説明

光ディスク装置

【課題】 装置筐体の薄型化にもかかわらず、チルト調整機構により光ピックアップからの光の出射方向のばらつきを調整するに好適な構造を提供する。
【解決手段】 筐体110内に、ディスクモータ220により回転駆動されるターンテーブル120と共に、装着された光ディスクDの半径方向に移動可能に取り付けられた光ピックアップ130と、ターンテーブルに装着された光ディスクに対する光ピックアップの傾斜角度を調整可能とするチルト調整機構(シャフト230、235、調整ネジ231、236等)とを備えた光ディスク装置において、光ピックアップをチルト調整機構と共に、筐体内に平行に取り付けられらシャーシ210に取り付けると共に、ディスクモータ220を、シャーシに対して所定の角度だけ傾けて取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDやDVDなどのディスク状の光記録媒体(以下、「光ディスク」と称する)へ情報の記録又は再生を行う光ディスク装置に係り、特に、光ピックアップのチルト調整機構を備えた薄型の光ディスク装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクを記録媒体として情報の記録又は再生を行う光ディスク装置は、例えば、パーソナルコンピュータをはじめとする各種の電子装置における情報記録装置として、広く使用されている。かかるディスク装置では、パーソナルコンピュータ内の狭小な空間内に装着可能な薄型の光ディスク装置への要望が強く、そのための種々の工夫がなされている。
【0003】
例えば、以下の特許文献1では、やはり小型のディスク装置において、ピックアップモジュールと筐体との間のクリアランス(隙間)を確保するため、その一部にピックアップと、当該ピックアップをディスクの半径方向に移動可能に保持する複数のシャフトと、当該シャフトをディスク面に対し垂直方向に移動するチルト調整部とを備えた、所謂、ピックアップモジュール(又は、ユニットメカ部)を、トレーに対して所定の角度だけ傾けて装着することにより、装置の筐体と上記ピックアップモジュールとの間に、上述したチルト調整部が移動可能な隙間を確保する構造が提案されている。なお、この場合、一般的に、トレーは、装置の筐体内において平行移動することから、その公報の図3にも明らかなように、上記ピックアップモジュールは、当該筐体内において、所定の角度だけ傾けて装着されることとなる。
【特許文献1】特開2003−115175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来技術により知られる構成では、上記ピックアップモジュールを筐体内において所定の角度だけ傾けて装着することにより、当該ピックアップモジュールにおけるチルト調整部を下方に移動可能な隙間を確保することは可能となる。しかしながら、一般に、チルト調整部は、上記ピックアップモジュールを構成する光ピックアップからの光が装着される光ディスクの記録表面に対して垂直に入射されるように調整するものであり、また、当該光ピックアップからの光の出射方向は、各々のピックアップにおいてそれぞれ異なる角度を有しており、そのため、上述したように、チルト調整部を下方に移動可能な隙間を確保することだけでは、かかるピックアップからの光の出射方向のばらつきを調整するためには不十分であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明では、上述した従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、特に、チルト調整機構を備えた薄型の光ディスク装置において、光ピックアップからの光の出射方向のばらつきを調整するために好適な、改良された構造を備えた光ディスク装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明によれば、上記の目的を達成するため、まず、装置の筐体内に、少なくともディスクモータと、当該ディスクモータに取り付けられ、光ディスクを装着して回転駆動するためのターンテーブルと共に、当該装着された光ディスクの半径方向に移動可能に取り付けられた光ピックアップと、前記ターンテーブルに装着された光ディスクに対する当該光ピックアップの傾斜角度を調整可能とする角度調整機構とを備えた光ディスク装置において、
前記光ピックアップを前記角度調整機構と共に、前記筐体内において平行に取り付けられらシャーシに取り付けると共に、前記ディスクモータを、当該シャーシに対して所定の角度だけ傾けて取り付けた光ディスク装置が提供される。
【0007】
また、本発明では、前記に記載した光ディスク装置において、前記所定の角度は0.3〜0.5°であることが好ましく、また、前記装置の筐体の厚さが略9mm又はそれ以下である。
【0008】
更に、本発明によれば、前記に記載した光ディスク装置において、前記光ピックアップから出射される光が、前記角度調整機構による調整前において、前記装着された光ディスクの外周方向に向うように設定されていることが好ましく、更には、前記装着された光ディスクが近接する前記筐体の一部に、又は、装着された光ディスクが近接するトレーの一部に切り欠き又は段部を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
以上からも明らかなように、本発明によれば、その内部にチルト調整機構を備えた薄型の光ディスク装置において、光ピックアップからの光の出射方向のばらつきを調整するために好適な構造を備えた光ディスク装置が提供されるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
まず、添付の図1は、本発明の一実施の形態になる光ディスク装置を、その筐体の図示しないトップケースを外した状態で、その表側(ディスク載置側)から示した全体斜視図である。この図1において、符号100は、光ディスク装置であり、その薄板状の筐体(ボトムケース)110の内部には、光ディスクを回転駆動するためのここでは図示しないディスクモータなどと共に、その先端部に取り付けられ、装填される光ディスクをその外周に装着(嵌着)するためのターンテーブル120、その一部には対物レンズ131などを含む光ピックアップ130、更には、後に述べるが、当該光ピックアップを装填される光ディスクの半径方向に移動可能な移動機構などを備えている。また、この図中において、符号140は、例えば、樹脂により略円盤状に形成されたトレーを、符号150は、以下に述べるユニットメカニズム(以下、単に、「ユニットメカ」と称す)の上部に設けられた金属板からなる上部ユニットカバーを示している。また、図中の符号160は、光ディスク装置の表面を構成するベゼルである。
【0011】
次に、添付の図2は、上述したユニットメカ200を、その裏(下)面側から見た斜視図であり、この図からも明らかなように、ユニットメカシャーシ210には、光ディスクを回転駆動するディスクモータ220が、例えば、3つの位置に配置されたネジ221〜223により取り付けられている。また、このユニットメカシャーシ210には、上記光ピックアップ130の両側面に対向して設けられた一対のシャフト230、235が、互いに平行に取り付けられている。なお、その一方のシャフト230の近傍には、互いに平行に、外周表面にネジ溝が形成された駆動用シャフト236が配置されており、例えば、モータ240等による回転に伴って、上記光ピックアップ130をその一端において駆動し、もって、装填される光ディスクの半径方向(図の矢印を参照)に移動する。他方、上記の一対のシャフト230、235は、所謂、ガイドシャフトであり、上記光ピックアップ130の両端においてスライドしながら、当該ピックアップを平行に案内する。なお、これら一対のシャフト230、235の先端部には、調整ネジ231、237がそれぞれ設けられており、もって、上記光ピックアップ130の光ディスク表面に対する傾斜を調整するための、即ち、チルト調整機構(角度調整機構)を構成している。また、図中の符号211〜213は、上記のユニットメカ200を筐体(ボトムケース)110に取り付けるためのダンパー部を示している。
【0012】
また、この図には、上記上部ユニットカバー150が取り外された状態で示されており、その中央部に形成された開口部151を介して、その移動にもかかわれず、光ピックアップ130の表面に配置された対物レンズ131から出射されたレーザ光が、光ディスクの記録面に入射し、そして、当該光ディスクの記録面からの反射光が、再び、上記対物レンズ131に入射されることが分る。なお、ここでは図示しないが、上記の筐体110内には、上述した構成の他、更に、必要な信号処理回路や制御回路等が設けられていることは言うまでもなかろう。
【0013】
続いて、添付の図3には、上述した光ピックアップ130の側面図を示しており、この図において、矢印は、上述したように、上記駆動用シャフト236により駆動されて、当該ピックアップが互いに平行に取り付けられた一対のシャフト230、235に沿って移動する方向(上記図2の矢印を参照)を示している。そして、図にも示すように、光ピックアップ130の内部には、図示しないが、例えば、半導体レーザ等の発光素子と共に、必要な光学系や駆動回路等が設けられると共に、その表(上)面には、上記対物レンズ131から光が出射される。なお、この出射光は、図に破線で示すように、矢印の光ピックアップ130の移動方向(又は、光ピックアップ130の表面)に対して垂直な方向に出射されることが好ましいが、しかしながら、その製造過程におけるばらつき等を原因として、図に矢印で示すように、その前後に多少傾斜して出射されることが多い。なお、ここでは、図の時計回り方向を「+」で、そして、反時計回り方向を「−」で表す。なお、光ピックアップ130におけるこの出射方向のばらつきは、発明者らによる調査の結果では、±1〜2°程度であった。
【0014】
そこで、本発明では、添付の図4(a)に示すように、まず、上述した光ディスクを回転駆動するためのディスクモータ220を、上記図2のユニットメカ200に対して傾斜して取り付ける。なお、具体的には、図にも明らかなように、上記ユニットメカ200の基板を構成するユニットメカシャーシ210に対して、例えば、θ=0.3°〜0.5°程度の角度だけ、光ピックアップ130の対物レンズ131から離れる方向に傾斜して取り付けられる。かかる構成によれば、装置内に挿入された光ディスクDは、上記ディスクモータ220の先端部に取り付けたターンテーブル120の外周に、やはり傾斜して装着されることとなる。なお、このように、ディスクモータ220をユニットメカ200に対して、即ち、そのユニットメカシャーシ210に対して所定の角度だけ傾斜して取り付けることによれば、図からも明らかなように、当該ユニットメカシャーシ210上において、一対のシャフト230、235とその調整ネジ231、236により構成されたチルト調整機構、及び、当該チルト調整機構を介して移動可能に取り付けられた光ピックアップ130は、その上下において十分な隙間(クリアランス)UC、LCを確保することが可能となる。
【0015】
その後、添付の図4(b)に示すように、上記のチルト調整機構、即ち、調整ネジ231、236(上記図2を参照)により、光ピックアップ130の光ディスクDに対する傾き、より具体的には、光ピックアップ130の対物レンズ131から出射されたレーザ光が光ディスクDの記録表面に対して垂直に入射するように調整を行なう。なお、これらの図において、符号111は、上記装置の筐体(ボトムケース)の他の一部を構成するトップケースを示しており、また、符号170は、上記ユニットメカ200において、上部ユニットカバー150に対向して設けられた、やはり、例えば、薄い金属板からなる下部ユニットカバーを示している。
【0016】
なお、本発明では、上述した構成により、例えば、その幅が9mm程度又はそれ以下の超薄型の光ディスク装置においても、光ピックアップからの光の出射方向のばらつきを、容易にかつ短時間で調整することが可能であった。加えて、本発明では、上記図3で示した、上記製造された光ピックアップ130の対物レンズ131から出射されるレーザ光の傾斜角度を、その製造過程を改良することなどにより、常に、又は、その大半を、例えば図の「−」側に傾斜されせるようにすることが好ましい。なお、このことによれば、上記添付の図4(b)に示したチルト調整機構、即ち、調整ネジ231、237(上記図2を参照)による調整を、一方向(即ち、図の上方)にだけ行なえばよく、もって、必要な調整作業を容易にし、更には、そのための時間を短縮することも可能になる。
【0017】
続いて、上記に詳述した本発明になる光ディスク装置について、その他の実施の形態について以下に説明する。
即ち、上述したように、本発明になる光ディスク装置では、光ディスクを回転駆動するためのディスクモータ220を、ユニットメカ200に対して傾斜して、即ち、そのユニットメカシャーシ210に対して所定の角度だけ傾けて取り付ける。このことから、装置内に挿入された光ディスクDも、また、傾斜して装着されることとなる。その結果、傾斜して装着された光ディスクDは、例えば、円盤形状の歪などを原因として、特に、その傾斜方向の先端部がトレー140の外周部や装置筐体のトップケース111の内周面に接触してしまい、光ディスクの記録表面を傷付け、又は、騒音(異常音)を発生すること等が考慮される。
【0018】
そこで、本発明の他の実施形態になる光ディスク装置では、添付の図5(a)及び(b)に示すように、上記光ディスクDが接触する可能性の高い箇所に凹部や切り欠き部を設けることにより、上述の問題点を解消するものである。より具体的には、例えば、添付の図6(a)及び(b)にも示すように、例えば、平板状のトップケース111の内周面に接触する部分に切り欠き112や段部113を設ける。あるいは、これと共に、又は、個別に、トレー140の外周部にも、添付の7にも示すように、切り欠き141や段部142を設ける。
【0019】
なお、上述した他の実施形態になる光ディスク装置の構成によっても、やはり、その幅が9mm程度の超薄型の光ディスク装置においても、光ピックアップからの光の出射方向のばらつきを、容易にかつ短時間で調整することが可能であると共に、ディスクモータ220の傾斜に伴う光ディスクDの装置の一部への接触による不具合を解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態になる光ディスク装置のトップカバーは外した状態での全体構成を示す斜視図である。
【図2】上記光ディスク装置におけるユニットメカをその裏側から示す一部展開斜視図である。
【図3】本発明の光ディスク装置における光ピックアップの傾斜補正の原理を説明するための図である。
【図4】上記本発明の光ディスク装置におけるユニットメカの取り付け構造及びそのチルト調整後の状態を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態になる光ディスク装置の構造を示す断面図である。
【図6】上記他の実施形態になる光ディスク装置のトップケースの構造を示す斜視図である。
【図7】上記他の実施形態になる光ディスク装置のトレーの構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
110…筐体
120…ターンテーブル
130…光ピックアップ
140…トレー
150…上部ユニットカバー
200…ユニットメカ
210…シャーシ
220…ディスクモータ
230、235…シャフト
236…駆動用シャフト
231、237…調整ネジ
240…モータ
D…光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の筐体内に、少なくともディスクモータと、当該ディスクモータに取り付けられ、光ディスクを装着して回転駆動するためのターンテーブルと共に、当該装着された光ディスクの半径方向に移動可能に取り付けられた光ピックアップと、前記ターンテーブルに装着された光ディスクに対する当該光ピックアップの傾斜角度を調整可能とする角度調整機構とを備えた光ディスク装置において、
前記光ピックアップを前記角度調整機構と共に、前記筐体内において平行に取り付けられらシャーシに取り付けると共に、前記ディスクモータを、当該シャーシに対して所定の角度だけ傾けて取り付けたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載した光ディスク装置において、前記所定の角度は0.3〜0.5°であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載した光ディスク装置において、前記装置の筐体の厚さが略9mm又はそれ以下であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
前記請求項1に記載した光ディスク装置において、前記光ピックアップから出射される光が、前記角度調整機構による調整前において、前記装着された光ディスクの外周方向に向うように設定されていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
前記請求項1に記載した光ディスク装置において、前記装着された光ディスクが近接する前記筐体の一部に、切り欠き又は段部を形成したことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
前記請求項1に記載した光ディスク装置において、更に、装着される光ディスクに対向してトレーが形成されており、かつ、前記装着された光ディスクが近接する前記トレーの一部に、切り欠き又は段部を形成したことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−4166(P2008−4166A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172525(P2006−172525)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】