説明

光ファイバ接続器

【課題】被覆を除去することなく、高精度に光ファイバ同士を整列させ、さらに高密度に光ファイバ接続器を設置した状態で光ファイバの接続および所望の光ファイバの抜き取りを簡便に実施できる光ファイバ接続器を実現する。
【解決手段】プラグと、光ファイバ同士を対向整列させる光ファイバ整列部を有するアダプタとを備える光ファイバ接続器であって、プラグは、溝部と、蓋部と、蓋部を溝部へ押さえつける光ファイバを把持するためのクランパとから構成される光ファイバ把持部とを備え、溝部と蓋部のそれぞれは、光ファイバの被覆を貫通して光ファイバのガラス部と接触する固定刃を前記光ファイバと同軸方向に備え、クランパは、蓋部を溝部へ押さえつける把持部と、アダプタの係止片とプラグの係止穴の嵌合を解除する延伸部とから構成されることを特徴とする光ファイバ接続器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを対向整列させて光ファイバを接続する光ファイバ接続部品に係わり、特に光ファイバ心線の被覆を除去しない状態で光ファイバ心線を接続することが可能な光ファイバ接続部品に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを接続する光ファイバ接続器として、光ファイバ融着接続、メカニカルスプライス、光コネクタが使用されている。これらの光ファイバ接続では共通して、直径125μmのガラスを樹脂で被覆して被覆外径を250μm〜500μmとした光ファイバ心線の状態である光ファイバに対して、光ファイバ心線の被覆を除去して直径125μmのガラスの状態にして光ファイバを切断する工程が必要である。
【0003】
簡便な操作により、光ファイバ接続が可能な光ファイバ接続器としてメカニカルスプライスがある(特許文献1、特許文献2参照)。メカニカルスプライスはV溝基板、蓋部材、V溝基板と蓋部材を一体化するクランパで構成される。メカニカルスプライスでは、V溝基板と蓋部材を重ねることにより、光ファイバの整列部を形成している。メカニカルスプライス内へは被覆を除去した光ファイバを挿入する。高精度に寸法を制御できるV溝の深さと光ファイバのガラスの外径を利用して、光ファイバのコア同士を高精度に整列させる構造である。光ファイバ整列部の光ファイバが突き合う位置には予め屈折率整合剤を充填している。屈折率整合剤は、光ファイバのコアの屈折率と同程度の屈折率を有し、接続する光ファイバ間における空隙を埋めて空気によるフレネル反射を抑制する。メカニカルスプライスでは、光ファイバ心線の被覆除去と切断処理をした後、専用の組立工具を利用してメカニカルスプライス内へ光ファイバを挿入することにより光ファイバを接続することができる。専用の組立工具は、メカニカルスプライス内に楔を挿入してV溝基板と蓋部材の間に光ファイバを挿入する隙間を設けて、光ファイバがメカニカルスプライスへ挿入することを可能にする。
【0004】
簡単に、光ファイバを着脱できる光ファイバ接続器として光コネクタがある。光ファイバは、フェルールの中心に設けた穴へ接着剤で固定される。フェルール内へは被覆を除去した光ファイバを挿入する。高精度に寸法を制御できるフェルールの穴と光ファイバのガラスを利用して、フェルールの中心位置に光ファイバを固定して、さらにフェルール同士をアダプタに設置した割りスリーブ内で整列させて光ファイバのコア同士を高精度に整列させる構造である。光ファイバを接着固定したフェルール端面は研磨処理される。端面を研磨した光コネクタでは屈折率整合剤を使用せずに研磨したフェルール同士をスプリングにより押圧して光ファイバのコア同士を密着(PC:Physical Contact)接続させてフレネル反射を抑制する。
【0005】
メカニカルスプライスと光コネクタは共に、光ファイバ心線の被覆を除去した後で接続部材へ光ファイバを挿入して、高精度に外径寸法を制御して作製されるガラスを利用して、接続する光ファイバ同士を整列させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−061655号公報
【特許文献2】特開2001−324638号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】電子情報通信学会2008年総合大会講演論文集、“ファイバ端面研磨が不要な現場組立PCコネクタの検討”、B−13−14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光ファイバ接続では光ファイバのコア同士を高精度に整列させることが必要である。光ファイバのガラス部は外径の寸法を高精度に制御して作製することが可能である。一方、樹脂を被覆した光ファイバ心線の外径の寸法を高精度に制御して作製することは困難である。そのため、従来の光ファイバ接続器では光ファイバ心線の被覆を除去してガラスの外径を利用して光ファイバのコア同士を高精度に整列させている。しかしながら、被覆を除去してガラスを露出させた状態で光ファイバ接続の工程を実施するとき、光ファイバで使用するガラスは透明部材で視認性が良くないため、光ファイバ接続の工程で接続部品や工具に接触させて光ファイバを破損させる可能性がある。
【0009】
多数の光ファイバを装置で接続するとき、光ファイバ接続器を高密度に設置した状態で、光ファイバを簡便に接続することが求められる。また、高密度に設置した光ファイバ接続器に多数本の光ファイバが輻輳した状態で配線されているとき、所望の光ファイバだけを光ファイバ接続器から抜き取ることができれば光ファイバを使用する装置の維持管理作業が容易となる。しかしながら、従来の光ファイバ接続器では、光ファイバ接続器を高密度に設置した状態で、光ファイバを簡便に接続し、また所望の光ファイバだけを抜き取ることができなかった。メカニカルスプライスは、専用の組立工具で簡便に光ファイバを接続できるが、光ファイバの軸に対して直交する方向に楔を挿入する必要があるため、メカニカルスプライスを高密度に設置した状態では組立工具を使用することができないため、そのままでは光ファイバの接続ができず、また所望の光ファイバを抜き取ることもできない。光コネクタは高密度に設置した状態で光コネクタの着脱操作は可能であるが、光コネクタの作製は接着剤の使用が必要であり、また端面の研磨処理も必要であるため、メカニカルスプライスほど簡便に光ファイバを接続できない。光コネクタは、光ファイバを接着剤で固定するため、接続後に光ファイバだけを抜き取ることはできない。
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、被覆を除去することなく、高精度に光ファイバ同士を整列させ、さらに高密度に光ファイバ接続器を設置した状態で光ファイバの接続および所望の光ファイバの抜き取りを簡便に実施できる光ファイバ接続器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を達成するために、本発明の光ファイバ接続器は、被覆を除去することなく光ファイバを把持するプラグと、光ファイバ同士を対向整列させる光ファイバ整列部を有するアダプタとを備える光ファイバ接続器であって、上記プラグは、溝部と、蓋部と、上記蓋部を上記溝部へ押さえつける光ファイバを把持するためのクランパとから構成される光ファイバ把持部とを備え、上記溝部と上記蓋部のそれぞれは、上記光ファイバの被覆を貫通して光ファイバのガラス部と接触する固定刃を上記光ファイバと同軸方向に備え、上記クランパは、上記蓋部を上記溝部へ押さえつける把持部と、アダプタの係止片とプラグの係止穴の嵌合を解除する延伸部とから構成されることを特徴とする。
【0012】
また、上記プラグは、光ファイバの軸方向と直交する刃を備え、上記光ファイバ整列部は、上記プラグの刃により被覆の一部が剥ぎ取られて露出した光ファイバのガラス部が接触する基板部と、上記光ファイバ心線の被覆を上記基板部へ押し付ける蓋部とから構成され、上記プラグと上記アダプタを嵌合したとき、上記プラグの先端部が上記光ファイバ整列部の上記蓋部を上記基板部へ押し付けるものとしてもよい。
【0013】
また、上記光ファイバ整列部は、屈折率整合剤を備え、光ファイバ同士を接続するものとしてもよい。
【0014】
また、上記光ファイバ整列部は、内径が125μmから126μmである細径穴を有し、上記光ファイバは、端面をテーパ加工した状態で上記プラグに把持され、上記プラグは、上記光ファイバ整列部と光ファイバ把持部との間に光ファイバの撓みを許容する空間を備えるものとしてもよい。
【0015】
また、上記光ファイバは、上記撓みを許容する空間で撓んで発生する光ファイバ自身の弾性復元力によりPC接続されるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
光ファイバ心線の被覆が付いた状態のままで扱うため、従来必要であった光ファイバ心線の被覆を除去する工程が不要になる。また、被覆を着色させた光ファイバ心線を使用することで、光ファイバの視認性を向上させることができるため、光ファイバ接続器の組立作業における光ファイバの取り扱いが容易になり、光ファイバ接続器の組立作業中に光ファイバを破損させることがない。
【0017】
従来のメカニカルスプライスにおける光ファイバの軸に直交する方向に楔を挿入する作業を必要とすることなく、クランパのみを移動させるだけの操作で光ファイバの抜き取りが可能であるため、アダプタとプラグを接続した状態のままで所望の光ファイバだけを抜き取ることが可能になる。プラグ内で光ファイバ心線の被覆の一部を剥ぎ取ることにより、プラグ内に光ファイバ心線の状態で挿入しても、ガラス部を利用して光ファイバ心線を高精度に整列させることが可能になる。
【0018】
端面をテーパ加工した光ファイバ心線を使用することにより、従来の光コネクタで必要であった光ファイバ端面の研磨処理が不要であり、接着剤を用いることなく光ファイバを把持できるため、従来の光コネクタと比較して簡便に光ファイバをPC接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグを示す断面図であって、光ファイバを挿入する前の状態を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグを示す断面図であって、光ファイバ心線を挿入した後の状態を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグを示す断面図であって、クランパを蓋部の上へ移動させた状態を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグを示す断面図であって、光ファイバ把持部で光ファイバ心線を把持した状態を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のアダプタを示す断面図であって、プラグとアダプタを接続する前の状態を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグとアダプタを接続した状態を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器の光ファイバ整列部の断面図であって、光ファイバ心線を把持した状態を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグとアダプタを接続した状態を示す断面図であって、クランパをアダプタ側に移動させた状態を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグとアダプタを接続した状態を示す断面図であって、クランパをアダプタ側にさらに移動させ、プラグとアダプタの接続を解除した状態を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器の光ファイバ端面をテーパ加工した状態を示す断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のプラグを示す断面図であって、光ファイバを挿入する前の状態を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のプラグを示す断面図であって、光ファイバ心線を挿入した後の状態を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のプラグを示す断面図であって、クランパを蓋部の上へ移動させた状態を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のアダプタを示す断面図であって、プラグとアダプタを接続する前の状態を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のプラグとアダプタを接続した状態を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器の光ファイバ整列器に光ファイバ心線を挿入する状態を示す図である。
【図17】本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のプラグとアダプタを接続した状態を示す断面図であって、クランパをアダプタ側に移動させた状態を示す図である。
【図18】本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のプラグとアダプタを接続した状態を示す断面図であって、クランパをアダプタ側にさらに移動させ、プラグとアダプタの接続を解除した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明の第1の実施形態を図1乃至図9を参照して説明する。
本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ接続器は、プラグ100と、アダプタ500とから構成される。光ファイバは、ガラス部109の外径が125μmであり、ガラス部109を覆った被覆108の外径が250μm程度である光ファイバ心線107を使用する。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ100を示す断面図であって、光ファイバを挿入する前の状態を示す図である。
図1において、光ファイバ接続器のプラグ100は、溝部101と、蓋部102と、クランパ103と、係止穴104と、被覆剥ぎ取り刃105と、光ファイバ軸方向に並列した固定刃106とを備える。プラグ100は、光ファイバ107を把持する光ファイバ把持部を備えている。光ファイバ把持部は、溝部101と、蓋部102と、蓋部102を溝部101へ押さえつけて光ファイバを把持するクランパ103とから構成される。
【0022】
図2は、本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ100を示す断面図であって、光ファイバ心線107を挿入した後の状態を示す図である。
図2において、光ファイバ心線107は、プラグ100の後端部より溝部101と蓋部102で構成した隙間へ挿入される。光ファイバ心線107をプラグ100へ挿入するとき、クランパ103は、プラグ100の先端側へ移動させて、クランパ103が蓋部102を押し付けない状態にしている。プラグ100は、光ファイバ107の軸方向と直交した状態で被覆剥ぎ取り刃105を備えており、光ファイバ把持部を通過させた光ファイバ心線107が被覆剥ぎ取り刃105と接触することにより、光ファイバ心線107の被覆の一部が剥ぎ取られる。被覆を剥ぎ取った後で被覆剥ぎ取り刃105をプラグ100から抜き取る。抜取った被覆剥ぎ取り刃105は他のプラグを組み立てるときに再利用する。
【0023】
図3は、本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ100を示す断面図であって、クランパ103を蓋部102の上へ移動させた状態を示す図である。
図3では、光ファイバ107の先端とプラグ100の先端の位置を一致させた状態で、クランパ103を蓋部102の上へ移動させて光ファイバ心線107を把持した状態を示している。
【0024】
図4は、本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ100を示す断面図であって、光ファイバ把持部で光ファイバ心線107を把持した状態を示すである。
図4において、溝部101と蓋部102とは、光ファイバ107の軸方向に並列した固定刃106を備えており、被覆108を貫通した固定刃106が光ファイバ107のガラス部109と直接接触して光ファイバ107を把持している。樹脂である被覆108の上から光ファイバ心線107を把持する場合と比べて、ガラス部109を直接固定することにより光ファイバ心線107の把持力を向上させることができる。
【0025】
図5は、本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のアダプタ500を示す断面図であって、プラグ100とアダプタ500を接続する前の状態を示す図である。
図5において、アダプタ500は、接続する光ファイバ107同士を整列させる光ファイバ整列部501と、係止片505とを備えている。光ファイバ整列部501は、基板部502と蓋部503と、屈折率整合剤504とから構成される。
【0026】
図6は、本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ100とアダプタ500を接続した状態を示す図である。
図6において、プラグ100で被覆108の一部が剥ぎ取られた光ファイバ心線107が光ファイバ整列部501へ挿入されている。光ファイバ整列部501の蓋部503がプラグ100により基板部502側へ押し付けられる。また、クランパ103は、クランパの延伸部110と、クランパの光ファイバ把持部111とを備え、クランパの光ファイバ把持部111により、光ファイバ心線107を把持している。
【0027】
図7は、本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器の光ファイバ整列部501の断面図であって、光ファイバ心線107を把持した状態を示す図である。
図7において、被覆108が剥ぎ取られ露出したガラス部109が基板部502と接触して基板部502側へ光ファイバ心線107の被覆108を押し付けている。完全に被覆108を装着した状態の光ファイバ心線107は被覆108の肉厚が一定でなく、被覆108の外径に対してガラス部109の位置も偏心しているため、被覆108の上から押さえつけるだけでは光ファイバ107のコア同士を高精度に整列させることができない。本発明では、被覆108の一部を剥ぎ取ることにより露出したガラス部109を利用して、突き合わせる光ファイバ107のコア同士を高精度に整列している。光ファイバ整列部501の中心には屈折率整合剤504があり、この屈折率整合剤504が突き合わせた光ファイバ107間でのフレネル反射を抑制する。プラグ100とアダプタ500は、プラグ100の係止穴104とアダプタ500の係止片505が嵌合することによりプラグ100とアダプタ500の接続を維持している。
【0028】
図8は、本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ100とアダプタ500を接続した状態を示す断面図であって、クランパ103をアダプタ500側に移動させた状態を示す図である。
図8において、蓋部102を押し付けているクランパ103をアダプタ500側へ移動させることにより光ファイバ心線107の把持を解除することができるため、プラグ100とアダプタ500を接続した状態のまま、光ファイバ107だけを抜き取ることができる。
【0029】
図9は、本発明の第1の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ100とアダプタ500を接続した状態を示す断面図であって、クランパ103をアダプタ500側にさらに移動させ、プラグ100とアダプタ500の接続を解除した状態を示す図である。
図9において、さらにクランパ103をアダプタ500側へ移動させることにより、クランパ103の延伸部110がプラグ100の係止穴104とアダプタ500の係止片505の嵌合を解除して、プラグ100とアダプタ500の接続を解除することができる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態について図10乃至図18を参照して説明する。
本発明の第2の実施形態に係る光ファイバ接続器は、プラグ1100と、アダプタ1400とから構成される。光ファイバは、ガラス部1001の外径が125μmであり、ガラス部1001を覆った被覆1002の外径の250μm程度である光ファイバ心線1000を使用する。被覆1002を除去せずに光ファイバ心線1000を切断して、光ファイバ端面をテーパ加工する。テーパ加工は、光ファイバを研磨シートなどに撓ませて押し付け、円軌道を描かせることにより実現できる。光ファイバをPC接続するために従来の光コネクタでは光ファイバ端面を研磨していたが、非特許文献1に示すように劈開した光ファイバ端面をテーパ加工することで研磨処理をすることなく光ファイバ端面をPC接続することができる。
【0031】
図10は、本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器の光ファイバ端面をテーパ加工した状態を示す断面図である。
図10に示すように、被覆1002を除去せずにテーパ加工を実施したとき、研磨シートと接触した部分は被覆1002とガラス1001が削られた状態となる。
【0032】
図11は、本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ1100を示す断面図であって、光ファイバ1000を挿入する前の状態を示す図である。
図11において、プラグ1100は、溝部1101と、蓋部1102と、クランパ1103と、係止穴1104と、光ファイバ撓み空間1105と、並列した固定刃1106とを備える。また、プラグ1100は、光ファイバ1000を把持する光ファイバ把持部を備えている。光ファイバ把持部は、溝部1101と、蓋部1102と、蓋部1102を溝部1101へ押さえつけて光ファイバ1000を把持するクランパ1103で構成され、図4に示した光ファイバ把持部と同じ構造で光ファイバ心線1000を把持する。
【0033】
図12は、本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ1100を示す断面図であって、光ファイバ心線1000を挿入した後の状態を示す図である。
図12において、光ファイバ心線1000は、プラグ1100の後端部より溝部1101と蓋部1102とで構成した隙間へ挿入される。光ファイバ心線1000をプラグ1100へ挿入するときは、クランパ1103はプラグ1100の先端側へ移動させて、クランパ1103が蓋部1102を押し付けない状態としている。
【0034】
図13は、本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ1100を示す断面図であって、クランパ1103を蓋部1102の上へ移動させた状態を示す図である。
図13において、挿入された光ファイバ心線1000の先端がプラグ1100先端面から100μm程度突き出した状態で、クランパ1103を蓋部1102の上へ移動させて、蓋部1102を溝部1101へ押し付けて光ファイバ心線1000を把持する。
【0035】
図14は、本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のアダプタ1400を示す断面図であって、プラグ1100とアダプタ1400を接続する前の状態を示す図である。
図14において、アダプタ1400は、接続する光ファイバ1000同士を整列させる光ファイバ整列部1401と、係止片1402とを備えている。
【0036】
図15は、本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ1100とアダプタ1400を接続した状態を示す図である。
図15において、光ファイバ心線1000の先端部は図10に示した状態で光ファイバ整列部1401へ挿入される。光ファイバ整列部1401は125μmから126μmの範囲の内径を有する穴であり、光ファイバのガラス部の外径よりわずかに大きくしている。
【0037】
図16は、本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器の光ファイバ整列器1401に光ファイバ心線1000を挿入する状態を示す図である。
図16において、光ファイバ心線1000が光ファイバ整列部1401の細径穴へ挿入される。テーパ加工した光ファイバ心線1000が光ファイバ整列部1401に挿入されるとき、被覆1002が細径穴1403の端部で剥ぎ取られて光ファイバ1000のガラス部1001のみが穴の中へ挿入される。被覆1002が付いた状態のままテーパ加工することにより光ファイバ先端部近くの被覆1002がガラス1001から剥がれた状態となるため、光ファイバ107を光ファイバ整列部1401の穴1403へ挿入するだけで被覆1002を除去することが可能になる。光ファイバ心線1000の状態でプラグ1100に把持してアダプタ1400へ挿入しても、光ファイバ整列部1401の細径穴1403では光ファイバ1000のガラス部109の外径を利用して光ファイバ1000のコア同士を高精度に整列することができる構造となっている。テーパ加工された光ファイバ1000の先端部の形状が、テーパ角度で30度から60度で、端面直径で30μmから50μmである光ファイバ心線1000を使用する。テーパ加工されていない光ファイバ107のガラス部109の外径を細径穴1403内へ確実に挿入して整列させるために光ファイバ整列部1401の長さは0.5mmより長くする。
【0038】
図15に示したように、プラグ1100とアダプタ1400を接続したとき、光ファイバ心線1000の先端がプラグ1100先端面より突き出した状態で光ファイバ心線1000をプラグ1100に把持しているため、アダプタ1400内で光ファイバ1000同士を突き合わせたとき、光ファイバ1000は撓んだ状態となる。撓みにより発生する押圧力により突き合わせた光ファイバ端面同士をPC接続している。撓みによる押圧力は撓み空間の長さに反比例の関係にある。例えば、撓み空間の長さを8mmとしたとき、発生する押圧力は0.5N程度となる。プラグ1100とアダプタ1400はプラグ1100の係止穴1104とアダプタ1400の係止片1402が嵌合することによりプラグ1100とアダプタ1400の接続を維持している。
【0039】
図17は、本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ1100とアダプタ1400を接続した状態を示す断面図であって、クランパをアダプタ側に移動させた状態を示す図である。
図17において、蓋部1102を押し付けているクランパ1103をアダプタ1400側へ移動させることにより光ファイバ心線1000の把持を解除することができるため、プラグ1100とアダプタ1400を接続した状態のまま、光ファイバ1000だけを抜き取ることができる。
【0040】
図18は、本発明の第2の実施形態による光ファイバ接続器のプラグ1100とアダプタ1400を接続した状態を示す断面図であって、クランパ1103をアダプタ1400側にさらに移動させ、プラグ1100とアダプタ1400の接続を解除した状態を示す図である。
図18において、さらにクランパをアダプタ側へ移動させることにより、クランパ1103の延伸部がプラグ1100の係止穴1104とアダプタ1400の係止片1402の嵌合を解除して、プラグ1100とアダプタ1400の接続を解除することができる。
【0041】
以上のように、本発明によれば、光ファイバ心線1000を被覆1002が付いた状態のままで扱うため、従来必要であった光ファイバ心線1000の被覆1002を除去する工程が不要になる。また、被覆108を着色させた光ファイバ心線1000を使用することにより、光ファイバ1000の視認性を向上させることができるため、光ファイバ接続器の組立作業における光ファイバ1000の取り扱いが容易になり、光ファイバ接続器の組立作業中に光ファイバ1000を破損させることがない。
【0042】
従来のメカニカルスプライスにおける光ファイバ1000の軸に直交する方向に楔を挿入する作業を必要とすることなく、クランパのみを移動させるだけの操作により光ファイバ1000の抜き取りが可能であるため、アダプタとプラグを接続した状態のままで所望の光ファイバだけを抜き取ることが可能になる。プラグ内で光ファイバ心線1000の被覆1002の一部を剥ぎ取ることで、プラグ内に光ファイバ心線107の状態で挿入しても、ガラス部1001を利用して光ファイバ心線1000を高精度に整列させることが可能になる。
【0043】
端面をテーパ加工した光ファイバ心線1000を使用することにより、従来の光コネクタで必要であった光ファイバ端面の研磨処理が不要であり、接着剤を使用することなく光ファイバ1000を把持できるため、従来の光コネクタと比較して簡便に光ファイバ1000をPC接続することができる。
【符号の説明】
【0044】
100、1100 プラグ
101、1101 溝部
102、1102 蓋部
103、1103 クランパ
104、1104 係止穴
105 被覆剥ぎ取り刃
106、1106 固定刃
107、1000 光ファイバ心線
108、1002 被覆
109、1001 ガラス部
110 クランパの延伸部
111 クランパの光ファイバ把持部
500、1400 アダプタ
501、1401 光ファイバ整列器
502 基板部
503 蓋部
504 屈折率整合剤
505 係止片
1105 光ファイバ撓み空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆を除去することなく光ファイバを把持するプラグと、
光ファイバ同士を対向整列させる光ファイバ整列部を有するアダプタとを備える光ファイバ接続器であって、
前記プラグは、溝部と、蓋部と、前記蓋部を前記溝部へ押さえつける光ファイバを把持するためのクランパとから構成される光ファイバ把持部とを備え、
前記溝部と前記蓋部のそれぞれは、前記光ファイバの被覆を貫通して光ファイバのガラス部と接触する固定刃を前記光ファイバと同軸方向に備え、
前記クランパは、前記蓋部を前記溝部へ押さえつける把持部と、アダプタの係止片とプラグの係止穴の嵌合を解除する延伸部とから構成されることを特徴とする光ファイバ接続器。
【請求項2】
前記プラグは、光ファイバの軸方向と直交する刃を備え、
前記光ファイバ整列部は、前記プラグの刃により被覆の一部が剥ぎ取られて露出した光ファイバのガラス部が接触する基板部と、前記光ファイバ心線の被覆を前記基板部へ押し付ける蓋部とから構成され、前記プラグと前記アダプタを嵌合したとき、前記プラグの先端部が前記光ファイバ整列部の前記蓋部を前記基板部へ押し付けることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ接続器。
【請求項3】
前記光ファイバ整列部は、屈折率整合剤を備え、光ファイバ同士を接続することを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ接続器。
【請求項4】
前記光ファイバ整列部は、内径が125μmから126μmである細径穴を有し、
前記光ファイバは、端面をテーパ加工した状態で前記プラグに把持され、
前記プラグは、前記光ファイバ整列部と光ファイバ把持部との間に光ファイバの撓みを許容する空間を備えることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ接続器。
【請求項5】
前記光ファイバは、前記撓みを許容する空間で撓んで発生する光ファイバ自身の弾性復元力によりPC接続されることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバ接続器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−286793(P2010−286793A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142712(P2009−142712)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】