説明

光ピックアップ装置およびその製造方法

【課題】PDIC等の光学素子の接続に用いられる可撓性配線基板(フレキシブル配線基板)の移動の自由度が確保された光ピックアップ装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】光ピックアップ装置10では、PDIC50は、フレキシブル配線基板38を経由して回路基板46の表面に形成された導電パターンと電気的に接続されている。そして、フレキシブル配線基板38が接触する部分のハウジング12には突起部42が設けられている。このようにすることで、フレキシブル配線基板38とハウジング12とが接触する面積が小さくなり、両者が接触することにより発生する摩擦抵抗が小さくなる。結果的に、PDIC50の位置を調整する際の移動の自由度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置およびその製造方法に関する。特に本発明は、フレキシブル配線基板を経由して光学素子が接続される光ピックアップ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置は、発光素子から放射される所定の波長のレーザー光を光ディスクに照射し、光ディスクの情報記録層で反射したレーザー光を受光素子で検出する機能を備えている(特許文献1)。このことにより、光ディスクに対して、情報の読取動作または書込動作を行うことができる。
【0003】
また、光ピックアップ装置を構成する発光素子、受光素子、ハーフミラー等の光学素子は、樹脂材料を一体成型したハウジングに内蔵される。
【0004】
図7(A)は、従来から存在する光ピックアップ装置100を部分的に示す斜視図である。この図に示すように、光ピックアップ装置100では、ハウジング102の内部の所定箇所に、ハーフミラー等の光学素子が固着されている。更に、受光素子であるPDIC104(photodetector IC)は、ガラスエポキシ基板等から成る固定板106を介してハウジング102の所定箇所に配置されている。このように、PDIC104を直にハウジング102に固着せずに、固定板106を介してPDIC104をハウジングに固着する理由は、固定板106を操作することによりPDIC104の位置を精密に調整するためである。
【0005】
このような構成の光ピックアップ装置の製造方法は次の通りである。
【0006】
先ず、発光素子、受光素子、各種レンズおよびミラー等の光学素子をハウジング102の所定位置に収納する。
【0007】
次に、発光素子からレーザー光を放射させ、放射されるレーザー光がPDIC104の所定の受光領域に照射されるように調整を行う。この調整としては、固定板106の表面をコレットで保持し、レーザー装置から放射されるレーザー光をPDIC104に向けて照射する。そして、PDIC104の所定の受光領域にレーザー光が照射されるように、固定板106をコレットで移動させる。レーザー光がPDIC104の所定箇所に照射されたら、この時点で固定板106を絶縁性接着材でハウジング102に固着する。PDIC104は、可撓性に優れるフレキシブル配線基板を経由して接続されている。従って、PDIC104を他の箇所(例えば回路基板)とフレキシブル配線基板を経由して接続した後であっても、フレキシブル配線基板が撓むことにより、上記したような位置調整が可能となる。
【0008】
上記工程が終了した後は、ミラーの位置等の他の光学素子の検査を行った後に、製品として出荷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−216436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図7(B)を参照して、上記した光ピックアップ装置100が有する問題を説明する。固定板106に固着されたPDIC104は、フレキシブル配線基板106を経由して、ハウジング102の下面に配置された回路基板46と接続されている。また、フレキシブル配線基板106の途中部分には、PDIC104の位置合わせを行う際の移動を許容するために、PDIC104の上方にて180度折り返される曲折部が設けられている。このことにより、フレキシブル配線基板106の途中部分は、ハウジング102の側面に押し付けられる。
【0011】
ところが、ハウジング102の側面とフレキシブル配線基板106とは面で接触しており摩擦抵抗が大きいので、PDIC104を調整する際に、PDIC104の移動が阻害される問題があった。
【0012】
更にまた、上記した曲折部にて180度曲折されることで発生する曲げ応力により、フレキシブル配線基板106が断線する恐れがあった。更には、この曲げ応力によりフレキシブル配線基板106と固定板106との接続部、またはフレキシブル配線基板106とPDIC104との接続部が剥離してしまう恐れもあった。
【0013】
本発明はこの様な問題点を鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、PDIC等の光学素子の接続に用いられる可撓性配線基板(フレキシブル配線基板)の移動の自由度が確保された光ピックアップ装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の光ピックアップ装置は、情報記録媒体にレーザー光を放射し、前記情報記録媒体で反射した前記レーザー光を検出する光ピックアップ装置であり、内部の所定位置に受光素子が収納されるハウジングと、前記ハウジングの主面に配置されて前記受光素子と電気的に接続された導電パターンが形成された回路基板と、前記ハウジングに面する側の主面に前記受光素子が固着された固定板と、前記受光素子と前記回路基板とを接続する可撓性配線基板と、を備え、前記可撓性配線基板は、前記受光素子と接続される第1接続部と、前記回路基板と接続される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間に配置された配線部と、前記配線部を180度折り返す曲折部を有し、前記受光素子が設けられた箇所の前記ハウジングを外側に突起させた突起部を設け、前記突起部を前記可撓性配線基板の前記配線部に接触させることを特徴とする。
【0015】
本発明の光ピックアップ装置の製造方法は、情報記録媒体にレーザー光を放射し、前記情報記録媒体で反射した前記レーザー光を検出する光ピックアップ装置の製造方法であり、底面部と側面部とを有するハウジングに受光素子を収納する工程と、前記ハウジングの主面に前記受光素子と電気的に接続される導電パターンが設けられた回路基板を配置する工程と、固定板に固定された受光素子と前記回路基板とを可撓性配線基板で電気的に接続する工程と、前記ハウジングに内蔵された発光素子からレーザー光を照射させつつ、前記受光素子の所定領域に前記レーザー光が照射されるように、前記固定板の位置を調整する工程と、を備え、前記可撓性配線基板は、前記受光素子と接続される第1接続部と、前記回路基板と接続される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間に配置された配線部と、前記配線部を180度折り返す曲折部を有し、前記固定板の位置を調整する工程では、前記ハウジングを外側に突起させた突起部に、前記可撓性配線基板の前記配線部を接触させつつ、前記固定板を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、ハウジングの側面を部分的に突出させた突起部を設け、受光素子の接続に用いられる可撓性配線基板をこの突起部に接触させている。このことにより、ハウジングの側面と可撓性配線基板とが接触する面積が小さくなり摩擦抵抗が少なくなるので、この摩擦抵抗により受光素子の調整を行う際の移動が阻害されることが抑制される。
【0017】
更に本発明では、ハウジングの側面部分を部分的に内部に窪ませて凹状部とし、可撓性配線基板の曲折部を部分的にこの凹状部に収納している。このようにすることで、可撓性配線基板の曲折部の曲率が小さくなり、曲折部に作用する曲げ応力が小さくなる。従って、この曲げ応力に起因した、可撓性配線基板の破壊が防止され、更に可撓性配線基板と他の部位との接続部の剥離も防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の光ピックアップ装置を示す図であり、(A)は斜視図あり、(B)は部分的に拡大して示す斜視図である。
【図2】本発明の光ピックアップ装置に用いられるフレキシブル配線基板を示す図であり、(A)は展開した状態を示す図であり、(B)はハウジングに組み込まれる際の形状を示す図である。
【図3】本発明の光ピックアップ装置を示す図であり、(A)はPDICが配置される箇所の断面図であり、(B)はこの箇所を上方から見た断面図である。
【図4】本発明の光ピックアップ装置を構成するハウジングを示す図であり、(A)はPDICが配置される箇所のハウジングを部分的に示す斜視図であり、(B)は当該箇所を上方から見た図であり、(C)は他の形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の光ピックアップ装置に組み込まれる光学素子を示す図である。
【図6】本発明の光ピックアップ装置の製造方法に於いて、PDICの位置調整を行う工程を示す図である。
【図7】背景技術の光ピックアップ装置を示す図であり、(A)は光ピックアップ装置を部分的に示す斜視図であり、(B)はPDICが配置される部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の形態:光ピックアップ装置の構成>
図1から図5を参照して、本形態の光ピックアップ装置10の構成を説明する。
【0020】
図1を参照して、光ピックアップ装置10の概略的構成を説明する。図1(A)は光ピックアップ装置10全体を示し、図1(B)はPDIC50(受光素子)が設けられる部分を拡大したものである。ここで、図1(B)は、図1(A)に示す光ピックアップ装置10を表裏逆転した状態の一部を示している。ここで、ハウジング12の底面部34の下面に回路基板46が設けられている。尚、以下の説明に於いて、光学素子とはハウジングに収納される素子を意味する。
【0021】
光ピックアップ装置10は、BD(Blu−ray Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)またはCD(Compact Disk)規格のレーザー光を、光ディスク(情報記録媒体)の情報記録層に合焦させ、この情報記録層からの反射光を受光して電気信号に変換する機能を備えている。光ピックアップ装置10は、例えば、BD用の発光チップ、DVD用およびCD用の発光チップを内蔵している。ここで、光ピックアップ装置10は必ずしも3種類の規格のレーザー光に対応する必要はなく、1つまたは2つの規格のレーザー光に対応するタイプでも良い。
【0022】
光ピックアップ装置10は、樹脂材料から成るハウジング12と、このハウジング12に内蔵された各種光学素子を備えている。図1(B)を参照すると、レーザー装置58、回折格子56およびハーフミラー22がハウジング12内部の所定箇所に固着されている。
【0023】
また、図1(A)には図示されていないが、ハウジング12の上面には、対物レンズを移動可能に保持するアクチュエータと、各種光学素子と電気的に接続された配線が設けられた回路基板と、入出力端子として機能するコネクタ等が配置される。ハウジング12に内蔵される光学素子の詳細は図5を参照して後述する。
【0024】
ハウジング12は、射出成形で一体的に形成された樹脂材料から成り、底面部34と底面部34の外周端部から厚み方向に突出した壁状の側面部36とを備えている。ハウジング12を構成する樹脂材料としてはポリカーボネート、変性PPE(PolyphenyleneEther)、ABS樹脂等が採用される。ここで、ABS樹脂とは、アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンからなる熱可塑性樹脂である。
【0025】
ハウジングの構成は図7に示した従来構造と同様であり、多数個の光学素子が収納される凹状の収納領域が、ハウジング12の底面から設けられている。
【0026】
ハウジング12の両端部分には、ガイド孔14とガイド溝16が設けられている。使用状況下に於いては、ガイド孔14にはガイド軸が挿通され、ガイド溝16には別のガイド軸が係合される。そして、光ピックアップ装置10は、これらのガイド軸に沿って移動する。
【0027】
ハウジング12の底面部34を部分的に開口することにより開口部24、26が形成されている。開口部24、26は、ハウジング12の内部空間と外部とを連通させる部位である。開口部24、26を経由して、ハウジング12に内蔵された発光素子から放射された光が、外部に位置する光ディスクの情報記録層に照射される。また、光ディスクの情報記録層で反射した戻り光であるレーザー光は、開口部24、26を経由して、ハウジング12に内蔵された受光素子に照射される。
【0028】
ハウジング12の側面部36には、2つの固定板18、20が配置されている。これらの固定板18、20の内側の主面には、レーザー光を受光するPDIC(受光素子)が固着されている。固定板18、20の端部付近は、絶縁性接着材を介して、ハウジング12の側面部36に固着されている。
【0029】
図1(B)を参照して、ハウジング12の底面には回路基板46が固着されており、この回路基板46には、ハウジング12に内蔵された光学素子と電気的に接続される導電パターンが形成されている。そして、回路基板46の上面に形成された導電パターンと、固定板18に固着されたPDIC50とは、可撓性の材料からなるフレキシブル配線基板38(可撓性配線基板)を経由して接続されている。
【0030】
図2を参照して、PDIC50の接続に用いられるフレキシブル配線基板38を説明する。図2(A)はフレキシブル配線基板38を展開した状態を示し、図2(B)は使用状況下のフレキシブル配線基板38の状態を示す図である。
【0031】
図2(A)を参照して、フレキシブル配線基板38は、厚みが100μmのポリイミド樹脂から成る基材の表面にパターン化した導電配線層が設けられている。更に、フレキシブル配線基板38は、PDIC50が固着される第1接続部39と、図1(B)に示す回路基板46に固着される第2接続部41と、第1接続部39と第2接続部41との間の配線部43とから構成されている。
【0032】
第1接続部39では、紙面上に於ける手前側の主面にPDIC50が固着されている。PDIC50は、フォトダイオードをから成る受光素子がパッケージ化されたものであり、PDIC50の実装基板の下面に設けられた半田バンプを経由して、第1接続部39の表面に設けられた導電配線層に面実装されている。更に、第1接続部39の裏面には、厚みが1mm程度のアルミ基板または樹脂基板から成る固定板18が接着固定されている。この接着固定には、エポキシ樹脂等の絶縁性接着材が用いられる。
【0033】
第2接続部41には、導電パターンの一部から成るパッドが複数個設けられている。これらのパッドは、半田等の導電性接着材を介して、図1(B)に示す回路基板46の導電パターンと接続される。更に、第2接続部41の形状は、回路基板46の端部の形状に即したものとなっている。
【0034】
第1接続部39と第2接続部41との間に設けられた配線部43は、紙面上で左側端部の配線部43A(第1配線部)と、紙面上にて右側端部の配線部43B(第2配線部)とから成る。これらの配線部43Aおよび43Bの表面に、PDIC50を接続するための導電配線層が設けられている。更に、配線部43の中央部付近は部分的に除去されて開口部48が形成されている。使用状況下では、この開口部48を経由してPDIC50にレーザー光が照射される。
【0035】
図2(B)を参照して、PDIC50を光ピックアップ装置のハウジングに組み込む際には、配線部43の途中部分を180度折り返すことにより曲折部45が設けられている。このようにすることで、第1接続部39と第2接続部41との間の配線部43が長くなり、PDIC50を調整する際の自由度が大きくなる。この事項の詳細は、図6を参照して後述する。
【0036】
ここで、図2に示した構造は、図1(A)に示す固定板20に関しても同様である。即ち、図1(A)を参照して、固定板20の内側の面にはPDICが固着されており、このPDICと回路基板46とはフレキシブル配線基板を経由して電気的に接続されている。
【0037】
図3を参照して、フレキシブル配線基板38を経由してPDIC50が接続される構造を更に説明する。図3(A)はPDIC50が固着される箇所を側方から見た断面図であり、図3(B)はその箇所を上方から見た図である。
【0038】
図3(A)を参照して、フレキシブル配線基板38の第1接続部39に接続されたPDIC50は、固定板18の表面に固定されている。そして、この固定板18の端部が、ハウジング12の一部である支持部54に接着材で固着されることで、ハウジング12の所定箇所にPDIC50が配置される。
【0039】
一方、フレキシブル配線基板の他の端部である第2接続部41の裏面に設けられたパッドは、回路基板46の上面に設けられた導電パターンと接続されている。また、第1接続部39と第2接続部41との間の配線部43には180度折り返される曲折部45が含まれている。従って、フレキシブル配線基板38の全体として長くなり、PDIC50の位置調整行う際の自由度が向上する。
【0040】
PDIC50と回路基板46とを接続する構造として、PDIC50と接続されるフレキシブル配線基板38をそのまま下方に引き出す構造もある。しかしながら、この構造であると、フレキシブル配線基板38の第1接続部39と第2接続部41との間で変形可能な配線部43が短くなり、PDIC50の位置を調整する際の自由度が阻害されてしまう。
【0041】
ハウジング12に配線部43が接触する部分には、側面部36を部分的に外側に突起させた突起部42が設けられている。この突起部42は、配線部43の中間部分に接触している。図3(B)を参照すると、フレキシブル配線基板38に備えられる2つの配線部43A、43Bに対応して、2つの突起部42が設けられている。
【0042】
更に、図3(B)に示すように、上方から見た突起部42の形状は例えば断面が半円形状であり、突起部42の先端部のみが配線部43A、43Bに接触する。このことにより、両者が接触する面積が小さくなり、摩擦抵抗が小さくなる。従って、製造工程時に於いて、PDIC50の位置調整を行う際、配線部43が移動しても、突起部42と配線部43との間に発生する摩擦抵抗によりこの移動が阻害されることがない。更には、この摩擦抵抗により、PDIC50とフレキシブル配線基板38との接続箇所または、フレキシブル配線基板38と回路基板46との接続箇所が破壊される恐れもない。
【0043】
また、図3(A)を参照して、側面部36の上端付近を内側に窪ませて凹状部40が形成されている。この凹状部40は、ハウジング12の他の側面部36よりも内側に窪むように形成されている。
【0044】
そして、フレキシブル配線基板38の曲折部45の一部分は、この凹状部40に収納されている。このようにすることで、曲折部45にてフレキシブル配線基板38が曲折される度合いが小さくなる(即ち曲率半径が大きく成る)。このことにより、先ず、曲折部45にてフレキシブル配線基板38に作用する曲げ応力が小さくなるので、フレキシブル配線基板38の表面に形成された導電パターンの断線が防止される。更に、フレキシブル配線基板38の第1接続部39とPDIC50との接続部に作用するストレスも小さくなる。更には、曲折部45にて発生する反発力が小さくなるので、固定板18と支持部54との接続箇所に与えられるストレスも小さくなり、固定板18の支持部54からの離脱も抑制される。
【0045】
更に図3(B)を参照して、PDIC50が面するハウジング12の側面部36には開口部44が設けられており、この開口部44を経由してレーザー光がPDIC50に照射される。
【0046】
図4を参照して、PDICが配置される部分のハウジング12の形状を更に説明する。図4(A)は該当箇所のハウジング12を部分的に示す斜視図であり、図4(B)はこの部分のハウジング12を上方から見た図であり、図4(B)は突起部42の他の形態を示す斜視図である。
【0047】
図4(A)および図4(B)を参照して、ハウジング12の側面部36には、PDICで受光されるレーザー光を通過させるための開口部44が設けられている。そして、開口部44の両側に突起部42が設けられている。図4(B)を参照すると、突起部42の断面は半円形状を呈している。この形状を具体的に説明すると、半分に切断された円柱を側面部36に取り付けた構造である。
【0048】
このようにすることで、フレキシブル配線基板と突起部42とが線で接触するように成り、両者の間に発生する摩擦抵抗が低減される。なお、突起部42の断面形状としては三角形形状の多角形形状や楕円形状が採用されても良い。
【0049】
ここで、図4(B)に示すように、突起部34の頂部が開口部を持つハウジングの表面よりも低く成っているので、この摩擦抵抗が低くなっている。この頂部の長さを調節することにより、摩擦抵抗をコントロールすることが可能となる。
【0050】
図4(C)を参照すると、側面部36の縦方向に沿って複数個の突起部42が設けられている。ここでは、半球状を呈した2つの突起部42が縦方向に2つ設けられている。このようにすることで、各突起部42が点でフレキシブル配線基板と接触するので、両者の間に発生する摩擦抵抗が更に小さくなる。ここで、突起部42の形状は半円状以外でもよく、例えば四角錐等の錐形状でも良い。
【0051】
次に、図5を参照して、光ピックアップ装置10のハウジングに収納される光学素子を説明する。先ず、光ピックアップ装置10は、BD規格のレーザー光の光路である第1光学系80と、DVD規格およびCD規格のレーザー光の光路である第2光学系82を含む。尚、光ピックアップ装置10に備えられる光学系は必ずしも2つである必要はなく、1つの光学系をこれら3つの規格で共用しても良い。
【0052】
BD規格の第1光学系80は、レーザー装置58と、回折格子56と、ハーフミラー22と、コリメートレンズ60と、立ち上げミラー62と、対物レンズ52と、AS板73と、PDIC50とを含んでいる。
【0053】
レーザー装置58は、BD規格のディスク64に照射されるレーザー光を放射する発光素子をパッケージ化したものである。ここで、レーザー装置58は、所謂CANタイプのパッケージでも良いし、リードフレーム型のパッケージでも良い。
【0054】
回折格子56は、レーザー装置58から放射されるレーザー光を0次回折光、+1次回折光及び−1次回折光に分離する機能を有する。
【0055】
ハーフミラー22は、レーザー装置58から放射されて回折格子56を経由するレーザー光を反射する一方、ディスク64により反射されたレーザー光(戻り光)を透過させる。
【0056】
コリメートレンズ60は、ハーフミラー22にて反射されたレーザー光を平行光にする。更に、コリメートレンズ60は光軸に沿っての変位を可能に設けられている。この様にすることで、温度変化に基づく対物レンズ52の光学特性の劣化が補正可能となる。
【0057】
立ち上げミラー62は、コリメートレンズ60を透過したレーザー光が入射され、入射されたレーザー光が、ディスク64の情報記録層に対して直角に進行するように反射する働きを有する。
【0058】
対物レンズ52は、立ち上げミラー33の直上に配置されており、立ち上げミラー62にて立ち上げられたレーザー光を、ディスク64の信号記録層に合焦させる働きを有する。
【0059】
AS板73は、ディスク64にて反射されて各光学素子を通過したレーザー光に対して、サーボ機構のための収差を付与する。
【0060】
PDIC50は、光検出器として機能する信号検出用のフォトダイオード集積回路素子が内蔵されており、BD用のレーザー光を受光して情報信号成分を含む受光出力を発生すると共に、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボに用いられるサーボ信号成分を発生する。
【0061】
上記第1光学系80の読み出し動作および書き込み動作は次のとおりである。先ず、レーザー装置58から放射されたレーザー光は、回折格子56を通過することで0次回折光、+1次回折光および−1次回折光に分離される。これは、PDIC50にてフォーカスサーボおよびトラッキングサーボを行うためのサーボ信号を得るためである。
【0062】
その後、レーザー光は、ハーフミラー22にて反射された後に、コリメートレンズ60により平行光に変換され、立ち上げミラー62で反射されることによりディスク64に対して垂直方向に進行する。そして、対物レンズ52の屈折作用や回折作用により、ディスク64の信号記録層に合焦する。
【0063】
ディスク64の信号記録層により反射されたレーザー光(戻り光)は、対物レンズ52、立ち上げミラー62、コリメートレンズ60を通過してハーフミラー22に到る。
【0064】
ハーフミラー22を透過したレーザー光は、AS板73で収差が付与され、PDIC50に到達する。更に、PDIC50で情報が読み出されると共に、読み出された情報に基づいてフォーカスサーボおよびトラッキングサーボが行われる。
【0065】
次に、DVD規格およびCD規格のディスクに適用される第2光学系82を説明する。第2光学系82の第1光学系80と共通する部分はその説明を割愛する。
【0066】
第2光学系82は、レーザー装置78と、ハーフミラー70と、コリメートレンズ72と、立ち上げミラー33と、対物レンズ66と、PDIC74とを含んでいる。
【0067】
第2光学系82と第1光学系80との相違点は、第2光学系82が回折格子およびAS板を含まない点になる。従って、第1光学系80では回折格子56により回折される3つのレーザー光を用いてサーボ機構が駆動される一方、第2光学系82ではレーザー装置78から放射される1つのメインビームのみを用いてサーボ機構が駆動される。更に、サーボ機構の為に必要とされる収差は、第1光学系80ではAS板73により付与され、第2光学系82では光路に対して傾斜して配置されたハーフミラー70により付与される。
【0068】
第2光学系82に於けるディスク64の読み出し動作および書き込み動作は次の通りである。先ず、レーザー装置78からはCD規格またはDVD規格のレーザー光が放射される。レーザー装置78から放射されたレーザー光は、ハーフミラー70で反射された後に、コリメートレンズ72で平行光に変換される。その後、立ち上げミラー33でディスク64の情報記録層に対して垂直な方向に反射され、対物レンズ66によりディスク64の情報記録層に合焦される。
【0069】
ディスク64の情報記録層にて反射した戻り光であるレーザー光は、対物レンズ66を通過した後に立ち上げミラー33で反射され、コリメートレンズ72およびハーフミラー70を透過してPDIC74の受光面に照射される。PDIC74で情報が読み出されるとともに、読み出された情報に基づいてフォーカスサーボおよびトラッキングサーボが行われる。
【0070】
<第2の形態:光ピックアップ装置の製造方法>
次に、本形態の光ピックアップ装置10の製造方法を説明する。本発明の光ピックアップ装置10は、先ず、樹脂材料を一体成型したハウジング12(図1参照)の内部に複数個の光学素子を固着する。更に、所定のパターンが形成された回路基板46をハウジング12の主面に固定し、その後にフレキシブル配線基板を経由して、発光素子および受光素子を回路基板46と接続する。更に、ハウジング12の上面に、対物レンズを移動可能な状態で支持するアクチュエータを固定する。
【0071】
ここで、絶縁性接着材を用いて各種光学素子をハウジングに固着すると、この固着工程により数十μm程度の実装誤差が発生する。そして、この実装誤差をそのままの状態にしておくと、PDIC(受光素子)の所定箇所にレーザー光が照射されなくなり、光ピックアップ装置による読取動作および書込動作が不安定になる。
【0072】
これを防止するために、各種光学素子の固着が終了した後に、PDIC50の位置を所定箇所に補正している。具体的には、図1を参照して、レーザー装置等の各種光学素子をハウジング12に組み込んだ後に、レーザー装置からレーザー光を放射させつつ、内面にPDICが固着された固定板18、20を所定箇所に移動させる。その後、接着材を介して固定板18、20をハウジング12に固着する。このようにすることで、各種光学素子をハウジング12に固着する際に発生する実装誤差が、固定板18、20の位置調整により吸収され、固定板18、20に固着されたPDICの所定領域に、レーザー光が照射される。
【0073】
図6を参照して、PDIC50の位置を調整する工程を詳述する。本工程では、先ず、PDIC50が固着された固定板18の主面を、吸引力を備えたコレット47で吸着する。次に、ハウジング12に内蔵されたレーザー装置58(図5)からレーザー光を発行させ、このレーザー光がPDIC50の所定の領域に照射されるように、コレット47の位置を調整する。この位置調整は、X方向、Y方向およびZ方向に対して行われる。
【0074】
PDIC50の位置調整は、フレキシブル配線基板38を経由してPDIC50を回路基板46に電気的に接続した後に行われる。また、この調整工程におけるPDIC50の移動をスムーズにするために、フレキシブル配線基板38の途中には180度曲折される曲折部45が含まれている。従って、本工程ではフレキシブル配線基板38の途中部分である配線部43が、ハウジング12の側面部36に押し付けられた状態で、上記調整が行われている。このことから、配線部43が側面部36に押し付けられることにより発生する摩擦抵抗や反発力が本工程の調整に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0075】
本形態では、フレキシブル配線基板38の配線部43が接触する側面部36に、突起部42を設けている。このようにすることで、突起部42の先端のみが配線部43の表面と接触するように成り、両者が接触する面積が小さくなり、結果的に摩擦抵抗が小さくなる。従って、PDIC50の位置を調整するために、コレット47で固定板18を移動させても、この移動に伴いフレキシブル配線基板38の配線部43もスムーズに移動可能となる。
【0076】
更にまた、ハウジング12の側面部36の上端部付近は凹状部40となっており、他の領域よりも内側(紙面上にて左側)に窪む形状を呈している。このことにより、フレキシブル配線基板38の曲折部45の一部が凹状部40に収納されて、曲折部45でのフレキシブル配線基板38の曲折の程度が緩和される。従って、フレキシブル配線基板38を曲折することにより発生する反発力が小さくなり、コレット47による固定板18(PDIC50)の位置調整が確実に行われる。
【0077】
コレット47により固定板18の位置調整を行うことで、PDIC50の所定位置にレーザー光が照射されたら、絶縁性接着材により固定板18をハウジングの支持部54(図3(A)参照)に固着する。
【0078】
図1(A)を参照して、上記した調整工程は、固定板20に固着されたPDICに対しても行われる。
【0079】
上記工程が終了したら、ハウジングに内蔵されたハーフミラー等の光学素子の位置を確認する工程等を経て、図1に示す光ピックアップ装置10が製造される。
【0080】
ここで、図1(A)に示すハウジング12のガイド孔14およびガイド溝16に、ガイド軸を挿通または係合させ、このガイド軸の両端部を枠状のシャーシで支持することにより、光ピックアップ支持装置が構成される。更に、このような構成の光ピックアップ支持装置を、筐体に内蔵させることにより光ディスク装置が構成される。
【符号の説明】
【0081】
10 光ピックアップ装置
12 ハウジング
14 ガイド孔
16 ガイド溝
18 固定板
20 固定板
22 ハーフミラー
24 開口部
26 開口部
33 立ち上げミラー
34 底面部
36 側面部
38 フレキシブル配線基板
39 第1接続部
40 凹状部
41 第2接続部
42 突起部
43、43A、43B 配線部
44 開口部
45 曲折部
46 回路基板
47 コレット
48 開口部
50 PDIC
52 対物レンズ
54 支持部
56 回折格子
58 レーザー装置
60 コリメートレンズ
62 立ち上げミラー
64 ディスク
66 対物レンズ
70 ハーフミラー
72 コリメートレンズ
73 AS板
74 PDIC
78 レーザー装置
80 第1光学系
82 第2光学系


【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録媒体にレーザー光を放射し、前記情報記録媒体で反射した前記レーザー光を検出する光ピックアップ装置であり、
内部の所定位置に受光素子が収納されるハウジングと、
前記ハウジングの主面に配置されて前記受光素子と電気的に接続された導電パターンが形成された回路基板と、
前記ハウジングに面する側の主面に前記受光素子が固着された固定板と、
前記受光素子と前記回路基板とを接続する可撓性配線基板と、を備え、
前記可撓性配線基板は、前記受光素子と接続される第1接続部と、前記回路基板と接続される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間に配置された配線部と、前記配線部を180度折り返す曲折部を有し、
前記受光素子が設けられた箇所の前記ハウジングを外側に突起させた突起部を設け、前記突起部を前記可撓性配線基板の前記配線部に接触させることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記可撓性配線基板の前記曲折部に面する前記ハウジングの一部分を窪ませて凹状部とし、前記凹状部に前記曲折部の一部を収納することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記可撓性配線基板の前記配線部は、前記可撓性配線基板の短手方向の一端に配置された第1配線部と、前記可撓性配線基板の短手方向の他端に配置された第2配線部とを含み、
前記ハウジングの側面に設けられる前記突起部は、前記第1配線部に接触する第1突起部と、前記第2配線部に接触する第2突起部とを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記突起部は、前記可撓性配線基板に沿って、前記ハウジングの側面に連続的に設けられることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記突起部は、前記ハウジングの側面に離散的に設けられることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
情報記録媒体にレーザー光を放射し、前記情報記録媒体で反射した前記レーザー光を検出する光ピックアップ装置の製造方法であり、
底面部と側面部とを有するハウジングに受光素子を収納する工程と、
前記ハウジングの主面に前記受光素子と電気的に接続される導電パターンが設けられた回路基板を配置する工程と、
固定板に固定された受光素子と前記回路基板とを可撓性配線基板で電気的に接続する工程と、
前記ハウジングに内蔵された発光素子からレーザー光を照射させつつ、前記受光素子の所定領域に前記レーザー光が照射されるように、前記固定板の位置を調整する工程と、を備え、
前記可撓性配線基板は、前記受光素子と接続される第1接続部と、前記回路基板と接続される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間に配置された配線部と、前記配線部を180度折り返す曲折部を有し、
前記固定板の位置を調整する工程では、前記ハウジングを外側に突起させた突起部に、前記可撓性配線基板の前記配線部を接触させつつ、前記固定板を移動させることを特徴とする光ピックアップ装置の製造方法。
【請求項7】
前記可撓性配線基板の前記曲折部に面する前記ハウジングの一部分を窪ませて凹状部が設けられ、
前記固定板の位置を調整する工程では、前記凹状部に前記可撓性配線基板の前記曲折部の一部を収納させつつ、前記調整を行うことを特徴とする請求項6に記載の光ピックアップ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−248937(P2011−248937A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118323(P2010−118323)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】