説明

光ディスク装置

【課題】光ディスク装置において、省電力化を図ると同時にデータ記録品質を確保する。
【解決手段】光ディスク装置のサーボプロセッサ30は、低域イコライザ30b、高域イコライザ30c、リミッタ30d、加算器30eを備える。リミッタ30dのリミット電圧値は、システムコントローラ32からの制御指令により設定され、データ記録時にはデータ再生時よりもリミット電圧値が大きくなるように設定される。加算器30eの出力はトラッキング駆動信号あるいはフォーカス駆動信号としてトラッキングアクチュエータあるいはフォーカスアクチュエータに供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置に関し、特にトラッキングエラー信号に基づくトラッキングサーボ技術及びフォーカスエラー信号に基づくフォーカスサーボ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば光スポットを目標トラックに追従させるためのトラッキングサーボにおいて、トラッキングエラー信号を低域補償手段と高域補償手段に供給し、それぞれトラッキングエラー信号の低域成分と高域成分を補正し、これらの信号を加算して駆動手段へ供給する構成が知られている。
【0003】
下記の特許文献1には、トラッキングエラー信号を高域成分の周波数特性の補正を行う高域イコライザ回路と低域成分の周波数特性の補正を行う低域イコライザ回路のそれぞれに入力し、低域補正がなされたトラッキングエラー信号を高域補正がなされたトラッキングエラー信号に重畳してトラッキングアクチュエータを駆動することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、トラッキングエラー信号が入力されるサーボフィルタを高域補償手段と低域補償手段に分離し、高域補償手段と低域補償手段の出力を加算することによりトラッキング駆動信号を生成するとともに、トラッキング駆動信号の平均値と直流電源により与えられるオフセット電圧から生成されるリミット電圧によりトラッキング駆動信号を半波整流してトラッキングアクチュエータを駆動することが開示されている。
【0005】
図7に、特許文献2に開示された光ディスク装置の構成を示す。光ディスク100は、回転手段102により回転駆動される。光ピックアップ103からの光ビームは、対物レンズにより集光されて光ディスク100上に光スポットを形成する。光ピックアップ103は、トラッキングアクチュエータ114により光ディスクの半径方向に駆動される。光情報検出手段104は、光ディスク100により反射された光ピームの情報を検出する。オフトラック信号生成手段111は、光情報検出手段104の出力をエンベロープ検波して二値化する。トラッキング誤差検出手段105は、光スポットと光ディスクのトラック中心からのずれ量に応じた信号であるトラッキングエラー信号を検出する。トラッククロス信号生成手段112は、トラッキングエラー信号を二値化する。方向検出手段108は、オフトラック信号生成手段111の出力と、トラッククロス信号生成手段112の出力から光スポットとトラックの相対移動方向を検出する。
【0006】
また、高域補償手段106は、トラッキングエラー信号の高域成分を強調する。低域補償手段107は、トラッキングエラー信号の低域成分を強調する。整流器116は、平均値処理手段115と半波整流器109とDC電源110を備える整流器である。駆動手段113は、半波整流器116の出力信号から駆動力を生成してトラッキングアクチュエータ114を駆動する。
【0007】
高域補償手段106の出力と低域補償手段107の出力を加算器130により加算したトラッキング駆動信号は、半波整流器109に供給されるとともに、平均値処理手段115に供給される。平均値処理手段115は、トラッキング駆動信号の平均値を求め、高域成分がキャンセルされた低域成分を出力する。出力される平均値とDC電源110により与えられるオフセット電圧は加算器131により加算されてリミット電圧を生成し、半波整流器109に供給される。半波整流器109は、方向検出手段108の出力とトラッキング駆動信号と加算器131で生成されたリミット電圧を入力とし、方向検出手段108の出力に応じて半波整流する極性を切換え、トラッキング駆動信号を加算器131の出力と比較してリミット処理を行う。これにより、トラッキング駆動信号の平均値を中心に半波整流を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−8338号公報
【特許文献2】特開2000−113473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
トラッキング駆動信号のリミット処理は、サーボ帯域を下げずにトラッキングアクチュエータの不要な消費電流を低減する方法として有効である。
【0010】
しかしながら、リミット電圧を超えるような光ディスクの欠陥、例えば局所的な面振れや偏心等が存在する場合、サーボが追従できないのでサーボ残差が大きくなり、データ再生時には再生信号品質を低下させることになるので、光ディスクの回転数を下げて再生をリトライすることが必要となる。
【0011】
一方、データ記録時においては、上記のような光ディスクの欠陥があると、リトライすることができず、直ちに書き込みエラーとなってしまう。特に、CD−RやDVD−R等の追記型光ディスクにおいては、ライトのリトライが不可能であるためその時点で直ちに書き込みエラーとなってしまう。このことは、フォーカス駆動信号のリミット処理を行う場合についても同様である。
【0012】
従って、トラッキングアクチュエータあるいはフォーカスアクチュエータの不要な消費電流を低減して省電力化を図ると同時に、データ記録再生時、特にデータ記録時においても記録品質を確保できる光ディスク装置が望まれている。
【0013】
本発明の目的は、トラッキングアクチュエータあるいはフォーカスアクチュエータの不要な消費電流を低減して省電力化を図ると同時に、データの記録時においても記録品質を確保できる光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、光ディスク装置であって、光ディスクに光ビームを集光して光スポットを形成する光ピックアップと、前記光ビームを前記光ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、前記光スポットと目標トラックの半径方向の相対的位置ずれをトラッキングエラー信号として検出する検出手段と、前記トラッキングエラー信号の低域成分を強調補正する低域イコライザと、前記トラッキングエラー信号の高域成分を強調補正する高域イコライザと、前記高域イコライザの出力をリミット値でリミット処理するリミッタと、前記低域イコライザの出力と前記リミッタの出力を加算して前記駆動手段に出力する加算器とを備え、データ記録時における前記リミット値はデータ再生時よりも大きく設定されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、光ディスク装置であって、光ディスクに光ビームを集光して光スポットを形成する光ピックアップと、前記光ビームを前記光ディスクの面方向に駆動する駆動手段と、前記光スポットのフォーカスずれをフォーカスエラー信号として検出する検出手段と、前記フォーカスエラー信号の低域成分を強調補正する低域イコライザと、前記フォーカスエラー信号の高域成分を強調補正する高域イコライザと、前記高域イコライザの出力をリミット値でリミット処理するリミッタと、前記低域イコライザの出力と前記リミッタの出力を加算して前記駆動手段に出力する加算器とを備え、データ記録時における前記リミット値はデータ再生時よりも大きく設定されることを特徴とする。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、さらに、前記リミット値は前記光ディスクの回転速度が増大するほど大きく設定される。
【0017】
また、本発明は、光ディスク装置であって、光ディスクに光ビームを集光して光スポットを形成する光ピックアップと、前記光ビームを前記光ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、前記光スポットと目標トラックの半径方向の相対的位置ずれをトラッキングエラー信号として検出する検出手段と、前記トラッキングエラー信号の低域成分を強調補正する低域イコライザと、前記トラッキングエラー信号の高域成分を強調補正する高域イコライザと、前記高域イコライザの出力をリミット値でリミット処理するリミッタと、前記高域イコライザの出力と前記リミッタの出力を選択的に切換えて出力するスイッチと、前記低域イコライザの出力と前記スイッチの出力を加算して前記駆動手段に出力する加算器とを備え、前記スイッチは、データ再生時には前記リミッタの出力を選択的に出力し、データ記録時には前記高域イコライザの出力を選択的に出力することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、光ディスク装置であって、光ディスクに光ビームを集光して光スポットを形成する光ピックアップと、前記光ビームを前記光ディスクの面方向に駆動する駆動手段と、前記光スポットのフォーカスずれをフォーカスエラー信号として検出する検出手段と、前記フォーカスエラー信号の低域成分を強調補正する低域イコライザと、前記フォーカスエラー信号の高域成分を強調補正する高域イコライザと、前記高域イコライザの出力をリミット値でリミット処理するリミッタと、前記高域イコライザの出力と前記リミッタの出力を選択的に切換えて出力するスイッチと、前記低域イコライザの出力と前記スイッチの出力を加算して前記駆動手段に出力する加算器とを備え、前記スイッチは、データ再生時には前記リミッタの出力を選択的に出力し、データ記録時には前記高域イコライザの出力を選択的に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、トラッキングアクチュエータあるいはフォーカスアクチュエータの不要な消費電流を低減して省電力化を図ると同時に、データの記録時においても記録品質を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】光ディスク装置の構成ブロック図である。
【図2】サーボプロセッサの構成ブロック図(トラッキングサーボ系)である。
【図3】リミット値の設定説明図である。
【図4】サーボプロセッサの他の構成ブロック図(トラッキングサーボ系)である。
【図5】サーボプロセッサの構成ブロック図(フォーカスサーボ系)である。
【図6】サーボプロセッサの他の構成ブロック図(トラッキングサーボ系)である。
【図7】従来技術の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1に、本実施形態における光ディスク装置の全体構成を示す。CD−R/RWやDVD−R/RW、DVD−RAM、Blu−ray等のデータ記録及び再生可能な光ディスク10はスピンドルモータ(SPM)12により駆動される。スピンドルモータSPM12は、ドライバ14で駆動され、ドライバ14は所望の回転速度となるようにサーボ制御される。
【0023】
光ピックアップ16は、レーザ光を光ディスク10に照射するためのレーザダイオード(LD)や光ディスク10からの反射光を受光して電気信号に変換するフォトディテクタ(PD)を含み、光ディスク10に対向配置される。光ピックアップ16はステッピングモータで構成されるスレッドモータ18により光ディスク10の半径方向に駆動され、スレッドモータ18はドライバ20で駆動される。また、光ピックアップ16には光ビームを光ディスク10の半径方向に駆動するトラッキングアクチュエータが設けられ、このトラッキングアクチュエータもドライバにより駆動される。図では、トラッキングアクチュエータを駆動するドライバも簡略化のためドライバ20として示されているが、ドライバ20とは別個のドライバとして存在していてもよい。ドライバ20は、サーボプロセッサ30によりサーボ制御される。また、光ピックアップ16のLDはドライバ22により駆動され、ドライバ22は、オートパワーコントロール回路(APC)24により、駆動電流が所望の値となるように制御される。APC24及びドライバ22は、システムコントローラ32からの指令によりLDの発光量を制御する。図1ではドライバ22は光ピックアップ16と別個に設けられているが、ドライバ22を光ピックアップ16に搭載してもよい。
【0024】
光ディスク10に記録されたデータを再生する際には、光ピックアップ16のLDから再生パワーのレーザ光が照射され、その反射光がPDで電気信号に変換されて出力される。光ピックアップ16からの再生信号はRF回路26に供給される。RF回路26は、再生信号からフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成し、サーボプロセッサ30に供給する。サーボプロセッサ30は、これらのエラー信号に基づいて光ピックアップ16をサーボ制御し、光ピックアップ16をオンフォーカス状態及びオントラック状態に維持する。サーボプロセッサ30によるトラッキングサーボ制御及びフォーカスサーボ制御については、さらに後述する。また、RF回路26は、再生信号に含まれるアドレス信号をアドレスデコード回路28に供給する。アドレスデコード回路28はアドレス信号から光ディスク10のアドレスデータを復調し、サーボプロセッサ30やシステムコントローラ32に供給する。また、RF回路26は、再生RF信号を二値化回路34に供給する。二値化回路34は、再生信号を二値化し、得られた信号をエンコード/デコード回路36に供給する。エンコード/デコード回路36では、二値化信号を復調及びエラー訂正して再生データを得、当該再生データをインタフェースI/F40を介してパーソナルコンピュータなどのホスト装置に出力する。なお、再生データをホスト装置に出力する際には、エンコード/デコード回路36はバッファメモリ38に再生データを一旦蓄積した後に出力する。
【0025】
光ディスク10にデータを記録する際には、ホスト装置からの記録すべきデータはインタフェースI/F40を介してエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、記録すべきデータをバッファメモリ38に格納し、当該記録すべきデータをエンコードして変調データとしてライトストラテジ回路42に供給する。ライトストラテジ回路42は、変調データを所定の記録ストラテジに従ってマルチパルス(パルストレーン)に変換し、記録データとしてドライバ22に供給する。記録ストラテジは記録品質に影響することから、データ記録に先立って最適化が行われる。記録データによりパワー変調されたレーザ光は光ピックアップ16のLDから照射されて光ディスク10にデータが記録される。データ記録時の記録パワーは、OPC(Optical Power Control)により光ディスク10の内周側に形成されたPCA(Power Calibration Area:パワー較正領域)を用いてテストデータを試し書きすることで最適化される。データを記録した後、光ピックアップ16は再生パワーのレーザ光を照射して当該記録データを再生し、RF回路26に供給する。RF回路26は再生信号を二値化回路34に供給し、二値化されたデータはエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、変調データをデコードし、バッファメモリ38に格納されている記録データと照合する。ベリファイの結果はシステムコントローラ32に供給される。システムコントローラ32はベリファイの結果に応じて引き続きデータを記録するか、あるいは交替処理を実行するかを決定する。システムコントローラ32は、システム全体の動作を制御し、サーボプロセッサ30を介してスレッドモータ18を駆動し、光ピックアップ16の位置を制御する。特に、サーボプロセッサ30は、データ再生時とデータ記録時でサーボプロセッサ30における動作を変化させるべく、制御指令をサーボプロセッサ30に供給する。より具体的には、システムコントローラ32は、サーボプロセッサ30におけるトラッキング駆動信号のリミット値をデータ再生時とデータ記録時とで変化させるように制御する。
【0026】
まず、トラッキングサーボ制御について説明する。
【0027】
図2に、サーボプロセッサ30におけるトラッキングサーボ系の構成ブロック図を示す。サーボプロセッサ30は、トラッキングエラー信号検出部30a、低域イコライザ30b、高域イコライザ30c、リミッタ30d及び加算器30eを備える。
【0028】
トラッキングエラー信号検出部30aは、光スポットと目標トラックのトラック中心との相対的位置ずれを公知の方法、例えば3ビーム法、プッシュプル法等で検出する。トラッキングエラー信号検出部30aは、検出したトラッキングエラー信号を低域イコライザ30b及び高域イコライザ30cに出力する。
【0029】
低域イコライザ30b及び高域イコライザ30cは、それぞれトラッキングエラー信号の低域成分及び高域成分を強調補正する。低域イコライザ30bは、強調補正した低域信号を加算器30eに出力する。一方、高域イコライザ30cは、強調補正した高域信号をリミッタ30dに出力する。
【0030】
リミッタ30dは、ダイナミックレンジを制限してクリップ処理をするものであり、設定されたリミット電圧値を用いて強調補正された高域成分をクリップする。ここで、リミット電圧値は固定値ではなく、システムコントローラ32からの制御によりデータ再生時とデータ記録時で変化する。すなわち、リミッタ30dにおけるリミット電圧値は、データ再生時に比べてデータ記録時の方がその値(絶対値)が大きく設定される。例えば、正のリミット電圧値をLとし、データ再生時のリミット電圧値をL(R)、データ記録時のリミット電圧値をL(W)とすると、システムコントローラ32は、L(R)<L(W)となるようにリミット値を可変制御する。
【0031】
データ再生時とデータ記録時とでリミッタ30dのリミット電圧値を変化させる理由は以下の通りである。すなわち、高域イコライザ30cからの高域信号にリミット処理を行うことで、トラッキングアクチュエータの不要な電力消費を低減することができるものの、データ記録時においてトラッキングサーボが追従できすに記録品質が劣化、あるいは記録エラーが生じてしまうおそれがある。そこで、データ再生時には、リミット電圧値L(R)で高域成分にリミット処理を行うとともに、データ記録時にはリミット電圧値をL(R)からL(W)に増大させることで、リミット処理を緩和し、あるいはサーボ帯域を大きくしてトラッキングサーボの追従性能を上げる。これにより、データ記録時における記録品質の劣化あるいは記録エラーを抑制することができる。なお、データ記録時においてリミット電圧値をL(R)からL(W)に増大させることで、アクチュエータにおける消費電量は再生時よりもその分だけ増大することになるが、データ記録時にはデータ再生時に比べてスピンドルモータ12による光ディスク10の加減速が少なく、また、光ピックアップ16自体のシーク動作も少ないので消費電力は少なく、リミット電圧値をL(R)からL(W)に増大させたことに起因する消費電力の増大は殆ど問題とならない。
【0032】
以上のように、リミッタ30dは、データ再生時とデータ記録時で異なるリミット電圧値で高域成分をリミット処理する。リミッタ30dは、リミット処理した高域成分を加算器30eに出力する。
【0033】
加算器30eは、低域イコライザ30bの出力とリミッタ30dの出力を加算し、トラッキング駆動信号としてドライバ20に出力する。ドライバ20は、既述したように、トラッキングアクチュエータを駆動して光スポットを光ディスク10の半径方向に駆動し、目標トラックのトラック中心に追従させる。
【0034】
本実施形態において、データ再生時とデータ記録時でリミッタ30dのリミット電圧値を変化させているが、さらに、光ディスク10の回転速度に応じてリミット電圧値を変化させてもよい。具体的には、光ディスク10の回転速度が増大するほど、リミット電圧値を大きく設定する。その理由は、光ディスク10の回転速度が増大するほど、光ディスク10の面振れや偏心によるトラックずれ量が大きくなるため、トラッキングサーボの帯域を大きくする必要があるからである。
【0035】
図3に、データの記録再生と光ディスク10の回転速度に応じたリミット電圧値の設定方法の一例を示す。図において、光ディスク10の回転速度は低速、高速の2段階に設定している。これは、回転速度をしきい速度と大小比較し、しきい速度以下であれば「低速」、しきい速度を越えれば「高速」としたものである。例えば、4倍速以下は低速、4倍速を越えれば高速とすることができる。図において、データ再生時に着目すると、回転速度が低速の場合のリミット電圧値はL11、高速の場合のリミット電圧値はL12であり、L11<L12の関係にある。また、データ記録時に着目すると、回転速度が低速の場合のリミット電圧値はL21、高速の場合のリミット電圧値はL22であり、L21<L22の関係にある。もちろん、上記のようにL(R)<L(W)の関係にあるから、L11<L21、L12<L22である。L12とL21の大小関係に関しては任意であるが、一例として、L11<L12<L21<L22とすることができる。
【0036】
図3における回転速度の「低速」、「高速」の区別は例示であり、必要に応じて回転速度を3段階あるいはそれ以上に分けることができる。システムコントローラ32は、予め図3に示す2次元マップあるいは2次元テーブルをメモリに記憶しておき、現在のモード(データ記録かデータ再生か)及び現在の回転速度に応じたリミット値をマップあるいはテーブルから読み出してリミッタ30dに供給する。
【0037】
本実施形態において、データ再生時とデータ記録時でリミット電圧値を変化させるが、データ記録時のリミット電圧値L(W)をデータ再生時のリミット電圧値L(R)に比べて著しく大きく設定することも可能であり、この場合にはL(W)の値によっては実質的にリミッタ30dでのリミット処理を実行しないことと等価になる。本実施形態は、このような場合も当然に含まれる。以下、データ記録時のリミット電圧値L(W)をデータ再生時のリミット電圧値L(R)に比べて著しく大きく設定する場合の一つの例として、データ記録時にはリミット処理を実行しない構成について説明する。
【0038】
図4に、この場合のサーボプロセッサ30の構成ブロック図を示す。サーボプロセッサ30は、トラッキングエラー信号検出部30a、低域イコライザ30b、高域イコライザ30c、リミッタ30d、加算器30e及びスイッチ回路30fを備える。
【0039】
トラッキングエラー信号検出部30aは、光スポットと目標トラックのトラック中心との相対的位置ずれを公知の方法、例えば3ビーム法、プッシュプル法等で検出する。トラッキングエラー信号検出部30aは、検出したトラッキングエラー信号を低域イコライザ30b及び高域イコライザ30cに出力する。
【0040】
低域イコライザ30b及び高域イコライザ30cは、それぞれトラッキングエラー信号の低域成分及び高域成分を強調補正する。低域イコライザ30bは、強調補正した低域信号を加算器30eに出力する。一方、高域イコライザ30cは、強調補正した高域信号をリミッタ30dに出力する。リミッタ30dは、所定のリミット値で高域成分をリミット処理してスイッチ回路30fに出力する。また、高域イコライザ30cは、リミッタ30dを経由することなく、つまりリミット処理されない高域成分をスイッチ回路30fに出力する。
【0041】
スイッチ回路30fは、P接点及びQ接点を備えるスイッチ回路であり、システムコントローラ32からの制御指令に応じていずれかの接点に切換える。P接点はリミッタ30dによりリミット処理された高域成分を出力し、Q接点はリミッタ30dを迂回したリミット処理されていない高域成分を出力する。システムコントローラ32は、データ再生時にはスイッチ回路30fの接点をP接点に切換え、データ記録時にはスイッチ回路30fの接点をQ接点に切換える。従って、スイッチ回路30fは、データ再生時にはリミット処理された高域成分を加算器30eに出力し、データ記録時にはリミット処理されていない高域成分を加算器30eに出力する。以上のようにして、データ記録時には低域成分とリミット処理しない高域成分が重畳されてトラッキング駆動信号が生成され、ドライバ20に供給される。図4の構成は、図2における構成において、データ記録時におけるリミット電圧値L(W)を無限大としたことと等価である。
【0042】
図4の構成においても、データ再生時のリミット電圧値を光ディスク10の回転速度に応じて変化させてもよい。すなわち、リミッタ30dのリミット電圧値をシステムコントローラ32からの制御指令値により変化させ、回転速度が増大するほど大きくなるように設定する。これは、図3のマップあるいはテーブルにおいて、データ記録時のリミット電圧値L21,L22をともに無限大に設定することに相当する。
【0043】
次に、フォーカスサーボ制御について説明する。
【0044】
図5に、サーボプロセッサ30におけるフォーカスサーボ系の構成ブロック図を示す。サーボプロセッサ30は、フォーカスエラー信号検出部30p、低域イコライザ30q、高域イコライザ30r、リミッタ30s及び加算器30tを備える。
【0045】
フォーカスエラー信号検出部30pは、光スポットのフォーカスずれを公知の方法で検出する。フォーカスエラー信号検出部30pは、検出したフォーカスエラー信号を低域イコライザ30q及び高域イコライザ30rに出力する。
【0046】
低域イコライザ30q及び高域イコライザ30rは、それぞれフォーカスエラー信号の低域成分及び高域成分を強調補正する。低域イコライザ30qは、強調補正した低域信号を加算器30tに出力する。一方、高域イコライザ30rは、強調補正した高域信号をリミッタ30sに出力する。
【0047】
リミッタ30sは、ダイナミックレンジを制限してクリップ処理をするものであり、設定されたリミット電圧値を用いて強調補正された高域成分をクリップする。リミット電圧値には、正側のリミット電圧値と負側のリミット電圧値がある。クリップ回路の構成は公知である。但し、本実施形態におけるリミット電圧値は固定値ではなく、システムコントローラ32からの制御によりデータ再生時とデータ記録時で変化する。すなわち、リミッタ30sにおけるリミット電圧値は、データ再生時に比べてデータ記録時の方がその値(絶対値)が大きく設定される。例えば、正のリミット電圧値をLとし、データ再生時のリミット電圧値をL(R)、データ記録時のリミット電圧値をL(W)とすると、システムコントローラ32は、L(R)<L(W)となるようにリミット値を可変制御する。リミッタ30sは、リミット処理した高域成分を加算器30tに出力する。
【0048】
加算器30tは、低域イコライザ30qの出力とリミッタ30sの出力を加算し、フォーカス駆動信号としてドライバ20に出力する。ドライバ20は、フォーカスアクチュエータを駆動して光スポットを光ディスク10の面方向に駆動し、フォーカス位置を合焦位置に追従させる。
【0049】
図6に、フォーカスサーボ系の他の構成ブロック図を示す。サーボプロセッサ30は、フォーカスエラー信号検出部30p、低域イコライザ30q、高域イコライザ30r、リミッタ30s、加算器30t及びスイッチ回路30uを備える。
【0050】
フォーカスエラー信号検出部30pは、フォーカスずれを公知の方法で検出する。フォーカスエラー信号検出部30pは、検出したフォーカスエラー信号を低域イコライザ30q及び高域イコライザ30rに出力する。
【0051】
低域イコライザ30q及び高域イコライザ30rは、それぞれフォーカスエラー信号の低域成分及び高域成分を強調補正する。低域イコライザ30qは、強調補正した低域信号を加算器30tに出力する。一方、高域イコライザ30rは、強調補正した高域信号をリミッタ30sに出力する。リミッタ30sは、所定のリミット値で高域成分をリミット処理してスイッチ回路30uに出力する。また、高域イコライザ30rは、リミッタ30sを経由することなく、つまりリミット処理されない高域成分をスイッチ回路30uに出力する。
【0052】
スイッチ回路30uは、P接点及びQ接点を備えるスイッチ回路であり、システムコントローラ32からの制御指令に応じていずれかの接点に切換える。P接点はリミッタ30sによりリミット処理された高域成分を出力し、Q接点はリミッタ30sを迂回したリミット処理されていない高域成分を出力する。システムコントローラ32は、データ再生時にはスイッチ回路30uの接点をP接点に切換え、データ記録時にはスイッチ回路30uの接点をQ接点に切換える。従って、スイッチ回路30uは、データ再生時にはリミット処理された高域成分を加算器30tに出力し、データ記録時にはリミット処理されていない高域成分を加算器30tに出力する。以上のようにして、データ記録時には低域成分とリミット処理しない高域成分が重畳されてフォーカス駆動信号が生成され、ドライバ20に供給される。
【0053】
図6の構成においても、データ再生時のリミット電圧値を光ディスク10の回転速度に応じて変化させてもよい。すなわち、リミッタ30sのリミット電圧値をシステムコントローラ32からの制御指令値により変化させ、回転速度が増大するほど大きくなるように設定する。
【0054】
以上説明したように、本実施形態ではデータ再生時とデータ記録時でリミッタ30d,30sにおけるリミット電圧値を変化させ、データ記録時におけるリミット電圧値をデータ再生時におけるリミット電圧値よりも大きく設定する(データ記録時においてリミット処理しないことも含む)ので、消費電力を低減すると同時にデータ記録品質を確保することができる。
【0055】
なお、本実施形態において、データ記録時には、OPC実行時におけるデータの試し書き時も含まれる。すなわち、OPC実行時においてもリミット電圧値をデータ再生時におけるリミット電圧値よりも大きく設定する。
【0056】
また、光ディスク10が書き換え可能な光ディスクである場合には、書き込みのリトライが可能であるため、第1回目のデータ記録時にはリミット電圧値をデータ再生時と同じとし、リトライ時にリミット電圧値を大きく設定することも可能であろう。
【0057】
また、本実施形態において、データ再生時とデータ記録時でリミット電圧値を変化させるとともに、光ディスク10の回転速度に応じてリミット電圧値を変化させる場合を示したが、より簡易的な処理として、単に光ディスク10の回転速度に応じてリミット電圧値を変化させることも可能であろう。すなわち、データの再生あるいは記録によらず、回転速度が増大するほどリミット電圧値を増大させることも可能である。この場合、システムコントローラ32は、図3のマップあるはテーブルにおいて、データの再生あるいは記録時によらず、データ再生のマップあるいはテーブルのみを用いて回転速度に応じてリミット電圧値を設定すればよい。
【0058】
さらに、上記の実施形態では、トラッキングサーボ系及びフォーカスサーボ系の構成をそれぞれ示したが、サーボプロセッサ30におけるトラッキングサーボ系及びフォーカスサーボ系がともに図2〜図6の構成となっていてもよく、この場合にはトラッキングアクチュエータ及びフォーカスアクチュエータのいずれにおいても不要な電力消費を低減できる。
【符号の説明】
【0059】
10 光ディスク装置、16 光ピックアップ、30 サーボプロセッサ、30a トラッキングエラー信号検出部、30b,30q 低域イコライザ、30c,30r 高域イコライザ、30d,30s リミッタ、30e,30t 加算器、30f,30u スイッチ回路、30p フォーカスエラー信号検出部、32 システムコントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク装置であって、
光ディスクに光ビームを集光して光スポットを形成する光ピックアップと、
前記光ビームを前記光ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、
前記光スポットと目標トラックの半径方向の相対的位置ずれをトラッキングエラー信号として検出する検出手段と、
前記トラッキングエラー信号の低域成分を強調補正する低域イコライザと、
前記トラッキングエラー信号の高域成分を強調補正する高域イコライザと、
前記高域イコライザの出力をリミット値でリミット処理するリミッタと、
前記低域イコライザの出力と前記リミッタの出力を加算して前記駆動手段に出力する加算器と、
を備え、データ記録時における前記リミット値はデータ再生時よりも大きく設定されることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
光ディスク装置であって、
光ディスクに光ビームを集光して光スポットを形成する光ピックアップと、
前記光ビームを前記光ディスクの面方向に駆動する駆動手段と、
前記光スポットのフォーカスずれをフォーカスエラー信号として検出する検出手段と、
前記フォーカスエラー信号の低域成分を強調補正する低域イコライザと、
前記フォーカスエラー信号の高域成分を強調補正する高域イコライザと、
前記高域イコライザの出力をリミット値でリミット処理するリミッタと、
前記低域イコライザの出力と前記リミッタの出力を加算して前記駆動手段に出力する加算器と、
を備え、データ記録時における前記リミット値はデータ再生時よりも大きく設定されることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1、2のいずれかに記載の装置において、さらに、
前記リミット値は前記光ディスクの回転速度が増大するほど大きく設定されることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
光ディスク装置であって、
光ディスクに光ビームを集光して光スポットを形成する光ピックアップと、
前記光ビームを前記光ディスクの半径方向に駆動する駆動手段と、
前記光スポットと目標トラックの半径方向の相対的位置ずれをトラッキングエラー信号として検出する検出手段と、
前記トラッキングエラー信号の低域成分を強調補正する低域イコライザと、
前記トラッキングエラー信号の高域成分を強調補正する高域イコライザと、
前記高域イコライザの出力をリミット値でリミット処理するリミッタと、
前記高域イコライザの出力と前記リミッタの出力を選択的に切換えて出力するスイッチと、
前記低域イコライザの出力と前記スイッチの出力を加算して前記駆動手段に出力する加算器と、
を備え、前記スイッチは、データ再生時には前記リミッタの出力を選択的に出力し、データ記録時には前記高域イコライザの出力を選択的に出力することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
光ディスク装置であって、
光ディスクに光ビームを集光して光スポットを形成する光ピックアップと、
前記光ビームを前記光ディスクの面方向に駆動する駆動手段と、
前記光スポットのフォーカスずれをフォーカスエラー信号として検出する検出手段と、
前記フォーカスエラー信号の低域成分を強調補正する低域イコライザと、
前記フォーカスエラー信号の高域成分を強調補正する高域イコライザと、
前記高域イコライザの出力をリミット値でリミット処理するリミッタと、
前記高域イコライザの出力と前記リミッタの出力を選択的に切換えて出力するスイッチと、
前記低域イコライザの出力と前記スイッチの出力を加算して前記駆動手段に出力する加算器と、
を備え、前記スイッチは、データ再生時には前記リミッタの出力を選択的に出力し、データ記録時には前記高域イコライザの出力を選択的に出力することを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−187146(P2011−187146A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54442(P2010−54442)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】