説明

光分解性カップリング剤

【課題】同一分子内に異なる反応性基を備えるカップリング剤であって、両反応性基の間を容易に分解することが可能な新規な光分解性カップリング剤を提供する。
【解決手段】両末端に設けられたアミン反応性基と、アミン反応性基間に設けられたジスルフィド基とを有し、これらアミン反応性基とジスルフィド基との間に光分解性基を含む光分解性カップリング剤を形成する。具体的には、下記一般式(1)の化合物を形成する。
【化1】



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光分解性カップリング剤に係り、より詳しくは、2つの反応性基の間に光分解性基を備えた光分解性カップリング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有機低分子や高分子の機能特性を究極のサイズ領域で発現させるべく、固体表面を単分子膜で被覆し、かつ、そのパターンを形成する手法ならびに材料に関する研究が活発になっている。このような技術では、金属表面に自己組織化膜と呼ばれる単分子膜を形成し、自己組織化膜の物性に起因した種々の機能性の発現を検討している(非特許文献1)。
上記のような単分子膜を金属材料上に形成することで、さまざまな物性の発現が期待されている。また、単分子膜表面に導入された官能基を介して、DNAやタンパク質などの生体分子をはじめとする様々な有機分子を固定化する方法が開発されている。このような表面は、生体分子間の相互作用の基礎的研究に有用であるのみならず、DNAチップなどの実用的な技術として、非常に有用なものである。
【0003】
しかし、このように形成された単分子膜自体を基体として、これにDNAやタンパク質などの生体分子をはじめとする様々な有機分子を固定化し、種々の機能性を付与し、その後、光照射により切り離して固定化分子の回収が可能になるカップリング剤の研究はほとんど行われていない。
【0004】
【非特許文献1】J. Christopher Love, Lara A. Estroff, Jennah K. Kriebe, Ralph G. Nuzzo, and George M. Whitesides, Chem. Rev. 2005, 105, 1103 - 1169
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明者は、同一分子内にスペーサを介して異なる反応性基を備え、反応性基間を容易に切り離すことができるカップリング剤を利用すれば、上述した種々の問題を解決することが可能になると考えた。
したがって、本発明の課題は、同一分子内に異なる反応性基を備えるカップリング剤であって、両反応性基の間を容易に分解することが可能な新規な光分解性カップリング剤を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明に係る光分解性カップリング剤は、両末端に設けられたアミン反応性基と、前記アミン反応性基間に設けられたジスルフィド基とを有し、これらアミン反応性基とジスルフィド基との間に光分解性基を含むことを特徴としている(請求項1)。
【0007】
例えば、下記一般式(1)で表される構成が考えられる(請求項2)。
【0008】
【化1】

【0009】
より具体的には、下記一般式(2)で示されるものや、下記一般式(3)で示されるものが考えられる。
【0010】
【化2】

【化3】

【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、この発明に係る光分解性カップリング剤によれば、同一分子内にアミン反応性基とジスルフィド基とを有し、その間に光分解性基を備えているので、金属表面、特に金表面に様々な機能性を付与した後に、光照射により金属表面に固定化した生体分子をはじめとする様々な分子を、光照射により脱離、回収することが可能となる。
【0012】
また、これらの表面に様々な物質が含まれる溶液を接触させると、固定化分子と特異的な相互作用を示す物質だけが金属表面に吸着する。その後光照射することにより、固定化分子と吸着物質だけを回収することができ、吸着物質の構造決定をすることができる。
上記とは逆に、様々な物質の混合物を固定化することもできる。これに対してマーカー(例えば蛍光色素)を付けた単一分子の溶液を接触させると、その分子が特異的に相互作用する部位だけを検出できる。その部位にのみ光照射することにより、その物質を回収し、構造決定することができる。
【0013】
さらに、固定化する分子のパターニングも可能である。この方法として、まずフォトマスクを被せて光照射し、その後アミンを含む分子を固定化させる方法と、逆にアミンを含む分子を固定化させた後フォトマスクを用いて光照射する方法が、可能である。固定化させる分子の特性に応じて、いずれかの方法が利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の最良の実施形態を説明する。
【0015】
本発明の光分解性カップリング剤は、両末端にアミン反応性基を有し、アミン反応性基間にジスルフィド基を有し、これらアミン反応性基とジスルフィド基との間に光分解性基を介在させたものである。すなわち、下記一般式(4)で表されるように、両末端にアミン反応性基(Su)を有すると共にアミン反応性基間にジスルフィド基(S−S)を有し、それぞれのアミン反応性基とジスルフィド基との間を光分解性基を有するスペーサRを介して連結させたものである。
【0016】
【化4】

【0017】
アミン反応性基(Su)は、生体分子等にあるアミン官能基と共有結合するものであり、N-ヒドロキシスクシンイミド( NHS )エステル基、イミドエステル基、イソシアネート基、ニトロフェニルハライド基などが利用可能であり、好適な例としては、下記の構造式(5)で示されるN-ヒドロキシスクシンイミドエステル基を含有するものである。
【0018】
【化5】

【0019】
スペーサRは、分枝鎖または直鎖の炭化水素などにより形成されてもよく、光分解性基は、光照射により離脱する任意の基をいい、例えば、2−ニトロベンジル誘導体骨格を有する基、ジメトキシベンゾイン基、2−ニトロピペロニルオキシカルボニル(NPOC)基、2−ニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)基、α−メチル−2−ニトロピペロニルオキシカルボニル(MeNPOC)基、α−メチル−2−ニトロベラトリルオキシカルボニル(MeNVOC)基、2,6−ジニトロベンジルオキシカルボニル(DNBOC)基、α−メチル−2,6−ジニトロベンジルオキシカルボニル(MeDNBOC)基、1−(2−ニトロフェニル)エチルオキシカルボニル(NPEOC)基、1−メチル−1−(2−ニトロフェニル)エチルオキシカルボニル(MeNPEOC)基、9−アントラセニルメチルオキシカルボニル(ANMOC)基、1−ピレニルメチルオキシカルボニル(PYMOC)基、3′−メトキシベンゾイニルオキシカルボニル(MBOC)基、3′,5′−ジメトキシベンゾイルオキシカルボニル(DMBOC)基、7−ニトロインドリニルオキシカルボニル(NIOC)基、5,7−ジニトロインドリニルオキシカルボニル(DNIOC)基、2−アントラキノニルメチルオキシカルボニル(AQMOC)基、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、5−ブロモ−7−ニトロインドリニルオシキカルボニル(BNIOC)基等を挙げることができるが、下記一般式〔6〕で表される化合物のように、2−ニトロベンジル誘導体骨格を有する基が特に好ましい。
【0020】
上述したように、前記(4)式で示される構造を有していれば、アミン反応性基、光分解性基、スペーサの各構造は特に限定されるものではないが、アミン反応性基とジスルフィド基との間に光分解性基を有する光分解性カップリング剤としては、下記(6)式で表される化合物が好ましい。
【0021】
【化6】

より具体的には、n=12である下記(7)式で表される化合物や、n=6である下記(8)式で表される化合物を用いるとよい。
【0022】
【化7】

【化8】

【0023】
したがって、このようなカップリング剤によれば、その両末端部に有機官能基を備え、その間にジスルフィド基を有するので、金属表面、特に金表面に様々な機能性を付与した後に、光照射により金属表面に固定化した分子、およびその分子と相互作用を示す物質を光照射により脱離、回収し、その構造決定をすることが可能となる。
【0024】
以下において、実施例により、上述した光分解性カップリング剤をより具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。尚、以下の実施例において、水とはイオン交換蒸留水を指す。
【実施例1】
【0025】
アミン反応性基とジスルフィド基とを光分解性基を有するスペーサで連結した光分解性カップリング剤の実施例(12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)の合成)
【0026】
図1に示される工程により合成した。先ず、200 mL ナスフラスコに4-ヒドロキシ-3-メトキシアセトフェノン16.62 g ( 99.98 mmol )、アセトン100 mL、potassium carbonate 15.12 g ( 109.4 mmol ) を入れ、30分間室温で撹拌した後、benzyl bromide 17.76 g ( 103.8 mmol ) を加え、4時間還流し、濃縮した。water 100 mL加え、抽出 ( chloroform 100 mL × 4 )、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮、再結晶 (ethyl acetate )、吸引ろ過、真空乾燥し、白色固体(4−ベンジルオキシ−3−メトキシアセトフェノン) 23.80 g ( 92.84 mmol ) を得た(化9:ステップ1)。
【0027】
【化9】

【0028】
上記合成で得られた4−ベンジルオキシ−3−メトキシアセトフェノンの同定結果を以下に示す。
収量 23.80 g ( 92.84 mmol )
収率 93%
1H-NMR (CDCl3 /TMS ) 400 MHz
δ = 2.55 ( 3H, s ) CH3-C=O
δ = 3.95 ( 3H, s ) CH3O-
δ = 5.24 ( 2H, s ) Ph-CH2-
δ = 6.89 ( 1H, d, J = 8.3 Hz ) Ar-H
δ = 7.43 ( 7H, m ) Ar-H
【0029】
次に、氷浴上で300 mL ナスフラスコに4−ベンジルオキシ−3−メトキシアセトフェノン14.08 g ( 54.95 mmol )、acetic acid 150 mL 、fuming HNO3 15mLを入れ、終夜撹拌した後、ice water 300 mL に投入し、吸引ろ過、再結晶 ( ethyl acetate - hexane )、 吸引ろ過、真空乾燥し、黄色結晶(4−ベンジルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン)11.26 g ( 37.36 mmol ) を得た(化10:ステップ2)。
【0030】
【化10】

【0031】
上記合成で得られた4−ベンジルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノンの同定結果を以下に示す。
収量 11.26 g ( 37.36 mmol )
収率 68%
1H-NMR (CDCl3 /TMS ) 400 MHz
δ = 2.49 ( 3H, s ) CH3-C=O
δ = 3.97 ( 3H, s ) CH3O-
δ = 5.22 ( 2H, s ) Ph-CH2-
δ = 6.77 ( 1H, s ) Ar-H
δ = 7.41 ( 5H, m ) Ar-H
δ = 7.67 ( 1H, s ) Ar-H
【0032】
次に、100 mL ナスフラスコに4−ベンジルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン 8.00 g ( 26.55 mmol )、trifluoroacetic acid 40 mL を入れ、 終夜撹拌した。撹拌後、濃縮し5% NaHCO3 aq 100 mL、2N HCl 30 mL を加え、抽出 ( ethyl acetate 100 mL ×4 )、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、再結晶 ( ethyl acetate - hexane)、吸引ろ過、真空乾燥し、黄色粉体(4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン)4.68 g ( 22.17 mmol )を得た(化11:ステップ3)。
【0033】
【化11】

【0034】
上記合成で得られた4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノンの同定結果を以下に示す。
収量 4.68 g ( 22.17 mmol )
収率 83%
1H-NMR (CDCl3 /TMS ) 400 MHz
δ = 2.49 ( 3H, s ) CH3-C=O
δ = 4.02 ( 3H, s ) CH3O-
δ = 5.92 ( 1H, s ) Ar-OH
δ = 6.80 ( 1H, s ) Ar-H
δ = 7.67 ( 1H, s ) Ar-H
【0035】
また、300 mL ナスフラスコに1,12−dibromododecane 16.15g (49.22 mmol )、acetonitrile 150 mL、potassium thioacetate 1.43g ( 12.53mmol )をいれ、24時間還流した。濃縮した後、water 250 mLを加え、抽出 ( ether 50mL ×3 )、無水MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー ( hexane: ethyl acetate = 95 : 5 )で精製、真空乾燥し、白色固体(12−ブロモドデシル チオアセテート) 3.18 g ( 9.84 mmol )を得た(化12:ステップ4)。
【0036】
【化12】

【0037】
上記合成で得られた12−ブロモドデシルチオアセテートの同定結果を以下に示す。
収量 3.18 g ( 9.84 mmol)
収率 79 %
Rf値 0.36 ( hexane : ethyl acetate = 95 : 5 )
1H-NMR (CDCl3 /TMS ) 400 MHz
δ = 1.28 ( 16H, m ) -(CH2)8-
δ = 1.56 ( 2H, m ) -S-CH2-CH2-
δ = 1.85 ( 2H, m, J = 7.3 Hz) -CH2-CH2- Br
δ = 2.32 ( 3H, s) CH3-C=O
δ = 2.86 ( 2H, t, J = 7.3 Hz) -S-CH2-
δ = 3.41 ( 2H, t, J = 6.8 Hz) -CH2- Br
【0038】
次に、氷浴上、窒素気流下で200 mL二口ナスフラスコにdry-methanol100 mLをいれ、滴下漏斗にacetyl chloride 10 mL を入れ、滴下した後、12-ブロモドモドデシルチオアセテート 2.00 g (6.10 mmol )を加え、室温で撹拌した。濃縮した後、water 100 mL加え、抽出 (ethyl acetate 50mL ×3)、無水 MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮し、白色固体を得た。
そして、100 mLナスフラスコに白色固体、1,4-dioxane / water 50 mL、iodine 0.840 g ( 6.62mmol )加え、3時間還流した。溶液が黄色になるまで15% sodium metabisulfite aq加え、濃縮、抽出( chloroform 50 mL ×3)、無水 MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮、再結晶、(hexane)、真空乾燥し、白色固体(1,1’−ジチオ-ビス(12−ブロモドデカン))1.09g( 1.94 mmol )を得た(化13:ステップ5)。
【0039】
【化13】

【0040】
上記合成で得られた1,1’−ジチオ-ビス(12−ブロモドデカン)の同定結果を以下に示す。
収量 1.43 g ( 2.54 mmol )
収率 83 %
1H-NMR (CDCl3 /TMS ) 400 MHz
δ = 1.27 (32H, m ) -(CH2)8-
δ = 1.56 ( 4H, m ) -S-CH2-CH2-
δ = 1.85 ( 4H, m, J = 7.3 Hz) -CH2-CH2- Br
δ = 2.68 ( 4H, s) -S-CH2-
δ = 3.42 ( 4H, t, J = 7.3 Hz) -CH2- Br
【0041】
次に、窒素雰囲気下で200mL 二口ナスフラスコに前記ステップ3で得られた4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン1.34 g ( 6.36mmol )、dry-DMF 60 mL、potassium carbonate 1.05g ( 7.75mmol )を加え、30分間室温で撹拌した。撹拌後、ステップ5で得られた1,1’−ジチオ-ビス(12−ブロモドデカン) 1.43 g ( 2.54 mmol )を加え70℃で終夜撹拌した。撹拌後、water 100 mL加え、抽出 (ethyl acetate 100 mL×3 )、洗浄 ( sat. NaClaq 100 mL ×5)、無水MgSO4を加え、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー (hexane:ethyl acetate= 1 : 1 )で精製、濃縮、真空乾燥し、黄色固体12,12’−ジチオ-ビス(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン)1.78 g ( 2.17 mmol )を得た(化14:ステップ6)。
【0042】
【化14】

【0043】
上記合成で得られた12,12’−ジチオ-ビス(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン)の同定結果を以下に示す。
収量 1.78 g ( 2.17 mmol )
収率 85 %
Rf値 0.66 ( hexane : ethyl acetate = 1 : 1 )
1H-NMR (CDCl3 /TMS ) 400 MHz
δ = 1.38 ( 32H, s ) -(CH2)8-
δ = 1.67 ( 4H, m ) -S-CH2- CH2-
δ = 1.88 ( 4H, m ) -O-CH2- CH2-
δ = 2.49 ( 6H, s ) -CH3
δ = 2.68 ( 4H, t, J = 7.1 Hz ) Br-CH2-
δ = 3.96 ( 6H, s ) CH3O-
δ = 4.10 ( 4H, t, J = 6.8 Hz ) -O-CH2-
δ = 6.75 ( 2H, s ) Ar-H
δ = 7.59 ( 2H, s ) Ar-H
【0044】
次に、氷浴上で300 mLナスフラスコに12,12’−ジチオ-ビス(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン) 3.05 g ( 3.72 mmol )、methanol / THF 200 mLを入れ、sodium tetrahydroborate 0.85 g ( 22.5 mmol )をゆっくり加えた。30分間撹拌後、室温で1時間後撹拌した後、sodium tetrahydroborate 0.91 g ( 24.1 mmol )を加え、室温で1時間後撹拌した。濃縮後、water 100 mL加え、抽出 (ethyl acetate 100 mL×3 )、無水 MgSO4、ろ過、カラムクロマトグラフィー ( hexane : ethyl acetate = 1 : 1 )で精製、濃縮、真空乾燥し、黄色固体12,12’−ジチオ-ビス(1−(4-ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エタノール)2.84 g ( 3.44 mmol )を得た(化15:ステップ7)。
【0045】
【化15】

【0046】
上記合成で得られた12,12’−ジチオ-ビス(1−(4-ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エタノール)同定結果を以下に示す。
収量 2.84 g ( 3.44 mmol )
収率 92%
Rf値 0.58 ( hexane : ethyl acetate = 1 : 1 )
1H-NMR (CDCl3 /TMS ) 400 MHz
δ = 1.38 ( 32H, s ) -(CH2)8-
δ = 1.67 ( 4H, m ) -S-CH2- CH2-
δ = 1.88 ( 4H, m ) -O-CH2- CH2-
δ = 2.68 ( 4H, t, J = 7.1 Hz ) Br-CH2-
δ = 3.96 ( 6H, s ) CH3O-
δ = 4.06 ( 4H, t, J = 6.8 Hz ) -O-CH2-
δ = 5.55 ( 2H, q, J = 6.1 Hz ) -CH-CH3
δ = 7.28 ( 2H, s ) Ar-H
δ = 7.55 ( 2H, s ) Ar-H
【0047】
次に、窒素雰囲気下で100 mL二口ナスフラスコに12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エタノール)0.84 g ( 1.02 mmol )、dry-acetonitrile 100 mL、di(N−succinimidyl)carbonate 1.60 g ( 6.25 mmol )、triethylamine 873 μL入れ、室温で終夜撹拌した。濃縮、water 100 mL、2NHCl 3.2 mL加え、抽出( chloroform 50 mL ×4 )、無水 MgSO4を加え、ろ過、カラムクロマトグラフィー ( hexane: ethyl acetate= 1 : 1 )で精製、濃縮、真空乾燥し、黄白色固体12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)0.65 g ( 0.59 mmol )を得た(化16:ステップ8)。
【0048】
【化16】

【0049】
上記合成で得られた12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)の同定結果を以下に示す。
収量 0.65 g ( 0.59 mmol )
収率 58%
Rf値 ( hexane : ethyl acetate = 1 : 1 )
1H-NMR (CDCl3 /TMS ) 400 MHz
δ = 1.38 ( 32H, s ) -(CH2)8-
δ = 1.66 ( 4H, m ) -S-CH2- CH2-
δ = 1.76 (6H, d, J = 6.4 Hz) -CH-CH3
δ = 1.85 ( 4H, m ) -O-CH2- CH2-
δ = 2.68 ( 4H, t, J = 7.1 Hz ) Br-CH2-
δ = 2.80 ( 8H, s ) -CH2-CH2-
δ = 4.04 ( 6H, s ) CH3O-
δ = 4.06 ( 4H, m ) -O-CH2-
δ = 6.50 ( 2H, q, J = 6.4 Hz ) -CH-CH3
δ = 7.06 ( 2H, s ) Ar-H
δ = 7.62 ( 2H, s ) Ar-H
【0050】
以上の工程で得られた12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)の光分解性を調べるために、50 mL メスフラスコに12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)5.536 mg ( 5.02μmol )、THF 50mL入れ、1.00×10-4 mmol/Lの溶液を調製した。この溶液を石英セルに入れ、超高圧水銀灯で一定時間ごとに光照射し、UV測定を行った。そのときの光分解は次式(化17)のようになされ、UVスペクトルを調べると図2に示されるように、時間と共に光分解が進んでいることが確認された。0分での吸収極大は345 nm 12150 L・mol-1・cm -1、300 nm 10132 L・mol-1・cm -1、 246 nm 23306 L・mol-1・cm -1であった。上記のスペクトルから約5分で光分解が終了したいえる。
【0051】
【化17】

【0052】
また、100 mL ビーカーに エチルアセテート 20mL 、12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)を約15 mg を入れ、ethyl acetate 溶液を調製した。これに methanol 洗浄した金基板を入れ、終夜静置した。その後、金基板を取り出しethyl acetateで洗浄し、窒素気流で乾燥させ、修飾基板を得た。
【0053】
光熱を除くための水フィルター、300 nm以下の波長の光を遮断するパイレックス製ガラスフィルター及び光照射する金基板を乗せる台を用意した。それから、超高圧水銀灯を起動させ、光量が安定するまで、30分間暖気を行った。その後、照時計で照度が100mW/cm2となる位置を探した。光照射は1枚ずつ行った。表面修飾した金基板をチタン製ピンセットで固定し光照射を行った。その後、光照射した金基板をmethanolで超音波洗浄5分間行い、測定を行った。測定後、測定で付着した水滴をmethanolで洗い流し、値が安定するまで光照射、接触角測定を行なった。
【0054】
12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)の光照射(λ>300nm)によるメカニズムを次式(化18)に、また光照射による接触角変化を図3に示す。
【0055】
【化18】

【0056】
また、上述した修飾基板を用意し、320nm以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルター及び光照射する金基板を乗せる台を用意した。それから、超高圧水銀灯を起動させ、光量が安定するまで、30分間暖気を行った。その後、照時計で照度が100mW/cm2となる位置を探した。光照射は1枚ずつ行った。表面修飾した金基板をチタン製ピンセットで固定し光照射を行った。その後、光照射した金基板をmethanolで超音波洗浄5分間行い、測定を行った。測定後、測定で付着した水滴をmethanolで洗い流し、値が安定するまで光照射、接触角測定を行なった。12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)の光照射(320nm)による接触角変化を図4に示す。
【0057】
さらに、12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)の化学修飾の実施例を示す。
100 mLナスフラスコに表面修飾した基板、1,4−dioxane 20 mL、n−dodecylamine 0.1 g ( 0.54 mmol )、triethylamine2.0 μL 入れ、終夜静置した。methanolで超音波洗浄5分間行い。窒素気流下で乾燥後、測定を行なった。測定後、methanolで超音波洗浄5分間行った。
【0058】
光熱を除くための水フィルター、300 nm以下の波長の光を遮断するパイレックス製ガラスフィルター及び光照射する金基板を乗せる台を用意した。それから、超高圧水銀灯を起動させ、光量が安定するまで、30分間暖気を行った。その後、照時計で照度が100mW/cm2となる位置を探した。光照射は1枚ずつ行った。化学修飾した金基板をチタン製ピンセットで固定し光照射を行った。その後、光照射した金基板をmethanolで超音波洗浄5分間行い、測定を行った。測定後、測定で付着した水滴をmethanolで洗い流し、値が安定するまで光照射、接触角測定を行なった。
【0059】
12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)の化学修飾によるメカニズムを次式(化19)に、また化学修飾による接触角変化を図5に示す。
【0060】
【化19】

【実施例2】
【0061】
アミン反応性基とジスルフィド基とを光分解性基を有するスペーサで連結した光分解性カップリング剤の他の実施例(6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート))の合成)
【0062】
図6に示される工程により合成した。先ず、500 mLナスフラスコに1,6-ジブロモヘキサン 24.21 g ( 99.23 mmol )、アセトニトリル 300 mL、チオ酢酸カリウム 2.88 g ( 25.21 mmol )を入れ、24時間還流を行った。室温まで冷却し、濃縮、純水100 mLを加え、抽出 ( ヘキサン 100 mL×3 )、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー( ヘキサン : 酢酸エチル = 98 : 2 )で精製、濃縮、真空乾燥し、無色液体 (6-ブロモヘキシル)5.09 g ( 21.26 mmol )を得た(化20:ステップ9)。
【0063】
【化20】

【0064】
上記合成で得られた6-ブロモヘキシルの同定結果を以下に示す。
収量 5.09 g ( 21.26 mmol )
収率 84 %
1H-NMR ( CDCl3 / TMS ) 400 MHz
δ = 1.42 ( 4H, m ) -(CH2)2-
δ = 1.58 ( 2H, m ) -S-CH2-CH2-
δ = 1.85 ( 2H, m ) Br -CH2-CH2-
δ = 2.32 ( 3H, s ) CH3-C=O
δ = 2.86 ( 2H, t, J = 7.3 Hz ) -S-CH2-
δ = 3.40 ( 2H, t, J = 6.8 Hz ) Br-CH2-
【0065】
次に、窒素雰囲気下で100 mL 二口ナスフラスコに、前記ステップ1〜3によって得られた 4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロアセトフェノン 1.14 g ( 5.37 mmol )、炭酸カリウム 0.748 g ( 5.41 mmol )、dry-DMF 50 mLをいれ30分間撹拌し、チオ酢酸 6-ブロモヘキシル 1.40 g ( 5.86 mmol )を加え、70℃で終夜撹拌を行なった。抽出( 酢酸エチル 100 mL×3 )、洗浄( 飽和食塩水 100 mL ×5 )、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー( ヘキサン : 酢酸エチル = 1 : 1 → クロロホルム )で精製、濃縮、真空乾燥し、黄色固体(4-(6-アセチルチオヘキシルオキシ)-5-メトキシ-2-ニトロアセトフェノン)1.50 g ( 4.06 mmol )を得た(化21:ステップ10)。
【0066】
【化21】

【0067】
上記合成で得られた4-(6-アセチルチオヘキシルオキシ)-5-メトキシ-2-ニトロアセトフェノンの同定結果を以下に示す。
収量 1.50 g ( 4.06 mmol )
収率 76 %
1H-NMR ( CDCl3 / TMS ) 400 MHz
δ = 1.60 ( 6H, m ) -(CH2)2-, -S-CH2-CH2-
δ = 1.88 ( 2H, m ) -O-CH2-CH2-
δ = 2.33 ( 3H, s ) CH3-CO- ( アセトフェノン部位)
δ = 2.49 ( 3H, s ) CH3-CO- ( アセチルチオ部位 )
δ = 2.88 ( 2H, t, J = 7.1 Hz ) -S-CH2-
δ = 3.96 ( 3H, s ) CH3O-
δ = 4.10 ( 2H, t, J = 6.8 Hz ) -O-CH2-
δ = 6.75 ( 1H, s ) Ar-H
δ = 7.59 ( 1H, s ) Ar-H
【0068】
次に、氷浴上で200 mL ナスフラスコに4-(6-アセチルチオヘキシルオキシ)-5-メトキシ-2-ニトロアセトフェノン 1.48 g ( 4.02 mmol )、THF 100 mL、メタノール 50 mLをいれ、テトラヒドロホウ酸ナトリウム 0.61 g ( 16.07 mmol )ゆっくり加え、30分間撹拌した後、室温で2時間撹拌した。さらに、テトラヒドロホウ酸ナトリウム 0.48 g ( 12.57 mmol )加え、2時間撹拌した後、テトラヒドロホウ酸ナトリウム 0.494 g ( 13.06 mmol )を加え、2時間撹拌した。濃縮、純水 100 mL加え、抽出 ( 酢酸エチル 100 mL×3 )、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥し、黄色粘体(1-(4-(6-メルカプトヘキシルオキシ)-5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エタノール) 1.46 g を得た(化22:ステップ11)。
【0069】
【化22】

【0070】
上記合成で得られた1-(4-(6-メルカプトヘキシルオキシ)-5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エタノールの同定結果を以下に示す。
1H-NMR ( CDCl3 / TMS ) 400 MHz
δ = 1.35 ( 1H, t, J = 7.1 Hz ) -SH
δ = 1.67 ( 10H, m ) -(CH2)2-, -CH-CH3, -O-CH2-CH2-,
-S-CH2-CH2-, -OH
δ = 2.57 ( 2H, q, J = 7.1 Hz ) -S-CH2-
δ = 3.99 ( 3H, s ) CH3O-
δ = 4.06 ( 2H, t, J = 6.8 Hz ) -O-CH2-
δ = 5.55 ( 2H, q, J = 6.1 Hz ) Ar-CH-
δ = 7.28 ( 1H, s ) Ar-H
δ = 7.55 ( 1H, s ) Ar-H
【0071】
次に、200 mL ナスフラスコに1-(4-(6-メルカプトヘキシルオキシ)-5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エタノール1.47 g ( crude )、1,4-ジオキサン / 純水 100 mL、ヨウ素 0.58 g ( 4.59 mmol )を加え、60℃、3時間加熱撹拌した。15% ピロ亜硫酸ナトリウム水溶液で中和し、濃縮、抽出( クロロホルム 100 mL ×3 )、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー( ヘキサン : 酢酸エチル = 1 : 1 )で精製、濃縮、真空乾燥し、黄色粘体 (6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エタノール))0.85 g ( 1.29 mmol )を得た(化23:ステップ12)。
【0072】
【化23】

【0073】
上記合成で得られた6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エタノール)の同定結果を以下に示す。
収量 0.85 g ( 1.29 mmol )
両末端の還元( 4.02 mmol )が粗生成物だったので、2段階の収率で計算 64 % とした
1H-NMR ( CDCl3 / TMS ) 400 MHz
δ = 1.53 ( 6H, m ) -(CH2)2-, -CH-CH3
δ = 1.73 ( 2H, m ) -S-CH2-CH2-
δ = 1.88 ( 2H, m ) -O-CH2-CH2-
δ = 2.70 ( 2H, t, J = 7.3 Hz ) -S-CH2-
δ = 3.98 ( 3H, s ) -OCH3
δ = 4.05 ( 2H, t, J = 6.6 Hz ) -O-CH2-
δ = 5.56 ( 1H, q, J = 6.3 Hz ) Ar-CH-
δ = 7.29 ( 1H, s ) Ar-H
δ = 7.54 ( 1H, s ) Ar-H
【0074】
次に、窒素雰囲気下で100 mL二口ナスフラスコに6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エタノール) 0.85 g ( 1.29 mmol )、ジ(N-スクシンイミジル カーボネート) 2.01 g ( 7.84 mmol )、dry-アセトニトリル 50 mL、トリエチルアミン 1093μL加え、室温で終夜撹拌した。純水 100 mL、2N 塩酸 3.42 mL加え、抽出( クロロホルム 50 mL ×5 )、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、カラムクロマトグラフィー( ヘキサン : 酢酸エチル = 1 : 1 )で精製、濃縮、真空乾燥し、黄白色粉体 (6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート))0.76 g ( 0.807 mmol )を得た(化24:ステップ13)。
【0075】
【化24】

【0076】
上記合成で得られた6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート)の同定結果を以下に示す。
収量 0.76 g ( 0.807 mmol )
収率 63 %
1H-NMR ( CDCl3 / TMS ) 400 MHz
δ = 1.50 ( 4H, m ) -(CH2)2-
δ = 1.75 ( 5H, m ) -S-CH2-CH2-, -CH-CH3
δ = 1.87 ( 2H, m ) -O-CH2-CH2-
δ = 2.70 ( 2H, t, J = 7.2 Hz ) -S-CH2-
δ = 2.80 ( 4H, s ) -(CH2)2- (succinimidyl parts )
δ = 4.04 ( 5H, m ) -OCH3, -O-CH2-
δ = 6.49 ( 1H, q, J = 6.4 Hz ) -CH-CH3
δ = 7.06 ( 1H, s ) Ar-H
δ = 7.62 ( 1H, s ) Ar-H
【0077】
以上の工程で得られた6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート)の光分解性を調べるために、この化合物の1×10-4M THF溶液を調製し、二面石英セルに取った。光熱を除くための水フィルター、300 nm以下の波長の光を遮断するパイレックス製ガラスフィルター、320 nm 以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルター(250 g / L )を用意した。それから、超高圧水銀灯を起動させ、光量が安定するまで、30分間暖気を行った。その後、照度計で365 nm付近の照度が100 mW / cm2となる位置を探した。光照射を一定時間ごとに行い、UVスペクトルを測定し波形変化を調べた。
【0078】
6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート)の光照射(λ>300nm)によるメカニズムを次式(化25)に、また光照射によるスペクトル変化を図7に示す(図7(a)は、300 nmより大きい波長の光を照射させた場合、図7(b)は、320 nmより大きい波長の光を照射させた場合である)。0分での吸収極大は345 nm 11600 L・mol-1・cm -1、300 nm 9100 L・mol-1・cm -1、 246 nm 22500 L・mol-1・cm -1であった。図7(a),(b)のスペクトルから約90秒で光分解が終了したいえる。
【0079】
【化25】

【0080】
また、6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート) を約15 mg を入れ、ethyl acetate溶液を調製した。これに methanol 洗浄した金基板を入れ、終夜静置した。その後、金基板を取り出し ethyl acetateで洗浄し、窒素気流で乾燥させ、修飾基板を得た。
【0081】
光熱を除くための水フィルター、300 nm以下の波長の光を遮断するパイレックス製ガラスフィルター及び光照射する金基板を乗せる台を用意した。それから、超高圧水銀灯を起動させ、光量が安定するまで、30分間暖気を行った。その後、照時計で照度が100mW/cm2となる位置を探した。光照射は1枚ずつ行った。表面修飾した金基板をチタン製ピンセットで固定し光照射を行った。その後、光照射した金基板をmethanol で超音波洗浄5分間行い、測定を行った。測定後、測定で付着した水滴をmethanol で洗い流し、値が安定するまで光照射、接触角測定を行なった。そのときの6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート)の光照射(λ>300nm)によるメカニズムを次式(化26)に、また、光照射による接触角変化を図8に示す。
【0082】
【化26】

【0083】
次に、6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート)をアミド化し、光照射した場合について調べた。100 mLナスフラスコに表面修飾した基板、1,4-dioxane 20 mL、dodecylamine 0.1 g ( 0.54 mmol )、triethylamine 2.0 μL 入れ、終夜静置した。methanolで超音波洗浄5分間行い。窒素気流下で乾燥後、測定を行なった。6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート) のアミド化及び光照射のメカニズムを次式(化27)に、また光照射による接触角変化を図9に示す。
【0084】
【化27】

【0085】
最後に、6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート) の蛍光微粒子によるパターニングの可能性について調べた。
その手順を図10に示す。6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート)を用いて表面修飾した金基板に線幅20 mmのフォトマスクを被せ、20分間光照射しパターニングした。methanolで超音波洗浄5分行った。100 mL ビーカーに純水20 mL、トリエチルアミン 約0.5μL 入れ、FluoSpheres ( FS )(粒径 0.2 mm)を2滴加えた溶液の中に金基板を浸し、室温で1晩暗所で静置させた。物理的な吸着を取り除くため水で軽く濯ぎ、窒素気流で乾燥し蛍光顕微鏡で観察し、再度光照射した後再び蛍光顕微鏡で観察した。蛍光微粒子の固定、脱離時の蛍光顕微鏡像を図11に示す。光照射された線幅20 mmの部分は蛍光微粒子が固定されていないので視野が暗いのに対し、残りの未照射部分の活性エステルに粒径 0.2 mmの蛍光微粒子が固定されていて光っているのがわかる(図11の左側)。再度の光照射により固定されていた蛍光微粒子が脱離し、全体が暗くなっているのがわかる(図11の右側)。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)を合成する過程を示す図である。
【図2】図2は、12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)の光分解特性を示す図である。
【図3】図3は、12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)の光照射(300nm)による接触角変化を示す特性線図である。
【図4】図4は、12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)の光照射(320nm)による接触角変化を示す特性線図である。
【図5】図5は、12,12’−ジチオ-ビス(1−(4−ドデシルオキシ−5−メトキシ−2−ニトロフェニル)エチル N−スクシンイミジルカーボネート)の化学修飾による接触角変化を示す特性線図である。
【図6】図6は、6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート)を合成する過程を示す図である。
【図7】図7は、6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート)の光分解特性を示す図である。
【図8】図8は、6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート)の光照射による接触角変化を示す特性線図である。
【図9】図9は、アミド化された6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート) の光照射による接触角変化を示す特性線図である。
【図10】図10は、6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート)を用いたパターニングの手順を示す図である。
【図11】図11は、6,6’-ジチオ-ビス(1-(4-ヘキシルオキシ−5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エチル N-スクシンイミジル カーボネート)を用いたパターニングによる蛍光微粒子の固定、脱離(それぞれ左側、右側)時の像を示す蛍光顕微鏡の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両末端に設けられたアミン反応性基と、前記アミン反応性基間に設けられたジスルフィド基とを有し、これらアミン反応性基とジスルフィド基との間に光分解性基を含むことを特徴とする光分解性カップリング剤。
【請求項2】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1記載の光分解性カップリング剤
【化1】

【請求項3】
下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項2記載の光分解性カップリング剤。
【化2】

【請求項4】
下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項2記載の光分解性カップリング剤。
【化3】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−291005(P2007−291005A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120002(P2006−120002)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】