説明

光ファイバケーブル及びこの光ファイバケーブルの製造方法

【課題】光ファイバを複数本纏めた光ユニットを集合させた構造を有する光ファイバケーブルにおいて、光ユニット内の光ファイバを他の光ユニットの光ファイバに接続させることを容易とし、かつ、端末の近傍において光ユニットを構成する光ファイバがばらばらになってしまうことを防止し、さらに、製造を容易化する。
【解決手段】光ユニット2aは、複数本の光ファイバ2と、これら光ファイバ2を束ねる円筒状チューブ3とからなり、円筒状チューブ3として、熱可塑性のフィルムテープが長手方向に沿う重なり部を有して円筒状にフォーミングされたものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを複数本纏めた光ユニットを集合させた構造を有する光ファイバケーブル及びこの光ファイバケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバケーブルとしては、例えば、光ファイバを内部に収納するスロット溝を有したスロットコアと、このスロットコアの周囲を被覆するシースとから構成されたものが提案されている。
【0003】
このような光ファイバケーブルにおいて、光ファイバを多心で集合させて用いる場合には、光ファイバの外周面を着色し、光ファイバを複数本ごとの小単位(以下、「光ユニット」という。)に分け、各色の光ファイバにより一つの光ユニットを構成する。そして、この光ユニットを複数個集めてスロット内に収納する。
【0004】
光ユニットの構成としては、図14に示すように、光ユニット102aを構成する複数本の光ファイバ102を円筒状のルースチューブ103に収納する構成(ルースチューブ構造)や、特許文献1に記載されているように、プラスチックテープを筒状にフォーミングし、接着性樹脂によりチューブ化し、この中に光ファイバを収納して光ユニット化する構成が提案されている。
【0005】
また、他の光ユニットの構成として、図15に示すように、光ユニット102aを構成する複数本の光ファイバ102を識別糸104によって束ねる構成(バンドル構造)も提案されている。
【0006】
なお、これら光ファイバの光ユニットを用いた光ファイバケーブルの構造は、標準化もされている(Telcordia GR-20 Generic Requirements for Optical Fiber or Optical Fiber Cable)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−303769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述したルースチューブ構造の光ユニット102aにおいては、光ユニット102a内の光ファイバ102を他の光ユニットの光ファイバに接続させるために、光ファイバ102をルースチューブ103から取り出すときには、ルースチューブ103の一部を刃物などにより切り裂き、ルースチューブ103を輪切りにする必要がある。このような作業においては、ルースチューブ103が薄く、また、ルースチューブ103の内面と光ファイバ102とはほぼ密着しているため、刃物により誤って光ファイバ102を傷付けたり、切断してしまう虞がある。また、光ファイバケーブルの中間位置で他の光ファイバに接続する中間後分岐作業においては、ルースチューブ103の側面を薄くそぎ落としながら光ファイバ102を露出させる必要があり、特殊な工具を用いる必要があった。
【0009】
特許文献1に記載されたプラスチックテープを筒状にフォーミングして接着性樹脂によりチューブ化する構成においても、プラスチックテープが筒状となされて接合されているため、光ファイバを取り出すことが困難である。
【0010】
また、前述したバンドル構造の光ユニット102aにおいて、光ユニット102a内の光ファイバ102を他の光ユニットの光ファイバに接続させるときには、光ファイバ102を束ねている識別糸104を解く、または、切断することにより、光ファイバ102を取り出すことができるが、光ファイバケーブルの端末の近傍では、シースの除去ととともに、識別糸104が容易に解けてしまう。識別糸104が解けてしまうと、光ユニット102aを構成する光ファイバ102がばらばらになってしまい、他の光ユニットを構成する光ファイバとの識別が困難となってしまう。
【0011】
また、バンドル構造の光ユニット102aにおいては、光ファイバ102が露出しているため、光ファイバケーブルの端末において、光ユニット102aを長く取り回す必要がある場合には、保護チューブを被せるなどの対策が必要となり、煩雑である。
【0012】
さらに、バンドル構造の光ユニット102aの製造にあたっては、識別糸104を光ファイバ102上に直接巻付けるため、識別糸104の巻き付け張力や巻き付けピッチなどによっては、光ファイバ102の伝送損失を悪化させる虞があるため、製造が困難である。
【0013】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、光ファイバを複数本纏めた光ユニットを集合させた構造を有する光ファイバケーブルにおいて、光ユニット内の光ファイバを他の光ユニットの光ファイバに接続させることが容易であり、かつ、端末の近傍において光ユニットを構成する光ファイバがばらばらになってしまうことがなく、さらに、製造が容易化された光ファイバケーブル及びこの光ファイバケーブルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る光ファイバケーブルは、以下の構成を有するものである。
【0015】
〔構成1〕
光ファイバを複数本纏めた光ユニットが複数集合された構造を有する光ファイバケーブルにおいて、光ユニットは、複数本の光ファイバと、これら光ファイバを束ねる円筒状チューブとからなり、円筒状チューブは、熱可塑性のフィルムテープが円周方向における重なり部を有して円筒状にフォーミングされたものであることを特徴とするものである。
【0016】
〔構成2〕
構成1を有する光ファイバケーブルにおいて、円筒状チューブをなす熱可塑性のフィルムテープは、厚さが0.012mm乃至0.100mmであることを特徴とするものである。
【0017】
〔構成3〕
構成1、または、構成2を有する光ファイバケーブルにおいて、円筒状チューブには、外周面に紫外線硬化樹脂によるコーティングがなされていることを特徴とするものである。
【0018】
〔構成4〕
構成3を有する光ファイバケーブルにおいて、円筒形チューブをなす熱可塑性のフィルムテープは、無色透明な材料からなり、紫外線硬化樹脂には、着色が施されていることを特徴とするものである。
【0019】
〔構成5〕
構成1乃至構成3のいずれか一を有する光ファイバケーブルにおいて、円筒状チューブには、部分的に所定箇所に、光ユニット間の識別を行うための着色が施されていることを特徴とするものである。
【0020】
〔構成6〕
構成1乃至構成3のいずれか一を有する光ファイバケーブルにおいて、熱可塑性のフィルムテープは、光ユニット間の識別を行うために全体的に着色されていることを特徴とするものである。
【0021】
〔構成7〕
構成1乃至構成3のいずれか一を有する光ファイバケーブルにおいて、円筒状チューブには、光ユニット間の識別を行うために着色された識別テープが縦添えされていることを特徴とするものである。
【0022】
〔構成8〕
構成3乃至構成7のいずれか一を有する光ファイバケーブルにおいて、円筒状チューブの内面には、吸水性材料が塗布されていることを特徴とするものである。
【0023】
〔構成9〕
構成3乃至構成7のいずれか一を有する光ファイバケーブルにおいて、円筒状チューブの内面には、粉状の吸水性材料が接着されていることを特徴とするものである。
【0024】
〔構成10〕
構成8、または、構成9を有する光ファイバケーブルにおいて、吸水性材料は、ポリアクリル系、セルロース系、または、デンプン系の材料であることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明に係る光ファイバケーブルの製造方法は、以下の構成を有するものである。
【0026】
〔構成11〕
光ファイバを複数本纏めた光ユニットが複数集合された構造を有する光ファイバケーブルの製造方法において、熱可塑性のフィルムテープを、円周方向における重なり部を有して円筒状にフォーミングして円筒状チューブを形成し、円筒状チューブ内に複数本の光ファイバを収納して、これら光ファイバを円筒状チューブにより束ねることを特徴とするものである。
【0027】
〔構成12〕
構成11を有する光ファイバケーブルの製造方法において、円筒状チューブをなす熱可塑性のフィルムテープとして、厚さが0.012mm乃至0.100mmのフィルムテープを用いることを特徴とするものである。
【0028】
〔構成13〕
構成11、または、構成12を有する光ファイバケーブルの製造方法において、円筒状チューブの外周面に、紫外線硬化樹脂によるコーティングを施すことを特徴とするものである。
【0029】
〔構成14〕
構成13を有する光ファイバケーブルの製造方法において、円筒形チューブをなす熱可塑性のフィルムテープとして、無色透明な材料からなるものを用い、紫外線硬化樹脂として、着色が施されたものを用いることを特徴とするものである。
【0030】
〔構成15〕
構成11乃至構成13のいずれか一を有する光ファイバケーブルの製造方法において、円筒状チューブの部分的な所定の箇所に、光ユニット間の識別を行うための着色を施すことを特徴とするものである。
【0031】
〔構成16〕
構成11乃至構成13のいずれか一を有する光ファイバケーブルの製造方法において、熱可塑性のフィルムテープを円筒状にフォーミングして円筒状チューブとする前に、光ユニット間の識別を行うために予め着色することを特徴とするものである。
【0032】
〔構成17〕
構成11乃至構成13のいずれか一を有する光ファイバケーブルの製造方法において、円筒状チューブに、光ユニット間の識別を行うために着色された識別テープを縦添えすることを特徴とするものである。
【0033】
〔構成18〕
構成13乃至構成17のいずれか一を有する光ファイバケーブルの製造方法において、熱可塑性のフィルムテープを円筒状にフォーミングする前に、フォーミングされたときに円筒状チューブの内周面となるフィルムテープの一面に、吸水性材料を塗布することを特徴とするものである。
【0034】
〔構成19〕
構成18を有する光ファイバケーブルの製造方法において、熱可塑性のフィルムテープのフォーミングと、塗布された吸水性材料の乾燥とを、同一の加熱装置によって同時に行うことを特徴とするものである。
【0035】
〔構成20〕
構成13乃至構成17のいずれか一を有する光ファイバケーブルの製造方法において、熱可塑性のフィルムテープを円筒状にフォーミングする前に、フォーミングされたときに円筒状チューブの内周面となるフィルムテープの一面に、粉状の吸水性材料を接着させる ことを特徴とするものである。
【0036】
〔構成21〕
構成18乃至構成21のいずれか一を有する光ファイバケーブルの製造方法において、吸水性材料として、ポリアクリル系、セルロース系、または、デンプン系の材料を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る光ファイバケーブルは、構成1を有することにより、光ユニットは、複数本の光ファイバとこれら光ファイバを束ねる円筒状チューブとからなり、円筒状チューブは、熱可塑性のフィルムテープが、円周方向における重なり部を有して円筒状にフォーミングされたものであるので、製造が容易であり、端末の近傍において光ユニットを構成する光ファイバがばらばらになってしまうことがなく、また、光ユニット内の光ファイバを他の光ユニットの光ファイバに接続させるときには、円筒状チューブを平坦な形状に開くことにより、容易に光ファイバを円筒状チューブから取り出すことができる。
【0038】
本発明に係る光ファイバケーブルの製造方法は、構成11を有することにより、熱可塑性のフィルムテープを円周方向における重なり部を有して円筒状にフォーミングして円筒状チューブを形成し、この円筒状チューブ内に複数本の光ファイバを収納してこれら光ファイバを円筒状チューブにより束ねるので、端末の近傍において光ユニットを構成する光ファイバがばらばらになってしまうことがなく、また、光ユニット内の光ファイバを他の光ユニットの光ファイバに接続させるときには、円筒状チューブを平坦な形状に開くことにより、容易に光ファイバを円筒状チューブから取り出すことができる光ファイバケーブルを、容易に製造することができる。
【0039】
すなわち、本発明は、光ファイバを複数本纏めた光ユニットを集合させた構造を有する光ファイバケーブルにおいて、光ユニット内の光ファイバを他の光ユニットの光ファイバに接続させることが容易であり、かつ、端末の近傍において光ユニットを構成する光ファイバがばらばらになってしまうことがなく、さらに、製造が容易化された光ファイバケーブル及びこの光ファイバケーブルの製造方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの構成の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成の他の例(円筒状チューブの一部を着色したもの)を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成の他の例(円筒状チューブの全体を着色したもの)を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成の他の例(識別テープを縦添えしたもの)を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成の他の例(円筒状チューブにUVコーティングをしたもの)を示す斜視図及び断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成の他の例(円筒状チューブを二重構造としたもの)を示す斜視図及び断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成を示す断面図である。
【図11】本発明に係る第1の実施の形態における光ファイバケーブルの製造装置の構成を示す側面図である。
【図12】本発明に係る第1の実施の形態における光ファイバケーブルの製造装置の構成の他の例を示す側面図である。
【図13】本発明に係る第2の実施の形態における光ファイバケーブルの製造装置の構成を示す側面図である。
【図14】従来の光ファイバケーブルの光ユニットの構成を示す斜視図である。
【図15】従来の光ファイバケーブルの光ユニットの構成の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0042】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
【0043】
本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブル1は、図1に示すように、光ファイバ2を複数本纏めた光ユニット2aが複数集合された構造を有する光ファイバケーブルである。
【0044】
複数の光ユニット2aは、円筒状のシース(外被)6内に収納されている。シース6は、円筒状のチューブとして形成されている。かかるシース6は、複数の光ユニット2aの周囲全体をポリエチレン樹脂で被覆するようにして形成する押し出し成形により形成される。
【0045】
図2は、本発明の他の実施形態に係る光ファイバケーブルの断面図である。より詳細には、図2は、前記光ファイバケーブルをその長手方向に直交する面で切断した場合の断面を示す断面図である。
【0046】
この光ファイバケーブル1は、円筒状のスロット4aを有する断面C字状のスロットコア4を用いている。すなわち、この光ファイバケーブル1は、スロットコア4のスロット4a内に複数の光ユニット2aを収納して保持させ、スロット4aの開口部5を含めてスロットコア4全体をシース6によって被覆することにより構成される。なお、スロット4aは、ケーブル長手方向に沿って直線状に形成されている。
【0047】
図3は、前記光ユニットの構成を示す斜視図である。
【0048】
前記光ユニット2aは、複数本の光ファイバ2と、これら光ファイバ2を束ねる円筒状チューブ3とからなる。光ファイバ2には、光ファイバ素線、光ファイバ心線、光ファイバテープ心線などが用いられる。光ファイバ素線は、光ファイバの上に紫外線硬化樹脂を被覆したものである。光ファイバ心線は、光ファイバの上にプラスチック樹脂を被覆してその直径を光ファイバ素子よりも大としたものである。光ファイバテープ心線は、光ファイバ素線を平行に数本並べて紫外線硬化樹脂で被覆したものである。
【0049】
円筒状チューブ3は、熱可塑性のフィルムテープが、円周方向における重なり部3dを有して円筒状にフォーミングされたものである。この重なり部3dは、図示の通り、光ユニット2aの長手方向に直線上に延伸する。円筒状チューブをなす熱可塑性のフィルムテープは、例えば、PET(Polyethyleneterephthalate)からなり、厚さは、例えば、0.012mm乃至0.100mmである。
【0050】
このような光ユニット2aを製造するには、まず、熱可塑性の平面状のフィルムテープを円周方向における重なり部3dを有して円筒状にフォーミングして、円筒状チューブ3を形成する。そして、この円筒状チューブ3内に複数本の光ファイバ2を収納して、これら光ファイバ2を円筒状チューブ3により束ねて、光ユニット2aとする。
【0051】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成の他の例(円筒状チューブの一部を着色したもの)を示す斜視図である。
【0052】
この光ファイバケーブル1においては、図4中の(a)及び(b)に示すように、円筒状チューブ3の部分的な所定の箇所に、光ユニット2a間の識別を行うための着色部3aを設けてもよい。この着色部3aは、円筒状チューブ3をなす熱可塑性のフィルムテープのいずれかの一面(円筒状チューブ3の外周面、または、内周面)に設けてもよいし、熱可塑性のフィルムテープの両面に設けてもよい。なお、着色部3aを円筒状チューブ3の内周面に設ける場合には、熱可塑性のフィルムテープとして、透明なものを用いる。
【0053】
このように着色部3aを設けた光ユニット2aにおいては、着色部3aの色によって、複数の光ユニット2aを識別することができる。
【0054】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成の他の例(円筒状チューブの全体を着色したもの)を示す斜視図である。
【0055】
熱可塑性のフィルムテープは、円筒状にフォーミングして円筒状チューブ3となす前に、光ユニット2a間の識別を行うために予め着色されている。この場合には、図5中の(a)及び(b)に示すように、円筒状チューブ3は、光ユニット2a間の識別を行うための着色が全体に施されたものとなる。
【0056】
このように円筒状チューブ3を着色した光ユニット2aにおいては、円筒状チューブ3の色によって、複数の光ユニット2aを識別することができる。
【0057】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成の他の例(識別テープを縦添えしたもの)を示す斜視図である。
【0058】
この光ファイバケーブル1の光ユニット2aにおいては、円筒状チューブ3内に、光ユニット2a間の識別を行うために着色された識別テープ3bが、ケーブル長手方向に沿って縦添えされている。
【0059】
このように識別テープ3bを縦添えさせた光ユニット2aにおいては、識別テープ3bの色によって、複数の光ユニット2aを識別することができる。
【0060】
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成の他の例(円筒状チューブにUVコーティングをしたもの)を示す斜視図である。
【0061】
この光ファイバケーブル1においては、図7中の(a)及び(b)に示すように、円筒状チューブ3に、外周面に紫外線硬化樹脂によるコーティング3cが施されている。このコーティング3cによって、円筒状チューブ3の剛性を向上させると共に、円筒状チューブ小曲げ時の座屈耐性を向上させることができる。なお、「小曲げ」の程度は、半径30mm程度の曲げである。また、後述する円筒状チューブ3からの光ファイバ2の取り出しにおいては、コーティング3cは、人の指によって容易に破ることができるため、コーティング3cによって光ファイバ2の取り出しが困難となることはない。さらに、フィルムテープに透明な材料を用い、コーティング材料に着色した紫外線硬化樹脂を用いることで、光ユニット間の識別が可能となる。
【0062】
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成の他の例(円筒状チューブを二重構造としたもの)を示す斜視図である。
【0063】
この光ファイバケーブル1においては、図8中の(a)及び(b)に示すように、円筒状チューブ3は、熱可塑性のフィルムテープの円周方向における重なり部の幅が、円筒状チューブ3の円周長の2倍以上となる。
【0064】
この場合には、円筒状チューブ3のいずれの箇所においても、熱可塑性のフィルムテープが2枚以上重なった状態となり、円筒状チューブ3の剛性及び弾性(クッション性)を向上させることができる。なお、後述する円筒状チューブ3からの光ファイバ2の取り出しが困難となることはない。
【0065】
この光ファイバケーブル1において、中間後分岐作業などを行うにあたり、光ファイバ2を円筒状チューブ3から取り出すには、人の指等により、円筒状チューブ3を平坦な形状に開けばよく、容易に行うことができる。そして、円筒状チューブ3は、円筒状にフォーミングされているので、一旦取り出した光ファイバ2を円筒状チューブ3内に再び収納することも容易である。
【0066】
また、この光ファイバケーブル1においては、端末の近傍において光ユニット2aを構成する光ファイバ2がばらばらになってしまうことがないので、取扱いが容易である。
【0067】
〔第2の実施の形態〕
ところで、この光ファイバケーブル1において、十分な防水特性を実現するには、光ユニット2aの円筒状チューブ3内に止水材料を充填しなければならない。円筒状チューブ3内に止水材料を充填するには、ジェリーなどの充填材を円筒状チューブ3内に充填する方法が考えられる。
【0068】
円筒状チューブ3内にジェリーなどの充填材を充填する場合には、フィルムテープの重なり部3dの隙間から充填材が流出してしまう可能性があり、また、充填材を充填しつつフィルムテープを円筒状にフォーミングすることは困難であり、さらに、充填材が心線接続の作業性を劣化させる要因となる。
【0069】
そこで、フィルムテープを円筒状にフォーミングしたときに円筒状チューブ3の内面となるフィルムテープの一面に、吸水性材料を塗布しておくことが望ましい。
【0070】
なお、吸水性材料は、粉状体とし、円筒状チューブ3の内面となるフィルムテープの一面に接着剤を塗布して、この接着剤により接着させてもよい。
【0071】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成を示す斜視図であり、図10は、本発明の第2の実施の形態に係る光ファイバケーブルの光ユニットの構成を示す断面図である。
【0072】
この光ユニット2aにおいては、図9及び図10に示すように、円筒状チューブ3の内周面に、吸水性材料7が塗布されている。この吸水性材料7により、円筒状チューブ3内での走水が止められ、また、フィルムテープの重なり部3dの隙間内の走水も止めることができる。
【0073】
この光ユニット2aを製造するには、円筒状にフォーミングする前のフィルムテープの一面(円筒状チューブ3の内面となる面)にだけ、吸水性材料7を塗布すればよいので、製造工程上の塗布装置を用いて容易に製造することができる。また、塗布した吸水性材料7が、塗布後に乾燥処理を要する材料である場合であっても、フィルムテープのフォーミングに用いる加熱装置により、乾燥処理も同時に行われる。
【0074】
吸水性材料7としては、ポリアクリル系、セルロース系、または、デンプン系の材料を用いることができる。
【0075】
このように円筒状チューブ3に塗布された吸水性材料7は、線状体のように光ファイバ2に絡みつくことがなく、また、円筒状チューブ3内における光ファイバ2の密度に影響することがないので、伝送特性を劣化させる虞がない。また、吸水性材料7は、円筒状チューブ3の外径の増加を招くこともない。そして、この吸水性材料7は、良好な防水特性を実現することができる。
【0076】
また、フォーミングされた円筒状チューブ3は、吸水性材料7が塗布されていないチューブと同様に、光ファイバ2を取り出すことが容易であり、ジェリーが充填されたチューブに比較して、きわめて容易に光ファイバ2の取り出しが行える。すなわち、この光ユニット2aにおいては、前述した実施の形態と同様に、フィルムテープの重なり部3dの接合や被覆、粗巻き等を行うことなく円筒状チューブ3の形状が保持されるので、円筒状チューブ3を指で開くことで容易に光ファイバ2を取り出すことができ、また、取り出した光ファイバ2を円筒状チューブ3内に再収納することが可能である。したがって、端末での光ファイバ2の接続が容易である。
【0077】
さらに、この光ユニット2aにおいては、前述した実施の形態と同様に、光ファイバ2の全体が円筒状チューブ3により保護されているため、単独で取り回ししても外傷が加わりにくい。また、薄いテープを用いてフォーミングして円筒状チューブ3とするため、従来のルースチューブに比べて極めて薄肉のチューブを作成することができるとともに、光ユニット2aを集合させた光ファイバケーブル1においては、円筒状チューブ3が変形することにより細径化が可能となる。すなわち、円筒状チューブ3の薄肉化により、光ユニット2aの集合体である光ファイバケーブル1を細径化、軽量化することが可能になる。
【0078】
〔製造装置の実施の形態〕
図11は、本発明に係る第1の実施の形態における光ファイバケーブルの製造装置の構成を示す側面図である。
【0079】
前述した本発明に係る第1の実施の形態における光ファイバケーブルは、図11中の(a)に示すように、スロットコア4、フィルムテープ及び複数の光ファイバ2が集合部204において集合するようになされた装置により製造することができる。
【0080】
すなわち、この装置においては、スロットコア供給部201から、スロットコア4が供給される。光ファイバ供給部202からは、複数の光ファイバ2が供給される。フィルムテープ供給部203からは、フィルムテープが供給される。これらスロットコア4、フィルムテープ及び複数の光ファイバ2は、集合部204において集合される。集合部204においては、図11中の(b)に示すように、フィルムテープがフォーミングされて光ファイバ2を包んで円筒状チューブ3となされて、スロットコア4内に収納される。
【0081】
これらスロットコア4、フィルムテープ及び複数の光ファイバ2は、シース押出機(クロスヘッド)205に送られる。シース押出機205は、スロットコア4の周囲にシ−ス6を押出成型して、スロットコア4を被覆させる。シース6を被覆された光ファイバケーブルは、引取キャタピラ207によって送り操作されて、水槽206を経て冷却される。そして、この光ファイバケーブルは、巻取機208によって巻取られる。
【0082】
図12は、本発明に係る第1の実施の形態における光ファイバケーブルの製造装置の構成の他の例を示す側面図である。
【0083】
前述した本発明に係る第1の実施の形態における光ファイバケーブルにおいて、紫外線硬化樹脂をフォーミングチューブの周囲に塗布する場合には、図12に示すように、紫外線硬化樹脂供給装置211を有する製造装置により製造することができる。なお、この装置においても、スロットコア4をフィルムテープ及び複数の光ファイバ2とともに集合されるようにしてもよい。
【0084】
この装置においては、光ファイバ供給部202から、複数の光ファイバ2が供給される。フィルムテープ供給部203からは、フィルムテープが供給される。フィルムテープは、フォーミングチューブ部において、光ファイバ2を包む円筒状となされる。そして、加熱部210を経ることにより、フィルムテープは、フォーミングされて円筒状チューブ3となされる。
【0085】
次に、UV塗布ダイス部212において、紫外線硬化樹脂供給装置211から供給された紫外線硬化樹脂を光ファイバ2を収納した円筒状チューブ3の周囲にコーティングする。コーティングされた紫外線硬化樹脂は、UVランプ213により紫外線を照射して硬化させる。
【0086】
これら円筒状チューブ3及び複数の光ファイバ2は、集合部204を経て、シース押出機(クロスヘッド)205に送られる。シース押出機205は、円筒状チューブ3の周囲にシ−ス6を押出成型して被覆させる。シース6を被覆された光ファイバケーブルは、引取キャタピラ207によって送り操作されて、水槽206を経て冷却される。そして、この光ファイバケーブルは、巻取機208によって巻取られる。
【0087】
図13は、本発明に係る第2の実施の形態における光ファイバケーブルの製造装置の構成を示す側面図である。
【0088】
前述した本発明に係る第2の実施の形態における光ファイバケーブルは、図13に示すように、フィルムテープ及び複数の光ファイバ2が集合部204において集合するようになされた装置により製造することができる。なお、この装置においても、スロットコア4をフィルムテープ及び複数の光ファイバ2とともに集合されるようにしてもよい。
【0089】
この装置においては、光ファイバ供給部202から、複数の光ファイバ2が供給される。フィルムテープ供給部203からは、フィルムテープが供給される。フィルムテープの一面には、吸水性材料塗布装置209により、吸水性材料7が塗布される。吸水性材料7が塗布されたフィルムテープは、フォーミングチューブ部において、光ファイバ2を包む円筒状となされる。そして、加熱部210を経ることにより、フィルムテープは、フォーミングされて円筒状チューブ3となされる。また、加熱部210において、吸水性材料7の乾燥がなされる。
【0090】
そして、UV塗布ダイス部212において、紫外線硬化樹脂供給装置211から供給された紫外線硬化樹脂を光ファイバ2を収納した円筒状チューブ3の周囲にコーティングする。コーティングされた紫外線硬化樹脂は、UVランプ213により紫外線を照射して硬化させる。
【0091】
これら円筒状チューブ3及び複数の光ファイバ2は、集合部204を経て、シース押出機(クロスヘッド)205に送られる。シース押出機205は、円筒状チューブ3の周囲にシ−ス6を押出成型して被覆させる。シース6を被覆された光ファイバケーブルは、引取キャタピラ207によって送り操作されて、水槽206を経て冷却される。そして、この光ファイバケーブルは、巻取機208によって巻取られる。
【実施例】
【0092】
本発明に係る光ファイバケーブル1について、以下の〔表1〕に示すように、円筒状チューブ3をなす熱可塑性のフィルムテープの厚さが0.012mm乃至0.100mmである実施例1乃至実施例4と、フィルムテープの厚さが0.150mm乃至0.200である比較例1及び比較例2を作成した。
【表1】

【0093】
〔表1〕に示すように、実施例1乃至実施例4では、光ファイバ2を円筒状チューブ3から取り出すこと及び円筒状チューブ3に光ファイバ2を再収納することが容易であったが、比較例1及び比較例2では、光ファイバ2を円筒状チューブ3から取り出すこと及び円筒状チューブ3に光ファイバ2を再収納することは、フィルムテープの剛性が高いために困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、光ファイバを複数本纏めた光ユニットを集合させた構造を有する光ファイバケーブル及びこの光ファイバケーブルの製造方法に適用される。
【符号の説明】
【0095】
1 光ファイバケーブル
2 光ファイバ
2a 光ユニット
3 円筒状チューブ
3a 着色部
3b 識別テープ
3c コーティング
3d 重なり部
4 スロットコア
4a スロット
5 開口部
6 シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを複数本纏めた光ユニットが複数集合された構造を有する光ファイバケーブルにおいて、
前記光ユニットは、複数本の光ファイバと、これら光ファイバを束ねる円筒状チューブとからなり、
前記円筒状チューブは、熱可塑性のフィルムテープが円周方向における重なり部を有して円筒状にフォーミングされたものである
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記円筒状チューブをなす熱可塑性のフィルムテープは、厚さが0.012mm乃至0.100mmである
ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記円筒状チューブには、外周面に紫外線硬化樹脂によるコーティングがなされている
ことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記円筒形チューブをなす熱可塑性のフィルムテープは、無色透明な材料からなり、
前記紫外線硬化樹脂には、着色が施されている
ことを特徴とする請求項3記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記円筒状チューブには、部分的に所定箇所に、光ユニット間の識別を行うための着色が施されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記熱可塑性のフィルムテープは、光ユニット間の識別を行うために全体的に着色されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
前記円筒状チューブには、光ユニット間の識別を行うために着色された識別テープが縦添えされている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の光ファイバケーブル。
【請求項8】
前記円筒状チューブの内面には、吸水性材料が塗布されている
ことを特徴とする請求項3乃至請求項7のいずれか一に記載の光ファイバケーブル。
【請求項9】
前記円筒状チューブの内面には、粉状の吸水性材料が接着されている
ことを特徴とする請求項3乃至請求項7のいずれか一に記載の光ファイバケーブル。
【請求項10】
前記吸水性材料は、ポリアクリル系、セルロース系、または、デンプン系の材料である
ことを特徴とする請求項8、または、請求項9記載の光ファイバケーブル。
【請求項11】
光ファイバを複数本纏めた光ユニットが複数集合された構造を有する光ファイバケーブルの製造方法において、
熱可塑性のフィルムテープを、円周方向における重なり部を有して円筒状にフォーミングして円筒状チューブを形成し、
前記円筒状チューブ内に複数本の光ファイバを収納して、これら光ファイバを前記円筒状チューブにより束ねる
ことを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項12】
前記円筒状チューブをなす熱可塑性のフィルムテープとして、厚さが0.012mm乃至0.100mmのフィルムテープを用いる
ことを特徴とする請求項11記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項13】
前記円筒状チューブの外周面に、紫外線硬化樹脂によるコーティングを施す
ことを特徴とする請求項11、または、請求項12記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項14】
前記円筒形チューブをなす熱可塑性のフィルムテープとして、無色透明な材料からなるものを用い、
前記紫外線硬化樹脂として、着色が施されたものを用いる
ことを特徴とする請求項13記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項15】
前記円筒状チューブの部分的な所定の箇所に、光ユニット間の識別を行うための着色を施す
ことを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれか一に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項16】
前記熱可塑性のフィルムテープを円筒状にフォーミングして前記円筒状チューブとする前に、光ユニット間の識別を行うために予め着色する
ことを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれか一に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項17】
前記円筒状チューブに、光ユニット間の識別を行うために着色された識別テープを縦添えする
ことを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれか一に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項18】
前記熱可塑性のフィルムテープを円筒状にフォーミングする前に、フォーミングされたときに円筒状チューブの内周面となるフィルムテープの一面に、吸水性材料を塗布する
ことを特徴とする請求項13乃至請求項17のいずれか一に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項19】
前記熱可塑性のフィルムテープのフォーミングと、塗布された前記吸水性材料の乾燥とを、同一の加熱装置によって同時に行う
ことを特徴とする請求項18記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項20】
前記熱可塑性のフィルムテープを円筒状にフォーミングする前に、フォーミングされたときに円筒状チューブの内周面となるフィルムテープの一面に、粉状の吸水性材料を接着させる
ことを特徴とする請求項13乃至請求項17のいずれか一に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項21】
前記吸水性材料として、ポリアクリル系、セルロース系、または、デンプン系の材料を用いる
ことを特徴とする請求項18乃至請求項20のいずれか一に記載の光ファイバケーブルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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