説明

光ファイバ心線用の支持具

【課題】スペーサの周面に沿ったスロットのピッチが異なる複数種類の光ファイバケーブルについても使用することができる支持具を提供する。
【解決手段】支持具1は、光ファイバケーブルのスペーサから取り出した光ファイバ心線を収容する収容部2を、光ファイバ心線の長手方向(前後方向Z)と交差する横方向Xへ複数連結したものである。この支持具1には、互いに隣り合う収容部2どうしの間に、収容部2どうしを前記横方向Xにおいて互いに近接及び離間することを可能にする弾性変形可能な連結部4を設けてある。この連結部4は、収容部2どうしのそれぞれにつながっていて支持具1の自然状態において収容部2どうしの間に間隙4Sを形成する帯状部分41F、41Bであり、この帯状部分41F、41Bが、前記長手方向において互いに対向するように一対形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバケーブルのスペーサから取り出した複数の光ファイバ心線を互いに離間並列するように支持するのに好適な支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光ファイバ心線を有する光ファイバケーブルは周知である。例えば、特許文献1には、光ファイバ心線を収容しているスロット(心線収容溝)を、光ファイバケーブルの長手方向に沿って延在するように形成し、略円柱状を成すスペーサに対して上記スロットを前記スペーサの周面に沿って環状に配置した光ファイバケーブルが記載されている。
この種の光ファイバケーブルでは、各光ファイバ心線を家屋等に引き込む場合、光ファイバケーブルのスペーサから光ファイバ心線を取り出し、この取り出した光ファイバ心線を分岐させる場合がある。
このような場合、例えば特許文献2に示されるように、光ファイバ心線の長手方向と交差する横方向へ連設した複数の収容部を備える支持具によって、スペーサに対する光ファイバ心線の相互の位置関係を保っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−231181号公報
【特許文献2】特開2008−191411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記スペーサの中には、例えば径方向の大きさが異なることによってスペーサの周面に沿ったスロットのピッチが異なるものが存在する。特許文献2に開示された技術では、スペーサの周面に沿ったスロットのピッチが所定の光ファイバケーブルについて使用できるが、この光ファイバケーブルに対して、スペーサの周面に沿ったスロットのピッチが異なる光ファイバケーブルについては使用することができない問題があった。
【0005】
そこで、この発明は、スペーサの周面に沿ったスロットのピッチが異なる複数種類の光ファイバケーブルについても使用することができる支持具の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、光ファイバケーブルのスペーサから取り出した光ファイバ心線を収容する収容部を、前記光ファイバ心線の長手方向と交差する横方向へ複数連結した光ファイバ心線用の支持具である。
【0007】
かかる支持具において、この発明の特徴とするところは、次の通りである。互いに隣り合う収容部どうしの間に、前記収容部どうしを前記横方向において互いに近接及び離間することを可能にする弾性変形可能な連結部を設けてある。
【0008】
この発明の好ましい実施態様の一つにおいて、前記連結部は、前記収容部どうしのそれぞれにつながっていて前記支持具の自然状態において前記収容部どうしの間に間隙を形成する帯状部分であり、前記帯状部分が、前記長手方向において互いに対向するように一対形成されている。
【0009】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、一対の前記帯状部分は、前記長手方向において、前記収容部に収容する前記光ファイバ心線の切断端側である前方側に突出する前方帯状部分と、前記長手方向において、前記光ファイバ心線を収容しているスペーサの側である後方側に突出する後方帯状部分とを含んでいる。
【0010】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記収容部は、前記長手方向と前記横方向とに交差している上下方向と、前記収容部の前記横方向に延在する底壁部と、前記底壁部の両端部から前記上下方向の上方に向って延在する一対の側壁部と、前記側壁部のそれぞれの上端部から前記底壁部に向かうように斜め下方に延びる一対の頂部とを含み、前記底壁部、前記側壁部、及び前記頂部で前記光ファイバ心線を収容する収容空間を形成するものであって、一対の前記頂部は、互いに離間するように前記横方向に弾性変形して前記光ファイバ心線の前記収容部への前記上方からの押入を可能にするものであり、一対の前記帯状部分は、前記底壁部どうしを連結するものである。
【0011】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、互いに隣り合う前記収容部どうしは、一方の前記収容部に対し、もう一方の前記収容部が、前記長手方向において一方の前記収容部に収容する前記光ファイバ心線の切断端側である前方側及び前記光ファイバ心線を収容しているスペーサの側である後方側のいずれかにずらして配置してある。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る支持具には、互いに隣り合う収容部どうしの間に、前記収容部どうしが互いに近接及び離間することを可能にする弾性変形可能な連結部を設けてあるため、スペーサの周面に沿ったスロットのピッチの大きさに応じて収容部どうしを近接及び離間させることができる。よって、この支持具は、スペーサの周面に沿ったスロットのピッチが異なる複数種類の光ファイバケーブルについて使用した場合であっても、スペーサのスロットから取り出した光ファイバ心線を収容部へ収容することが容易である。
【0013】
一対の帯状部分が、長手方向において、収容部に収容する光ファイバ心線の切断端側である前方側に突出する前方帯状部分と、長手方向において、光ファイバ心線を収容しているスペーサの側である後方側に突出する後方帯状部分とを含む実施形態では、連結部の存在によって支持具とスペーサの周面とが接触する範囲を大きくすることができるから、支持具をスペーサの周面に沿って光ファイバ心線の長手方向にスライド移動させることが容易であり、かつ、このスライド移動の際、支持具が前記長手方向のいずれかに倒れることを防止することができる。
【0014】
互いに隣り合う収容部どうしの間において、一方の収容部に対し、もう一方の収容部が、長手方向において一方の収容部に収容する光ファイバ心線の切断端側である前方側及び光ファイバ心線を収容しているスペーサの側である後方側のいずれかにずらして配置してある実施形態では、互いに隣り合う収容部どうしをずらして配置することによって光ファイバケーブルを収容部に収容するとき、及び収容した後、収容状態の認識を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】光ファイバ心線用の支持具の使用状態の一例を示す図。
【図2】図1に示した支持具の斜視図。
【図3】図1に示した支持具の正面図。
【図4】図1に示した支持具の平面図。
【図5】連結部によって収容部どうしを離間させた状態を示す図4と同様な平面図。
【図6】連結部によって収容部どうしを近接させた状態を示す図4と同様な平面図。
【図7】支持具の図1とは異なる使用状態を示す図。
【図8】図1とは異なる実施形態の支持具の平面図。
【図9】実施形態の他の一例を示す支持具の平面図。
【図10】実施形態のさらに他の一例を示す支持具の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、この発明に係る光ファイバ心線用の支持具の詳細を説明すると、以下の通りである。
【0017】
〈第1実施形態〉
図1は、この発明に係る光ファイバ心線用の支持具の第1実施形態の使用状態を示した斜視図であり、かつこの支持具で支持する光ファイバ心線を複数有する光ファイバケーブルを示してある。
以下において、光ファイバケーブル101及び光ファイバ心線104の長手方向を第1方向(前後方向)と言い、図中、Zで示す。また、第1方向に対して直交する面において、第1方向Zと垂直に交わる方向は上下方向であってこれを第2方向と言い、図中、Yで示し、第1方向と水平に交わる方向は横方向であってこれを第3方向と言い、図中、Xで示す。換言すれば、第1方向Z、第2方向Y、第3方向Xは、互いに直交している。
光ファイバケーブル101は、前後方向Zに一致させてある光ファイバケーブル101の長手方向に延在するスペーサ102と、径方向の最も外側に設けられた外皮105とを備えている。
スペーサ102は、略円柱状に形成されており、光ファイバケーブル101の長手方向に沿って延在するスロット(心線収容溝)103を複数有している。これらのスロット103は、スペーサ102の周面に沿って環状に配置されている。各スロット103には、光ファイバ心線104が個別に収容してある。光ファイバ心線104は、光ファイバ素線(図示せず)を例えば4本横並びに連結したテープ状のものを複数積層することによって構成してある。
スペーサ102の端部からは、前後方向Zにおける前方側に切断端104aを有する複数の光ファイバ心線104が取り出されている。光ファイバ心線104のそれぞれは、例えばスペーサ102の周面において時計方向Aに向かって並んでいた順序と同じ順序で支持具1に支持される。
【0018】
次に、図2〜図4によって支持具1を説明する。支持具1は、前後方向Zに対して、直交する方向である横方向Xに延在するよう一体的に形成してある。この支持具1は、光ファイバ心線104を収容する収容部2を、横方向Xへ5つ設けてあり、互いに隣り合う収容部2どうしの間には、収容部2どうしを連結する連結部4を設けてある。
5つの収容部2は、図2の左から右へ順に並ぶ第1の収容部2a、第2の収容部2b、第3の収容部2c、第4の収容部2d、第5の収容部2eを含んでいる。
第2の収容部2b乃至第5の収容部2eは、同一の形状に形成されているが、後述するように第1の収容部2aの形状は異なっている。各連結部4は、同一の形状に形成されている。
【0019】
収容部2は、底壁部22と、側壁部21と、頂部23とを有している。底壁部22は、横方向Xに沿って延在する部分である。図3で明らかなように、この底壁部22の下面22aは、横方向Xにおける中央部が上方に向かって凸となるように湾曲している。
側壁部21及び頂部23は、底壁部22における横方向Xの寸法を二等分する中央線P−Pに関して対称となるよう一対で構成してある。
側壁部21は、底壁部22における横方向Xの両端部から上下方向Yの上方に向って延在する部分である。
頂部23は、側壁部21の上端部から底壁部22に向かうように斜め下方に延びる部分である。
そして、各収容部2は、図1に示すように、これら側壁部21、底壁部22、及び頂部23で囲まれる収容空間2Sに光ファイバ心線104をそれぞれ収容するものである。
【0020】
頂部23は、図3に示す例えば第5の収容部2eにおいて、互いに対向している側壁部21の一方である右方側壁部21Rから、側壁部21どうしの中間に位置する中央線P−Pに向かって延びる右方頂部23Rと、側壁部21のもう一方である左方側壁部21Lから中央線P−Pに向かって延びる左方頂部23Lとを含んでいる。
右方頂部23Rは、右方側壁部21Rにつながる右方基端部23R1を有し、かつ中央線P−Pの近傍に右方自由端部23R2を有する。
左方頂部23Lは、左方側壁部21Lにつながる左方基端部23L1を有し、かつ中央線P−Pの近傍に左方自由端部23L2を有する。
右方自由端部23R2と左方自由端部23L2とは、中央線P−Pの近傍で互いに接近する部分であって、図3では僅かに離間する状態で示されている。
右方頂部23Rと左方頂部23Lとはまた、上下方向Yにおいて、右方基端部23R1と左方基端部23L1のそれぞれよりも、右方自由端部23R2と左方自由端部23L2とのそれぞれが底壁部22に接近する態様で基端部23R1、23L1から自由端部23R2、23L2に向けて斜め下方に傾斜しており、中央線P−Pの近傍を谷底とするようなV字形をそれぞれ画いている。右方頂部23Rと左方頂部23Lとはさらに、それらの肉厚が右方基端部23R1から右方自由端部23R2に向かって次第に薄くなり、左方基端部23L1から左方自由端部23L2に向かって次第に薄くなるように変化している。
また、図3において仮想線で示すように、頂部23が弾性変形する際において側壁部21が弾性変形することを防止するため、頂部23の肉厚に比して、側壁部21の肉厚が厚くなるよう形成されている。
【0021】
第1の収容部2aの左方の側壁部21Lは、図2と図4に示すように、第1収容部2aの右方の側壁部21R、及び他の収容部2の側壁部21に比較して前後方向Zにおいて幅広となるよう構成してあり、かつこの左方の側壁部21Lの上部側において、左方に突出する突出部21aを有している。この左方の側壁部21Lが幅広であること、及び突出部21aを有していることが、第1の収容部2aと、他の収容部2b、2c、2d、2eとを容易に識別できるようにするための相違点であり、他の部分については、第1の収容部2aと、他の収容部2b、2c、2d、2eとは同様に構成してある。
【0022】
連結部4は、前後方向Zにおいて互いに対向する一対の帯状部分41によって構成してある。より具体的には、各帯状部分41は、前後方向Zにおいて、通常は前方側に配置される前方帯状部分41Fと、後方側に配置される後方帯状部分41Bとでそれぞれ構成してある。
前方帯状部分41F及び後方帯状部分41Bについては、図4における第3の収容部2cと、第4の収容部2dとの間に形成された連結部4を一例として以下に説明する。
【0023】
図4において、その前方帯状部分41Fは、前後方向Zにおいて収容部2から前方側に突出する態様であって、緩やかに湾曲する半円の弧状を成すよう構成してある。より具体的には、前方帯状部分41Fは、一方の端部が第3の収容部2cの底壁部22の前面側につながり、かつ他方の端部が第4の収容部2dの底壁部22の前面側につながるよう構成してある。
後方帯状部分41Bは、前後方向Zにおいて収容部2から後方側に突出する態様であって、緩やかに湾曲する半円の弧状を成すよう構成してある。より具体的には、前方帯状部分41Fは、一方の端部が第3の収容部2cの底壁部22の後面側につながり、かつ他方の端部が第4の収容部2dの底壁部22の後面側につながるよう構成してある。
前方帯状部分41F及び後方帯状部分41Bは、互いに隣り合う収容部2c、2dどうしの間に間隙4Sが形成されるように第3の収容部2cと第4の収容部2dとを連結している。
各帯状部分41F、41Bは、厚さがほぼ均一に作られているが、収容部2c、2dの近傍には薄肉部42aを設けてあり、横方向Xにおいて、第3の収容部2cと第4の収容部2dとの間隙4Sを二等分する中心線Q−Qと交差する部分にも薄肉部42bを設けてある。
このような連結部4は、スペーサ102の周面に沿って支持具1を湾曲させる際、この湾曲の妨げにはならないが横方向Xの伸長・収縮が容易となるように形成する。
【0024】
かような支持具1は、収容部2と連結部4とが、例えばJIS K 6253のType Aに規定のゴム硬度が60〜90度であるウレタンゴムの如き合成ゴムやプラスチックエラストマー、天然ゴム、ナイロンや低密度ポリエチレンの如き熱可塑性合成樹脂等の柔軟弾性材料によって一体的に形成される。
この支持具1は、図4に示すように、自然状態では、横方向Xへ並ぶ収容部2のピッチがX4であり、隣り合う収容部2どうしの間隙の寸法(換言すれば間隙4Sの横方向Xの寸法)がX5である。
【0025】
次に、支持具1の作用を説明する。柔軟弾性材料で形成された支持具1においては、例えば図3における第3の収容部2cにおいて、光ファイバ心線104を収容部2cの外側上方から左右の頂部23R、23Lに当てて下方に向けて押し下げる。すると、図3に仮想線で示されているように、右方頂部23Rと左方頂部23Lとが互いに離間するように弾性変形し、右方自由端部23R2と左方自由端部23との間に寸法X3の間隙が生じるから、その間隙を使用して光ファイバ心線104を収容部2cの収容空間2Sへ進入させる。このように光ファイバ心線104を収容空間2Sに進入させると、図3の第4の収容部2dにおいて、仮想線で示すように、収容空間2Sの下方部分に、光ファイバ心線104が収容されることとなる。光ファイバ心線104を収容空間2Sに進入させた後には、右方自由端部23R2と左方自由端部23L2とが元の状態に弾性的に復帰してこれら両者23R2、23L2が再接近し、間隙の寸法がX3から自然状態における寸法である寸法X1まで変化する。寸法X1は、収容空間2Sで収容する光ファイバ心線104の横方向Xの寸法X2よりも小さいため、光ファイバ心線104が収容部2の収容空間2Sから外へ出ることが防止される。特に、右方頂部23Rと左方頂部23Lとが、図3に示すように、側壁部21の上端から斜め下方向きに延びて右方自由端部23R2と左方自由端部23L2とが近接することでV字形を画いているときには、光ファイバ心線104の収容空間2Sへの押入が容易であって、しかも収容空間2Sにおいて光ファイバ心線104が揺動しても、横方向Xにおいて、右方自由端部23R2と左方自由端部23L2との間隙の寸法X1が光ファイバ心線104の寸法X2よりも大きくなることは殆ど皆無である。
【0026】
次に、図3において第4の収容部2dに光ファイバ心線104を収容した後、第5の収容部2eに光ファイバ心線104を収容する場合を説明する。
この場合、第4の収容部2dに収容してある光ファイバ心線104が、第5の収容部2eに光ファイバ心線104を収容する際の邪魔になることがある。このような場合、既に第4の収容部2d及び/又はそれに収容した光ファイバ心線104を一方の手で持ち、第5の収容部2eをもう一方の手に持って、第4の収容部2dと第5の収容部2eとを横方向Xにおいて離間させるようにすれば、図5に示すように、連結部4が横方向Xにおいて伸長するよう弾性変形し、第4の収容部2dと第5の収容部2eとの間の横方向Xにおける間隙4Sの寸法X6が、図4に示す自然状態における寸法X5よりも大きくなり、すでに収容してある光ファイバ心線104によって邪魔されることなく、次の光ファイバ心線104を第5の収容部2eに収容することができる。なお、連結部4は、弾性変形の際に、連結部4のうちの薄肉部42a、42bと、その近傍とにおいて特に容易に変形する。
【0027】
次に、例えば光ファイバ心線104を第4の収容部2dと第5収容部2eとにそれぞれ押入した後には、図6に示すように、連結部4を横方向Xにおいて弾性変形させて一方の収容部2dと他方の収容部2eとを接近又は接触させることができる。このときには、連結部4は、薄肉部42bと、その近傍とにおいて特に容易に変形する。
【0028】
図7は、支持具1と光ファイバケーブル101との部分断面図である。図7に基づいて、スペーサ102から取り出した光ファイバ心線104の間隔X7と、支持具1における収容部2の横方向XのピッチX4との関係について説明する。
【0029】
図7に示すスペーサ102から取り出した光ファイバ心線104の間隔X7と、収容部2の横方向XのピッチX4とが同一である場合、支持具1がスペーサ102の周方向で弾性変形するものの、互いに隣り合う収容部2どうしでは近接もせずかつ離間もせずに間隙4Sは寸法X5(図4参照)を維持する。
【0030】
一方、例えばスペーサ102の周面に沿ったスロット103のピッチが小さいことに基づき、スロット103から取り出した光ファイバ心線104の間隔が図7のX7よりも小さい場合には、図示省略するが、連結部4が間隙4Sの幅を小さくするように弾性変形させることによって、互いに隣り合う収容部2どうしを接近させてことができる。
【0031】
他方、例えばスペーサ102の周面に沿ったスロット103のピッチが大きいことに基づき、スロット103から取り出した光ファイバ心線104の間隔が図7のX7よりも大きい場合には、図示省略するが、連結部4が間隙4Sの幅を大きくするように弾性変形させることによって、互いに隣り合う収容部2どうしを離間させることができる。
【0032】
この支持具1によれば、互いに隣り合う収容部2どうしの間に、収容部2どうしを横方向Xにおいて互いに近接及び離間することを可能にする弾性変形可能な連結部4を設けてあるため、スペーサ102ごとに、スペーサ102の周面に沿ったスロット103のピッチが異なっていても支持具1は、連結部4によって隣り合う収容部2どうしを近接及び離間させて、それぞれのスペーサ102に適応させることができる。
また、隣り合う一方の収容部2と他方の収容部2において、一方の収容部2に光ファイバ心線104を収容した後、他方の収容部2に光ファイバ心線104を収容する際、連結部4によって隣り合う収容部2どうしを近接及び離間することができるから、作業者の必要に応じて隣り合う収容部2の相互の距離を調整することができる。
さらに、この支持具1によれば、連結部4における前方帯状部分41Fが、前後方向Zにおいて前方側に突出し、かつ後方帯状部分41Bが、前後方向Zにおいて後方側に突出するため、連結部4の存在によって支持具1とスペーサ102の周面とが接触する範囲を大きくすることができ、これによって、支持具1をスペーサ102の周面に沿って前後方向Zにスライド移動させることが容易であり、かつ、このスライド移動の際、支持具1が前後方向Zのいずれかに倒れることを防止することができる。
また、前方帯状部分41F及び後方帯状部分41Bは、収容部2の底壁部22どうしを連結するものであるため、支持具1の下面側をスペーサ102の周面に当てた状態で光ファイバ心線104を支持具1で支持すれば、支持具1はスペーサ102の周面に対して周方向で沿うように弧を画きながら弾性変形することが容易である。
さらに、底壁部22の下面22aが、横方向Xにおける中央部が上方に向かって凸となるように形成されているときには、スペーサ102の周面に沿うよう支持具1を湾曲させる際、右方頂部23Rと左方頂部23Lとの離間距離X1が不必要に大きくなることを防止することができる。
さらにまた、第1の収容部2aの左方の側壁部21Lだけを幅広にしたり、左方の側壁部21Lにのみ突出部21aを設けたりすることによって左方の側壁部21Lとその他の側壁部21とを識別するための手段が支持具1に設けてある。これにより、スペーサ102においてスロット103が時計方向Aへ並ぶ順序、すなわち光ファイバ心線104が時計方向Aへ並ぶ順序を、支持具1において、収容部2が横方向Xへ並ぶ順序に反映させることが容易になる。
【0033】
なお、図1〜図7に示す形態は本発明に係る実施形態の一例であって、本発明はかかる形態に限定されるものではない。例えば、収容部2の個数は5つに限られず、適宜増減することができる。
連結部4の個数は4つに限られず、例えば収容部2の個数に応じて適宜増減することができる。
連結部4は、一対の帯状部分41(前方帯状部分41Fと後方帯状部分41B)によって構成するもので説明したが、いずれか一方の帯状部分41F、41Bのみで構成しても良い。
連結部4は、互いに隣り合う収容部2どうしの間に間隙4Sを形成するものであれば十分であり、形状等は適宜変更することができる。
支持具1を形成させるための材料は、支持具1の使用に際して必要となる弾性変形を可能にするものであれば良い。
第1の収容部2aと、第5の収容部2eとを識別するための手段は、第1の収容部2aの左方の側壁部21Lを幅広に形成すること、及び第1の収容部2aの左方の側壁部21Lに目印となる突出部21aを設けることのいずれか一方であれば充分である場合があり、また他の目印を採用することも可能である。
【0034】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る光ファイバ心線用の支持具の第2実施形態について、図8を用いて説明する。第2の実施形態に係る支持具111は、第1実施形態の支持具1と基本的構成が同様であり、構成が同一の個所には同一の符号を付して説明を省略し、相違する点についてのみ以下に説明する。
【0035】
図8に示すとおり、本実施形態の支持具111では、収容部2が、横方向Xに平行な線L1に沿って形成されていて、第1の収容部2a、第3の収容部2c、及び第5の収容部2eが線L1の前方側に一列に配置されて第1列を形成する一方、第2の収容部2b、及び第4の収容部2dが線L1の後方側に一列に配置されて第1列に平行な第2列を形成している。横方向Xにおいて隣り合う収容部2どうし、例えば第1の収容部2aと第2の収容部2bとは、一方の収容部2aが線L1の前方側に形成され、もう一方の収容部2bが線L1の後方側に形成されている。ただし、第1〜第5の収容部2a〜2eは、ピッチはX4で並んでいて、収容部2どうしの間には間隙4Sが形成されている。換言すると、第1〜第5の収容部2a〜2eは、ピッチX4で並んでいるが、互いに隣り合う収容部2は、前後方向Zにおいて、収容部2の一つ分の寸法だけ交互にずれている。
【0036】
また、図8における連結部4は、例えば第1の収容部2aと第2の収容部2bとをつなぐ連結部4でみると、前方帯状部分41F及び後方帯状部分41Bが、半円の弧状を成すよう形成した半円状部41Mと、前後方向Zに直線状に延在する直状部41Eとで構成してある。
【0037】
この支持具111によれば、互いに隣り合う収容部2どうしが、一方の収容部2に対し、もう一方の収容部2が、前後方向Xにおいて前方側及び後方側のいずれかにずらして配置してあるため、光ファイバケーブル104を収容部2に収容するとき、及び収容した後、収容状態の認識を容易に行なうことができる。
【0038】
なお、図8に示す形態は本発明に係る実施形態の一例であって、かかる形態に本発明は限定されるものではない。例えば第2実施形態の他の一例を図9に示す。この支持具121は、互いに隣り合う収容部2が前後方向Zにおいて、前方及び後方のいずれかに収容部2の一つ分の寸法だけずれている。例えば第1の収容部2aに対して第2の収容部2bは後方にずれている。第3の収容部2cは、第2の収容部2bに対して後方にずれている。第4の収容部2dは、第3の収容部2cに対して前方にずれている。第5の収容部2eは、第4の収容部2dに対して前方にずれている。第1の収容部2aと第5の収容部2eとは横方向Xにおいて同一線上にあり、第2の収容部2bと第4の収容部2dとは横方向Xにおいて同一線上にある。
この支持具121では、収容部2が、横方向Xに平行であって、前後方向Zに等間隔な線L2、L3に沿って形成されていて、第1の収容部2a、及び第5の収容部2eが線L2の前方側に一列に配置され、第2の収容部2b、及び第4の収容部2dが線L2の後方側であって、かつ線L3の前方側に一列に配置され、かつ第3の収容部2cが線L3の後方側に配置されていると言うこともできる。
【0039】
また、第2実施形態のさらに他の一例を図10に示す。この支持具131は、互いに隣り合う収容部2どうしの間において、一方の収容部2に対し、もう一方の収容部2が、前後方向Z後方側にずらして配置してある。また、この支持具131では、収容部2が、横方向Xに平行であって、前後方向Zに等間隔な線L4、L5、L6、L7に沿って形成されていて、第1の収容部2aが線L4の前方側に配置され、第2の収容部2bが線L4の後方側であって、かつ線L5の前方側に配置され、第3の収容部2cが線L5の後方側であって、かつ線L6の前方側に配置され、第4の収容部2dが線L6の後方側であって、かつ線L7の前方側に配置され、第5の収容部2eが線L7の後方側に配置されている。
【0040】
なお、図10に示す実施形態は本発明に係る実施形態の一例であって、かかる形態に本発明は限定されるものではない。例えば、収容部2の前後方向Zにおける数は、適宜増減することができる。
また、図8〜図10では、互いに隣り合う収容部2どうしにおいて、前後方向Zにおける収容部2の一つ分の寸法だけずれた例で説明したが、前後方向Zにずれる寸法は適宜増減することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 支持具
2(2a) 収容部
2(2b) 収容部
2(2c) 収容部
2(2d) 収容部
2(2e) 収容部
2S 収容空間
4 連結部
4S 間隙
41 帯状部分
41B 後方帯状部分(帯状部分)
41F 前方帯状部分(帯状部分)
101 光ファイバケーブル
102 スペーサ
103 スロット
104 光ファイバ心線
111 支持具
121 支持具
131 支持具
X 横方向(光ファイバ心線の長手方向と交差する方向)
Z 前後方向(光ファイバ心線の長手方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルのスペーサから取り出した光ファイバ心線を収容する収容部を、前記光ファイバ心線の長手方向と交差する横方向へ複数連結した光ファイバ心線用の支持具において、
互いに隣り合う収容部どうしの間に、前記収容部どうしを前記横方向において互いに近接及び離間することを可能にする弾性変形可能な連結部を設けたことを特徴とする前記支持具。
【請求項2】
前記連結部は、前記収容部どうしのそれぞれにつながっていて前記支持具の自然状態において前記収容部どうしの間に間隙を形成する帯状部分であり、前記帯状部分が、前記長手方向において互いに対向するように一対形成されている請求項1記載の支持具。
【請求項3】
一対の前記帯状部分は、
前記長手方向において、前記収容部に収容する前記光ファイバ心線の切断端側である前方側に突出する前方帯状部分と、
前記長手方向において、前記光ファイバ心線を収容しているスペーサの側である後方側に突出する後方帯状部分と、
を含む請求項2記載の支持具。
【請求項4】
前記収容部は、
前記長手方向と前記横方向とに交差している上下方向と、
前記収容部の前記横方向に延在する底壁部と、
前記底壁部の両端部から前記上下方向の上方に向って延在する一対の側壁部と、
前記側壁部のそれぞれの上端部から前記底壁部に向かうように斜め下方に延びる一対の頂部と、
を含み、
前記底壁部、前記側壁部、及び前記頂部で前記光ファイバ心線を収容する収容空間を形成するものであって、一対の前記頂部は、互いに離間するように前記横方向に弾性変形して前記光ファイバ心線の前記収容部への前記上方からの押入を可能にするものであり、
一対の前記帯状部分は、前記底壁部どうしを連結するものである請求項2又は3記載の支持具。
【請求項5】
互いに隣り合う前記収容部どうしは、一方の前記収容部に対し、もう一方の前記収容部が、前記長手方向において一方の前記収容部に収容する前記光ファイバ心線の切断端側である前方側及び前記光ファイバ心線を収容しているスペーサの側である後方側のいずれかにずらして配置してある請求項1乃至4記載の支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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