説明

光ファイバケーブルの製造装置

【課題】押え巻きテープの局所的な欠陥の発生を防止し、品質の劣化を抑制する光ファイバケーブルの製造装置を提供する。
【解決手段】 第1主面から第2主面に向かってファイバコア12を送通する第1貫通孔7、第1主面から第1貫通孔7に連通し、ファイバコア12に縦添えにより押え巻きする複数のテープ14a、14bを誘導する複数のスリット9a、9bを有する治具5と、一端側において第1主面が露出するように治具5が配置され、複数のテープ14a、14bで押え巻きされたファイバコア12を他端側へ送通する第2貫通孔4を有するニップル3と、ニップル3の外周面との間に間隙を形成し、ニップル3の他端から送り込まれる押え巻きされたファイバコア12に間隙を通して溶融樹脂16Aを供給する第3貫通孔2を有するダイス1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦添えによる押え巻きを施す光ファイバケーブルの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の光ファイバケーブルは、複数の心線を有するファイバコアの外周に押え巻きを施し、その外側をケーブル外被で覆った構造を有する。押え巻を施す場合、押え巻きテープを横巻きあるいは縦添えにし、押え巻きテープに粗巻きを施す。しかし、近年検討されている細径の光ファイバを高密度に実装する光ファイバケーブル(非特許文献1参照)では、ファイバコアが硬い材料で保護されていない。そのため、押え巻きテープに粗巻きを施すと、ファイバコアを締め付けることになり、光ファイバの伝送損失が劣化する原因となる。
【0003】
粗巻きをせずに押え巻きテープを縦添えにする方法が提案されている(特許文献1〜3参照)。しかし、提案された縦添え方法では、押え巻きテープの枚数が少なくなると、押え巻きテープに皺や折れ等の局所的な欠陥が発生しやすくなる。押え巻きテープの局所的な欠陥はファイバコアを圧迫するため、伝送特性や機械特性等の光ファイバケーブルの品質に悪影響を及ぼしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−237341号公報
【特許文献2】特開2009−296472号公報
【特許文献3】特開2009−92832号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】戸毛、他、「基盤設備の有効利用を可能とする光ケーブル技術」、NTT技術ジャーナル、2006年12月、第18巻、第12号、pp.62−65
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点を鑑み、本発明の目的は、押え巻きテープの局所的な欠陥の発生を防止し、品質の劣化を抑制することが可能な光ファイバケーブルの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、第1主面から第2主面に向かってファイバコアを送通する第1貫通孔、第1主面から第1貫通孔に連通し、ファイバコアに縦添えにより押え巻きする複数のテープを誘導する複数のスリットを有する治具と、一端側において第1主面が露出するように治具が配置され、複数のテープで押え巻きされたファイバコアを他端側へ送通する第2貫通孔を有するニップルと、ニップルの外周面との間に間隙を形成し、ニップルの他端から送り込まれる押え巻きされたファイバコアに間隙を通して溶融樹脂を供給する第3貫通孔を有するダイスとを備える光ファイバケーブルの製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、押え巻きテープの局所的な欠陥の発生を防止し、品質の劣化を抑制することが可能な光ファイバケーブルの製造装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの製造装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る治具の一例を示す正面図である。
【図3】図2に示した治具の側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る治具による光ファイバケーブルの縦添えの一例を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る治具により縦添えされた光ファイバケーブルの一例を示す概略図である。
【図6】図5に示した光ファイバケーブルのA‐A断面を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る治具の他の例を示す正面図である。
【図8】本発明の実施の形態の第1の変形例に係る治具の一例を示す正面図である。
【図9】図8に示した治具の側面図である。
【図10】本発明の実施の形態の第1の変形例に係る治具により縦添えされた光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態の第2の変形例に係る治具の一例を示す正面図である。
【図12】図11に示した治具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、本発明の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号が付してある。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
又、以下に示す本発明の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの製造装置は、図1に示すように、治具5、ニップル3、及びダイス1を備える。治具5は、第1貫通孔7及びスリット9a、9bを有する。スリット9a、9bは、第1貫通孔7に連通する。ニップル3は、第2貫通孔4を有する。ダイス1は、第3貫通孔2を有する。
【0013】
治具5は、ニップル3の一端側で一主面(第1主面)が露出するように第2貫通孔4に配置される。ニップル3は、ダイス1の一端側で、治具5の第1主面が露出するように第3貫通孔2に配置される。第3貫通孔2は、ニップル3の一端から他端に至る外周面との間に間隙を有する。
【0014】
光ファイバケーブルのファイバコア12が、治具5の第1主面から第2主面に向かって第1貫通孔7を通して送通される。テープ14a、14bがスリット9a、9bを介してそれぞれ誘導され、ファイバコア12を縦添えにより押え巻きする。テープ14a、14bからなる押え巻きテープ14が施されたファイバコア12は第2貫通孔4を通して第3貫通孔2に送り込まれる。間隙から溶融樹脂16Aが供給され、押え巻きテープ14上に被膜16が形成される。
【0015】
図2及び図3に示すように、治具5の第1貫通孔7は、第1主面から第2主面に貫通している。スリット9a、9bはそれぞれ、円弧や楕円弧等の曲線部の両端部に、異なる長さの直線部が設けられた形状を有する。スリット9a、9bは、第1貫通孔7の中心に関して、互に回転対称である。
【0016】
例えば、スリット9a、9bを第1貫通孔7の上下に配置する。図2に示すように、治具5の第1主面において、第1貫通孔7から、スリット9a、9bのそれぞれの曲線部の中心位置までの間隔HaとHbはほぼ等しい。第1貫通孔7から、スリット9a、9bのそれぞれの長い直線部の端部までの間隔h1とh3がほぼ等しい。第1貫通孔7の中心から、スリット9a、9bのそれぞれの短い直線部の端部までの間隔h2とh4がほぼ等しい。また、スリット9a、9bの長さLa、Lbはほぼ等しい。なお、「第1貫通孔7からの間隔」は、スリット9a、9bの曲線部の中心位置と第1貫通孔7の中心とを結ぶ方向に直交する方向の第1貫通孔7の中心線からの間隔と定義する。
【0017】
図3に示すように、スリット9a、9bはそれぞれ、第1貫通孔7に対してほぼ同一の角度θa、θbで第1貫通孔7に向かって形成されている。スリット9a、9bの長い直線部の端部は、治具5の第1主面から距離Daの位置で第1貫通孔7に連通する。スリット9a、9bの短い直線部の端部は、治具5の第1主面から、距離Dbの位置で第1貫通孔7に連通する。間隔h1、h3は間隔h2、h4よりも小さいので、距離Daは距離Dbよりも短い。また、スリット9a、9bの曲線部は、治具5の第1主面から、距離Dbより更に離れた位置で第1貫通孔7に連通する。
【0018】
図4は、実施の形態に係る治具5を用いた縦添えによる押え巻きを模式的に説明する図である。図4に示すように、ファイバコア12が、治具5の第1主面側から第2主面側に向かって第1貫通孔7に送り込まれる。同時に、テープ14a、14bがそれぞれ、スリット9a、9bに送り込まれる。ファイバコア12が十分なクリアランスで送り込まれるように、第1貫通孔7の内径を設定する。テープ14a、14bの幅はそれぞれ、図2に示したスリット9a、9bの長さLa、Lbとほぼ同じか若干短くする。テープ14a、14bによりファイバコア12の外周を隙間なく押え巻きするため、スリット9a、9bの長さLa、Lbの総和(La+Lb)はファイバコア12の周長よりも大きくすることが望ましい。
【0019】
テープ14a、14bは、スリット9a、9bに送り込まれて第1貫通孔7へと誘導される。まず、スリット9a、9bの長い直線部から誘導されるテープ14a、14bの端部がそれぞれ、距離Daの位置で第1貫通孔7に達する。その後、スリット9a、9bの短い直線部から誘導されるテープ14a、14bの端部はそれぞれ、距離Dbの位置で第1貫通孔7に達する。更に、スリット9a、9bの曲線部から誘導されるテープ14a、14bの中央部が第1貫通孔7に達する。このように、テープ14a、14bがファイバコア12(図示省略)の外周に縦添えされ、押え巻きテープ14が形成される。
【0020】
図4〜図6に示すように、距離Daの位置において、第1貫通孔7内に導入されたテープ14aの一端側が、ファイバコア12の一側面側に達する。距離Dbの位置において、第1貫通孔7内に導入されたテープ14bの一端側が、ファイバコア12の一側面側でテープ14aの上に重なる。一方、ファイバコア12の一側面の反対側では、距離Daにおいてファイバコア12の側面に達したテープ14bの上にテープ14aが重なる。テープ14a、14bの全体が第1貫通孔7内に導入されて、テープ14a、14bがそれぞれ、ファイバコア12の上面側及び下面側に縦添えされた押え巻きテープ14が形成される。
【0021】
図5及び図6に示すように、押え巻きテープ14は、ファイバコア12の両側面部においてテープ14a、14bの端部が重なった重なり部24を有する。一方の重なり部24では、テープ14aの一端部の上にテープ14bの一端部が重なる。他方の重なり部24では、テープ14bの一端部の上にテープ14aの一端部が重なる。
【0022】
実施の形態においては、スリット9a、9bの長い直線部を通過したテープ14a、14bの端部が、スリット9a、9bの短い直線部を通過したテープ14a、14bの端部に対してファイバコア12側に位置する。そのため、テープ14a、14bのファイバコア12に対する縦添えされた位置は逆になることはなく、テープ14a、14bの縦添えを安定して行うことができる。その結果、皺や折れ等の押え巻きテープ14の局所的な欠陥の発生を防止し、品質の劣化を抑制することができる。
【0023】
また、図2に示したように、スリット9a、9bの中央部には曲線部が設けられている。したがって、テープ14a、14bは、第1貫通孔7内に導入された時に、ファイバコア12の上に曲線状に成形される。また、図1に示したように、ファイバコア12は、治具5を出たの直後にニップル3の中に挿入される。したがって、押え巻きテープ14は、治具5内で曲線状に成形された状態を保ったまま、間隙から供給された溶融樹脂16Aにより押さえつけられる。その結果、テープ14a、14bの長手方向に皺や折れが発生することなく縦添えを行うことができる。
【0024】
なお、上述の説明においては、長さの異なる直線部を有するスリット9a、9bを用いている。しかし、一方のスリットの両端に短い直線部を設け、他方のスリットの両端には長い直線部を設けてもよい。この場合、2枚のテープのうち、一方のテープの両端がファイバコア側となり、他方のテープの両端がその上に重なることになる。
【0025】
また、スリット9a、9b、9c、9dには、曲線部の両端に直線部が設けられている。しかし、直線部の代わりに、スリットの両端部、あるいは一方の端部を曲線形状にしてもよい。また、楕円弧でスリットを構成してもよい。
【0026】
また、2枚のテープ14a、14bを用いて縦添えを行っているが、3枚以上のテープを用いてもよい。例えば、図7に示すように、スリット9a、9b、9cを有する治具5を用いて、3枚のテープで縦添えを行ってもよい。スリット9a、9b、9cは、第1貫通孔7の中心に関して回転対称である。各スリット9a、9b、9cの一端の第1貫通孔7までの間隔h1、h3、h5を、他端の第1貫通孔7までの間隔h2、h4、h6より短くすればよい。
【0027】
例えば、互に隣り合うスリット9a、9bにおいて、互に隣り合う端部の間では、スリット9aの端部よりもスリット9bの端部のほうが治具5の第1主面からの距離が短い位置で第1貫通孔7に連通する。したがって、スリット9a、9bに送り込まれたテープがファイバコア12に縦添えされる場合、スリット9bからのテープの端部の上にスリット9aからのテープの端部が重なる。同様に、スリット9b、9cに送り込まれたテープに対しては、スリット9cからのテープの端部の上にスリット9bからのテープの端部が重なる。スリット9c、9aに送り込まれたテープに対しては、スリット9aからのテープの端部の上にスリット9cからのテープの端部が重なる。このように、異なる位置で第1貫通孔7に連通させることにより、押え巻きテープ14の重なり部での位置関係が決定される。
【0028】
実施の形態に係る治具を用いて、外径の異なるファイバコアに縦添えを行った結果を、表1に示す。スリットの形状は、図1に示したスリット9a、9bと同様である。治具には、表1に示したテープ枚数と同じ数のスリットを設けている。また、従来の縦添え方法では、平面状のテープを曲線状に成形することなく用いている。
【表1】

【0029】
表1に示すように、従来の縦添え方法では、外径が1.9mm〜3.9mmのファイバコアのいずれにおいても縦添えを行った押え巻きテープに皺や折れ等の局所的な欠陥が発生している。一方、実施の形態に係る治具を用いる縦添え方法では、外径が1.9mm〜3.9mmのファイバコアに対して、2〜4枚のテープを用いて、押え巻きテープに局所的な欠陥の発生がない。また、一般にテープ幅が大きくなると、従来の縦添え方法では、押え巻きテープに局所的な欠陥が発生しやすくなる。実施の形態では、テープ幅が7mmに増大しても、押え巻きテープの局所的な欠陥は発生しないことが確認されている。なお、表1のテープ枚数が1枚の場合に押え巻きテープに隙間が発生しているのは、テープ幅が5mmとファイバコアの外径よりも小さいためである。
【0030】
(実施の形態の第1の変形例)
本発明の実施の形態の第1の変形例に係る治具5は、図8及び図9に示すように、第1貫通孔7の上下に異なる間隔で配置された、中央部に曲線部を有するスリット9c、9dを備える。スリット9c、9dはそれぞれ、第1貫通孔7に対してほぼ同一の角度θc、θdで第1貫通孔7に向かって形成されている。スリット9c、9dは、ほぼ同一形状である。スリット9cの両端の第1貫通孔7からの間隔h1、h2は、ほぼ等しい。スリット9dの両端の第1貫通孔7からの間隔h3、h4は、ほぼ等しい。スリット9a、9bの長さLa、Lbはほぼ等しい。また、スリット9cの間隔h1、h2は、スリット9dの間隔h3、h4より小さい。スリット9cの曲線部の間隔Hcは、スリット9dの曲線部の間隔Hdより小さい。
【0031】
第1の変形例では、それぞれの両端が第1貫通孔7から同じ間隔のスリット9c、9dが第1貫通孔7に対して異なる間隔で配置される点が実施の形態と異なる。他の構成は、実施の形態と同様であるので、重複する記載は省略する。
【0032】
第1の変形例では、スリット9cの間隔h1、h2が、スリット9dの間隔h3、h4よりも短い。また、スリット9c、9dは共に、第1貫通孔7に対する角度θc、θdはほぼ同一である。したがって、スリット9cの両端は、スリット9dの両端が第1貫通孔7に連通する距離Ddよりも短い距離Dcで第1貫通孔7に連通する。
【0033】
例えば、テープ14a、14bをそれぞれ、スリット9c、9dに送り込む。図10に示すように、押え巻きテープ14には、ファイバコア12の両側面部の重なり部24においてテープ14a、14bの端部が重なる。両方の重なり部24では、ファイバコア12側のテープ14aの両端部の上にテープ14bの両端部が重なる。
【0034】
第1の変形例においては、スリット9cの両端部を通過したテープ14aの端部が、スリット9bの両端部を通過したテープ14bの端部に対してファイバコア12側に位置する。そのため、テープ14a、14bのファイバコア12に対する縦添えされた位置は逆になることはなく、テープ14a、14bの縦添えを安定して行うことができる。その結果、皺や折れ等の押え巻きテープ14の局所的な欠陥の発生を防止し、品質の劣化を抑制することができる。
【0035】
また、図8に示したように、スリット9a、9bの中央部には曲線部が設けられている。したがって、テープ14a、14bは、第1貫通孔7内に導入された時に、ファイバコア12の上に曲線状に成形される。また、図1に示したように、ファイバコア12は、治具5を出た直後にニップル3の中に挿入される。したがって、押え巻きテープ14は、治具5内で曲線状に成形された状態を保ったまま、間隙から供給された溶融樹脂16Aにより押さえつけられる。その結果、テープ14a、14bの長手方向に皺や折れが発生することなく縦添えを行うことができる。
【0036】
(実施の形態の第2の変形例)
本発明の実施の形態の第2の変形例に係る治具5は、図11及び図12に示すように、第1貫通孔7の上下にほぼ同じ間隔で配置された、中央部に曲線部を有するスリット9c、9dを備える。スリット9c、9dはそれぞれ、第1貫通孔7に対して異なる角度θc、θdで第1貫通孔7に向かって形成されている。スリット9c、9dは、ほぼ同一形状である。スリット9c、9dのそれぞれの両端の第1貫通孔7からの間隔h1、h2、h3、h4は、ほぼ等しい。スリット9a、9bの長さLa、Lbはほぼ等しい。また、スリット9c、9dの曲線部の間隔Hc、Hdは、ほぼ同一である。
【0037】
第2の変形例では、両端が第1貫通孔7から同じ間隔のスリット9c、9dが第1貫通孔7に対して異なる角度で第1貫通孔7に連通する点が実施の形態及び第1の変形例と異なる。他の構成は、実施の形態及び第1の変形例と同様であるので、重複する記載は省略する。
【0038】
第2の変形例では、スリット9c、9dの間隔h1、h2、h3、h4はほぼ同一である。また、スリット9cの第1貫通孔7に対する角度θcは、スリット9dの第1貫通孔7に対する角度θdより大きい。したがって、スリット9cの両端は、スリット9dの両端が第1貫通孔7に連通する距離Ddよりも短い距離Dcで第1貫通孔7に連通する。
【0039】
例えば、テープ14a、14bをそれぞれ、スリット9c、9dに送り込む。図10に示すように、押え巻きテープ14には、ファイバコア12の両側面部の重なり部24においてテープ14a、14bの端部が重なる。両方の重なり部24では、ファイバコア12側のテープ14aの両端部の上にテープ14bの両端部が重なる。
【0040】
第2の変形例においては、スリット9cの両端部を通過したテープ14aの端部が、スリット9bの両端部を通過したテープ14bの端部に対してファイバコア12側に位置する。そのため、テープ14a、14bのファイバコア12に対する縦添えされた位置は逆になることはなく、テープ14a、14bの縦添えを安定して行うことができる。その結果、皺や折れ等の押え巻きテープ14の局所的な欠陥の発生を防止し、品質の劣化を抑制することができる。
【0041】
また、図11に示したように、スリット9a、9bの中央部には曲線部が設けられている。したがって、テープ14a、14bは、第1貫通孔7内に導入された時に、ファイバコア12の上に曲線状に成形される。また、図1に示したように、ファイバコア12は、治具5を出た直後にニップル3の中に挿入される。したがって、押え巻きテープ14は、治具5内で曲線状に成形された状態を保ったまま、間隙から供給された溶融樹脂16Aにより押さえつけられる。その結果、テープ14a、14bの長手方向に皺や折れが発生することなく縦添えを行うことができる。
【0042】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者にはさまざまな代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係わる発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、縦添えによる押え巻きが施される光ファイバケーブルの製造装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…ダイス
2…第3貫通孔
3…ニップル
4…第2貫通孔
5…治具
7…第1貫通孔
9a、9b、9c、9d…スリット
12…ファイバコア
14…テープ
14a、14b…テープ
16…被膜
16A…溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面から第2主面に向かってファイバコアを送通する第1貫通孔、前記第1主面から前記第1貫通孔に連通し、前記ファイバコアに縦添えにより押え巻きする複数のテープを誘導する複数のスリットを有する治具と、
一端側において前記第1主面が露出するように前記治具が配置され、前記複数のテープで押え巻きされた前記ファイバコアを他端側へ送通する第2貫通孔を有するニップルと、
前記ニップルの外周面との間に間隙を形成し、前記ニップルの他端から送り込まれる押え巻きされた前記ファイバコアに前記間隙を通して溶融樹脂を供給する第3貫通孔を有するダイス
とを備えることを特徴とする光ファイバケーブルの製造装置。
【請求項2】
前記複数のスリットの長さの総和が、前記ファイバコアの周長よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブルの製造装置。
【請求項3】
前記複数のスリットが、少なくとも中央部に曲線部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバケーブルの製造装置。
【請求項4】
前記複数のスリットの中の互いに隣り合うスリットにおいて、互に隣り合う端部が、前記第1主面からの距離が互に異なる位置で前記第1貫通孔に連通することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルの製造装置。
【請求項5】
前記複数のスリットのそれぞれは、前記第1主面において前記第1貫通孔の中心に関して互に回転対称な形状を有し、前記複数のスリットのそれぞれの両端は、前記第1主面からの距離が異なる位置で前記第1貫通孔に連通することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルの製造装置。
【請求項6】
前記複数のスリットのそれぞれは、前記第1主面において前記第1貫通孔の中心に対して互に距離が異なる位置に同じ形状で配置され、前記第1貫通孔に対して同じ角度で前記第1貫通孔に連通することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルの製造装置。
【請求項7】
前記複数のスリットのそれぞれは、前記第1主面において前記第1貫通孔の中心に関して互に回転対称な形状を有し、前記第1貫通孔に対して異なる角度で前記第1貫通孔に連通することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−37566(P2012−37566A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174582(P2010−174582)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】