部材から構成されていることが好ましい。なお、前記変形部を、前記スライダに一体的に形成する場合には、前記スライダに、前記変形部の変形を容易にするための逃げ孔を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光ディスク装置によれば、トラバースメカが前記再生位置の直前まで上昇したときに、トラバースメカに負荷を付与して当該トラバースメカの上昇速度を低下させるから、一定の上昇速度でトラバースメカを再生位置まで上昇させるものに比べて、トラバースメカが再生位置まで上昇してターンテーブルがクランパに接触するときに発生するチャッキング音を小さくすることができる。
【0014】
また、スライダに設けられた変形可能な変形部により、トラバースメカに設けられたボス部に負荷を付与して、トラバースメカの上昇速度を低下させるから、簡単な構成で容易にチャッキング音を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1及び図2に示すように、光ディスク装置2は、CD(光ディスク)3にアクセスして、CD3にデータの記録及び再生を行うものであり、パソコン等に組み込まれる。なお、光ディスク装置2は、DVD等も再生可能である。
【0016】
光ディスク装置2のケース4には、ディスクトレイ5が、CD3の再生時にケース4の内部に格納される格納位置(図1参照)と、ケース4の外部に露出される露出位置(図2参照)との間で移動可能に取り付けられている。ケース4の内部には、光ピックアップ6、ピックアップベース7、スピンドルモータ8及びターンテーブル9を含むトラバースメカ10や、回路基板等が組み込まれている。ケース4は、上カバー4a及び下カバー4bから構成されている(図4参照)。なお、光ピックアップ6、ピックアップベース7、スピンドルモータ8、ターンテーブル9は、図1及び図2では図示を省略し、図3〜図5で図示している。
【0017】
ケース4の前面には、CD3を再生する再生スイッチ12、CD3の再生を停止する停止スイッチ13、ディスクトレイ5開閉用の開閉スイッチ14等の各種スイッチが設けられている。これら開閉スイッチ14を含む複数のスイッチは、光ディスク装置2の主制御を行う制御部15に接続されている。開閉スイッチ14を操作すると、ディスクトレイ5は、後述するトレイ移動機構30により移動される。なお、開閉スイッチ14を含むスイッチを、ケース4の前面に設けずに、光ディスク装置2が組み込まれるパソコンに設けるようにしてもよい。
【0018】
ディスクトレイ5は、CD3が装填されるものであり、CD3の外径に対応した窪みが形成されている。ディスクトレイ5の中心部には、格納位置に位置するときにスピンドルモータ8及びターンテーブル9が挿通される挿通孔5aが形成され、この挿通孔5aに連続して、光ピックアップ6がCD3にアクセスするためのアクセス開口5bが形成されている。
【0019】
図3、図4及び図5に示すように、光ピックアップ6は、発光素子から照射されたレーザ光をCD3の記録面に集光する対物レンズ16が組み込まれており、ピックアップベース7に取り付けられた保持シャフト17に移動自在に保持されている。光ピックアップ6は、公知の移動機構により、CD3の径方向である保持シャフト17の軸方向(図3におけるA方向)に移動される。
【0020】
ターンテーブル9は、スピンドルモータ8の回転シャフトに取り付けられている。ターンテーブル9の上面には、CD3再生時のCD3の滑りを防止する滑り止めシート18が取り付けられている。ターンテーブル9には、CD3を保持するためのチャッキングコア部9aが形成されている。チャッキングコア部9aには、クランパ25の係合凸部25dが挿入される係合孔9bが形成されている。チャッキングコア部9aの内部には、磁石19が埋め込まれている。
【0021】
ケース4の内部には、トラバースメカ10を回転させるためのスライダ20が設けられている。スライダ20は、左右方向にスライド自在に設けられており、詳しくは後述するように、スライダ20のスライドに応じて、トラバースメカ10が回転する。
【0022】
ディスクトレイ5の下面には、スライダ20の第1スライダボス20iを案内する第1ガイドリブ5cと、第2スライダボス20jを案内する第2ガイドリブ5dとが立設されている。各ガイドリブ5c,5dは、それぞれ2本ずつ立設されており、各ボス20i,20jは2本のリブの間に入り込むようにされている。これにより、ディスクトレイ5が前後方向(図3における上下方向)に移動すると、各ボス20i,20jは、ガイドリブ5c,5dによって左右方向に案内され、スライダ20が左右方向にスライドする。
【0023】
ピックアップベース7には、ダンパー21が4個、ビス22により取り付けられている。後面側(図3における上側)の2個のビス22は、ダンパー21を介して、ケース4内部の取付部にビス締めされており、ピックアップベース7は、この2個のビス22を中心にして、図5中B方向に回転自在に取り付けられている。
【0024】
前面側(図3における下側)の2個のビス22は、ダンパー21を介して、リフター23に取り付けられている。すなわち、ピックアップベース7には、リフター23が取り付けられている。
【0025】
リフター23の前面には、スライダ20の第1カム孔20aに挿入される第1リフターボス23aと、第2カム孔20dに挿入される第2リフターボス23bとが形成されている。リフター23の左右の側面には回転軸23cが形成されており、リフター23は、回転軸23cを中心にして、図5中B方向に回転自在にケース4に取り付けられている。なお、回転軸23cは、図3及び図5における上下方向の位置が規制されておらず、ピックアップベース7が、図5における上側のビス22を中心に回転するときには、回転軸23cが図5における上下方向に移動する。これにより、リフター23が回転すると、ピックアップベース7は、後面側(図3における上側)の2個のビス22を中心にして、図5中B方向に回転する。本実施形態では、ピックアップベース7及びリフター23を有するトラバースメカ10は、スライダ20のスライドに応じて、退避位置(図4及び図5参照)と再生位置(図11参照)との間で回転する。なお、第1,第2リフターボス23a,23bを、リフター23に一体的に形成せずに、第1,第2リフターボス23a,23bの代わりに、別部材としてのリフターピンをリフター23に取り付けてもよい。
【0026】
上カバー4aには、2段の段付き状のカバー凹部4cが形成されており、カバー凹部4cの底面には、クランパ25の本体部25aを挿入するための、挿入孔4dが形成されている。クランパ25は、CD3再生時にCD3に当接した状態で回転するものであり、本体部25aと鍔部25bとを備える。本体部25aは挿入孔4dよりも小さい径で形成され、鍔部25bは挿入孔4dよりも大きい径で形成されている。本体部25aの底面には、チャッキングコア部9aの上部が挿入される挿入凹部25cが形成されており、挿入凹部25cには、係合孔9bに挿入される係合凸部25dが立設されている。本体部25aには、鉄板26が取り付けられており、この鉄板26は、チャッキングコア部9aの内部に埋め込まれた磁石19の磁力により吸着される。これにより、クランパ25がチャッキングコア部9aに保持され、CD3は、ターンテーブル9とクランパ25との間に挟持される。なお、上カバー4aには、カバー凹部4cを覆うシート(図示せず)が貼り付けられており、クランパ25が上カバー4aから落ちることがない。また、図1及び図2においては、カバー凹部4cの図示を省略している。
【0027】
図4及び図6に示すように、スライダ20には、リフター23の第1リフターボス23aが挿入される第1カム孔20aと、第1変形部20bと、第1変形部20bの変形を容易にするための第1逃げ孔20cと、第2リフターボス23bが挿入される第2カム孔20dと、第2変形部20eと、第2変形部20eの変形を容易にするための第2逃げ孔20fとが形成されている。
【0028】
第1変形部20bは、第1カム孔20aの上壁面20gとの隙間(第1カム孔20aの幅)が第1リフターボス23aよりも小さくなる小形状(図4及び図9参照)と、上壁面20gとの隙間が第1リフターボス23aと略同一になり第1リフターボス23aの通過を可能にする大形状(図10参照)とに変形可能で、小形状に向けてのバネ性を有するように形成されている。本実施形態では、第1変形部20bを小形状に向けて付勢する付勢手段は、第1変形部20bが有するバネ性により構成されている。
【0029】
第2変形部20eは、第1変形部20bと同様に、第2カム孔20dの上壁面20hとの隙間(第2カム孔20dの幅)が第2リフターボス23bよりも小さくなる小形状(図4及び図9参照)と、上壁面20hの隙間が第2リフターボス23bと略同一になり第2リフターボス23bの通過を可能にする大形状(図10参照)とに変形可能で、小形状に向けてのバネ性を有するように形成されている。第1,第2変形部20b,20eは、トラバースメカ10が再生位置の直前まで上昇したときに、第1,第2リフターボス23a,23bに当接する位置に形成されている。本実施形態では、第2変形部20eを小形状に向けて付勢する付勢手段は、第2変形部20eが有するバネ性により構成されている。なお、第1,第2変形部20b,20eが有するバネ性に代えて、コイルバネ等のバネ部材を設け、コイルバネにより第1,第2変形部20b,20eを小形状に向けて付勢するようにしてもよい。また、第1,第2変形部20b,20eの形状は、第1,第2リフターボス23a,23bに付与する負荷の設定量に応じて適宜変更可能されるものである。
【0030】
スライダ20の上面には、ディスクトレイ5の第1ガイドリブ5cにより案内される第1スライダボス20iと、第2ガイドリブ5dにより案内される第2スライダボス20jとが立設されている。スライダ20の前面には、スライダギア20kが形成されている。
【0031】
ディスクトレイ5が露出位置(図3参照)に位置するときには、第2スライダボス20jが第2ガイドリブ5dにより案内され、スライダ20は左スライド位置(図4参照)に位置する。スライダ20が左スライド位置に位置するときには、トラバースメカ10は退避位置に位置される。
【0032】
ディスクトレイ5が、露出位置(図2及び図3参照)から格納位置(図1参照)に向けて移動すると、第2スライダボス20jが第2ガイドリブ5dにより案内され、スライダ20は、左スライド位置から右方にスライドする。
【0033】
図3及び図4に示すように、スライダギア20kは、ケース4内部に回転自在に設けられた半円状の半円ギア29に噛合している。半円ギア29は、スライダ20が左スライド位置(図4参照)からギア噛合位置(図7参照)までの間に位置するときには、スライダギア20kのみと噛合している。スライダ20が左スライド位置からギア噛合位置までスライドして、半円ギア29が回転すると、半円ギア29は、トレイ移動機構30の第3段ギア31cに噛合する。半円ギア29は、スライダ20がギア噛合位置と右スライド位置(図11参照)との間でスライドするときには、第3段ギア31cに噛合するようにされている。
【0034】
図7及び図8に示すように、ケース4内部には、ディスクトレイ5を移動させるトレイ移動機構30が設けられている。トレイ移動機構30は、トレイ用ギア31、中継プーリー32、ベルト33、モータプーリー34、モータ35を備え、トレイ用ギア31、中継プーリー32は、図示しない支軸に回転自在に取り付けられている。トレイ用ギア31は、3段ギアから構成されており、図8における最上段から順に第1段ギア31a、第2段ギア31b、第3段ギア31cとなっている。第1段ギア31aは、ディスクトレイ5に形成されたトレイギア5eに噛合している。なお、図8においては、図面の乱雑を避けるため、ベルト33、モータプーリー34、モータ35の図示を省略している。
【0035】
中継プーリー32には、中継ギア32aが形成されており、中継ギア32aは、第2段ギア31bに噛合している。中継プーリー32は、半円ギア29と同心円上に設けられている。モータプーリー34は、モータ35のモータシャフトに取り付けられており、中継プーリー32とモータプーリー34とには、ベルト33が巻き掛けられている。モータ35は、制御部15に接続されており、制御部15により駆動が制御される。制御部15は、開閉スイッチ14が操作されたときに、モータ35を駆動する。
【0036】
モータ35が駆動してモータプーリー34が回転すると、ベルト33を介して中継プーリー32が回転し、中継ギア32aに噛合しているトレイ用ギア31が回転する。そして、トレイ用ギア31の回転により、ディスクトレイ5が前後方向(図7における上下方向)に移動する。本実施形態では、モータプーリー34が時計方向に回転するようにモータ35を駆動すると、ディスクトレイ5が露出位置から格納位置に向けて移動し、モータプーリー34が反時計方向に回転するようにモータ35を駆動すると、ディスクトレイ5が格納位置から露出位置に向けて移動する。
【0037】
ディスクトレイ5が露出位置(図3参照)に位置するときに、開閉スイッチ14が操作されると、制御部15は、モータプーリー34が時計方向に回転するようにモータ35を駆動する。このモータ35の駆動により、ディスクトレイ5は格納位置に向けて移動する。
【0038】
ディスクトレイ5が格納位置まで移動する直前に、スライダ20は、ディスクトレイ5の第1,第2ガイドリブ5c,5dにより案内されて、半円ギア29が第3段ギア31cに噛合するギア噛合位置までスライドする。スライダ20がギア噛合位置まで移動すると、トレイギア5eは第1段ギア31aとの噛合から外れる。半円ギア29が第3段ギア31cに噛合すると、モータ35の駆動により、モータプーリー34、ベルト33、中継プーリー32、トレイ用ギア31、半円ギア29を介して、スライダ20が右方にスライドする。スライダ20がギア噛合位置から右方にスライドすると、第1スライダボス20iが第1ガイドリブ5cに当接して、このスライダ20が右方にスライドする力により、ディスクトレイ5は後方(図7における上方)に向けて格納位置まで移動する。
【0039】
スライダ20は、ギア噛合位置(図7及び図8参照)と右スライド位置(図11参照)との間でスライドするときは、モータ35の駆動によりスライドし、ギア噛合位置と左スライド位置(図3及び図4参照)との間でスライドするときは、ディスクトレイ5の各ガイドリブ5c,5dによりスライドする。本実施形態では、モータ35を有し、モータ35の回転によりスライダ20をスライドさせるスライド機構は、トレイ移動機構30により構成されている。
【0040】
ディスクトレイ5を格納位置から露出位置に向けて移動させるときには、モータプーリー34が反時計方向に回転するようにモータ35を駆動し、スライダ20を左方にスライドさせる。スライダ20が左方に向けてギア噛合位置までスライドすると、第1スライダボス20iが第1ガイドリブ5cに当接して、このスライダ20が左方にスライドする力により、ディスクトレイ5は前方(図7における下方)に向けて移動し、トレイギア5eが第1段ギア31aに噛合するとともに、半円ギア29は第3段ギア31cとの噛合から外れる。そして、モータ35の駆動により、ディスクトレイ5は、露出位置まで移動する。
【0041】
図9に示すように、モータ35の駆動により、スライダ20がギア噛合位置(図8参照)から右スライド位置に向けてスライドすると、リフター23の第1,第2リフターボス23a,23bが第1,第2カム孔20a,20dにより案内され、リフター23は回転軸23cを中心にして、図5中C方向に回転される。
【0042】
リフター23が回転されると、それに応じて、トラバースメカ10が図5中C方向に再生位置に向けて回転される。すなわち、スライダ20が右スライド位置に向けてスライドすると、リフター23の第1リフターボス23aが第1カム孔20aを案内されて、トラバースメカ10が再生位置に向けて回転される。
【0043】
第1リフターボス23aが、第1カム孔20aの上壁面20gと第1変形部20bとの間まで案内されると、第1カム孔20aの幅が、第1リフターボス23aの径よりも小さくなるため、この部分を通過するときには、第1変形部20bを変形させながらリフター23は回転する。
【0044】
図10に示すように、第1変形部20bを変形させると、第1変形部20bのバネ性により、第1リフターボス23aに負荷が付与される。第1リフターボス23aに負荷が付与されると、リフター23の回転速度が低下し、これに伴いトラバースメカ10の回転速度が低下する。すなわち、第1変形部20bにより、第1リフターボス23aに負荷が付与されている間は、トラバースメカ10の回転速度が低下する。
【0045】
同様にして、第2リフターボス23bが、第2カム孔20dの上壁面20hと第2変形部20eとの間まで案内されると、第2カム孔20dの幅が、第2リフターボス23bの径よりも小さくなるため、この部分を通過するときには、第2変形部20eを変形させながらリフター23は回転し、トラバースメカ10の回転速度が低下する。
【0046】
図11に示すように、スライダ20が右スライド位置までスライドすると、トラバースメカ10が再生位置まで回転される。本実施形態では、トラバースメカ10を昇降させる昇降手段は、トレイ移動機構30と、ディスクトレイ5の第1,第2ガイドリブ5c,5dと、スライダ20と、リフター23の第1,第2リフターボス23a,23bと、半円ギア29とを備えて構成される。
【0047】
トラバースメカ10が再生位置まで回転すると、チャッキングコア部9aが、CD3のディスク孔3aに挿入される。さらに、チャッキングコア部9aの上部が、クランパ25の挿入凹部25cに挿入されるとともに、クランパ25の係合凸部25dがチャッキングコア部9aの係合孔9bに挿入される。この状態では、鉄板26が取り付けられたクランパ25は、チャッキングコア部9aの磁石19の磁気により吸着保持され、CD3の上面にクランパ25の下面が当接する。これにより、CD3が、ターンテーブル9とクランパ25との間に挟持された状態となり、CD3は上下方向が位置決めされる。このとき、チャッキングコア部9aとクランパ25とが接触する音、いわゆるチャッキング音が発生する。そして、CD3再生時に、スピンドルモータ8が回転すると、CD3、ターンテーブル9、クランパ25が共に回転する。
【0048】
上記のように構成された光ディスク装置2の作用について説明する。CD3を再生させるには、先ず、CD3をディスクトレイ5に装填する。次に、開閉スイッチ14を操作してディスクトレイ5を露出位置(図2及び図3参照)から格納位置(図1参照)に向けて移動させる。開閉スイッチ14が操作されると、制御部15は、モータ35を回転させる。
【0049】
モータ35の回転により、ディスクトレイ5が露出位置から格納位置に向けて移動すると、スライダ20の第1スライダボス20iが第1ガイドリブ5cにより案内され、第2スライダボス20jが第2ガイドリブ5dにより案内され、スライダ20は、左スライド位置から右方にスライドする。
【0050】
ディスクトレイ5が格納位置に向けて移動すると、スライダ20は、モータ35の駆動により右スライド位置に向けてスライドし、このスライダ20のスライドにより、トラバースメカ10が退避位置から再生位置まで回転される。
【0051】
スライダ20が右スライド位置に向けてスライドして、トラバースメカ10が再生位置の直前まで回転すると、第1,第2リフターボス23a,23bが、第1,第2変形部20b,20eに当接する。この当接により、第1,第2リフターボス23a,23bに負荷が付与される。第1,第2リフターボス23a,23bに負荷が付与されている間は、トラバースメカ10の回転速度が低下する。
【0052】
そして、トラバースメカ10が再生位置まで回転すると、鉄板26が取り付けられたクランパ25は、チャッキングコア部9aの磁石19の磁気により保持され、CD3が、ターンテーブル9とクランパ25との間に挟持される。
【0053】
このように、トラバースメカ10が再生位置の直前まで回転したときに、トラバースメカ10の回転速度を低下させるから、一定の回転速度でトラバースメカ10を再生位置まで回転させるタイプの光ディスク装置に比べて、チャッキングコア部9aがクランパ25に接触するときの速度を低下させることができる。これにより、チャッキングコア部9aがクランパ25に接触するときに発生するチャッキング音を小さくすることができる。
【0054】
また、スライダ20に形成した第1,第2変形部20b,20eにより、第1,第2リフターボス23a,23bに負荷を付与して、トラバースメカ10の回転速度を低下させるから、時間のタイミングによりトラバースメカ10の回転速度を低下させるものに比べて、簡単な構成で容易にチャッキング音を小さくすることができる。さらに、時間タイミングによりトラバースメカ10の回転速度を低下させるものでは、ディスクトレイ5が露出位置から格納位置に向けて操作者によって押されたときに、回転速度を低下させる前にトラバースメカ10が再生位置まで回転してしまうという問題があるが、本発明においては、ディスクトレイ5が露出位置から格納位置に向けて操作者によって押されたときにも、確実にトラバースメカ10の回転速度を低下させることができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、スライダ20に第1,第2カム孔20a,20dを形成したが、スライダ20に形成するカム孔の数量は適宜変更可能であり、これに応じて、変形部及びリフターボスの数量も適宜変更可能されるものである。
【0056】
また、上記実施形態では、第1,第2変形部20b,20eの変形を容易にするために、第1,第2逃げ孔20c,20fを形成したが、第1,第2変形部20b,20eのみを形成し、第1,第2逃げ孔20c,20fを形成しないようにしてもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態では、第1,第2変形部20b,20eをスライダ20に一体的に形成したが、図12に示すように、第1,第2変形部20b,20eの代わりに、板バネ(変形部材)40を、スライダ20に取り付けてもよく、図12(A)に示すように、板バネ40の一端40aをスライダ20に取り付け、他端40bをフリー状態にする。また、第1,第2逃げ孔20c,20fを、板バネ40が変形可能な形状で形成する。図12(B)に示すように、板バネ40により、第1,第2リフターボス23a,23bに負荷が付与されている間は、トラバースメカ10の回転速度が低下するから、チャッキングコア部9aがクランパ25に接触するときに発生するチャッキング音を小さくすることができる。さらに、板バネ40を設けずに、板バネ40の形状を、変形片としてスライダ20に一体的に形成するようにしてもよい。
【0058】
また、図13に示すように、第1,第2変形部20b,20eの代わりに、トーションバネ(変形部材)42を、スライダ20に取り付けてもよく、図13(A)に示すように、トーションバネの円巻された本体部42aをスライダ20に取り付け、第1腕部42bをスライダ20に当接させ、第2腕部42cをフリー状態にする。また、第1,第2逃げ孔20c,20fを、トーションバネ42が変形可能な形状で形成する。図13(B)に示すように、第2腕部42cにより、第1,第2リフターボス23a,23bに負荷が付与されている間は、トラバースメカ10の回転速度が低下するから、チャッキングコア部9aがクランパ25に接触するときに発生するチャッキング音を小さくすることができる。
【0059】
さらに、上記実施形態では、チャッキングコア部9aの磁石19で、クランパ25の鉄板26を保持することにより、ターンテーブル9とクランパ25との間にCD3を挟持したが、ターンテーブル9とクランパ25との間にCD3を挟持する方法は適宜変更可能であり、磁石19及び鉄板26を用いずに、クランパ25の自重により、CD3を挟持するようにしてもよく、この場合にも、本発明は効果的である。
【0060】
また、上記実施形態では、トレイ移動機構30を、トレイ用ギア31、中継プーリー32、ベルト33、モータプーリー34、モータ35を備えて構成したが、ギアやプーリー等の個数は適宜変更可能である。
【0061】
さらに、上記実施形態では、スライダ20のスライドにより、トラバースメカ10を昇降させたが、これに限定されることなく、ギア機構やリンク機構等により、トラバースメカ10を昇降させるようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、本発明をパソコンに組み込まれる光ディスク装置2に実施したが、ノートパソコンに内蔵される薄型タイプの光ディスク装置にも実施可能であり、さらには、CDプレーヤやDVDプレーヤ等の各種プレーヤにも実施可能である。
【0063】
図14に他の実施形態を示す。図1〜図11に示す実施形態のものと同様の構成部材には同一の符号を付し、その詳細な説明を簡略化する。この実施形態では、第1,第2変形部20b,20eの代わりに、回転レバー45が設けられている。回転レバー45は、軸部45aを中心にしてケース4の内部に回転自在に取り付けられており、コイルバネ46により、初期位置(図14(A)参照)に向けて付勢されている。なお、本実施形態では、第1,第2リフターボス23a,23bは、スライダ20の前面から突出するような長さで形成されており、回転レバー45は、スライダ20の前面から突出した部分に当接する。
【0064】
下カバー4bには、コイルバネ46による回転レバー45の回転を規制する規制片4eと、コイルバネ46の一端が取り付けられる取付片4fとが、それぞれ2個ずつ形成されている。回転レバー45は、軸部45aを中心にして、コイルバネ46の他端が取り付けられる取付部45bと、第1,第2リフターボス23a,23bに当接する当接部45cとが形成されている。取付部45bが規制片4eに当接することにより、回転レバー45の回転が規制される。当接部45cは、弾性変形可能な形状で形成されている。回転レバー45及びコイルバネ46は、それぞれ2個ずつ設けられており、スライダ20の前方に取り付けられている。
【0065】
スライダ20には、右スライド位置に向けてスライドしたときに、当接部45cに当接して、回転レバー45をコイルバネ46の付勢に抗して回転させる当接凸部20Lが形成されている。図14(B)に示すように、スライダ20が右スライド位置に向けてスライドして、トラバースメカ10が再生位置の直前まで回転すると、当接凸部20Lが当接部45cに当接し、回転レバー45がコイルバネ46の付勢に抗して回転する。そして、第1,第2リフターボス23a,23bが、当接部45cに当接し、この当接により、第1,第2リフターボス23a,23bに負荷が付与される。第1,第2リフターボス23a,23bに負荷が付与されている間は、トラバースメカ10の回転速度が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明を実施した光ディスク装置の外観斜視図である。
【図2】ディスクトレイが露出した状態の光ディスク装置の外観斜視図である。
【図3】ディスクトレイが露出位置に位置するときの光ディスク装置を示す正面図である。
【図4】ディスクトレイが露出位置に位置するときの光ディスク装置を示す下側面断面図である。
【図5】ディスクトレイが露出位置に位置するときの光ディスク装置を示す右側面断面図である。
【図6】スライダとリフターとを示す分解斜視図である。
【図7】スライダがギア噛合位置に位置するときの光ディスク装置を示す正面図である。
【図8】ディスクトレイが格納位置に位置し、スライダがギア噛合位置に位置するときの光ディスク装置を示す下側面断面図である。
【図9】第1,第2リフターボスが第1,第2変形部に当接したときの光ディスク装置を示す下側面断面図である。
【図10】第1,第2リフターボスが第1,第2変形部を変形させたときの光ディスク装置を示す下側面断面図である。
【図11】スライダが右スライド位置に位置し、トラバースメカが再生位置に位置するときの光ディスク装置を示す下側面断面図である。
【図12】板バネをスライダに取り付けた実施形態の光ディスク装置を示す下側面断面図である。
【図13】トーションバネをスライダに取り付けた実施形態の光ディスク装置を示す下側面断面図である。
【図14】回転レバー及びコイルバネを設けた実施形態の光ディスク装置を示す下側面断面図である。
【符号の説明】
【0067】
2 光ディスク装置
3 CD(光ディスク)
8 スピンドルモータ
9 ターンテーブル
10 トラバースメカ
20 スライダ
20a,20d 第1,第2カム孔
20b,20e 第1,第2変形部
23 リフター
23a,23b 第1,第2リフターボス(ボス部)
25 クランパ
30 トレイ移動機構
35 モータ
40 板バネ(変形部材)
42 トーションバネ(変形部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクを回転させるスピンドルモータを有するトラバースメカを、昇降手段により、前記光ディスクの再生を行う再生位置と、前記再生位置から下方に退避した退避位置との間で昇降させる光ディスク装置において、
前記スピンドルモータに設けられ、前記光ディスクを保持するターンテーブルと、
前記トラバースメカが前記再生位置まで上昇したときに前記ターンテーブルとの間に前記光ディスクを挟持するクランパと、
前記トラバースメカが前記再生位置の直前まで上昇したときに、前記トラバースメカに負荷を付与して当該トラバースメカの上昇速度を低下させる負荷付与手段と、を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記昇降手段は、
スライド自在に設けられたスライダと、
前記トラバースメカに設けられたボス部と、
前記スライダに設けられ、前記ボス部が挿通されるとともに、前記スライダのスライドに応じて前記ボス部を案内して前記トラバースメカを昇降させる昇降カム孔と、を備え、
前記負荷付与手段は、
前記スライダに設けられ、前記昇降カム孔の幅を前記ボス部よりも小さくする小形状と、前記昇降カム孔の幅を前記ボス部と略同一にして前記ボス部の通過を可能にする大形状とに変形可能な変形部と、
前記変形部を前記小形状に向けて付勢する付勢手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記変形部は、前記トラバースメカが前記再生位置の直前まで上昇したときに前記ボス部が通過する部分に設けられていることを特徴とする請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記変形部は、前記スライダに一体的に形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記変形部は、前記スライダとは別に設けられ、前記スライダに取り付けられた変形部材から構成されていることを特徴とする請求項2または3記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−305480(P2008−305480A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150662(P2007−150662)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】