説明

光ディスク装置

【課題】
ディスクトレイの搬出不良や流体音の増加なくラックスライドをガタ寄せし、光ディスクの回転一次振動によるラックスライドの接触振動を抑制する効果をもつ光ディスク装置を提供する。
【解決手段】
筐体16に取り付けられたガイドレール3と、ディスクトレイ7を支持するラックスライド1とからなる搬送機構を用いてディスクトレイ7が筐体16外部へ搬出または内部へ搬入される光ディスク装置100において、永久磁石4と強磁性体2、または永久磁石4同士の吸引力を用いてガイドレール3とラックスライド1を吸着する構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクトレイ方式の光ディスク装置に関し、特にディスク回転時の回転一次の振れ回り振動による部品間の接触振動と、それに伴う振動音の低減技術に関する。また、ディスクトレイ方式の光ディスク装置の内部流体音の増加防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CDやDVD、BDに代表されるような光ディスクは、近年その記録容量がますます増大する傾向にある。BD片面一層には25GB、二層で50GBのデータを記録することができ、さらに多層化が進められている。それに伴い、高速にデータの読み出し又は書き込みを実現するため、光ディスクのデータを記録/再生する光ディスク装置のディスク回転速度もいっそう速いものが要求されるようになっている。
【0003】
上述した光ディスク装置では、ディスク回転速度の高速化に伴う機構振動の増大が高密度な光ディスク記録面への記録/再生性能に悪影響を及ぼし、振動音を増大する問題がある。特に、光ディスクの駆動機構や記録再生機構を搭載した部分(以下、これをディスクトレイと呼ぶ)を光ディスク装置の収容部から出し入れ自在とした光ディスク装置においては、ディスクトレイ搬送機構のガタによる接触振動がより深刻な問題となる。この振動は光ディスク装置単体で動作させる際には現れないが、光ディスク装置をPCなどに組付けた際、組付け方法によりディスクトレイ搬送機構部のガタ隙間や振動の形態が変化して発生することがある。
【0004】
このような問題の解決策として、特許文献1にはディスクトレイ(ドロワー2)の搬送方向に対して垂直な方向に取り付けられた弾性部材による押圧力でディスクトレイや、ディスクトレイの搬送手段であるラックスライド(スライドレール6a、6b)を押さえつけることによりディスクトレイの振動を抑える方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−117432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直接押圧されていないラックスライドの微小なガタにより接触振動、いわゆるビビリ音が発生することがあり、ビビリ音を抑制するためにはラックスライドに所定の押圧力を与えることが有効である。しかし、特許文献1に示すように、ラックスライドのような可動部品の摺動面を弾性部材で押圧すると、ディスクトレイ搬入・搬出時の摩擦負荷抵抗が大きくなり、長期間の使用で、接触・摺動面の寿命低下、破損、使用感の悪化、ディスクトレイ搬出不良を招く恐れがある。
【0007】
また、押圧によってディスクトレイに過大な押圧力が作用すると、ディスクトレイなどの部品の変形も引き起こす恐れがある。このディスクトレイの変形や、ガタ寄せ(片方に押付ける)によるディスクトレイ搬入時の位置の変化により、光ディスク回転時の筐体内部の空気の流路が変化し、部品間の隙間寸法の変化により該隙間部での圧力変動が生じて騒音が増加する。
【0008】
さらに、ディスクトレイ振動やビビリ音を抑制するために最適な位置を押圧しようとした場合、上記の方法では弾性部材がガイドレール摺動面から突起する形となり、他の部品との接触干渉がないかを考慮した設計が必要となる。
【0009】
本発明の目的は、上記のような問題に鑑み、ディスクトレイ搬入・搬出の移動時の部品の寿命低下、破損、使用感の悪化がなく、騒音性能が劣化することなくディスクトレイの振動やラックスライドのビビリ音を抑制し、設計容易な光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の特徴は、トップカバーとボトムカバーによって形成された筐体と、光ディスクを装着して回転駆動させるスピンドルモータおよび光ディスクの記録面の情報を再生または記録面に新たな情報を記録するピックアップを搭載したディスクトレイと、前記ディスクトレイを前記筐体外部へ搬出あるいは前記筐体内部へ搬入する搬送機構を備えた光ディスク装置において、
前記搬送機構は、前記筐体に取り付けられたガイドレールと、前記ディスクトレイを移動自在に支持し前記ガイドレールに案内されて移動するラックスライドとからなり、前記ディスクトレイの前記筐体内への搬入時に、前記ラックスライドを前記ガイドレールに押圧する、永久磁石と強磁性体、または永久磁石同士からなる磁気手段を設けたことである。
【0011】
また、前記ラックスライドの一部に少なくとも1つの永久磁石を備え、前記ガイドレールの一部に前記永久磁石と対をなす永久磁石または強磁性体を備え、前記永久磁石と前記強磁性体、または前記永久磁石同士は、前記ディスクトレイの前記筐体内への搬入時に対向する位置に取り付けられている構造としてもよい。
【0012】
また、前記ラックスライドの一部に少なくとも1つの強磁性体を備え、前記ガイドレールの一部に前記強磁性体と対をなす永久磁石を備え、前記強磁性体と前記永久磁石は、前記ディスクトレイの前記筐体内への搬入時に対向する位置に取り付けられている構造としてもよい。
【0013】
また、前記永久磁石と前記強磁性体、または前記永久磁石同士は、前記ディスクトレイの前記筐体内への搬入時のみ、前記ガイドレールとラックスライドを吸着または反発する磁力を発揮する構造としてもよい。
【0014】
また、前記ガイドレールに設置された前記永久磁石または前記強磁性体は、前記ラックスライドとは接触しないようにガイドレールに埋設されている構造としてもよい。
【0015】
また、前記永久磁石の一方の極に接した状態で前記ガイドレールに取り付けられた第一の強磁性部材と、前記永久磁石の他方の極に対して前記ラックスライドを挟んだ反対側に端部をもつように前記ディスクトレイに取り付けられた第二の強磁性部材とを設け、前記ディスクトレイが前記筐体内に搬入されたときのみ、前記第一の強磁性部材と前記第二の強磁性部材が接触あるいは近接して磁気回路を形成する構造としてもよい。
【0016】
また、前記ディスクトレイが前記筐体内に搬入されたときに前記永久磁石と前記強磁性体、または前記永久磁石同士で磁気回路が形成され、その吸引または反発する磁力が大きくなる構造としてもよい。
【0017】
また、前記永久磁石と強磁性体、または永久磁石同士は、前記ディスクトレイの面であって、装着された光ディスクと対向する領域の面が光ディスクから離れる方向に前記ラックスライドを前記ガイドレールに押圧する、所定位置に設置された構造としてもよい。
【0018】
また、前記ディスクトレイが前記筐体内部から搬出される方向を前方とすると、前記スピンドルモータの回転軸方向から見たとき、前記強磁性体および前記永久磁石が前記スピンドルモータの中心より後方に設置された構造とするのが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ディスクトレイが筐体内部に搬入されているときに、磁力による吸引力または反発力を作用させて、ラックスライドをガイドレールに押圧してガタ寄せする構造とした。これにより、ディスクトレイ搬入・搬出性能(使用感)の劣化がなく、ラックスライドの接触振動および騒音を抑制することができる。また、磁力による吸引力が発生する際に磁気回路が構成されることにより、漏れ磁束を低減して永久磁石の磁力を有効に作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明実施例1の光ディスク装置の構成を示す分解斜視図。
【図2】同じく搬送機構の構成を示す斜視図。
【図3】同じく搬送機構の断面を表す模式図。
【図4】本発明実施例2のディスクトレイおよび搬送機構を示す下方斜視図。
【図5】同じくディスクトレイおよび搬送機構の断面を表す模式図。
【図6】本発明実施例3のトップカバー取外し時の光ディスク装置の上面図。
【図7】同じくディスクトレイとユニットメカおよび光ディスクが装着された際の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面と共に各実施例について説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1を図1から図3を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態である光ディスク装置100の構成を示す分解斜視図である。図2は、ディスクトレイ7の搬送機構20を示す斜視図である。図2(a)はディスクトレイ7が筐体16の内部に搬入された状態、図2(b)はディスクトレイ7が筐体16の外部に搬出された状態のラックスライド1aおよびガイドレール3aの位置を表している。図3は図2(a)に示す面Pにおけるディスクトレイ7の搬送機構20aの断面を表す模式図である。ここで、ディスクトレイ7が筐体16の内部から外部へ搬出される方向を前方、反対方向を後方とする。
【0023】
薄板金属板をプレス成形したボトムカバー14とトップカバー15は、結合して筐体16を形成する。ディスクトレイ7は、ボトムカバー14の内側に取り付けられているガイドレール3に、ラックスライド1を介して支持されており、ラックスライド1及びディスクトレイ7はガイドレール3のレール方向に摺動自在となっている。ディスクトレイ7には、光ディスクを装着して回転駆動するスピンドルモータ10と、光ディスク記録面の情報を再生または、記録面へ情報を記録するピックアップ9を搭載したユニットメカ8が図示しない3個のインシュレータを介して取り付けられている。ディスクトレイ7前方にはディスクトレイ7が筐体16内部に搬入されているときに筐体16前方の蓋となるベゼル12が取り付けられており、その前面にスイッチ11が取り付けられている。
【0024】
また、ディスクトレイ7にはディスクトレイ押出機構13が取り付けられている。ディスクトレイ押出機構13は前方に押し込むことが可能で、押し込まれた際はディスクトレイ押出機構13内部の図示しない弾性体が自然長より収縮する構造になっている。光ディスクに記録された情報の再生および情報の記録は、ディスクトレイ7が筐体16内部の所定の搬入位置に搬入されているときに行われ、その間は図示しないロック機構によってディスクトレイ7が筐体16外部に搬出されないようにロックされている。その際、ディスクトレイ押出機構13はボトムカバー14によって押し込まれ、ディスクトレイ押出機構13内部の弾性体が収縮した状態のまま固定されている。
【0025】
光ディスクをスピンドルモータ10から脱着するためにディスクトレイ7を筐体16の外部に搬出する際には、スイッチ11が押された際、もしくは図示しない外部接続機器からイジェクト命令が出された際の信号を、図示しないCPU(Central processing Unit)が検知し、ロック機構にロック解除の命令を行うことによりロックが解除される。するとディスクトレイ押出機構13内部の弾性体が収縮した状態から自然長に戻る力で、ディスクトレイ7が筐体16の外部まで搬出される。
【0026】
逆にディスクトレイ7を筐体16の外部から筐体16の内部に搬入する際は、ディスクトレイ7を筐体16内部の光ディスク記録再生位置である搬入位置まで手動で搬入すると、図示しないラッチ機構によりロック機構が作動し、ディスクトレイ7の移動がロックされる構造になっている。
【0027】
ラックスライド1は滑らかな摺動のためにガイドレール3およびディスクトレイ7に対してある程度の隙間(遊び)が設けられている。しかし、光ディスク記録・再生時には光ディスク自体のアンバランスによる回転一次の振れ回り振動が発生する。そのため、ラックスライド1は摺動方向に垂直な方向に適当な力でガタ寄せされていないと、周りの部品との接触振動、いわゆるガタ振動が発生し、騒音性能が著しく劣化してしまう。特に近年の光ディスク高速回転化の要求により、ディスクアンバランスによる振れ回り振動が増加傾向にあり、ラックスライド1のガタ振動を抑制するためのガタ寄せの押圧力はある程度大きくなければならない。
【0028】
しかし、従来のような弾性部材での押圧手段で強い押圧を行えば、ラックスライド1の摺動方向の摩擦力が増加し、ディスクトレイ7の搬送が滑らかに行われない問題が生じる。また、過大な押圧によりディスクトレイ7が変形すると、内部空気の流路の変化により予期しない騒音性能の劣化が生じる場合もある。
【0029】
本実施例における光ディスク装置100には、この問題を解決するために、図2に詳細を示すようなガタ寄せ機構を搭載した。すなわち、非磁性体であるラックスライド1(1a)の一部に、磁気手段としての強磁性体2(2a)を取り付け、ガイドレール3(3a)には、磁気手段としての永久磁石4(4a)を埋設し、ディスクトレイ7が筐体16内部に搬入されたときには、図2(a)に示すように強磁性体2と永久磁石4が対向し、ディスクトレイ7の搬出のためにラックスライド1が摺動する際には、図2(b)のように強磁性体2と永久磁石4は対向しない配置となる構造とした。
【0030】
このため、ディスクトレイ7が筐体16内部に搬入されたときのみ、強磁性体2と永久磁石4が対向して磁力による強い吸引力が発生し、この吸引力によってラックスライド1がガイドレール3側に引寄せられて押圧し、下方にガタ寄せされる。また、ラックスライド1の摺動の際には、強磁性体2と永久磁石4が対向しない状態となるので、磁力による吸引力は非常に小さくなり、ディスクトレイ7の搬送が摩擦等に妨げられることなく滑らかに動作ができる。このために、ディスクトレイ7の搬入・搬出時の移動性能(使用感)を損なうことなく、また部品の寿命低下・破損がなく、ラックスライド1のガタ振動を抑制するのに十分な押圧力を得ることができる。
【0031】
なお、図示されてないが、図1におけるラックスライド1bおよびガイドレール3bにも図2と同様の構成で強磁性部材2bおよび永久磁石4bが取り付けられている。ただし、片側の搬送機構のみに強磁性部材および永久磁石を取り付ける構造としてもよい。また、強磁性部材および永久磁石を片側の搬送機構につき複数取り付ける構造としてもよい。
【0032】
また、従来のように弾性体を用いた押圧を行う場合、ディスクトレイ7の搬出性能の劣化をなくすためには、ディスクトレイ押出機構13がディスクトレイ7搬出時にディスクトレイ7を押す力が押圧部の最大静止摩擦力より大きく、かつ各摺動部品が摺動する際の動摩擦力に対して十分大きい弾性力が必要であった。しかし、本実施例のガタ寄せ方法を用いると、各摺動部品が摺動する際は押圧が行われないため、動摩擦力は考慮せず最大静止摩擦力だけを考慮するだけで、ディスクトレイ押出機構13の押出力を決定することができ、設計が容易となる。
【0033】
また、図3のように永久磁石4は、ガイドレール3の摺動面には露出しないような位置に埋設されている。このために、永久磁石4を搭載しない従来の構造と比べても摺動面の変化が無いため、摩擦係数の増加や表面の凹凸の発生がなく、ラックスライド1が摺動する際の使用感や耐久性が悪化することもない。
【0034】
ここで、ラックスライド1はガイドレール3の下方向に押圧されてガタ寄せされているが、横方向や上方向に押圧されるような構造としてもよい。また、ラックスライド1に備えた強磁性体2の代わりに永久磁石4を、ガイドレール3に備えた永久磁石4の代わりに強磁性体2をそれぞれ配置した構造としても良く、この場合も同様の効果が得られる。
【0035】
さらに、ラックスライド1またはガイドレール3に備えた強磁性体2の代わりに永久磁石を用い、ラックスライド1とガイドレール3の両方に永久磁石を備える構造としても良い。この場合、ディスクトレイ7が筐体16内に搬入状態のときに二つの永久磁石が対向する配置になり、そのときに異極が対向するように配置した場合は吸引力が働き、本実施例に示す効果を得る。また、同極が対向するように配置してもよく、その場合は二つの永久磁石の間に反発力が働き、ラックスライド1は吸引力が働いた場合とは逆の方向、すなわちガイドレール3の上方向に押圧されてガタ寄せされる。
【実施例2】
【0036】
本発明の実施例2を図4と図5を用いて説明する。図4はディスクトレイ7および搬送機構20を示す下方斜視図である。図4(a)はディスクトレイ7が筐体16の内部に搬入状態のとき、図4(b)はディスクトレイ7が筐体16の外部に搬出されたときの各部品の位置を表している。図5は図4に示す面Q、面Rにおけるディスクトレイ7および搬送機構20aの断面を示した図であり、面Qにおける断面を図5(a)、面Rにおける断面を図5(b)に示す。
【0037】
なお、搬送機構20bにも図5と同様の構成で強磁性体2b、永久磁石4b、第一の強磁性部材5b(後述)、第二の強磁性部材6b(後述)が取り付けられている。ただし、強磁性体2、永久磁石4、第一の強磁性部材5、第二の強磁性部材6をどちらか片側のみに取り付ける構造としてもよい。また、強磁性体2、永久磁石4、第一の強磁性部材5、第二の強磁性部材6を片側の搬送機構につき複数取り付ける構造としてもよい。
【0038】
実施例2における光ディスク装置100も、実施例1と同様のガタ寄せ構造を備えている。実施例2の特徴は、図5に断面を示すように、ガイドレール3aに埋設された永久磁石4aのN極に接するように第一の強磁性部材5a(磁気手段)を備え、図4(a)および図5(a)に示すように、ディスクトレイ7には第二の強磁性部材6a(磁気手段)を備えることであり、その表面の一部はディスクトレイ7が筐体16内部に搬入されたときに、ラックスライド1aに取り付けられた強磁性体2aに対向する構造となっている。このとき、強磁性体2aは、第二の強磁性部材6aと永久磁石4aのS極に挟みこまれる形となる。第二の強磁性部材6aの一端はディスクトレイ7の下部に突起しており、その表面の一部はディスクトレイ7が筐体16内部に搬入されたときに、第一の強磁性部材5aと接触あるいは近接する構造となっている。
【0039】
この構造により、ディスクトレイ7が筐体16内部に搬入されたときに、第一の強磁性部材5aと第二の強磁性部材6aが磁気回路の役割を果たす。このとき、第一の強磁性部材5aおよび第二の強磁性部材6aが磁化することにより、強磁性体2aは永久磁石4aのN極と第二の強磁性部材6aのS極に挟まれる形となる。よって、永久磁石4aのN極から出た磁力線は強磁性体2aを貫いて第二の強磁性部材6aのS極へ向かう。
【0040】
このように、第一の強磁性部材5aおよび第二の強磁性部材6aがない場合に比べて強磁性体2aを貫く磁力線の数が多く磁束漏洩も少ないため、永久磁石4aの磁力を有効に使用することができ、小さく薄い永久磁石を使用した場合でも強い吸引力を得ることができる。ここで、ラックスライド1は下方向に吸着されているが、横方向や上方向に吸着されるような構造としてもよい。
【0041】
また図4(b)および図5(b)に示すように、ディスクトレイ7が筐体16外部に搬出される際は、第一の強磁性部材5aと第二の強磁性部材6aがディスクトレイ7搬出の方向に移動して接触が外れるため、磁気回路が速やかに絶たれる。そのためディスクトレイ7搬送中は著しく吸引力が低下し、ガイドレール3aの摺動の妨げとはならない。よってガイドレール3a摺動時の負荷抵抗の増加を懸念することなく、ガタ振動抑制に十分効果のあるガタ寄せの押圧力を得ることができる。なお、永久磁石4aはN極とS極が逆になるように設置されていてもよく、その場合も磁力線の向きが逆になるだけで効果は変わらない。
【0042】
また、ラックスライド1に備えた強磁性体2の代わりに永久磁石4を、ガイドレール3に備えた永久磁石4の代わりに強磁性体2をそれぞれ配置した構造としても良く、この場合も同様の効果が得られる。さらに、ラックスライド1またはガイドレール3に備えた強磁性体2の代わりに永久磁石を用い、ラックスライド1とガイドレール3の両方に永久磁石をそれぞれ備える構造としても良い。この場合、ディスクトレイ7が筐体16内に搬入されたときに、二つの永久磁石が対向する配置になり、そのときに異極が対向するように配置した場合は吸引力が働き、本実施例に示す効果を得る。また、同極が対向するように配置してもよく、その場合は二つの永久磁石の間に反発力が働き、ラックスライド1は吸引力が働いた場合とは逆の方向に押圧されガタ寄せされる。
【実施例3】
【0043】
本発明の実施例3を図6および図7を用いて説明する。図6は、光ディスク装置100のトップカバー15を取り外したときの上面図である。図7は、ディスクトレイ7とユニットメカ8、および光ディスクが装着された際の光ディスク外形21を表す模式図である。図7(a)は上面図、図7(b)は図7(a)のB方向から見た側面図である。
【0044】
図6の直線(破線)Lは、スピンドルモータ10の中心を通り、ディスクトレイ7が筐体16内部から搬出される方向に対して垂直な直線である。図6の斜線部Aは、ディスクトレイ7表面のうち、光ディスク装着時に光ディスクと直接対向する領域で、かつスピンドルモータ10の中心より後方の領域である面を示している。図6および図7において、ディスクトレイ7が筐体16の内部から外部へ搬出される方向を前方、反対方向を後方とする。図7(b)において、スピンドルモータ10の回転軸に平行で、ディスクトレイ7に光ディスクが装着された際にディスクトレイ7から光ディスクに向かう方向を上方、反対方向を下方とする。
【0045】
流体音を低減させる、あるいは騒音性能の劣化を防ぐには光ディスク回転時の筐体16内部の空気の流路を滑らかに確保することが重要である。光ディスクとディスクトレイ7の隙間が狭すぎると、空気の流路が十分に確保されずに乱流が生まれ、その乱流から発生した音が筐体16の隙間から外部に漏れることにより騒音が増加する。この問題は、例えばディスクトレイ7が過大な外力により光ディスク側に盛り上がるような変形をした場合や、光ディスク側にガタ寄せされた場合など、微小な隙間の変化によっても顕在化する。筐体16前方においてはベゼル12と筐体16の間にゴム等で隙間を埋める対策がなされているため、特に問題となるのはボトムカバー14とトップカバー15の接合部の隙間や、外部機器との接続のためのコネクタの穴が存在する筐体16後方の面からの空気漏れや音漏れである。従って、斜線部Aに示す面と光ディスクの隙間が縮小すると、光ディスク装置100の騒音性能が大きく劣化してしまう。
【0046】
この問題の解決のため本実施例では、図6に示す光ディスク装置100には以下の位置に実施例1または実施例2に示すガタ寄せ機構を取り付けた。すなわち、ディスクトレイ7表面のうち、光ディスク装着時に光ディスクと直接対向する領域で、スピンドルモータ10の中心より後方の領域で、ラックスライド1が下方(図7(b)に矢印で示す)に吸着または反発され、それによりラックスライド1に支持されているディスクトレイ7の上記領域が、光ディスクから離れる方向(図7(b)に矢印で示す)にガタ寄せされる位置に、実施例1および実施例2に示すガタ寄せ機構を取り付けた。この構造により、斜線部Aに示す面と光ディスクの隙間が小さくなるのを防止することができ、筐体16の後方の隙間から漏れる騒音の増加を抑制することができる。
【0047】
なお、ユニットメカ8がディスクトレイ7の後方に設置される場合は、ディスクトレイ7表面のうち、光ディスク装着時に光ディスクと直接対向する領域の前記斜線部Aが前方となるので、前記ガタ寄せ機構も前方に取り付けられる。
【符号の説明】
【0048】
1…ラックスライド、2…強磁性体(磁気手段)、3…ガイドレール、4…永久磁石(磁気手段)、5…第一の強磁性部材(磁気手段)、6…第二の強磁性部材(磁気手段)、7…ディスクトレイ、8…ユニットメカ、9…ピックアップ、10…スピンドルモータ、11…スイッチ、12…ベゼル、13…ディスクトレイ押出機構、14…ボトムカバー、15…トップカバー、16…筐体、20…搬送機構、21…光ディスク外形、100…光ディスク装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップカバーとボトムカバーによって形成された筐体と、
光ディスクを装着して回転駆動させるスピンドルモータおよび光ディスクの記録面の情報を再生または記録面に新たな情報を記録するピックアップを搭載したディスクトレイと、
前記ディスクトレイを前記筐体外部へ搬出あるいは前記筐体内部へ搬入する搬送機構を備えた光ディスク装置において、
前記搬送機構は、前記筐体に取り付けられたガイドレールと、前記ディスクトレイを移動自在に支持し前記ガイドレールに案内されて移動するラックスライドとからなり、前記ディスクトレイの前記筐体内への搬入時に、前記ラックスライドを前記ガイドレールに押圧する永久磁石と強磁性体、または永久磁石同士からなる磁気手段を設けたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記ラックスライドの一部に少なくとも1つの永久磁石を備え、前記ガイドレールの一部に前記永久磁石と対をなす永久磁石または強磁性体を備え、
前記永久磁石と前記強磁性体、または前記永久磁石同士は、前記ディスクトレイの前記筐体内への搬入時に対向する位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記ラックスライドの一部に少なくとも1つの強磁性体を備え、前記ガイドレールの一部に前記強磁性体と対をなす永久磁石を備え、
前記強磁性体と前記永久磁石は、前記ディスクトレイの前記筐体内への搬入時に対向する位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記永久磁石と前記強磁性体、または前記永久磁石同士は、前記ディスクトレイの前記筐体内への搬入時のみ、前記ガイドレールとラックスライドを吸着または反発する磁力を発揮することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記ガイドレールに設置された前記永久磁石または前記強磁性体は、前記ラックスライドとは接触しないようにガイドレールに埋設されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記永久磁石の一方の極に接した状態で前記ガイドレールに取り付けられた第一の強磁性部材と、前記永久磁石の他方の極に対して前記ラックスライドを挟んだ反対側に端部をもつように前記ディスクトレイに取り付けられた第二の強磁性部材とを設け、
前記ディスクトレイが前記筐体内に搬入されたときのみ、前記第一の強磁性部材と前記第二の強磁性部材が接触あるいは近接して磁気回路を形成することを特徴とする請求項5に記載の光ディスク装置。
【請求項7】
前記ディスクトレイが前記筐体内に搬入されたときに前記永久磁石と前記強磁性体、または前記永久磁石同士で磁気回路が形成され、その吸引または反発する磁力が大きくなることを特徴とする請求項5に記載の光ディスク装置。
【請求項8】
前記永久磁石と強磁性体、または永久磁石同士は、前記ディスクトレイの面であって、装着された光ディスクと対向する領域の面が光ディスクから離れる方向に前記ラックスライドを押圧する所定位置に設置されたことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項9】
前記ディスクトレイが前記筐体内部から搬出される方向を前方とすると、前記スピンドルモータの回転軸方向から見たとき、前記強磁性体および前記永久磁石が前記スピンドルモータの中心より後方に設置されたことを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−262704(P2010−262704A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113528(P2009−113528)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】