説明

光ファイバ用ソケット

【課題】光ファイバ用ソケットにおいて、光ファイバと光電変換素子の光軸合わせ作業を簡単化し、しかも光軸合わせ精度を向上し、フェルールの抜け防止効果を向上する。
【解決手段】ソケット1は、同時成形された回路基板31、スリーブブロック受け部材32及びフェルール固定用部材33と、スリーブブロック4とを備える。スリーブブロック4の嵌合突起42をスリーブブロック受け部材32の嵌合穴32bに嵌合することにより、光ファイバ10と光電変換素子2の光軸は一致する。フェルール固定用部材33はフェルール11をスリーブブロック4に固定する。よって、嵌合と挿入だけで光軸合わせができる。また、成形技術による最高成形精度は寸法誤差が1μm以下であるので、嵌合突起42及び嵌合穴32bの寸法及び位置の各精度を同程度にすることで光軸合わせ精度を向上できる。また、フェルール11の抜けを確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの先端部を保持するフェルールが嵌挿され、光ファイバと光電変換素子とを光学的に結合する光ファイバ用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光電変換素子が実装された基板と、その基板に取り付けられるスリーブとを備え、その取付け後にフェルールがスリーブに嵌挿されると、光ファイバと光電変換素子とが集光レンズを介して光結合される光ファイバ用ソケットが知られている。このソケットにおいては、基板に2つの嵌合穴が穿設されており、また、スリーブの基板との対向面に2本の嵌合軸が設けられており、それら2本の嵌合軸がそれぞれ上記2つの嵌合穴に嵌め込まれる。そして、この嵌込みにより、スリーブが基板に当接する。その当接状態で、光電変換素子がスリーブにより中空封止され、かつ光ファイバの光軸と光電変換素子の光軸とが一致するように、嵌合穴と嵌合軸とは位置決めされている。このソケットによれば、嵌合軸を嵌合穴に合わせてスリーブを基板に嵌合するだけで、光ファイバと光電変換素子の光軸を合わせることができ、光軸合わせの作業が簡単になる。また、上記嵌合により、光電変換素子を中空封止でき、その結果、光電変換素子を外部の異物から保護したり、外気の光電変換素子への影響を抑制したりすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−5872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ソケットにおいて、基板に嵌合穴を穿設する方法としては各種の方法があるが、例えば、パンチングにより基板の一部を抜いて嵌合穴を形成する場合、その加工精度は40μm程度である。従って、その加工誤差に、光電変換素子の位置決め誤差が重なると、たとえスリーブが光学部品に要求される寸法精度を有していたとしても、光ファイバと光電変換素子の光軸合わせの精度が50μm程度になってしまう。そのため、光軸合わせの精度向上が望まれていた。
【0005】
また、フェルールをスリーブに嵌挿して、摩擦力により固定するだけでは、固定力が弱く、そのため、使用中にフェルールがスリーブから抜けてしまう虞がある。そのため、フェルールの抜け防止効果を向上し、しかも、その抜け防止作業を簡単なものにしたい、との要望があった。
【0006】
本発明は、光ファイバと光電変換素子の光軸合わせ作業を簡単化でき、しかも光軸合わせ精度を向上でき、フェルールの抜け防止効果を向上でき、その抜け防止作業を簡単なものにできる光ファイバ用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の光ファイバ用ソケットは、光電変換素子と、前記光電変換素子が実装された回路基板と、前記回路基板と同時成形され、複数の位置決め用の嵌合穴が形成された樹脂製のスリーブブロック受け部材とを有する回路ブロックと、前記スリーブブロック受け部材と対向する面に設けられ、前記複数の嵌合穴にそれぞれ嵌合される複数の位置決め用の嵌合突起と、光ファイバの先端部を保持するフェルールが嵌挿されるスリーブと、前記スリーブに前記フェルールが嵌挿された状態で前記光ファイバと前記光電変換素子とを光学的に結合させる集光機能を有したレンズとが一体的に形成されたスリーブブロックと、を備え、前記複数の嵌合突起がそれぞれ前記複数の嵌合穴に嵌合された状態で、前記光電変換素子が前記スリーブブロックにより中空封止され、かつ前記光ファイバの光軸と該光電変換素子の光軸とが一致するように、各嵌合突起及び各嵌合穴の位置決めがなされており、前記回路ブロックは、前記回路基板及び前記スリーブブロック受け部材と同時成形されたフェルール固定用部材をさらに有し、前記フェルール固定用部材は、前記スリーブに前記フェルールが嵌挿された状態で、該フェルールの抜け方向への移動を規制することにより、該フェルールを前記スリーブブロックに固定するものである。
【0008】
この発明において、前記フェルール固定用部材は、前記スリーブブロック受け部材から前記スリーブに沿って延びた折曲げ可能な金属片により構成されており、前記フェルールが該スリーブに嵌挿された状態で、該金属片の先端部が折り曲げられることにより該フェルールに当接して該フェルールの抜け方向の移動を規制してもよい。
【0009】
この発明において、前記フェルール固定用部材は、前記スリーブブロック受け部材から前記スリーブに沿って延びた支持部と、前記支持部の先端部に支持され、前記スリーブに向かって突出し、前記フェルールが前記スリーブに嵌挿された状態で該フェルールに当接して該フェルールの抜け方向の移動を規制する当接部と、を有した可撓性部材により構成され、前記当接部は、その先端部がテーパ形状に形成されており、前記フェルールが前記スリーブに挿抜されるとき、前記当接部の先端部の上面又は下面が該フェルールに当接して、前記支持部が撓み、前記フェルールが前記スリーブに嵌挿された状態で、前記当接部の先端部の下面が該フェルールの端縁に当接して前記支持部が撓むことにより、該当接部が該フェルールを押圧してもよい。
【0010】
この発明において、前記フェルール固定用部材は、前記フェルールが前記スリーブに挿入されて回転することにより、該フェルールに設けられた鍔部が下に潜り込み、該鍔部と係合される係合部を有し、前記係合部は、その下面に起伏部を有し、前記起伏部は、前記フェルールが回転することにより前記鍔部を該起伏部の稜線に沿って摺動させ、該フェルールをその挿入方向に押圧してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スリーブブロックの嵌合突起をスリーブブロック受け部材の嵌合穴に嵌合させ、スリーブブロックにフェルールを嵌合するだけで、フェルール内の光ファイバと回路基板上の光電変換素子との光軸合わせを行うことができる。従って、光軸合わせの作業が簡単になる。
また、スリーブブロック受け部材の嵌合穴は、当該部材と回路基板との同時成形時に形成することができ、成形技術で実現可能な最高成形精度は、寸法誤差が1μm以下の精度であることから、嵌合穴の寸法及び位置の各精度を同程度とすることができる。従って、従来のように回路基板をパンチング加工して嵌合穴を形成する場合と比べ、嵌合穴の寸法及び位置精度を高くすることができ、それにより、嵌合穴と嵌合突起との嵌合精度を向上することができ、結果として、光軸合わせの精度向上を図ることができる。
また、フェルールは、スリーブに嵌挿された状態で、フェルール固定用部材によりスリーブブロックに固定されるので、スリーブへの嵌合による摩擦力だけでフェルールを固定する場合と比べ、フェルールの抜け防止効果を向上できる。しかも、フェルール固定用部材は、回路ブロックに同時成形されていることから、フェルール固定用部材を装着する作業はなくて済み、作業が簡単なものになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ用ソケットの分解斜視図。
【図2】(a)は上記ソケットのフェルール嵌挿前の断面図、(b)はそのフェルール挿入後の断面図。
【図3】上記ソケットのフェルール嵌挿後の斜視図。
【図4】上記ソケットのフェルール固定用部材の折曲げ工程中の斜視図。
【図5】上記ソケットの使用状態を示す斜視図。
【図6】(a)本発明の第2の実施形態に係る光ファイバ用ソケットの斜視図、(b)はその正面図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る光ファイバ用ソケットのフェルール嵌挿前の斜視図。
【図8】上記ソケットのフェルール嵌挿後の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ用ソケット(以下、単にソケットという)の構成を示す。そのソケット1は、光電変換素子2と、光電変換素子2が実装された回路ブロック3と、回路ブロック3に取り付けられるスリーブブロック4とを備える。スリーブブロック4には、光ファイバ10の先端部を保持するフェルール11が嵌挿され、それにより、光ファイバ10と光電変換素子2とが光学的に結合される。
【0014】
光電変換素子2は、発光素子と受光素子のいずれであっても構わず、回路基板31にベアチップ実装されている。回路ブロック3は、光電変換素子2が実装された回路基板31と、樹脂製のスリーブブロック受け部材(以下、受け部材という)32と、金属製のフェルール固定用部材(以下、固定用部材という)33とを有する。回路基板31、受け部材32及び固定用部材33は、例えばインサート成形により同時成形されている。固定用部材33は、フェルール11がスリーブブロック4に嵌挿された状態でフェルール11をスリーブブロック4に固定するためのものである。
【0015】
回路基板31には、位置決め用の嵌合穴32aを例えば2つ樹脂成形するために2つの貫通孔31aが予め設けられている。各貫通孔31aには、受け部材32を構成する樹脂材が入り込んでおり、各貫通孔31aの中に、嵌合穴32aが1つずつ樹脂成形されている。嵌合穴32aは、上記の数に限定されず、複数であればよい。回路基板31において、光電変換素子2が実装された面(以下、素子実装面という)31bには、回路基板31と外部装置との間で信号を授受するための信号伝送用端子5と、制御IC6とがさらに実装されている。制御IC6は、光電変換素子2が発光素子である場合、光電変換素子2の発光制御を行い、光電変換素子2が受光素子である場合、光電変換素子2により受信され光電変換された信号の増幅等の信号処理を実行する。
【0016】
受け部材32は、回路基板31を全体的に覆うように形成されているが、回路基板31のうち、少なくとも光電変換素子2の実装箇所と、その周囲の素子実装面31bと、貫通孔31aとを含む領域を露出させるように形成されている。以下、その露出した領域を露出領域という。嵌合穴32aは、円柱状の貫通孔であるが、一端が閉塞された穴であってもよい。光電変換素子2の実装位置は、2つの嵌合穴32aの各々の中心を結ぶ線分の中点である。嵌合穴32aの開口周縁の表面と素子実装面31bとの間に、誤差により高低差があったとしても、それは1mm以内であることが好ましく、0.5mm以内であることが特に望ましい。
【0017】
受け部材32は、上記の露出領域を囲むように形成されており、スリーブブロック4が挿入される枠32bを有する。枠32bは、スリーブブロック4が挿入された状態でスリーブブロック4の外周を囲むように、その穴がスリーブブロック4の外周に沿う形状とされている。スリーブブロック4が円筒状である場合、枠32bの穴は円状である。
【0018】
受け部材32の基材は、例えばアクリル等の熱可塑性樹脂又はエポキシ等の熱硬化性樹脂であり、強度を高めるため、例えばガラス繊維を含むことが望ましい。このような材料により作製される光学部品は、非常に高精度に成形することができ、最も高精度なものは、いわゆるサブミクロンの精度、すなわち寸法誤差が1μm以下の精度であり、受け部材32はその成形精度で形成されている。
【0019】
固定用部材33は、受け部材32の対向する側面に根元部33aがそれぞれ埋め込まれた折曲げ可能な一対の金属片により構成される。根元部33aは、受け部材32への固定力を増すための足部33bを有する。足部33bは、受け部材32の内方に向けて、枠32bの穴を避けるように延出している。
【0020】
スリーブブロック4は、スリーブ41と、後述のレンズ(図1では不図示)と、位置決め用の嵌合突起42とが一体的に形成されている。スリーブ41には、使用時に、フェルール11が嵌挿される。嵌合突起42は、嵌合穴32aに嵌合される位置決め用のピンで構成される。
【0021】
嵌合突起42は、嵌合穴32aと同数であり、これらの嵌合突起42は、スリーブ41において受け部材32と対向する面41aに設けられている。嵌合突起42は、嵌合穴32aに嵌合可能な形状であって、例えば円柱状であり、その先端は、嵌合穴32aに挿入し易いように丸みを帯びていることが望ましい。2つの嵌合突起42は、2つの嵌合穴32aにそれぞれ嵌合される。嵌合突起42は、その長さが枠32bの厚みよりも長い。従って、スリーブブロック4を回路ブロック3に取り付けるとき、最初に嵌合突起42を嵌合穴32aに挿入でき、次いでスリーブブロック4を枠32bに挿入できる。
【0022】
スリーブブロック4は、例えば熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を材料とする光学材料により形成されており、その光学材料は、特定波長、例えば850nmのレーザ光を透過させるものである。スリーブブロック4の成形精度は、受け部材32と同程度とする。
【0023】
図2(a)(b)は、ソケット1の内部構造を示す。回路基板31は、両面に配線パターン31cが形成された基板であり、その基板は、配線パターン31cを表面に形成しても配線パターンが剥離し難い材料から成る。配線パターン31cは、光電変換素子2への信号送信又は光電変換素子2からの信号受信のための信号ライン等を含む。素子実装面31bの配線パターン31cは、信号を伝送する信号ラインとし、素子実装面31bの裏面31dの配線パターン31cはグランドラインとする。
【0024】
スリーブブロック4のレンズ43は、スリーブ41の回路ブロック3側の開口端よりも内方に設けられており、スリーブ41にフェルール11が嵌挿されるとき、その嵌挿状態で光ファイバ10と光電変換素子2とを光学的に結合させる集光機能を有する。
【0025】
嵌合突起42が嵌合穴32aに嵌合された状態で、スリーブブロック4の面41aは、回路ブロック3の素子実装面31b及び嵌合穴32aの開口周縁の表面に当接する。その当接によって、光電変換素子2及び制御IC6がレンズ43とスリーブ41の内壁41bとにより中空封止されるように、各嵌合突起42及び各嵌合穴32aは、予め位置決めがなされている。
【0026】
嵌合突起42が嵌合穴32aに嵌合された状態で、スリーブ41にフェルール11が嵌挿されたとき、光ファイバ10の光軸と光電変換素子2の光軸とが一致するように、各嵌合突起42と各嵌合穴32aとは、予め位置決めがなされている。従って、スリーブ41にフェルール11が嵌挿されると、光ファイバ10と光電変換素子2との光軸合わせが行われ、それにより、パッシブアライメントが実行され、結果として、両者の光軸(図2(b)の破線で示す)が一致する。
【0027】
次に、図1及び図2を参照して、ソケット1の組立て方法を説明する。本実施形態では、測定装置で光信号のレベルをモニタしながら光ファイバと光電変換素子の光軸合わせを行うアクティブアラインメントを実行せず、各部品の寸法精度と位置決め精度だけで所定の組立て精度を確保する。
【0028】
まず、2つの嵌合穴32aの各々の開口周縁形状と位置とが測定される。この測定は、例えば、チップマウンタの撮像装置を用いて、回路ブロック3の嵌合穴32aを含む領域を撮像し、その撮像された領域の画像を基に、周知の画像特徴抽出技術を用いて各嵌合穴32aの開口周縁形状と位置とを抽出することより行われる。ここで、各部の寸法を例示する。光電変換素子2の平面寸法は□0.3(0.3mm×0.3mm)程度であり、また、2つの嵌合穴32aの間隔は4mm程度である。従って、チップマウンタの撮像装置は微小領域を撮像すればよいので、レンズの撮像倍率を高くすることにより、各嵌合穴32aの開口周縁形状及び位置の測定精度を高くすることができる。例えば、10μm程度の精度まで位置決め精度を上げることができ、本実施形態ではそのようにする。
【0029】
各嵌合穴32aの開口周縁形状及び位置の測定後、その測定された開口周縁形状及び位置を基に、画像特徴抽出技術を用いて各嵌合穴32aの中心位置が求められる。そして、それらの中心位置を基準として、光電変換素子2の位置決めがなされる。この位置決めにおいては、例えば、各嵌合穴32aの中心を結ぶ線分が求められ、その線分の中点が光電変換素子2の実装位置に決められる。その後、回路基板31におけるその決められた実装位置に光電変換素子2が実装される。
【0030】
光電変換素子2の実装後、素子実装面31bと受け部材32の露出領域とにおいて、スリーブ41の面41aが当接する部位に、接着剤が塗布される。接着剤の塗布位置は、接着剤が光電変換素子2等に付かないようにするため、上記当接部位の隅付近とされる。接着剤の塗布後、嵌合突起42が嵌合穴32aに嵌合され、スリーブ41が枠32bに挿入される。なお、スリーブブロック4及びフェルール11は、光学部品として要求されるレベルの嵌合精度を満たしているものとする。
【0031】
次に、図3乃至図5を参照して、ソケット1の使用方法を説明する。スリーブ41にフェルール11が嵌挿され(図3参照)、その状態で、固定用部材33が、受け部材からスリーブ41の軸方向に沿って延びるように根元から折り曲げられる(図4参照)。そして、固定用部材33の先端部33cは、フェルール11に向けて略直角に折り曲げられることにより、フェルール11の上面に当接する(図5参照)。そのようにして、先端部33cは、フェルール11の抜け方向の移動を規制し、フェルール11がスリーブブロック4に固定される。先端部33cを適切な位置で折り曲げることができるように、固定用部材33には、折れ線がマークされていてもよいし、折り曲げ易いように折れ線の代わりに溝が形成されていても構わない。
【0032】
上記のように構成された本実施形態のソケット1では、スリーブブロック4の嵌合突起42を受け部材32の嵌合穴32aに嵌合させ、フェルール11をスリーブブロック4に嵌合するだけで、光電変換素子2と光ファイバ10の光軸合わせを行うことができる。従って、光軸合わせ作業が簡単になる。
【0033】
また、受け部材32の嵌合穴32aは、受け部材32と回路基板31との同時成形時に形成することができ、成形技術で実現可能な最高成形精度は、寸法誤差が1μm以下の精度であることから、嵌合穴32aの寸法及び位置の各精度を同程度とすることができる。従って、従来のように回路基板をパンチング加工して嵌合穴を形成する場合と比べ、嵌合穴32aの寸法及び位置精度を高くすることができ、それにより、嵌合穴32aと嵌合突起42との嵌合精度を向上することができる。その結果、光軸合わせの精度向上を図ることができる。
【0034】
また、光電変換素子2の実装位置を決めるのに、撮像装置が用いられ、その撮像装置による撮像範囲は回路基板31全体ではなく、位置決めの基準となる各嵌合穴32aを含む微小範囲で済む。そのため、撮像装置のレンズの撮像倍率を高くすることにより、各嵌合穴32aの測定精度を高くすることができ、従って、位置決め精度は、寸法誤差が10μm程度の精度にまで上げることができる。さらに、スリーブブロック4は光学部品に要求される成形精度を有することから、嵌合突起42と嵌合穴32aとの嵌合精度を数μm程度にすることができる。従って、スリーブブロック4とフェルール11とが、光学部品として要求されるレベルの嵌合精度を有していれば、上記各種精度から、光電変換素子2と光ファイバ10を十数μm程度の精度で光結合させることができる。そのため、光軸合わせの精度をさらに向上することができる。
【0035】
また、光軸合わせにおいて、光信号の測定装置の接続及びスリーブブロックの位置の微調整が必要なアクティブアライメントと比べ、それらが不要なので、光軸合わせに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0036】
また、各嵌合穴32aが撮像され、その撮像された各嵌合穴32aの画像を基に、画像特徴抽出技術により各嵌合穴32aの中心位置が求められるので、各嵌合穴32aの開口周縁形状に係らず、高精度に各嵌合穴32aの中心位置を求めることができる。従って、その求められた各嵌合穴32aの中心位置を基準にして、光電変換素子2の位置を高精度に決めることができる。
【0037】
また、素子実装面31bと嵌合穴32aの開口周縁の表面とが同一平面に在るので、撮像装置によって撮像したそれらの平面視画像を基に、嵌合穴32a間、及び各嵌合穴32aと光電変換素子2の実装位置との間の距離を正確に測定することができる。従って、光電変換素子2の位置決め精度がさらに高まる。
【0038】
また、フェルール11は、スリーブ41に嵌挿された状態で、固定用部材33によりスリーブブロック4に固定されるので、スリーブ41への嵌合による摩擦力だけでフェルール11を固定する場合と比べ、フェルール11の抜け防止効果を向上できる。しかも、固定用部材33は、回路ブロック3に同時成形されていることから、固定用部材33が回路ブロックとは別体に設けられる場合と比べ、固定用部材33を装着する作業はなくて済み、作業が簡単なものになり、また、部品管理が容易になる。
【0039】
また、従来のソケットと比べて、フェルール11の抜け防止効果を高くするために製造工程ですべき作業は、回路ブロック3の同時成形時に固定用部材33を追加することだけで済むので、製造コストの増加を抑制することができる。
【0040】
また、光電変換素子2は、スリーブブロック4により中空封止されるので、光電変換素子2を、外部からの力及び異物から保護し、かつ外部からのガスの影響を受け難くすることができる。そのため、光電変換素子2の故障を減らし、かつその劣化を抑制することができる。従って、光電変換素子2の信頼性向上と長寿命化とを図ることができる。
【0041】
また、回路基板31の配線は、高周波信号を伝送することから、その配線については、信号の反射等を防ぐためインピーダンス整合を図ることが重要である。その点で、回路基板31は、両面配線基板であることから、配線自由度が高く、インピーダンス整合の設計自由度が高いので、インピーダンス整合を高精度に行うことができる。従って、高周波信号の反射等を防いで通信品質の向上を図ることできる。しかも、高精度なインピーダンス整合に必要とされるグランドライン等の配線は、回路基板31とは別に用意しなくて済み、従って、ソケット1の小型化を図ることができる。
【0042】
ところで、嵌合突起42の長さが枠32bの厚みよりも短い場合、スリーブブロック4を回路ブロック3に取り付ける際に、嵌合突起42を嵌合穴32aに挿入しようとしても、まずスリーブブロック4を枠32bに挿入する必要が生じる。そのため、挿入時に嵌合突起42の位置がずれてしまい、結果として、嵌合突起42を嵌合穴32aに挿入し難くなって組立てに時間が掛かったりする虞がある。
【0043】
それに対して、本実施形態では、嵌合突起42が枠32bの厚みよりも長いことから、スリーブブロック4を回路ブロック3に取り付けるとき、最初に嵌合突起42を嵌合穴32aに嵌合でき、次いでスリーブブロック4を枠32bに挿入できる。従って、スムーズな取付けが可能になり、組立て時間を短縮できる。
【0044】
(第2の実施形態)
図6(a)(b)は、本発明の第2の実施形態に係るソケットの構成を示す。同図において、上記第1の実施形態と同一の部材に、同一の符号を付す(以下、同様)。本実施形態のソケット1は、上記第1の実施形態と比べ、固定用部材33の構成が相違している。本実施形態の固定用部材33は、スリーブ41を挟んで互いに向かい合うように、受け部材32の対向する側面に対として配設された可撓性を有する金属片により構成される。この金属片は、所定形状に予め折曲げ加工されている。固定用部材33は、金属片に限定されず、可撓性部材であればよい。
【0045】
固定用部材33は、受け部材32の側面からスリーブ41の軸方向に沿って延びた支持部33dと、支持部33dの先端部に支持され、スリーブ41に向かって突出した当接部33eとを有する。当接部33eは、フェルール11がスリーブ41に嵌挿された状態で、フェルール11に当接してフェルール11の抜け方向の移動を規制する。固定用部材33の根元部は、受け部材32の側面に埋め込まれ、固定されている。
【0046】
当接部33eは、先端が尖るように、先端部の上面と下面とがテーパ形状に形成されている。この形状は、当接部33eの先端部を斜め上向きに折り曲げ、さらに、その折曲げ部位よりも先端にある部分を仰けに反らして斜め上向きに折り曲げて、先端部をくの字に折り曲げることにより実現されており、いわゆるフリクションロックを形成している。
【0047】
次に、本実施形態のソケット1における使用時の各部の動きについて説明する。フェルール11がスリーブ41に挿入されるとき、当接部33eの先端部の上面がフェルール11に当接する。そして、フェルール11は、さらに押し込まれることにより、当接部33eの先端部に沿って摺動し、各固定用部材33の当接部33eが互いに離れるように支持部33dが撓む。それにより、当接部33e間の隙間は拡がり、結果として、その隙間を手動で拡げずに、スリーブ41にフェルール11を挿入することができるようになる。
【0048】
フェルール11がスリーブ41に嵌挿された状態では、当接部33eの先端部の下面がフェルール11の上端縁に当接し、当接部33e及び支持部33dが撓んでバネとして機能する。そのバネの付勢力により、当接部33eはフェルール11を押圧する。
【0049】
フェルール11に対して抜出し方向に所定の加重が掛けられることにより、フェルール11がスリーブ41から抜き出されるとき、フェルール11は、当接部33eの先端部の下面に当接した状態で、その先端部に沿って摺動する。そして、当接部33eは、フェルール11の抜出し方向に撓む。また、各固定用部材33の当接部33eが互いに離れるように支持部33dが撓む。それにより、当接部33e間の隙間は拡がり、結果として、その隙間を手動で拡げずに、スリーブ41からフェルール11を抜き出すことができる。
【0050】
本実施形態においては、上記第1の実施形態と同様に、フェルール11の抜け防止効果を向上でき、しかも、その抜け防止作業を簡単なものにすることができる。
【0051】
ところで、上記第1の実施形態においては、フェルール11の挿入、抜出しの度に、固定用部材33を折り曲げたり、元の形状に戻したりする必要がある。それに対して、本実施形態では、フェルール11の挿抜の際、フェルール11に対して挿抜方向に所定の加重を掛ければ、固定用部材33が撓んで、フェルール11の抜き差しができる。従って、上記第1の実施形態のような作業はしなくて済み、挿抜作業が簡単になる。
【0052】
(第3の実施形態)
図7及び図8は、本発明の第3の実施形態に係るソケットの構成を示す。本実施形態のソケットは、上記第1の実施形態と比べて、固定用部材33の構成が相違する。本実施形態の固定用部材33は、スリーブ41を挟んで互いに向かい合うように、受け部材32の対向する側面に対として配設された金属片により構成される。この金属片は、所定形状に予め折曲げ加工されている。
【0053】
固定用部材33は、受け部材32の側面からスリーブ41の軸方向に沿って延びた支持部33dと、支持部33dの先端部に支持され、スリーブ41に向かって延びた係合部33fとを有する。係合部33fは、フェルール11がスリーブ41に挿入されて回転することにより、フェルール11に設けられた鍔部12が係合部33fの下に潜り込み、鍔部12と係合される。固定用部材33の根元部は、受け部材32の側面に埋め込まれ、固定されている。鍔部12は、フェルール11の上端部に、光ファイバ10を中心として互いに離れる方向に延びるように形成されている。
【0054】
一対の固定用部材33の係合部33fは、少なくともフェルール11の直径分だけ隙間を空けるように配置されている。フェルール11がスリーブ41に挿入されるときには、鍔部12が上記隙間と平行な向きにされ、鍔部12が係合部33fに当たらないようにされる。
【0055】
係合部33fは、その下面に、起伏部33gと、ストッパ33hとを有する。起伏部33gは、係合部33fの本体の先端の一部に切り込みを入れ、鍔部12の時計回りか反時計回りのいずれかの回転方向に沿うように斜め下方に折り曲げ、さらにその先端を水平に折り曲げることにより板バネとして機能するように形成されている。起伏部33gは、フェルール11が回転することにより、鍔部12を起伏部33gの稜線に沿って摺動させ、スリーブ41をその挿入方向に押圧する。ストッパ33hは、起伏部33gの下に潜り込んだ鍔部12の上記回転方向の移動を規制する突出片であり、その突出片は、係合部33fの本体の先端に設けられ、下方に折り曲げている。起伏部33gは、係合部33fの上面を凹まして、下方に山状に突出した凸部により構成されていてもよい。
【0056】
本実施形態においては、上記第1の実施形態と同様に、フェルール11の抜け防止効果を向上でき、しかも、その抜け防止作業を簡単なものにすることができる。
【0057】
ところで、上記第1の実施形態においては、フェルール11の挿入、抜出しの度に、固定用部材33を折り曲げたり、元の形状に戻したりする必要がある。それに対して、本実施形態では、フェルール11をスリーブ41に挿入して回転させるだけで、フェルール11の鍔部12を係合部33fに係合させて、フェルール11をスリーブブロック4に固定することができる。また、フェルール11を抜き出すときにも、フェルール11を回転させるだけで、鍔部12と係合部33fとの係合を解除して、フェルール11を抜き出すことができる。従って、上記第1の実施形態のような作業はしなくて済み、挿抜作業が簡単になる。
【0058】
また、フェルール11をスリーブ41に嵌挿するとき、フェルール11の回転に伴って鍔部12が起伏部33gに沿って摺動することから、フェルール11をその挿入方向に押圧する力を増すことができる。従って、さらにフェルール11の緩みを防ぎ、フェルール11の抜け防止効果の向上を図ることができる。
【0059】
また、フェルール11がスリーブ41に嵌挿された状態で、誤ってフェルール11に抜出し方向に加重が掛かったとしても、鍔部12が係合部33fに引っ掛かることから、フェルール11が抜けることを確実に防止できる。
【0060】
なお、本発明は、上記の各実施形態の構成に限定されるものでなく、使用目的に応じ、様々な変形が可能である。例えば、回路基板31は、配線パターン31cが積層された多層配線基板であってもよい。また、そのような場合に、回路基板31の裏面31dに実装された電子部品と、その電子部品が接続された配線パターン31cとを、受け部材32と回路基板31との同時成形により封止しても構わない。
【0061】
この構成によれば、裏面31dにおいて、実装された電子部品と配線との間、電子部品間、及び配線間が異物及び結露等により短絡することを防ぐことができ、回路の故障を防止することができる。
【0062】
また、嵌合穴32aの形状が四角柱状であり、これに対応して、嵌合突起42が四角柱状のピンであってもよい。このような場合の組立て工程における光電変換素子2の位置決めは、平面視で各嵌合穴32aの中心、又は各嵌合穴32aの所定の1点の頂点を基準としてなされる。頂点を用いる場合、各嵌合穴32aにおいて他方の嵌合穴32aに対向する辺が選ばれ、その選ばれた各辺につき、その辺の一端を他方の辺の他端と結ぶ対角線が求められ、求められた2本の対角線の交点が光電変換素子2の位置とされる。また、上記第2の実施形態と第3の実施形態とにおいて、固定用部材33は、金属片ではなく、受け部材32に一体的に形成された樹脂片であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 光ファイバ用ソケット
2 光電変換素子
3 回路ブロック
31 回路基板
32 スリーブブロック受け部材
32a 嵌合穴
32b 枠
33 フェルール固定用部材
33d 支持部
33e 当接部
33f 係合部
33g 起伏部
4 スリーブブロック
41 スリーブ
41a スリーブブロック受け部材と対向する面
42 嵌合突起
43 レンズ
10 光ファイバ
11 フェルール
12 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と、
前記光電変換素子が実装された回路基板と、前記回路基板と同時成形され、複数の位置決め用の嵌合穴が形成された樹脂製のスリーブブロック受け部材とを有する回路ブロックと、
前記スリーブブロック受け部材と対向する面に設けられ、前記複数の嵌合穴にそれぞれ嵌合される複数の位置決め用の嵌合突起と、光ファイバの先端部を保持するフェルールが嵌挿されるスリーブと、前記スリーブに前記フェルールが嵌挿された状態で前記光ファイバと前記光電変換素子とを光学的に結合させる集光機能を有したレンズとが一体的に形成されたスリーブブロックと、を備え、
前記複数の嵌合突起がそれぞれ前記複数の嵌合穴に嵌合された状態で、前記光電変換素子が前記スリーブブロックにより中空封止され、かつ前記光ファイバの光軸と該光電変換素子の光軸とが一致するように、各嵌合突起及び各嵌合穴の位置決めがなされており、
前記回路ブロックは、前記回路基板及び前記スリーブブロック受け部材と同時成形されたフェルール固定用部材をさらに有し、
前記フェルール固定用部材は、前記スリーブに前記フェルールが嵌挿された状態で、該フェルールの抜け方向への移動を規制することにより、該フェルールを前記スリーブブロックに固定することを特徴とする光ファイバ用ソケット。
【請求項2】
前記フェルール固定用部材は、前記スリーブブロック受け部材から前記スリーブに沿って延びた折曲げ可能な金属片により構成されており、前記フェルールが該スリーブに嵌挿された状態で、該金属片の先端部が折り曲げられることにより該フェルールに当接して該フェルールの抜け方向の移動を規制することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項3】
前記フェルール固定用部材は、前記スリーブブロック受け部材から前記スリーブに沿って延びた支持部と、前記支持部の先端部に支持され、前記スリーブに向かって突出し、前記フェルールが前記スリーブに嵌挿された状態で該フェルールに当接して該フェルールの抜け方向の移動を規制する当接部と、を有した可撓性部材により構成され、
前記当接部は、その先端部がテーパ形状に形成されており、
前記フェルールが前記スリーブに挿抜されるとき、前記当接部の先端部の上面又は下面が該フェルールに当接して、前記支持部が撓み、
前記フェルールが前記スリーブに嵌挿された状態で、前記当接部の先端部の下面が該フェルールの端縁に当接して前記支持部が撓むことにより、該当接部が該フェルールを押圧することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項4】
前記フェルール固定用部材は、
前記フェルールが前記スリーブに挿入されて回転することにより、該フェルールに設けられた鍔部が下に潜り込み、該鍔部と係合される係合部を有し、
前記係合部は、その下面に起伏部を有し、
前記起伏部は、前記フェルールが回転することにより前記鍔部を該起伏部の稜線に沿って摺動させ、該フェルールをその挿入方向に押圧することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−242662(P2012−242662A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113662(P2011−113662)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】