説明

光ピックアップ装置

【課題】 光ディスクの信号面に対する対物レンズの角度のずれに伴って発生するコマ収差を補正することが出来る光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】 レーザーダイオード1から放射されたレーザー光を光ディスクDに設けられている信号記録層に集光させる対物レンズ7を備えているとともに該対物レンズ7を光ディスクDの径方向へ変位せしめるトラッキングコイル11を備えた光ピックアップ装置であり、前記対物レンズ7の光軸に対する光ディスクDの傾きを検出するチルト検出手段を設け、該チルト検出手段にて検出されるチルト量に応じてチルト補正信号を前記トラッキングコイル11に供給することによってチルトを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作や光ディスクに信号の記録動作をレーザー光によって行う光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクの信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作や信号の記録動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
光ディスク装置としては、CDやDVDと呼ばれる光ディスクを使用するものが一般に普及しているが、最近では記録密度を向上させた光ディスク、即ちBlu−ray規格の光ディスクを使用するものが開発されている。
【0004】
Blu−ray規格の光ディスクにおける信号記録層の上面に設けられている保護層の厚さは、0.1mmであり、この信号記録層から信号の読み出し動作を行うために使用される対物レンズの開口数は、0.85と設定されている。
【0005】
このような記録密度の向上が図られた光ディスク規格に対応する光ピックアップ装置は、記録密度の向上に伴って信号記録品質を高めるために要求される光学特性も厳しくなっている。即ち、高密度記録されている信号の読み出し動作や信号の記録動作を行うためには、レーザー光の照射によって信号記録層に生成されるレーザースポットの形状を良好な状態にする必要がある。
【0006】
斯かるスポット形状に悪影響を与えるものとして球面収差、非点収差及びコマ収差等の収差があり、斯かる収差を補正する方法として、あらかじめ収差を補正するために設けられた電極パターンに制御電圧を印加することによって屈折率を変化させ、透過するレーザー光に位相差を付加することによって収差を補正することが出来る液晶収差補正素子を使用する方法や2つのレンズ間の距離を変更することによってレーザー光の発散角度を変更させてディスク面上の球面収差を補正するビームエキスパンダと呼ばれる収差補正手段を使用する方法が多くの光ピックアップ装置に採用されている。
【0007】
そして、光ピックアップ装置から照射されるレーザー光のスポットを光ディスクの信号記録層に合焦させる制御動作、即ちフォーカシング制御動作や信号トラックにレーザー光のスポットを追従させる制御動作、即ちトラッキング制御動作を行うことが出来るように構成されている。
【0008】
また、光ディスク装置において、光ディスクはスピンドルモーターによって回転駆動されるターンテーブル上に載置されて回転駆動されるが、光ディスク自体の反りやターンテーブルへの載置状態及び機械的な誤差に起因して光ディスクに傾きが発生する。光ディスクが傾くと光ディスクの信号面に対するレーザー光の光軸の傾きが最適な状態からずれることになる。
【0009】
レーザー光の光軸の信号面に対する角度にずれが生じると、コマ収差が発生しレーザースポットの形状が歪むため、隣接トラックからのクロストークやジッタの劣化により光ピックアップ装置の読み取り特性が悪化するという問題がある。
【0010】
斯かる問題を解決するために最近の光ピックアップ装置では光ディスクの信号面に対するレーザー光の光軸の傾きを調整する動作、所謂チルト制御動作を行うことが出来るチルトコイルを備えたものや複数のフォーカスコイルを設け、該フォーカスコイルに供給する駆動信号を選択制御することによってレーザー光の光軸の傾きを調整することが出来るものが周知のように開発されている。
【0011】
チルト制御動作を行うためにチルト量、即ち光ディスクの信号面に対する対物レンズの光軸の傾き量を検出する方法として、チルトセンサーと呼ばれるセンサーを利用する方法が多く採用されているが、最近では光検出器から得られる信号からチルト量を検出するようにした技術が開発されている。(特許文献1及び特許文献2参照。)
斯かる技術によってチルト量を検出することは出来るが、斯かる検出方法は検出するチルト量に対物レンズの変位による影響があるという問題がある。斯かる問題を解決する技術として対物レンズの変位量を検出するようにした技術が開発されている。(特許文献3参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−36773号公報
【特許文献2】特開2001−266381号公報
【特許文献3】特開2004−355708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献3に記載されている技術によれば、対物レンズの変位に影響を受けることなくチルト量を検出することは出来るもののチルトの補正動作を行うためのチルト補正機構を特別に設けているので構成が複雑になり、製造コストが上昇するという問題がある。
【0014】
本発明は、斯かる問題を解決することが出来る光ピックアップ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、レーザーダイオードから放射されたレーザー光を光ディスクに設けられている信号記録層に集光させる対物レンズを光ディスクの面方向へ変位せしめるフォーカスコイル及び前記対物レンズを光ディスクの径方向へ変位せしめるトラッキングコイルを備え、前記対物レンズの光軸に対する光ディスクの傾きを検出するチルト検出手段を設け、該チルト検出手段にて検出されるチルト量に応じてチルト補正信号を前記トラッキングコイルに供給することによってチルトを補正するようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明は、チルト補正信号にて対物レンズを光ディスクの径方向へ変位させるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光ピックアップ装置は、対物レンズによって集光されて生成されるレーザースポットを光ディスクの信号記録層に設けられている信号トラックに追従させるべく設けられているトラッキングコイルにチルト補正信号を供給することによって光ディスクの信号面に対する対物レンズの光軸の傾きを補正するようにしたので、即ちトラッキング動作を行うために設けられているトラッキングコイルを利用してチルト制御動作を行うようにしたので、構成を簡潔にすることが出来るだけでなく製造コストの上昇を抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る光ピックアップ装置の実施例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る光ピックアップ装置を説明するための図である。
【図3】本発明に係る光ピックアップ装置を説明するための図である。
【図4】本発明に係る光ピックアップ装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
光ディスクの信号面に対する対物レンズの光軸の傾きを補正するチルト制御装置を提供するものである。
【実施例1】
【0020】
図1において、1は波長が例えば405nmの青紫色光であるレーザー光を放射するレーザーダイオード、2は該レーザーダイオード1から放射されるレーザー光が入射される回折格子であり、レーザー光を0次光、+1次光及び−1次光に分離する回折格子部2aと入射されるレーザー光を例えばS方向の直線偏光光に変換する1/2波長板2bとより構成されている。
【0021】
3は前記回折格子2を透過したレーザー光が入射される偏向ビームスプリッタであり、S偏光に変換されたレーザー光を透過させ、P方向に偏光されたレーザー光を反射させる制御膜3aが設けられている。4は前記偏光ビームスプリッタ3の制御膜3aを透過したレーザー光が入射される位置に設けられている1/4波長板であり、入射されるレーザー光を直線偏光光から円偏光光へ、また反対に円偏光光から直線偏光光に変換する作用を成すものである。
【0022】
5は前記1/4波長板4を透過したレーザーダイオード1からのレーザー光が入射されるコリメートレンズであり、入射されたレーザー光を平行光に変換する作用を成すものである。また、斯かるコリメートレンズ5はステッピングモーター等によって光軸方向へ変位せしめられるように構成されており、斯かる変位動作によって球面収差を補正するように構成されている。
【0023】
6は前記コリメートレンズ5を透過したレーザー光が入射される位置に設けられているとともに入射されるレーザー光の光軸を例えば図示したように90度変更させるべく反射させる立ち上げミラー、7は前記立ち上げミラー6から反射されたレーザー光が入射される対物レンズであり、光ディスクDに設けられている信号記録層にレーザー光をスポットとして集光させる作用を成すものである。
【0024】
斯かる構成において、レーザーダイオード1から放射されたレーザー光は、回折格子2、偏光ビームスプリッタ3、1/4波長板4、コリメートレンズ5及び立ち上げミラー6を介して対物レンズ7に入射された後、該対物レンズ7の集光動作によって光ディスクDの信号記録層にスポットとして照射されるが、該信号記録層に照射されたレーザー光は戻り光として反射されることになる。
【0025】
光ディスクDの信号記録層から反射された戻り光は、対物レンズ7、立ち上げミラー6、コリメートレンズ5及び1/4波長板4を介して偏光ビームスプリッタ3の制御膜3aに入射される。このようにして偏光ビームスプリッタ3の制御膜3aに入射される戻り光は、前記1/4波長板4による位相変更動作によってP方向の直線偏光光に偏光されているので、前記制御膜3aを透過することはなく、制御用レーザー光として反射されることになる。
【0026】
8は前記偏光ビームスプリッタ3の制御膜3aにて反射された制御用レーザー光が入射されるセンサーレンズであり、PDICと呼ばれる光検出器9に設けられている受光部に制御用レーザー光を集光させるべく照射させる作用を成すものである。前記光検出器9には、周知の4分割センサー等が設けられており、メインビームの照射動作によって光ディスクDの信号記録層に記録されている信号の読み取り動作に伴う信号生成動作及び非点収差法によるフォーカシング制御動作を行うための信号生成動作、そして2つのサブビームの照射動作によってトラッキング制御動作を行うための信号生成動作を行うように構成されている。斯かる各種の信号生成のための制御動作は、周知であるのでその説明は省略する。
【0027】
前述したように本発明に係る光ピックアップ装置は構成されているが、斯かる構成において、前記対物レンズ7は、光ピックアップ装置の基台に例えば4本の支持ワイヤーによって光ディスクDの信号面に対して垂直方向への変位及び光ディスクDの径方向への変位を可能に支持されているレンズホルダーと呼ばれる部材に固定されている。
【0028】
10は前記対物レンズ7が固定されているレンズホルダーに設けられているフォーカスコイルであり、基台に固定されている磁石との協働によって対物レンズ7を光ディスクDの信号面に対して垂直方向へ変位させる作用を有している。11は前記対物レンズ7が固定されているレンズホルダーに設けられているトラッキングコイルであり、基台に固定されている磁石との協働によって対物レンズ7を光ディスクDの径方向へ変位させる作用を有している。12は光ピックアップ装置を構成する基台、即ち対物レンズ7が固定されているレンズホルダーや前述した磁石等が搭載されている部材を信号の読み出し位置の変化に応じて光ディスクの径方向へ移動せしめるピックアップ送り用モーターである。
【0029】
斯かる構成の光ピックアップ装置において、フォーカスコイル10及びトラッキングコイル11への駆動信号の供給動作は前述した4本の支持ワイヤーを介して行われるように構成されている。
【0030】
前述したフォーカスコイル10及びトラッキングコイル11が組み込まれた光ピックアップ装置の構成及び各コイルの駆動動作によるフォーカシング制御動作及びトラッキング制御動作は周知であり、その説明は省略する。
【0031】
13は前記光検出器9を構成するメインビームを受光するセンサーから光ディスクDの信号記録層に記録されている信号の読み取り動作に対応して得られる信号であるRF信号を生成するRF信号生成回路、14はメインビームを受光するセンサーからレーザー光の合焦動作に応じて得られる信号であるフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成回路、15はサブビームを受光するセンサーからレーザー光のトラッキング動作に応じて得られる信号であるトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成回路である。16は例えばメインビームを受光するセンサーから光ディスクの信号面に対する対物レンズ7の光軸の傾き量、即ちチルト量を検出するチルト検出信号生成回路であり、従来例に開示されている技術にて構成することが出来る。
【0032】
17は前記RF信号生成回路13、フォーカスエラー信号生成回路14、トラッキングエラー信号生成回路15及びチルト検出信号生成回路16等から得られる信号に基づいて光ピックアップ装置の各種の制御動作を行うピックアップ制御回路である。
【0033】
18は前記フォーカスエラー信号生成回路14から生成されて入力されるフォーカスエラー信号に基づいて前記ピックアップ制御回路17から出力されるフォーカス制御信号が入力されるフォーカスコイル駆動回路であり、前記フォーカスコイル10に駆動信号を供給するように構成されている。19は前記トラッキングエラー信号生成回路15から生成されて入力されるトラッキングエラー信号に基づいて前記ピックアップ制御回路17から出力されるトラッキング制御信号が入力されるトラッキングコイル駆動回路であり、前記トラッキングコイル11に駆動信号を供給するように構成されている。
【0034】
20は前記トラッキングコイル駆動回路19から前記トラッキングコイル11へ供給される駆動信号から対物レンズ7の変位量、即ち光ピックアップ装置を構成する基台に対する対物レンズ7の変位量を検出する対物レンズ変位量検出回路である。光ディスクDの信号記録層に設けられている信号トラックは渦巻き状に形成されており、レーザースポットを前記信号トラックに追従させるためには、対物レンズ7を光ディスクDの径方向へ変位させる必要がある。
【0035】
前記対物レンズ7を光ディスクDの径方向である外周方向へ変位させる動作は、トラッキングコイル駆動回路19からトラッキングコイル11に供給される駆動信号の直流電圧を次第に大きくすることによって行われる。従って、この直流電圧の大きさを検出することによって対物レンズ7の基台に対する変位量を認識することが出来る。
【0036】
21は前記ピックアップ送り用モーター12に駆動信号を供給するピックアップ送り用モーター駆動回路であり、前記対物レンズ変位量検出回路20にて検出される信号が所定のレベルに達したときピックアップ制御回路17から出力される制御信号に基づいて駆動信号を供給するように構成されている。
【0037】
以上に説明したように本発明に係る光ピックアップ装置は構成されているが、次に動作について説明する。レーザーダイオード1から放射されたレーザー光は、回折格子2によって0次光、+1次光及び−1次光の3ビームに分離されるとともにS偏光光に変換されて偏光ビームスプリッタ3に入射される。
【0038】
前記偏光ビームスプリッタ3に入射されたレーザー光は、該偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aを透過した後1/4波長板4に入射されて円偏光光に変換される。前記1/4波長板4にて円偏光光に変換されたレーザー光はコリメートレンズ5によって平行光に変換された後立ち上げミラー6にて反射されて対物レンズ7に入射される。
【0039】
前記対物レンズ7に入射されたレーザー光は、該対物レンズ7の集光動作によって光ディスクDに設けられている信号記録層に集光されて所望のスポットが生成されることになる。また、前記対物レンズ7の集光動作によって信号記録層に照射されたレーザー光は、該信号記録層にて戻り光として反射されることになる。
【0040】
前記信号記録層にて反射された戻り光は、対物レンズ7、立ち上げミラー6、コリメートレンズ5及び1/4波長板4を通して偏光ビームスプリッタ3に入射される。前記偏光ビームスプリッタ3に入射される戻り光の偏光方向は前記1/4波長板4にてP方向の直線偏光光に変換されているので、該戻り光は偏光ビームスプリッタ3に設けられている制御膜3aにて制御用レーザー光として反射されてセンサーレンズ8に入射されることになる。
【0041】
前記センサーレンズ8に入射されたレーザー光は、該センサーレンズ8によって非点収差を付加されるとともに光検出器9に設けられている受光部に照射される。斯かるレーザー光が光検出器9に照射されると、該光検出器9に組み込まれている各センサーから得られる信号に基づいて各種の信号が生成される。即ち、メインビームを受光するセンサーから光ディスクDに記録されている信号の読み取り動作に対応して得られる信号であるRF信号がRF信号生成回路13にて生成されるとともにフォーカスエラー信号生成回路14及びトラッキングエラー信号生成回路15より夫々フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号が生成されてピックアップ制御回路17に入力されることになる。
【0042】
前述した各種の信号がピックアップ制御回路17に入力されると、該ピックアップ制御回路17からフォーカスコイル駆動回路18及びトラッキングコイル駆動回路19に対して夫々フォーカス制御信号及びトラッキング制御信号が出力される。その結果、フォーカスコイル駆動回路18からフォーカスコイル10に対して駆動信号が供給されるとともにトラッキングコイル駆動回路19からトラッキングコイル11に対して駆動信号が供給される。
【0043】
斯かる駆動信号が供給されると、フォーカスコイル10による対物レンズ7の光ディスクDの信号面に対して垂直方向への変位動作及びトラッキングコイル11による対物レンズ7の光ディスクDの径方向への変位動作が行われる。前記トラッキングコイル駆動回路19からトラッキングコイル11へ供給される駆動信号は、信号トラックの径方向への早い変位動作にスポットを追従させるための制御動作を行う高周波信号と信号の読み出し動作に伴って読み出し位置が外周方向へ移動する変位動作にスポットを追従させるために対物レンズ7を変位させる制御信号、即ち直流信号とより構成されている。
【0044】
対物レンズ7の外周方向への変位動作はトラッキングコイル駆動回路19からトラッキングコイル11に供給される直流信号の電圧を緩やかに上昇させることによって行われるが、斯かる直流電圧の大きさは対物レンズ変位量検出回路20によって検出されることになる。前記対物レンズ変位量検出回路20によって検出される直流電圧は前記ピックアップ制御回路17に入力されており、その検出信号のレベルが所定の電圧値まで上昇すると、該ピックアップ制御回路17からピックアップ送り用モーター駆動回路21に対して駆動信号が供給される。
【0045】
斯かる駆動信号がピックアップ送り用モーター駆動回路21に供給されると、該ピックアップ送り用モーター駆動回路21からピックアップ送り用モーター12に対して駆動信号が供給される。その結果、前記ピックアップ送り用モーター12が回転し、その回転力によって光ピックアップ装置を構成する基台を光ディスクDの外周方向へ変位せしめる動作が行われる。斯かる基台の外周方向への変位動作が行われると、対物レンズ7の基台に対する位置、即ち偏倚位置が減少せしめられる。ピックアップ送り用モーター12の回転動作によって基台が外周方向へ変位せしめられると、対物レンズ7がレンズホルダーに対して中立の位置に復帰せしめられる。対物レンズがレンズホルダーに対して中立位置に復帰すると、トラッキングコイル駆動回路19からトラッキングコイル11に供給されていた直流信号の電圧値が小さくなる。
【0046】
前述したようにトラッキングコイル駆動回路19から高周波信号と直流信号とより成る駆動信号がトラッキングコイル11に供給されることによってトラッキング制御動作を行うことが出来るように構成されているが、斯かる動作は周知であるのでその詳細な説明は省略する。
【0047】
前述したように本発明に係る光ピックアップ装置のフォーカス制御動作及びトラッキング制御動作が行われて光ディスクDの信号記録層に記録されている信号の再生動作を行うことが出来る。斯かる再生信号は、RF信号生成回路13から生成されるRF信号を復調することによって情報データとして得られることになる。
【0048】
以上に説明したように本発明に係る光ピックアップ装置のフォーカス制御動作、トラッキング制御動作及び信号再生動作は行われるが、次に本発明の要旨であるチルト制御動作について説明する。
【0049】
図2、図3及び図4は、対物レンズ7と光ディスクDとの関係を示すものであり、図2は対物レンズ7の光軸が光ディスクDに設けられている信号記録層Lに対して垂直、即ち光軸の角度にずれが無い状態を示すものである。斯かる状態では、チルト検出信号生成回路16から検出信号が出力されることはなく、チルトを補正するための制御動作は行われることはない。
【0050】
図3は対物レンズ7の光軸が光ディスクDに設けられている信号記録層Lに対して傾いた状態を示すものであり、斯かる状態でコマ収差が発生することになる。また、図4は対物レンズ7を図2に示した状態より径方向へ変位させた状態を示すものであり、斯かる状態においてもコマ収差が発生することになる。
【0051】
本発明は、対物レンズ7を径方向へ変位させた場合に発生するコマ収差を利用して対物レンズ7の光軸が光ディスクDの信号記録層Lが形成されている信号面に対して傾くこと、即ち光軸の角度がずれることによって発生するコマ収差を補正するようにしたことを特徴とするものである。
【0052】
即ち、対物レンズ7の光軸のずれに伴って発生するコマ収差の方向に対して反対方向のコマ収差を対物レンズ7を径方向へ変位させることによって発生させ、両収差を相殺してコマ収差を補正することを特徴とするものである。
【0053】
光ディスクDの面振れやターンテーブルへの搭載ずれに起因して対物レンズ7の光軸の角度が光ディスクDの信号面に対してずれると、チルトの悪化に伴ってコマ収差が発生するが、斯かるコマ収差の大きさ及びコマ収差が発生する方向はチルト検出信号生成回路16にて検出され、そのチルト量に対応した検出出力がピックアップ制御回路17に対して出力される。
【0054】
前記チルト検出信号生成回路16にて検出されてピックアップ制御回路17に出力される検出信号は、コマ収差の大きさ及びコマ収差が発生する方向を示す信号であり、前記ピックアップ制御回路17は斯かるコマ収差を補正するために対物レンズ7を径方向へ変位させるためのチルト補正信号をトラッキング駆動回路19に対して出力するように構成されている。
【0055】
ピックアップ制御回路17からトラッキング駆動回路19へは、前述したように信号トラックにスポットを追従させるトラッキング制御動作を行うためのトラッキング制御信号が出力されているが、本発明では斯かる信号に加えてチルトに伴って発生するコマ収差を補正する方向へ対物レンズ7を変位させる補正信号を供給するように構成されている。
【0056】
チルト検出信号生成回路16から出力されるチルト検出信号に基づいてピックアップ制御回路17からトラッキングコイル駆動回路19へコマ収差を補正する信号が出力されるが、コマ収差の大きさに対応した補正信号を出力するデータを記憶するメモリー回路をピックアップ制御回路17に組み込むことによって正確な補正動作を行うことが出来る。
【0057】
尚、本実施例では、チルトを検出する方法として光検出器9から得られる信号を利用する場合について説明したが、光ディスクDの傾きを検出するセンサーを設けることも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、Blu−ray規格の光ディスクだけでなく、DVD規格等の光ディスクは勿論のこと更に高密度化された光ディスクに記録されている信号を再生する光ピックアップ装置に採用することが出来る。
【符号の説明】
【0059】
1 レーザーダイオード
3 偏光ビームスプリッタ
5 コリメートレンズ
7 対物レンズ
9 光検出器
10 フォーカスコイル
11 トラッキングコイル
13 RF信号生成回路
14 フォーカスエラー信号生成回路
15 トラッキングエラー信号生成回路
16 チルト検出信号生成回路
17 ピックアップ制御回路
18 フォーカスコイル駆動回路
19 トラッキングコイル駆動回路
D 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーダイオードから放射されたレーザー光を光ディスクに設けられている信号記録層に集光させる対物レンズを備えているとともに該対物レンズを光ディスクの面方向へ変位せしめるフォーカスコイル及び前記対物レンズを光ディスクの径方向へ変位せしめるトラッキングコイルを備えた光ピックアップ装置であり、前記対物レンズの光軸に対する光ディスクの傾きを検出するチルト検出手段を設け、該チルト検出手段にて検出されるチルト量に応じてチルト補正信号を前記トラッキングコイルに供給することによってチルトを補正するようにしたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
チルト補正信号にて対物レンズを光ディスクの径方向へ変位させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−33561(P2013−33561A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167912(P2011−167912)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】