説明

光データ復調装置、光データ変調装置、及び光データ伝送装置

【課題】回路規模の増大や演算負荷の増大を来たすことなく、近距離から遠距離まで安定した高速の光通信が可能となる光データ変復調装置を提供する。
【解決手段】
受光素子で受光された受信信号を、キャリア周波数の逓倍周波数の局部発振クロックでA/D変換するA/D変換部と、局部発振クロックに同期して、A/D変換された受信信号と直交基準信号との積和演算を実行し、当該積和演算結果に基づいて位相を算出する位相検知部と、位相検知部で算出された位相が所定シンボル数連続するときに、当該位相を基準位相に設定する位相設定部と、位相設定部で設定された基準位相に対応するシンボルの位相の相加平均値を算出し、算出した相加平均値に基づいて前記基準位相とシンボルの位相の相対位相差を補正する位相差補正部と、位相差補正部により補正された相対位相に基づいてデータを復調するデータ復調部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光データ復調装置、光データ変調装置、及び光データ伝送装置に関し、例えば、固定設備と移動設備間のデータ伝送に好適な光データ伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品等の搬送に使用されるスタッカークレーンや天井走行クレーン等の移動設備では、省配線化のため、固定設備との間、或は移動設備間で制御指令等の信号の授受が光を通信媒体とする無線方式のシリアル通信で行なわれている。
【0003】
例えば、固定設備に組み込まれたシステム制御装置に接続された全二重方式の通信線に、複数の移動設備に組み込まれたサーボ制御部が接続され、各サーボ制御部がシステム制御装置からの制御指令を通信線を介して受信してサーボモータを制御し、その制御状態をシステム制御装置に通信線を介して送信するサーボ通信システムにおいて、固定設備と移動設備または移動設備間の通信線に、光を通信媒体とする無線方式のシリアル通信を行なう光データ伝送装置が介装されている。
【0004】
これらの設備では、使用環境の多様化や振動・機構系の経年変化等、機械軸に対する変動が大きいため、発光部及び受光部間である程度の指向角特性が必要とされる。また、移動設備の制御に使用するため、通信の信頼性、特に外乱ノイズに対する十分な耐環境特性も要求される。
【0005】
電波を通信媒体とする無線通信方式では、外乱ノイズ対策等のために、キャリア周波数fcで発振させた信号を振幅、周波数、或は位相で変調する各種の変調方式が採用されている。特に、キャリアの周波数を高い値に設定し、従来からのASK方式や回路構成が複雑なPSK方式等を採用することにより通信の高速化が進んでいる。
【0006】
また、光ファイバを介した光通信方式では、通信経路が光ファイバで定まる為に外乱光と自光干渉について特段の対策が必要とされず、光源にスイッチング特性の優れたレーザダイオードを使用することで高速通信が可能となるが、固定設備と移動設備間の通信では、光ファイバのような通信ケーブルを実装することが困難となる。
【0007】
一方、光による無線通信方式で光源にレーザダイオードを使用する場合には、人体の目の安全を確保する必要があり、安全規格によってレーザ光の強度が制限されるため、通信距離の長距離化に限界があり、また、レンズの非点隔差による通信精度や光学系の複雑化等の課題もある。
【0008】
そのため、移動体の制御を目的とした無線方式の光データ伝送装置では、安価で指向特性が広く、安全規格による発光強度の制限が課されないLEDが光源に用いられ、電波による無線通信方式に比べて使用する発光素子等の特性から高周波での変調が容易でないため、変調方式として主にFSK方式が採用される場合が多い。
【0009】
一般的なFSK方式を採用する場合、数十kbps程度の比較的伝送速度が低い通信では、FMラジオ用の復調ICや周辺部品が安価に市販されているため、安価で容易に通信装置を製作することができる。
【0010】
しかし、それ以上の通信速度では、データ周波数fsに比べて十分に高い周波数のキャリア周波数fcが必要となり、高周波で広帯域な特性が要求されるために、個別部品を用いて複雑な回路を構成する必要があり、さらには、調整作業の増加等、製造コストが上昇するため、実使用上10Mbps程度での使用が限界である。
【0011】
PSK方式の変調装置は、デジタル信号をI成分とQ成分の直交信号成分に変換する直交変換部と、直交信号成分を同相の搬送波及び直交した搬送波とそれぞれ乗算する乗算部と、乗算された結果を加算する加算部等を備えることにより実現できる。また、復調装置は、この逆を行なう直交復調器により実現できる。
【0012】
直交復調器に2乗方式や逆変調方式等の同期検波方式を採用する場合には、ミキサ回路が2つ必要となる等、回路構成が複雑になりその構成部品も多くなる。また、遅延検波方式を採用する復調装置では、シンボル間の位相差で判定する為、位相分割数に対しシンボルレートは半分になる。
【0013】
変調方式としてPSK方式を採用する場合には、位相の分割数を増やすことにより、各位相に多値のシンボルを割り当てることが可能となり、キャリア周波数fcを上げずに伝送速度を向上させることが可能となるが、位相の分割数を増やすに従って、ノイズ耐性が悪化するため位相検出回路の高い分解能が要求されるため、高価な信号処理回路が必要となっていた。そのため、従来、低価格の光伝送装置では、PSK方式を採用するのが困難であった。
【0014】
特許文献1には、遅延検波方式以外の検波方式として準同期検波方式が提案されている。特許文献1には、PSK方式の変調信号に対する復調時の周波数誤差を低減し、またガウス性雑音の影響を低減して、誤り率の低い復調を可能にすることを目的として、アナログの入力信号をサンプリングしてデジタル値に順次変換するA/D変換器と、前記入力信号に対応した周波数で互いに位相が90度異なる2相のローカル信号を発生するローカル信号発生器と、前記A/D変換器から出力されるデジタル値列を、前記2相のローカル信号とそれぞれ乗算し、その乗算結果からベースバンド信号を抽出する直交復調器と、前記直交復調器から出力されたベースバンド信号に基づいて前記入力信号のキャリア周波数と前記ローカル信号の周波数との差による位相誤差を検出する誤差検出手段と、前記誤差検出手段によって検出された位相誤差が小さくなるように前記ローカル信号を制御するローカル信号制御手段と、前記直交復調器から出力されたベースバンド信号から位相情報を検出して、データを復調するデータ復調器とを備えたデジタル変調信号復調装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−208928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に記載されたデジタル変調信号復調装置では、誤差検出手段によって検出されたキャリア周波数とローカル信号の周波数との差による位相誤差に基づいて、位相誤差が小さくなるように2相のローカル信号の位相及び周波数を制御するローカル信号制御手段を備える必要がある。
【0017】
しかし、微小な位相誤差に対応してローカル信号の位相及び周波数を制御するために、ダイレクトデジタルシンセサイザ等で構成されるローカル信号発生器の波形メモリに、微小な位相差に対応した波形データを格納する必要があり、メモリのデータ容量が嵩むという問題、ローカル信号生成のためのクロック周波数が高くなるという問題、それに対応して演算負荷が増大するという問題があった。
【0018】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、回路規模の増大や演算負荷の増大を来たすことなく、近距離から遠距離まで安定した高速の光通信が可能となる光データ復調装置、光データ変調装置、及び光データ伝送装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述の目的を達成するため、本発明による光データ復調装置の第一の特徴構成は、位相変調された光信号を受信して復調する光データ復調装置であって、受光素子で受光されたアナログの受信信号を、キャリア周波数の逓倍周波数の局部発振クロックでA/D変換して、デジタルの受信信号を生成するA/D変換部と、
前記局部発振クロックに同期して、前記A/D変換部で生成された受信信号と直交基準信号との積和演算を実行し、当該積和演算結果に基づいて位相を算出する位相検知部と、前記位相検知部で算出された位相が所定シンボル数連続するときに、当該位相を基準位相に設定する位相設定部と、前記基準位相に基づいてデータを復調するデータ復調部と、を備えている点にある。
【0020】
位相検知部では、局部発振クロックに同期して、A/D変換部で生成された受信信号と直交基準信号との積和演算に基づいて受信信号の位相が検知される。そして、位相設定部では、位相検知部で算出された位相が所定シンボル数連続するときの位相が基準位相に設定される。データ復調部では、設定された基準位相に基づいてデータが復調される。従って、位相変調された信号を復調するための信号処理ブロックが極めてシンプルに構成することができるようになった。
【0021】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、位相変調された光信号を受信して復調する光データ復調装置であって、受光素子で受光されたアナログの受信信号を、キャリア周波数の逓倍周波数の局部発振クロックでA/D変換して、デジタルの受信信号を生成するA/D変換部と、前記局部発振クロックに同期して、前記A/D変換部で生成された受信信号と直交基準信号との積和演算を実行し、当該積和演算結果に基づいて位相を算出する位相検知部と、前記位相検知部で算出された位相が所定シンボル数連続するときに、当該位相を基準位相に設定する位相設定部と、前記位相設定部で設定された基準位相に対応するシンボルの位相の相加平均値を算出し、算出した相加平均値に基づいて前記基準位相とシンボルの位相の相対位相差を補正する位相差補正部と、前記位相差補正部により補正された相対位相に基づいてデータを復調するデータ復調部と、を備えている点にある。
【0022】
位相検知部では、局部発振クロックに同期して、A/D変換部で生成された受信信号と直交基準信号との積和演算に基づいて受信信号の位相が検知される。そして、位相設定部では、位相検知部で算出された位相が所定シンボル数連続するときの位相が基準位相に設定される。
【0023】
そして、基準位相が設定された後に、キャリア周波数と局部発振クロックの周波数のずれに起因して位相検知部で検知される位相が変動する場合であっても、位相差補正部によって、基準位相に対応するシンボルの位相の相加平均値が算出され、基準位相とシンボルの位相の相対位相差が補正されるので、データ復調部では、位相差補正部により補正された相対位相に基づいて適正なデータが復調される。
【0024】
上述の構成によれば、キャリア周波数と局部発振クロックの周波数がずれる場合であっても、直交基準信号を補正する必要が無くなるので、回路規模の増大や演算負荷の増大を来たすことなく、近距離から遠距離まで安定した高速の光通信が可能となる。
【0025】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記直交基準信号の振幅データが2の累乗データとして設定されたデータテーブルを備え、前記位相差検知部は当該累乗データに基づいて前記受信信号をシフト演算することにより、前記受信信号と直交基準信号との積を算出する点にある。
【0026】
上述の構成によれば、受信信号と直交基準信号との積和演算を実行する場合に、受信信号に対して、データテーブルに直交基準信号の振幅データとして設定された2の累乗データに基づいて、受信信号をシフト演算することにより、極めて容易且つ高速に受信信号と直交基準信号との積を算出することができるようになる。
【0027】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記光信号は、前記所定シンボル数以上同一の符号が連続しないように符号変換処理されたベースバンド信号と、時系列的に連続するベースバンド信号間で前記所定シンボル数以上同一の符号が連続する区切り信号とで構成された変調信号により位相変調され、前記データ復調部により復調されたデータから前記ベースバンド信号を再生するとともに、前記区切り信号によりベースバンド信号の終了を判定して一連の通信データを再生する通信データ再生部を備えている点にある。
【0028】
上述の構成によれば、ベースバンド信号に所定シンボル数以上同一の符号が連続することがないので、位相設定部では、位相検知部で算出された位相が所定シンボル数連続するとき、つまり、区切り信号のシンボルを0または1に固定すれば、区切り信号に対する位相が基準位相として設定される。また、ベースバンド信号の終了が判別できないような場合であっても、通信データ再生部によって、区切り信号でベースバンド信号の終了が判定できるので、一連の通信データを正確に再生することができるようになる。
【0029】
本発明による光データ変調装置の第一の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成を備えた光データ復調装置に送信する光信号を生成する光データ変調装置であって、一連の通信データを所定シンボル数以上同一の符号が連続しないように符号変換処理してベースバンド信号を生成するとともに、前記一連の通信データの間に所定シンボル数以上同一の符号が連続する区切り信号を挿入した変調信号を生成する変調信号生成部と、前記変調信号のシンボルに基づいて、キャリア信号の位相に対応する振幅データが設定されたデータテーブルのアドレス情報を生成するアドレス発生部と、前記データテーブルを備え、前記アドレス発生部から出力されるアドレス情報に基づいて、対応するデータテーブルの振幅をデジタルの振幅信号として出力する被変調信号発生部と、被変調信号発生部から出力された振幅信号を、発光素子を駆動するためのアナログの振幅信号に変換するD/A変換部と、を備えている点にある。
【0030】
一連の通信データが任意のシンボル配列で構成される場合であっても、変調信号生成部によって、当該通信データが所定シンボル数以上同一の符号が連続しないように符号変換処理したベースバンド信号に変換され、一連の通信データの間に所定シンボル数以上同一の符号が連続する区切り信号が挿入された変調信号が生成される。尚、光データ復調装置では、当該区切り信号に基づいて基準位相が求められる。
【0031】
アドレス発生部では、当該変調信号に基づいてキャリア信号の位相に対応する振幅データが設定されたデータテーブルのアドレス情報が生成され、被変調信号発生部では、当該アドレス情報に基づいて対応するデータテーブルの振幅がデジタルの振幅信号として出力され、D/A変換部を介してアナログの振幅信号、つまり、発光素子を駆動するための信号に変換される。
【0032】
従って、極めて簡単な回路で位相変調回路を実現することができる。
【0033】
同第二の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、前記アドレス発生部は、キャリア周波数の逓倍周波数の基準発振クロックに同期してカウントされ、キャリアの一周期でリセットされるリングカウンタと、前記変調信号のシンボルの変化に基づいて前記リングカウンタのカウント値を異ならせるカウンタ制御部を備えている点にある。
【0034】
リングカウンタの値によって、データテーブルのアドレス情報が特定される。カウンタ制御部によって、キャリア周波数の逓倍周波数の基準発振クロックに同期して、キャリアの一周期でリセットされるリングカウンタの値が更新される。変調信号のシンボルの変化に基づいて、つまり、変調信号のシンボルが0から1に変化するか、1から0に変化するかによって、前記リングカウンタのカウント値が異なるので、そのカウント値によって位相変調が行なわれる。
【0035】
本発明による光データ伝送装置の第一の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成を備えた光データ復調装置と、上述の第一または第二特徴構成を備えた光データ変調装置とを備えた光データ伝送装置であって、所定の軌道上を移動する移動設備と前記移動設備を制御する固定設備にそれぞれ設置され、前記移動設備と固定設備間または前記移動設備間の通信、または、移動設備間の通信に用いられる点にある。
【0036】
上述の構成によれば、キャリア周波数とローカル信号の周波数との差による基準位相の変動が生じても、回路規模の増大や演算負荷の増大を来たすことなく、近距離から遠距離まで安定した高速の光通信が可能となる光データ伝送装置が実現できる。
【発明の効果】
【0037】
以上説明した通り、本発明によれば、回路規模の増大や演算負荷の増大を来たすことなく、近距離から遠距離まで安定した高速の光通信が可能となる光データ復調装置、光データ変調装置、及び光データ伝送装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による光データ伝送装置の適用対象の一例である一般物流倉庫の説明図
【図2】光データ伝送装置を備えたスタッカークレーンの説明図
【図3】システム制御装置とサーボ制御部間の通信の説明図
【図4】光データ伝送装置の外観図
【図5】光データ伝送装置のブロック構成図
【図6】(a)は本発明による光データ変調装置のブロック構成図、(b)はアドレス発生部で生成されるアドレス情報と、キャリア信号の位相に対応する振幅データが設定されたデータテーブルとの関係を示す説明図
【図7】(a)は基準位相を示す位相変調信号の説明図、(b)は、基準位相から遷移した位相変調信号の説明図
【図8】(a)は本発明による光データ復調装置のブロック構成図、(b)は直交基準信号の振幅データが2の累乗データとして設定されたデータテーブルの説明図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明による光データ伝送装置を、一般物流倉庫内に設置されたスタッカークレーンの制御に適用した例について説明する。
【0040】
図1に示すように、物流倉庫10は、一対の載置棚11と、一対の載置棚11の間に敷設されたレール12と、レール12に沿って移動するスタッカークレーン20と、レール12の両側に設置された一対の荷載置台14と、レール12の一端側に配置され、スタッカークレーン20に入出庫指令を指示するシステム制御装置13を備えている。
【0041】
各載置棚11には多数の収容部15が上下方向及び左右方向に複数並設され、それぞれの収容部15には搬送対象物16が載置されている。
【0042】
以下、スタッカークレーン20の走行方向の一方を、システム制御装置13等を配設した基端側とし、他方を、他端側として説明する。尚、レール12の基端側の端部を、スタッカークレーン20の走行移動の基準位置と設定している。
【0043】
図1及び図2に示すように、スタッカークレーン20は、レール12に沿って走行する走行台車21と、この走行台車21に立設された一対の昇降マスト22と、一対の昇降マスト22を上端部で連接する上部フレーム23を備え、上部フレーム23には水平回転する複数のガイドローラ24が取り付けてあり、それらガイドローラ24がガイドレール18に挟接転動して転倒防止を図っている。
【0044】
さらに、一対の昇降マスト22には昇降自在に案内支持された昇降台25が備えられ、昇降台25には物品を移載可能なフォーク装置40が備えられ、走行台車21の水平移動、昇降台25の昇降移動、及び、フォーク装置40の作動により、荷載置台14に載置されている搬送対象物16を収容部15に移載させ、また、収容部15に収納されている搬送対象物16を荷載置台14に移載させるように構成されている。
【0045】
昇降台25は、昇降用チェーン26により吊持されて昇降するように構成され、昇降用チェーン26は、上部フレーム23に取り付けた従動スプロケット27a,27bを経て一方の昇降マスト22に設けた案内スプロケット28を介して巻取ドラム29に巻き掛けられている。
【0046】
巻取ドラム29は、サーボ制御部30b(図3参照)により制御される昇降用のサーボモータ30aを正逆に回転駆動させて昇降用チェーン26の巻き取り、繰り出しを行い、昇降台25を昇降させるように構成されている。
【0047】
フォーク装置40は、走行台車21の走行方向に対して直角水平方向にスライドし、搬送対象物16を載置自在なフォーク41と、フォーク41を昇降台25上に引退させた引退位置と、収容部15側へ延出させた延出位置にスライドさせるフォーク用のサーボモータ42aと、サーボモータ42aを制御するサーボ制御部42b(図3参照)を備えている。
【0048】
収容部15に収容された搬送対象物16を搬出する際は、まず、昇降台25を指定された収容部15の前まで移動させる。次にフォーク41を昇降台25内の引退位置から搬送対象物16が載置された収容部15側の延出位置にスライドさせ、その状態で昇降台25を少し上昇させ、フォーク41を再度引退位置までスライドさせる。この動作により搬送対象物16は昇降台25上に載置される。
【0049】
搬送対象物16を収容部15に収容する際は、まず、昇降台25を指定された収容部15の前まで移動させる。次に搬送対象物16を載置したフォーク41を昇降台25内の引退位置から収容部15側の延出位置にスライドさせ、その状態で昇降台25を少し下降させ、フォーク41を再度引退位置までスライドさせる。この動作により搬送対象物16は収容部15に収容される。
【0050】
走行台車21は、レール12上を走行自在な車輪31を複数備え、それらの車輪31うちの、他端側の車輪31bが、サーボ制御部32b(図3参照)により制御される走行用のサーボモータ32aで駆動される駆動輪として、基端側の車輪31aが遊転自在な従動輪として構成されている。
【0051】
図3に示すように、システム制御装置13に接続された全二重方式の通信線13aには、走行用のサーボモータ32aを制御するサーボ制御部32bと、昇降用のサーボモータ30aを制御するサーボ制御部30bと、フォーク用のサーボモータ42aを制御するサーボ制御部42bが接続されている。
【0052】
システム制御装置13からの制御指令に基づいて、サーボ制御部32bによりサーボモータ32aが駆動され、サーボモータ32aの回転数や回転角度情報がサーボ制御部32bを介してシステム制御装置13にフィードバックされることにより、システム制御装置13により走行台車21の水平方向での走行位置が制御される。
【0053】
また、システム制御装置13からの制御指令に基づいて、サーボ制御部30bによりサーボモータ30aが駆動され、サーボモータ30aの回転数や回転角度情報等が、サーボ制御部30bを介してシステム制御装置13にフィードバックされることにより、システム制御装置13により昇降台25の上下方向での昇降位置が制御される。
【0054】
さらに、システム制御装置13からの制御指令に基づいて、サーボ制御部42bによりサーボモータ42aが駆動され、サーボモータ42aの回転数や回転角度情報が、サーボ制御部42bを介してシステム制御装置13にフィードバックされることにより、システム制御装置13によりフォーク41の水平方向のスライド位置が制御される。
【0055】
つまり、通信線13aを介してシステム制御装置13からの制御指令を受信した各サーボ制御部32b,30b,42bが、走行用のサーボモータ32a、昇降用のサーボモータ30a、フォーク用のサーボモータ42aをそれぞれ制御し、その制御状態をシステム制御装置13に通信線13aを介して伝送するイーサネット(登録商標)を用いたサーボ通信システムが構成されている。
【0056】
各通信線13aは、送信側と受信側の一対の通信線を備え、一連のフレームデータを電気信号として伝送する銅線ケーブルや、光パルス信号として伝送する光ファイバケーブル等で構成されている。本実施形態では、各通信線13aが銅線ケーブルで構成される例を説明するが、各通信線13aが光ファイバケーブルで構成される場合でも同様である。
【0057】
システム制御装置13と、システム制御装置13に対して相対移動する走行台車21との間を接続する通信線13a、及び、走行台車21と走行台車21に対して相対移動する昇降台25とを接続する通信線13aに、それぞれ一対の光データ伝送装置100が介装されている。
【0058】
システム制御装置13が設置された設備が本発明による固定設備となり、サーボ制御部30a,30b,42bが設置された設備が本発明による移動設備になる。
【0059】
図4に示すように、光データ伝送装置100は、上部ケーシング301aと下部ケーシング301bで構成されるケーシング301と、ケーシング301の一側面に備えられた端部カバー部材302を備え、端部カバー部材302には光信号を投光する投光窓303と、光信号を受光する受光窓304が形成されている。
【0060】
図5に示すように、各光データ伝送装置100は、光データ変調装置110と光データ復調装置160を備えている。
【0061】
光データ変調装置110は、赤外LEDでなる発光素子150と、送信側の通信線13aを介して伝送される可変長のフレームデータを取り込む受信インタフェース111と、受信インタフェース111に取り込まれたフレームデータに基づいてキャリアを位相変調する変調部120と、変調部120から出力される被変調信号に基づいて発光素子150を駆動する発光素子駆動回路140と、発光素子150から出力された光を平行光に形成する光学レンズ112を備えている。光学レンズ112を通過した光信号は他方の光データ伝送装置100に伝送される。
【0062】
光データ復調装置160は、他方の光データ伝送装置100から伝送された光信号を集光する光学レンズ162と、光学レンズ162により集光された光信号を検出する受光素子でなる受光部163と、受光部163で光電変換された電気信号を増幅するトランスインピーダンスアンプ190と、トランスインピーダンスアンプ190で増幅された電気信号を復調して可変長のフレームデータを生成する復調部170と、復調部170で生成された可変長のフレームデータを受信側の通信線13aに中継出力する送信インタフェース161を備えている。
【0063】
図6(a)には光データ変調装置110の機能ブロック構成が示されている。
変調部120は、4B5B変換部123と、変調信号生成部124と、アドレス発生部125と、被変調信号発生部としての正弦波発生部126等を備えている。発光素子駆動回路140は、D/A変換部141と、バンドパスフィルタ142と、発光素子150のドライバ143を備えている。
【0064】
イーサネット(登録商標)のフレームデータは、7オクテットの「プリアンブル」フィールド、1オクテットの「SFD(Start Frame Delimiter)」フィールド、6オクテットの「宛先アドレス」フィールド、6オクテットの「送信元アドレス」フィールド、2オクテットの「長さ/タイプ」フィールド、最小46オクテットから最大1500オクテットの「データ」フィールド、4オクテットの「FCS」フィールドで構成されている。
【0065】
受信インタフェース111は、MII(Media Independent Interface)規格に基づくPHYチップで構成され、送信側の通信線13aを介して10MBPSの通信速度で伝送される上述の可変長のフレームデータが、受信インタフェース111によって4ビット単位のパラレルデータに分割され、順次後段に出力される。
【0066】
受信インタフェース111から出力される4ビット単位のパラレルデータが、4B5B変換部123によって4B5B変換された後、シリアルデータに変換されて12.5MBPSの通信速度で変調信号生成部124に出力される。つまり、通信線13aから伝送される一連の通信データ(フレームデータ)に、所定シンボル数(ここでは、5シンボル数)以上同一の符号が連続しないように符号変換処理が行なわれる。尚、受信インタフェース111であるPHYチップに4B5B変換部123が組み込まれる構成であってもよい。
【0067】
変調信号生成部124は、受信インタフェース111から出力される送信制御信号に基づいて、連続する一連の通信データ(フレームデータ)の区切りを検知し、一連の通信データ(フレームデータ)間に所定シンボル数(ここでは、5シンボル数)以上同一の符号(ここでは、0)が連続する区切り信号を挿入した変調信号(ベースバンド信号)を生成してアドレス発生部125に出力する。尚、送信制御信号は、フレームデータの先頭シンボルの送信直前に立ち上がり、フレームデータの最終シンボルの送信直後に立ち下がる制御信号である。
【0068】
発振器113から出力されるクロック信号が、分周器121、逓倍器122を介して240MHzのクロック信号に変換され、当該クロック信号がアドレス発生部12及び正弦波発生部126に入力されている。
【0069】
図6(b)に示すように、正弦波発生部126には、正弦波のキャリア信号の各位相30°,90°,150°,210°,270°,330°に対応する振幅0.5,1.0,0.5、−0.5,−1.0,−0.5が、0から1023の10ビットデータとして設定されたデータテーブルが設けられている。データテーブルの値0が振幅−1.0に対応し、データテーブルの値1023が振幅1.0に対応し、データテーブルの値511が振幅0に対応する。
【0070】
アドレス発生部125で生成される0から5の各アドレスに従って、各位相30°,90°,150°,210°,270°,330°の各振幅データがアクセスされる。
【0071】
尚、データテーブルに格納される振幅は、位相30°,90°,150°,210°,270°,330°に対応する値に限るものではなく、位相0°,60°,120°,180°,240°,300°に対応する値であってもよい。また、キャリア周波数の逓倍のクロックに合わせて、各位相に対する振幅が設定されていればよい。
【0072】
アドレス発生部125は、0から5迄の値を繰返しカウントするリングカウンタと、12.5MBPSの通信速度で入力される変調信号を240MHzでサンプリングして、リングカウンタのカウント値を制御するカウンタ制御部を備えている。
【0073】
カウンタ制御部は、サンプリングした変調信号のシンボルの値が前回のサンプリング値と一致するときにリングカウンタの値を1加算し、シンボルの値が0から1に変化するときにリングカウンタの値を2加算し、シンボルの値が1から0に変化するときにリングカウンタの値を−1加算する。
【0074】
従って、サンプリングした変調信号のシンボルの値が前回のサンプリング値と一致するときには、正弦波発生部126から40MHz(=240MHz/6)の正弦波の振幅データが出力され、シンボルの値が0から1に変化すると、60°位相が進んだ正弦波の振幅データが出力され、シンボルの値が0から1に変化すると、120°位相が遅れた元の正弦波の振幅データが出力される。つまり、変調部120では、2値の位相変調(BPSK)が行なわれる。
【0075】
図7(a)には、変調信号に同一のシンボル値0が連続する場合に、正弦波発生部126から出力される40MHzの正弦波に対応する振幅データが、階段状の波形として表わされている。
【0076】
図7(b)には、変調信号のシンボルの値が0から途中で1に変化する場合に、正弦波発生部126から出力される40MHzの正弦波に対応する振幅データが、階段状の波形として表わされている。シンボルの値が0から1に変化する時点で位相が60°進んでいる。
【0077】
正弦波発生部126から出力される振幅データは、D/A変換部141によってアナログ信号に変換され、バンドパスフィルタ142によって高調波成分が除去されることにより、図7(a),(b)に二点鎖線で示す正弦波に波形成形され、ドライバ143に出力される。ドライバ143によって、所定の直流バイアス電圧に当該正弦波電圧を重畳した電圧が発光素子150に印加されることにより、発光素子150から位相変調された光信号が出力される。
【0078】
つまり、光信号は、所定シンボル数以上同一の符号が連続しないように符号変換処理されたベースバンド信号と、時系列的に連続するベースバンド信号間で所定シンボル数以上同一の符号が連続する区切り信号とで構成された変調信号により位相変調されている。
【0079】
また、光データ変調装置は、変調信号のシンボルに基づいて、キャリア信号の位相に対応する振幅データが設定されたデータテーブルのアドレス情報を生成するアドレス発生部とデータテーブルを備え、アドレス発生部から出力されるアドレス情報に基づいて対応するデータテーブルの振幅をデジタルの振幅信号として出力する被変調信号発生部と、被変調信号発生部から出力された振幅信号を、発光素子を駆動するためのアナログの振幅信号に変換するD/A変換部とを備えている。
【0080】
さらに、アドレス発生部は、キャリア周波数の逓倍周波数の基準発振クロックに同期してカウントされ、キャリアの一周期でリセットされるリングカウンタと、変調信号のシンボルの変化に基づいてリングカウンタのカウント値を異ならせるカウンタ制御部を備えている。
【0081】
図8(a)には光データ復調装置160の機能ブロック構成が示されている。
復調部170は、A/D変換部171と、ラッチ回路172と、積和演算部173,174と、除算部175と、位相変換部176,177と、位相設定部178と、位相差補正部179と、データ復調部180と、通信データ再生部181と、5B4B変換部182を備えている。
【0082】
A/D変換部171では、トランスインピーダンスアンプ180で増幅されたアナログの受信信号が、キャリア周波数の逓倍周波数の局部発振クロックで8ビットのデジタルの受信信号に変換される。具体的に、A/D変換部171は、逓倍器122から出力される240MHzのクロック信号で駆動され、キャリア周波数40MHzの6倍の周波数で受信信号dm(m;0,1,2,3,4,5)をサンプリングする。
【0083】
240MHzでサンプリングされた8ビットの受信信号がラッチ回路172を介して、積和演算部173,174に入力される。積和演算部173,174は、A/D変換部171でデジタルデータに変換された受信信号と直交基準信号との積和演算を局部発振クロックに同期して実行する。
【0084】
尚、積和演算部173,174以降の信号処理ブロックは、分周器183により120MHzに分周されたクロックにより駆動される。ラッチ回路172には、240MHzでサンプリングされた8ビットのデジタルデータdmが2バイトずつ格納され、120MHzのクロックに同期して2バイト単位で積和演算部173,174に入力される。
【0085】
図8(b)に示すように、積和演算部173には、位相0°,60°,120°,180°,240°,300°に対応する正弦波の振幅データが格納されたデータテーブルと演算部を備え、演算部によってラッチ回路172にラッチされたデジタルデータdmとデータテーブルに格納された振幅データとの間で、次式に示す積和演算Ssが実行される。
Ss=Σ(dm・Sin(2πm/6))
=d0・Sin0°+d1・Sin60°+d2・Sin120°
+d3・Sin180°+d4・Sin240°+d5・Sin300°
【0086】
積和演算部174には、位相0°,60°,120°,180°,240°,300°に対応する余弦波の振幅データが格納されたデータテーブルと演算部を備え、演算部によってラッチ回路172にラッチされたデジタルデータdmとデータテーブルに格納された振幅データとの間で、次式に示す積和演算Scが実行される。
Sc=Σ(dm・Cos(2πm/6))
=d0・Cos0°+d1・Cos60°+d2・Cos120°
+d3・Cos180°+d4・Cos240°+d5・Cos300°
【0087】
図8(b)のSin簡易値及びCos簡易値の欄に示すように、本実施形態では、データテーブルに格納される直交基準信号Sin,Cosの振幅データが2の累乗データとして設定されている。従って、上述の演算部は、当該累乗データに基づいて受信信号をシフト演算することにより、受信信号と直交基準信号との積が算出されるように構成されている。このような簡易演算処理を採用することにより、コンパクトな回路構成で且つ高速演算が可能な演算部を実現している。
【0088】
例えば、直交基準信号Sinが一律10倍され、10・Sin(2π/6)≒8.66≒8に設定されている。従って、d1・Sin60°の演算処理では、受信信号d1を3ビット左にシフトすることによりその結果が算出される。
【0089】
例えば、直交基準信号Cosが一律8倍され、8・Cos(2π・2/6)=−4に設定されている。従って、d2・Cos120°の演算処理では、受信信号d2を2ビット右にシフトした値の補数を求めることにより、その結果が算出される。
【0090】
除算部175では、クロックに同期して積和演算部173,174から出力されるSs,Scを次式に基づいて除算してArctanθ´を算出する。
θ´=Arctan(Sc/Ss)
【0091】
±45°の範囲の位相θの値が格納されたデータテーブルを備えた位相変換部176によって、Sc/Ssの値に対応する位相θ´が求められる。
【0092】
位相変換部177では、この位相θと、積和演算部173,174から出力されるSs,Scの関係から360°の範囲の位相θが求められる。
【0093】
つまり、積和演算部173,174と、除算部175と、位相変換部176,177によって、局部発振クロックに同期して、A/D変換部で生成された受信信号と直交基準信号との積和演算を実行し、当該積和演算結果に基づいて位相を算出する位相検知部が構成されている。
【0094】
位相設定部178は、120MHzのクロック信号に基づいて、受信信号dmが5シンボル数以上0が連続する区切り信号であるか否かを判別し、区切り信号であると判定したときに、当該位相θ(=30°)をデータ0に対応する基準位相としてメモリに格納する。つまり、同じ位相θが5シンボル数以上連続するときに区切り信号であると判定するのである。
【0095】
データ復調部180は、位相変換部177から出力される位相と当該基準位相とを比較して、変調信号(ベースバンド信号)を再生する。
【0096】
通信データ再生部181によって、データ復調部180で再生された変調信号(ベースバンド信号)から区切り信号が検知されると、当該区切り信号が除去され、その区切り信号の直前の信号がフレームデータの最終シンボルであり、その区切り信号の直後の信号がフレームデータの先頭シンボルであると識別される。
【0097】
さらに5B4B変換部182によって、フレームデータが5B4B変換されて、通信線13aに伝送されるべき元のフレームデータが再生される。5B4B変換後のデータは4ビット単位で送信インタフェース161であるPHYチップに入力され、イーサネット(登録商標)のフレームデータに変換されて通信線13aを介して伝送される。
【0098】
本発明による光データ復調装置160は、さらに、送信元の光信号の変調クロックの基準周波数と、局部発振クロックの基準周波数との誤差に起因する基準位相の変動を吸収する位相差補正部179を備えている。
【0099】
フレームデータの先頭に配置された区切り信号に基づいて、基準位相が設定されるが、その後、送信元の変調クロックの基準周波数と局部発振クロックの基準周波数の誤差が蓄積されると、基準位相が変動して最大で1522オクテットもの長さになるフレームデータを正確に復調できない虞があるためである。
【0100】
位相差補正部179は、位相設定部178で設定された基準位相に対応するシンボルの位相の相加平均値を算出し、算出した相加平均値に基づいて基準位相とシンボルの位相の相対位相差を補正するように構成されている。
【0101】
位相設定部178によって区切り信号に基づく基準位相が設定された後、位相差補正部179は、シンボル値が0であると判定される複数のシンボルの位相の相加平均値を算出し、当該相加平均値が基準位相に対して予め設定されている許容範囲を逸脱すると、そのときの相加平均値を新たな基準位相として補正するのである。
【0102】
許容範囲は適宜設定される値であり、例えば、本実施形態のようにシンボル値が0となる基準位相が30°である場合、その値の±10%の範囲に設定することができる。
【0103】
シンボル値が0であると判定される複数のシンボルの位相と基準位相との偏差の相加平均値を求め、当該相加平均値が予め設定されている許容範囲を逸脱すると、そのときの相加平均値に基づいて基準位相を補正してもよい。例えば、相加平均値が基準位相の偏差よりΔθ大きくなると、基準位相にΔθ加算した値を新たな基準位相に設定してもよい。
【0104】
逆に、シンボル値が1であると判定される複数のシンボルの位相の相加平均値を算出し、相加平均値が基準位相に対して予め設定されている許容範囲を逸脱すると、そのときの相加平均値に基づいて基準位相を補正してもよい。
【0105】
基準位相を補正するのではなく、シンボル値に対する位相を補正し、補正後の位相と基準位相を比較してもよい。
【0106】
以下、別実施形態を説明する。
上述の実施形態では、一連の通信データを所定シンボル数以上同一の符号が連続しないように符号変換処理するために、4B5B変換部を備えた例を説明したが、所定シンボル数以上同一の符号が連続しないように符号変換処理するものであれば、4B5B変換に制限されるものではない。例えば、8B10B変換処理するものであってもよい。それに対応して変調部が構成されるようにすればよい。
【0107】
上述した実施形態では、キャリアの周波数40MHzの6倍の周波数240MHzに同期して位相変調する例を説明したが、この値に制限されるものではなく適宜設定可能である。例えば、キャリアの周波数40MHzの8倍の周波数320MHzに同期して位相変調する場合には、正弦波発生部126に備えた60°ピッチのデータテーブルを45°ピッチのデータテーブルに設定すればよい。
【0108】
上述した実施形態では、カウンタ制御部は、シンボルの値が0から1に変化するときにリングカウンタの値を2加算し、シンボルの値が1から0に変化するときにリングカウンタの値を−1加算するとしているが、加減算値を変える事により、120°や180°位相変調としてもよい。

【0109】
以上、変調部120で2値の位相変調(BPSK)が行なわれる例を説明したが、本発明が適用される位相変調は2値の位相変調(BPSK)に限るものではなく、4値の位相変調(QPSK)等の多値の位相変調にも適用可能であることはいうまでもない。
【0110】
また、本発明による光データ伝送装置は、イーサネット(登録商標)の通信線を中継する用途に限らず、所定の軌道上を移動する移動設備と前記移動設備を制御する固定設備にそれぞれ設置され、前記移動設備と固定設備間または前記移動設備間の通信、または、移動設備間の通信に好適に用いられる。
【0111】
例えば、鉄鋼工場等に設置される天井クレーン装置でなる移動設備と、当該天井クレーン装置を制御する制御装置を備えた固定設備間の通信等にも好適に用いられる。
【0112】
以上説明した光データ伝送装置の具体的構成は、何れも本発明の一例を示すものであり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各ブロックの具体的な構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0113】
13:固定設備(システム制御装置)
13a:通信線
18:ガイドレール
20:スタッカークレーン
21:移動設備(走行台車)
25:移動設備(昇降台)
30a:サーボモータ
30b:サーボ制御部
32a:サーボモータ
32b:サーボ制御部
42a:サーボモータ
42b:サーボ制御部
100:光データ伝送装置
110:光データ変調装置
111:受信インタフェース
120:変調部
123:4B5B変換部
124:変調信号生成部
125:アドレス発生部
126:被変調信号発生部
140:発光素子駆動回路
150:発光素子(LED)
160:光データ復調装置
171:A/D変換部
173,174:位相検知部(積和演算部)
175:位相検知部(除算部)
176,177:位相検知部(位相変換部)
178:位相設定部
179:位相差補正部
180:データ復調部
181:5B4B変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相変調された光信号を受信して復調する光データ復調装置であって、
受光素子で受光されたアナログの受信信号を、キャリア周波数の逓倍周波数の局部発振クロックでA/D変換して、デジタルの受信信号を生成するA/D変換部と、
前記局部発振クロックに同期して、前記A/D変換部で生成された受信信号と直交基準信号との積和演算を実行し、当該積和演算結果に基づいて位相を算出する位相検知部と、
前記位相検知部で算出された位相が所定シンボル数連続するときに、当該位相を基準位相に設定する位相設定部と、
前記基準位相に基づいてデータを復調するデータ復調部と、
を備えている光データ復調装置。
【請求項2】
位相変調された光信号を受信して復調する光データ復調装置であって、
受光素子で受光されたアナログの受信信号を、キャリア周波数の逓倍周波数の局部発振クロックでA/D変換して、デジタルの受信信号を生成するA/D変換部と、
前記局部発振クロックに同期して、前記A/D変換部で生成された受信信号と直交基準信号との積和演算を実行し、当該積和演算結果に基づいて位相を算出する位相検知部と、
前記位相検知部で算出された位相が所定シンボル数連続するときに、当該位相を基準位相に設定する位相設定部と、
前記位相設定部で設定された基準位相に対応するシンボルの位相の相加平均値を算出し、算出した相加平均値に基づいて前記基準位相とシンボルの位相の相対位相差を補正する位相差補正部と、
前記位相差補正部により補正された相対位相に基づいてデータを復調するデータ復調部と、
を備えている光データ復調装置。
【請求項3】
前記直交基準信号の振幅データが2の累乗データとして設定されたデータテーブルを備え、前記位相検知部は当該累乗データに基づいて前記受信信号をシフト演算することにより、前記受信信号と直交基準信号との積を算出する請求項1または2記載の光データ復調装置。
【請求項4】
前記光信号は、前記所定シンボル数以上同一の符号が連続しないように符号変換処理されたベースバンド信号と、時系列的に連続するベースバンド信号間で前記所定シンボル数以上同一の符号が連続する区切り信号とで構成された変調信号により位相変調され、前記データ復調部により復調されたデータから前記ベースバンド信号を再生するとともに、前記区切り信号によりベースバンド信号の終了を判定して一連の通信データを再生する通信データ再生部を備えている請求項1から3の何れかに記載の光データ復調装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の光データ復調装置に送信する光信号を生成する光データ変調装置であって、
一連の通信データを所定シンボル数以上同一の符号が連続しないように符号変換処理してベースバンド信号を生成するとともに、前記一連の通信データの間に所定シンボル数以上同一の符号が連続する区切り信号を挿入した変調信号を生成する変調信号生成部と、
前記変調信号のシンボルに基づいて、キャリア信号の位相に対応する振幅データが設定されたデータテーブルのアドレス情報を生成するアドレス発生部と、
前記データテーブルを備え、前記アドレス発生部から出力されるアドレス情報に基づいて、対応するデータテーブルの振幅をデジタルの振幅信号として出力する被変調信号発生部と、
被変調信号発生部から出力された振幅信号を、発光素子を駆動するためのアナログの振幅信号に変換するD/A変換部と、
を備えている光データ変調装置。
【請求項6】
前記アドレス発生部は、キャリア周波数の逓倍周波数の基準発振クロックに同期してカウントされ、キャリアの一周期でリセットされるリングカウンタと、前記変調信号のシンボルの変化に基づいて前記リングカウンタのカウント値を異ならせるカウンタ制御部を備えている請求項5記載の光データ変調装置。
【請求項7】
請求項1から4の何れかに記載の光データ復調装置と、請求項5または6記載の光データ変調装置とを備えた光データ伝送装置であって、
所定の軌道上を移動する移動設備と前記移動設備を制御する固定設備にそれぞれ設置され、前記移動設備と固定設備間または前記移動設備間の通信、または、移動設備間の通信に用いられる光データ伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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