光ファイバの解析装置および光ファイバの解析方法
【課題】光ファイバ中の複屈折の増加位置を、簡素な構成で短時間に検出するための解析装置および解析方法を提供する。
【解決手段】光源2および偏波コントローラ3によって、ピーク波長が同じであり、偏波状態が互いに異なる複数の偏光パルスが発生される。偏波解析器5は、複数の偏光パルスの各々が光ファイバ1を伝播することによって生じる後方散乱光を受けて、偏光度を算出する。信号処理部6は、偏波解析器5によって算出された偏光度を用いて、偏波状態ごとに、偏光度の、光ファイバ1の長手方向の分布を算出する。信号処理部6は、その分布から、偏光度の最大値および最小値の差分のピークを検出する、あるいは、偏光度のピークを検出することによって、光ファイバ1における複屈折の増加位置を検出する。
【解決手段】光源2および偏波コントローラ3によって、ピーク波長が同じであり、偏波状態が互いに異なる複数の偏光パルスが発生される。偏波解析器5は、複数の偏光パルスの各々が光ファイバ1を伝播することによって生じる後方散乱光を受けて、偏光度を算出する。信号処理部6は、偏波解析器5によって算出された偏光度を用いて、偏波状態ごとに、偏光度の、光ファイバ1の長手方向の分布を算出する。信号処理部6は、その分布から、偏光度の最大値および最小値の差分のピークを検出する、あるいは、偏光度のピークを検出することによって、光ファイバ1における複屈折の増加位置を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバの解析装置および解析方法に関し、特に、光ファイバ中における複屈折の増加位置を探査するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの一部に応力が加わった場合、その部分において複屈折が増加する。したがって、複屈折が増加している部分を探査することによって、応力が加わっている点を検出することができる。
【0003】
複屈折が増加した場合、偏波モード分散値が増大する。偏波モード分散測定に関して以下のような技術が提案されている。
【0004】
たとえば特開2005−43265号公報(特許文献1)は、偏波OTDRを利用して、光ファイバの長手方向に沿った偏波モード分散分布を測定する方法を開示している。この方法では、波長が異なる光パルスを光ファイバに入射し、その光パルスが光ファイバを伝搬する際に発生する後方散乱光の偏波状態を測定する。
【0005】
たとえば特開2003−106942号公報(特許文献2)に開示された偏波モード分散分布測定装置は、以下の方法によって、光ファイバの各位置における偏波モード分散を測定する。すなわち、互いに異なる波長を有する複数の光パルスを波長多重し、その波長多重された複数のパルスを偏光器に通して光ファイバに入射する。その光ファイバから出射される後方散乱光の0°、45°、90°および円の各成分を選択的に抽出して、その成分を異なる波長の光に分波する。その分波された光に基づいて、偏波モード分散が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−43265号公報
【特許文献2】特開2003−106942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2005−43265号公報(特許文献1)に開示された方法では波長可変光源を利用して波長をスイープすることにより、波長が異なる光パルスが生成される。このため、測定に時間を要するという課題が発生する。
【0008】
特開2003−106942号公報(特許文献2)に開示された方法では、互いに異なる波長を有する複数の光パルスを波長多重して光ファイバに入射する。これにより、波長をスイープする場合に比較して測定時間を短縮できると考えられる。しかし、特開2003−106942号公報(特許文献2)に開示された方法は、JME法(ジョーンズ行列固有値解析法)を前提としているため、測定が複雑化するという課題がある。
【0009】
本発明の目的は、光ファイバ中の複屈折の増加位置を、簡素な構成で短時間に検出するための解析装置および解析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある局面に係る光ファイバの解析装置は、ピーク波長が同じであり、偏波状態が互いに異なる複数の偏光パルスを発生させる偏光パルス発生部と、複数の偏光パルスの各々が光ファイバを伝播することによって生じる後方散乱光を受けて、偏光度を算出する偏光度算出部と、複数の偏光パルスの各々を光ファイバに導くとともに、後方散乱光を偏光度算出部に導く結合器と、処理部とを備える。処理部は、偏光度算出部によって算出された偏光度を用いて、偏波状態ごとに、偏光度の、光ファイバの長手方向の分布を算出する。処理部は、分布に基づいて、光ファイバにおける複屈折の増加位置を検出する。
【0011】
好ましくは、処理部は、偏波状態ごとの分布から、偏光度の最大値と偏光度の最小値との差の、光ファイバの長手方向の分布を算出する。処理部は、差のピークの位置を、複屈折の増加位置として検出する。
【0012】
好ましくは、処理部は、偏波状態として取り得るすべての状態での分布のうちの少なくとも1つに対する分布に偏光度のピークが存在する場合に、ピークが検出される光ファイバの位置を、複屈折の増加位置として検出する。
【0013】
好ましくは、処理部は、偏波状態ごとの偏光度の分布を一定時間ごとに平均することにより、光ファイバの長手方向の距離に対する偏光度の平均値の関係を示す曲線を得て、当該曲線の変曲点または低下部分を、複屈折の増加位置として検出する。
【0014】
本発明の他の局面に係る光ファイバの解析方法は、ピーク波長が同じであり、偏波状態が互いに異なる複数の偏光パルスを発生させるステップと、複数の偏光パルスの各々が光ファイバを伝播することによって生じる後方散乱光を受光することによって偏光度を算出するステップと、算出された偏光度を用いて、偏波状態ごとに、偏光度の、光ファイバの長手方向の分布を算出するステップと、算出された分布に基づいて、光ファイバにおける複屈折の増加位置を検出するステップとを備える。
【0015】
好ましくは、検出するステップにおいて、偏波状態ごとの分布から、偏光度の最大値と偏光度の最小値との差の、光ファイバの長手方向の分布を算出して、差のピークの位置を、複屈折の増加位置として検出する。
【0016】
好ましくは、検出するステップにおいて、偏波状態として取り得るすべての状態での分布のうちの少なくとも1つに対する分布に偏光度のピークが存在する場合に、ピークが検出される光ファイバの位置を、複屈折の増加位置として検出する。
【0017】
好ましくは、算出するステップは、偏波状態ごとの偏光度の分布を一定時間ごとに平均して、光ファイバの長手方向の距離に対する偏光度の平均値の関係を示す曲線を得るステップを含む。検出するステップにおいて、曲線の変曲点または低下部分を、複屈折の増加位置として検出する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光ファイバ中の複屈折の増加位置を、簡素な構成で短時間に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光ファイバの解析装置51の構成を示した図である。
【図2】偏波コントローラの一例を示した図である。
【図3】偏波を表わすためのポアンカレ球を示した図である。
【図4】図1に示した偏波解析器の構成例を概略的に示した図である。
【図5】正常な光ファイバを偏波が伝播する状態を説明した図である。
【図6】応力を受けた光ファイバを偏波が伝播する状態を説明した図である。
【図7】図1に示した信号処理部によって得られる、偏光度の距離分布を模式的に示した図である。
【図8】光ファイバ1に複屈折増加点が存在する場合における、偏光度の最大値と最小値との差分の距離分布を示した図である。
【図9】実施の形態1に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を説明するフローチャートである。
【図10】実施の形態2に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を説明するフローチャートである。
【図11】実施の形態3に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を模式的に説明した図である。
【図12】実施の形態3に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰返さない。
【0021】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ファイバの解析装置51の構成を示した図である。図1を参照して、解析装置51は、パルス光源2と、偏波コントローラ3と、光サーキュレータ4と、偏波解析器5と、信号処理部6と、出力部7とを備える。
【0022】
パルス光源2は、解析対象の光ファイバ1を伝搬する光パルスを送出するための光源である。パルス光源2は、単一のピーク波長λを有する光パルスを送出する。
【0023】
パルス光源2は、レーザ光源によって実現可能である。多くの場合、レーザ光源から発せられるレーザ光は直線偏光に近い円偏光である。レーザ光源の種類は特に限定されず、たとえば半導体レーザをパルス光源2に適用することができる。
【0024】
偏波コントローラ3は、パルス光源2から送出された光パルスの偏波状態を、任意の偏波状態へと変化させる。偏波コントローラ3から出射された光パルスは、光サーキュレータ4を介して光ファイバ1に入力される。なお、パルス光源2および偏波コントローラ3は、本発明における「偏光パルス発生部」を実現する。偏光パルス発生部は、ピーク波長が同じであり、偏波状態が互いに異なる複数の光パルスを発生させる。
【0025】
光ファイバ1は、たとえば既設の光ファイバである。なお、光ファイバ1の長手方向の距離は特に限定されるものではない。
【0026】
光パルスが光ファイバ1を伝搬するに伴い、光ファイバ1内で後方散乱光が発生する。後方散乱光は、光ファイバ1の入射端側(光パルスが入射された端部)に戻る。光サーキュレータ4は、偏波状態が互いに異なる光パルスの各々を光ファイバ1に導くとともに、光ファイバ1内で発生した各々のパルスからの後方散乱光を偏波解析器5へと導く結合器である。
【0027】
偏波解析器5は、光サーキュレータ4を介して入力された後方散乱光の偏波特性を解析して、偏光度を算出する。偏光度とは、平均全光パワーと、完全に偏光した光の強度との比を表わしたものである。偏波解析器5は、その算出された偏光度を信号処理部6に送出する。
【0028】
信号処理部6は、偏波解析器5から送られる偏光度を用いて、光ファイバ1の長手方向に沿った偏光度の分布(偏光度の距離分布)を求める。信号処理部6は、さらに、その偏光度の距離分布から、複屈折が増加している点を決定することができる。信号処理部6は、具体的にはコンピュータによって実現される。
【0029】
出力部7は、信号処理部6による処理の結果を出力する。たとえば出力部7はディスプレイあるいはプリンタによって実現される。
【0030】
図2は、偏波コントローラの一例を示した図である。図2を参照して、偏波コントローラ3は、λ/4波長板11とλ/2波長板12とを含む。λ/4波長板11およびλ/2波長板12の各々は独立に回転可能である。λ/4波長板11は、円偏波を直線偏波に変換する。λ/2波長板12は、直線偏波の主軸角を回転させる。これにより、任意の偏波状態を有する光パルス(偏光パルス)を発生させることができる。λ/4波長板11およびλ/2波長板12は、たとえば複屈折結晶によって実現可能であるが、光ファイバによって実現することもできる。
【0031】
次に、偏波解析器5による偏光度の算出について説明する。図3は、偏波を表わすためのポアンカレ球を示した図である。図3を参照して、単位半径上の各ポイントは、一意の偏波状態を表わす。赤道上のポイントは直線偏波の状態を表わす。北極と南極は円偏波を表わし、残りのエリアは円偏波状態を表わす。円偏波の右回りの状態は北半球に表示され、左回りの状態は南半球に表示される。偏波状態が変化する様子は球表面のトレースによって表現される。
【0032】
図4は、図1に示した偏波解析器の構成例を概略的に示した図である。図4を参照して、入力光は、4つのサブビームに分割される。各ビームは、偏光フィルタ(21a〜21d)を通される。フォトダイオード22a〜22dは、4つのサブビームに対応してそれぞれ設けられて、対応する成分を検出する。フォトダイオード22a〜22dからの信号は増幅器23a〜23dでそれぞれ増幅される。4チャネルADC(AD変換器)24は各増幅器からのアナログ信号をデジタル値に変換する。DSP(Digital Signal Processor)/メモリ25は、4チャネルADC24から出力されるデジタル値を用いて、ポアンカレ球上で偏波状態を表現するために用いられるストークスパラメータ(S1,S2,S3)を算出し、そのストークスパラメータに基づいて、偏光度を算出する。偏光度は以下の式に従って表わされる。
【0033】
(偏光度)=√(S12+S22+S32)
なお、ストークスパラメータの算出方法については、公知の方法を適用可能であるので詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0034】
本発明の実施の形態では、上記の構成を用いて、光ファイバ1における複屈折の増加位置を探査する。
【0035】
図5は、正常な光ファイバを偏波が伝播する状態を説明した図である。図5を参照して、光ファイバ1が応力を受けていない場合、すなわち光ファイバ1が正常である場合には光ファイバ1の断面はほぼ円形である。この場合には光ファイバ1の複屈折が小さいため、光信号Sが光ファイバ1を伝播するのにともなう偏波状態の変化は緩やかである。すなわち、光信号S(偏波)の主軸は光ファイバ1を伝播するのにともなって緩やかに回転する。
【0036】
さらに、図5(a)〜図5(c)は、偏波状態の異なる光信号Sが光ファイバ1に入射した場合の偏波状態の変化を示している。光ファイバ1が正常な場合には、光信号の偏波状態が異なっていても、光ファイバ1の内部での偏波状態の変化は緩やかである。
【0037】
図6は、応力を受けた光ファイバを偏波が伝播する状態を説明した図である。図6を参照して、光ファイバ1が一方向(X軸方向)の応力を受けることによって、光ファイバ1の複屈折が増加する。この様子を光ファイバ1の楕円の断面形状として表わす。複屈折は光ファイバ内に、一般に光ファイバの速軸(fast axis)と遅軸(slow axis)として知られる2つの光学軸を形成する。光ファイバの速軸と遅軸とが楕円の長軸と短軸とに相当する。図6(a)は、光信号Sの主軸が楕円の長軸(Y軸方向)に一致する場合を示す。図6(c)は、光信号Sの主軸が楕円の短軸(X軸方向)に一致する場合を示す。これらの場合には、光信号Sが光ファイバ1を伝播する間に、主軸の方向がほとんど変化しない。すなわち、これらの場合には偏波状態が保持される。この状態からの後方散乱光は、偏光度が高くなって観測される。
【0038】
これに対して、図6(b)は、光信号Sの主軸が楕円の軸からずれた場合を示す。この場合には、光信号Sが光ファイバ1を伝播する間に、主軸が大きく回転する。すなわち、この場合には偏波状態が大きく変化する。この状態からの散乱光は、偏光度が低くなって観測される。
【0039】
このように、複屈折が増加すると、光ファイバ1に入力される光信号(偏波)に応じて偏光度が高い場合と低い場合とが生じる。この実施の形態では、このことを利用して、複屈折が増加した位置を探査する。
【0040】
図1に戻り、パルス光源2は、複数の光パルスを順次発生させる。偏波コントローラ3は、各光パルスの偏波状態を異ならせることによって、光ファイバ1の中に複数の偏波状態を発生させる。光ファイバ1の正常な部分で光パルスの偏波状態が緩やかに回転すること、また、複屈折が増加した部分に印加されている応力の方向が不明であることを考慮すると、できるだけ多くの偏波状態を発生させることが好ましい。これにより、光ファイバ1に入射した光パルスが、複屈折の増加した点(障害点)の直前で直線偏光となる可能性が高くなるとともに、直線偏光の主軸の角度が複屈折の方向と一致する可能性も高くなる。
【0041】
1つの形態では、偏波コントローラ3のλ/4波長板11を0°〜180°の間で30°回転させるたびに、λ/2波長板12を0°〜180°の間で30°ずつ回転させる。すなわち、λ/4波長板11の角度を0°にして、λ/2波長板12を0°〜180°の間で30°ずつ回転させる。次にλ/4波長板11の角度を30°にして、λ/2波長板12を0°〜180°の間で30°ずつ回転させる。このようなλ/4波長板11およびλ/2波長板12の回転を、λ/4波長板11の角度が180°になるまで繰り返す。
【0042】
図7は、図1に示した信号処理部によって得られる、偏光度の距離分布を模式的に示した図である。図7を参照して、同一グラフ中の複数の曲線は、光ファイバ1に入射される光パルスの偏波状態を変化させた場合における、偏光度の距離分布を表わしている。
【0043】
光ファイバ1に複屈折増加点が存在しない場合には、図7(a)に示されるように、偏光度は、光ファイバ1の位置および光ファイバ1に入射される光パルスの偏波状態によらず、ほぼ同じである。
【0044】
一方、光ファイバ1に複屈折増加点が存在する場合、図7(b)に示されるように、その複屈折増加点の位置では、偏波状態に応じて偏光度が高くなったり低くなったりする。実施の形態1では、偏光度の最大値と最小値との差分の、光ファイバ1に沿った分布を生成する。
【0045】
図8は、光ファイバ1に複屈折増加点が存在する場合における、偏光度の最大値と最小値との差分の距離分布を示した図である。図8に示すように、光ファイバ1に複屈折増加点が存在する場合、その位置において、偏光度の最大値と最小値との差分がピークとなる。実施の形態1では、偏光度の最大値と偏光度の最小値との差分がピークとなる位置を複屈折増加点(すなわち光ファイバ1の障害点)として検出する。
【0046】
図9は、実施の形態1に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を説明するフローチャートである。図1および図9を参照して、ステップS11において、光ファイバ1に光パルスを入射する。パルス光源2から光パルスが発せられ、その光パルスが偏波コントローラ3を通されることにより、ある偏波状態の光パルスが光ファイバ1に入射される。
【0047】
ステップS12において、偏光度の距離分布を算出する。光ファイバ1を光パルスが伝播することによって後方散乱光が生じる。後方散乱光は、光ファイバ1から光サーキュレータ4を介して偏波解析器5へと送られる。偏波解析器5は、後方散乱光を受けて偏光度を算出する。算出された偏光度は、信号処理部6に送られる。後方散乱光は、光ファイバ1の長手方向におけるさまざまな位置で発生する。したがって、後方散乱光が偏波解析器5に到着する時間と、その後方散乱光から求められる偏光度とを用いて、信号処理部6は偏光度の距離分布を算出する。これにより、ある1つの偏波状態に対する偏光度の距離分布が得られる。
【0048】
ステップS13において、偏波状態を変更するかどうかが判定される。この判定は、たとえば信号処理部6により実行される。偏光度の距離分布がまだ得られていない偏波状態がある場合(ステップS13においてYES)、処理はステップS14に進む。この場合、ステップS14において、光パルスの偏波状態が変更される。たとえば、図2に示した構成において、λ/4波長板11および/またはλ/2波長板12の角度が変更される。ステップS14の処理が終了すると、処理はステップS11に戻される。なお、偏波コントローラ3の制御は、たとえば信号処理部6によって実行される。
【0049】
一方、取り得るすべての偏光状態に対して偏光度の距離分布が得られた場合(ステップS13においてNO)、処理はステップS20に進む。ステップS20において、信号処理部6は、全偏波状態における偏光度の距離分布に基づいて、偏光度の最大値と偏光度の最小値との差分を光ファイバ1の各点について算出する。
【0050】
次にステップS15において、その差分においてピークが存在するかどうかを判定する。この判定は、たとえば信号処理部6によって実行される。たとえば、ある位置における差分が基準値を上回ることにより、ピークが存在すると判定される。
【0051】
ピークが存在する場合(ステップS15においてYES)、処理はステップS16に進む。ステップS16において、差分のピークに対応する位置が、複屈折の増大点、すなわち応力が加わった障害点として検出される。一方、ピークが存在しない場合(ステップS15においてNO)、処理はステップS17に進む。ステップS17において、光ファイバ1が正常であると判断される。ステップS16,S17の処理は、たとえば信号処理部6によって実行される。ステップS16またはステップS17の処理が終了すると、全体の処理が終了する。
【0052】
以上のように実施の形態1によれば、単一のピーク波長の光を用いて光ファイバ1における複屈折の増加位置を検出することができる。従来の構成であれば、互いに異なる波長の光を発生させる。このため波長可変光源あるいは複数の光源が必要となる。波長可変光源を用いた場合には、波長をスイープするために偏光度の測定に時間を要する。また、複数の光源からの光を波長多重して光ファイバに入射する場合には、複数の光源、光源と同数の受光素子、合波器および分波器が必要となる。このため構成が複雑化する。
【0053】
これに対して実施の形態1によれば、単一の光源を用いることによって、簡素な構成で複屈折の増加位置を検出できる。
【0054】
さらに、実施の形態1によれば、光パルスの波長をスイープする必要がないため、短時間での測定が可能となる。
【0055】
さらに、実施の形態1によれば、偏光度の最大値と最小値との差分を算出する。差分を算出することによってピークが明確に発生しやすくなる。したがって、複屈折が増加した位置をより確実に検出することができる。
【0056】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係る光ファイバの解析装置の構成は、図1に示した解析装置51の構成と同様である。実施の形態2は、複屈折の増加位置を検出するための処理の点において実施の形態1と異なっている。
【0057】
図7(b)に示されるように、光ファイバ1の複屈折増加点が存在する場合、その複屈折増加点の位置において、特定の偏波状態では偏光度がピークとなる。特定の偏波状態とは、たとえば図6に示されたような状態である。すなわち、一方向の応力によって光ファイバ1に複屈折が生じ、光ファイバ1に速軸と遅軸とが形成されて、光ファイバ1の断面がいわば楕円形状となっており、光ファイバ1に入射する偏波の主軸が、その楕円の長軸あるいは短軸に一致している状態である。
【0058】
図10は、実施の形態2に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を説明するフローチャートである。図9および図10を参照して、実施の形態2に従う光ファイバの解析方法は、ステップS20の処理が省略される点および、ステップS15,S16の処理に代えてステップS15A,S16Aの処理が実行される点において実施の形態1に従う光ファイバの解析方法と相違する。他のステップの処理は実施の形態1,2で同じである。したがって、ステップS15A以後の処理について以下に説明し、他のステップの処理の説明は繰り返さない。
【0059】
ステップS15Aにおいて、信号処理部6は、偏光状態ごとに得られた偏光度の分布の中に、偏光度のピークが存在するかどうかを判定する。偏光度のピークが存在するかどうかの判定は、たとえば偏光度を基準値と比較することによって判定される。
【0060】
少なくとも1つの偏光状態に対する偏光度の分布に偏光度のピークが存在する場合(ステップS15AにおいてYES)、処理はステップS16Aに進む。ステップS16Aにおいて、偏光度のピークに対応する位置が、複屈折の増大点、すなわち応力が加わった障害点として検出される。
【0061】
一方、いずれの偏光状態に対応する偏光度の分布にもピークが存在しない場合(ステップS15AにおいてNO)、処理はステップS17に進む。ステップS17において、光ファイバ1が正常であると判定される。実施の形態1と同様に、ステップS16A,S17の処理は、たとえば信号処理部6によって実行される。偏光度の距離分布におけるピークを検出することによって、複屈折増加点を検出する。なお、図6に示したように、一方向の応力によって光ファイバ1に複屈折が生じ、光ファイバ1に速軸と遅軸とが形成されて、光ファイバ1の断面がいわば楕円形状となっている場合、偏光の主軸が楕円の長軸または短軸に一致するときに偏光度が高くなる。
【0062】
少なくとも1つの分布において偏光度のピークが存在する場合(ステップS15AにおいてYES)、処理はステップS16Aに進む。ステップS16Aにおいて、偏光度のピークに対応する位置が、複屈折の増大点、すなわち応力が加わった障害点として検出される。
【0063】
一方、いずれの分布にも偏光度のピークが存在しない場合(ステップS15AにおいてNO)、処理はステップS17に進む。ステップS17において、光ファイバ1が正常であると判定される。なお、ステップS16A,S17の処理は、たとえば信号処理部6によって実行される。
【0064】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、簡素な構成で短時間に複屈折が増加した位置を検出できる。
【0065】
また、実施の形態2によれば、偏光度の最大値および偏光度の最小値の差分を算出する必要がない。これにより、より短時間で複屈折増加位置を検出できる。
【0066】
なお、ステップS15Aにおいて、少なくとも2つの分布において偏光度のピークが存在する場合に、ステップS16Aの処理が実行されてもよい。これにより、偏光度の分布にピークが存在するという判断の確実性を高めることができる。すなわち光ファイバ中に複屈折の増加位置が存在することをより確実に判断できる。
【0067】
[実施の形態3]
実施の形態1,2では、偏光度の最大値と最小値との差のピーク、あるいは偏光度のピークを検出することにより、複屈折の増加位置が検出される。しかしながら、複屈折の増加した部分が短い場合には、偏光度の最大値と最小値との差が顕著に出現しにくくなる。また、複屈折の増加の程度が小さい場合には、ノイズの影響を無視できない。実施の形態3によれば、このような場合にも複屈折の増加位置を検出可能である。なお、本発明の実施の形態3に係る光ファイバの解析装置の構成は、図1に示した解析装置51の構成と同様であるので、以後の説明は繰り返さない。
【0068】
図11は、実施の形態3に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を模式的に説明した図である。図1および図11を参照して、まず、偏波コントローラ3が各光パルスの偏波状態を異ならせることによって、光ファイバ1の中に複数の偏波状態を発生させる。偏波解析器5は、光サーキュレータ4を介して入力された後方散乱光の偏波特性を解析して、全ての偏波状態について偏光度を算出する。この処理は、実施の形態1,2で説明した処理と同じである。なお、図11では、全ての偏波状態に対して得られた偏光度が、図7(a)と同様に偏光度の距離分布として示されている。
【0069】
次に、信号処理部6は一定時間ごとに偏光度の平均値を求める。これにより光ファイバ1の長手方向に沿った距離と偏光度の平均値との関係を示す曲線が得られる。信号処理部6は、その曲線において変曲点あるいは偏光度の平均値の低下部分が存在する場合に、その変曲点あるいは偏光度の平均値の低下部分に対応する位置を複屈折増加点として検出する。「低下部分」とは、たとえば曲線により形成される底の部分のことである。なお、曲線における変曲点あるいは低下部分を検出するための方法には種々の公知の方法を用いることができるので、以後の詳細な説明は繰り返さない。
【0070】
図12は、実施の形態3に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を説明するためのフローチャートである。図9および図12を参照して、実施の形態3に係る光ファイバの解析方法は、ステップS20,S15,S16の処理に代えてステップS21,S15B,S16Bの処理が実行される点で、実施の形態1に係る光ファイバの解析方法と異なる。図12に示した他のステップの処理は、図9の対応するステップの処理と同様である。したがって、以下では、ステップS21,S15B,S16Bの処理について詳細に説明する。
【0071】
ステップS21において、信号処理部6は、全偏波状態における偏光度の距離分布に基づいて、偏光度の時間平均(一定時間ごとの平均)を算出し、光ファイバの長手方向の距離と偏光度の平均値との関係を示す曲線を取得する。ステップS15Bにおいて、信号処理部6は、その曲線において変曲点または低下部分が存在するかどうかを判定する。
【0072】
変曲点または低下部分が存在する場合(ステップS15BにおいてYES)、処理はステップS16Bに進む。ステップS16Bにおいて、変曲点または低下部分に対応する位置が、複屈折の増大点、すなわち応力が加わった障害点として検出される。一方、変曲点および低下部分のいずれも検出されない場合(ステップS15BにおいてNO)、処理はステップS17に進み、光ファイバが正常であると判定される。
【0073】
実施の形態3によれば、実施の形態1,2と同様に、簡素な構成で短時間に複屈折が増加した位置を検出できる。加えて、実施の形態3によれば、複屈折の増加した部分が短い場合あるいは複屈折の増加の程度が小さい場合にも複屈折の増加位置を検出することができる。
【0074】
なお、実施の形態3に係る解析方法は、単独で実行されてもよいし、実施の形態1または実施の形態2に係る解析方法と組み合わせて実行されてもよい。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1 光ファイバ、2 パルス光源、3 偏波コントローラ、4 光サーキュレータ、5 偏波解析器、6 信号処理部、7 出力部、11 λ/4波長板、12 λ/2波長板、21a〜21d 偏光フィルタ、22a〜22d フォトダイオード、23a〜23d 増幅器、24 4チャネルADC、25 DSP/メモリ、51 解析装置、S 光信号。
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバの解析装置および解析方法に関し、特に、光ファイバ中における複屈折の増加位置を探査するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの一部に応力が加わった場合、その部分において複屈折が増加する。したがって、複屈折が増加している部分を探査することによって、応力が加わっている点を検出することができる。
【0003】
複屈折が増加した場合、偏波モード分散値が増大する。偏波モード分散測定に関して以下のような技術が提案されている。
【0004】
たとえば特開2005−43265号公報(特許文献1)は、偏波OTDRを利用して、光ファイバの長手方向に沿った偏波モード分散分布を測定する方法を開示している。この方法では、波長が異なる光パルスを光ファイバに入射し、その光パルスが光ファイバを伝搬する際に発生する後方散乱光の偏波状態を測定する。
【0005】
たとえば特開2003−106942号公報(特許文献2)に開示された偏波モード分散分布測定装置は、以下の方法によって、光ファイバの各位置における偏波モード分散を測定する。すなわち、互いに異なる波長を有する複数の光パルスを波長多重し、その波長多重された複数のパルスを偏光器に通して光ファイバに入射する。その光ファイバから出射される後方散乱光の0°、45°、90°および円の各成分を選択的に抽出して、その成分を異なる波長の光に分波する。その分波された光に基づいて、偏波モード分散が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−43265号公報
【特許文献2】特開2003−106942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2005−43265号公報(特許文献1)に開示された方法では波長可変光源を利用して波長をスイープすることにより、波長が異なる光パルスが生成される。このため、測定に時間を要するという課題が発生する。
【0008】
特開2003−106942号公報(特許文献2)に開示された方法では、互いに異なる波長を有する複数の光パルスを波長多重して光ファイバに入射する。これにより、波長をスイープする場合に比較して測定時間を短縮できると考えられる。しかし、特開2003−106942号公報(特許文献2)に開示された方法は、JME法(ジョーンズ行列固有値解析法)を前提としているため、測定が複雑化するという課題がある。
【0009】
本発明の目的は、光ファイバ中の複屈折の増加位置を、簡素な構成で短時間に検出するための解析装置および解析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある局面に係る光ファイバの解析装置は、ピーク波長が同じであり、偏波状態が互いに異なる複数の偏光パルスを発生させる偏光パルス発生部と、複数の偏光パルスの各々が光ファイバを伝播することによって生じる後方散乱光を受けて、偏光度を算出する偏光度算出部と、複数の偏光パルスの各々を光ファイバに導くとともに、後方散乱光を偏光度算出部に導く結合器と、処理部とを備える。処理部は、偏光度算出部によって算出された偏光度を用いて、偏波状態ごとに、偏光度の、光ファイバの長手方向の分布を算出する。処理部は、分布に基づいて、光ファイバにおける複屈折の増加位置を検出する。
【0011】
好ましくは、処理部は、偏波状態ごとの分布から、偏光度の最大値と偏光度の最小値との差の、光ファイバの長手方向の分布を算出する。処理部は、差のピークの位置を、複屈折の増加位置として検出する。
【0012】
好ましくは、処理部は、偏波状態として取り得るすべての状態での分布のうちの少なくとも1つに対する分布に偏光度のピークが存在する場合に、ピークが検出される光ファイバの位置を、複屈折の増加位置として検出する。
【0013】
好ましくは、処理部は、偏波状態ごとの偏光度の分布を一定時間ごとに平均することにより、光ファイバの長手方向の距離に対する偏光度の平均値の関係を示す曲線を得て、当該曲線の変曲点または低下部分を、複屈折の増加位置として検出する。
【0014】
本発明の他の局面に係る光ファイバの解析方法は、ピーク波長が同じであり、偏波状態が互いに異なる複数の偏光パルスを発生させるステップと、複数の偏光パルスの各々が光ファイバを伝播することによって生じる後方散乱光を受光することによって偏光度を算出するステップと、算出された偏光度を用いて、偏波状態ごとに、偏光度の、光ファイバの長手方向の分布を算出するステップと、算出された分布に基づいて、光ファイバにおける複屈折の増加位置を検出するステップとを備える。
【0015】
好ましくは、検出するステップにおいて、偏波状態ごとの分布から、偏光度の最大値と偏光度の最小値との差の、光ファイバの長手方向の分布を算出して、差のピークの位置を、複屈折の増加位置として検出する。
【0016】
好ましくは、検出するステップにおいて、偏波状態として取り得るすべての状態での分布のうちの少なくとも1つに対する分布に偏光度のピークが存在する場合に、ピークが検出される光ファイバの位置を、複屈折の増加位置として検出する。
【0017】
好ましくは、算出するステップは、偏波状態ごとの偏光度の分布を一定時間ごとに平均して、光ファイバの長手方向の距離に対する偏光度の平均値の関係を示す曲線を得るステップを含む。検出するステップにおいて、曲線の変曲点または低下部分を、複屈折の増加位置として検出する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光ファイバ中の複屈折の増加位置を、簡素な構成で短時間に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光ファイバの解析装置51の構成を示した図である。
【図2】偏波コントローラの一例を示した図である。
【図3】偏波を表わすためのポアンカレ球を示した図である。
【図4】図1に示した偏波解析器の構成例を概略的に示した図である。
【図5】正常な光ファイバを偏波が伝播する状態を説明した図である。
【図6】応力を受けた光ファイバを偏波が伝播する状態を説明した図である。
【図7】図1に示した信号処理部によって得られる、偏光度の距離分布を模式的に示した図である。
【図8】光ファイバ1に複屈折増加点が存在する場合における、偏光度の最大値と最小値との差分の距離分布を示した図である。
【図9】実施の形態1に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を説明するフローチャートである。
【図10】実施の形態2に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を説明するフローチャートである。
【図11】実施の形態3に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を模式的に説明した図である。
【図12】実施の形態3に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰返さない。
【0021】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ファイバの解析装置51の構成を示した図である。図1を参照して、解析装置51は、パルス光源2と、偏波コントローラ3と、光サーキュレータ4と、偏波解析器5と、信号処理部6と、出力部7とを備える。
【0022】
パルス光源2は、解析対象の光ファイバ1を伝搬する光パルスを送出するための光源である。パルス光源2は、単一のピーク波長λを有する光パルスを送出する。
【0023】
パルス光源2は、レーザ光源によって実現可能である。多くの場合、レーザ光源から発せられるレーザ光は直線偏光に近い円偏光である。レーザ光源の種類は特に限定されず、たとえば半導体レーザをパルス光源2に適用することができる。
【0024】
偏波コントローラ3は、パルス光源2から送出された光パルスの偏波状態を、任意の偏波状態へと変化させる。偏波コントローラ3から出射された光パルスは、光サーキュレータ4を介して光ファイバ1に入力される。なお、パルス光源2および偏波コントローラ3は、本発明における「偏光パルス発生部」を実現する。偏光パルス発生部は、ピーク波長が同じであり、偏波状態が互いに異なる複数の光パルスを発生させる。
【0025】
光ファイバ1は、たとえば既設の光ファイバである。なお、光ファイバ1の長手方向の距離は特に限定されるものではない。
【0026】
光パルスが光ファイバ1を伝搬するに伴い、光ファイバ1内で後方散乱光が発生する。後方散乱光は、光ファイバ1の入射端側(光パルスが入射された端部)に戻る。光サーキュレータ4は、偏波状態が互いに異なる光パルスの各々を光ファイバ1に導くとともに、光ファイバ1内で発生した各々のパルスからの後方散乱光を偏波解析器5へと導く結合器である。
【0027】
偏波解析器5は、光サーキュレータ4を介して入力された後方散乱光の偏波特性を解析して、偏光度を算出する。偏光度とは、平均全光パワーと、完全に偏光した光の強度との比を表わしたものである。偏波解析器5は、その算出された偏光度を信号処理部6に送出する。
【0028】
信号処理部6は、偏波解析器5から送られる偏光度を用いて、光ファイバ1の長手方向に沿った偏光度の分布(偏光度の距離分布)を求める。信号処理部6は、さらに、その偏光度の距離分布から、複屈折が増加している点を決定することができる。信号処理部6は、具体的にはコンピュータによって実現される。
【0029】
出力部7は、信号処理部6による処理の結果を出力する。たとえば出力部7はディスプレイあるいはプリンタによって実現される。
【0030】
図2は、偏波コントローラの一例を示した図である。図2を参照して、偏波コントローラ3は、λ/4波長板11とλ/2波長板12とを含む。λ/4波長板11およびλ/2波長板12の各々は独立に回転可能である。λ/4波長板11は、円偏波を直線偏波に変換する。λ/2波長板12は、直線偏波の主軸角を回転させる。これにより、任意の偏波状態を有する光パルス(偏光パルス)を発生させることができる。λ/4波長板11およびλ/2波長板12は、たとえば複屈折結晶によって実現可能であるが、光ファイバによって実現することもできる。
【0031】
次に、偏波解析器5による偏光度の算出について説明する。図3は、偏波を表わすためのポアンカレ球を示した図である。図3を参照して、単位半径上の各ポイントは、一意の偏波状態を表わす。赤道上のポイントは直線偏波の状態を表わす。北極と南極は円偏波を表わし、残りのエリアは円偏波状態を表わす。円偏波の右回りの状態は北半球に表示され、左回りの状態は南半球に表示される。偏波状態が変化する様子は球表面のトレースによって表現される。
【0032】
図4は、図1に示した偏波解析器の構成例を概略的に示した図である。図4を参照して、入力光は、4つのサブビームに分割される。各ビームは、偏光フィルタ(21a〜21d)を通される。フォトダイオード22a〜22dは、4つのサブビームに対応してそれぞれ設けられて、対応する成分を検出する。フォトダイオード22a〜22dからの信号は増幅器23a〜23dでそれぞれ増幅される。4チャネルADC(AD変換器)24は各増幅器からのアナログ信号をデジタル値に変換する。DSP(Digital Signal Processor)/メモリ25は、4チャネルADC24から出力されるデジタル値を用いて、ポアンカレ球上で偏波状態を表現するために用いられるストークスパラメータ(S1,S2,S3)を算出し、そのストークスパラメータに基づいて、偏光度を算出する。偏光度は以下の式に従って表わされる。
【0033】
(偏光度)=√(S12+S22+S32)
なお、ストークスパラメータの算出方法については、公知の方法を適用可能であるので詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0034】
本発明の実施の形態では、上記の構成を用いて、光ファイバ1における複屈折の増加位置を探査する。
【0035】
図5は、正常な光ファイバを偏波が伝播する状態を説明した図である。図5を参照して、光ファイバ1が応力を受けていない場合、すなわち光ファイバ1が正常である場合には光ファイバ1の断面はほぼ円形である。この場合には光ファイバ1の複屈折が小さいため、光信号Sが光ファイバ1を伝播するのにともなう偏波状態の変化は緩やかである。すなわち、光信号S(偏波)の主軸は光ファイバ1を伝播するのにともなって緩やかに回転する。
【0036】
さらに、図5(a)〜図5(c)は、偏波状態の異なる光信号Sが光ファイバ1に入射した場合の偏波状態の変化を示している。光ファイバ1が正常な場合には、光信号の偏波状態が異なっていても、光ファイバ1の内部での偏波状態の変化は緩やかである。
【0037】
図6は、応力を受けた光ファイバを偏波が伝播する状態を説明した図である。図6を参照して、光ファイバ1が一方向(X軸方向)の応力を受けることによって、光ファイバ1の複屈折が増加する。この様子を光ファイバ1の楕円の断面形状として表わす。複屈折は光ファイバ内に、一般に光ファイバの速軸(fast axis)と遅軸(slow axis)として知られる2つの光学軸を形成する。光ファイバの速軸と遅軸とが楕円の長軸と短軸とに相当する。図6(a)は、光信号Sの主軸が楕円の長軸(Y軸方向)に一致する場合を示す。図6(c)は、光信号Sの主軸が楕円の短軸(X軸方向)に一致する場合を示す。これらの場合には、光信号Sが光ファイバ1を伝播する間に、主軸の方向がほとんど変化しない。すなわち、これらの場合には偏波状態が保持される。この状態からの後方散乱光は、偏光度が高くなって観測される。
【0038】
これに対して、図6(b)は、光信号Sの主軸が楕円の軸からずれた場合を示す。この場合には、光信号Sが光ファイバ1を伝播する間に、主軸が大きく回転する。すなわち、この場合には偏波状態が大きく変化する。この状態からの散乱光は、偏光度が低くなって観測される。
【0039】
このように、複屈折が増加すると、光ファイバ1に入力される光信号(偏波)に応じて偏光度が高い場合と低い場合とが生じる。この実施の形態では、このことを利用して、複屈折が増加した位置を探査する。
【0040】
図1に戻り、パルス光源2は、複数の光パルスを順次発生させる。偏波コントローラ3は、各光パルスの偏波状態を異ならせることによって、光ファイバ1の中に複数の偏波状態を発生させる。光ファイバ1の正常な部分で光パルスの偏波状態が緩やかに回転すること、また、複屈折が増加した部分に印加されている応力の方向が不明であることを考慮すると、できるだけ多くの偏波状態を発生させることが好ましい。これにより、光ファイバ1に入射した光パルスが、複屈折の増加した点(障害点)の直前で直線偏光となる可能性が高くなるとともに、直線偏光の主軸の角度が複屈折の方向と一致する可能性も高くなる。
【0041】
1つの形態では、偏波コントローラ3のλ/4波長板11を0°〜180°の間で30°回転させるたびに、λ/2波長板12を0°〜180°の間で30°ずつ回転させる。すなわち、λ/4波長板11の角度を0°にして、λ/2波長板12を0°〜180°の間で30°ずつ回転させる。次にλ/4波長板11の角度を30°にして、λ/2波長板12を0°〜180°の間で30°ずつ回転させる。このようなλ/4波長板11およびλ/2波長板12の回転を、λ/4波長板11の角度が180°になるまで繰り返す。
【0042】
図7は、図1に示した信号処理部によって得られる、偏光度の距離分布を模式的に示した図である。図7を参照して、同一グラフ中の複数の曲線は、光ファイバ1に入射される光パルスの偏波状態を変化させた場合における、偏光度の距離分布を表わしている。
【0043】
光ファイバ1に複屈折増加点が存在しない場合には、図7(a)に示されるように、偏光度は、光ファイバ1の位置および光ファイバ1に入射される光パルスの偏波状態によらず、ほぼ同じである。
【0044】
一方、光ファイバ1に複屈折増加点が存在する場合、図7(b)に示されるように、その複屈折増加点の位置では、偏波状態に応じて偏光度が高くなったり低くなったりする。実施の形態1では、偏光度の最大値と最小値との差分の、光ファイバ1に沿った分布を生成する。
【0045】
図8は、光ファイバ1に複屈折増加点が存在する場合における、偏光度の最大値と最小値との差分の距離分布を示した図である。図8に示すように、光ファイバ1に複屈折増加点が存在する場合、その位置において、偏光度の最大値と最小値との差分がピークとなる。実施の形態1では、偏光度の最大値と偏光度の最小値との差分がピークとなる位置を複屈折増加点(すなわち光ファイバ1の障害点)として検出する。
【0046】
図9は、実施の形態1に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を説明するフローチャートである。図1および図9を参照して、ステップS11において、光ファイバ1に光パルスを入射する。パルス光源2から光パルスが発せられ、その光パルスが偏波コントローラ3を通されることにより、ある偏波状態の光パルスが光ファイバ1に入射される。
【0047】
ステップS12において、偏光度の距離分布を算出する。光ファイバ1を光パルスが伝播することによって後方散乱光が生じる。後方散乱光は、光ファイバ1から光サーキュレータ4を介して偏波解析器5へと送られる。偏波解析器5は、後方散乱光を受けて偏光度を算出する。算出された偏光度は、信号処理部6に送られる。後方散乱光は、光ファイバ1の長手方向におけるさまざまな位置で発生する。したがって、後方散乱光が偏波解析器5に到着する時間と、その後方散乱光から求められる偏光度とを用いて、信号処理部6は偏光度の距離分布を算出する。これにより、ある1つの偏波状態に対する偏光度の距離分布が得られる。
【0048】
ステップS13において、偏波状態を変更するかどうかが判定される。この判定は、たとえば信号処理部6により実行される。偏光度の距離分布がまだ得られていない偏波状態がある場合(ステップS13においてYES)、処理はステップS14に進む。この場合、ステップS14において、光パルスの偏波状態が変更される。たとえば、図2に示した構成において、λ/4波長板11および/またはλ/2波長板12の角度が変更される。ステップS14の処理が終了すると、処理はステップS11に戻される。なお、偏波コントローラ3の制御は、たとえば信号処理部6によって実行される。
【0049】
一方、取り得るすべての偏光状態に対して偏光度の距離分布が得られた場合(ステップS13においてNO)、処理はステップS20に進む。ステップS20において、信号処理部6は、全偏波状態における偏光度の距離分布に基づいて、偏光度の最大値と偏光度の最小値との差分を光ファイバ1の各点について算出する。
【0050】
次にステップS15において、その差分においてピークが存在するかどうかを判定する。この判定は、たとえば信号処理部6によって実行される。たとえば、ある位置における差分が基準値を上回ることにより、ピークが存在すると判定される。
【0051】
ピークが存在する場合(ステップS15においてYES)、処理はステップS16に進む。ステップS16において、差分のピークに対応する位置が、複屈折の増大点、すなわち応力が加わった障害点として検出される。一方、ピークが存在しない場合(ステップS15においてNO)、処理はステップS17に進む。ステップS17において、光ファイバ1が正常であると判断される。ステップS16,S17の処理は、たとえば信号処理部6によって実行される。ステップS16またはステップS17の処理が終了すると、全体の処理が終了する。
【0052】
以上のように実施の形態1によれば、単一のピーク波長の光を用いて光ファイバ1における複屈折の増加位置を検出することができる。従来の構成であれば、互いに異なる波長の光を発生させる。このため波長可変光源あるいは複数の光源が必要となる。波長可変光源を用いた場合には、波長をスイープするために偏光度の測定に時間を要する。また、複数の光源からの光を波長多重して光ファイバに入射する場合には、複数の光源、光源と同数の受光素子、合波器および分波器が必要となる。このため構成が複雑化する。
【0053】
これに対して実施の形態1によれば、単一の光源を用いることによって、簡素な構成で複屈折の増加位置を検出できる。
【0054】
さらに、実施の形態1によれば、光パルスの波長をスイープする必要がないため、短時間での測定が可能となる。
【0055】
さらに、実施の形態1によれば、偏光度の最大値と最小値との差分を算出する。差分を算出することによってピークが明確に発生しやすくなる。したがって、複屈折が増加した位置をより確実に検出することができる。
【0056】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係る光ファイバの解析装置の構成は、図1に示した解析装置51の構成と同様である。実施の形態2は、複屈折の増加位置を検出するための処理の点において実施の形態1と異なっている。
【0057】
図7(b)に示されるように、光ファイバ1の複屈折増加点が存在する場合、その複屈折増加点の位置において、特定の偏波状態では偏光度がピークとなる。特定の偏波状態とは、たとえば図6に示されたような状態である。すなわち、一方向の応力によって光ファイバ1に複屈折が生じ、光ファイバ1に速軸と遅軸とが形成されて、光ファイバ1の断面がいわば楕円形状となっており、光ファイバ1に入射する偏波の主軸が、その楕円の長軸あるいは短軸に一致している状態である。
【0058】
図10は、実施の形態2に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を説明するフローチャートである。図9および図10を参照して、実施の形態2に従う光ファイバの解析方法は、ステップS20の処理が省略される点および、ステップS15,S16の処理に代えてステップS15A,S16Aの処理が実行される点において実施の形態1に従う光ファイバの解析方法と相違する。他のステップの処理は実施の形態1,2で同じである。したがって、ステップS15A以後の処理について以下に説明し、他のステップの処理の説明は繰り返さない。
【0059】
ステップS15Aにおいて、信号処理部6は、偏光状態ごとに得られた偏光度の分布の中に、偏光度のピークが存在するかどうかを判定する。偏光度のピークが存在するかどうかの判定は、たとえば偏光度を基準値と比較することによって判定される。
【0060】
少なくとも1つの偏光状態に対する偏光度の分布に偏光度のピークが存在する場合(ステップS15AにおいてYES)、処理はステップS16Aに進む。ステップS16Aにおいて、偏光度のピークに対応する位置が、複屈折の増大点、すなわち応力が加わった障害点として検出される。
【0061】
一方、いずれの偏光状態に対応する偏光度の分布にもピークが存在しない場合(ステップS15AにおいてNO)、処理はステップS17に進む。ステップS17において、光ファイバ1が正常であると判定される。実施の形態1と同様に、ステップS16A,S17の処理は、たとえば信号処理部6によって実行される。偏光度の距離分布におけるピークを検出することによって、複屈折増加点を検出する。なお、図6に示したように、一方向の応力によって光ファイバ1に複屈折が生じ、光ファイバ1に速軸と遅軸とが形成されて、光ファイバ1の断面がいわば楕円形状となっている場合、偏光の主軸が楕円の長軸または短軸に一致するときに偏光度が高くなる。
【0062】
少なくとも1つの分布において偏光度のピークが存在する場合(ステップS15AにおいてYES)、処理はステップS16Aに進む。ステップS16Aにおいて、偏光度のピークに対応する位置が、複屈折の増大点、すなわち応力が加わった障害点として検出される。
【0063】
一方、いずれの分布にも偏光度のピークが存在しない場合(ステップS15AにおいてNO)、処理はステップS17に進む。ステップS17において、光ファイバ1が正常であると判定される。なお、ステップS16A,S17の処理は、たとえば信号処理部6によって実行される。
【0064】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、簡素な構成で短時間に複屈折が増加した位置を検出できる。
【0065】
また、実施の形態2によれば、偏光度の最大値および偏光度の最小値の差分を算出する必要がない。これにより、より短時間で複屈折増加位置を検出できる。
【0066】
なお、ステップS15Aにおいて、少なくとも2つの分布において偏光度のピークが存在する場合に、ステップS16Aの処理が実行されてもよい。これにより、偏光度の分布にピークが存在するという判断の確実性を高めることができる。すなわち光ファイバ中に複屈折の増加位置が存在することをより確実に判断できる。
【0067】
[実施の形態3]
実施の形態1,2では、偏光度の最大値と最小値との差のピーク、あるいは偏光度のピークを検出することにより、複屈折の増加位置が検出される。しかしながら、複屈折の増加した部分が短い場合には、偏光度の最大値と最小値との差が顕著に出現しにくくなる。また、複屈折の増加の程度が小さい場合には、ノイズの影響を無視できない。実施の形態3によれば、このような場合にも複屈折の増加位置を検出可能である。なお、本発明の実施の形態3に係る光ファイバの解析装置の構成は、図1に示した解析装置51の構成と同様であるので、以後の説明は繰り返さない。
【0068】
図11は、実施の形態3に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を模式的に説明した図である。図1および図11を参照して、まず、偏波コントローラ3が各光パルスの偏波状態を異ならせることによって、光ファイバ1の中に複数の偏波状態を発生させる。偏波解析器5は、光サーキュレータ4を介して入力された後方散乱光の偏波特性を解析して、全ての偏波状態について偏光度を算出する。この処理は、実施の形態1,2で説明した処理と同じである。なお、図11では、全ての偏波状態に対して得られた偏光度が、図7(a)と同様に偏光度の距離分布として示されている。
【0069】
次に、信号処理部6は一定時間ごとに偏光度の平均値を求める。これにより光ファイバ1の長手方向に沿った距離と偏光度の平均値との関係を示す曲線が得られる。信号処理部6は、その曲線において変曲点あるいは偏光度の平均値の低下部分が存在する場合に、その変曲点あるいは偏光度の平均値の低下部分に対応する位置を複屈折増加点として検出する。「低下部分」とは、たとえば曲線により形成される底の部分のことである。なお、曲線における変曲点あるいは低下部分を検出するための方法には種々の公知の方法を用いることができるので、以後の詳細な説明は繰り返さない。
【0070】
図12は、実施の形態3に係る光ファイバの解析方法(複屈折増加位置の探査方法)を説明するためのフローチャートである。図9および図12を参照して、実施の形態3に係る光ファイバの解析方法は、ステップS20,S15,S16の処理に代えてステップS21,S15B,S16Bの処理が実行される点で、実施の形態1に係る光ファイバの解析方法と異なる。図12に示した他のステップの処理は、図9の対応するステップの処理と同様である。したがって、以下では、ステップS21,S15B,S16Bの処理について詳細に説明する。
【0071】
ステップS21において、信号処理部6は、全偏波状態における偏光度の距離分布に基づいて、偏光度の時間平均(一定時間ごとの平均)を算出し、光ファイバの長手方向の距離と偏光度の平均値との関係を示す曲線を取得する。ステップS15Bにおいて、信号処理部6は、その曲線において変曲点または低下部分が存在するかどうかを判定する。
【0072】
変曲点または低下部分が存在する場合(ステップS15BにおいてYES)、処理はステップS16Bに進む。ステップS16Bにおいて、変曲点または低下部分に対応する位置が、複屈折の増大点、すなわち応力が加わった障害点として検出される。一方、変曲点および低下部分のいずれも検出されない場合(ステップS15BにおいてNO)、処理はステップS17に進み、光ファイバが正常であると判定される。
【0073】
実施の形態3によれば、実施の形態1,2と同様に、簡素な構成で短時間に複屈折が増加した位置を検出できる。加えて、実施の形態3によれば、複屈折の増加した部分が短い場合あるいは複屈折の増加の程度が小さい場合にも複屈折の増加位置を検出することができる。
【0074】
なお、実施の形態3に係る解析方法は、単独で実行されてもよいし、実施の形態1または実施の形態2に係る解析方法と組み合わせて実行されてもよい。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1 光ファイバ、2 パルス光源、3 偏波コントローラ、4 光サーキュレータ、5 偏波解析器、6 信号処理部、7 出力部、11 λ/4波長板、12 λ/2波長板、21a〜21d 偏光フィルタ、22a〜22d フォトダイオード、23a〜23d 増幅器、24 4チャネルADC、25 DSP/メモリ、51 解析装置、S 光信号。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピーク波長が同じであり、偏波状態が互いに異なる複数の偏光パルスを発生させる偏光パルス発生部と、
前記複数の偏光パルスの各々が光ファイバを伝播することによって生じる後方散乱光を受けて、偏光度を算出する偏光度算出部と、
前記複数の偏光パルスの各々を前記光ファイバに導くとともに、前記後方散乱光を前記偏光度算出部に導く結合器と、
前記偏光度算出部によって算出された前記偏光度を用いて、前記偏波状態ごとに、前記偏光度の、前記光ファイバの長手方向の分布を算出し、前記分布に基づいて、前記光ファイバにおける複屈折の増加位置を検出する処理部とを備える、光ファイバの解析装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記偏波状態ごとの前記分布から、前記偏光度の最大値と前記偏光度の最小値との差の、前記光ファイバの長手方向の分布を算出して、前記差のピークの位置を、前記複屈折の増加位置として検出する、請求項1に記載の光ファイバの解析装置。
【請求項3】
前記処理部は、偏波状態として取り得るすべての状態での前記分布のうちの少なくとも1つに対する前記分布に前記偏光度のピークが存在する場合に、前記ピークが検出される前記光ファイバの位置を、前記複屈折の増加位置として検出する、請求項1に記載の光ファイバの解析装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記偏波状態ごとの前記偏光度の分布を一定時間ごとに平均することにより、前記光ファイバの前記長手方向の距離に対する前記偏光度の平均値の関係を示す曲線を得て、当該曲線の変曲点または低下部分を、前記複屈折の増加位置として検出する、請求項1に記載の光ファイバの解析装置。
【請求項5】
ピーク波長が同じであり、偏波状態が互いに異なる複数の偏光パルスを発生させるステップと、
前記複数の偏光パルスの各々が光ファイバを伝播することによって生じる後方散乱光を受光することによって偏光度を算出するステップと、
算出された偏光度を用いて、偏波状態ごとに、前記偏光度の、光ファイバの長手方向の分布を算出するステップと、
算出された分布に基づいて、前記光ファイバにおける複屈折の増加位置を検出するステップとを備える、光ファイバの解析方法。
【請求項6】
前記検出するステップにおいて、前記偏波状態ごとの前記分布から、前記偏光度の最大値と前記偏光度の最小値との差の、前記光ファイバの長手方向の分布を算出して、前記差のピークの位置を、前記複屈折の増加位置として検出する、請求項5に記載の光ファイバの解析方法。
【請求項7】
前記検出するステップにおいて、偏波状態として取り得るすべての状態での前記分布のうちの少なくとも1つに対する前記分布に前記偏光度のピークが存在する場合に、前記ピークが検出される前記光ファイバの位置を、前記複屈折の増加位置として検出する、請求項5に記載の光ファイバの解析方法。
【請求項8】
前記算出するステップは、前記偏波状態ごとの前記偏光度の分布を一定時間ごとに平均して、前記光ファイバの前記長手方向の距離に対する前記偏光度の平均値の関係を示す曲線を得るステップを含み、
前記検出するステップにおいて、前記曲線の変曲点または低下部分を、前記複屈折の増加位置として検出する、請求項5に記載の光ファイバの解析方法。
【請求項1】
ピーク波長が同じであり、偏波状態が互いに異なる複数の偏光パルスを発生させる偏光パルス発生部と、
前記複数の偏光パルスの各々が光ファイバを伝播することによって生じる後方散乱光を受けて、偏光度を算出する偏光度算出部と、
前記複数の偏光パルスの各々を前記光ファイバに導くとともに、前記後方散乱光を前記偏光度算出部に導く結合器と、
前記偏光度算出部によって算出された前記偏光度を用いて、前記偏波状態ごとに、前記偏光度の、前記光ファイバの長手方向の分布を算出し、前記分布に基づいて、前記光ファイバにおける複屈折の増加位置を検出する処理部とを備える、光ファイバの解析装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記偏波状態ごとの前記分布から、前記偏光度の最大値と前記偏光度の最小値との差の、前記光ファイバの長手方向の分布を算出して、前記差のピークの位置を、前記複屈折の増加位置として検出する、請求項1に記載の光ファイバの解析装置。
【請求項3】
前記処理部は、偏波状態として取り得るすべての状態での前記分布のうちの少なくとも1つに対する前記分布に前記偏光度のピークが存在する場合に、前記ピークが検出される前記光ファイバの位置を、前記複屈折の増加位置として検出する、請求項1に記載の光ファイバの解析装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記偏波状態ごとの前記偏光度の分布を一定時間ごとに平均することにより、前記光ファイバの前記長手方向の距離に対する前記偏光度の平均値の関係を示す曲線を得て、当該曲線の変曲点または低下部分を、前記複屈折の増加位置として検出する、請求項1に記載の光ファイバの解析装置。
【請求項5】
ピーク波長が同じであり、偏波状態が互いに異なる複数の偏光パルスを発生させるステップと、
前記複数の偏光パルスの各々が光ファイバを伝播することによって生じる後方散乱光を受光することによって偏光度を算出するステップと、
算出された偏光度を用いて、偏波状態ごとに、前記偏光度の、光ファイバの長手方向の分布を算出するステップと、
算出された分布に基づいて、前記光ファイバにおける複屈折の増加位置を検出するステップとを備える、光ファイバの解析方法。
【請求項6】
前記検出するステップにおいて、前記偏波状態ごとの前記分布から、前記偏光度の最大値と前記偏光度の最小値との差の、前記光ファイバの長手方向の分布を算出して、前記差のピークの位置を、前記複屈折の増加位置として検出する、請求項5に記載の光ファイバの解析方法。
【請求項7】
前記検出するステップにおいて、偏波状態として取り得るすべての状態での前記分布のうちの少なくとも1つに対する前記分布に前記偏光度のピークが存在する場合に、前記ピークが検出される前記光ファイバの位置を、前記複屈折の増加位置として検出する、請求項5に記載の光ファイバの解析方法。
【請求項8】
前記算出するステップは、前記偏波状態ごとの前記偏光度の分布を一定時間ごとに平均して、前記光ファイバの前記長手方向の距離に対する前記偏光度の平均値の関係を示す曲線を得るステップを含み、
前記検出するステップにおいて、前記曲線の変曲点または低下部分を、前記複屈折の増加位置として検出する、請求項5に記載の光ファイバの解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−47669(P2013−47669A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140967(P2012−140967)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]