光ファイバケーブル、光ファイバ取り出し方法及び光ファイバ取り出し工具
【課題】一般に光ケーブルはシース外周の長手方向に沿ってノッチが形成され、そのノッチをキッカケにしてケーブル内部を開き、内部のテープ心線を後分岐することが行われている。しかしながら、従来の光ケーブルは前記シースの分割を行うとシースにテープ心線が張り付いたまま分割され、テープ心線に曲げを与え損失変動を発生させることがあった。また、他の一部の光ケーブルは、ノッチを境にシースを光テープ心線の近傍まで切り裂くために大きな力を要し、光ファイバテープ心線に損失に与える欠点があった。
【解決手段】本発明は、シースと光ファイバとの間に接するように介在物をその長手方向に沿って並行に配置する。このため、シースの分割時に光ファイバはシースに張り付くことがない。この結果、光テープ心線の取出しが容易に行うことができ、光ファイバ心線に損失を与えることが無い。
【解決手段】本発明は、シースと光ファイバとの間に接するように介在物をその長手方向に沿って並行に配置する。このため、シースの分割時に光ファイバはシースに張り付くことがない。この結果、光テープ心線の取出しが容易に行うことができ、光ファイバ心線に損失を与えることが無い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ(単数あるいは複数の光ファイバ単心線、光ファイバユニット、テープ状光ファイバ心線などを含む)をシース内に収容した光ファイバケーブルに関するものである。特に、ケーブル長手の中間で光ファイバ心線を後分岐し、中間引落しを行う配線ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光加入者線路網の構築が急速に進んでいる。従来、幹線光ファイバケーブルと各家庭などの宅内に引き込むための引き込み用光ファイバケーブルをつなぐ配線ケーブルとして図17に示すような光ファイバケーブル100が使用されている。図17において、符号3は光ファイバテープ心線、4は緩衝体、5はテンションメンバ、6は支持線、7はシース、8はシース切り裂き紐である。このケーブルは長手の中間でケーブル外被を除去し光損失変動なしに心線を取出すことが可能なように、パイプ状のシース7の中に光ファイバテープ心線3が緩衝体4で覆われて収容された構造となっている。
このような光ファイバケーブルとして例えば特許文献1や特許文献2に開示されたものがある。
【0003】
一方,少心の配線ケーブルとして図18に示すような光ファイバケーブル200が使用されている。図18において符号3は光ファイバテープ心線、5はテンションメンバ、6は支持線、7はシース、9はシース切り裂き用のノッチである。
【0004】
また、光ファイバテープが積層されたケーブルにおいて、光ファイバテープの取出し性を向上させる目的で図17に示すような光ファイバケーブル300が開発されている。図19において、符号3は光ファイバテープ心線、5はテンションメンバ、7はシース、9はシース切り裂き用のノッチである。
このような光ファイバケーブルとして例えば特許文献3に開示されたものがある。
【特許文献1】特開平11-183764号公報
【特許文献2】特開2000-131571号公報
【特許文献3】特開2004−117854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図17に示した光ファイバケーブル100は、上述したようにシース切り裂き時に光ファイバ心線の曲げ等の機械的応力により光損失変動が生じないように、繊維からなる緩衝体4で光ファイバテープ3心線を保護し、シース7と独立させているが、緩衝体4を設けているために結果としてケーブル外径が大きくなり、必要な支持線6も太くなり、より少心のケーブルでは光ファイバ一心当りの材料コスト、製造コストが非常に高いという欠点があった。
【0006】
一方、図18に示した光ファイバケーブル200は、図17のケーブルよりも材料コスト、製造コストとも低いが、長手中間でノッチ9をきっかけにシース7を分割しようとすると、シース7に光ファイバテープ心線3が張り付いたまま分割されるので、光ファイバテープ心線3に曲げが加わり、損失変動が生じるため、中間後分岐用の配線ケーブルとしては使用しにくいという欠点があった。
【0007】
また、仮にシース7に光ファイバテープ心線3が張り付かずに分割された場合であっても、シース7を左右に開くと、線路長の変化を光ファイバテープ心線3が吸収する必要が生じ、光ファイバテープ心線3に曲がりが発生しやすく、損失変動が加わる虞があった(図20参照)。このような分割作業は例えば図21に示すごとき専用工具20を使用して行う場合がある。この場合、分割作業は簡便かつ精度よく行うことができるが、光ファイバテープ心線への曲がりの抑制という点については特に改善しうるものではなかった。
【0008】
また、図19に示した光ファイバケーブル300は、ノッチを境にシースを切り裂くと、シース7が4片に分かれ、図18に示す光ファイバケーブル200に比較して光ファイバテープ心線3は取出しやすくはなるが、シース7を光ファイバテープ心線3の近傍まで切り裂くためには、なお相当の力を要し、光ファイバテープ心線3が曲り,損失変動が生じてしまうという欠点があった。
【0009】
図18、図19に示した光ファイバケーブル200、300はドロップケーブル、インドアケーブルと呼ばれる典型的には収納される光ファイバの心数が1心から12心、抗張力体の引張強度2500N以下、電柱から宅内への配線を意図し、電柱間に補強なしでの配線を意図しないケーブルに適用するには、その分岐性においても十分な場合がある。
しかしながら、電柱間への補強なしでの配線をも意図した、典型的には収納される光ファイバの心数が4心から16心、引張強度2500N以上の少心配線ケーブルに適用する場合には、少心配線ケーブルのシースが大型化する傾向があるため、分岐性において満足いかない場合があった。
更に、シースとの接着のない光ファイバケーブルは、分割による心線取り出し時に、心線と同時に介在物が出てくるので、任意の心線選別の邪魔になったり、特に光ファイバユニットが単心の場合、介在物と誤って心線を切断してしまう恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明は、光ファイバ心線の中間後分岐が可能であり、低コストで製造できる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に係る光ファイバケーブルは、1本以上の光ファイバと前記光ファイバを被覆するシースを有する光ファイバケーブルであって、前記シースと光ファイバとの間に介在物が光ファイバケーブルの長手方向にそって並行に配置され、前記シースと接触する前記介在物の部分が前記シースに接着されていることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0011】
請求項2に係る光ファイバケーブルは、前記介在物が前記シースに接着される接着力が10N/cm以上であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0012】
請求項3に係る光ファイバケーブルは、前記介在物の一部が空隙であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0013】
請求項4に係る光ファイバケーブルは、前記介在物が光ファイバの両側に配置されていることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0014】
請求項5に係る光ファイバケーブルは、長辺側長さと短辺側長さが異なる領域に配置され、前記介在物は少なくとも前記領域の長辺側両端に配置されていることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0015】
請求項6に係る光ファイバケーブルは、前記介在物と前記シース表面の最短距離をA、前記光ファイバと前記シース表面の最短距離をBとしたとき、A<Bかつ、0.1mm≦A≦1.5mmであることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0016】
請求項7に係る光ファイバケーブルは、前記シースに設けられたノッチをさらに備え、前記ノッチは介在物に向かって形成され、前記ノッチの光ファイバケーブル中心側のノッチ壁面の先端部分が対応する介在物の中心よりも外側にあることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0017】
請求項8に係る光ファイバケーブルは、前記光ファイバは光ファイバテープ心線を積層して形成され、前記介在物は前記光ファイバの長辺側両端に配置され、横断面において、介在物同士の中心線を結ぶ線に対し、前記光ファイバの中心線が所定角度で傾いていることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0018】
請求項9に係る光ファイバケーブルは、前記所定角度は、5度以上、60度以下であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0019】
請求項10に係る光ファイバケーブルは、前記光ファイバに滑材が塗られていることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0020】
請求項11に係る光ファイバケーブルは、前記光ファイバが4心以上16心以下であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0021】
請求項12に係る光ファイバケーブルは、前記シース内に長手方向に前記光ファイバと並行に配置された一対のテンションメンバを備え、前記シースの前記光ファイバと前記テンションメンバを覆う部分は対向する2辺が前記一対のテンションメンバの中心を結ぶ直線にほぼ平行な断面略矩形であり、前記介在物及び前記光ファイバは前記一対のテンションメンバを結ぶ直線上に配置されたことを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0022】
請求項13に係る光ファイバケーブルは、前記テンションメンバの引張強度が2500N以上であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0023】
請求項14に係る光ファイバ取出し方法は、前記シース外表面から介在物に向かってシースを切り込むことによってシースを複数枚に分割し、分割されたシースから光ファイバを取出すことを特徴とする光ファイバ取出し方法である。
【0024】
請求項15に係る光ファイバ取り出し工具は、光ファイバケーブルの光ファイバ取り出し工具であって、切り込み刃が前記シース外表面から介在物に向かうよう案内されたことを特徴とする光ファイバ取り出し工具である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る光ファイバケーブルは、介在とシースとの接触面を接着させることで、中間でケーブルを分割したときに介在がシースにくっついたままであるので、介在と誤って心線を切断してしまう危険性が無くなるとともに、不要な介在が出現しないので任意の心線の選別が容易になり、心線選別の作業性が向上する。更に、シースと光ファイバとの間に接するように介在物が長手方向にそって並行に配置されているため、シースを分割時に光ファイバの介在物と接している面はシースに張り付くことがないため、心線の取出しが容易となり、分割されたシースに張り付いたまま曲げられて生じる光損失変動を低減することができる。
【0026】
請求項2に係る光ファイバケーブルは、接着力が10N/cm以上あれば、分割及び心線取り出し時にシースから介在が一部は離れるものの、長手に渡って離れ難くなる効果がある。さらに好ましくは50N/cm以上であり、50N/cm以上であれば分割及び心線取り出し時にシースから介在が離れる部分が少なくなり作業性が向上する。
介在物とシースを接着させる方法については、介在物に接着剤被覆を施すことや、介在物自体がシースと一部溶融するような材質のものを選択することも可能である。
【0027】
前記介在物の作用の一つは光ファイバ近傍にシースの欠損を形成することにあるので介在物は例えば請求項3に係る光ファイバケーブルのごとく、1部が空隙であってもよい。
介在物の位置としては例えば請求項4に係る光ファイバケーブルのごとく、光ファイバの両側に介在物を配置すると、介在物をそれぞれ含む2つ以上のシース片にシースを分割することによって、光ファイバがシース片に張り付くことなく、心線の取出しが容易となる。
【0028】
この場合、請求項5に係る光ファイバケーブルのごとく、光ファイバが、長辺側長さと短辺側長さが異なる領域に配置され、前記介在物が少なくとも前記領域の長辺側両端に配置されている場合には、分割されたシース片と光ファイバの接触面が直線に近くなり、シース片と光ファイバの分離がより容易である。
【0029】
請求項6に係る光ファイバケーブルのごとく、介在物とシース表面の最短距離をA、光ファイバとシース表面の最短距離をBとしたときに、A<Bとする場合は、シース表面から介在物に向けて切り込みを入れる他に、シースをシース表面に沿って削り、介在物を露出させることによっても、シースを分割して光ファイバを取り出すことが可能である。この場合、距離Aは、通常の使用において、シースの磨耗などにより介在物が露出しない、最低限に設定することが好ましく、例えば0.1mm≦A≦1.5mmとするのが好ましい。
【0030】
請求項7に係る光ファイバケーブルのごとく、シースに設けられたノッチをさらに備え、前記ノッチは介在物に向かって形成され、前記ノッチの光ファイバケーブル中心側のノッチ壁面の先端部分が対応する介在物の中心よりも外側に設けた場合は、ノッチに沿わせて刃物を挿入し、刃物を介在物に到達させようとする場合に刃物が介在物上を滑って、光ファイバ側に移動し、光ファイバと接触して光ファイバが損傷を受けることを防止することができる。
【0031】
光ファイバとして、光ファイバテープ心線を積層したタイプを使用し、光ファイバの長辺側両端に介在物を設ける場合、例えば、製造時即ち、シースを押出被覆により形成する際に被覆樹脂の圧力により介在物によって光ファイバが押されることがある。このように光ファイバが介在物により押されると光ファイバテープ心線の積層が離れ、光ファイバテープ心線間に隙間が生じてしまう。この隙間が大きい場合には、光ケーブル端末から侵入した水が光ケーブル内を伝わり、反対端末の接続部分などに悪影響を及ぼす危険性がある。そこで、請求項8に係る光ファイバケーブルのごとく、横断面において、介在物同士の中心線を結ぶ線に対し、前記光ファイバの中心線を所定角度で傾けた場合は、その傾斜により介在物に押される力を傾斜方向に逃がすことができるので光ファイバテープ心線間には隙間ができるのを抑制することができる。
【0032】
傾きが5度より小さい場合は、介在物により押される力を逃がす効果が低く、テープ心線間に隙間が生じることを抑制できない。また、傾きが60度より大きい場合は、光ファイバが介在物同士を結ぶ直線から大きく外れるため、シース中の溝に嵌る形となり光ファイバの取り出し性が劣ると共に、一対のテンションメンバを併用する場合には、光ファイバケーブルをテンションメンバ並び方向に対し垂直方向に曲げた場合の光ファイバに加わる曲げ歪みも大きくなるため光ファイバ破断の危険性も高まってしまうため好ましくない。従って請求項9に係る光ファイバケーブルのごとく、傾きは5度以上、60度以下とするのが好ましい。
【0033】
さらに、分割されたシース片から光ファイバが容易に剥がせるよう、請求項10に記載のごとく光ファイバには滑材が塗られていることが望ましい。
【0034】
請求項11に係る光ファイバケーブルのごとく、光ファイバの心数が4心から16心の例えば少心配線ケーブルにおいては、シースが大型化、高強度化しがちであり、心線の取り出し性が問題となることが多いことから、これらの光ファイバケーブルに上述した構成を適用するとより効果的である。
例えば少心配線ケーブルは、請求項12に記載のごとく、典型的にはテンションメンバを備え、シース断面が略矩形に構成されるので、このような光ファイバケーブルに上述の構成を適用するとより効果的である。これらの光ファイバケーブルにさらに支持線を付加しても良い。
【0035】
請求項13に記載のごとく、光ファイバケーブルのテンションメンバの引張強度を2500N以上とし、例えば補強なしでの電柱間の配線をも意図した少心配線ケーブルにおいては、シースが大型化、高強度化しがちであり、これらの光ファイバケーブルに上述した構成を適用するとより効果的である。
【0036】
上述の光ファイバケーブルは、請求項14に記載のごとくシース外表面から介在物に向かってシースを切り込むことによって、シースを複数枚に分割し、分割されたシースから光ファイバを取り出すことにより、安全かつ容易に光ファイバを取り出すことができる。なお、シースを切り込む際はシースを引き裂いてもよいし、シースに刃物を入れてもよい。介在物上のシース外表面にノッチがある場合には、ノッチをきっかけに引き裂いたり、ノッチを刃物の案内にすることも好適である。
【0037】
上述の光ファイバケーブルは、請求項15に記載のごとき、切り込み刃がシース外表面から介在物に向かうよう案内された工具を使用することによって、より安全かつ容易に光ファイバを取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明を実施するために発明者が認識している最良の形態を以下に説明する。図1は本発明のケーブルの1つの実施例を示す断面図である。図1の光ファイバケーブル400は直径125μmの石英製ファイバ素線に外径250μmとなるよう紫外線硬化樹脂にて被覆した光ファイバ心線2を4心一括で紫外線硬化樹脂のテープ被覆材によりさらに覆って幅w=1.1mm、厚み0.32mmの4心の光ファイバテープ心線3を構成した。この光ファイバテープ心線3を2枚積層して光ファイバ心線ユニット10を構成した。
【0039】
この光ファイバ心線ユニット10の長辺側両端に接するように、直径0.5mmのPET紐による介在物11を密着はしているが接着はしないように配置した。また、介在物11から一定間隔を空けて、光ファイバ心線ユニット10と一直線状に直径0.4mmの鋼線のテンションメンバ5を配置し、首部12を介して、直径2.3mmの鋼線の支持線6とともに、ポリエチレン製のシース7で覆った。
【0040】
シース7の光ファイバ心線ユニット10及びテンションメンバ5を覆う部分、即ちケーブル本体部の断面形状は略長方形となっている。ケーブル本体部の長辺は一直線状に配置した光ファイバ心線ユニット10及びテンションメンバ5の並び方向と平行である。また介在物の直上の本体部長辺には4カ所、ケーブル長手に渡ってノッチ9が形成されている。ケーブル本体部の断面形状の長辺寸法は4mm,短辺寸法は3.3mmである。この光ファイバケーブル400は、電柱間を補強なしで配線することをも意図した少心配線ケーブルとして構成されており、テンションメンバ5の引張強度は2500N、支持線6の引張強度は5000Nである。
【0041】
図2は本発明の工具の一つの実施例の斜視図である。この工具は上部部材13と下部部材14から構成され,シース切り裂きの際には下部部材14の凹部分15に光ファイバケーブル1を収容して上部部材13とで挟み付ける。上部部材13と下部部材14にはそれぞれ、シース7を切り裂く切り込み刃16が2本あるいは4本取付けられている。切り込み刃16の横位置はケーブル内部の介在物の直上に合わせられている。切り込み刃16の高さは、介在物11まで届く程度としている。
【0042】
即ち、切り込み刃16は凹部分15によりシース7の外表面から介在物11に向かうように案内されている。図3、図4はこの工具を挟み付けた状態の断面図である。図3は切り込み刃16が2本の場合、図4は切り込み刃16が4本の場合を示す。この工具を挟み付けた状態で光ファイバケーブルを長手方向に引くことで、シース7が切り裂かれる。この工具を用いて図1のケーブルの本体部を切り裂くと、介在物直上のシース7が切り裂かれ、図3の工具では図5のように、図4の工具では図6のようにシース片17と光ファイバテープ心線3が分割される。
【0043】
この図1に示す光ファイバケーブル400を図3あるいは図4の工具でシース7を切り裂き、光ファイバテープ心線3の取出しを行ったところ、光ファイバの損失変動0.01dB以内で光ファイバテープ心線3の取出しができた。また、定常的な光ファイバケーブル400の特性も一般的な光ファイバケーブルとほぼ同等で良好な特性を示した。
【0044】
図7は本発明のケーブルの他の実施例である。図7の光ファイバケーブル1000は、直径125μmの石英製ファイバ素線に外径500μmとなるよう紫外線硬化樹脂にて被覆した光ファイバ心線2を8本積層して光ファイバ心線ユニット10を構成した。この光ファイバ心線ユニット10が収容される領域の長辺側庁端部に接するように、直径1.0mmのPET紐による介在物11を密着はしているが接着はしないように配置した。その他の部材は図1と同等であるが、ケーブル本体部18は支持線6に対して余長を付与し、ケーブル布設環境下でも心線取出し作業がしやすいように適度な弛みを持たせる構造としている。
【0045】
また、余長付きのケーブルをドラム巻きする目的で、ケーブル本体部は支持線部よりも外径を大きく、丸形状としている。このような光ファイバケーブル1000を図3、4で示す工具を用いてシース7の切り裂き、光ファイバ心線2の取出しを行ったところ、損失変動0.1dB以内で心線の取出しが出来た。また、定常的な光ファイバケーブル1000の特性も一般的な光ファイバケーブルとほぼ同等で良好な特性を示した。
【0046】
その他のケーブルの実施例として、介在物は任意の心材にUV樹脂を被覆した紐、ナイロン紐等であってもよい。断面形状は楕円、矩形等でもよい。介在物のサイズ適宜選択可能である。またテンションメンバはFRP、繊維などでもよい。光ファイバ素線も石英のみならず、プラスチック製であってもよい。光ファイバの心線の数、テープ心線の心数および積層数は適宜選択可能である。光ファイバに塗布された滑材はタルク、シリコーンオイル等任意である。またシース状にノッチがなくてもよい。シース断面は矩形状のものが既存ケーブル周辺物品がそのまま適用でき、好適だが丸、形状、楕円形状等でも良い。シース7の材質もポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ノンハロゲン難燃ポリエチレンなど適宜選択可能である。
工具の実施例として、刃形状は固定された平刃であっても、回転しながらシースを押し切る丸刃であってもよく、ケーブル挟み付け部分以外の形状、寸法等は任意に設定できる。
【0047】
図8は、この発明の光ファイバケーブルの他の態様を示す図である。7はシース、5はテンションメンバ、9はノッチ、11は介在物、10は光ファイバユニットを示す。この態様においては、介在物の一部は複数の光ファイバ単心線からなる光ファイバユニットの間にシース材料が入っていない部分即ち空隙Aである詳述すると、光ファイバユニット10とその両側に配置された介在物11の一部は光ファイバユニット10と接する空隙A(一括被覆する被覆樹脂が存在しない)である。即ち、光ファイバケーブルの長手方向に沿って被覆樹脂が挿入されていない部分がある。このように被覆樹脂が挿入されていない空隙Aを備えることによって、光ファイバケーブルの中間での分岐時に心線の取り出し性が向上する。
【0048】
被覆樹脂の入っていない空隙Aのサイズは特に限定するものではなく、介在物の全部が空隙であってもよいが、樹脂の入っていない部分が大きいほど心線取り出し性が良好なものとなり、光ファイバユニット横断面の短辺の1/2以上であることが好ましい。
【0049】
図9は、横長または縦長の介在物を備えた光ファイバケーブルを示す図である。図9(a)は光ファイバユニットの両側に横長の介在物を備えた光ファイバケーブルの横断面図である。図9(b)は光ファイバユニットの両側に縦長の介在物を備えた光ファイバケーブルの横断面図である。
【0050】
介在物のサイズは、特に限定されるものではないが、布設部材などにより光ファイバケーブルのサイズが限定されている場合などで、心線の取り出し性を向上させたい場合は図9(b)に示すように、介在物を縦長に配置し、介在物のノッチ方向に向かう長さを、テンションメンバに向かう方向の長さより長くすることも有効である。また光ファイバケーブルのサイズが限定されない場合には図9(a)に示すように、介在物を横長に配置し、介在物のテンションメンバに向かう方向の長さを広げることで、ニッパなどの工具を挿入しやすく、光ファイバ心線を傷つける危険性をより低減することも可能である。
【0051】
図10および図11は、テープ心線を傾けて配置した場合の光ファイバケーブルを説明する図である。図10に示すように、光ファイバユニットとして光ファイバテープ心線を積層した場合に、介在物の中心線を結ぶ線Hに対して光ファイバテープ心線がαの角度で傾いて配置されている。これは、光ケーブルの押出製造時に被覆樹脂の圧力により介在物が光ファイバユニット(テープ積層体)を押した場合にも、テープ心線が傾き、テープ心線間には隙間が生じない。傾き角度αは5度以上60度未満である。
【0052】
図11に示すように、傾きαが5度未満の小さい場合は、介在物によりテープ心線積層体が押されて光ファイバテープ心線間に隙間が生じてしまう。また、傾きが60度より大きい場合は、光ファイバテープ心線が外被に包まれやすくなり、心線取り出し性が劣ると共に、光ファイバケーブルをテンションメンバ並び方向に対し垂直方向に曲げた場合のファイバに加わる曲げ歪みも大きくなるため光ファイバ破断の危険性も高まってしまうため好ましくない。
【0053】
以下に、傾き角度の及ぼす影響を実施例によって調べた。
図10に示す様な断面構造の光ファイバケーブルについて、介在物サイズφ0.8mmでテープ心線の配置角度(α)を変えたものを数種試作し、水走り試験を行った。水走り試験は、図12のようにケーブル端末に高さ1mに水を入れた筒を設置し、240時間後に長さ40mの光ケーブルの反対端末まで水が伝わるかどうかを確認した。反対端末で水が確認されなかったものを合格(○)とし、反対端末で水が確認されたものを不合格(×)とした。心線取り出し性については本発明による心線取り出し工具を使用し、心線取り出し時のロス変動が1dB以下のものを合格(○)とし、それより大きいロス変動を生じたものを不合格(×)とした。測定条件は、波長1550nm、サンプリング時間1msecで行った。
【0054】
その結果を表に示す。
表1
表1から明らかなように、テープ心線の傾き角度が本発明の範囲を超えて70度と大きい場合には、心線取り出し性が劣化していることがわかる。また、テープ心線の傾き角度が本発明の範囲外の2度と小さい場合には、水走り試験が劣っており、光ファイバ心線間に間隙が発生していることがわかる。
【0055】
図13は、介在物とノッチの位置関係を説明する図である。図13に示すように、光ファイバテープ心線を積層した光ファイバユニット3の両側に介在物11が配置されている。介在物11に向かって工具刃を入れたときに、刃が光ファイバ心線に影響を及ぼさない介在物とノッチの位置は、光ファイバケーブル中心側のノッチ壁面の先端部分が対応する介在物の中心よりも外側にあるように規定される。即ち、図13に示すように、介在物の中心線よりも、ノッチ壁面の先端部分を通る線が外側に位置している。工具刃を入れたときに、介在物の中心よりも外側に刃が入るので、刃が直接光ファイバ心線に触れることはない。従って、工具刃によって光ファイバ心線を傷つけることが確実に防止できる。光ファイバケーブルの他方の介在物とノッチの位置についても同様のことがいえる。
【0056】
図14は、ノッチを備えない光ファイバケーブルを説明する図である。この態様においては、光ファイバ心線からなる光ファイバユニットの両側に介在物が設けられている。光ファイバユニットはノッチを備えていない。ノッチを備えない光ファイバケーブルにおいては、一括被覆した光ファイバケーブルの表面から介在物までの距離が光ファイバケーブルの表面から光ファイバユニットまでの距離より小さい。
【0057】
このように、光ファイバケーブルの表面から介在物までの距離と、光ファイバケーブルの表面から光ファイバユニットまでの距離を規定することによって、介在物の位置に向かって分離刃などを有する工具を使用して、または、光ファイバケーブル上下面を削ることによって光ファイバケーブル分割が可能になり、心線に重大な曲がり等を発生させずに光ファイバケーブル中間から、光ファイバ心線を取り出すことができる。
【0058】
この発明の光ファイバケーブルにおいては、図15に示すように、光ファイバを被覆するシースと光ファイバとの間に介在物が光ファイバケーブルの長手方向にそって並行に配置され、シースと接触する介在物の部分がシースに接着されている。
介在物の接着力の異なる図1に示す構造の光ファイバケーブルを試作し、介在物のシースとの接着力及び心線取り出し時の介在物飛び出し有無を確認した。介在物にはφ0.5〜1mmのものを使用した。
なお、シースと介在物の接着力は以下のように測定した。
<接着力測定方法>
光ファイバケーブルから介在物を引き抜くときの引き抜き力を測定した。図16は、接着力測定方法を説明する図である。
図16に示すようにサンプリングを行い、引っ張り試験器にて速度50mm/minで介在物を引き抜き、発生する力の最大値を接着力とし1cm当たりの応力とした。
介在物の飛び出し性については、本発明の図3および図4に示す分離具を使用し、該光ケーブルの中間約50cmを分離し、心線取り出し作業を行い、その際に介在物1本毎にシースから離れた部分が10cm以下であれば合格(○)とし、それより大きい場合は不合格(×)とした。
その結果を表2に示す。
表2
表2から明らかなように、介在物接着力が6N/cm以下である比較例1から3においては、介在物1本毎にシースから離れた部分が10cmを超えており、不合格であった。これに対して、実施例1から4においては、接着力が10N/cm以上であり、特に実施例2、4は接着力が50N/cm以上であり、分割及び心線取り出し時にシースから介在が離れる部分が少なくなり作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の光ケーブルの一実施例を示す断面図。
【図2】本発明の光ファイバ取り出し工具の一実施例を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施例における光ファイバ取り出し工具の要部断面図。
【図4】本発明の他の実施例における光ファイバ取り出し工具の要部断面図。
【図5】図3に示す光ファイバ取り出し工具によって切り裂かれた状態の光ケーブルを示す端面図。
【図6】図4に示す光ファイバ取り出し工具によって切り裂かれた状態の光ケーブルを示す端面図。
【図7】本発明の他の実施例を示す光ケーブルの端面図。
【図8】図8は、この発明の光ファイバケーブルの他の態様を示す図である。
【図9】図9は、横長または縦長の介在物を備えた光ファイバケーブルを示す図である。
【図10】図10は、テープ心線を傾けて配置した場合の光ファイバケーブルを説明する図である。
【図11】図11は、テープ心線を傾けて配置した場合の光ファイバケーブルを説明する図である。
【図12】図12は水走り試験を説明する図である。
【図13】図13は、介在物とノッチの位置関係を説明する図である。
【図14】図14は、ノッチを備えない光ファイバケーブルを説明する図である。
【図15】図15は、この発明の光ファイバケーブルを説明する図である。
【図16】図16は、密着力測定方法を説明する図である。
【図17】従来の光ファイバケーブルの一例を示す端面図である。
【図18】従来の光ファイバケーブルの他の例を示す端面図である。
【図19】従来の光ファイバケーブルの更に他の例を示す端面図である。
【図20】シースを開いたときに光ファイバテープ心線に曲がりが発生する状況を説明する図である。
【図21】分割作業に用いる専用工具を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
100、200、300、400、1000 光ファイバケーブル
2 光ファイバ心線
3 光ファイバテープ心線
4 緩衝体
5 テンションメンバ
6 支持線
7 シース
8 切裂き紐
9 ノッチ
10 光ファイバ心線ユニット
11 介在物
12 首部
13 上部部材
14 下部部材
15 凹部材
16 加傷刃
17 シース片
18 ケーブル本体部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ(単数あるいは複数の光ファイバ単心線、光ファイバユニット、テープ状光ファイバ心線などを含む)をシース内に収容した光ファイバケーブルに関するものである。特に、ケーブル長手の中間で光ファイバ心線を後分岐し、中間引落しを行う配線ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光加入者線路網の構築が急速に進んでいる。従来、幹線光ファイバケーブルと各家庭などの宅内に引き込むための引き込み用光ファイバケーブルをつなぐ配線ケーブルとして図17に示すような光ファイバケーブル100が使用されている。図17において、符号3は光ファイバテープ心線、4は緩衝体、5はテンションメンバ、6は支持線、7はシース、8はシース切り裂き紐である。このケーブルは長手の中間でケーブル外被を除去し光損失変動なしに心線を取出すことが可能なように、パイプ状のシース7の中に光ファイバテープ心線3が緩衝体4で覆われて収容された構造となっている。
このような光ファイバケーブルとして例えば特許文献1や特許文献2に開示されたものがある。
【0003】
一方,少心の配線ケーブルとして図18に示すような光ファイバケーブル200が使用されている。図18において符号3は光ファイバテープ心線、5はテンションメンバ、6は支持線、7はシース、9はシース切り裂き用のノッチである。
【0004】
また、光ファイバテープが積層されたケーブルにおいて、光ファイバテープの取出し性を向上させる目的で図17に示すような光ファイバケーブル300が開発されている。図19において、符号3は光ファイバテープ心線、5はテンションメンバ、7はシース、9はシース切り裂き用のノッチである。
このような光ファイバケーブルとして例えば特許文献3に開示されたものがある。
【特許文献1】特開平11-183764号公報
【特許文献2】特開2000-131571号公報
【特許文献3】特開2004−117854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図17に示した光ファイバケーブル100は、上述したようにシース切り裂き時に光ファイバ心線の曲げ等の機械的応力により光損失変動が生じないように、繊維からなる緩衝体4で光ファイバテープ3心線を保護し、シース7と独立させているが、緩衝体4を設けているために結果としてケーブル外径が大きくなり、必要な支持線6も太くなり、より少心のケーブルでは光ファイバ一心当りの材料コスト、製造コストが非常に高いという欠点があった。
【0006】
一方、図18に示した光ファイバケーブル200は、図17のケーブルよりも材料コスト、製造コストとも低いが、長手中間でノッチ9をきっかけにシース7を分割しようとすると、シース7に光ファイバテープ心線3が張り付いたまま分割されるので、光ファイバテープ心線3に曲げが加わり、損失変動が生じるため、中間後分岐用の配線ケーブルとしては使用しにくいという欠点があった。
【0007】
また、仮にシース7に光ファイバテープ心線3が張り付かずに分割された場合であっても、シース7を左右に開くと、線路長の変化を光ファイバテープ心線3が吸収する必要が生じ、光ファイバテープ心線3に曲がりが発生しやすく、損失変動が加わる虞があった(図20参照)。このような分割作業は例えば図21に示すごとき専用工具20を使用して行う場合がある。この場合、分割作業は簡便かつ精度よく行うことができるが、光ファイバテープ心線への曲がりの抑制という点については特に改善しうるものではなかった。
【0008】
また、図19に示した光ファイバケーブル300は、ノッチを境にシースを切り裂くと、シース7が4片に分かれ、図18に示す光ファイバケーブル200に比較して光ファイバテープ心線3は取出しやすくはなるが、シース7を光ファイバテープ心線3の近傍まで切り裂くためには、なお相当の力を要し、光ファイバテープ心線3が曲り,損失変動が生じてしまうという欠点があった。
【0009】
図18、図19に示した光ファイバケーブル200、300はドロップケーブル、インドアケーブルと呼ばれる典型的には収納される光ファイバの心数が1心から12心、抗張力体の引張強度2500N以下、電柱から宅内への配線を意図し、電柱間に補強なしでの配線を意図しないケーブルに適用するには、その分岐性においても十分な場合がある。
しかしながら、電柱間への補強なしでの配線をも意図した、典型的には収納される光ファイバの心数が4心から16心、引張強度2500N以上の少心配線ケーブルに適用する場合には、少心配線ケーブルのシースが大型化する傾向があるため、分岐性において満足いかない場合があった。
更に、シースとの接着のない光ファイバケーブルは、分割による心線取り出し時に、心線と同時に介在物が出てくるので、任意の心線選別の邪魔になったり、特に光ファイバユニットが単心の場合、介在物と誤って心線を切断してしまう恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明は、光ファイバ心線の中間後分岐が可能であり、低コストで製造できる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に係る光ファイバケーブルは、1本以上の光ファイバと前記光ファイバを被覆するシースを有する光ファイバケーブルであって、前記シースと光ファイバとの間に介在物が光ファイバケーブルの長手方向にそって並行に配置され、前記シースと接触する前記介在物の部分が前記シースに接着されていることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0011】
請求項2に係る光ファイバケーブルは、前記介在物が前記シースに接着される接着力が10N/cm以上であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0012】
請求項3に係る光ファイバケーブルは、前記介在物の一部が空隙であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0013】
請求項4に係る光ファイバケーブルは、前記介在物が光ファイバの両側に配置されていることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0014】
請求項5に係る光ファイバケーブルは、長辺側長さと短辺側長さが異なる領域に配置され、前記介在物は少なくとも前記領域の長辺側両端に配置されていることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0015】
請求項6に係る光ファイバケーブルは、前記介在物と前記シース表面の最短距離をA、前記光ファイバと前記シース表面の最短距離をBとしたとき、A<Bかつ、0.1mm≦A≦1.5mmであることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0016】
請求項7に係る光ファイバケーブルは、前記シースに設けられたノッチをさらに備え、前記ノッチは介在物に向かって形成され、前記ノッチの光ファイバケーブル中心側のノッチ壁面の先端部分が対応する介在物の中心よりも外側にあることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0017】
請求項8に係る光ファイバケーブルは、前記光ファイバは光ファイバテープ心線を積層して形成され、前記介在物は前記光ファイバの長辺側両端に配置され、横断面において、介在物同士の中心線を結ぶ線に対し、前記光ファイバの中心線が所定角度で傾いていることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0018】
請求項9に係る光ファイバケーブルは、前記所定角度は、5度以上、60度以下であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0019】
請求項10に係る光ファイバケーブルは、前記光ファイバに滑材が塗られていることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0020】
請求項11に係る光ファイバケーブルは、前記光ファイバが4心以上16心以下であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0021】
請求項12に係る光ファイバケーブルは、前記シース内に長手方向に前記光ファイバと並行に配置された一対のテンションメンバを備え、前記シースの前記光ファイバと前記テンションメンバを覆う部分は対向する2辺が前記一対のテンションメンバの中心を結ぶ直線にほぼ平行な断面略矩形であり、前記介在物及び前記光ファイバは前記一対のテンションメンバを結ぶ直線上に配置されたことを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0022】
請求項13に係る光ファイバケーブルは、前記テンションメンバの引張強度が2500N以上であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0023】
請求項14に係る光ファイバ取出し方法は、前記シース外表面から介在物に向かってシースを切り込むことによってシースを複数枚に分割し、分割されたシースから光ファイバを取出すことを特徴とする光ファイバ取出し方法である。
【0024】
請求項15に係る光ファイバ取り出し工具は、光ファイバケーブルの光ファイバ取り出し工具であって、切り込み刃が前記シース外表面から介在物に向かうよう案内されたことを特徴とする光ファイバ取り出し工具である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る光ファイバケーブルは、介在とシースとの接触面を接着させることで、中間でケーブルを分割したときに介在がシースにくっついたままであるので、介在と誤って心線を切断してしまう危険性が無くなるとともに、不要な介在が出現しないので任意の心線の選別が容易になり、心線選別の作業性が向上する。更に、シースと光ファイバとの間に接するように介在物が長手方向にそって並行に配置されているため、シースを分割時に光ファイバの介在物と接している面はシースに張り付くことがないため、心線の取出しが容易となり、分割されたシースに張り付いたまま曲げられて生じる光損失変動を低減することができる。
【0026】
請求項2に係る光ファイバケーブルは、接着力が10N/cm以上あれば、分割及び心線取り出し時にシースから介在が一部は離れるものの、長手に渡って離れ難くなる効果がある。さらに好ましくは50N/cm以上であり、50N/cm以上であれば分割及び心線取り出し時にシースから介在が離れる部分が少なくなり作業性が向上する。
介在物とシースを接着させる方法については、介在物に接着剤被覆を施すことや、介在物自体がシースと一部溶融するような材質のものを選択することも可能である。
【0027】
前記介在物の作用の一つは光ファイバ近傍にシースの欠損を形成することにあるので介在物は例えば請求項3に係る光ファイバケーブルのごとく、1部が空隙であってもよい。
介在物の位置としては例えば請求項4に係る光ファイバケーブルのごとく、光ファイバの両側に介在物を配置すると、介在物をそれぞれ含む2つ以上のシース片にシースを分割することによって、光ファイバがシース片に張り付くことなく、心線の取出しが容易となる。
【0028】
この場合、請求項5に係る光ファイバケーブルのごとく、光ファイバが、長辺側長さと短辺側長さが異なる領域に配置され、前記介在物が少なくとも前記領域の長辺側両端に配置されている場合には、分割されたシース片と光ファイバの接触面が直線に近くなり、シース片と光ファイバの分離がより容易である。
【0029】
請求項6に係る光ファイバケーブルのごとく、介在物とシース表面の最短距離をA、光ファイバとシース表面の最短距離をBとしたときに、A<Bとする場合は、シース表面から介在物に向けて切り込みを入れる他に、シースをシース表面に沿って削り、介在物を露出させることによっても、シースを分割して光ファイバを取り出すことが可能である。この場合、距離Aは、通常の使用において、シースの磨耗などにより介在物が露出しない、最低限に設定することが好ましく、例えば0.1mm≦A≦1.5mmとするのが好ましい。
【0030】
請求項7に係る光ファイバケーブルのごとく、シースに設けられたノッチをさらに備え、前記ノッチは介在物に向かって形成され、前記ノッチの光ファイバケーブル中心側のノッチ壁面の先端部分が対応する介在物の中心よりも外側に設けた場合は、ノッチに沿わせて刃物を挿入し、刃物を介在物に到達させようとする場合に刃物が介在物上を滑って、光ファイバ側に移動し、光ファイバと接触して光ファイバが損傷を受けることを防止することができる。
【0031】
光ファイバとして、光ファイバテープ心線を積層したタイプを使用し、光ファイバの長辺側両端に介在物を設ける場合、例えば、製造時即ち、シースを押出被覆により形成する際に被覆樹脂の圧力により介在物によって光ファイバが押されることがある。このように光ファイバが介在物により押されると光ファイバテープ心線の積層が離れ、光ファイバテープ心線間に隙間が生じてしまう。この隙間が大きい場合には、光ケーブル端末から侵入した水が光ケーブル内を伝わり、反対端末の接続部分などに悪影響を及ぼす危険性がある。そこで、請求項8に係る光ファイバケーブルのごとく、横断面において、介在物同士の中心線を結ぶ線に対し、前記光ファイバの中心線を所定角度で傾けた場合は、その傾斜により介在物に押される力を傾斜方向に逃がすことができるので光ファイバテープ心線間には隙間ができるのを抑制することができる。
【0032】
傾きが5度より小さい場合は、介在物により押される力を逃がす効果が低く、テープ心線間に隙間が生じることを抑制できない。また、傾きが60度より大きい場合は、光ファイバが介在物同士を結ぶ直線から大きく外れるため、シース中の溝に嵌る形となり光ファイバの取り出し性が劣ると共に、一対のテンションメンバを併用する場合には、光ファイバケーブルをテンションメンバ並び方向に対し垂直方向に曲げた場合の光ファイバに加わる曲げ歪みも大きくなるため光ファイバ破断の危険性も高まってしまうため好ましくない。従って請求項9に係る光ファイバケーブルのごとく、傾きは5度以上、60度以下とするのが好ましい。
【0033】
さらに、分割されたシース片から光ファイバが容易に剥がせるよう、請求項10に記載のごとく光ファイバには滑材が塗られていることが望ましい。
【0034】
請求項11に係る光ファイバケーブルのごとく、光ファイバの心数が4心から16心の例えば少心配線ケーブルにおいては、シースが大型化、高強度化しがちであり、心線の取り出し性が問題となることが多いことから、これらの光ファイバケーブルに上述した構成を適用するとより効果的である。
例えば少心配線ケーブルは、請求項12に記載のごとく、典型的にはテンションメンバを備え、シース断面が略矩形に構成されるので、このような光ファイバケーブルに上述の構成を適用するとより効果的である。これらの光ファイバケーブルにさらに支持線を付加しても良い。
【0035】
請求項13に記載のごとく、光ファイバケーブルのテンションメンバの引張強度を2500N以上とし、例えば補強なしでの電柱間の配線をも意図した少心配線ケーブルにおいては、シースが大型化、高強度化しがちであり、これらの光ファイバケーブルに上述した構成を適用するとより効果的である。
【0036】
上述の光ファイバケーブルは、請求項14に記載のごとくシース外表面から介在物に向かってシースを切り込むことによって、シースを複数枚に分割し、分割されたシースから光ファイバを取り出すことにより、安全かつ容易に光ファイバを取り出すことができる。なお、シースを切り込む際はシースを引き裂いてもよいし、シースに刃物を入れてもよい。介在物上のシース外表面にノッチがある場合には、ノッチをきっかけに引き裂いたり、ノッチを刃物の案内にすることも好適である。
【0037】
上述の光ファイバケーブルは、請求項15に記載のごとき、切り込み刃がシース外表面から介在物に向かうよう案内された工具を使用することによって、より安全かつ容易に光ファイバを取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明を実施するために発明者が認識している最良の形態を以下に説明する。図1は本発明のケーブルの1つの実施例を示す断面図である。図1の光ファイバケーブル400は直径125μmの石英製ファイバ素線に外径250μmとなるよう紫外線硬化樹脂にて被覆した光ファイバ心線2を4心一括で紫外線硬化樹脂のテープ被覆材によりさらに覆って幅w=1.1mm、厚み0.32mmの4心の光ファイバテープ心線3を構成した。この光ファイバテープ心線3を2枚積層して光ファイバ心線ユニット10を構成した。
【0039】
この光ファイバ心線ユニット10の長辺側両端に接するように、直径0.5mmのPET紐による介在物11を密着はしているが接着はしないように配置した。また、介在物11から一定間隔を空けて、光ファイバ心線ユニット10と一直線状に直径0.4mmの鋼線のテンションメンバ5を配置し、首部12を介して、直径2.3mmの鋼線の支持線6とともに、ポリエチレン製のシース7で覆った。
【0040】
シース7の光ファイバ心線ユニット10及びテンションメンバ5を覆う部分、即ちケーブル本体部の断面形状は略長方形となっている。ケーブル本体部の長辺は一直線状に配置した光ファイバ心線ユニット10及びテンションメンバ5の並び方向と平行である。また介在物の直上の本体部長辺には4カ所、ケーブル長手に渡ってノッチ9が形成されている。ケーブル本体部の断面形状の長辺寸法は4mm,短辺寸法は3.3mmである。この光ファイバケーブル400は、電柱間を補強なしで配線することをも意図した少心配線ケーブルとして構成されており、テンションメンバ5の引張強度は2500N、支持線6の引張強度は5000Nである。
【0041】
図2は本発明の工具の一つの実施例の斜視図である。この工具は上部部材13と下部部材14から構成され,シース切り裂きの際には下部部材14の凹部分15に光ファイバケーブル1を収容して上部部材13とで挟み付ける。上部部材13と下部部材14にはそれぞれ、シース7を切り裂く切り込み刃16が2本あるいは4本取付けられている。切り込み刃16の横位置はケーブル内部の介在物の直上に合わせられている。切り込み刃16の高さは、介在物11まで届く程度としている。
【0042】
即ち、切り込み刃16は凹部分15によりシース7の外表面から介在物11に向かうように案内されている。図3、図4はこの工具を挟み付けた状態の断面図である。図3は切り込み刃16が2本の場合、図4は切り込み刃16が4本の場合を示す。この工具を挟み付けた状態で光ファイバケーブルを長手方向に引くことで、シース7が切り裂かれる。この工具を用いて図1のケーブルの本体部を切り裂くと、介在物直上のシース7が切り裂かれ、図3の工具では図5のように、図4の工具では図6のようにシース片17と光ファイバテープ心線3が分割される。
【0043】
この図1に示す光ファイバケーブル400を図3あるいは図4の工具でシース7を切り裂き、光ファイバテープ心線3の取出しを行ったところ、光ファイバの損失変動0.01dB以内で光ファイバテープ心線3の取出しができた。また、定常的な光ファイバケーブル400の特性も一般的な光ファイバケーブルとほぼ同等で良好な特性を示した。
【0044】
図7は本発明のケーブルの他の実施例である。図7の光ファイバケーブル1000は、直径125μmの石英製ファイバ素線に外径500μmとなるよう紫外線硬化樹脂にて被覆した光ファイバ心線2を8本積層して光ファイバ心線ユニット10を構成した。この光ファイバ心線ユニット10が収容される領域の長辺側庁端部に接するように、直径1.0mmのPET紐による介在物11を密着はしているが接着はしないように配置した。その他の部材は図1と同等であるが、ケーブル本体部18は支持線6に対して余長を付与し、ケーブル布設環境下でも心線取出し作業がしやすいように適度な弛みを持たせる構造としている。
【0045】
また、余長付きのケーブルをドラム巻きする目的で、ケーブル本体部は支持線部よりも外径を大きく、丸形状としている。このような光ファイバケーブル1000を図3、4で示す工具を用いてシース7の切り裂き、光ファイバ心線2の取出しを行ったところ、損失変動0.1dB以内で心線の取出しが出来た。また、定常的な光ファイバケーブル1000の特性も一般的な光ファイバケーブルとほぼ同等で良好な特性を示した。
【0046】
その他のケーブルの実施例として、介在物は任意の心材にUV樹脂を被覆した紐、ナイロン紐等であってもよい。断面形状は楕円、矩形等でもよい。介在物のサイズ適宜選択可能である。またテンションメンバはFRP、繊維などでもよい。光ファイバ素線も石英のみならず、プラスチック製であってもよい。光ファイバの心線の数、テープ心線の心数および積層数は適宜選択可能である。光ファイバに塗布された滑材はタルク、シリコーンオイル等任意である。またシース状にノッチがなくてもよい。シース断面は矩形状のものが既存ケーブル周辺物品がそのまま適用でき、好適だが丸、形状、楕円形状等でも良い。シース7の材質もポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ノンハロゲン難燃ポリエチレンなど適宜選択可能である。
工具の実施例として、刃形状は固定された平刃であっても、回転しながらシースを押し切る丸刃であってもよく、ケーブル挟み付け部分以外の形状、寸法等は任意に設定できる。
【0047】
図8は、この発明の光ファイバケーブルの他の態様を示す図である。7はシース、5はテンションメンバ、9はノッチ、11は介在物、10は光ファイバユニットを示す。この態様においては、介在物の一部は複数の光ファイバ単心線からなる光ファイバユニットの間にシース材料が入っていない部分即ち空隙Aである詳述すると、光ファイバユニット10とその両側に配置された介在物11の一部は光ファイバユニット10と接する空隙A(一括被覆する被覆樹脂が存在しない)である。即ち、光ファイバケーブルの長手方向に沿って被覆樹脂が挿入されていない部分がある。このように被覆樹脂が挿入されていない空隙Aを備えることによって、光ファイバケーブルの中間での分岐時に心線の取り出し性が向上する。
【0048】
被覆樹脂の入っていない空隙Aのサイズは特に限定するものではなく、介在物の全部が空隙であってもよいが、樹脂の入っていない部分が大きいほど心線取り出し性が良好なものとなり、光ファイバユニット横断面の短辺の1/2以上であることが好ましい。
【0049】
図9は、横長または縦長の介在物を備えた光ファイバケーブルを示す図である。図9(a)は光ファイバユニットの両側に横長の介在物を備えた光ファイバケーブルの横断面図である。図9(b)は光ファイバユニットの両側に縦長の介在物を備えた光ファイバケーブルの横断面図である。
【0050】
介在物のサイズは、特に限定されるものではないが、布設部材などにより光ファイバケーブルのサイズが限定されている場合などで、心線の取り出し性を向上させたい場合は図9(b)に示すように、介在物を縦長に配置し、介在物のノッチ方向に向かう長さを、テンションメンバに向かう方向の長さより長くすることも有効である。また光ファイバケーブルのサイズが限定されない場合には図9(a)に示すように、介在物を横長に配置し、介在物のテンションメンバに向かう方向の長さを広げることで、ニッパなどの工具を挿入しやすく、光ファイバ心線を傷つける危険性をより低減することも可能である。
【0051】
図10および図11は、テープ心線を傾けて配置した場合の光ファイバケーブルを説明する図である。図10に示すように、光ファイバユニットとして光ファイバテープ心線を積層した場合に、介在物の中心線を結ぶ線Hに対して光ファイバテープ心線がαの角度で傾いて配置されている。これは、光ケーブルの押出製造時に被覆樹脂の圧力により介在物が光ファイバユニット(テープ積層体)を押した場合にも、テープ心線が傾き、テープ心線間には隙間が生じない。傾き角度αは5度以上60度未満である。
【0052】
図11に示すように、傾きαが5度未満の小さい場合は、介在物によりテープ心線積層体が押されて光ファイバテープ心線間に隙間が生じてしまう。また、傾きが60度より大きい場合は、光ファイバテープ心線が外被に包まれやすくなり、心線取り出し性が劣ると共に、光ファイバケーブルをテンションメンバ並び方向に対し垂直方向に曲げた場合のファイバに加わる曲げ歪みも大きくなるため光ファイバ破断の危険性も高まってしまうため好ましくない。
【0053】
以下に、傾き角度の及ぼす影響を実施例によって調べた。
図10に示す様な断面構造の光ファイバケーブルについて、介在物サイズφ0.8mmでテープ心線の配置角度(α)を変えたものを数種試作し、水走り試験を行った。水走り試験は、図12のようにケーブル端末に高さ1mに水を入れた筒を設置し、240時間後に長さ40mの光ケーブルの反対端末まで水が伝わるかどうかを確認した。反対端末で水が確認されなかったものを合格(○)とし、反対端末で水が確認されたものを不合格(×)とした。心線取り出し性については本発明による心線取り出し工具を使用し、心線取り出し時のロス変動が1dB以下のものを合格(○)とし、それより大きいロス変動を生じたものを不合格(×)とした。測定条件は、波長1550nm、サンプリング時間1msecで行った。
【0054】
その結果を表に示す。
表1
表1から明らかなように、テープ心線の傾き角度が本発明の範囲を超えて70度と大きい場合には、心線取り出し性が劣化していることがわかる。また、テープ心線の傾き角度が本発明の範囲外の2度と小さい場合には、水走り試験が劣っており、光ファイバ心線間に間隙が発生していることがわかる。
【0055】
図13は、介在物とノッチの位置関係を説明する図である。図13に示すように、光ファイバテープ心線を積層した光ファイバユニット3の両側に介在物11が配置されている。介在物11に向かって工具刃を入れたときに、刃が光ファイバ心線に影響を及ぼさない介在物とノッチの位置は、光ファイバケーブル中心側のノッチ壁面の先端部分が対応する介在物の中心よりも外側にあるように規定される。即ち、図13に示すように、介在物の中心線よりも、ノッチ壁面の先端部分を通る線が外側に位置している。工具刃を入れたときに、介在物の中心よりも外側に刃が入るので、刃が直接光ファイバ心線に触れることはない。従って、工具刃によって光ファイバ心線を傷つけることが確実に防止できる。光ファイバケーブルの他方の介在物とノッチの位置についても同様のことがいえる。
【0056】
図14は、ノッチを備えない光ファイバケーブルを説明する図である。この態様においては、光ファイバ心線からなる光ファイバユニットの両側に介在物が設けられている。光ファイバユニットはノッチを備えていない。ノッチを備えない光ファイバケーブルにおいては、一括被覆した光ファイバケーブルの表面から介在物までの距離が光ファイバケーブルの表面から光ファイバユニットまでの距離より小さい。
【0057】
このように、光ファイバケーブルの表面から介在物までの距離と、光ファイバケーブルの表面から光ファイバユニットまでの距離を規定することによって、介在物の位置に向かって分離刃などを有する工具を使用して、または、光ファイバケーブル上下面を削ることによって光ファイバケーブル分割が可能になり、心線に重大な曲がり等を発生させずに光ファイバケーブル中間から、光ファイバ心線を取り出すことができる。
【0058】
この発明の光ファイバケーブルにおいては、図15に示すように、光ファイバを被覆するシースと光ファイバとの間に介在物が光ファイバケーブルの長手方向にそって並行に配置され、シースと接触する介在物の部分がシースに接着されている。
介在物の接着力の異なる図1に示す構造の光ファイバケーブルを試作し、介在物のシースとの接着力及び心線取り出し時の介在物飛び出し有無を確認した。介在物にはφ0.5〜1mmのものを使用した。
なお、シースと介在物の接着力は以下のように測定した。
<接着力測定方法>
光ファイバケーブルから介在物を引き抜くときの引き抜き力を測定した。図16は、接着力測定方法を説明する図である。
図16に示すようにサンプリングを行い、引っ張り試験器にて速度50mm/minで介在物を引き抜き、発生する力の最大値を接着力とし1cm当たりの応力とした。
介在物の飛び出し性については、本発明の図3および図4に示す分離具を使用し、該光ケーブルの中間約50cmを分離し、心線取り出し作業を行い、その際に介在物1本毎にシースから離れた部分が10cm以下であれば合格(○)とし、それより大きい場合は不合格(×)とした。
その結果を表2に示す。
表2
表2から明らかなように、介在物接着力が6N/cm以下である比較例1から3においては、介在物1本毎にシースから離れた部分が10cmを超えており、不合格であった。これに対して、実施例1から4においては、接着力が10N/cm以上であり、特に実施例2、4は接着力が50N/cm以上であり、分割及び心線取り出し時にシースから介在が離れる部分が少なくなり作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の光ケーブルの一実施例を示す断面図。
【図2】本発明の光ファイバ取り出し工具の一実施例を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施例における光ファイバ取り出し工具の要部断面図。
【図4】本発明の他の実施例における光ファイバ取り出し工具の要部断面図。
【図5】図3に示す光ファイバ取り出し工具によって切り裂かれた状態の光ケーブルを示す端面図。
【図6】図4に示す光ファイバ取り出し工具によって切り裂かれた状態の光ケーブルを示す端面図。
【図7】本発明の他の実施例を示す光ケーブルの端面図。
【図8】図8は、この発明の光ファイバケーブルの他の態様を示す図である。
【図9】図9は、横長または縦長の介在物を備えた光ファイバケーブルを示す図である。
【図10】図10は、テープ心線を傾けて配置した場合の光ファイバケーブルを説明する図である。
【図11】図11は、テープ心線を傾けて配置した場合の光ファイバケーブルを説明する図である。
【図12】図12は水走り試験を説明する図である。
【図13】図13は、介在物とノッチの位置関係を説明する図である。
【図14】図14は、ノッチを備えない光ファイバケーブルを説明する図である。
【図15】図15は、この発明の光ファイバケーブルを説明する図である。
【図16】図16は、密着力測定方法を説明する図である。
【図17】従来の光ファイバケーブルの一例を示す端面図である。
【図18】従来の光ファイバケーブルの他の例を示す端面図である。
【図19】従来の光ファイバケーブルの更に他の例を示す端面図である。
【図20】シースを開いたときに光ファイバテープ心線に曲がりが発生する状況を説明する図である。
【図21】分割作業に用いる専用工具を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
100、200、300、400、1000 光ファイバケーブル
2 光ファイバ心線
3 光ファイバテープ心線
4 緩衝体
5 テンションメンバ
6 支持線
7 シース
8 切裂き紐
9 ノッチ
10 光ファイバ心線ユニット
11 介在物
12 首部
13 上部部材
14 下部部材
15 凹部材
16 加傷刃
17 シース片
18 ケーブル本体部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本以上の光ファイバと前記光ファイバを被覆するシースを有する光ファイバケーブルであって、前記シースと光ファイバとの間に介在物が光ファイバケーブルの長手方向にそって並行に配置され、前記シースと接触する前記介在物の部分が前記シースに接着されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記介在物が前記シースに接着される接着力が10N/cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記介在物の一部が空隙であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記介在物が光ファイバの両側に配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1つに記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記光ファイバは、長辺側長さと短辺側長さが異なる領域に配置され、前記介在物は少なくとも前記領域の長辺側両端に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記介在物と前記シース表面の最短距離をA、前記光ファイバと前記シース表面の最短距離をBとしたとき、A<Bかつ、0.1mm≦A≦1.5mmであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
前記シースに設けられたノッチをさらに備え、前記ノッチは介在物に向かって形成され、前記ノッチの光ファイバケーブル中心側のノッチ壁面の先端部分が対応する介在物の中心よりも外側にあることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の光ファイバケーブル。
【請求項8】
前記光ファイバは光ファイバテープ心線を積層して形成され、前記介在物は前記光ファイバの長辺側両端に配置され、横断面において、介在物同士の中心線を結ぶ線に対し、前記光ファイバの中心線が所定角度で傾いていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の光ファイバケーブル。
【請求項9】
前記所定角度は、5度以上、60度以下であることを特徴とする請求項8に記載の光ファイバケーブル。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載の光ファイバケーブルであって、前記光ファイバには滑材が塗られていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一つに記載の光ファイバケーブルであって、前記光ファイバは4心以上16心以下であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一つに記載の光ファイバケーブルであって、前記シース内に長手方向に前記光ファイバと並行に配置された一対のテンションメンバを備え、前記シースの前記光ファイバと前記テンションメンバを覆う部分は対向する2辺が前記一対のテンションメンバの中心を結ぶ直線にほぼ平行な断面略矩形であり、前記介在物及び前記光ファイバは前記一対のテンションメンバを結ぶ直線上に配置されたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項13】
請求項12に記載の光ファイバケーブルであって、前記テンションメンバの引張強度が2500N以上であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一つに記載の光ファイバケーブルの光ファイバ取り出し方法であって、前記シース外表面から介在物に向かってシースを切り込むことによってシースを複数枚に分割し、分割されたシースから光ファイバを取出すことを特徴とする光ファイバ取出し方法。
【請求項15】
請求項1から13いずれか一つに記載の光ファイバケーブルの光ファイバ取り出し工具であって、切り込み刃が前記シース外表面から介在物に向かうよう案内されたことを特徴とする光ファイバ取り出し工具。
【請求項1】
1本以上の光ファイバと前記光ファイバを被覆するシースを有する光ファイバケーブルであって、前記シースと光ファイバとの間に介在物が光ファイバケーブルの長手方向にそって並行に配置され、前記シースと接触する前記介在物の部分が前記シースに接着されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記介在物が前記シースに接着される接着力が10N/cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記介在物の一部が空隙であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記介在物が光ファイバの両側に配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1つに記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記光ファイバは、長辺側長さと短辺側長さが異なる領域に配置され、前記介在物は少なくとも前記領域の長辺側両端に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記介在物と前記シース表面の最短距離をA、前記光ファイバと前記シース表面の最短距離をBとしたとき、A<Bかつ、0.1mm≦A≦1.5mmであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
前記シースに設けられたノッチをさらに備え、前記ノッチは介在物に向かって形成され、前記ノッチの光ファイバケーブル中心側のノッチ壁面の先端部分が対応する介在物の中心よりも外側にあることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の光ファイバケーブル。
【請求項8】
前記光ファイバは光ファイバテープ心線を積層して形成され、前記介在物は前記光ファイバの長辺側両端に配置され、横断面において、介在物同士の中心線を結ぶ線に対し、前記光ファイバの中心線が所定角度で傾いていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の光ファイバケーブル。
【請求項9】
前記所定角度は、5度以上、60度以下であることを特徴とする請求項8に記載の光ファイバケーブル。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載の光ファイバケーブルであって、前記光ファイバには滑材が塗られていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一つに記載の光ファイバケーブルであって、前記光ファイバは4心以上16心以下であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一つに記載の光ファイバケーブルであって、前記シース内に長手方向に前記光ファイバと並行に配置された一対のテンションメンバを備え、前記シースの前記光ファイバと前記テンションメンバを覆う部分は対向する2辺が前記一対のテンションメンバの中心を結ぶ直線にほぼ平行な断面略矩形であり、前記介在物及び前記光ファイバは前記一対のテンションメンバを結ぶ直線上に配置されたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項13】
請求項12に記載の光ファイバケーブルであって、前記テンションメンバの引張強度が2500N以上であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一つに記載の光ファイバケーブルの光ファイバ取り出し方法であって、前記シース外表面から介在物に向かってシースを切り込むことによってシースを複数枚に分割し、分割されたシースから光ファイバを取出すことを特徴とする光ファイバ取出し方法。
【請求項15】
請求項1から13いずれか一つに記載の光ファイバケーブルの光ファイバ取り出し工具であって、切り込み刃が前記シース外表面から介在物に向かうよう案内されたことを特徴とする光ファイバ取り出し工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−251770(P2006−251770A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363845(P2005−363845)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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