説明

光ピックアップ装置

【課題】半導体レーザをレーザホルダ内に精度良く位置決め搭載し、同時に半導体レーザの放熱性能を向上させる。
【解決手段】レーザホルダ内に半導体レーザと一緒に保持されるとともに半導体レーザをレーザホルダ内の内壁に密着させる押さえ部材は、半導体レーザの底面方向と側面方向の直交する2方向に対して押圧する板バネ形状を有しており、押さえ部材を半導体レーザの開放面である上面側に設置することで達成される。また、半導体レーザを底面方向に押圧する押さえ部材の板バネ部は、半導体レーザに接する面の方がレーザホルダに接する面よりも大きくするとさらに良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザから発したレーザ光を用いて、光ディスクの記録面上に記録された情報を再生あるいは情報を記録するための光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクの記録面上に記録された信号を、レーザ光を用いて読み取りあるいは書き込みを行う光ピックアップ装置の光源である半導体レーザは、金属製の円形形状のものと、樹脂材料を用いたフレーム形状のものとがある。
【0003】
フレーム形状の半導体レーザは、金属のリードフレームに樹脂モールド加工を行って樹脂の壁で半導体レーザ素子を囲うように構成したものである。金属製の円形形状のものと比べて放熱性能にやや劣るが、コスト的に有利であることと、薄型の光ピックアップ装置に適することで、近年はフレーム形状のものが増えてきている。
【0004】
フレーム形状の半導体レーザを使用する場合、半導体レーザ素子が露出していることもあり、組立て時の取扱い易さや異物混入の防止及び放熱性の改善を目的に、半導体レーザをレーザホルダ内に実装し、このレーザホルダを光ピックアップ装置の筐体に取付けて構成する方式が広く使われている。
【0005】
しかし、上記フレーム形状の半導体レーザをレーザホルダの内部に固定するときに、半導体レーザに浮きや傾きが生じるとレーザホルダとの密着性が悪くなり放熱性が悪化してしまう課題が発生する。特に、書き込みを行う光ピックアップ装置の場合、高出力の半導体レーザを使用するため、放熱性が悪化して半導体レーザ素子の温度が上がり過ぎるとレーザ出力が低下し光ディスクへの書き込み特性が劣化することになる。したがって、放熱を確りと行えるように浮きや傾きのない半導体レーザの取付けが重要となる。
【0006】
また、レーザホルダの内部で半導体レーザの取付け位置がばらつくと、レーザホルダを光ピックアップ装置の筐体に取付けるときに不要な調整を行わなければならなくなる、という課題が生じる。つまり、半導体レーザから発するレーザ光は、その光軸を筐体に取付けてある光学部品の光軸と一致させるように調整する必要があるが、この位置調整の時間が大幅に増えることになる。さらに、半導体レーザの取付け位置がばらつくことで、レーザホルダと筐体のすき間が狭くなり過ぎたり、広くなり過ぎたりすることが起き、すき間が広くなり過ぎた場合には、半導体レーザの放熱が筐体に伝わり難くなるため、放熱性が悪化するという課題も生じることになる。さらに、青色と赤色の2つの半導体レーザを搭載した光ピックアップ装置の場合、青色系と赤色系の2つの光学系が独立配置で構成されており、筐体内に取付ける光学部品が近接した状態になっている。必然的に個々の部品の調整範囲を大きく確保できなくなるため、調整できずに組立てに不具合を起こす場合もある。このため、半導体レーザの取付けばらつきを低減した精度の高い取付けが望まれている。
【0007】
これらのような課題を解決するために、レーザホルダの内部にフレーム形状のレーザユニット(半導体レーザ)と一緒に押さえ部材を挿入し、この押さえ部材の押圧によってレーザユニットをレーザホルダ内部の一定方向へ押し付けるようにした構成のレーザユニット取付装置(下記特許文献1に示す例)が知られている。 また、同様に、金属製の円形形状の半導体レーザを押さえ板を使って取付台の一定方向へ押し付けるようにした構成の光ピックアップ(下記特許文献2に示す例)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−27376号公報(第1図)
【特許文献2】特開2008−186561号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術では、例えば特許文献1に示す例では、レーザユニットをレンズホルダの内壁に押し付ける押さえ部材はレーザユニットの下面、すなわちレーザチップが取付けられたリードフレームの実装面と反対側の面に配置されており、レーザユニットを底面側から上側に押し上げるように第1及び第2の押圧部によってレーザホルダに取付けた構成である。
【0010】
このような構成の場合、レーザチップの放熱は、リードフレームのレーザチップの実装面と反対側の面、つまりレーザチップから見て最短距離となるレーザチップ直下から放熱するのではなく、レーザチップから遠方のリードフレームの拡張部からとなる。このため、レーザチップの放熱が効率的であるとはいえず、温度上昇によるレーザ出力低下が起きて光ディスクへの書き込み特性が不安定になる場合が生じることとなる。
【0011】
また、第2の押圧部はリードフレーム拡張部の角を斜め方向に押圧し、垂直方向に押圧する第1の押圧部による作用と合わせて、レーザユニットを略水平方向と略垂直方向の力でレーザホルダ内壁の一方向に押し付ける構成としている。しなしながら、斜め方向に押圧する第2の押圧部の形状ばらつきや組立てばらつきによっては、水平方向へ伝える力が十分に働かないことが生じる。つまり、斜め方向に押圧する構成では、レーザユニットの位置決めを確実に行うことに対してやや不十分な構成といえる。
【0012】
一方、上記従来技術である例えば特許文献2に示す例では、発光素子の円形鍔形部を取付台の段差状円形凹入部に嵌合し、押さえ板を取付け台にビス止めすることで、発光素子の鍔形部を押さえ板の第1押圧部と第2押圧部によって円形凹入部の内周面の周方向1箇所に押し付ける構成である。
【0013】
このような構成の場合、取付台が樹脂成型体であるときは、発光素子の放熱は取付台に伝わり難くなるため、押さえ板に放熱経路を確保することになるが、発光素子と接触する押さえ板は第1及び第2の押圧部のみの一部分だけである。このため、発光素子の放熱は押さえ板に十分に伝わらず温度上昇を引き起こすことになり、レーザ出力低下による光ディスクへの書き込み特性を不安定にさせることとなる。
【0014】
また、第1の押圧部によって発光素子の鍔形部を円形凹入部の1箇所に押し付ける構成であるが、円形形状の発光素子の位置決めであるため、回転ずれも考慮しなければならない。しかしながら、上記特許文献2に示す従来技術には回転方向に関する位置決めの記載はなく、発光素子の位置決めを確実に行う上では不十分な構成といえる。
【0015】
本発明の目的は、半導体レーザをレーザホルダ内に精度良く位置決め搭載でき、同時に半導体レーザの放熱性能を向上させた光ピックアップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、半導体レーザと、この半導体レーザを内部に保持するレーザホルダと、このレーザホルダ内部に半導体レーザと一緒に保持されるとともに、半導体レーザをレーザホルダ内の内壁に密着させる押さえ部材とを備えた光ピックアップ装置であって、上記押さえ部材は、半導体レーザの底面方向と側面方向の直交する2方向に対して押圧する板バネ形状を有し、上記押さえ部材が半導体レーザの開放面である上面側に設置することで達成される。
【0017】
また、上記半導体レーザを底面方向に押圧する上記押さえ部材の板バネ部は、上記半導体レーザに接する面の方が、上記レーザホルダに接する面よりも大きくするとさらに良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、押さえ部材の2つの板バネを直交する位置関係で形成し、半導体レーザを底面方向と側面方向の直交する2方向へ、つまり板バネによって押圧される方向と同じ方向に押圧することで、半導体レーザをレーザホルダの内壁側面へ押し付け、かつ半導体レーザの底面をレーザホルダ内の内壁底面へ押し付けることができ、半導体レーザをレーザホルダ内に精度良く位置決め搭載できると同時に半導体レーザの放熱をレーザホルダに最短距離で伝えることができる放熱性能の高い光ピックアップ装置を提供できる。
【0019】
また、押さえ部材の半導体レーザ押し付け面を大きくし、半導体レーザ素子の開放面を覆うように押さえ部材を取付けることで、外部からの異物混入を防ぐことができ、異物によってレーザ光路が遮られるような弊害を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例を示す半導体レーザ取付け構成の展開斜視図。
【図2】半導体レーザをレーザホルダ内部に設置した一部断面斜視図。
【図3】レーザホルダ内に半導体レーザと押さえ部材を設置した外観斜視図。
【図4】図3に示した縦断面斜視図。
【図5】図3に示したレーザホルダ底面側の一部断面斜視図。
【図6】光ピックアップの構成を示した上面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は本発明の実施例を示す半導体レーザ取付け構成を表す展開斜視図である。
【0023】
半導体レーザ100は、樹脂材料を用いたフレーム形状のもので、金属のリードフレーム3に樹脂モールド加工によって樹脂モールド枠4が形成されており、この樹脂モールド枠4の中央にサブマウント2を介して半導体発光素子であるレーザダイオード1が搭載されている。サブマウント2はセラミックス系の材料、リードフレーム3は表面に金属メッキを施した銅系の材料である。
【0024】
レーザダイオード1のレーザ出射方向及び上面側は、樹脂モールド枠4の形成がない開放面となっている。半導体レーザ100の底面側には樹脂モール枠4が回り込んで構成されており、リードフレーム3の底面と同一面となるようにほぼ凹凸のない形状に形成されている。半導体レーザ100の後方からはリード端子5が3本取出されており、中央のリード端子がリードフレーム3と直結しているアース端子である。
【0025】
レーザホルダ6は、半導体レーザ100と押さえ部材12を挿入するように半導体レーザ取付け孔7が形成されており、この取付け孔7の前方にはレーザダイオード1のレーザ光が通過する貫通孔8が形成されている。このレーザホルダ6の取付け孔7の内壁底面11に半導体レーザ100の底面15が接するように挿入される。また、レーザホルダ6の上側には押さえ部材12の上側押圧部13を位置決めするガイド溝9と、底面11には押さえ部材12の側面押圧部14がレーザホルダ6の底面11と干渉しないように逃げ溝10が形成されている。この逃げ溝10を形成することで、半導体レーザ100の上面を押さえ部材12の半導体レーザ押し付け面16で確りと押さえ付けることができる。なお、ここで使用しているレーザホルダ6の材料は亜鉛ダイカスト材である。
【0026】
押さえ部材12は、板金による打ち抜き加工によって一体に形成されており、上側押圧部13と側面押圧部14の2つの板バネ形状を備えている。上側押圧部13はレーザホルダ6と接するように半導体レーザ100が設置される側と反対側に、側面押圧部14は半導体レーザ100と接するようにそれぞれが折り返されて形成されている。押さえ部材12の上側押圧部13側は、半導体レーザ100の上面側開放面を覆い被せるように凹凸のない大きな平面を持った押し付け面16に形成され、同時に側面押圧部14側は、レーザホルダ6の内壁と面接触するように凹凸のない平面の内壁接触面17に形成されている。押さえ部材12はバネ性を持ったリン青銅あるいはステンレス材料で構成されている。
【0027】
図2及び図3は、レーザホルダ6の内部に半導体レーザ100を設置した一部断面の斜視図と半導体レーザ100と押さえ部材12を設置した外観斜視図である。半導体レーザ100はレーザホルダ6の取付け孔7(図1参照)に挿入され、半導体レーザ100の前方がレーザホルダ6に突き当たって接するように取付けられる。ここで、押さえ部材12の挿入を容易に行えるようにするため、レーザホルダ6の底面11に施した逃げ溝10側の内壁と対向する内壁側にあらかじめ半導体レーザ100を片寄せして取付けている。この状態で押さえ部材12の上側押圧部13をレーザホルダ6上側のガイド溝9に沿わせ、かつ半導体レーザ100の樹脂モールド枠4の上面に押し付け面16を載せて、滑り入れるように押さえ部材12をレーザホルダ6に挿入することで、押さえ部材12の挿入を容易に行うことができる。
【0028】
図4は、図3に示した半導体レーザ100の3本のリード端子5のうち、手前と中央のリード端子5の間の縦断面を示したものである。また、図5は、同じく図3に示したレーザホルダ6の内壁底面11で切断した断面図を下側から示したものである。半導体レーザ100は、押さえ部材12の上側押圧部13のバネ作用によって、半導体レーザ100の底面15がレーザホルダ6の内壁底面11に密着するように押し付けられ、また、押さえ部材12の側面押圧部14のバネ作用によって、側面押圧部14側の内壁と反対側の対向する内壁に押し付けられて設置されている。
【0029】
図6は、青色半導体レーザ101と赤系半導体レーザ100を備えた光ピックアップ200の構成を示した上面図で、青色用対物レンズ21と赤色用対物レンズ22の2つの対物レンズが、光ピックアップ200の可動方向と同じRadial方向に配列されたものである。光ピックアップ200は、2つの対物レンズをそれぞれ駆動する対物レンズ駆動部23を有する。光学系の構成は、青色系と赤色系の光学部品を独立配置したものである。赤色系の半導体レーザ100は、本実施例で示したフレーム形状のものである。
【0030】
赤色系の光学系を簡単に説明すると、半導体レーザ100から発したレーザ光は、回折格子24を通過し、反射ミラー25で反射されてコリメートレンズ26及び対物レンズ22に導かれる。対物レンズ22から出射したレーザ光は、光ディスク(図示せず)の情報記録面上に投射され、この記録面上から反射される。反射したレーザ光は、行きと同じ光路を通って対物レンズ22,コリメートレンズ26,反射ミラー25を透過し、検出レンズ27を通って光検出素子28に導かれる光学系構成となっている。青色系の光学系も同様に、青色系の半導体レーザ101から発したレーザ光が、プリズム29を通過し、回折格子30,コリメートレンズ31を介して対物レンズ21に導かれ、光ディスク(図示せず)の情報記録面上に投射される。光ディスクからの反射レーザ光は、行きと同じ光路を通って対物レンズ21,コリメートレンズ31,回折格子30,プリズム29を通過して戻り、光検出素子32に導かれる光学系構成となっている。赤色系及び青色系の光学部品を独立配置した光学系の光ピックアップ装置200の場合、半導体レーザ100,101や光検出素子28,32及び各種光学部品が光ピックアップ筐体20内に配置されるため、個々の部品が近接した状態で配置されることとなる。よって、個々の部品の取付け調整の範囲が十分に確保できなくなり、取付け精度の向上が重要となってくる。
【0031】
本実施例で示した半導体レーザ100の取付け構造では、半導体レーザ100をレーザホルダ6に精度良く位置決め搭載できるため、レーザホルダ6と光ピックアップ筐体20の調整範囲を最小限必要な量だけ確保しておくことで足りるため、個々の光学部品の搭載精度も最小限必要な量を確保しておけば良い。したがって、多数の部品が近接した状態で配置される光学系の構成であっても、位置決め調整の範囲を適正にした光ピックアップを実現することができる。
【0032】
以上のように、本実施例によれば、押さえ部材12の2つの押圧部13,14を直交する位置関係で形成し、半導体レーザ100を底面15方向と側面方向の直交する2方向へ、つまり押圧部13,14の板バネによって押圧される方向と同じ方向に押圧することで、半導体レーザ100をレーザホルダ6の内壁側面へ押し付け、かつ半導体レーザ100の底面15をレーザホルダ6の内壁底面11へ押し付けることができ、半導体レーザ100をレーザホルダ6内に精度良く位置決め搭載でき、同時に半導体レーザ100の放熱をレーザホルダ6に最短距離で伝えることができる放熱性能の高い光ピックアップ装置200を得ることができる。
【0033】
また、押さえ部材12の半導体レーザ押し付け面16を大きくし、レーザダイオード1の開放面を覆うように押さえ部材6を取付けることで、外部からの異物混入を防ぐことができ、異物によってレーザ光路が遮られるような弊害を排除することができる。
【0034】
また、本発明の実施例では、押さえ部材12の側面押圧部14を半導体レーザ100と接するように折り返して形成したものであるが、折り返しを反転させて押圧部14をレーザホルダ6の内壁に接するように構成した場合でも、内壁接触面17の折り曲げ位置を適正化することによって同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 レーザダイオード(半導体発光素子)
2 サブマウント
3 リードフレーム
4 樹脂モールド枠
5 リード端子
6 レーザホルダ
7 半導体レーザ取付け孔
8 貫通孔
9 ガイド溝
10 側面バネ板逃げ溝
11 レーザホルダ内壁底面
12 押さえ部材
13 上側押圧部
14 側面押圧部
15 半導体レーザ底面
16 半導体レーザ押し付け面
17 レーザホルダ内壁接触面
20 光ピックアップ筐体
21 対物レンズ(青色用)
22 対物レンズ(赤色用)
23 対物レンズ駆動部
24 回折格子
25 反射ミラー
26 コリメートレンズ
27 検出レンズ
28 光検出素子
29 プリズム
30 回折格子
31 コリメートレンズ
32 光検出素子
100 半導体レーザ(赤色)
101 半導体レーザ(青色)
200 光ピックアップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザと、この半導体レーザを内部に保持するレーザホルダと、このレーザホルダ内部に半導体レーザと一緒に保持されるとともに、半導体レーザをレーザホルダ内の内壁に密着させる押さえ部材とを備えた光ピックアップ装置であって、上記押さえ部材は、半導体レーザの底面方向と側面方向の直交する2方向に対して押圧する板バネ形状を有し、上記押さえ部材が半導体レーザの開放面である上面側に設置されたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ピックアップ装置において、上記半導体レーザを底面方向に押圧する上記押さえ部材の板バネ部は、上記半導体レーザに接する面の方が、上記レーザホルダに接する面よりも大きいことを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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