説明

光ファイバ保護装置

【課題】 保護部材を製造するにも射出成形等の成形金型を使用しないことで、小量生産時の初期費用を抑えると共に、射出成形等で製造したものと同等の機能を有する光ファイバ保持装置を安価に実現することを目的とする。
【解決手段】 端面に開口が形成された筐体、この筐体内部から、前記開口を介して前記筐体外部へ引き出される光ファイバ、この光ファイバに複数回巻きつけられたテープ部材を備え、このテープ部材を前記光ファイバに巻きつける回数は、前記端面からこの端面と離間した位置までの間で、前記端面から離れる距離が増大するにつれて、徐々に減少している光ファイバ保護装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光伝送装置等で、信号等を伝送する光ファイバに外力が加えられ、局部的な屈曲が発生することによって、信号等の伝送性能が劣化しないように、光ファイバの一部を保護し、滑らかな曲率を保持する光ファイバ保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載された光ファイバ保護装置があった。
この光ファイバ保護装置は、光ファイバと、この光ファイバが貫通する、円筒状に樹脂成型された保持部材とを備える。
この光ファイバ保護装置によれば、光ファイバを外力から保護することが可能である。
【特許文献1】特表平11−515114号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の光ファイバ保護装置は以上のように構成されているので、保護部材を製造するには射出成形等の成形金型が必要であり、大量生産には適しているが、小量生産には初期費用が掛かるなどの問題点があった。
【0004】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、保護部材を製造するにも射出成形等の成形金型を使用しないことで、少量生産時の初期費用を抑えると共に、射出成形等で製造したものと同等の機能を有する光ファイバ保護装置を安価に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る光ファイバ保護装置は、端面に開口が形成された筐体、この筐体内部から、前記開口を介して前記筐体外部へ引き出される光ファイバ、この光ファイバに複数回巻きつけられたテープ部材を備え、このテープ部材を前記光ファイバに巻きつける回数は、前記端面からこの端面と離間した位置までの間で、前記端面から離れる距離が増大するにつれて、徐々に減少しているものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、筐体から引き出された光ファイバを保護する保護部材を、少量生産する場合であっても、安価に製造できるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の実施の形態1による光ファイバ保護装置の外観図である。図1において、1は保護部材、2は光ファイバ、3は光ファイバ2が引き出される光モジュールまたは光伝送装置、3aは光モジュールまたは光伝送装置3から光ファイバ2が引き出される外面またはパネル面、4は保護部材1と光モジュールまたは光伝送装置3を固定する固定剤である。
図2はこの発明の実施の形態1による光ファイバ保護装置の保護部材1を光ファイバ2に取り付ける前の展開状態である。
【0008】
保護部材1は、厚さが均一な粘着性シートを材料とし、それ自体が柔軟なものである。例えば、片面に粘着材が塗布されたゴムシートや布、または、重ね合わせることにより融着する自己融着テープのようなものである。また、保護部材1は、図1の形状とする前段階として、例えば、図2で示すような、相対するほぼ平行な2辺1a、1bと、その他の2辺1c、1dで囲まれた四角形において、その1つの角1eを斜めに切り取って出来た線分1fで囲まれた五角形の形状をしている。
【0009】
光モジュールまたは光伝送装置3から光ファイバ2が引き出される外面またはパネル面3aにおいて、図3のように、光ファイバ2の外周に、保護部材1を巻き付け、円錐形状とする。巻き付ける時は、まず、保護部材の(1cより長い)1d側を光ファイバ2に粘着させ、保護部材1の1a、1bがその巻き付け周回毎にずれないように巻き付け、最後に1cの部分まで巻き付ける。
【0010】
円錐形状となった保護部材1の1a側を光モジュールまたは光伝送装置3の、光ファイバ2が引き出される外面またはパネル面3aから、光ファイバ2を引き出す部分として設けた貫通穴3bの円筒の座繰り3cに嵌め込み、固定剤4で固定する。
【0011】
光モジュールまたは光伝送装置3に固定された保護部材1および光ファイバ2は、光モジュールまたは光伝送装置の貫通穴3bの直径方向に外力が加えられた場合、保護部材1の円錐形状より、光モジュールまたは光伝送装置3に近い根元の部分は剛性が高く、遠い先端の部分は剛性が低くなっているため、保護部材1の根元は変形し難く、先端は変形し易く、また、その剛性は根元から先端に向けて徐々に弱くなる特性から、光ファイバ2が滑らかな曲率を描くように出来、光ファイバの伝送特性の劣化を防ぐと共に、光ファイバへの局部的な応力集中による破損を防ぐ効果を有する。
【0012】
実施の形態1に係る光モジュールまたは光伝送装置3は、以上のように、光ファイバの保護部材を厚さが均一な粘着シートを巻き付けて形成するように構成したので、保護部材の最も安価な製造方法としては、粘着シートをハサミやカッター等で切り取って形成することも可能である。そして、少量生産においては初期費用を抑えられることにより、装置を安価に製造することできる。さらに、射出成形等の成形金型を使用して製造したものと同様の機能を有する保護部材を得られるという効果がある。
【0013】
実施の形態2.
なお、上記発明の実施の形態1では、保護部材1は展開された状態は、五角形をしていたが、図4で示すように上記発明の実施の形態1の五角形の1辺1cの一部に帯状の突出部1gを設けた形状としてもよい。その保護部材1を光ファイバ2の外周に巻き付けると図5で示すような、座1hが付いた円錐形状に仕上がる。また、光モジュールまたは光伝送装置3から光ファイバ2が引き出される外面またはパネル3aの部分を、図6に示すように、分割線3dで分割し、図5の保護部材1が嵌まり込む段付部3eとすることにより、固定剤4を用いなくても固定機能を有するようになり、上記発明の実施の形態1と同等の効果を奏する。
【0014】
実施の形態3.
なお、上記発明の実施の形態1および2は、図7で示すように、上記発明の実施の形態2の帯状の突出部1gの一部にコの字型の切り欠き部1iを設けた形状としてもよい。その場合、保護部材1を光ファイバ2の外周に巻き付けると図8に示すような、段付き座1jが付いた円錐形状に仕上がる。また、光モジュールまたは光伝送装置3から光ファイバ2が引き出される外面またはパネル3fの部分を、図9に示すように、分割線3dで分割し、図8の保護部材1が嵌まり込む穴3gとすることにより、固定剤4を用いなくても固定機能を有するようになると共に、上記発明の実施の形態1または2より、光モジュールまたは光伝送装置3から光ファイバ2が引き出される外面またはパネル3fの厚みが薄い、例えば、薄板の板金のようなものにも対応できるようになり、上記発明の実施の形態1または2と同等の効果を奏する。
【0015】
実施の形態4.
なお、上記発明の実施の形態1から3は、図2、4、および7で示すように、保護部材1の線分1fを直線で記載しているが、任意の曲線としても良い。
線分1fの形状により、保護部材1を光ファイバ2の外周に巻き付けて出来る円錐形状の母線部は任意の形状にすることが出来、光ファイバ2が受ける外力や、その他の要求に対応した様々な剛性を持った保護部材1を形成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)はこの発明の実施の形態1による光ファイバ保護装置を示す側面図であり、(b)はこの発明の実施の形態1による光ファイバ保護装置の正面図である。
【図2】この発明の実施の形態1による光ファイバ保護装置の保護部材の展開図である。
【図3】(a)はこの発明の実施の形態1による光ファイバ保護装置の保護部材を光ファイバに巻き付け図であり、(b)はこの発明の実施の形態1による光ファイバ保護装置の保護部材を光ファイバに巻き付けた時の詳細図である。
【図4】この発明の実施の形態2による光ファイバ保護装置の保護部材の展開図である。
【図5】この発明の実施の形態2による光ファイバ保護装置の保護部材を光ファイバに巻き付けた時の詳細図である。
【図6】(a)はこの発明の実施の形態2による光ファイバ保護装置を示す側面図であり、(b)はこの発明の実施の形態2による光ファイバ保護装置の正面図である。
【図7】この発明の実施の形態3による光ファイバ保護装置の保護部材の展開図である。
【図8】この発明の実施の形態3による光ファイバ保護装置の保護部材を光ファイバに巻き付けた時の詳細図である。
【図9】(a)はこの発明の実施の形態3による光ファイバ保護装置を示す側面図であり、(b)はこの発明の実施の形態3による光ファイバ保護装置の正面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 保護部材、 1a〜1d 辺、
1e 角、 1f 線分、 1g 帯状の突出部、
1h 座、 1i コの字型の切り欠き部、
1j 段付き座、 2 光ファイバ、
3 光モジュールまたは光伝送装置、 3a 外面またはパネル面、
3b 貫通穴、 3c 円筒の座繰り、
3d 分割線、 3e 段付部、 3f 外面またはパネル、
3g 穴、 4 固定剤。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面に開口が形成された筐体、
この筐体内部から、前記開口を介して前記筐体外部へ引き出される光ファイバ、
この光ファイバに複数回巻きつけられたテープ部材を備え、
このテープ部材を前記光ファイバに巻きつける回数は、
前記端面からこの端面と離間した位置までの間で、前記端面から離れる距離が増大するにつれて、徐々に減少していることを特徴とする光ファイバ保護装置。
【請求項2】
テープ部材は
厚さが均一であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ保護装置。
【請求項3】
テープ部材は、
巻きつける光ファイバの軸線に沿って、テーパが形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ保護装置。
【請求項4】
テープ部材は、
筐体に設けられた溝と対応する位置が、
他の位置と比べて巻きつけ回数が増大するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ保護装置。
【請求項5】
テープ部材は、
コの字型の切り欠き部を有することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ保護装置。
【請求項6】
テープ部材は、
巻きつける光ファイバの軸線に沿って、曲線状の辺を有することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ保護装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−308763(P2006−308763A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129630(P2005−129630)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】