説明

光体毛成長調節装置

【課題】皮膚に非接触で使用できるとともに、眼に安全な光体毛成長調節装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、体毛の成長を調節する光を人体の光照射対象部3に照射する光照射部1と、光照射対象部3に対して弱い刺激を与える弱刺激部2と、を備え、弱刺激部2が、眼に弱い刺激を与えて、眼を閉じさせ、当該弱い刺激により眼が閉じられている間に、光照射部1が体毛の成長を調節する光を照射することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射によって体毛の成長を調節する光体毛成長調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において光照射による脱毛が知られている。これは高出力レーザや高出力のキセノンフラッシュランプを使い、光熱反応により体毛および毛包部の細胞を破壊するネクローシスにより脱毛を行うものである。しかし、当該方法により、脱毛を行う場合に、誤って、眼に光を照射してしまう可能性がある。眼は、特に、光に対して敏感な感覚器官であるため、重大な事故を招く恐れがある。
【0003】
この問題を解決するために、例えば、特許文献1に記載されている光体毛成長調節装置は、皮膚の接触を検出するセンサを備え、皮膚に接触しているときのみ光を照射するので、眼に光が照射されることを防ぐことができる。
【特許文献1】特開2002−177405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の光体毛成長調節装置は、使用時には、常に皮膚に接触させる必要があり、利便性に欠けていた。さらに、皮膚への接触により、使用者が違和感を覚えてしまうという問題もある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みて発明したものであって、皮膚に非接触で使用できるとともに、眼に安全な光体毛成長調節装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の光体毛成長調節装置は、体毛の成長を調節する光を人体の光照射対象部に照射する光照射部と、光照射対象部に対して弱い刺激を与える弱刺激部と、を備え、弱刺激部が、眼に弱い刺激を与えて、眼を閉じさせ、当該弱い刺激により眼が閉じられている間に、光照射部が体毛の成長を調節する光を照射することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の光体毛成長調節装置において、弱い刺激がガスの噴射によるものであることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2に記載の光体毛成長調節装置において、弱い刺激が光の照射によるものであることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、体毛の成長を調節する光および当該光よりも弱い光を人体の光照射対象部に照射する光照射部を備え、光照射部は、眼に弱い光を与えて、眼を閉じさせ、当該弱い光により眼が閉じられている間に、体毛の成長を調節する光を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弱刺激部が、眼に弱い刺激を与えて、眼を閉じさせ、当該弱い刺激により眼が閉じられている間に、光照射部が体毛の成長を調節する光を照射するので、体毛の成長を調節する光から眼を守ることができる。
【0011】
また、本発明によれば、光照射部は、眼に弱い光を与えて、眼を閉じさせ、当該弱い光により眼が閉じられている間に、体毛の成長を調節する光を照射するので、体毛の成長を調節する光から眼を守ることができる。また、光体毛成長調節装置を容易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。以降の説明において、同一の部材に同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。なお、以下の説明では具体例を挙げて本発明を説明する場合があるが、本発明は以下の具体例に限定されない。
(実施形態1)
図1に、実施形態1に係る光体毛成長調節装置を示す。
【0013】
光体毛成長調節装置10Aは、体毛の成長を調節する光を照射する光照射部1Aと、光照射対象部3に対して弱い刺激を与える弱刺激部2と、を基本構成とする。
【0014】
光照射部1Aは、キセノンフラッシュランプを光源とし、人体の皮膚部等をはじめとする光照射対象部3に対して体毛の成長を調節する光を照射する。体毛の成長を調節する光の波長は、皮膚の分光反射率を測定することにより設定することができる。そこで、3人の日本人をサンプルとし、光の各波長における、皮膚の分光反射率を測定した。図2に測定結果を示す。図2から、いずれのサンプルにおいても、400〜600nm付近で反射率が低下しており、この波長域の光を吸収しやすい特性をもっていることがわかる。これは皮膚に存在するメラニンの影響が大きいことによる。図3にメラニン単体の吸光率の分光特性を示す。図3から、メラニン単体は、例えば、照射光の波長が567nmの場合、照射光の39%を吸収する。
【0015】
このために上記光照射に際しては、400〜600nmという皮膚が吸収しやすい波長帯の光を使用することで、低出力の光で毛に刺激を与えることができる。なお、皮膚に有害な400nm以下の紫外線は、光照射部1Aの前にUVカットフィルターなどを設けてカットしてもよい。
【0016】
そして、キセノンフラッシュランプである光源は、照度が150万〜700万luxの光を閃光時間(ピークパワーの半値)が100〜700μsで照射を行う。照射光量は、照度と閃光時間の積で求めることができるため、150lux・s〜4900lux・sとなる。
【0017】
また、照射エネルギー(J/cm2)は、照射パワー(W)と照射時間(秒)との積であり、この照射エネルギーKがたとえば0.1J/cm2となるように照射パワー(W)と照射時間(秒)とを制御することで、光照射による副作用の発生を確実に抑えることができる。これに伴って、1回/日の照射を何日かの間隔をおいて行う場合と、1回/日の照射を5〜10日程度連続して繰返す場合とでは、後者の方がより低パワーの光源を使用することができる。
【0018】
ここにおいて、毛(体毛)は成長期から退行期、休止期というサイクルで変化する毛周期を有することが知られている。そして上記照射条件での光照射を皮膚に対して行えば、既存の医療用レーザ等で見られるような細胞形態上の変化が生じることはなく、細胞の破壊も起きない上に、毛周期における成長期に光照射を行えば、毛の成長が効果的に抑制されることを本発明者らはマウス実験で確認している。なお、毛周期における休止期に光を照射すれば、毛周期における成長期における毛の成長が早く進むことも確認している。また火傷等の副作用発生が無いことも確認している。
【0019】
成長期に細胞形態上の変化が生じないレベルの光照射を行うと、毛の成長が抑制される理由は明らかではないが、RNAレベルでの分析結果では光照射によって炎症性サイトカインの活性化が起きていることから、この炎症性サイトカインの活性化が毛の成長抑制をもたらすものと考えられる。
【0020】
なお、毛周期の変化に効果が出た500〜600nmでの分光反射率を基準とし,光照射対象の皮膚の分光反射率の変化率に応じて照射パワーを変化させるものとする。基準となる特定波長の反射率をR0、照射する皮膚の反射率をR1とし、R0の皮膚に対し炎症性サイトカインの活性を達成した光源のパワーをP0とすると、照射パワーPは、
P=Rl/R0×P0
で求めることができる。そして毛周期に影響を及ぼすエネルギーは一定値となるために、皮膚の分光反射率が高い場合は照射パワーを高くして照射時間を短くすればよい。
【0021】
なお、毛周期における成長期と退行期と休止期の各期間は腕,頭髪等、場所により異なっているために、毛の成長抑制を行いたい場所に応じて成長期にあるかどうかを見定めた上で、光照射を行う。
【0022】
弱刺激部2は、光照射部1Aが光照射対象部3に対して体毛の成長を調節する光を照射する前に、光照射対象部3に対して弱い刺激を与える。光体毛成長調節装置10Aを誤って、眼に向けてしまうと、光照射対象部3は、眼となる(図4参照)。この弱い刺激により、眼は閉じられた状態となり、眼が閉じられている間、すなわち瞬きの間に、光照射部1Aが眼に体毛の成長を調節する光を照射する。弱刺激部2は、眼を閉じさせるための弱い刺激を与え続けてもよいが、眼が閉じられるのに十分な時間だけ与えた方が、余分なエネルギーを省くことができる。また、弱刺激部2が光照射対象部3に弱い刺激を与えてから、光照射部1Aが光照射対象部3に対して体毛の成長を調節する光を照射するまでの時間は、眼に弱い刺激が与えられてから眼を閉じるまでの時間およびこの弱い刺激により眼を閉じている時間を考慮して設定される。
【0023】
弱い刺激としては、冷却効果も有するガスの噴射が好ましいが、ガスの噴射に限られず、光や、電流であってもよい。
【0024】
ガスの噴射は、例えば、弱刺激部2に公知の噴射機構を設けることにより発生させることができる。また、弱刺激部2に、例えば、ファンを設けることにより、風圧を発生させることができる。ガスの噴射は、眼を閉じてしまうが、眼に安全である必要がある。なお、皮膚は、光照射部1Aの照射する光を受けすぎると、火傷する危険性があるが、冷却効果のあるガスを用いれば、この危険性を低減することができる。
【0025】
光の場合は、弱刺激部2に、光照射部を設けることにより、発生させることができる。光の照射は、眼を閉じてしまうが、眼に安全である必要がある。なお、人は一定の光よりも、変化する光の方に反応しやすいため、眼を閉じさせる光は、例えば、パルスまたは点滅光であることが好ましい。また、視感度が高く、最も低いパワーで(例えばLEDレベル)人の眼に対して生理的反応による瞬きを起こさせる事ができる光の波長は、555nmである。
【0026】
電流の場合は、弱刺激部2に電流発生装置を設けることにより、発生させることができる。電流は、微弱であり、眼の周囲に流される。この電流は、眼を閉じてしまうが、眼に安全である必要がある。
【0027】
利便性を高め、使用者が違和感を覚えることがないように、光体毛成長調節装置10Aは、非接触で使用することが好ましいが、使用者に接触させて使用することもできる。
【0028】
なお、以上、弱刺激部2の3つの機能を挙げたが、これらを任意に組み合わせ、複数の機能を並存させてもよい。
【0029】
したがって、弱刺激部2が、眼に弱い刺激を与えて、眼を閉じさせ、当該弱い刺激により眼が閉じられている間に、光照射部1Aが体毛の成長を調節する光を照射するので、体毛の成長を調節する光から眼を守ることができる。
(実施形態2)
図5に、実施形態2に係る光体毛成長調節装置を示す。
【0030】
実施形態1とは、光照射部1Bが眼に弱い光を与えて、眼を閉じさせ、当該弱い光により眼が閉じられている間に、体毛の成長を調節する光を照射する点で異なる。すなわち、光照射部1Bは、実施形態1における光照射部1Aが実施形態1における弱刺激部2(図1および4参照)の機能を兼ね備えたものである。
【0031】
なお、実施形態2では、実施形態1で述べた弱刺激部2は必要とはされないが、眼を確実に閉じさせるために設けられていてもよい。
【0032】
したがって、光照射部1Bは、眼に弱い光を与えて、眼を閉じさせ、当該弱い光により眼が閉じられている間に、体毛の成長を調節する光を照射するので、体毛の成長を調節する光から眼を守ることができる。また、弱刺激部2を必要としないので、光体毛成長調節装置10Bを容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態1に係る体毛成長調節装置の概念図である。
【図2】3人の日本人をサンプルとし、光の各波長における皮膚の分光反射率を測定した結果を示す図である。
【図3】光の各波長とメラニン単体の吸光度の関係を示す図である。
【図4】実施形態1に係る体毛成長調節装置の概念図である。
【図5】実施形態2に係る体毛成長調節装置の概念図である。
【符号の説明】
【0034】
1A、1B 光照射部
2 弱刺激部
3 光照射対象部
10A、10B 体毛成長調節装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体毛の成長を調節する光を人体の光照射対象部に照射する光照射部と、
前記光照射対象部に対して弱い刺激を与える弱刺激部と、
を備え、
前記弱刺激部が、眼に弱い刺激を与えて、眼を閉じさせ、当該弱い刺激により眼が閉じられている間に、前記光照射部が体毛の成長を調節する光を照射することを特徴とする光体毛成長調節装置。
【請求項2】
前記弱い刺激がガスの噴射によるものであることを特徴とする請求項1に記載の光体毛成長調節装置。
【請求項3】
前記弱い刺激が光の照射によるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の光体毛成長調節装置。
【請求項4】
体毛の成長を調節する光および当該光よりも弱い光を人体の光照射対象部に照射する光照射部を備え、
前記光照射部は、眼に弱い光を与えて、眼を閉じさせ、当該弱い光により眼が閉じられている間に、体毛の成長を調節する光を照射することを特徴とする光体毛成長調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−154830(P2008−154830A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347630(P2006−347630)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】