説明

光ピックアップ装置

【課題】放熱効果をより向上させ得る光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】光ピックアップ装置は、半導体レーザ101と、半導体レーザ101を保持する熱伝導性を有するレーザ保持部材401と、半導体レーザ201と、半導体レーザ201を保持する熱伝導性を有する第2のレーザ保持部材402と、半導体レーザ101、201と、レーザ保持部材401、402とを収容するハウジング10と、ハウジング10を覆うとともにレーザ保持部材401、402に熱的に接続される熱伝導性を有するカバー20と、を有する。レーザ保持部材401、402と案内シャフト113a両端との間に放熱樹脂501、502が配される。これにより、レーザ保持部材401、402の間に、カバー20とは別の熱の伝導経路が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に関するものであり、特に、異なる種類のディスクに対応可能な光ピックアップ装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ピックアップ装置には、記録密度を向上させるため、波長405nm程度の青紫色レーザ光源が実用化されている。青紫色レーザ光源の動作電圧は、DVDおよびCD用のレーザ光源の動作電圧よりも数段高い。他方、動作電圧に比例して、レーザ光源の発熱量が大きくなる。このため、青紫色レーザ光源の発熱はかなり大きくなる。
【0003】
レーザ光源の温度上昇が大きくなると、レーザ光の波長が変動し、光ディスクへの記録・再生動作が不安定になる惧れがある。また、レーザ光源周辺の光学部品にも熱による影響が生じ得る。光ピックアップ装置内に青紫色のレーザ光源とともにDVD用およびCD用のレーザ光源が配されている場合には、光ピックアップ装置内の温度上昇がより顕著となる。このため、これらレーザ光源からの熱を効果的に放熱する手段が必要となる。
【0004】
以下の特許文献1には、レーザ光源を保持するレーザホルダと放熱板との間に放熱グリスを介在させることで放熱効果を高めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−86345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ホルダと放熱板との間に放熱グリスを介在させたとしても、放熱面積が増えるわけでもなく、放熱効果としてはいまだ不十分である。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みて為されたものであり、放熱効果をより向上させ得る光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光ピックアップ装置は、第1のレーザ光源と、前記第1のレーザ光源を保持する熱伝導性を有する第1のレーザ保持部材と、第2のレーザ光源と、前記第2のレーザ光源を保持する熱伝導性を有する第2のレーザ保持部材と、前記第1のレーザ光源と、前記第1のレーザ保持部材と、前記第2のレーザ光源と、前記第2のレーザ保持部材とを収容するハウジングと、前記ハウジングを覆うとともに前記第1のレーザ保持部材および前記第2のレーザ保持部材に熱的に接続される熱伝導性を有するカバーと、前記第1のレーザ保持部材と前記第2のレーザ保持部材との間に、前記カバーとは別の熱の伝導経路を構成する熱伝導部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放熱効果をより向上させ得る光ピックアップ装置を提供することができる。
【0010】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施する際の一つの例示であって、
本発明は、以下の実施の形態によって何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図2】実施の形態に係るレーザ保持部材と半導体レーザの構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る光ピックアップ装置の光学系の裏面図である。
【図4】実施の形態に係る光ピックアップ装置に放熱樹脂を用いた箇所の図である。
【図5】実施の形態に係る光ピックアップ装置の熱伝導経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。本実施の形態は、BDとCD(compactDisc)およびDVD(Digital versatile Disc)に対して記録再生を行う光
ピックアップ装置に本発明を適用したものである。
【0013】
図1は、実施の形態に係る光ピックアップ装置の光学系を示す。図1(a)は、光学系の上面図、図1(b)は、対物レンズアクチュエータ周辺部分を側面側から見た一部透視図である。この光学系は、BD用の光学系とCD/DVD用の光学系に区分される。
【0014】
BD用の光学系は、半導体レーザ101と、1/2波長板102と、偏光ビームスプリッタ103と、コリメータレンズ104と、立ち上げミラー105と、1/4波長板106と、BD対物レンズ107と、アナモレンズ108と、光検出器109と、フロントモニタ110とから構成されている。また、コリメータレンズ104を駆動するための構成として、レンズ保持部材111と、シャフト保持部材112a〜112dと、案内シャフト113a、113bと、モータ114と、ギア115からなるレンズアクチュエータ100が配されている。
【0015】
半導体レーザ101は、波長400nm程度の青色レーザ光(以下、「BD光」という)を出力する。1/2波長板102は、BD光の偏光方向を調整する。偏光ビームスプリッタ103は、1/2波長板102側から入射されたレーザ光の大部分を反射し、一部を透過させる。
【0016】
偏光ビームスプリッタ103を透過したBD光は、フロントモニタ110に照射される。フロントモニタ110は、受光光量に応じた信号を出力する。フロントモニタ110からの信号は、半導体レーザ101の出射パワー制御に用いられる。
【0017】
コリメータレンズ104は、偏光ビームスプリッタ103によって反射されたレーザ光を平行光に変換する。レンズアクチュエータ100は、収差補正の際に、制御信号に応じてコリメータレンズ104を光軸方向に移動させる。
【0018】
立ち上げミラー105は、コリメータレンズ104を介して入射されたレーザ光をBD対物レンズ107に向かう方向に反射する。1/4波長板106は、反射ミラー105によって反射されたレーザ光を円偏光に変換するとともに、ディスクからの反射光を、ディスクへ入射される際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、ディスクによって反射されたレーザ光は偏光ビームスプリッタ103を透過して光検出器109へと導かれる。
【0019】
BD対物レンズ107は、BD光を、BDの信号面上に適正に収束できるよう設計されている。すなわち、BD対物レンズ107は、0.1mm厚の基板を介して信号面上にBD光を適正に収束できるよう設計されている。なお、BD対物レンズ107は、樹脂材料によって形成されている。
【0020】
アナモレンズ108は、ディスクによって反射されたレーザ光に非点収差を導入して光検出器109へと導く。光検出器109は、受光したレーザ光の強度分布から再生RF信号、フォーカスエラー信号、およびトラッキングエラー信号を生成するためのセンサーパターンを有している。
【0021】
レンズ保持部材111は、樹脂材料からなっており、ボディ部111aと、ボディ部111aからY軸正方向に延びる板状の腕部111bと、ボディ部111aからY軸負方向に延びる棒状の腕部111cとを有している。腕部111bの端部にコリメータレンズ104が装着されている。ボディ部111aにはX軸方向に受け孔111dが形成され、この受け孔111dに案内シャフト113aが挿入されている。受け孔111dの径は案内シャフト113aの径より僅かに大きい。また、腕部111cの端部には、X軸方向に受け孔111eが形成されており、この受け孔111eに案内シャフト113bが挿入されている。2つの案内シャフト113a、113bは、それぞれ、X軸に平行となるように、シャフト保持部材112a、112bとシャフト保持部材112c、112dに支持されている。これにより、レンズ保持部材111がコリメータレンズ104とともにX軸方向に移動可能となる。
【0022】
また、腕部111cの下面のギア115に対向する位置に、ギア115と噛み合うギア111fが設置されている。ギア115は、モータ114の駆動軸に連結されている。受け孔111d、111eに案内シャフト113a、113bを通した後、案内シャフト113aをシャフト保持部材112a、112bに装着し、案内シャフト113bをシャフト保持部材112c、112dに装着すると、腕部111cの下面に設置されたギア111fがギア115に噛み合う。これにより、モータ114の駆動力がギア115からギア111fに伝達され、レンズ保持部材111がコリメータレンズ104とともにX軸方向に移動する。
【0023】
なお、後述のように、案内シャフト113aは、半導体レーザ101または半導体レーザ201で発生した熱の伝導経路として利用される。このため、案内シャフト113aは、熱伝導率が高く、且つ、熱による膨張、伸縮が起こりにくい材料からなっている。本実施の形態では、案内シャフト113aは、ステンレスからなっている。案内シャフト113bは、熱の伝導経路に利用されないため、熱伝導性が高い必要はない。
【0024】
モータ114は、BD光の収差補正のために制御される。具体的には、光検出器109から出力される信号が最も良好となる位置にコリメータレンズ104が位置付けられるよう、モータ114が制御される。
【0025】
DVD・CD光学系は、半導体レーザ201と、回折格子202と、偏光ビームスプリッタ203と、コリメータレンズ204と、立ち上げミラー205と、1/4波長板206と、DVD・CD対物レンズ207と、アナモレンズ208と、光検出器209と、フロントモニタ210から構成されている。
【0026】
半導体レーザ201は、一つのCAN内に、波長780nm程度の赤外レーザ光(以下、「CD光」という)と波長650nm程度の赤色レーザ光(以下、「DVD光」という)を出力するレーザ素子を備える。CD光とDVD光は、互いに、偏光方向が平行となるように、半導体レーザ201から同じ方向に出射される。回折格子202は、CD光およびDVD光をメインビームと2つのサブビームに分割する。
【0027】
偏光ビームスプリッタ203は、1/2波長板202側から入射されたレーザ光の大部分を反射し、一部を透過させる。半導体レーザ202は、CD光とDVD光の偏光方向が
偏光ビームスプリッタ203に対してS偏光となる方向から僅かにずれるように設置されている。偏光ビームスプリッタ203を透過したレーザ光は、フロントモニタ210に照射される。フロントモニタ210は、受光光量に応じた信号を出力する。フロントモニタ210からの信号は、半導体レーザ201の出射パワー制御に用いられる。
【0028】
コリメータレンズ204は、偏光ビームスプリッタ203によって反射されたレーザ光を平行光に変換する。立ち上げミラー205は、偏光ビームスプリッタ203を介して入射されたレーザ光をDVD・CD対物レンズ207に向かう方向に反射する。1/4波長板206は、反射ミラー205によって反射されたレーザ光を円偏光に変換するとともに、ディスクからの反射光を、ディスクへ入射される際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、ディスクによって反射されたレーザ光は偏光ビームスプリッタ203を透過して光検出器209へと導かれる。
【0029】
DVD・CD対物レンズ207は、CD光とDVD光をそれぞれ、CDとDVDの信号面上に適正に収束できるように設計されている。すなわち、DVD・CD対物レンズ207は、1.2mm厚の基板を介して信号面上にCD光を適正に収束でき、且つ、0.6mm厚の基板を介して信号面上にDVD光を適正に収束できるよう設計されている。なお、DVD・CD対物レンズ207も、BD対物レンズ107と同様、樹脂材料により形成されている。
【0030】
アナモレンズ208は、ディスクによって反射されたレーザ光に非点収差を導入して光検出器209に導く。光検出器209は、受光したレーザ光の強度分布から再生RF信号、フォーカスエラー信号、およびトラッキングエラー信号を生成するためのセンサーパターンを有している。
【0031】
BD対物レンズ107とDVD・CD対物レンズ207は、共通のホルダ301に装着されている。また、1/4波長板106、206もホルダ301に装着されている。ホルダ301は、対物レンズアクチュエータによって、フォーカス方向およびトラッキング方向に駆動される。したがって、BD対物レンズ107およびDVD・CD対物レンズ207と1/4波長板106、206は、ホルダ301の駆動に伴って一体的に駆動される。対物レンズアクチュエータは、コイルと磁気回路からなり、このうち、コイル302がホルダ301に装着されている。図1(b)において、磁気回路は、図示省略されている。
【0032】
なお、図1(a)では図示省略されているが、半導体レーザ101、201は、それぞれ、レーザ保持部材に収容された状態で、光ピックアップ装置に設置される。
【0033】
図2は、実施の形態に係るレーザ保持部材と半導体レーザの構成を示す図である。図2(a)は、BD用の半導体レーザ101が収容されるレーザ保持部材401を示す図、図2(b)は、DVD・CD用の半導体レーザ201が収容されるレーザ保持部材402を示す図である。
【0034】
図2(a)を参照して、BD用のレーザ保持部材401は、直方体の2つの角部分が切り欠かれた形状を有している。レーザ保持部材401は、熱伝導性の高い材料からなっている。レーザ保持部材401の材料として、たとえば、亜鉛合金が用いられ、この他、銅合金等が用いられ得る。
【0035】
レーザ保持部材401には、Y軸方向に貫通する円形の穴401aが形成されている。穴401aの径は、半導体レーザ101のCAN101aの径よりも僅かに大きい。半導体レーザ101は、CAN101aが穴401aに嵌め込まれるようにして、レーザ保持部材401に装着される。このとき、半導体レーザ101とレーザ保持部材401との間
に放熱樹脂が介在される。
【0036】
図2(b)を参照して、DVD・CD用のレーザ保持部材402は、立方体形状を有している。レーザ保持部材402は、レーザ保持部材401と同様、熱伝導性の高い材料からなっている。レーザ保持部材402の材料として、たとえば、亜鉛合金が用いられ、この他、銅合金等が用いられ得る。
【0037】
レーザ保持部材402には、Y軸方向に貫通する円形の穴402aが形成されている。穴402aの径は、半導体レーザ201のCAN201aの径よりも僅かに大きい。半導体レーザ201は、CAN201aが穴402aに嵌め込まれるようにして、レーザ保持部材402に装着される。このとき、半導体レーザ201とレーザ保持部材402との間に放熱樹脂が介在される。
【0038】
レーザ保持部材401、402は、上記のように熱伝導率の高い材料から形成されているため、半導体レーザ101、201からレーザが出射されるときに生じる熱は、CAN101a、201aからレーザ保持部材401、402に伝導する。レーザ保持部材401は、前段部401bと後段部401cとを有し、レーザ保持部材402よりも表面積が大きくなっている。このようにレーザ保持部材401の表面積を大きくすることにより、発熱量の大きいBD用の半導体レーザ101の放熱効率が高められている。
【0039】
図1に示す光学系と、レンズアクチュエータ100および対物レンズアクチュエータは、ハウジングに装着される。このうち、BD対物レンズ107、DVD・CD対物レンズ207および1/4波長板106、206を除く光学系とレンズアクチュエータ100は、ハウジングの裏面に形成された凹部に収容される。凹部は、カバーによって覆われる。また、ホルダ301と、BD対物レンズ107、DVD・CD対物レンズ207、1/4波長板106、206および対物レンズアクチュエータは、ハウジングの上面に装着される。
【0040】
図3は、光ピックアップ装置を裏面側から見た図である。
【0041】
同図において、10はハウジング、20はカバーである。同図には、レーザ保持部材401、402と、レンズアクチュエータ100を構成する部材とが透視された状態で示されている。
【0042】
ハウジング10は、樹脂からなっている。カバー20は、熱伝導性の高い材料からなっており、本実施の形態では、アルミニウムからなっている。カバー20は、ハウジング10の裏面に装着される。カバー20がハウジング10の裏面に装着されると、レーザ保持部材401、402の天面がカバー20に当接する。レーザ保持部材401、402の天面に放熱樹脂が塗られた後、カバー20がハウジング10の裏面に装着される。このため、レーザ保持部材401、402の天面とカバー20との間には、放熱樹脂が介在する。放熱樹脂は、樹脂材料に、熱伝導性の高い微粒子(フィラー)を含有させたものであり、既存のものが用いられ得る。
【0043】
なお、本実施の形態では、レーザ保持部材401と案内シャフト113aの左端との間にも放熱樹脂が配され、また、レーザ保持部材402と案内シャフト113aの右端との間にも放熱樹脂が配されている。このため、BD用の半導体レーザ101にて発生した熱は、レーザ保持部材401に伝導し、その後、放熱樹脂を介して、案内シャフト113aの左端に伝導し、案内シャフト113aを右端方向に伝導する。また、CD/DVD用半
導体レーザ201にて発生した熱は、レーザ保持部材402に伝導し、その後、放熱樹脂を介して、案内シャフト113aの右端に伝導し、案内シャフト113aを左端方向に伝
導する。
【0044】
図4は、実施の形態に係る光ピックアップ装置に放熱樹脂を配した箇所を模式的に示す図である。
【0045】
図4(a)は、図3において、案内シャフト113aの左端付近を矢印Aの方向に見た図であり、図4(b)は、この部分の平面図である。図4(c)は、図3において、案内シャフト113aの右端付近を矢印Bの方向に見た図であり、図4(d)は、この部分の平面図である。図4(a)、(c)では、便宜上、案内シャフト113aが断面で示されている。
【0046】
図4(a)、(b)を参照して、シャフト保持部材112aは、可撓性を有する材料からなっており、一対の鈎部M1と、台座N1とを有している。案内シャフト113aの左端は、一対の鈎部M1の間に嵌め込まれ、鈎部M1に支持される。この際、案内シャフト113aの左端が、一対の鈎部M1上部の傾斜部分に押し付けられる。これにより、一対の鈎部M1が互いに離れるように撓み、案内シャフト113aの左端は、一対の鈎部M1の間に嵌め込まれる。
【0047】
図4(b)のように、台座N1は、レーザ保持部材401の外形に沿う形状を有している。レーザ保持部材401をハウジング10(図3参照)に装着すると、図4(b)のように、僅かな隙間でもって、レーザ保持部材401が台座N1に隣接する。
【0048】
この状態において、放熱樹脂501が、レーザ保持部材401の側面と案内シャフト113aの天面とを繋ぐようにして、シャフト保持部材112aとレーザ保持部材401の境界付近に塗り付けられる。これにより、放熱樹脂501は、レーザ保持部材401の側面に面接触し、且つ、案内シャフト113aの天面に面接触する。こうして、レーザ保持部材401と案内シャフト113aとの間に、放熱樹脂501を媒介とする熱の伝導経路が構成される。
【0049】
なお、放熱樹脂501は、台座N1に盛られるようにして、シャフト保持部材112aとレーザ保持部材401の境界付近に塗り付けられる。このため、シャフト保持部材112から放熱部材501が液だれすることがなく、放熱部材501を円滑にシャフト保持部材112aとレーザ保持部材401の境界付近に塗り付けることができる。
【0050】
次に、図4(c)、(d)を参照して、シャフト保持部材112bは、可撓性を有する材料からなっており、一対の鈎部M2と、台座N2とを有している。案内シャフト113aの右端は、一対の鈎部M2の間に嵌め込まれ、鈎部M2に支持される。図4(d)のように、台座N2は、レーザ保持部材402の側面に沿う形状を有している。レーザ保持部材402をハウジング10(図3参照)に装着すると、図4(d)のように、僅かな隙間でもって、レーザ保持部材402が台座N2に隣接する。
【0051】
この状態において、放熱樹脂502が、レーザ保持部材402の側面と案内シャフト113aの天面とを繋ぐようにして、シャフト保持部材112bとレーザ保持部材402の境界付近に塗り付けられる。これにより、放熱樹脂502は、レーザ保持部材402の側面に面接触し、且つ、案内シャフト113aの天面に面接触する。こうして、レーザ保持部材402と案内シャフト113bとの間に、放熱樹脂502を媒介とする熱の伝導経路が構成される。
【0052】
なお、放熱樹脂502は、台座N2に盛られるようにして、シャフト保持部材112aとレーザ保持部材401の境界付近に塗り付けられる。このため、シャフト保持部材11
2bから放熱部材502が液だれすることがなく、放熱部材502を円滑にシャフト保持部材112bとレーザ保持部材402の境界付近に塗り付けることができる。
【0053】
以上のようにして配された放熱部材501、502は、光ピックアップ装置に対するアニール処理の際に、熱により硬化される。これにより、放熱樹脂501、502を媒介とする熱の伝導経路が固定される。
【0054】
図5は、実施の形態に係る光ピックアップ装置の熱伝導経路を示す図である。なお、図5には、BD用の半導体レーザ101が駆動されたときの熱の伝導経路が矢印で示されている。
【0055】
図示の如く、BD用の半導体レーザ101を収容するレーザ保持部材401には、上記のように、その側面に放熱樹脂501が配され、さらに、天面にも放熱樹脂601が配されている。放熱樹脂601は、レーザ保持部材401の天面全体に配置されている。したがって、レーザ保持部材401の天面は、全面において、カバー20と熱的に結合されている。
【0056】
また、DVD・CD用の半導体レーザ201を収容するレーザ保持部材402には、上記のように、その側面に放熱樹脂502が配され、さらに、天面にも放熱樹脂602が配されている。放熱樹脂602は、レーザ保持部材402の天面全体に配置されている。したがって、レーザ保持部材402の天面は、全面において、カバー20と熱的に結合されている。
【0057】
BD用の半導体レーザ101が駆動されると、半導体レーザ101で発生した熱は以下の経路を伝導する。
【0058】
まず、半導体レーザ101のCAN101aで発生した熱は、レーザ保持部材401の天面から放熱樹脂601を介して、カバー20へと伝導する。この熱は、カバー20を広がり、カバー20の上面から放熱される。
【0059】
また、半導体レーザ101で発生した熱は、レーザ保持部材401の側面から放熱樹脂501を介して案内シャフト113aの左端へと伝導する。この熱は、案内シャフト113aの内部を案内シャフト113aの右端に向かって伝導し、さらに、右端から放熱樹脂502を介してBD用のレーザ保持部材402へと伝導する。その後、この熱は、レーザ保持部材401の天面から放熱樹脂601を介して、カバー20へと伝導し、カバー20を広がって、カバー20の上面から放熱される。なお、レーザ保持部材401の側面から放熱樹脂501を介して案内シャフト113aの左端へと伝導した熱は、案内シャフト113aを伝導する際に、案内シャフト113aの表面からも放熱される。
【0060】
以上のように、本実施の形態においては、熱伝導率の高い放熱樹脂501、502を用いることで、案内シャフト113aを介してBD用のレーザ保持部材401とDVD・CD用のレーザ保持部材402との間で熱を伝導させることができる。これにより、放熱のための面積を広げることができ、また、装置全体の熱容量を大きくすることができる。よって、放熱樹脂501、502を配さない場合と比較して、より熱を分散させることができ、装置全体として熱の放熱効果を高めることができる。その結果、熱に伴うBD光の波長の変動を抑制でき、レーザ保持部材401周辺の光学部品の劣化を抑制できる。
【0061】
なお、図5には、BD用の半導体レーザ101が駆動されたときの熱の伝導経路を矢印で示したが、DVD・CD用の半導体レーザ201が駆動されたときには、半導体レーザ201で発生した熱が、上記と逆向きに、レーザ保持部材402からレーザ保持部材40
1へと伝導する。これにより、半導体レーザ201に対する放熱効果が高められる。
【0062】
以上のように、本実施の形態によれば、BD用の半導体レーザ101とDVD・CD用の半導体レーザ201に対する放熱効果を高めることができる。これにより、BD光、DVD光およびCD光の波長変動を抑制でき、レーザ保持部材401、402周辺の光学部品の劣化を抑制することができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、既存の案内シャフト113aが熱の伝導経路として利用されるため、熱の伝導経路を増やすために、別途、他の部材を配置する必要がなく、放熱樹脂501、502を配置するのみで良い。このため、構造の複雑化および部品点数の増加を回避しながら、BD用の半導体レーザ101とDVD・CD用の半導体レーザ201に対する放熱効果を高めることができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0065】
たとえば、上記実施の形態では、コリメータレンズ104を保持するレンズ保持部材111の素材として、コストの観点から樹脂を用いたが、樹脂のレンズ保持部材111と金属製の案内シャフト113aとの間の熱膨張の差で、レンズアクチュエータ100の駆動に障害が生じることもある。かかる不都合を回避するために、レンズ保持部材111の素材を樹脂から金属に変更し、両者の熱膨張率(熱膨張係数)を揃えるようにしても良い。これにより、両者間の熱膨張の差を小さくすることができ、レンズアクチュエータ100の駆動を安定させることができる。
【0066】
なお、上記実施の形態においては、案内シャフト113aの径をなるべく大きくするのが望ましい。これにより、案内シャフト113aの容量分だけ熱の伝導経路が広くなり、装置全体の熱容量を大きくすることができる。
【0067】
また、上記実施の形態では、案内シャフト113aを熱の伝導経路に利用したが、案内シャフト113aの配置位置によっては、案内シャフト113aを熱の伝導経路に利用できない場合もあり、また、案内シャフト113a自体が配置されないような場合もある。このような場合は、別途、案内シャフト113aに相当する熱伝導部材をレーザ保持部材401、402の間に配置すれば良い。
【0068】
さらに、上記実施の形態では、BD、DVDおよびCDに対応可能な光ピックアップ装置が例示されたが、BD、DVDおよびCDのうち何れか2つのディスクに対応可能な光ピックアップ装置に本発明を適用することも可能である。この場合、2つの半導体レーザ(レーザ保持部材)が光ピックアップ装置に配置され、これら2つの半導体レーザ(レーザ保持部材)間に熱の伝導経路が配置される。
【0069】
また、上記実施の形態では、DVD光とCD光をそれぞれ出射するレーザ素子が一つのCAN内に配置されたが、DVD光とCD光をそれぞれ出射する2つの半導体レーザが配置されても良い。この場合、光ピックアップ装置には、3つの半導体レーザ(レーザ保持部材)が配置されることになる。この場合も、これら3つの半導体レーザ(レーザ保持部材)を互いに熱的に結合するための伝導経路を配置すれば良く、あるいは、熱量の最も大きな1つの半導体レーザ(レーザ保持部材)と、他の一つの半導体レーザ(レーザ保持部材)とを熱的に結合するための伝導経路を配置しても良い。
【0070】
また、上記実施の形態では、レーザ保持部材401、402の天面とカバー20との間に放熱樹脂601、602が配されたが、放熱樹脂601、602を省略し、レーザ保持
部材401、402の天面をカバー20に直接接触させても良い。
【0071】
また、上記実施の形態では、放熱樹脂501、502によって、案内シャフト113aの両端がレーザ保持部材401、402に熱的に結合されたが、たとえば、案内シャフト113aの両端が挿入される孔または溝をレーザ保持部材401、402に配置し、この孔または溝に案内シャフト113aの両端を挿入することで、案内シャフト113aの両端とレーザ保持部材401、402とを熱的に結合させても良い。この場合、レーザ保持部材401、402が案内シャフト113aの長手方向に並ぶように、光学系の配置を調整する必要がある。
【0072】
また、上記実施の形態では、BD光を平行光に変換するためにコリメータレンズが用いられたが、コリメータレンズに代えて、凹レンズと凸レンズの組合せからなるエキスパンダが用いられても良く、回折レンズ等、他のレンズが用いられても良い。エキスパンダが用いられる場合、凹レンズまたは凸レンズの何れか一方がレンズ保持部材111に保持される。
【0073】
この他、光学系も上記実施の形態の限定されるものではなく、他に種々の変更が可能である。
【0074】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 … ハウジング
20 … カバー
101、201 … 半導体レーザ(第1のレーザ光源、第2のレーザ光源)
104 … コリメータレンズ(レンズ)
111 … レンズ保持部材
113a … 案内シャフト(熱伝導部)
201a … CAN
401、402 … レーザ保持部材
501、502、601、602 … 放熱樹脂(熱伝導部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレーザ光源と、
前記第1のレーザ光源を保持する熱伝導性を有する第1のレーザ保持部材と、
第2のレーザ光源と、
前記第2のレーザ光源を保持する熱伝導性を有する第2のレーザ保持部材と、
前記第1のレーザ光源と、前記第1のレーザ保持部材と、前記第2のレーザ光源と、前記第2のレーザ保持部材とを収容するハウジングと、
前記ハウジングを覆うとともに前記第1のレーザ保持部材および前記第2のレーザ保持部材に熱的に接続される熱伝導性を有するカバーと、
前記第1のレーザ保持部材と前記第2のレーザ保持部材との間に、前記カバーとは別の熱の伝導経路を構成する熱伝導部と、を有する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、
前記第1のレーザ光源から出射されたレーザ光が入射するレンズと、
前記レンズを保持するレンズ保持部材と、
前記レンズ保持部材を前記レンズの光軸方向に案内する案内シャフトと、
前記レンズ保持部材を前記光軸方向に移動させる駆動部と、を備え、
前記案内シャフトは、熱伝導性を有し、
前記案内シャフトが前記第1のレーザ保持部材から前記第2のレーザ保持部材側に延びるように、前記第1のレーザ光源と前記第2のレーザ光源と前記レンズが配置され、
前記伝導部は、前記案内シャフトを含む、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光ピックアップ装置において、
前記案内シャフトの一方の端部と前記第1のレーザ保持部材とが放熱樹脂によって連結され、前記案内シャフトの他方の端部と前記第2のレーザ保持部材とが放熱樹脂によって連結されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の光ピックアップ装置において、
前記レンズは、コリメータレンズである、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記第1のレーザ保持部材と前記カバーとの間に放熱樹脂が配置され、前記第2のレーザ保持部材と前記カバーとの間に放熱樹脂が配置されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記第2のレーザ光源は、異なる2つのレーザ素子が一つのCAN内に配置された半導体レーザである、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−30239(P2013−30239A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164858(P2011−164858)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】