説明

光ファイバテープ及びその単心分離方法

【課題】本発明の課題は、光ファイバテープのテープ形状の保持と分離の容易さとを両立でき、且つ分離する距離に合わせた長さの保持具を不要として作業スペースを少なくし、鋭利な刃を使用しないことにより通信障害を回避する光ファイバテープ及びその単心分離方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、複数の光ファイバをテープ樹脂によってテープ形状に保持した光ファイバテープにおいて、テープ樹脂22を光ファイバ21と光ファイバ21の隣接部近傍に、隣接部が最も高く突出するように配設することを特徴とする光ファイバテープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバをテープ樹脂によってテープ形状に保持した光ファイバテープ及びその単心分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は従来の光ファイバテープの一例を示す断面図である。図3に示すように、4本の光ファイバ11を接触させて並行に配置した周囲にテープ樹脂12を被覆するように設けてテープ形状に保持して構成される。
【0003】
図9は図3の光ファイバテープの単心分離方法を示す構成説明図である。図9において、13は分離位置である。
【0004】
図9に示すように、光ファイバテープの単心分離は、光ファイバテープを長手方向に直線状に保持し、保持した光ファイバテープ内の光ファイバ11と光ファイバ11の中間の分離位置13に鋭利な刃を挿入し、鋭利な刃を光ファイバ11の長手方向と平行になるようスライド移動させることにより、必要な長さ分を単心に分離する。
【0005】
図4は従来考えられている光ファイバテープを示す断面図である。図4において、14は光ファイバ、15はテープ樹脂である。図4に示すように、4本の光ファイバ14を接触させて並行に配置した周囲にテープ樹脂15を極力薄く被覆するように設けてテープ形状に保持して構成される。図4の光ファイバテープを単心分離する場合には、光ファイバテープを長手方向に直線状に保持し、テープ樹脂15を硬いブラシで擦って剥離して光ファイバ14を分離している。
【0006】
【特許文献1】特開2004−94067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3及び図4の光ファイバテープの単心分離は、光ファイバテープを長手方向に保持するため、分離する距離に合わせた長さの保持具が必要になり、保持具が分離距離に合わせた大きな構造となるため、作業スペースの確保も必要であった。
【0008】
また、分離用の鋭利な刃により繰り返し分離を実施するため、鋭利な刃の劣化や作業不慣れ等による分離の失敗により、分離する光ファイバテープ内の光ファイバに通信障害を発生することが課題となっている。
【0009】
特許文献1には、光ファイバテープを単心の光ファイバに分離する工具が開示されている。この工具を用いた場合、[1]複数の分割刃への対応、及び[2]分離する長手方向の作業スペースが必要となる。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、光ファイバテープのテープ形状の保持と分離の容易さとを両立でき、且つ分離する距離に合わせた長さの保持具を不要として作業スペースを少なくし、鋭利な刃を使用しないことにより通信障害を回避する光ファイバテープ及びその単心分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、複数の光ファイバをテープ樹脂によってテープ形状に保持した光ファイバテープにおいて、テープ樹脂を光ファイバと光ファイバの隣接部近傍に、隣接部が最も高く突出するように配設することを特徴とする光ファイバテープ。
【0012】
また本発明は、前記光ファイバテープにおいて、テープ樹脂が光ファイバと光ファイバの隣接部毎に光ファイバテープの一方の片面もしくは他方の片面に配設されることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明は、前記光ファイバテープにおいて、テープ樹脂が光ファイバテープの両面に配設されることを特徴とするものである。
【0014】
また本発明の光ファイバテープの単心分離方法は、前記光ファイバテープに、前記光ファイバテープの光ファイバの直径とほぼ等しい厚さの介在部材を介在して分離工具で上下方向から応力を加えることにより、テープ樹脂を破壊すると共に光ファイバを分離することを特徴とする。
【0015】
また本発明の光ファイバテープの単心分離方法は、前記光ファイバテープを、分離工具に設けられたブラシで挟み込み、前記ブラシを光ファイバテープの長手方向にスライドさせることにより、光ファイバがテープ樹脂から剥離して分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光ファイバテープは、テープ樹脂を光ファイバと光ファイバの隣接部近傍に、隣接部が最も高く突出するように配設することにより、テープ樹脂の厚い部分とテープ樹脂の無い(薄い)部分の2種類を配置することで、テープ形状の保持及び分離の容易さを両立できる。
【0017】
また、本発明の光ファイバテープの単心分離方法は、光ファイバと光ファイバの隣接部に位置するテープ樹脂の最も高く突出した部分に応力を加える方法及び軟らかいブラシでテープ樹脂を剥がしとる方法としたことで、分離工具を安価とし、更に作業の簡素化・安全化を図ることができる。
【0018】
また、本発明の光ファイバテープの単心分離方法は、テープ樹脂を押し潰す方法であるため、長手方向にスライドさせることがなく、長手方向への保持が不要となり、作業スペースも小さくなる。
【0019】
更に、本発明の光ファイバテープの単心分離方法は、テープ樹脂を押し潰す方法であるため、鋭利な刃も不要であり、刃の劣化による光ファイバの通信障害が発生しない。分離作業も、テープ樹脂を押し潰す単純な方法であるため、作業不慣れによる分離の失敗も削減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る光ファイバテープを示す断面図である。図1において、21は光ファイバ、22はテープ樹脂である。図1に示すように、複数の光ファイバ21はテープ樹脂22によってテープ形状に保持される。前記テープ樹脂22は光ファイバ21と光ファイバ21の隣接部近傍に、隣接部が最も高く突出するように中高に配設される。この場合、テープ樹脂22は光ファイバと光ファイバの隣接部毎に光ファイバテープの一方の片面もしくは他方の片面を選択して片面のみに配設される。
【0021】
図2は本発明の第2の実施形態に係る光ファイバテープを示す断面図である。図2において、31は光ファイバ、32はテープ樹脂である。図2に示すように、複数の光ファイバ31はテープ樹脂32によってテープ形状に保持される。前記テープ樹脂32は光ファイバ31と光ファイバ31の隣接部近傍に、隣接部が最も高く突出するように中高に配設される。前記テープ樹脂32は光ファイバテープの両面にそれぞれ配設される。
【0022】
尚、テープ樹脂22,32の材質としては、通常の光ファイバテープに用いられているテープ樹脂を用いることができる。例えば、紫外線硬化型のテープ樹脂を用いればよい。このテープ樹脂は、適当な応力をかけることによって、光ファイバから剥離し、破断させることができる。
【0023】
図5(a),(b),(c)は本発明の第1の実施形態に係る光ファイバテープ単心分離方法の一例を示す構成説明図である。図5(a),(b),(c)において、23は上部分離工具、24は下部分離工具、25は介在部材(足)、26は応力が働く方向を示す矢印、27はテープ樹脂の屑である。
【0024】
図5(a)に示すように、上面が平坦な下部分離工具24上には図1に示す光ファイバテープが載置されると共に前記光ファイバテープの両側には光ファイバ21の直径とほぼ等しい高さ(厚さ)の介在部材25が設置される。
【0025】
その後、図5(b)に示すように、下面が平坦な上部分離工具23を前記光ファイバテープの上面より押圧することにより、前記光ファイバテープは介在部材25を介在して上部分離工具23と下部分離工具24で挟み込むようにして上下方向から応力が加えられる。前記光ファイバテープは上下方向から応力が加えられると、矢印26方向に応力が働く。
【0026】
その後、図5(c)に示すように、矢印26方向の応力により、光ファイバ21と光ファイバ21の隣接部で、光ファイバ21と光ファイバ21の間隔を押し開くようにして光ファイバが分離されると共にテープ樹脂22は押し潰され破壊されて屑27となる。
【0027】
尚、上部分離工具23と下部分離工具24の間に光ファイバ21の直径とほぼ等しい高さの介在部材25が設置されることにより、上部分離工具23と下部分離工具24で光ファイバテープを挟み込むようにして上下方向から応力が加えられても、光ファイバ21に損傷を与えることはない。
【0028】
図6(a),(b),(c)は本発明の第1の実施形態に係る光ファイバテープ単心分離方法の他の例を示す構成説明図である。図6(a),(b),(c)において、33は上部分離工具、34は下部分離工具、35は介在部材(足)、36は応力が働く方向を示す矢印、37はテープ樹脂の屑である。
【0029】
図6(a)に示すように、上面が平坦な下部分離工具34上には図2に示す光ファイバテープが載置されると共に前記光ファイバテープの両側には光ファイバ31の直径とほぼ等しい高さ(厚さ)の介在部材35が設置される。
【0030】
その後、図6(b)に示すように、下面が平坦な上部分離工具33を前記光ファイバテープの上面より押圧することにより、前記光ファイバテープは介在部材35を介在して上部分離工具33と下部分離工具34で挟み込むようにして上下方向から応力が加えられる。前記光ファイバテープは上下方向から応力が加えられると、矢印36方向に応力が働く。
【0031】
その後、図6(c)に示すように、矢印36方向の応力により、光ファイバ31と光ファイバ31の隣接部で、光ファイバ31と光ファイバ31の間隔を押し開くようにして光ファイバが分離されると共にテープ樹脂32は押し潰され破壊されて屑37となる。
【0032】
尚、上部分離工具33と下部分離工具34の間に光ファイバ31の直径とほぼ等しい厚さの介在部材35が設置されることにより、上部分離工具33と下部分離工具34で光ファイバテープを挟み込むようにして上下方向から応力が加えられても、光ファイバ31に損傷を与えることはない。
【0033】
図8は本発明の実施形態に係る分離工具を示す一部切欠斜視図である。図8に示すように、上部分離工具23(33)は断面コ字状に形成されると共に底面が平坦に形成される。下部分離工具24(34)は両側近傍に介在部材(足)25(35)が底面より光ファイバ31の直径とほぼ等しい高さ突出して設けられると共に底面は平坦に形成される。前記下部分離工具24(34)の介在部材25(35)の外側段部には上部分離工具23(33)の開口端が載置される。前記上部分離工具23(33)の一方の開口端縁と、前記下部分離工具24(34)の一方の開口端縁とは例えば蝶番等の回動部材28で回動自在に取り付けられる。
【0034】
図7(a),(b)は本発明の第2の実施形態に係る光ファイバテープ単心分離方法を示す構成説明図である。図7(a),(b)において、41は上部分離工具、42は下部分離工具、43は介在部材(足)、44,45は軟らかいブラシである。
【0035】
図7(a)に示すように、下部分離工具42の上面には複数の軟らかいブラシ45が植毛されると共に両側に介在部材(足)43が上方に突出して設けられる。前記ブラシ45上には図1の光ファイバテープが載置され、前記光ファイバテープの上方には下面に複数の軟らかいブラシ44が植毛された上部分離工具41が降下可能にして設けられる。
【0036】
その後、図7(b)に示すように、上部分離工具41が降下して介在部材(足)43上に押し当てられると共にブラシ44,45が前記光ファイバテープの上面及び下面に上下方向から挟み込むようにして押し当てられる。ブラシ44,45が前記光ファイバテープの上面及び下面に挟み込むようにして押し当てられることにより、ブラシ44,45の先端部分が前記光ファイバテープの光ファイバ21と光ファイバ21の隙間等に入り込む(黒破線部分)。この状態で上部分離工具41、下部分離工具42、及び介在部材(足)43よりなる分離工具を光ファイバテープの長手方向に繰り返しスライドさせることにより、光ファイバ21がテープ樹脂22から剥離して分離する。尚、ブラシ44,45として軟らかいブラシ(例えば柔らかい歯ブラシ等)を用いることにより、分離作業実施時に無理な応力が光ファイバテープに加えられても、通信障害を回避可能である。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ファイバテープを示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る光ファイバテープを示す断面図である。
【図3】従来の光ファイバテープの一例を示す断面図である。
【図4】従来考えられている光ファイバテープを示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る光ファイバテープ単心分離方法の一例を示す構成説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る光ファイバテープ単心分離方法の他の例を示す構成説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る光ファイバテープ単心分離方法を示す構成説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る分離工具を示す一部切欠斜視図である。
【図9】図3の光ファイバテープの単心分離方法を示す構成説明図である。
【符号の説明】
【0039】
21…光ファイバ、22…テープ樹脂、23…上部分離工具、24…下部分離工具、25…介在部材(足)、26…応力が働く方向を示す矢印、27…テープ樹脂の屑、31…光ファイバ、32…テープ樹脂、33…上部分離工具、34…下部分離工具、35…介在部材(足)、36…応力が働く方向を示す矢印、37…テープ樹脂の屑。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバをテープ樹脂によってテープ形状に保持した光ファイバテープにおいて、
テープ樹脂を光ファイバと光ファイバの隣接部近傍に、隣接部が最も高く突出するように配設することを特徴とする光ファイバテープ。
【請求項2】
テープ樹脂が光ファイバと光ファイバの隣接部毎に光ファイバテープの一方の片面もしくは他方の片面に配設されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバテープ。
【請求項3】
テープ樹脂が光ファイバテープの両面に配設されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバテープ。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の光ファイバテープに、前記光ファイバテープの光ファイバの直径とほぼ等しい厚さの介在部材を介在して分離工具で上下方向から応力を加えることにより、テープ樹脂を破壊すると共に光ファイバを分離することを特徴とする光ファイバテープの単心分離方法。
【請求項5】
請求項1、2又は3に記載の光ファイバテープを、分離工具に設けられたブラシで挟み込み、前記ブラシを光ファイバテープの長手方向にスライドさせることにより、光ファイバがテープ樹脂から剥離して分離することを特徴とする光ファイバテープの単心分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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