説明

光分岐箱

【課題】光分岐結合器の戻り光信号を抑制すること。
【解決手段】複数の光伝送路の中間部同士を光学的に結合して光分岐結合部を形成し、光伝送路の入力ポート部22と出力ポート部24とを組合わせて複数の入出力ポート部を構成する。各入出力ポート部に、外部から入力された光信号に基づく反転論理信号と、光分岐結合部14を経た出力信号に基づく論理信号との論理積をとった信号を、出力ポート部から外部に出力する戻り信号抑制部40を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、OAやFA、車載等の通信分野に適用され、複数のノード同士を光通信により接続するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号を分岐結合するための光分岐結合器として、各ノードをスター状に接続可能な光スターカプラが知られている。
【0003】
光スターカプラは、例えば、次のように構成されている。すなわち、一端側を入力ポートとし他端側を出力ポートとする光ファイバが複数準備され、複数の光ファイバの中間部同士が溶接等で光学的に接合されている。また、入力ポートと出力ポートとが1対1で組合わされて一つの入出力ポートとして構成されており、このような入出力ポートが複数設けられている。
【0004】
このような光スターカプラでは、任意の入力ポートに入力された光信号が、接合部分で複数に分岐されて全ての出力ポートから出力されるように構成されている。
【0005】
このような光スターカプラは、特許文献1に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−281436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記光スターカプラでは、原理上、所定の入力ポートに入力された光信号は、同じ入出力ポートに組込まれた出力ポートにも戻って出力される。つまり、所定のノードから出力された光信号が、出力元となるノードでも戻り光信号として受信されることになり、ノードでの通信信号処理上好ましくない。
【0008】
そこで、本発明は、光分岐結合器の戻り光信号を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、複数のノードを相互接続するための光分岐箱であって、一端側の入力ポート部と他端側の出力ポート部とを有する複数の光伝送路と、前記各光伝送路同士が光学的に結合されてなる光分岐結合部と、前記各光伝送路の前記入力ポート部と前記出力ポート部とを組合わせて構成した複数の入出力ポート部と、を備え、前記各入出力ポート部に、外部から入力された信号に基づく反転論理信号と、前記光分岐結合部を経た出力信号に基づく論理信号との論理積をとった信号を、前記出力ポート部から光信号として外部に出力する戻り信号抑制手段を設けたものである。
【0010】
ここで、戻り信号抑制手段としては、外部から入力された光信号に基づいて入力側論理信号を生成する第1論理信号生成手段と、前記入力側論理信号を反転させて入力側反転論理信号を生成する信号反転手段と、前記光分岐結合部を経た出力光信号に基づいて出力側論理信号を生成する第2論理信号生成手段と、前記入力側反転論理信号と前記出力側論理信号との論理積演算を行う演算手段と、前記演算手段の演算結果に基づいて光信号を前記出力ポート部から外部に出力する出力光信号生成手段と、を有する構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明の光分岐箱によると、前記各入出力ポート部に、外部から入力された信号に基づく反転論理信号と、前記光分岐結合部を経た出力信号に基づく論理信号との論理積をとった信号を、前記出力ポート部から光信号として外部に出力する戻り信号抑制手段を設けているため、所定の出力ポート部への戻り信号と外部から入力された信号の反転信号との論理積により無信号状態とすることができる。その結果、戻り信号を外部に出力することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態に係る光分岐箱について説明する。
【0013】
図1は光分岐箱を示す説明図である。この光分岐箱10は、複数のノード80を光通信可能にスター状に相互接続する。このような光分岐箱10は、例えば、車両におけるネットワークシステムに組込まれる。すなわち、車両には、各種マイコンを含むノード80が複数搭載されており、本光分岐箱10は、これらの各ノード80を光通信可能にスター状に相互接続する。勿論、本光分岐箱10は、車両におけるネットワークシステム以外にも、OAやFA等における各種ネットワークシステムにも適用され得る。
【0014】
本光分岐箱10は、複数(ここでは8つ)の光伝送路12と、これら複数の光伝送路12同士が結合されてなる光分岐結合部14と、複数(ここでは8つ)の入出力ポート部20(1)・・・20(8)とを備えている。
【0015】
各光伝送路12は、一端側に入力ポート部22を有すると共に、他端側に出力ポート部24を有しており、入力ポート部22から入力された光を所定の経路に沿って伝送し出力ポート部24から出力するように構成されている。光伝送路12は、例えば、プラスチック光ファイバやガラス基板等を用いた導波路基板等により構成されている。
【0016】
光分岐結合部14は、上記光伝送路12が光学的に結合された構成とされており、所定の光伝送路12を伝送された光信号が光分岐結合部14で全ての光伝送路12に分岐されるように構成されている。
【0017】
例えば、各光伝送路12を構成するプラスチック光ファイバの中間部同士を超音波溶着することにより光分岐結合部14が形成される。その他、複数の光ファイバを複数箇所で融着等して光分岐結合部を構成してもよい。要するに、光伝送路12が光学的に結合された構成としては、所定の光伝送路12を伝送された光信号を全ての光伝送路12に分岐し得る各種構成を含む。
【0018】
また、各入出力ポート部20(1)・・・20(8)は、各光伝送路12の入力ポート部22と出力ポート部24とを組合わせることで構成されている。ここでは、入力ポート部22と出力ポート部24とが1対1で組合わされた例について説明するが、これらが2対2や1対2等で組合わされた構成であってもよい。
【0019】
ここでは、8本の光伝送路12がそれらの中間部で光学的に結合されると共に、入力ポート部22と出力ポート部24とが1対1で組合わされることで、8つの入出力ポート部20(1)・・・20(8)が構成されている。勿論、これらの数は例示であり、当該例に限られない。
【0020】
各入出力ポート部20(1)・・・20(8)には、光コネクタ30と、戻り信号抑制手段としての戻り信号抑制部40とが組込まれている。
【0021】
光コネクタ30は、各光伝送路12の入力ポート部22と出力ポート部24と、外部の光伝送路82との間を光学的に接続するように構成されている。このような、光コネクタ30としては、例えば、光ファイバ同士を光学的に接続する周知の光コネクタ等、種々の光学的接続手段を用いることができる。
【0022】
戻り信号抑制部40は、上記各入出力ポート部20(1)・・・20(8)に介挿され、外部から入力された光信号に基づく反転論理信号と、光分岐結合部14を経た出力光信号に基づく論理信号との論理積をとった信号を、光信号として前記出力ポート部24から外部に出力するように構成されている。
【0023】
図2は、戻り信号抑制部40を示すブロック図である。同図を参照してより具体的に説明すると、戻り信号抑制部40は、入力ポート部22に受信部41、論理信号生成器42及び送信部43が介挿されると共に、出力ポート部24に受信部45、論理信号生成器46、論理積演算部47及び送信部48が介挿され、論理信号生成器42で得られた論理信号が信号反転回路44を介して論理積演算部47に与えられるように構成されている。
【0024】
すなわち、外部の光伝送路82を経て入力ポート部22に入力された光信号は、受光素子及び増幅回路等を含む受信部41により電気信号に変換される。論理信号生成器42は、当該電気信号に基づいて、2値化された入力側論理信号を生成し、この入力側論理信号を送信部43及び信号反転回路44に出力する。送信部43は、発光素子及び駆動回路等を含んでおり、前記入力側論理信号に基づいて光信号を生成し、これを光伝送路12の光分岐結合部14に向けて送出する。信号反転手段としての信号反転回路44は、前記入力側論理信号の値”0””1”を反転させて入力側反転論理信号を生成し、これを論理積演算部47に与える。
【0025】
ここでは、受信部41及び論理信号生成器42が、外部から入力された光信号に基づいて入力側論理信号を生成する第1論理信号生成手段としての機能を有している。
【0026】
なお、受信部41の手前で光信号を2つに分岐し、一方側の分岐路を通る光信号についてはそのまま光分岐結合部14に向けて送り出し、他方側の分岐路を通る光信号に基づいて、入力側論理信号を生成するようにしてもよい。
【0027】
一方、光分岐結合部14を経て出力ポート部24に入力された光信号は、受光素子及び増幅回路等を含む受信部45で電気信号に変換される。論理信号生成器46は、当該電気信号に基づいて、2値化された出力側論理信号を生成する。続いて、演算手段としての論理積演算部47は、該出力側論理信号と、信号反転回路44を通じて与えられる入力側反転論理信号との論理積演算を行い、その演算結果を論理信号として送信部48に出力する。送信部48は、発光素子及び駆動回路等を含んでおり、該論理信号に基づいて光信号を生成し、出力ポート部24から外部に出力する。
【0028】
ここでは、受信部45及び論理信号生成器46が、光分岐結合部14を経た出力光信号に基づいて出力側論理信号を生成する第2論理信号生成手段として機能している。
【0029】
なお、出力側論理信号については、入力側反転論理信号に対して光伝送路12の経路分の遅れを生じる。そこで、当該遅れによる時間差を解消するため、ここでは、信号反転回路44と論理積演算部47との間に、信号経路差に応じて前記入力側反転論理信号と出力側論理信号との位相を調整する位相調整回路49を介挿している。
【0030】
これらの各光伝送路12、光分岐結合部14、及び戻り信号制御部40等は、ボックス状のハウジング38内に組込まれると共に、上記各光コネクタ30は、外部からの光伝送路82を接続可能な態様でハウジング38に組込まれている。
【0031】
図3(a)〜図3(d)は、入出力ポート部20(5)に光信号が入力され、この光信号が同じ入出力ポート部20(5)に戻ってきた場合(図1参照)において、該入出力ポート部20(5)に設けられた戻り信号抑制部40における各信号波形を示している。
【0032】
すなわち、外部の光伝送路82を経て入力ポート部22に入力された光信号(図1の矢符A参照)に基づいて、受信部41及び論理信号生成器42により、図3(a)に示すように、(0,1,0,1,0)の並びを持つ入力側論理信号が生成された場合を想定する。この場合、信号反転回路44により、図3(b)に示すように、(1,0,1,0,1)の並びを持つ入力側反転論理信号が得られる。
【0033】
一方、光伝送路12及び光分岐結合部14を通じて、入力元となる入力ポート部22と同一の入出力ポート部20(5)に含まれる出力ポート部24に戻ってきた戻り光信号(図1の矢符D参照)に基づいて、受信部45及び論理信号生成器46により、図3(c)に示すように、上記入力側論理信号と同様の(1,0,1,0,1)の並びを持つ出力側論理信号が生成される。
【0034】
そして、論理積演算部47において、入力側反転論理信号(図3(b))と出力側論理信号(図3(c)との論理積が演算され、演算結果として、図3(d)に示すように、(0,0,0,0,0)の並びを持つ論理信号が得られる。すなわち、無信号状態となり、戻り光信号に起因する送信部48からの光信号の出力が抑制される。
【0035】
図4(a)〜図4(d)は、入出力ポート部20(5)に光信号が入力され、この光信号が他の入出力ポート部20(8)に分岐されてきた場合(図1参照)において、当該他の入出力ポート部20(8)に設けられた戻り信号抑制部40における各信号波形を示している。
【0036】
この場合、該入出力ポート部20(8)の入力ポート部22に対して光信号は入力されていない状態であるから、図4(a)に示すように、(0,0,0,0,0)の並びを持つ入力側論理信号が得られ、この信号に基づいて、図4(b)に示すように、(1,1,1,1,1)の並びを持つ入力側反転論理信号が得られる。
【0037】
一方、入出力ポート部20(5)側から入力された光信号は、光伝送路12及び光分岐結合部14を通じて分岐され、前記入力元とは異なる入出力ポート部20(8)に含まれる出力ポート部24に入力される(図1の矢符E参照)。この分岐光信号に基づいて、受信部45及び論理信号生成器46により、図4(c)に示すように、例えば、(0,1,0,1,0)の並びを持つ出力側論理信号が生成される。この出力側論理信号は、前記入出力ポート部20(5)に入力された光信号に応じた信号である。
【0038】
そして、論理積演算部47において、入力側反転論理信号と出力側論理信号との論理積が演算され、演算結果として、図(d)に示すように、(0,1,0,1,0)の並びを持つ論理信号が得られる。そして、この論理信号に基づいて、該出力ポート部24から所定の光信号が送信され、他のノード80に与えられる。
【0039】
以上のように構成された光分岐箱10によると、前記各入出力ポート部20(1)〜20(8)に、外部から入力された光信号に基づく入力側反転論理信号と、光分岐結合部14を経た出力光信号に基づく出力側論理信号との論理積をとった信号を、出力ポート部24から外部に出力する戻り信号抑制部40を設けているため、所定の出力ポート部24への戻り光信号に基づく論理信号と外部から入力された光信号に基づく反転論理信号との論理積により無信号状態とすることができる。その結果、戻り信号をシャットダウンして外部に出力することを抑制できる。一方、戻り信号ではない他の分岐信号についてはそのまま外部に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】光分岐箱を示す説明図である。
【図2】戻り信号抑制部を示すブロック図である。
【図3】戻り光信号が戻ってきた場合において戻り信号抑制部における各論理信号の波形を示す図である。
【図4】通常に分岐された光信号が入力された場合において戻り信号抑制部における各論理信号の波形を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 光分岐箱
12 光伝送路
14 光分岐結合部
20(1)〜20(8) 入出力ポート部
22 入力ポート部
24 出力ポート部
40 戻り信号抑制部
41 受信部
42 論理信号生成器
43 送信部
44 信号反転回路
45 受信部
46 論理信号生成器
47 論理積演算部
48 送信部
80 ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードを相互接続するための光分岐箱であって、
一端側の入力ポート部と他端側の出力ポート部とを有する複数の光伝送路と、
前記各光伝送路同士が光学的に結合されてなる光分岐結合部と、
前記各光伝送路の前記入力ポート部と前記出力ポート部とを組合わせて構成した複数の入出力ポート部と、
を備え、
前記各入出力ポート部に、外部から入力された信号に基づく反転論理信号と、前記光分岐結合部を経た出力信号に基づく論理信号との論理積をとった信号を、前記出力ポート部から外部に光信号として出力する戻り信号抑制手段を設けた、光分岐箱。
【請求項2】
請求項1記載の光分岐箱であって、
前記戻り信号抑制手段は、
外部から入力された光信号に基づいて入力側論理信号を生成する第1論理信号生成手段と、
前記入力側論理信号を反転させて入力側反転論理信号を生成する信号反転手段と、
前記光分岐結合部を経た出力光信号に基づいて出力側論理信号を生成する第2論理信号生成手段と、
前記入力側反転論理信号と前記出力側論理信号との論理積演算を行う演算手段と、
前記演算手段の演算結果に基づいて光信号を前記出力ポート部から外部に出力する出力光信号生成手段と、
を有する、光分岐箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−173702(P2006−173702A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359458(P2004−359458)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】