説明

光信号送受信用のコネクタ

【課題】光信号と電気信号とを相互に変換する機能を有するモジュールとコネクタハウジングとの位置決め精度の維持もしくは向上を図ることができる光信号送受信用のコネクタを提供すること。
【解決手段】電気信号と光信号とを相互に変換可能な光素子モジュールと、内部が空洞の略箱状の構成を有し光素子モジュールを電磁的に遮蔽する第一の遮蔽部材と、光素子モジュールと第一の遮蔽部材とを別々に組み付け可能な第一のサブハウジングとを備え、第一のサブハウジングには、所定の間隔をおいて設けられるとともに互いに対向する側には凹部が形成される二個の第一の係止部が設けられ、光素子モジュールの両端部が二個の第一の係止部に形成される凹部のそれぞれに係止し、第一の遮蔽部材の内部の面が二つの第一の係止部の対向する側以外の側に係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号送受信用のコネクタに関するものであり、詳しくは、その内部に電気機器が設けられる光信号送受信用のコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両においては、搭載される電気機器や電子機器の増加に伴い、車両内部において送受信を行う信号の量(=情報通信量)が増加してきている。光ファイバを用いる光ファイバケーブルは、電線に比較して、信号の伝送を高速に行うことができる(=多量の情報を高速に伝送できる)。このため、車両の内部において送受信を行う信号の量の増加に対応するため、信号伝送媒体(=情報通信媒体)を電線から光ファイバーケーブルに置き換えるという方策が採られるようになってきている。
【0003】
ただし、信号伝送媒体として光ファイバーケーブルを用いる構成においては、光信号と電気信号とを相互に変換する機能を有する機器が必要となる。このため、電気機器や電子機器には、このような機能を有するモジュールが組み付けられた光信号送受信用のコネクタを備え、この光信号送受信用のコネクタに光ファイバーケーブルを接続することによって、電気機器や電子機器どうしの間で情報通信(すなわち、信号の送受信)を行うという構成が用いられることがある。
【0004】
一般的に、前記機能を有するモジュールは、光信号を電気信号に変換する素子と、電気信号を光信号に変換する素子とを備える。そして、このようなモジュールが、コネクタハウジング(光信号送受信用のコネクタの筐体)に組み付けられるという構成を有する。
【0005】
ところで、前記モジュールが外部からノイズを受けると、変換した信号がノイズを含むおそれがある。変換した信号がノイズを含むと、信号のS/N比が悪化し、信号の送受信を正常に行うことができなくなるおそれがある。また、このような光信号送受信用のコネクタは、相手方のコネクタと、所定の精度をもって位置決めされた状態で結合する必要がある。すなわち、相手方コネクタとの位置決め精度が低いと、相手方コネクタとの間で信号の損失が発生するおそれがある。そうすると、信号の送受信を正常に行うことができなくなるおそれがある。
【0006】
ノイズに起因する悪影響を防止するための構成としては、たとえば、前記モジュールに遮蔽用の部材を装着するという構成が用いられることがある。また、相手方のコネクタとの位置決め精度を維持するためには、まず、前記モジュールが、コネクタハウジングに所定の精度をもって組み付けられる必要がある。
【0007】
しかしながら、前記モジュールに遮蔽用の部材を装着する構成は、次のような問題が生じることがある。前記モジュールを電磁的に遮蔽するため、遮蔽用の部材は、一般的には、前記モジュールの外側を覆うように設けられる。このため、遮蔽用の部材がコネクタハウジングに直接的に組み付けられ、前記モジュールは、遮蔽用の部材を介してコネクタハウジングに組み付けられる構成となる。すなわち、遮蔽用の部材はコネクタハウジングに直接に接触するが、前記モジュールはコネクタハウジングに直接に接触しない構成となる。
【0008】
このような構成であると、前記モジュールと遮蔽用の部材との組み付け精度が低いと、前記モジュールのコネクタハウジングに対する位置決め精度が低くなる。また、遮蔽用の部材とコネクタハウジングとの位置決め精度が低いと、前記モジュールのコネクタハウジングに対する位置決め精度も低くなる。このように、前記モジュールのコネクタハウジングに対する位置決め精度が、遮蔽用の部材との組み付け精度や、遮蔽用の部材のコネクタハウジングに対する位置決め精度の影響を受ける。このため、前記モジュールのコネクタハウジングに対する位置決め精度の維持や向上が困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−82258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、光信号と電気信号とを相互に変換する機能を有するモジュールとコネクタハウジングとの位置決め精度の維持もしくは向上を図ることができる光信号送受信用のコネクタを提供すること、または、光信号と電気信号とを相互に変換する機能を有するモジュールをノイズなどから保護しつつコネクタハウジングとの位置決め精度の維持もしくは向上を図ることができる光信号送受信用のコネクタを提供すること、または、光信号と電気信号とを相互に変換する機能を有するモジュールのコネクタハウジングに対する組み付け精度が、前記モジュールを電磁的に遮蔽する部材のコネクタハウジングに対する組み付け精度の影響を受けない光信号送受信用のコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、他の光コネクタと結合することによって前記他のコネクタとの間で光信号を送受信できる光信号送受信用のコネクタであって、電気信号と光信号とを相互に変換可能なモジュールと、内部が空洞の略箱状の構成を有し前記モジュールを電磁的に遮蔽する遮蔽部材と、前記モジュールと前記遮蔽部材とを別々に組み付け可能なハウジングと、を備え、前記ハウジングには、所定の間隔をおいて設けられるとともに互いに対向する側には凹部が形成される二個の係止部が設けられ、前記モジュールの両端部が前記二個の係止部に形成される前記凹部のそれぞれに係止し、前記遮蔽部材の内部の面が前記二つの係止部の前記対向する側以外の側に係止することを要旨とするものである。
【0012】
前記モジュールは、導電性を有するとともに前記他のコネクタに係合して前記他のコネクタと位置決めする位置決めピンを備え、前記位置決めピンは前記遮蔽部材に電気を導通可能に係合している構成であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記モジュールは、ハウジングに設けられる二個の係止部によって、位置決めされた状態で固定される。そして、前記モジュールと遮蔽部材とは、別々にハウジングに係止している。このため、前記モジュールの位置決め精度の向上を図ることができる。
【0014】
すなわち、前記モジュールと前記遮蔽部材とが一体に固定されている構成であると、前記モジュールのハウジングに対する位置決め精度は、前記モジュールと前記遮蔽部材との組み付け精度や、前記遮蔽部材のハウジングに対する位置決め精度の影響を受ける。このため、前記モジュールと前記遮蔽部材との組み付け精度や、前記遮蔽部材のハウジングに対する組み付け精度が低下すると、前記モジュールのハウジングに対する位置決め精度が低下することがある。
【0015】
これに対して、本発明によれば、前記モジュールと前記遮蔽部材との前記ハウジングに対する位置決めは別々である。すなわち、前記モジュールのハウジングに対する位置決め精度は、前記ハウジングに設けられる係止部の凹部に依存し、凹部が設けられる側以外の側の影響を受けない。これに対して前記遮蔽部材の前記ハウジングに対する位置決め精度は、前記ハウジングに設けられる前記係止部のうちの互いに対向する側以外の側(すなわち、凹部が形成される側以外の側)に依存する。
【0016】
このため、前記モジュールの前記ハウジングに対する位置決め精度は、前記遮蔽部材の前記ハウジングに対する位置決め精度の影響を受けない。したがって、前記遮蔽部材の前記ハウジングに対する位置決め精度が低下した場合であっても、前記モジュールの前記ハウジングに対する位置決め精度は低下しない。このように、前記モジュールの前記ハウジングに対する位置決め精度に悪影響を与える要因を少なくすることができる。したがって、前記モジュールの前記ハウジングに対する位置決め精度の向上を図ること、または位置決め精度の低下を防止もしくは抑制することができる。
【0017】
前記モジュールは、前記ハウジングの内部において、前記遮蔽部材に覆われ、電磁的に遮蔽される。このため、前記モジュールが外部からのノイズなどの影響を受けることを防止または抑制することができる。したがって、本発明によれば、光信号送受信用のコネクタが送受信する信号にノイズが混ざることが防止または抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態にかかる光コネクタの構成を、模式的に示した分解斜視図であり、他の回路基板の側から見た図である。
【図2】光素子モジュールの構成を模式的に示した図であり、(a)は後端側から見た分解斜視図、(b)は先端側から見た外観斜視図である。
【図3】第一のサブハウジングの構成を模式的に示した外観斜視図であり、下側から見た図である
【図4】第一の遮蔽部材の構成を、模式的に示した外観斜視図であり、(a)は下側から見た図、(b)は上側から見た図である。
【図5】第一のサブハウジングに第一の遮蔽部材が組み付けられた状態を模式的に示した外観斜視図であり、第一のサブハウジングの一部を抜き出して示した図である。
【図6】第一のサブハウジングに第一の遮蔽部材と光素子モジュールとが組み付けられた状態を模式的に示した外観斜視図であり、第一のサブハウジングの一部を抜き出して示した図である。
【図7】(a)は、第一のサブハウジングに第一の遮蔽部材が組み付けられた状態を模式的に示した平面図であって下側から見た図であり、(b)は、第一のサブハウジングに第一の遮蔽部材と光素子モジュールとが組み付けられた状態を模式的に示した平面図であって下側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明の便宜上、「光信号送受信用のコネクタ」を、略して「光コネクタ」と記すことがある。
【0020】
本発明の実施形態にかかる光コネクタ1は、回路基板などに実装されて用いられる光コネクタである。そして、本発明の実施形態にかかる光コネクタは、光ファイバケーブルの端部に装着された光コネクタと結合することができる。本発明の実施形態にかかる光コネクタ1は、光ファイバケーブルを通じて外部から伝送された光信号を電気信号に変換すること、および電気信号を光信号に変換し光ファイバケーブルを通じて外部に伝送することができる。なお、説明の便宜上、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1を実装できる回路基板を、「他の回路基板」と称する。また、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1と結合できる光コネクタを、「他の光コネクタ」と称する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1の構成を、模式的に示した分解斜視図であり、他の回路基板の側から見た図である。図1に示すように、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1は、光素子モジュール11と、第一のサブハウジング12と、第二のサブハウジング13と、回路基板14(説明の便宜上、この回路基板14を「第一の回路基板」14と称する)と、第一の遮蔽部材15と、所定の数の端子金具16(説明の便宜上、これらの端子金具16を「第一の端子金具」16と称する)と、第二の遮蔽部材17とを備える。
【0022】
説明の便宜上、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1については、他の回路基板に組み付けられる側を「下側」と称し、その反対側を「上側」称し、それらの方向を「上下方向」と称する。また、他の光コネクタと接続する側を「先端側」と称し、その反対側を「後端側」と称し、それらの方向を「前後方向」と称する。さらに、「上下方向」および「前後方向」に直角な方向を「左右方向」と称する。本発明の実施形態にかかる光コネクタ1を構成する各部材や機器についても同様とする。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1においては、第一のサブハウジング12と第二のサブハウジング13とが結合して一個の筐体(すなわち、一個のコネクタハウジング)を形成する。そして、コネクタハウジングの内部(=第一のサブハウジング12と第二のサブハウジング13との結合体の内部)に、光素子モジュール11と、第一の遮蔽部材15と、第一の回路基板14とが組み付けられる。また、第一の端子金具16が、コネクタハウジングの内部と外部に跨るように組み付けられる。さらに、コネクタハウジングの外側には、第二の遮蔽部材17が装着される。
【0024】
光素子モジュール11は、電気信号を光信号に変換する機能と、光信号を電気信号に変換する機能とを有するモジュール(=電気機器)である。図2は、光素子モジュール11の構成を模式的に示した図であり、(a)は後端側から見た分解斜視図、(b)は先端側から見た外観斜視図である。図2(a)、(b)に示すように、光素子モジュール11は、ケーシング111と、回路基板112(説明の便宜上、この回路基板112を「第二の回路基板」112と称する)と、所定の数の位置決めピン113とを有する。そして、第二の回路基板112がケーシング111に収容されるとともに、位置決めピン113がケーシング111および第二の回路基板112に組み付けられる。
【0025】
第二の回路基板112は、その先端側の面に、光信号を電気信号に変換する素子と、電気信号を光信号に変換する素子とが実装された回路基板である。さらに第二の回路基板112には、電気信号を入出力するための所定の数(複数)の端子金具1122(説明の便宜上、これらの端子金具1122を、「第二の端子金具」と称する)が組み付けられる。光信号を電気信号に変換する素子には、公知の各種受光素子が適用できる。たとえば、公知の各種のフォトダイオードやフォトトランジスタなどができようできる。電気信号を光信号に変換する素子には、公知の各種発光素子が適用できる。たとえば、公知の各種の発光ダイオード(LED)が適用できる。以下、これらのような素子を「光素子」と称することがある。
【0026】
所定の数の第二の端子金具1122には、光信号を電気信号に変換する素子からの電気信号を伝送するためのものと、電気信号を光信号に変換する素子に対して電気信号を伝送するためのものと、接地(=アース接続)するためのものとが含まれる。所定の数の第二の端子金具1122は、下側に向かって突出する棒状またはピン状の構成のものが適用される。
【0027】
さらに、第二の回路基板112には、位置決めピン113を挿通できる(=貫通させることができる)貫通孔1123が形成される。これらの貫通孔1123は、位置決めピン113の断面形状および寸法と略同じ断面形状および寸法を有し、先端側と後端側とを連通する貫通孔(すなわち、軸線が前後方向を向く貫通孔)である。貫通孔1123の数は、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1に組み付けられる位置決めピン113と同数である。図2においては、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1が二本の位置決めピン113を備え、第一の回路基板112に二つの貫通孔1123が形成される構成を示す。
【0028】
位置決めピン113は、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1と他の光コネクタと結合する際に位置決めすること、および結合した後において位置決めした状態に維持することができる部材である。すなわち、位置決めピン113は、他の光コネクタに係合することによって、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1と他の光コネクタとを、特に、軸線方向に対して直角な方向に位置決めする。位置決めピン113には、導電性を有する棒状の部材が適用される。たとえば、金属からなる棒状の部材が適用される。そして位置決めピン113の後端側の端部近傍には、係合部1131が形成される。係合部1131は、第一の遮蔽部材15の係合部1541(後述)に係合可能な部分である。係合部1131は、図2に示すように、他の部分よりも左右方向の寸法が小さい部分(=上側および下側から見ると、くびれて見える部分)である。
【0029】
位置決めピン113の寸法および形状は特に限定されるものではないが、たとえば、図2に示すように、略円柱状(=断面略円形の棒状またはピン状)の構成が適用できる。そして、位置決めピン113が略円柱状の構成を有する場合には、係合部1131としては、円周方向に延伸する溝が適用される。
【0030】
ケーシング111は、光素子モジュール11の筐体となる部材であり、第二の回路基板112を収容可能な構成を有する。図2に示すように、ケーシング111は、後端側が開放した略箱状の部材である。そして、先端側の面(すなわち、「箱」の底面に相当する部分)には、第一の貫通孔1111と、第二の貫通孔1112とが形成される。さらに、ケーシング111の下側には、上下方向に貫通する所定の数の第三の貫通孔1113が形成される。
【0031】
第一の貫通孔1111は、位置決めピン113を挿通できる貫通孔である。第一の貫通孔1111は、位置決めピン113の断面形状および寸法と略同じ断面形状および寸法を有し、先端側と後端側とを連通する。すなわち、軸線が前後方向を向く。第一の貫通孔1111の数は、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1に組み付けられる位置決めピン113と同数である。
【0032】
第二の貫通孔1112は、第二の回路基板112に実装される光素子1121を前面側に露出させることができる貫通孔である。このため、第二の貫通孔1112は、先端側と後端側とを連通する。
【0033】
第二の回路基板112とケーシング111とは、第二の回路基板112がケーシング111に収容された状態において、第二の回路基板112に形成される貫通孔1123と、ケーシング111に形成された第一の貫通孔1111の位置が一致するように構成される。さらに、第二の回路基板112がケーシング111に収容された状態において、第二の回路基板112に実装される光素子1121が、ケーシング111に形成される第二の貫通孔1112を通じて露出する(=先端側から見える)ように構成される。
【0034】
第三の貫通孔1113は、第二の端子金具1122を挿入できる貫通孔である。すなわち、第二の回路基板112がケーシング111の内部に収容されると、第二の端子金具1122は、第三の貫通孔1113を通じてケーシング111の外部であってその下側に突出する。
【0035】
そして、第二の回路基板112がケーシング111の内部に収容されるとともに、ケーシング111に形成される第一の貫通孔1111と、第二の回路基板112に形成される貫通孔1123に、位置決めピン113が挿通される。すなわち、位置決めピン113の先端側の端部がケーシング111の先端側の面から突出し、後端側の端部が、ケーシング111および第二の回路基板112の後端側の面から突出する。そして、ケーシング111の内部に、樹脂や接着剤などが充填される。樹脂や接着剤などが充填されると、第二の回路基板112の後端側の面が樹脂材料により覆われるとともに、第二の回路基板112と位置決めピン113とがケーシング111に固定される。なお、位置決めピン113に形成される係合部1131は、樹脂材料に埋まらずに露出している。
【0036】
なお、前記の光素子モジュール11の構成は一例であり、このような構成に限定されるものではない。たとえば、光素子モジュール11が第二の回路基板112を備えず、ケーシング111に直接的に光素子1121が組み付けられるとともに配線パターンなどが形成される構成であってもよい。
【0037】
次に、第一のサブハウジング12と第二のサブハウジング13について説明する。第一のサブハウジング12と第二のサブハウジング13は結合可能な構成を有しており、第一のサブハウジング12と第二のサブハウジング13が結合することによって、一個のコネクタハウジングとなる(すなわち、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1の筐体となる)。
【0038】
図3は、第一のサブハウジング12の構成を模式的に示した外観斜視図であり、下側から見た図である(図3中の上方が、第一のサブハウジング12の下側となる)。なお、図3においては、第一のサブハウジング12の内部構成を分かり易く示すため、構造物の一部を切断してある(切断した部分にはハッチングが施してある)。図3に示すように、第一のサブハウジング12は、下側と先端側とが開放した略箱状の構成を有する部材である。第二のサブハウジング13は、略平板状の部材である。そして、第二のサブハウジング13が第一のサブハウジング12の下側に組み付けられると、第一のサブハウジング12と第二のサブハウジング13の結合体は、先端側が開放した略箱状の構成を有する。
【0039】
図3に示すように、第一のサブハウジング12は、上底部121と、側壁部122と、後端側壁部123とを有する。上底部121と、側壁部122と、後端側壁部123とは、それぞれ、略平板状の部分である。そして、上底部121と側壁部122と後端側壁部123とにより、第一のサブハウジング12は、全体として、下側および先端側が開放した略箱状の構成となる。すなわち、上底部121が「箱の底」に相当し、側壁部122と後端側壁123とがそれぞれ「箱の側壁」に相当する。
【0040】
第一のサブハウジング12は、二つの第一の係止部124と、第二の係止部125と、第三の係止部126とが設けられる。第一の係止部124は、光素子モジュール11を第一のサブハウジング12に対して位置決めした状態で固定することができるとともに、第一の遮蔽部材15を位置決めすることができる部分である。第二の係止部125は、第一の端子金具16を係止できる部分である。第三の係止部126は、第二のサブハウジング13を組み付けることができる部分である。
【0041】
二つの第一の係止部124は、上底部121に設けられ、下側に向かって突起する構造物である。図3に示すように、二つの第一の係止部124は、所定の間隔をおいて(具体的には、光素子モジュール11を挿入可能な間隔をおいて)、左右方向に並ぶように設けられる。二つの第一の係止部124は、それぞれ、側壁部122の近傍に設けられる。すなわち、二つの第一の係止部124のそれぞれと、左右の側壁部122のそれぞれとは直接的には接触しておらず、所定の隙間が形成される(具体的には、第一の遮蔽部材15の側壁部152を挿入可能な隙間が形成される)。
【0042】
二つの第一の係止部124の互いに対向する側には、凹部1241が設けられる。この凹部1241は、上下方向に延伸する溝が適用できる。このため、二つの第一の係止部124の凹部1241が互いに対向する(=「溝」の底面に相当する面が対向する)。さらに、凹部1241には、互いに対向する第一の係止部124に向かって突起する突起部1242が設けられる。この突起部1242は、上下方向に延伸する凸状の構造物が適用される。なお、この突起部1242は、凹部1241からはみ出さない寸法および形状を有する。
【0043】
このため、二つの第一の係止部124のそれぞれは、下側から見ると、「(アルファベットの)E」の字形状の構成を有する。すなわち、「E」の文字の縦棒と上下二本の横棒とにより、全体として溝状の凹部1241が形成される構成となる。そして中間の横棒が、突起部1242に相当する。
【0044】
このような構成によれば、光素子モジュール11のケーシング111の左右両端部を、二つの第一の係止部124のそれぞれの凹部1241に係合させることができる。このため、光素子モジュール11を、第一のサブハウジング12に位置決めした状態で係止できる。すなわち、光素子モジュール11の左右両端部のそれぞれが、二つの第一の係止部124のそれぞれの凹部1241に嵌り込むと、光素子モジュール11は、前後方向および左右方向の移動が規制される。特に、第一の係止部124の突起部1242が、光素子モジュール11のケーシング111の左右両端面に接触することにより、光素子モジュール11は左右方向の位置決がされるとともに、左右方向に変位すること(すなわち、位置ずれすること)が防止される。
【0045】
さらに、第一のサブハウジング12の第一の係止部124が、前記構成であると、光素子モジュール11の先端側と後端側には、第一の係止部124はほとんど係止しない。このため、第一の係止部124が光素子モジュール11の位置決めピン113と物理的に干渉することがなく、かつ、光素子モジュール11の光素子1121が、第一の係止部124のそれぞれにより覆われる(=露出しなくなる)こともない。
【0046】
このように、第一のサブハウジング12に設けられる二つの第一の係止部124のそれぞれは、光素子モジュール11の位置決めピン113に物理的に干渉したり、光素子モジュール11の機能を阻碍したりすることなく、光素子モジュール11を第一のサブハウジング12に対して位置決めした状態で固定できる。
【0047】
第二の係止部125は、第一の端子金具16の所定の部分(=第一のサブハウジング12に組み付けられた状態において、その外側に位置する部分)を収容可能な部分である。第二の係止部125は、後端側壁部123の外側の面に設けられる。図3に示すように、第二の係止部125は、所定の数(=第一の端子金具16と同数)で上下方向に延伸する溝である。そして、これらの溝に、第一の端子金具16のそれぞれの所定の部分を収容することができる。
【0048】
第三の係止部126は、第二のサブハウジング13を組み付けることができる部分である。第三の係止部126には、第二のサブハウジング13に設けられる係止突起131(後述)を挿入可能な係止穴1261が形成される。このため、第二のサブハウジング13を第三の係止部126に係止させ、第二のサブハウジング13の係止突起131を第三の係止部126の係止穴1261に挿入することにより、第一のサブハウジング12と第二のサブハウジング13とが一体となって、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1の筐体(=コネクタハウジング)を形成する。なお、第三の係止部126は、第二のサブハウジング13を組み付けることができる構成であればよく、具体的な構成は限定されるものではない。
【0049】
図1に示すように、第二のサブハウジング13は、略平板状の部材である。そして第二のサブハウジング13には、第一のサブハウジング12に係止するための所定の数の係止突起131が設けられる。係止突起131は、上側に向かって突起する棒状やピン状の構造物である。係止突起131の形状や寸法、設けられる位置は、第一のサブハウジング12の第三の係止部126に形成される係止穴1261の形状や寸法、形成される位置に応じて設定される。
【0050】
次いで、第一の遮蔽部材15について、図4を参照して説明する。図4は、第一の遮蔽部材の構成を、模式的に示した外観斜視図であり、(a)は下側から見た図、(b)は上側から見た図である。第一の遮蔽部材15は、光素子モジュール11を電磁的に遮蔽する機能を有する部材である。このため、第一の遮蔽部材15は導電性を有する(換言すると、第一の遮蔽部材15は、導電性を有する材料により形成される)。図4に示すように、第一の遮蔽部材15は、上底部151と、先端側壁部153と、後端側壁部154と、二つの側壁部152と、を有し、全体として一方が開放した略直方体形状の箱状の構成を有する。すなわち、上底部151が「箱の底面」に相当し、先端側壁部と153と後端側壁部154とが、「箱の互いに対向する二つの側面」に相当し、二つの側壁部152が、「箱の互いに対向する他の二つの側面」に相当する。
【0051】
上底部151の左右方向の両端部近傍(=側壁部152の近傍)のそれぞれには、第一の開口部1511が形成される。これらの第一の開口部1511は、第一の遮蔽部材15が第一のサブハウジング12の内部に組み付けられた状態において、第一のサブハウジング12の第一の係止部124との物理的な干渉を避けるために形成される。このため、これらの第一の開口部1511は、第一のサブハウジング12の第一の係止部124を挿入可能な寸法および形状に形成される。
【0052】
先端側壁部153の左右方向の中心部には、第二の開口部1531が形成される。換言すると、先端側壁部153は、左右方向の両端部にのみ形成され、中心部には形成されない。この第二の開口部1531は、光素子モジュール11の位置決めピン113との物理的な干渉を避けるとともに、光素子1121を覆わないようにするために形成される。
【0053】
後端側壁部154には、係合部1541が形成される。係合部1541は、光素子モジュール11の位置決めピン113の係合部1131と係合可能な構成を有する部分である。具体的には、上下方向に延伸し、下側に向かって開放するスリット(=切り欠き)が適用される。係合部1541としてのスリットの軸線は上下方向に略平行である。そして、係合部1541としてのスリットの幅寸法(=左右方向寸法)は、位置決めピン113の係合部1131以外の部分の外径よりも小さく、位置決めピン113の係合部1131の外径よりも大きい。このため、位置決めピン113の係合部1131は、第一の遮蔽部材15の係合部1541に係合することはできるが、位置決めピン113の係合部1131以外の部分は、第一の遮蔽部材15の係合部1541に係合することはできない。したがって、位置決めピン113の係合部1131が、第一の遮蔽部材15の係合部1541に係合すると、位置決めピン113は、第一の遮蔽部材15に対して前後方向に移動することができなくなる。なお、図4に示すように、組み付け時における作業性を良くするため、係合部1541としてのスリットの左右方向寸法は、下側に向かうにしたがって大きくなる構成が適用できる。
【0054】
固定ピン155は、第一の遮蔽部材15を第一の回路基板14に固定するための構造物である。さらに、固定ピン155は、第一の遮蔽部材15を、第一の回路基板14に設けられる所定の配線に電気的に接続するための機能も有する。固定ピン155は、下側に向かって突起する棒状やピン状の構造物が適用できる。なお、固定ピン155の数や位置は特に限定されるものではない。要は、第一の遮蔽部材15を、第一の回路基板14に物理的に固定することができるとともに、電気的に接続することができる構成であればよい。
【0055】
このような構成の第一の遮蔽部材15は、たとえば、金属板にプレス加工を施すことによって一体に形成される。
【0056】
図1に戻って説明する。第一の回路基板14は、光素子モジュール11と、第一の遮蔽部材15と、第一の端子金具16とを固定することができる回路基板である。第一の回路基板14には、所定の配線パターン(図略)が形成されるとともに、第一の端子金具16の端部を挿入可能な貫通孔と、光素子モジュール11の第二の端子金具を挿入可能な貫通孔と、第一の遮蔽部材15の固定ピン155を挿入可能な貫通孔とが形成される。そして、第一の回路基板14は、所定の第一の端子金具16と、光素子モジュール11の所定の第二の端子金具1122とを電気的に接続することができるとともに、所定の第一の端子金具16と、第一の遮蔽部材15の固定ピンとを電気的に接続することができる(すなわち、所定の第一の端子金具16と、第一の遮蔽部材15とを電気的に接続できる)。なお、第一の回路基板16の具体的な構成は特に限定されるものではない。公知の各種回路基板と同じ構成が適用できる。
【0057】
第一の端子金具16は、他の回路基板に固定することにより、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1と他の回路基板との間で信号の送受信を行うための端子金具である。第一の端子金具16は、たとえば、図1に示すように、軸線が略「U」字形状の棒状の部材が適用される。そして、それらの一部分が第一のサブハウジング12の第二の係止部125に係合するとともに、残りの一部分が、第一のサブハウジング12の上底部121に形成される貫通孔1211を通じてその内部に挿入され、第一の回路基板14に固定される。なお、第一の端子金具16の構成は、特に限定されるものではなく、公知の各種端子金具が適用できる。
【0058】
第二の遮蔽部材17は、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1を電磁的に遮蔽する機能を有する部材である。第二の遮蔽部材17は、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1(のコネクタハウジング)を覆うことができる箱状の構成を有する。たとえば、図1に示すように、下側と先端側が開放し内部が空洞の略箱状の構成が適用できる。また、第二の遮蔽部材17は導電性を有する(=導電性を有する材料により形成される)。たとえば、第二の遮蔽部材17は、金属板などにプレス加工を施すことにより形成される。なお、第二の遮蔽部材17は、導電性を有し、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1の外側を覆うことができる構成であればよく、具体的な構成は限定されない。
【0059】
このような部材を有する本発明の実施形態にかかる光コネクタの組み付け構造は、次のとおりである。図5は、第一のサブハウジング12に第一の遮蔽部材15が組み付けられた状態を模式的に示した外観斜視図、図6は、第一のサブハウジング12に第一の遮蔽部材15と光素子モジュール11とが組み付けられた状態を模式的に示した外観斜視図である。それぞれ、第一のサブハウジング12の一部を抜き出して示した図である。図7(a)は、第一のサブハウジング12に第一の遮蔽部材15が組み付けられた状態を模式的に示した平面図であって下側から見た図であり、図7(b)は、第一のサブハウジング12に第一の遮蔽部材15と光素子モジュール11とが組み付けられた状態を模式的に示した平面図であって下側から見た図である。
【0060】
まず、図5と図7(a)に示すように、第一の遮蔽部材15が、第一のサブハウジング12に組み付けられる。具体的には、第一の遮蔽部材15の上底部151の上側の面が、第一のサブハウジング12の上底部121の下側の面に対向する向きで、第一の遮蔽部材15が第一のサブハウジング12の内側に組み付けられる。そして、第一の遮蔽部材15の上底部151に形成される第一開口部1511に、第一のサブハウジング12に設けられる二つの第一の係止部124のそれぞれを挿通させる。さらに、第一の遮蔽部材15の側壁部152を、第一のサブハウジング12の第一の係止部124と側壁部122との間の隙間に収容する。
【0061】
第一の遮蔽部材15が第一のサブハウジング12に組み付けられると、第一のサブハウジング12の二つの第一の係止部124のそれぞれが、第一の遮蔽部材15に形成される二つの第一の開口部1511のそれぞれを通じてその内部に進入した状態となる。具体的には、第一の遮蔽部材15の先端側壁部153の内側の面(=後端側の面)が、第一のサブハウジング12の第一の係止部124の先端側の面に係合する。第一の遮蔽部材15の側壁部152の内側の面(=互いに対向する側の面)が、第一のサブハウジング12の第一の係止部124の互いに対向する側の面と背中合わせの面(=凹部1241が形成される面と背中合わせの面)に係合する。第一の遮蔽部材15の後端側壁部154の内側の面(=先端側の面)が、第一のサブハウジング12の第一の係止部124の後端側の面に係合する。
【0062】
このように、第一の遮蔽部材15は、その内側の面が、第一のサブハウジング12の第一の係止部124の外側の面のうち、凹部1241が形成される面以外の面に係合する。このため、第一の遮蔽部材15は、第一のサブハウジング12の第一の係止部124に係止し、第一のサブハウジング12に対して位置決めされる。そして、第一の係止部124の凹部1241が形成される面、および凹部1241は、第一の遮蔽部材15の位置決めには寄与しない。
【0063】
次いで、図6と図7(b)に示すように、光素子モジュール11が、第一のサブハウジング12に組み付けられる。具体的には、光素子モジュール11のケーシング111の左右方向の端部のそれぞれが、第一のサブハウジング12の二つの第一の係止部124のそれぞれの凹部1241に挿入される。このため、光素子モジュール11が、第一のサブハウジング12に位置決めされた状態で係止される。特に、第一のサブハウジング12の第一の係止部124の突起部1242が、光素子モジュール11のケーシング111の左右両端面に接触するため、光素子モジュール11が左右方向に変位すること(すなわち、位置ずれすること)が防止される。
【0064】
このような構成によれば、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決めは、第一のサブハウジング12の二つの第一の係止部124の凹部1241のおよび突起部1242によってなされる。そして、二つの第一の係止部1241の凹部1241以外の部分は、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決めに寄与しない。
【0065】
このように、第一の遮蔽部材15の第一のサブハウジング12に対する位置決めは、二つの第一の係止部124の外側の面のうち、凹部1241が形成される面以外の部分によってなされる。そして、凹部1241および凹部1241が形成される面は、第一の遮蔽部材15の位置決めに寄与しない。一方、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決めは、第一の係止部124の凹部1241、および凹部1241に形成される突起部1242によってなされる。そして、凹部1241以外の部分は、光素子モジュール11の位置決めに寄与しない。
【0066】
換言すると、光素子モジュール11は、第一のサブハウジング12の二つの第一の係止部124に囲まれる領域(=二つの第一の係止部124の内側)に組み付けられる。そして、第一のサブハウジング12の二つの第一の係止部124の内側の面(=互いに対向する面)により係止される。一方、第一の遮蔽部材15は、第一のサブハウジング12の二つの第一の係止部124の外側に組み付けられる。そして、第一のサブハウジング12の第一の係止部124の外側の面(=互いに対向する面以外の面)により係止される。
【0067】
すなわち、第一の遮蔽部材15の第一のサブハウジング12に対する位置決めと、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決めとは、二つの第一の係止部124のそれぞれ互いに異なる部分によってなされる。したがって、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度は、第一の遮蔽部材15の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度の影響を受けない。
【0068】
さらに、光素子モジュール11と第一の遮蔽部材15とは、第一のサブハウジング12に組み付けられた段階で分離可能に係合する。すなわち、光素子モジュール11と第一の遮蔽部材15とは、互いに固定されていない。したがって、光素子モジュール11と第一の遮蔽部材15との位置関係は、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度に影響を与えない。
【0069】
このように、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度は、第一の遮蔽部材15の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度や、光素子モジュール11と第一の遮蔽部材15との位置関係の影響を受けない。換言すると、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度に影響を与える因子を減らすことができる。このため、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度の向上を図ること、または位置決め精度の低下を防止もしくは抑制することができる。
【0070】
そして、第一のサブハウジング12に第一の遮蔽部材15と光素子モジュール11とが組み付けられると、光素子モジュール11は、第一のサブハウジング12の内部において、第一の遮蔽部材15に覆われる(=光素子モジュール11が第一の遮蔽部材15の内部に位置する)。このため、光素子モジュール11は、第一の遮蔽部材15によって電磁的に遮蔽される。
【0071】
具体的には、光素子モジュール11の上側は、第一の遮蔽部材15の上底部151に覆われる。光素子モジュール11の左右両側は、第一の遮蔽部材15の側壁部152に覆われる。光素子モジュール11の後端側は、第一の遮蔽部材15の後端壁部154に覆われる。したがって、これらの方向からのノイズを遮断することができる。
【0072】
さらに、光素子モジュール11が第一のサブハウジング12に組み付けられると、光素子モジュール11の位置決めピン113の係合部1131が、第一の遮蔽部材15の後端側壁部154に形成される係合部1541に係合する。このため、光素子モジュール11の位置決めピン113と第一の遮蔽部材15とが接触して電気的に接続する。また、位置決めピン113の係合部1131が、第一の遮蔽部材15の後端側壁部154に形成される係合部1541に係合すると、位置決めピン113は、第一の遮蔽部材15に対して前後方向に変位できなくなる。第一の遮蔽部材15は、第一のサブハウジング12に対して位置決めされているから、結果として、光素子モジュール11の位置決めピン113は、第一のサブハウジング12に対して前後方向に変位できなくなる。すなわち、位置決めピン113は、第一のサブハウジング12に固定された状態となる。
【0073】
そして、所定の数の第一の端子金具16が、第一のサブハウジング12に組み付けられる。具体的には、所定の数の第一の端子金具16のそれぞれが、第一のサブハウジング12に設けられる第二の係止部125に係止されるとともに、それぞれの一部分が、第一のサブハウジング12の上底部121に形成される貫通孔1211を通じて、その内部に嵌め込まれる。
【0074】
次いで、第一の回路基板14が組み付けられる。具体的には、第一の回路基板14に形成される複数の貫通孔のそれぞれに、光素子モジュール11の第二の端子金具1122、第一の遮蔽部材15の固定ピン155、第一の端子金具16のそれぞれを、第一の回路基板14に形成される複数の貫通孔のそれぞれに貫通させて下側の面から突出させる。そして、突出させた部分が第一の回路基板14にハンダ付けされる。そうすると、光素子モジュール11と、第一の遮蔽部材15と、第一の端子金具16とが、第一の回路基板14に固定される。そして、所定の第一の端子金具16と光素子モジュール11の所定の第二の端子金具1122とが、第一の回路基板14に設けられる所定の配線により電気的に接続する。さらに、所定の第一の端子金具16と、第一の遮蔽部材15の固定ピン155とが、第一の回路基板14に設けられる所定の配線によって電気的に接続する。
【0075】
さらに、第二のサブハウジング13が第一のサブハウジング12の第三の係止部126に組み付けられる。そして、第二の遮蔽部材17が、第一のサブハウジング12の外部に装着される。第二の遮蔽部材17は、第一のサブハウジングの上側、後端側、左右両側を覆う、たがって、第二の遮蔽部材17は、これらの方向からのノイズを遮断できる。
【0076】
本発明の実施形態にかかる光コネクタ1は、前記構成を有することにより、次のような作用効果を奏することができる。
【0077】
光素子モジュール11は、第一のサブハウジング12に設けられる第一の係止部124によって、位置決めされた状態で固定される。そして、光素子モジュール11と第一の遮蔽部材15とは、互いに固定されておらず、かつ、二つの第一の係止部124のそれぞれ異なる部分により位置決めされる。すなわち、光素子モジュール11と第一の遮蔽部材15とは、別々に第一のサブハウジング12に係止している。このため、光素子モジュール11の位置決め精度の向上を図ることができる。
【0078】
たとえば、光素子モジュール11と第一の遮蔽部材15とが一体に固定されている構成であると、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度は、光素子モジュール11と第一の遮蔽部材15との組み付け精度や、第一の遮蔽部材15の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度の影響を受ける。このため、光素子モジュール11と第一の遮蔽部材15との組み付け精度や、第一の遮蔽部材15の第一のサブハウジング12に対する組み付け精度が低下すると、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度が低下することがある。
【0079】
これに対して、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1においては、第一のサブハウジング12に対する位置決めは別々である。すなわち、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度は、第一のサブハウジング12に設けられる第一の係止部124の凹部1241と突起部1242に依存し、これら以外の影響を受けない。これに対して第一の遮蔽部材15の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度は、第一のサブハウジング12に設けられる第一の係止部124のうちの互いに対向する側の面以外の部分(すなわち、凹部1241が形成される面以外の部分)に依存する。そして、光素子モジュール11と第一の遮蔽部材15とは、互いに係合しているが、固定されていない。
【0080】
このように、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度は、第一の遮蔽部材15の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度の影響を受けない。このため、第一の遮蔽部材15の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度が低下した場合であっても、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度は低下しない。このように、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度に悪影響を与える要因を、少なくすることができる。したがって、光素子モジュール11の第一のサブハウジング12に対する位置決め精度の向上を図ること、または位置決め精度の低下を防止もしくは抑制することができる。
【0081】
光素子モジュール11の位置決めピン113が、ケーシング111や第二の回路基板112から抜けたり弛んだりすることが防止または抑制される。
【0082】
たとえば、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1に、他のコネクタを抜き差しする際などに、位置決めピン113に対して外力(たとえば前後方向の力)が掛かることがある。位置決めピン113とケーシング111とは、樹脂によって互いに固着している。このため、位置決めピン113の係合部1131が第一の遮蔽部材15の係合部1541に係合していないと、位置決めピン113に軸線方向の力が加わった場合に、位置決めピン113の表面と樹脂との間に剪断力が掛かり、固着が破壊されるおそれがある。
【0083】
これに対して、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1においては、光素子モジュール11の位置決めピン113の係合部1131は、第一の遮蔽部材15の後端側壁部154の係合部1541に係合している。このため、位置決めピン113に掛かった力は、第一の遮蔽部材15が負担し、位置決めピン113は、第一の遮蔽部材15が有する剛性により、前後方向の変位が規制される(=防止または抑制される)。このため、位置決めピン113が、ケーシング111や第二の回路基板112に対して変位することが防止または抑制される。したがって、位置決めピン113が、ケーシング111や第二の回路基板112から抜けたり弛んだりすることが防止または抑制される。
【0084】
そして、第一の遮蔽部材15が金属から形成される構成であれば、位置決めピン113が、ケーシング111や第二の回路基板112から抜けたり弛んだりすることを、強固に防止または抑制できる。すなわち、位置決めピンと第一の遮蔽部材とが金属からなる構成であれば、位置決めピンは、金属の構造物どうしの係合によって、前後方向の変位が規制される。このため、たとえば樹脂材料などからなる構成と比較すると、位置決めピン113が前後方向変位することをより強固に防止または抑制できる。
【0085】
さらに、位置決めピン113を強固に保持できるから、位置決めピン113の変位などが防止できる。このため、他の光コネクタとの位置決め精度を維持できる。
【0086】
光素子モジュール11は、第一のサブハウジングの内部において、第一の遮蔽部材に覆われ、電磁的に遮蔽される。このため、光素子モジュール11が外部からのノイズなどの影響を受けることを防止または抑制することができる。したがって、本発明の実施形態にかかる光コネクタが送受信する信号にノイズが混ざることが防止または抑制できる。
【0087】
光素子モジュール11に実装される光素子1121の周囲に電位差が発生することや静電気が溜まること(=帯電すること)を防止または抑制し、電位差や静電気に起因する悪影響(たとえば放電)などから光素子モジュール11を保護することができる。すなわち、位置決めピン113と第一の遮蔽部材15とは導電性を有し、係合して電気的に接続している。このため、本発明の実施形態にかかる光コネクタ1が、他の回路基板に実装された状態において、第一の端子金具16のうち、第一の遮蔽部材15の固定ピン155と電気的に接続するものを接地させる(=アース接続する)ことにより、位置決めピン155を接地させることができる。位置決めピン155は、光素子モジュール11の第二の回路基板112を貫通しており、第二の回路基板112に実装される光素子1121に接近している。このため、光素子1121の近傍を接地させることができるから、光素子1121の周囲に電位差が生じることや静電気が溜まることを防止または抑制できる。したがって、電位差や静電気に起因する悪影響を防止または抑制することができる。
【0088】
また、このような構成によれば、位置決めピン113をアース接続のための配線として用いる構成であるから、たとえば、光素子モジュール11のケーシング111や第二の回路基板112などを、簡単にアース接続することができる。すなわち、別途接地のための配線を設ける必要がない。
【0089】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、前記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0090】
たとえば、前記実施形態においては、光コネクタが二本の位置決めピンを備える構成を示したが、位置決めピンの数は限定されるものではない。たとえば、一本の位置決めピンを備える構成であってもよい。また、本発明の実施形態においては、他の回路基板に実装して用いる光コネクタを示したが、電線(または電線束)の端部に装着して用いるコネクタであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 本発明の実施形態にかかる光コネクタ
11 光素子モジュール
111 ケーシング
1111 第一の貫通孔
1112 第二の貫通孔
1113 第三の貫通孔
112 第二の回路基板
1121 光素子
1122 第二の端子金具
1123 貫通孔
113 位置決めピン
1131 係合部
12 第一のサブハウジング
121 上底部
1211 貫通孔
122 側壁部
123 後端側壁部
124 第一の係止部
1241 凹部
1242 突起部
125 第二の係止部
126 第三の係止部
1261 係止穴
13 第二のサブハウジング
14 第一の回路基板
15 第一の遮蔽部材
151 上底部
1511 第一の開口部
152 側壁部
153 先端側壁部
1531 第二の開口部
154 後端側壁部
1541 係合部
155 固定ピン
16 第一の端子金具
17 第二の遮蔽部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の光コネクタと結合することによって前記他のコネクタとの間で光信号を送受信できる光信号送受信用のコネクタであって、
電気信号と光信号とを相互に変換可能なモジュールと、
内部が空洞の略箱状の構成を有し前記モジュールを電磁的に遮蔽する遮蔽部材と、
前記モジュールと前記遮蔽部材とを別々に組み付け可能なハウジングと
を備え、
前記ハウジングには、所定の間隔をおいて設けられるとともに互いに対向する側には凹部が形成される二個の係止部が設けられ、
前記モジュールの両端部が前記二個の係止部に形成される前記凹部のそれぞれに係止し、前記遮蔽部材の内部の面が前記二つの係止部の前記対向する側以外の側に係止することを特徴とする光信号送受信用のコネクタ。
【請求項2】
前記モジュールは、導電性を有するとともに前記他のコネクタに係合して前記他のコネクタと位置決めする位置決めピンを備え、前記位置決めピンは前記遮蔽部材に電気を導通可能に係合していることを特徴とする請求項1に記載の光信号送受信用のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−221373(P2011−221373A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91966(P2010−91966)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】