説明

光ファイバ心線用の支持具

【課題】複数条の光ファイバ心線を離間並列させることが容易な支持具。
【解決手段】複数条の光ファイバ心線102を離間並列した状態で支持するための支持具1が柔軟弾性材料で形成される。支持具1は、互いに隣接する複数の心線収容部11を有する。心線収容部11は、互いに対向する一対の側壁部12と一対の側壁部12につながる底部13と、一対の側壁部12の間に介在するとともに底部13と対向する頂部14とによって囲まれていて、これら各部11,12,13,14の内側に光ファイバ心線102を収容することができる。頂部14は、側壁部12の一方から側壁部12どうしの中間部に向かって延びる第1頂部14Rと、側壁部12のもう一方から中間部に向かって延びる第2頂部14Lとを有する。第1、第2頂部14R,14Lの第1、第2自由端部17R,17Lは、弾性変形して互いの離間距離が広がり、これら両自由端部17R,17Lの間から光ファイバ心線102を心線収容部11へ進入させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバケーブルから取り出した複数条の光ファイバ心線を互いに離間並列するように支持するのに好適な支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数条の光ファイバ心線が収納された光ファイバケーブルは周知である。例えば、特開平11−231181号公報(特許文献1)に開示の光ファイバケーブルは、その中央にロッド状のスペーサを有し、スペーサの周面に形成された複数条のスロットそれぞれには光ファイバ心線が納められている。この種の光ファイバケーブルではまた、それが屋外で使用されたときに、電柱の近傍に設けられたクロージャへ進入してクロージャの内部で個々の光ファイバ心線が取り出され、その光ファイバ心線がクロージャの外へ延びる光ファイバ心線に接続されるという場合がある。図4は、そのクロージャ(図示せず)の内部において光ファイバケーブル101の端部から取り出された複数条のテープ状光ファイバ心線102を示す図である。光ファイバケーブル101では、スペーサ106の周面に複数のスロット107が形成されており、個々のスロット107には光ファイバ心線102が納められていて、これらが外被108によって覆われている。光ファイバケーブル101から取り出された個々の光ファイバ心線102や束になった複数条の光ファイバ心線102は、撚り合わせた2条のひも109で支持されることにより、スペーサ106の周面における相互の位置関係が維持されている。
【特許文献1】特開平11−231181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光ファイバケーブルから取り出された複数条の光ファイバ心線は、それらの用途毎に1本ずつを的確に識別できなければならないが、そのためにひも109を光ファイバ心線102に図4の如く掛け回すという作業は、極めて煩雑なものであり、したがってまた時間のかかることでもある。
【0004】
そこで、この発明は、光ファイバケーブルから取り出された光ファイバ心線の相互の位置関係を維持することが容易な支持具の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、互いに直交する第1方向と第2方向と第3方向とを有し、前記第1方向へ延びる複数条の光ファイバ心線を前記第2方向において離間並列させる複数の心線収容部が形成された光ファイバ心線用の支持具である。
【0006】
かかる支持具において、この発明が特徴とするところは、次のとおりである。前記心線収容部は、前記第2方向へ互いに隣接して形成されている。前記心線収容部はまた、前記第2方向において対向するとともに前記第3方向へ延びていて隣接する前記心線収容部と共有する一対の側壁部と、一対の前記側壁部につながり前記第2方向へ延びる底部と、一対の前記側壁部の間に介在して前記第3方向において前記底部と対向している頂部とによって囲まれていて、これら各部の内側に前記光ファイバ心線を収容可能である。前記底部と一対の前記側壁部と前記頂部とは、柔軟弾性材料で形成されている。前記底部は、隣接する前記心線収容部との間において連続した状態にある。前記頂部は、一対の前記側壁部の一方につながる第1基端部と前記第1基端部から前記側壁部どうしの中間部分に向かって延びる第1自由端部とを有する第1頂部と、前記側壁部のもう一方につながる第2基端部と前記第2基端部から前記中間部分に向かって前記第1自由端部に接近するように延びる第2自由端部とを有する第2頂部とを含む。前記第1、第2頂部それぞれは、前記第3方向において前記心線収容部の外側から内側に向かって弾性変形が可能である。前記弾性変形によって前記第1自由端部と前記第2自由端部との前記第2方向における離間距離が広がることにより、前記光ファイバ心線を前記第3方向から前記心線収容部の内側へ進入させることが可能であり、前記光ファイバ心線を進入させた後には前記第1自由端部と前記第2自由端部とが再度接近するように復帰可能である。
【0007】
この発明の好ましい実施態様の一つにおいて、前記第1、第2頂部は、その肉厚が前記第1、第2基端部それぞれから前記第1、第2自由端部それぞれに向かって次第に薄くなる。
【0008】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記第1、第2頂部は、前記第1、第2基端部それぞれよりも、前記第1、第2自由端部それぞれが前記底部へ近づくように傾斜している。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る光ファイバ心線用の支持具は、心線収容部の第1、第2頂部に外側から光ファイバ心線を押し当てると、これら第1、第2頂部が第1、第2基端部を起点にして心線収容部の内側に向かって弾性変形する。そのときに離間距離が広がる第1、第2自由端部の間からは光ファイバ心線を心線収容部の内側へ進入させて支持具に支持させることができる。光ファイバ心線を進入させた後には、第1、第2頂部が互いに再度接近するように復帰して、光ファイバ心線が心線収容部の外へ出ることを阻止できる。
【0010】
これら第1、第2頂部の肉厚が第1、第2基端部から第1、第2自由端部へ向かうに従って次第に薄くなる態様のこの発明では、第1、第2頂部の変形が容易になって光ファイバ心線を心線収容部へ進入させ易くなる。
【0011】
これら第1、第2頂部の第1、第2自由端部が底部に近づくように傾斜している態様のこの発明では、第1、第2頂部に押し当てた光ファイバ心線をその傾斜に沿って簡単に心線収容部へ進入させることができる一方、進入させた光ファイバ心線は簡単には心線収容部から外へ出ることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
添付の図面を参照して、この発明に係る光ファイバ心線用の支持具の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0013】
図1,2は、使用状態にある支持具1の斜視図と、支持具1の側面図である。図1において、右方には光ケーブル101が示されている。光ケーブル101は、ロッド状のスペーサ106の周面にスペーサ106の長さ方向へ延びるスロット107が複数条形成されている。各スロット107には、テープ状の光ファイバ心線102が納められている。光ケーブル101の最外側には外被108が設けられている。スペーサ106の端部からは、光ファイバ心線102が取り出されている。光ファイバ心線102のそれぞれは、スペーサ106の周面において時計方向に向かって並んでいた順序と同じ順序で支持具1に支持されている。
【0014】
支持具1は、第1の方向として光ファイバ心線102の延びる方向である前後方向Aと、第2の方向として前後方向Aに直交していて光ファイバ心線102が横並びとなる方向である幅方向Bと、第3の方向としてこれら両方向A,Bに直交する高さ方向Cとを有し、複数の心線収容部11が、幅方向Bにおいて互いに隣接するように形成されている。心線収容部11のそれぞれは、幅方向Bにおいて対向していて高さ方向Cへ延びる一対の側壁部12と、これら側壁部12どうしをつないでいて幅方向Bへ延びる底部13と、高さ方向Cにおいて底部13と対向している頂部14とによって囲まれている空間であり、図1に示されるように、その内側に光ファイバ心線102を収容することができる。側壁部12のそれぞれは、隣接する心線収容部11によって共有されている。各心線収容部11における底部13は、幅方向Bにおいてつながっている。頂部14は、例えば図2の左端に形成された心線収容部11aにおいて、互いに対向している側壁部12の一方である右方側壁部12Rから、側壁部12どうしの中間に位置する中央線P−Pに向かって延びる右方頂部14Rと、側壁部12のもう一方である左方側壁部12Lから中央線P−Pに向かって延びる左方頂部14Lとを含んでいる。右方頂部14Rと左方頂部14Lとのそれぞれは、右方側壁部12Rと左方側壁部12Lとにつながる右方基端部16Rと左方基端部16Lとのそれぞれを有し、かつ中央線P−Pの近傍に右方自由端部17Rと左方自由端部17Lとのそれぞれを有する。右方自由端部17Rと左方自由端部17Lとは、中央線P−Pの近傍で互いに接近する部分であって、図では互いに接し合う状態で示されている。右方頂部14Rと左方頂部14Lとはまた、高さ方向Cにおいて、右方基端部16Rと左方基端部16Lとのそれぞれよりも、右方自由端部17Rと左方自由端部17Lとのそれぞれが底部13に接近するように傾斜しており、右方頂部14Rと左方頂部14Lとの上面18R,18Lと下面19R,19Lとが中央線P−Pの近傍を谷底とするようなV字形を画いている。右方頂部14Rと左方頂部14Lとはさらに、それらの肉厚が右方基端部16Rから右方自由端部17Rに向かって次第に薄くなり、左方基端部16Lから左方自由端部17Lに向かって次第に薄くなるように変化している。幅方向Bにおいて互いに隣接する心線収容部11a,11b,11c,11d,11eは、いずれも心線収容部11aと同様に形成されている。ただし、隣接する心線収容部、例えば心線収容部11cと11dとの間において、心線収容部11cの右方側壁部12Rは心線収容部11dの左方側壁部12Lとなる。
【0015】
かような支持具1は、側壁部12と底部13と頂部14とが、例えばJIS K 6253のType Aに規定のゴム硬度が60〜90度であるウレタンゴムの如き合成ゴムやプラスチックエラストマー、天然ゴム等の柔軟弾性材料によって一体的に形成される。特に、頂部14における右方頂部14Rと左方頂部14Lとが、図2に仮想線で示されている如く、幅方向Bへ容易に弾性変形できるようにその材料を選ぶことが好ましい。また、底部13は、支持具1の全体が図2に仮想線で示される如くに湾曲することが容易となるように寸法・形状を決めることが好ましい。底部13が湾曲すると、支持具1における光ファイバ心線102の幅方向Bにおける並び方が弧を画くようになり、セパレータ106の周面における並び方に近くなる。
【0016】
柔軟弾性材料で形成された支持具1においては、図2に仮想線で示されているように、光ファイバ心線102を心線収容部11の外側上方から頂部14に当てて、そのまま押し下げる。すると右方頂部14Rと左方頂部14Lとが下方に向かって弾性変形し、右方自由端部17Rと左方自由端部17Lとが幅方向Bにおいて離間して大きな間隙21が生じるから、その間隙21(図2における心線収容部11c参照)を使用して、光ファイバ心線102を心線収容部11へ進入させる。その後には、右方自由端部17Rと左方自由端部17Lとが元の状態に弾性的に復帰してこれら両者17R,17Lが再接近し、それによって間隙21が閉じる。したがって、光ファイバ心線102は、両自由端部17R,17Lの間から外へ出るということがない。特に、柔軟な右方頂部14Rと左方頂部14Lとが図示の如く斜め下向きに延びて右方自由端部17Rと左方自由端部17Lとがほぼ接し合うことによってV字形を画いているときには、心線収容部11の内側で光ファイバ心線102が揺動しても、右方自由端部17Rと左方自由端部17Lとが互いに離間して間隙21を再び生じさせるということは極めて稀である。
【0017】
支持具1ではまた、それぞれの心線収容部11が、幅方向Bにおける寸法Wを有する上方部分31と、寸法Wを有する下方部分32と、これら両部分31,32をつなぐ段差部33とを有している。心線収容部11に間隙21を形成して光ファイバ心線102を進入させるときに、仮想線の如くに弾性変形する右方頂部14Rと左方頂部14Lとは段差部33よりも上方にあり、上方部分31における側壁部12R,12Lに接近して、間隙21を形成する。下方部分32の寸法Wは、間隙21の幅とほぼ同じであって、間隙21を通過した光ファイバ心線102は、その直下の下方部分32に収まる。心線収容部11が上のように形成されている支持具1では、光ファイバ心線102を心線収容部11へ進入させるときに、右方頂部14Rと左方頂部14Lとを弾性変形させているが、これらの頂部14R,14Lがつながる側壁部12は変形させる必要がない。このことは、光ファイバ心線102を互いに隣接する心線収容部11へ同時に進入させるときに、一方の心線収容部11への光ファイバ心線102の進入がもう一方の心線収容部11への光ファイバ心線102の進入の妨げにならないということを意味している。図2において明らかなように、このような心線収容部11は、互いに隣接する心線収容部11の間において、共有している側壁部12のうちの上部の幅を下部の幅よりも小さくすることによって、より好ましくは、上部と下部との幅の差の半分の値が右方頂部14Rまたは左方頂部14Lの厚さにほぼ等しくなるようにすることによって得ることができる。この支持具1であれば、互いに隣接する心線収容部11のそれぞれに対して光ファイバ心線102を同時に進入させることが可能であって、心線収容部11の一つずつに対して光ファイバ心線102を順番に進入させることが不要である。それゆえ、光ケーブル101から取り出した複数条の光ファイバ心線102を離間整列させる作業に、多くの時間はかからない。
【0018】
支持具1において、心線収容部11の寸法は、収容すべき光ファイバ心線102の寸法・形状を考慮して決めればよいものである。また、支持具の厚さである前後方向Aの寸法に格別の規定はなく、支持具1の取り扱いが容易となるように決めることができる。例えば、直径が15mmで、10本のスロット107を有する光ファイバケーブル101に使用する支持具1では、その厚さを1〜5mm程度にし、幅方向Bの寸法を15〜35mm、高さ方向Cの寸法を5〜10mmにすることができる。また、図示例において、中央線P−Pに向かって傾斜している右方頂部14Rと左方頂部14Lとは、これらの上面18R,18Lのみを傾斜させて、下面19R,19Lをほぼ水平にすることもできる。右方頂部14Rと左方頂部14Lとにおける基端部16R,16Lから自由端部17R,17Lまでの長さは、それらを下方に向かって弾性変形させても、自由端部17R,17Lが進入させた後の光ファイバ心線102に接触することのないように調整する。図1,2において、支持具1の右端部に現れている隆起部26,27は、支持具1の左右方向を識別するためのもので、それらの形状を変更したり、それらを省いたりしてこの発明を実施することも可能である。
【0019】
図3は、この発明の実施態様の一例を示す図2と同様な図である。図3の支持具1では、側壁部12における幅方向Bの寸法が高さ方向Cにおいてほぼ一様である。支持具1の幅方向Bの寸法を大きくすることに制約がない場合や、それとは反対に幅方向Bの寸法を大きくすることに制約があって、図2の支持具1のように側壁部12のうちの下部の幅を大きくすることができない場合には、図示例の態様の支持具1でこの発明を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明によれば、光ファイバケーブルから取り出した光ファイバ心線を離間並列した状態で支持する作業が容易になる光ファイバ心線用の支持具の製造が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】使用状態にある支持具の斜視図。
【図2】支持具の側面図。
【図3】実施態様の一例を示す図2と同様な図。
【図4】光ファイバ心線の従来の支持方法を例示する図。
【符号の説明】
【0022】
1 支持具
11 収容部
12 側壁部
13 底部
14 頂部
14R 第1頂部(右方頂部)
14L 第2頂部(左方頂部)
16R 基端部(右方基端部)
16L 基端部(左方基端部)
17R 自由端部(右方自由端部)
17L 自由端部(左方自由端部)
102 光ファイバ心線
A 第1方向(前後方向)
B 第2方向(幅方向)
C 第3方向(高さ方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する第1方向と第2方向と第3方向とを有し、前記第1方向へ延びる複数条の光ファイバ心線を前記第2方向において離間並列させる複数の心線収容部が形成された光ファイバ心線用の支持具であって、
前記心線収容部は、前記第2方向へ互いに隣接して形成されており、前記第2方向において対向するとともに前記第3方向へ延びていて隣接する前記心線収容部と共有する一対の側壁部と、一対の前記側壁部につながり前記第2方向へ延びる底部と、一対の前記側壁部の間に介在して前記第3方向において前記底部と対向している頂部とによって囲まれていて、これら各部の内側に前記光ファイバ心線を収容可能であり、
前記底部と一対の前記側壁部と前記頂部とは、柔軟弾性材料で形成されており、前記底部は、隣接する前記心線収容部との間において連続した状態にあり、前記頂部は、一対の前記側壁部の一方につながる第1基端部と前記第1基端部から前記側壁部どうしの中間部分に向かって延びる第1自由端部とを有する第1頂部と、前記側壁部のもう一方につながる第2基端部と前記第2基端部から前記中間部分に向かって前記第1自由端部に接近するように延びる第2自由端部とを有する第2頂部とを含み、前記第1、第2頂部それぞれが前記第3方向において前記心線収容部の外側から内側に向かって弾性変形が可能であり、前記弾性変形によって前記第1自由端部と前記第2自由端部との前記第2方向における離間距離が広がることにより前記光ファイバ心線を前記第3方向から前記心線収容部の内側へ進入させることが可能であり、前記光ファイバ心線を進入させた後には前記第1自由端部と前記第2自由端部とが再度接近するように復帰可能であることを特徴とする前記支持具。
【請求項2】
前記第1、第2頂部は、その肉厚が前記第1、第2基端部それぞれから前記第1、第2自由端部それぞれに向かって次第に薄くなる請求項1記載の支持具。
【請求項3】
前記第1、第2頂部は、前記第1、第2基端部それぞれよりも、前記第1、第2自由端部それぞれが前記底部へ近づくように傾斜している請求項1または2記載の支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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