説明

光半導体装置およびその製造方法

【課題】有機EL素子を有するデバイスにおいて、有機EL層からの光取出し効率を劣化させることなく、水分バリア性および平坦化性が高い封止膜、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板の主面側から順に形成されたアノード電極103、有機EL層105およびカソード電極106と、当該発光層を覆うように基板上に設けられた封止膜とを有するデバイスにおいて、封止膜は平坦化膜であるバッファ膜108、110、112と、水分バリア性が高いバリア膜109、111とを交互に積層した積層膜を含み、平坦化膜およびバリア膜は酸窒化シリコン膜を含むものとする。また、デバイスの製造工程では、真空紫外光を用いた光CVD法により酸窒化シリコンを含むバッファ膜108を形成し、この工程では真空紫外光の照射中にリモートプラズマによるラジカル照射を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置およびその製造方法に関し、特に、有機EL素子全般の封止膜およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下有機EL)素子は、消費電力が低く、自発光し、高速応答が可能であるなど数多くのメリットを有しており、フラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display:FPD)または照明機器などへの応用に向けた開発が進められている。また、樹脂基板(樹脂フィルムを含む)などのフレキシブル基板を用いることでディスプレイ装置を曲げることが可能となり、軽く、割れないなどの新たな付加価値が創生されており、フレキシブル機器への応用も検討されている。
【0003】
有機EL素子は水分または酸素に接すると発光効率の低下および寿命劣化が起こるため、製造過程から水分および酸素を排除した環境雰囲気中で封止膜形成を行う必要がある。一方、樹脂基板などのフレキシブル基板では、水分の吸収に伴う寸法変動を抑制する必要があり、そのために樹脂基板の表裏に封止膜を形成している。
【0004】
有機EL素子の封止膜には、水分、酸素の拡散防止は勿論であるが、(1)低温成膜(有機EL劣化防止)、(2)低ダメージ(有機EL劣化防止)、(3)低応力、低ヤング率(剥れ防止)、(4)高透過率(輝度劣化防止)などが求められる。封止方式で注目されている方式としては、積層薄膜方式がある。積層薄膜方式は、目的が異なる複数の薄膜を5層〜10層形成する方法である。一般的には、封止膜は水分または酸素などの拡散を抑制するために、膜密度が大きい薄膜が用いられる。具体的には、窒化シリコン膜およびアルミナ膜がその代表的な膜である。これらの膜は、膜が硬く(ヤング率が大きく)、膜応力も大きいため、厚い膜を用いると膜が剥がれたりクラックが発生する問題がある。このため、封止膜の応力を緩和する薄膜(バッファ膜)との積層構造の検討が進められている。バッファ膜に要求される特性は、下地の平坦化性能に優れていること、表面に付着した異物の影響を抑制するための埋め込み性能に優れていること、膜が軟らかい(ヤング率が小さい)こと、および膜応力が小さいことである。
【0005】
一方、封止膜の製造方法としては、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、光CVD法、スパッタ法、または蒸着法など、各種成膜方法が提案されている。その代表例としては、同じ手法を用いて封止膜とバッファ膜を連続して形成する真空紫外光を用いた光CVD法が挙げられる。特許文献1(特開2005−63850号公報)には、光CVD法を用いた封止膜の製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献1には、アノード電極、有機EL層、カソード電極を有する基板上に、真空紫外光CVD膜を含む封止膜を形成した装置であって、基板上に形成した発光層(有機EL層)上に透明電極を具備し、発光層の上方に光を取り出すトップエミッション型の有機ELディスプレイパネルが記載されている。特許文献1では、前記真空紫外光CVD膜が酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、またはそれらの積層膜を含むことを特徴としており、前記封止膜をカソード電極上に直接形成する方法が記載されている。
【0007】
ここでは、酸化シリコン膜を形成する原料ガスとして、メチル基、エチル基、シリコン(Si)、酸素(O)または水素(H)などを含むものを用いており、例えば、TEOS(Tetra ethoxy silane)、HMDSO(Hexa methyl disiloxane)、TMCTS(Tetra methyl cyclotetrasiloxane)またはOMCTS(Octo methyl cyclotetrasiloxane)などを用いている。また、窒化シリコン膜を形成する原料ガスとして、メチル基、シリコン(Si)、窒素(N)および水素(H)を含むものを用いており、例えば、BTBAS(Bis(tertiary butyl amino)silane)を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−63850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の有機ELディスプレイパネルでは、封止膜として酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層構造を用いているが、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜とでは屈折率差が大きいため、これらの積層膜は積層膜を構成する膜同士の界面で起こる可視光の反射が大きい問題がある。すなわち、酸化シリコン膜および窒化シリコン膜からなる封止膜をトップエミッション型の有機ELディスプレイパネルに採用した場合、有機EL層で発光した可視光の取り出し効率が小さいため、ディスプレイの輝度(光取出し効率)が小さいという課題が発生する。
【0010】
ここで、図8および図9に、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層構造の断面図を示し、また、図10および図11に、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層構造の反射率のシミュレーション結果を表わしたグラフを示す。図10および図11のグラフは、それぞれ図8および図9の積層構造の光の反射率の計算結果であり、横軸の波長の値に対する縦軸の反射率の値を示している。
【0011】
図8および図9に示す積層構造の最下層は、それぞれ有機EL素子のカソード電極301、401であり、ここではいずれのカソード電極もその屈折率を1.7としている。また、図8および図9に示す積層構造の最上層はそれぞれ接着層(樹層)306、406であり、ここでも接着層の屈折率を1.7としている。
【0012】
図8の積層構造は、カソード電極301上に、順に酸化シリコン膜302a、窒化シリコン膜302b、酸化シリコン膜303a、窒化シリコン膜303b、酸化シリコン膜304a、窒化シリコン膜304b、酸化シリコン膜305aおよび接着層306を積層したものである。また、図9の積層構造は、カソード電極401上に、順に窒化シリコン膜402b、酸化シリコン膜402a、窒化シリコン膜403b、酸化シリコン膜403a、窒化シリコン膜404b、酸化シリコン膜404a、酸化シリコン405bおよび接着層406を積層したものである。図8に示す酸化シリコン膜302a〜305aおよび図9に示す窒化シリコン膜402a〜404aの屈折率は1.45であり、図8に示す酸化シリコン膜302b〜304bおよび図9に示す窒化シリコン膜402b〜405bの屈折率は2.0である。ここでは、計算を簡素化するために各波長における屈折率を一定とし、また酸化シリコン膜および窒化シリコン膜による光の吸収は無いものとして計算している。
【0013】
窒化シリコン膜302b〜304bおよび402b〜405bの膜厚は全て100nmであり、最下層の酸化シリコン膜302a、402aの膜厚は1000nmであり、その他の酸化シリコン膜303a〜305a、403aおよび404aの膜厚は500nmである。
【0014】
図8に示す積層構造では、カソード電極301および接着層306に接している膜はそれぞれ酸化シリコン膜302a、305aであり、図9に示す積層構造ではカソード電極401および接着層406に接している膜はそれぞれ窒化シリコン膜402b、405bである。
【0015】
図10および図11から明らかなように、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の挿入位置を変えても、波長が500nm〜700nmの光の反射率は50%を超えていることが分かる。反射率が大きいほど光の透過性は低くなるため、有機EL上に図8および図9に示すような酸化シリコン膜および窒化シリコン膜を含む封止膜を形成した場合、封止膜内の反射率が50%を超えることになり、前記有機ELを備えたディスプレイ装置の輝度は低下する。この反射率は図8および図9に示す各積層膜の膜厚、およびカソード電極301、401または接着層306、406の屈折率の違いで多少の変動はあるが、大きな違いは無い。つまり、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層構造では、各界面で発生する多重反射の影響が特に大きく、この封止膜内の多重反射によりディスプレイの輝度が大幅に低下することが分かる。
【0016】
また、水分バリア性、すなわち水分の浸入を防ぐ能力の観点からは、一般的に膜密度が大きい無機膜の方が、水分バリア性が大きい。特許文献1では、封止膜の形成、特に窒化シリコン膜の形成の際に有機シリコンソースを適用しているが、有機シリコンソースを用いた光CVD成膜では、膜中に炭素(C)が多量に含有された有機膜が形成されるため、成膜される窒化シリコン膜の膜密度が小さくなる。このため、水分バリア膜(バリア膜)を形成する観点からは、膜中に炭素を含まない無機系のバリア膜を用いる方が、膜中に炭素を含むバリア膜を用いるよりもデバイスの信頼性の面では有利となる。
【0017】
さらに、有機EL上に真空紫外光による光CVD法を用いて封止膜を形成した場合のもう1つの大きな課題として、フォトンエネルギーの大きい真空紫外光により有機ELがダメージを負うことが挙げらる。図8および図9には示していないが、トップエミッション型有機ELディスプレイでは、カソード電極301、401の直下に有機ELが存在する。真空紫外光のフォトンエネルギーは約7eV以上もあり、カソード電極を僅かに透過しても有機ELに大きなダメージを与える。
【0018】
カソード電極には可視光(400nm〜700nm)に対して80%以上の透過率が求められる。トップエミッション型のOLED(Organic light Emitting Diode)ディスプレイにおいては、非常に薄い金属薄膜、例えばAl−LiまたはAg−Mgなどの合金が一般的に用いられる。カソード電極を透過する真空紫外光を抑制するには、カソード電極の膜厚を厚くすることが考えられるが、カソード電極を厚くすると可視光の透過率が大幅に低下する問題が生じる。
【0019】
ここでは、カソード電極側からの光取出しを行うトップエミッション型のOLEDディスプレイを一例として説明したが、カソード電極とアノード電極を逆に配置し、ITO(Indium Tin Oxide)などの酸化インジウム系やAZO(Aluminium doped Zinc Oxide)などの酸化亜鉛系のアノード電極から光放出を行う構造においても同様の問題が起こる。したがって、真空紫外光を用いた光CVD膜で薄膜封止を行うには、有機ELに光ダメージを与えることなく、可視光の透過率を大きくする技術が必要となる。
【0020】
本発明の目的は、光半導体装置の封止膜の反射率を低減し、光取出し効率を向上させることにある。
【0021】
また、本発明の他の目的は、光半導体装置の封止膜を形成する際の光CVD法による有機ELへの光ダメージを大幅に抑制することにある。
【0022】
本発明の前記の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0024】
本願の1発明による光半導体装置は、
基板上に前記基板の主面側から順に形成された第1電極、有機発光層および第2電極と、前記発光層を覆うように前記基板上に設けられた封止膜とを有する光半導体装置であって、
前記封止膜は平坦化膜とバリア膜とを交互に積層した積層膜を含み、
前記平坦化膜および前記バリア膜は酸窒化シリコン膜を含むものである。
【0025】
また、本願の1発明により光半導体装置の製造方法は、
(a)基板上に第1電極を形成する工程と、
(b)前記第1電極上に前記第1電極と電気的に接続された有機発光層を形成する工程と、
(c)前記有機発光層上に前記有機発光層と電気的に接続された第2電極を形成する工程と、
(d)前記有機発光層上に、真空紫外光を用いた光CVD法により酸窒化シリコン膜を形成する工程と、
を有し、
前記(d)工程では、前記真空紫外光の照射中にリモートプラズマによるラジカル照射を行うものである。
【発明の効果】
【0026】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0027】
本発明によれば、光半導体装置の光取出し効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態である光半導体装置の断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態である光半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図3】図2に続く光半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図4】図3に続く光半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態である光半導体装置の製造工程で使用する成膜装置の模式図である。
【図6】本発明の一実施の形態および比較例のそれぞれのバリア膜およびバッファ膜の構成を説明する表である。
【図7】図4に続く光半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図8】比較例として示す積層構造の断面図である。
【図9】比較例として示す積層構造の断面図である。
【図10】比較例として示す積層構造の波長に対する反射率を示したグラフである。
【図11】比較例として示す積層構造の波長に対する反射率を示したグラフである。
【図12】膜構成の違いによる反射率の変化を説明するグラフである。
【図13】膜構成の違いによる反射率の変化を説明するグラフである。
【図14】膜構成の違いによる反射率の変化を説明するグラフである。
【図15】バッファ膜およびバリア膜の屈折率差と最大反射率の関係を示すグラフである。
【図16】比較例として示す積層構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0030】
以下に、本発明の実施形態について図を用いて説明する。
【0031】
図1に、本実施の形態の有機EL素子を含む光半導体装置の断面図を示す。本実施の形態の有機EL素子は、図1に示すようにガラス基板101を有し、ガラス基板101上には絶縁膜102を介してアノード電極103およびバンク部104が形成されている。ガラス基板101は例えば石英を含み、絶縁膜102は酸化シリコン膜からなる。バンク部104は感光性ポリイミドからなる絶縁膜であり、絶縁膜102の上面に接している。アノード電極103は例えば、アルミニウムおよび酸化インジウム・スズ(ITO:Indium-Tin-Oxide)を順に積層した積層膜からなる導電層であり、絶縁膜102の上面に接している。バンク部104はテーパー角がある開口部を有し、前記開口部の底部にはアノード電極103の上面が露出している。ただし、アノード電極103の側面はバンク部104により覆われている。なお、ここではガラス基板101の部材を例えば石英であるとして説明したが、ガラス基板101は樹脂基板であっても構わない。
【0032】
ここでいうバンク部104とは、土手状に形成された絶縁膜であり、互いに平行な底面および上面を有し、それらの底面および上面に対して斜めのテーパー角を有する側壁を備えた台形の膜である。
【0033】
アノード電極103上およびバンク部104上には、有機EL層105が形成されている。有機EL層105は前記開口部の底部でアノード電極103の上面に接し、前記開口部から露出するアノード電極103の上面、前記開口部のテーパー角を有する内壁およびバンク部104の上面の一部を覆うように形成されている。有機EL層105は、アノード電極103側から積層された正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層からなる積層膜により構成されている発光層であり、ここでは前記積層膜を一括して有機EL層105として説明する。
【0034】
有機EL層105上およびバンク部104上には、有機EL層105を覆うようにカソード電極106および真空紫外光吸収層107がガラス基板101側から順に形成されている。カソード電極106は20nm程度の膜厚を有するAg−Mg合金からなる導電層である。真空紫外光吸収層107はカソード電極106を覆うように形成されており、また、平面視において有機EL層105と重なるように形成されている。すなわち、真空紫外光吸収層107は有機EL層105の直上に形成されている。また、真空紫外光吸収層107は酸窒化シリコン膜により形成されており、150nm程度の膜厚を有する。
【0035】
真空紫外光吸収層107上には、バッファ膜108、バリア膜109、バッファ膜110、バリア膜111、バッファ膜112がガラス基板101側から順に積層されている。バッファ膜108、110、112、バリア膜109および111は封止膜を構成し、バリア膜は主に水分に対するバリア膜である。図1に示すように、有機EL層105上にはガラス基板101側から順にバッファ膜およびバリア膜が交互に複数層積層されている。バリア膜109および111はバッファ膜108、110および112よりも膜密度が大きいため、バッファ膜108、110および112よりも水分バリア性が高い。ここでは、バッファ膜およびバリア膜をまとめて封止膜と定義する。なお、本願に記載する封止膜とは、外部から有機EL層や樹脂基板に進入する水分や酸素を防ぐ膜を指す。
【0036】
バッファ膜108、110および112は封止膜を構成する複数の膜のそれぞれの上面および下面を平坦化する働きを有する。これは、バッファ膜108、110および112が製造工程において流動性を示すためであり、バンク部104の開口部によってバッファ膜108の下地に凹凸が形成されていても、バッファ膜108の上面は平坦な形状となる。つまり、封止膜中の最下層に形成されたバッファ膜108の底面は凸凹を有していても、その上面は平坦化される。また、バリア膜109、111よりもヤング率が低いバッファ膜108、110および112は、封止膜全体を低ヤング率化し、封止膜の剥がれの発生または封止膜のクラックの発生を防ぐ働きを有する平坦化膜である。
【0037】
図1には示してはいないが、アノード電極103上およびカソード電極106上には、それぞれ外部と電気的に接続するためのコンタクトプラグおよび配線パッドが形成されており、それぞれ独立して電圧を印加できる構造になっている。なお、バリア膜109、111はいずれも150nm程度の膜厚を有し、バッファ膜108、110および112はいずれも1000nm程度の膜厚を有する。
【0038】
なお、本実施の形態の有機EL素子を構成するバッファ膜108、110、112、バリア膜109および111はいずれも酸窒化シリコン膜により形成されているが、比較のため、図1に示すバッファ膜108、110、112、バリア膜109および111が酸化シリコン膜および窒化シリコン膜などの部材で形成されている場合の有機EL素子についても後に説明する。
【0039】
本実施の形態の光半導体装置の大きな特徴は、バッファ膜108、110および112が、真空紫外光による光CVD法により形成された無機の酸窒化シリコン膜を含んでいることにある。以下に、本実施の形態の光半導体装置の効果について説明する。
【0040】
発光層である有機EL層の上部のカソード電極および封止膜を透過して光を放出するトップエミッション型の有機EL素子では、有機EL層上に形成された前記封止膜は積層構造を有していることが考えられる。封止膜は素子の外部から水分などが素子内に浸入することを防ぐバリア性を有している必要があり、また、封止膜の積層構造を構成するそれぞれの膜同士の界面は、有機EL層から放出される光を効率良く取り出すために高い平坦性を有している必要がある。上部に有機EL層を備えたアノード電極と封止膜との間には、有機EL層の上面を露出する開口部を有するバンク部が形成されており、バンク部の上面には、前記開口部により大きい凹凸が形成されており、また、エッチング残渣などによりバンク部上に凹凸が形成されていることがある。したがって封止膜は、水分のバリア性を確保すると共に、前述した凹凸を覆うように埋め込んだ際、封止膜の積層構造を構成する膜同士の界面の平坦性を向上させる性質を有することが重要となる。
【0041】
したがって、前記封止膜は、水分バリア性に優れた窒化シリコン膜と、形成時の流動性に優れ、形成後にその上面が平坦に形成されやすい酸化シリコン膜とを積層した構造とされることが考えられる。しかし、このように窒化シリコン膜と酸化シリコン膜とを積層して形成した封止膜を有する光半導体装置では、封止膜内での多重反射により、有機EL素子の輝度が低下する課題がある。
【0042】
有機EL層から発光される可視光の多重反射を抑制するためには、入射側の層(カソード電極)の材料とそれに接する封止膜との屈折率差、出射側の層(接着層)の材料とそれに接する封止膜との屈折率差、および積層封止膜間の屈折率差を極力小さくすれば良い。なお、ここでいう入射側、および出射側とは、カソード電極の下部の有機EL層から上方へ向けて放出された光が、カソード電極側(入射側)から入射し、接着層側(出射側)へ出射されることを意味する。
【0043】
ここで図12〜図14に、積層構造の反射率シミュレーション結果であるグラフを示す。これらのグラフは図8に示す積層構造の反射率の計算結果であり、それぞれのグラフの横軸は300nm〜900nmの波長帯域を示し、縦軸は前記積層構造の内部を下層から上層に向けて光が透過した際の反射率を示している。図8は比較例である積層構造の断面図であり、この積層構造は、カソード電極301上に、順に酸化シリコン膜302a、窒化シリコン膜302b、酸化シリコン膜303a、窒化シリコン膜303b、酸化シリコン膜304a、窒化シリコン膜304b、酸化シリコン膜305aおよび接着層306を積層したものである。図8に示す積層構造の最下層のカソード電極301および最上層の接着層(樹脂)306のそれぞれの屈折率は共に1.7である。窒化シリコン膜302b、303bおよび304bは水分などの浸入を防ぐバリア膜であり、酸化シリコン膜302a、303a、304aおよび305aは封止膜全体の平坦性を向上させ、またヤング率を低下させる働きを有するバッファ膜(平坦化膜)である。
【0044】
すなわち、バッファ膜はバリア膜よりもヤング率が低く、製造工程中においては流動性を有するため、バッファ膜を形成する領域の下地に凹凸が形成されていたとしても、バッファ膜はその凹凸を埋め込んで形成され、また、形成されたバッファ膜の上面は平坦になる。
【0045】
図12〜図14のグラフは、図8に示す窒化シリコン膜302b、303bおよび304bの屈折率を1.7として計算したシミュレーション結果であり、横軸は波長を示し、縦軸は反射率を示している。また、酸化シリコン膜302a、303a、304aおよび305aの屈折率は、図12では1.5、図13では1.55、図14では1.6として計算した結果を示している。すなわち、図12、図13および図14に示すグラフでは、順に封止膜を構成する酸化シリコン膜の屈折率を窒化シリコン膜、カソード電極および接着層の屈折率に近付けることで屈折率差を小さくしていった場合の積層構造の反射率の変化を知ることができる。つまり、図12で計算した場合の積層構造を構成する酸化シリコン膜の屈折率よりも、図14で計算した積層構造を構成する酸化シリコン膜の屈折率の方が、前述した窒化シリコン膜、カソード電極および接着層の屈折率である1.7に近い値となっている。なお、ここでは計算を簡素化するために各波長における屈折率を一定とし、薄膜による光吸収は無いものとして計算している。図12〜図14のグラフから、積層膜の屈折率差が小さくなると反射率が小さくなることが分かる。
【0046】
また、図15に、封止に用いる積層膜の屈折率差と前記積層膜の最大反射率の関係を示す。図15は、横軸に示す積層膜を構成するバッファ膜およびバリア膜の屈折率差に対する縦軸の最大反射率の関係を示すグラフである。図15から分かるように、屈折率差が大きくなると最大反射率は大きくなる。この反射率の数値は、光の入射側材料、および放出側材料の屈折率による変動による影響よりも、積層膜の屈折率の違いにより発生する多重反射の影響が特に大きく、これらの屈折率差を小さくすることで反射率を抑制できる。
【0047】
例えば、封止膜を構成する酸化シリコン膜の屈折率を1.7程度にする手段としては、酸化シリコン膜に窒素を含有させて酸窒化シリコン膜(SiON膜)にする方法が一般的である。ただし、炭素を多量に含む有機ソースを原料ガスとした光CVD法では、膜密度の大きな薄膜、すなわち水分に対してバリア性の大きい水分バリア膜(バリア膜)を得ることが困難である。したがって、積層封止膜の水分バリア膜には、信頼性の面から無機膜を用いることが望ましい。
【0048】
さらに、真空紫外光を用いる光CVD法で酸窒化シリコン膜を形成する場合、有機シリコン系のガスと酸化源や窒化源となるガスを反応させる方法があるが、窒素原子(N)の原料ガスとなる、アンモニアガス(NH)または窒素ガス(N)などは、消光断面積が小さいため、光アシストによる分解効率が小さく、所望の組成の酸窒化シリコン膜を得ることが非常に困難である。つまり、真空紫外光を用いる光CVD法で酸窒化シリコン膜を形成する場合、形成した酸窒化シリコン膜内には所望の量の窒素が導入されず、屈折率を1.7に近づけることは困難であるという問題がある。そこで、本実施の形態では、熱CVD膜またはプラズマCVD膜などよりも低応力であり低ヤング率の光CVD膜の利点を活かしつつ、優れた水分バリア性を得るために、リモートプラズマアシストによる酸窒化シリコン膜(バッファ膜およびバリア膜)の成膜を行っている。なお、プラズマアシストとは、プラズマで原料を前分解してラジカルの状態で原料を供給することで膜堆積を行う成膜方法であり、本実施の形態では原料ガスを用いた光CVD法とプラズマアシストとを併用して前記酸窒化シリコン膜を形成している。また、ラジカルを分離して利用するために、被処理表面(基板)をプラズマ領域(プラズマゾーン)から離れた位置に配置することを、ここではリモートプラズマと呼ぶ。また、プラズマで原料を前分解してラジカルの状態で原料を供給することを、ここではラジカル照射と呼ぶ。
【0049】
具体的には、バッファ膜の成膜は光CVDの原料ガスに炭素を含む有機シリコンソースを用い、窒化源としてリモートプラズマで形成した窒素ラジカル、もしくは窒素ラジカルと酸素ラジカルとを導入する。これにより光CVD膜の利点を活かしたSiON(酸窒化シリコン)膜が形成できる。一方、バリア性が大きいSiON膜の形成には、光CVDの原料ガスに高次シランなどの炭素を含まない無機シリコンソースを用い、窒化源としてリモートプラズマで形成した窒素ラジカル、もしくは窒素ラジカルと酸素ラジカルとを導入する。これにより、水分バリア性が大きい無機SiON膜を形成できる。つまり、図1に示すバッファ膜108、110および112は炭素を含む有機の酸窒化シリコン膜であり、バリア膜109および111は炭素を含まない無機の酸窒化シリコン膜である。炭素を含まない無機の酸窒化シリコン膜でバリア膜109および111を構成することにより、膜密度が高く、水分バリア性が高いバリア膜109および111を形成することができる。
【0050】
バッファ膜108、110、112、バリア膜109および111は真空紫外光を用いた光CVD法とリモートプラズマを用いたプラズマCVD法とを併用して形成された酸窒化シリコン膜により構成されている。リモートプラズマアシストを用いた光CVD法による酸窒化シリコン膜の形成方法については、後に詳しく記述する。なお、消光断面積とは物質の光の吸収しやすさを示す尺度であり、消光断面積が大きい物質であるほど光を吸収しやすく、光CVD法においては分解しやすくなる。
【0051】
本実施の形態の光半導体装置では、膜応力およびヤング率が小さく埋め込み性に優れたバッファ膜と、水分バリア性が大きいバリア膜とを含む積層封止膜を形成するにあたり、バッファ膜とバリア膜の両者の屈折率差を極力小さくし、積層封止膜内での多重反射を抑制することができる。また、積層封止膜を構成する膜同士の屈折率差を小さくすることで、光半導体装置の光取出し効率が大幅に向上することができる。
【0052】
ただし、有機EL層上にカソード電極を介して光CVD法により封止膜を形成する場合、封止膜を形成する際に照射する真空紫外光がカソード電極を透過して有機EL層に達し、有機EL層がダメージを負うことで有機EL層が殆ど発光しなくなる問題がある。光CVD法の成膜工程において使用される真空紫外光のフォトンエネルギーは約7eV以上あり、カソード電極を僅かに透過しても有機ELに大きなダメージを与える。
【0053】
カソード電極には可視光(400nm〜700nm)に対して80%以上の透過率が求められる。トップエミッション型のOLEDディスプレイにおいては、非常に薄い金属薄膜、例えばAl−Li合金やAg−Mg合金などが用いられることが考えられる。カソード電極を透過する真空紫外光を抑制する方法としては、カソード電極の膜厚を厚くする方法が考えられるが、カソード電極を厚くすると可視光の透過率が大幅に低下するため、完成した有機EL素子の輝度が低下する。
【0054】
そこで、本実施の形態の光半導体装置では、図1に示すように、カソード電極106上に真空紫外光吸収層107を設けることにより、カソード電極106上に光CVD法を用いて封止膜を形成した際に、光CVD法による成膜工程で用いる真空紫外光を真空紫外光吸収層107により吸収し、有機EL層105が真空紫外光によりダメージを受けることを防いでいる。有機EL層105への真空紫外光の透過率が10%以上になると有機EL層105の光劣化が顕著になるため、本実施の形態では真空紫外光吸収層107の部材に酸窒化シリコン膜を用いることで、有機EL層105に通過する真空紫外光の透過率を約10%未満に抑えている。つまり、真空紫外光吸収層107は、真空紫外光を90%以上吸収する絶縁膜により構成されている。これにより、カソード電極106の膜厚を厚くすることなく有機EL層105の光劣化を防ぐことを可能としている。
【0055】
このように、本実施の形態では光CVD膜の成膜工程における有機EL層への光ダメージを抑制するため、光CVD成膜を行う前に、真空紫外光の吸収層を有機EL層上にプラズマCVD法を用いて形成している。前記光吸収層を形成することで、積層封止膜を形成する際の真空紫外光による有機EL層へ光ダメージを大幅に抑制することが可能としている。
【0056】
以下に、図1〜図7を用いて本実施の形態の詳細を説明する。まず、図2に示すように、準備したガラス基板101上に、絶縁膜102を形成する。絶縁膜102は、TEOSおよびO(酸素)を原料ガスとするプラズマCVD法で形成し、例えば200nmの膜厚とする。続いて、アルミニウムと酸化インジウム・スズ(ITO:Indium Tin Oxide)の積層膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いたドライエッチング法により前記積層膜を所定の形状に加工することでアノード電極103を形成する。
【0057】
次に、図3に示すように、感光性のポリイミド膜をアノード電極103上および絶縁膜102上に形成した後、アノード電極103の上面の一部が露出する開口部を光加工により形成することで、前記ポリイミド膜からなるバンク部104を形成する。前記開口部は、テーパー角を有しており、開口部の底部の幅は、開口部の最上部の幅よりも狭い。このように、露出しているアノード電極103の上面から上方に向かって広がるように開口部を形成するのは、この後の工程においてアノード電極103上およびバンク部104の開口部上に形成する有機EL層105を不具合無く形成するためである。つまり、例えば開口部がガラス基板101の主面に対して垂直な内壁を有する場合、有機EL層105は開口部の内壁に沿って形成され、また開口部の底部および上部において直角に曲がるように形成されるため、均一な精度で発光層である有機EL層105を形成することが困難となる。したがって、バンク部104の開口部はテーパー角を有し、開口部の上部に緩やかな角度で有機EL層105を形成することを可能としている。
【0058】
その後、マスク蒸着法を用い、バンク部104の前記開口部の底部に、アノード電極103と電気的に接続された有機EL層105を形成する。有機EL層105は、アノード電極103側から順に形成された正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層から構成されているが、ここではそれらの積層膜を一括して有機EL層105として説明する。本実施の形態では有機EL層105に蛍光発光の低分子材料を用いているが、本発明は有機EL層に関する発明ではないため、ここでは有機EL層105の材料に関する詳細な説明は省略する。
【0059】
次に、図4に示すように、バンク部104上および有機EL層105上にマスク蒸着法を用いて厚さ20nmのAg−Mg合金膜からなるカソード電極106を形成した後、カソード電極106上にプラズマCVD法により酸窒化シリコン膜からなる真空紫外光吸収層107を形成する。本実施の形態では、真空紫外光吸収層107の形成に、モノシラン(SiH)、窒素、酸素を原料ガスとする誘導結合型のICP−CVD(Inductively Coupled Plasma-CVD)法を用いたが、有機EL層105に熱ダメージ(約100℃以下)またはプラズマダメージなどを与えなければ、その他の方法であって、例えば容量結合型のCCP−CVD(Capacitively Coupled Plasma-CVD)法、もしくはスパッタ法または蒸着法などで形成しても問題無い。本実施の形態では、真空紫外光吸収層107となる酸窒化シリコン膜の、波長が632.8nmの光に対する屈折率を1.7とし、その膜厚を150nmとしている。なお、波長632.8nmの光はHe−Neのガスレーザー装置を用いて発生させた可視光である。
【0060】
次に、図5に示す成膜装置を用いて真空紫外光吸収層107上に積層構造を有する封止膜を形成することにより、図7に示す構造を形成する。ここでは、有機EL層105上にカソード電極106および真空紫外光吸収層107を介してバッファ膜およびバリア膜を有機EL層105側から順に交互複数層に積層する。つまり、図7に示すように、真空紫外光吸収層107上に膜厚1000nmのバッファ膜108、膜厚150nmのバリア膜109、膜厚1000nmのバッファ膜110、膜厚150nmのバリア膜111および膜厚1000nmのバッファ膜112を順に形成することで、これらのバッファ膜108、110、112、バリア膜109および111からなる前記封止膜が形成される。
【0061】
バッファ膜108が形成される下地には真空紫外光吸収層107が形成されているが、前記下地の表面はバンク部104が有する開口部により凹凸形状を有している。前記封止膜は有機EL素子の発する光の経路となるため、前記封止膜内での光の拡散および反射を抑える必要があり、ガラス基板101の主面に対して平行で平坦な上面を有することが望ましい。ここでは、成膜時に流動性を示すバッファ膜108を形成することにより、前記下地の凹凸形状を埋め込んだ際、バッファ膜108の上面は平坦な形状とすることができるため、その上部に形成するバッファ膜およびバリア膜の上面および底面をガラス基板101の主面に平行で平坦な形状にすることができる。
【0062】
また、前記開口部による凹凸形状の他に、バッファ膜108の形成前にガラス基板101上に形成されたエッチング残渣または塵埃などの異物もバッファ膜108により埋め込むことができるため、バッファ膜108の下地に形成された凹凸が封止膜を構成する膜同士の界面を歪めることにより有機EL素子の輝度が低下することを防ぐことができる。
【0063】
また、このような異物が存在している下地にバッファ膜よりも埋め込み性が低いバリア膜を直接形成した場合、前記異物の直下の下地表面および前記異物の側面などにはバリア膜が形成されない隙間が発生することが考えられる。バリア膜は水分の浸入を防ぐための水分バリア膜であるため、バリア膜が部分的に形成されていないような隙間が発生した場合、有機EL素子の水分に対する耐性が劣化し、光半導体装置の信頼性が低下する。これに対し、上述したようにバリア膜109を形成する前に流動性を有するバッファ膜108を形成することにより、下地表面に異物が形成されている場合でも前記異物を包み込むようにバッファ膜108を形成することができるため、バッファ膜108上に形成するバリア膜109に隙間が生じて有機EL素子の水分バリア性が低下することを防ぐことができる。
【0064】
ここで、本実施の形態の前記封止膜の形成に用いた成膜装置の模式図を図5に示す。図5に示す成膜装置は、真空排気機構508と圧力制御機構を有する反応室501、合成石英窓503、真空紫外光ランプユニット504、リモートプラズマ導入口505a、505b、ガス導入口506a、506bおよび温度制御付サセプタ507により構成されている。リモートプラズマ導入口505a、505bからは装置外部で発生させた各種ラジカル、例えば、窒素ラジカル(N)、酸素ラジカル(O)、アルゴンラジカル(Ar)などが導入される。本実施の形態では、真空紫外光ランプユニット504にXeエキシマランプ(波長=172nm)を用いて成膜を行う。なお、図5に示すように、成膜工程において成膜を行う対象である基板(ガラス基板)502は温度制御付サセプタ507の上部に配置される。また、図5に示す成膜装置の各構成は、コントローラ509により制御される。すなわち、コントローラ509は、上記各種ラジカルの流量(流入量)、真空紫外光ランプユニット504への電圧の印加および温度制御付サセプタ507の温度などを制御する役割を有する装置である。
【0065】
また、図6に本実施の形態で検討した封止膜の膜構成を説明する表を示す。図中の括弧内には、成膜に用いた原料ガスを示している。ここでは、有機シリコンソースとしてOMCTS(Octo methyl cyclotetrasiloxane)およびBTBAS(Bis(tertiary butyl amino)silane)を例示し、無機シリコンソースとしてSi(ジシラン)を例示しているが、これらは好適例の1つであり、封止膜の成膜に用いる原料ガスはこれらの原料ガスに限定するものではない。OMCTSと同様の効果を得るガスとしては、例えばTEOS(Tetra ethoxy silane)、HMDSO(Hexa methyl disiloxane)などがあり、BTBASと同等の効果を得るガスとしては、HMDS(Hexa methyl disilazane)、HMCTSN(Hexa methyl cyclotrisilazane)などを用いることも可能である。
【0066】
ここでは、封止膜を構成するバッファ膜およびバリア膜の膜構成の組み合わせとして、図6の表の膜構成A〜Dのそれぞれの組み合わせを一例として示す。
【0067】
図6に示す膜構成Aは、バッファ膜に酸化シリコン膜、バリア膜に窒化シリコン膜をそれぞれ用いた構成であり、同様の膜構成を形成することが特許文献1にも記載されている。膜構成Aにおいてバッファ膜を構成する酸化シリコン膜は、OMCTSを用いた光CVD法により形成され、バリア膜を構成する窒化シリコン膜は、BTBASを用いた光CVD法により形成されるものである。
【0068】
また、図6に示す膜構成Bは、バッファ膜に酸化シリコン膜、バリア膜に酸窒化シリコン膜を用いた構成である。膜構成Bにおいてバッファ膜を構成する酸化シリコン膜はOMCTSを用いた光CVD法により形成され、バリア膜を構成する酸窒化シリコン膜はSi、OおよびNを用いたプラズマアシスト光CVD法により形成されるものである。なお、先のOおよびNは、それぞれ酸素のラジカルおよび窒素のラジカルを表している。
【0069】
また、図6に示す膜構成Cおよび膜構成Dは、いずれもバッファ膜およびバリア膜に酸窒化シリコン膜を用いている。バリア膜は、膜構成Cも膜構成Dも共にSi、OおよびNを用いたプラズマアシスト光CVD法を用いている点は同様だが、バッファ膜の形成ガスが異なっている。膜構成Cでは、OMCTSおよびNを用い、膜構成DではBTBASおよびOを用いて酸窒化シリコン膜を形成している。膜構成CおよびDにおいてバッファ膜の形成に用いられる原料であるOMCTSおよびBTBASはそれぞれメチル基およびブチル基を有しており、いずれも炭素を含む有機材料であるのに対し、バリア膜の形成に用いられる原料であるSi(高次シラン)ガスは炭素(C)を含まない無機材料である。
【0070】
以下に、図6に示したA〜Dの4組の膜構成を図1のバッファ膜およびバリア膜に適用した場合の製造方法を説明し、それぞれの膜構成で形成した封止膜の反射率および光取出し効率(輝度)を比較した結果を示す。
【0071】
図4を用いて説明した工程により真空紫外光吸収層107を形成した各試料(基板502)は図5に示すように、真空に維持された反応室501内の温度制御付サセプタ507上に搬送され、所定のシーケンスにより成膜が行われる。このとき、温度制御付サセプタ507により基板502は所望の温度に制御される。有機EL層は100℃程度の熱で劣化し、発光しなくなる性質を持っているので、基板502は温度制御付サセプタ507により50℃程度に保たれる。成膜工程においてリモートプラズマによるプラズマアシストが無い場合は、ガス導入口506a、506bから原料ガスを反応室501に導入し圧力調整を行った後に、真空紫外光ランプユニット504から真空紫外光を照射して成膜を開始する。一方、プラズマアシストを用いる方法では、ガス導入口506a、506bから原料ガスを反応室501に導入し圧力調整を行った後に、真空紫外光ランプユニット504から基板502に真空紫外光の照射を行うと同時にプラズマアシストを行うことで成膜が開始される。つまり、真空紫外光の照射中に、リモートプラズマを用いたプラズマ照射を行う。
【0072】
膜構成Aでは、ガス導入口506aよりOMCTSを導入し、真空紫外光ランプユニット504からXeランプを照射して酸化シリコン膜から成るバッファ膜108を基板502上に形成する。続いて、ガス導入口506bよりBTBASを導入し、真空紫外光ランプユニット504からXeランプを照射して窒化シリコン膜から成るバリア膜109を基板502上に形成する。同様の方法で、バッファ膜(酸化シリコン膜)110、バリア膜(窒化シリコン膜)111およびバッファ膜(酸化シリコン膜)112を順に基板502上に形成する。
【0073】
膜構成Bでは、ガス導入口506aよりOMCTSを導入し、真空紫外光ランプユニット504からXeランプを照射して酸化シリコン膜から成るバッファ膜108を基板502上に形成する。続いて、ガス導入口506bよりSiを、リモートプラズマ導入口505aよりNを、リモートプラズマ導入口505bよりOを導入し、真空紫外光ランプユニット504からXeランプを照射して酸窒化シリコン膜から成るバリア膜109を基板502上に形成する。同様の方法で、バッファ膜(酸化シリコン膜)110、バリア膜(酸窒化シリコン膜)111およびバッファ膜(酸化シリコン膜)112を順に基板502上に形成する。
【0074】
膜構成Cでは、ガス導入口506aよりOMCTSを、リモートプラズマ導入口505aよりNを導入し、真空紫外光ランプユニット504からXeランプを照射して酸窒化シリコン膜から成るバッファ膜108を基板502上に形成する。続いて、ガス導入口506bよりSiを、リモートプラズマ導入口505aよりNを、リモートプラズマ導入口505bよりOを導入し、真空紫外光ランプユニット504からXeランプを照射して酸窒化シリコン膜から成るバリア膜109を基板502上に形成する。同様の方法で、バッファ膜(酸窒化シリコン膜)110、バリア膜(酸窒化シリコン膜)111およびバッファ膜(酸窒化シリコン膜)112を順に基板502上に形成する。なお、バッファ膜108、110および112を形成する際はリモートプラズマ導入口505aよりNを導入すると共に、リモートプラズマ導入口505bよりOを導入しても良い。
【0075】
膜構成Dでは、ガス導入口506aよりBTBASを、リモートプラズマ導入口505bよりOを導入し、真空紫外光ランプユニット504からXeランプを照射して酸窒化シリコン膜から成るバッファ膜108を基板502上に形成する。続いて、ガス導入口506bよりSiを、リモートプラズマ導入口505aよりNを、リモートプラズマ導入口505bよりOを導入し、真空紫外光ランプユニット504からXeランプを照射して酸窒化シリコン膜から成るバリア膜109を基板502上に形成する。同様の方法で、バッファ膜(酸窒化シリコン膜)110、バリア膜(酸窒化シリコン膜)111およびバッファ膜(酸窒化シリコン膜)112を順に基板502上に形成する。なお、バッファ膜108、110および112を形成する際はリモートプラズマ導入口505aよりNを導入すると共に、リモートプラズマ導入口505bよりOを導入しても良い。
【0076】
上記方法で形成する各層の、波長632.8nmの光に対する屈折率は下記の通りである。膜構成A、Bのバッファ膜(酸化シリコン膜)の屈折率は1.44であり、膜構成Aのバリア膜(窒化シリコン膜)の屈折率は1.92である。一方、膜構成C、Dのバッファ膜(酸窒化シリコン膜)の屈折率は1.65であり、膜構成B、CおよびDのバリア膜(酸窒化シリコン膜)の屈折率は1.7である。
【0077】
上記の結果から、本実施の形態の光半導体装置では、図1に示すバッファ膜とバリア膜の構成に、図6に示す膜構成A、Bではなく、膜構成CまたはDの構成を採用している。つまり、図6に示す膜構成CおよびDが本実施の形態で用いられている膜構成であり、膜構成AおよびBは比較例の膜構成である。したがって、本実施の形態の有機EL素子では、図1に示すバッファ膜108、110、112、バリア膜109および111はいずれもプラズマアシストを用いた光CVD法により形成された酸窒化シリコン膜により形成されている。
【0078】
本実施の形態における酸窒化シリコン膜の組成および屈折率(吸収係数)は、シリコン系原料ガスと酸素ラジカル(O)および窒素ラジカル(N)の流量比で調整できる。なお、本実施の形態では酸化源を酸素ラジカルとして供給した例を示したが、酸素は真空紫外光に対する分解効率が高い(消光断面積が大きい)ため、酸素ラジカルでなく酸素ガスで供給しても酸窒化シリコン膜の形成は可能である。すなわち、上記各ガス流量比の調整を行うことで、所望の組成や屈折率(吸収係数)を有する酸窒化シリコン膜を形成することが出来る。このように酸素ラジカルではなく酸素ガスを用いる方法は、例えば図6の膜構成C、Dのバリア膜の形成の際、および膜構成Dのバッファ膜の形成の際に適用できる。
【0079】
この後、周知の技術により、図7に示すアノード電極103およびカソード電極106へ接続する配線(図示しない)をそれぞれ形成することにより、本実施の形態の有機EL素子の主要部が完成する。
【0080】
以上に説明した方法により、図6に示す膜構成A〜Dのそれぞれの構成のバッファ膜およびバリア膜を有する4種類の有機EL素子に、同一の条件で電流を注入した場合の輝度を比較した結果を以下に説明する。まず、図1に示すように真空紫外光吸収層107を形成する試料構造で比較した場合、最も高い輝度を示した試料は、膜構成Cと膜構成Dの試料であり、いずれもほぼ同等の輝度を示した。これに対し、比較例である膜構成Bは膜構成Cの20%〜30%、比較例である膜構成Aは膜構成Cの8%〜15%の輝度しか得られなかった。
【0081】
さらに、上記試料を相対湿度90%、80℃の環境に一定時間放置し、初期の輝度に対する輝度の変動量を比較した。その結果、膜構成C、Dの輝度は殆ど変化しなかったのに対し、膜構成Bは90%〜95%、膜構成Aは70%〜80%の輝度に減少した。以上に示したように、膜構成CまたはDの封止膜を有する本実施の形態の光半導体装置によれば、有機EL素子の光取出し効率(輝度)を向上させることができ、また、水分に対する信頼性を向上させることが可能となる。
【0082】
本実施の形態では、リモートプラズマアシストによる光CVD法で水分バリア膜(バリア膜)を形成する一例を示したが、光取出し効率(屈折率制御)または水分バリア性(膜密度)の観点からは、他の成膜方法を用いても同様の効果が得られる。例えば、図1に示す流動性が大きいバッファ膜108の形成により下地、すなわちバッファ膜108の上面が平坦化されていれば、段差被覆性で光CVD法よりも劣るプラズマCVD法でバリア膜109、111を用いても良い。ただし、本実施の形態で示したように、封止膜を構成するバッファ膜およびバリア膜を同じ装置で連続して成膜すれば、スループットを大幅に向上することができる。
【0083】
また、本実施の形態では、リモートプラズマアシストによる光CVD法で形成するバッファ膜108、110および112の屈折率を1.65としたが、その他の特性を考慮した膜組成の設定が不可欠となる。具体的には、有機シリコンソースを用いた光CVD法による成膜では、膜中の窒素の含有量を増加させると屈折率は増加するが、膜の流動性は劣化し、膜応力およびヤング率が増加する傾向を示す。すなわち、バッファ膜には、良好な平坦性、クラックの発生および膜剥がれを防止するための低応力、低ヤング率と同時に、積層封止膜内の多重反射の抑制といった、相反する性質が求められる。本発明者らは上記項目を考慮して検討し、波長632.8nmの光に対するバリア膜とバッファ膜との屈折率差が0.25以下の範囲であれば、膜のクラックまたは剥がれを発生させること無く、良好な光取出し効率(輝度)が得られることを確認した。
【0084】
次に、図1に示すような真空紫外光吸収層107を形成した試料と、図16に示すような、真空紫外光吸収層を形成しない試料の比較を行った。図16は比較例として示す光半導体装置の断面図であり、両者は共に封止膜の膜構成は同じく図6の膜構成Aの構成を有しているが、図16に示す比較例の有機EL素子にはカソード電極206の上部に紫外光吸収層が形成されていない点で本実施の形態の有機EL装置と異なる。つまり、紫外光吸収層が形成されていない点以外は、図16に示す有機EL素子は図1に示す有機EL素子と同じ構造を有している。
【0085】
図1に示す真空紫外光吸収層107を形成した試料は封止膜が図6に示す膜構成Aであるため、膜構成C、Dに比べると輝度は小さいが発光するのに対し、真空紫外光吸収層107を形成しなかった図16に示す試料は、殆ど発光しなかった。これは、封止膜形成工程の最初の工程であるバッファ膜208の形成過程で、光CVD法で用いる真空紫外光がカソード電極206を通過して有機EL層205に光ダメージを与えるためである。これに対し、本実施の形態では、図1に示すように有機EL層105の直上に真空紫外光吸収層107を設けることにより、有機EL層に光ダメージを与えることなく光CVD法により封止膜を形成することを可能としている。
【0086】
本実施の形態では真空紫外光吸収層107の部材に酸窒化シリコン膜を用いた例を示したが、真空紫外光吸収層107の部材は酸窒化シリコン膜である必要性は無く、他の部材により構成されていても良い。本発明者らの検討によれば、有機EL層105に通過する真空紫外光の透過率が約10%未満であれば、有機EL層の光劣化は殆ど見られなかった。なお、厳密には有機EL層上のカソード電極が真空紫外光の5%を吸収するため、有機EL層に通過する真空紫外光の5%以上になると、有機EL層が光ダメージを負い、光劣化を起こす。
【0087】
したがって、真空紫外光を90%以上吸収して有機EL層105に光ダメージを与えない絶縁膜ならば、酸窒化シリコン膜以外の膜種を用いることも可能である。例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムまたは酸窒化アルミニウムなどを用いても同様の効果が得られた。ただし、用いる膜種のそれぞれの光吸収係数を考慮して、必要な膜厚を設定する必要がある。
【0088】
また、本実施の形態では、真空紫外光吸収層107の成膜を他のプラズマCVD装置で形成したが、図5に示した装置で形成することも可能である。例えば、ガス導入口506aよりSiガスを、リモートプラズマ導入口505aよりNを、リモートプラズマ導入口505bよりOを導入し、真空紫外光ランプユニット504によるランプ照射を行わないで酸窒化シリコン膜を形成する方法である。光照射を行わないため成膜速度は低下するが、Siガスはリモートプラズマから導入されるラジカルと反応するため、ガス流量比を調整することで酸窒化シリコン膜を形成できる。この場合、封止膜と同じ装置で一括して形成できるので、プロセス全体のスループットの向上、および装置投資コストの削減などの効果がある。
【0089】
以上に述べたように、本実施の形態の有機EL素子では、図1に示すバッファ膜108、110、112、バリア膜109および111を図6に示す膜構成CまたはDの構成で形成することで、バッファ膜とバリア膜、バッファ膜とカソード電極、およびバッファ膜と接着層のそれぞれの屈折率差を小さくすることで封止膜内での光の多重反射を抑制し、有機EL素子の光取出し効率(輝度)を向上させることを可能としている。
【0090】
上述したように、バッファ膜およびバリア膜は、リモートプラズマアシストを伴う光CVD法によって形成した酸窒化シリコン膜により構成することが可能であり、これにより、バッファ膜およびバリア膜の屈折率差を小さくすることができる。リモートプラズマアシストを用いない通常の光CVD法では、アンモニアガスまたは窒素ガスのような消光断面積が小さい原料ガスを分解して窒素を取出し、その窒素を成膜する膜に導入することは困難であるが、図5に示すような成膜装置を用い、リモートプラズマアシストを用いて窒素ラジカルなどを供給することで所望の酸窒化シリコン膜を形成することができる。
【0091】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0092】
例えば、前記実施の形態では光CVD法を用いて封止膜を形成するため、光CVD法に用いる真空紫外光により有機EL層がダメージを負うことを防ぐ必要がある。前記実施の形態では、図1に示すように真空紫外光吸収層107を形成することにより、バッファ膜108、110、112、バリア膜109および111を形成する際に照射される真空紫外光により有機EL層105が劣化し、発光しなくなることを防ぐことができる。
【0093】
なお、前記実施の形態では有機EL素子およびその封止膜を形成した光半導体装置を一例として示したが、前記封止膜を薄膜トランジスタを具備した有機ELディスプレイに適用することも当然可能である。例えば、図1に示したガラス基板101と絶縁膜102の間に薄膜トランジスタからなるスイッチング素子を備え、前記スイッチング素子と有機EL素子と接続することで、有機ELディスプレイを形成することができる。
【0094】
また、樹脂フィルムや樹脂基板の表裏面に本発明の封止膜を形成することで、樹脂フィルムまたは樹脂基板などの吸湿による寸法変動を抑制できる他、前記発明による封止膜を形成した上記樹脂フィルムまたは樹脂基板などと有機ELディスプレイとを組み合わせて、フレキシブル有機ELディスプレイを形成することも出来る。この場合、図1に示す構造を形成した後、ガラス基板101を取り除き、続いて図1に示すバッファ膜およびバリア膜と同様の構造を有する封止膜により表面を覆われた樹脂基板をアノード電極102の下部に接着する。また、同様に、前記実施の形態の封止膜を有機EL照明へ適用することも当然可能である。特に、本実施の形態のように、封止膜を可視光が通過するデバイス構造では効果が大きくなる。
【0095】
また、前記実施の形態では有機EL層の上部にカソード電極を配置し、有機EL層の下部にアノード電極を配置したが、逆に、有機EL層の上部にアノード電極を配置し、有機EL層の下部にカソード電極を配置しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の光半導体装置の製造方法は、可視光通過する封止膜を有する光半導体装置に幅広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0097】
101、201 ガラス基板
102、202 絶縁膜
103、203 アノード電極
104、204 バンク部
105、205 有機EL層
106、206 カソード電極
107 真空紫外光吸収層
108、110、112、208、210、212 バッファ膜
109、111、209、211 バリア膜
301、401 カソード電極
302a〜305a、402b〜404a 酸化シリコン膜
302b〜304a、402a〜405a 窒化シリコン膜
306、406 接着層
501 反応室
502 基板
503 合成石英窓
504 真空紫外光ランプユニット
505a、505b リモートプラズマ導入口
506a、506b ガス導入口
507 温度制御付サセプタ
508 真空排気機構10
509 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に前記基板の主面側から順に形成された第1電極、有機発光層および第2電極と、前記発光層を覆うように前記基板上に設けられた封止膜とを有する光半導体装置であって、
前記封止膜は平坦化膜とバリア膜とを交互に積層した積層膜を含み、
前記平坦化膜および前記バリア膜は酸窒化シリコン膜を含むことを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
前記第1電極の上面は前記平坦化膜と前記基板との間に形成された第1絶縁膜の開口部から露出しており、前記開口部上に形成された最下層の前記平坦化膜の底面は凹凸を有し、最下層の前記平坦化膜上面は平坦であることを特徴とする請求項1記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記平坦化膜は炭素を含有する酸窒化シリコン膜を含み、
前記バリア膜は無機の酸窒化シリコン膜を含んでいることを特徴とする請求項1記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記平坦化膜は、真空紫外光を用いた光CVD法とリモートプラズマを用いたプラズマCVD法とを併用して形成されていることを特徴とする請求項1記載の光半導体装置。
【請求項5】
前記バリア膜は、真空紫外光を用いた光CVD法とリモートプラズマを用いたプラズマCVD法とを併用して形成されていることを特徴とする請求項1記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記平坦化膜は前記バリア膜よりもヤング率が低く、前記バリア膜は前記平坦化膜よりも膜密度が大きく水分バリア性が高いことを特徴とする請求項1記載の光半導体装置。
【請求項7】
前記有機発光層および前記封止膜の間に、真空紫外光を吸収する第2絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載の光半導体装置。
【請求項8】
前記第2絶縁膜は真空紫外光を90%以上吸収する絶縁膜であることを特徴とする請求項7記載の光半導体装置。
【請求項9】
(a)基板上に第1電極を形成する工程と、
(b)前記第1電極上に前記第1電極と電気的に接続された有機発光層を形成する工程と、
(c)前記有機発光層上に前記有機発光層と電気的に接続された第2電極を形成する工程と、
(d)前記有機発光層上に、真空紫外光を用いた光CVD法により酸窒化シリコン膜を形成する工程と、
を有し、
前記(d)工程では、前記真空紫外光の照射中にリモートプラズマによるラジカル照射を行うことを特徴とする光半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記(d)工程では、前記酸窒化シリコン膜を複数層積層し、前記有機発光層上に複数の前記酸窒化シリコン膜の一つを含む平坦化膜と、複数の前記酸窒化シリコン膜の一つを含むバリア膜とを前記有機発光層側から順に交互に積層することを特徴とする請求項9記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記(d)工程では、前記平坦化膜は炭素を有する有機物を原料として形成し、前記バリア膜は無機物のみを原料として形成することを特徴とする請求項10記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記平坦化膜は形成過程において流動性を示す膜であり、前記バリア膜は前記平坦化膜よりも膜密度が大きく水分バリア性が高い膜であることを特徴とする請求項10記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記(a)工程の後であって前記(b)工程の前に、前記基板上に第1絶縁膜を形成した後、前記第1絶縁膜を開口して前記第1電極の上面を露出する工程をさらに有することを特徴とする請求項9記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記(d)工程では、窒素ラジカルまたは酸素ラジカルのうち少なくとも一方と有機シリコンガスとを前記酸窒化シリコン膜を形成する原料ガスとして用いることを特徴とする請求項9記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記(d)工程では、酸素ラジカルまたは酸素ガスのうちいずれか一方と、高次シランガスおよび窒素ラジカルとを前記酸窒化シリコン膜を形成する原料ガスとして用いることを特徴とする請求項9記載の光半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記(d)工程の前に、前記有機発光層上に真空紫外光を90%以上吸収する第2絶縁膜を形成する工程をさらに有することを特徴とする請求項9記載の光半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−216452(P2012−216452A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81553(P2011−81553)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】