光半導体装置及びその製造方法
【課題】青色発光ダイオード(LED)素子直上に樹脂レンズを構成する黄色蛍光体含有樹脂層を設けた白色LED装置において、青色光抜け領域の発生を防止し、配光特性に対応して色むらを改善した光半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板1上に青色LED素子2をダイボンディングし、ボンディングワイヤを施す。さらに、その上に、樹脂レンズとして半球状の黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)3を設ける。黄色蛍光体含有樹脂層3には青色LED素子2上に平坦底面を有し上方に拡がったテーパ状凹部3aが形成されている。黄色蛍光体含有樹脂層3の底部には黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)4を設け、さらに、その上に、透明樹脂層5を設ける。この場合、黄色蛍光体含有樹脂層4の黄色蛍光体の濃度は黄色蛍光体含有樹脂層3の黄色蛍光体の濃度より大きくする。
【解決手段】基板1上に青色LED素子2をダイボンディングし、ボンディングワイヤを施す。さらに、その上に、樹脂レンズとして半球状の黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)3を設ける。黄色蛍光体含有樹脂層3には青色LED素子2上に平坦底面を有し上方に拡がったテーパ状凹部3aが形成されている。黄色蛍光体含有樹脂層3の底部には黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)4を設け、さらに、その上に、透明樹脂層5を設ける。この場合、黄色蛍光体含有樹脂層4の黄色蛍光体の濃度は黄色蛍光体含有樹脂層3の黄色蛍光体の濃度より大きくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光半導体装置、特に、白色発光ダイオード(LED)装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白色LED装置として、青色LED素子と黄色蛍光体含有樹脂層と組合せて構成するものがある。この場合、青色LED素子の青色光と、青色光の一部を黄色蛍光体によって変換して得られる黄色光とを混合して白色光を得る。
【0003】
図9は第1の従来の白色LED装置を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【0004】
図9においては、基板101上に青色LED素子102をダイボンディングし、ボンディングワイヤ(図示せず)を施してある。さらに、その上に、樹脂レンズとして半球状の黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)103を設けてある。尚、樹脂レンズ形状はコンプレッションモールド工程によって形成される。
【0005】
図10は第2の従来の白色LED装置を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【0006】
図10においては、図9の青色LED素子102直上のみに半球状の黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)104を付加してある。この場合、黄色蛍光体含有樹脂層104の黄色蛍光体の濃度は黄色蛍光体含有樹脂層103の黄色蛍光体の濃度より大きくしてあり、これにより、青色LED素子102直上の青色光の黄色光への変換を促進して青色光抜けを防止する。尚、樹脂レンズはコンプレッションモールド工程を用い、黄色蛍光体含有樹脂層103、104を合わせて構成される。
【0007】
図11は第3の従来の白色LED装置を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【0008】
図11においては、図10の半球状の黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)104の代りに、プレート状の黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)104’を設けてある。この場合も、黄色蛍光体含有樹脂層104’の黄色蛍光体の濃度は黄色蛍光体含有樹脂層103の黄色蛍光体の濃度より大きくしてあり、これにより、青色LED素子102直上の青色光の黄色光への変換を促進して青色光抜けを防止する。尚、樹脂レンズはコンプレッションモールド工程を用い、黄色蛍光体含有樹脂層103、104’を合わせて構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図9に示す白色LED装置においては、青色LED素子102直上部の黄色蛍光体含有樹脂層103の光路長はその他の部分の黄色蛍光体含有樹脂層103の光路長より短いので、図12に示すごとく、青色LED素子102直上部領域で青色がかった白色光領域、つまり、青色光抜け領域B11が発生する。このような青色光抜け領域B11は青色LED素子102直上の一様に強い青色が反映されるために青色LED素子102と同サイズとなる。他方、青色LED素子102は直上から外側に向うほど、青色の光は徐々に弱くなる配光特性を有する。この結果、青色光抜け領域B11の外側は領域B11側が青色がかった白色光領域W11となる。このような青色光抜け領域B11及び青色がかった白色光領域W11の色度的に全く異なる2つの領域B11、W11の存在のために、大きな色むらが発生するという課題がある。
【0010】
また、図10に示す白色LED装置においては、青色LED素子102の4隅部では黄色蛍光体含有樹脂層104が形成されていないので、図13に示すごとく、青色LED素子102の4隅部に対応する領域で青色がかった白色光領域、つまり、青色光抜け領域B21が発生する。また、黄色蛍光体含有樹脂層104を通過した青色LED素子102の青色光の一部は黄色光に変換されて白色光領域W21が形成される。一方、白色光領域W21および青色光抜け領域B21の外周から外側においては、素子直上の領域から外側へと広がっていく光によって白色光領域W22が形成される。ただし、黄色蛍光体含有樹脂層104を通過することなく、黄色蛍光体含有樹脂層103のみを直接通過する青色LED素子102の素子側面から出た光を含むために、比較的青色光が強い白色光領域W21との境界付近では白色光領域W21よりも青みが強く、図9の白色光領域W11と同様に外側へ向うほど青みが徐々に弱くなりかつ黄色味が徐々に強くなる。この場合、青色光抜け領域B21の明度は青色LED素子102のその指向特性によって特に強く、さらに、その上の黄色蛍光体含有樹脂層103の黄色蛍光体によって散乱されて拡がっている。この結果、青色光抜け領域B21の青色光が白色光領域W21、W22に拡がる。このような青色光抜け領域B21、白色光領域W21、W22の色度的に異なる3つの領域B21、W21、W22の存在のために、大きな色むらが発生するという課題がある。
【0011】
尚、図10に示す白色LED装置の黄色蛍光体含有樹脂層104の形成はポッティング塗布法等で行えるので比較的容易である。
【0012】
さらに、図11に示す白色LED装置においては、青色LED素子102の全体に黄色蛍光体含有樹脂層104’が形成されているので、図14に示すごとく、図13の青色光抜け領域B21は発生しない。そして、黄色蛍光体含有樹脂層104’を通過した青色LED素子102の青色光の一部は黄色光に変換されて白色光領域W31が形成される。また、素子直上の領域から外側へと広がっていく光によって白色光領域W32が形成される。ただし、黄色蛍光体含有樹脂層104を通過することなく、黄色蛍光体含有樹脂層103を直接通過する青色LED素子102の素子側面から出た光を含むために、白色光領域W32の境界付近では白色光領域W31よりも青みが強くなる。従って、白色光領域W32は図9の白色光領域W11、図10の白色光領域W22と同様に、外側へ向う程青みが徐々に弱くなりかつ黄色味が徐々に強くなる。このように異なる白色光領域W31、白色光領域W32の境界付近において大きな色むらが発生するという課題がある。
【0013】
さらにまた、図11に示す白色LED装置の黄色蛍光体含有樹脂層104’の形成はスプレー法あるいは印刷法等で行い、この結果、均一な黄色蛍光体含有樹脂層104’の形成は容易でなく、青色LED素子102直上に配置するのは困難であるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するために、本発明に係る光半導体装置は、基板と、基板上に設けられた発光素子と、発光素子を覆い、発光素子上に平坦底面を有し上方に拡がったテーパ状凹部が形成された第1の蛍光体含有樹脂層と、第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部の底部に設けられ、第1の蛍光体含有樹脂層の蛍光体濃度より大きい蛍光体濃度を有する第2の蛍光体含有樹脂層と、第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部内の第2の蛍光体含有樹脂層上に設けられた透明樹脂層とを具備するものである。これにより、第2の蛍光体含有樹脂層は発光素子直上において最も膜厚となり、発光素子直上から離れるに従い薄くなる形状となる。従って、発光素子直上の強い青色光との混色光と、発光素子直上から外側に向うに従い弱くなる青色光との混色光に色むらを生じさせない。さらに、第1の蛍光体樹脂層のみを通過する青色光との蛍光体発光との混色光とも色むらを生じさせない。
【0015】
また、本発明に係る光半導体装置の製造方法は、基板上に発光素子を設ける工程と、基板の非発光素子側を第1の金型に圧着し、半球状凹部内にテーパ状凸部を有する第2の金型に第1の蛍光体含有樹脂層を塗布してモールディングする工程と、モールディング工程によって形成された第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部に蛍光体含有樹脂層をポッティング塗布する工程と、第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部に形成された蛍光体含有樹脂層の蛍光体を沈降させて第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部の底部に第1の蛍光体含有樹脂層の蛍光体濃度より大きい蛍光体濃度を有する第2の蛍光体含有樹脂層及びその上に透明樹脂層を形成する工程と、蛍光体沈降工程後に第1、第2の蛍光体含有樹脂層及び透明樹脂層を硬化させる工程とを具備するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、テーパ状凹部の底部の第2の蛍光体含有樹脂層の存在のために、発光素子から徐々に弱くなる青色光に応じて蛍光体による色変換が行われるために、色むらを緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る白色LED装置の実施の形態を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図2】図1の発光面を説明する図である。
【図3】図1の白色LED装置の製造方法を説明するための図であって、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図4】図1の白色LED装置の製造方法を説明するための図であって、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図5】図1の白色LED装置の製造方法を説明するための図であって、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図6】図5の黄色蛍光体含有樹脂層の高さを説明する断面図である。
【図7】図1の黄色蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部の変更例を説明する断面図である。
【図8】本発明者らによって実際に製造された白色LED装置の一部写真よりなる断面図である。
【図9】第1の従来の白色LED装置を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図10】第2の従来の白色LED装置を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図11】第3の従来の白色LED装置を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図12】図9の発光面を説明する図である。
【図13】図10の発光面を説明する図である。
【図14】図11の発光面を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る白色LED装置の実施の形態を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【0019】
図1においては、基板1上に青色LED素子2をダイボンディングし、ボンディングワイヤ(図示せず)を施してある。さらに、その上に、樹脂レンズとして半球状の黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)3を設けてある。黄色蛍光体含有樹脂層3には青色LED素子2上に平坦底面を有し上方に拡がったテーパ状凹部3aが形成されている。このテーパ状凹部3aは青色LED素子2と同一サイズの底面を有している。但し、テーパ状凹部3aの平坦底面のサイズは実装ずれを考慮してクリアランスをとり、青色LED素子2のサイズの1.1倍程度とすることができる。また、テーパ状凹部3aの上部の開口径は底面サイズの2倍程度までとする。2倍以上となると、色むら改善効果が低下するからである。
【0020】
黄色蛍光体含有樹脂層3の底部には黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)4を設け、さらに、その上に、透明樹脂層5を設けてある。この場合、黄色蛍光体含有樹脂層4の黄色蛍光体の濃度は黄色蛍光体含有樹脂層3の黄色蛍光体の濃度より大きくしてあり、これにより、青色LED素子2直上の青色光の黄色光への変換を促進して青色光抜けを防止する。尚、樹脂レンズは黄色蛍光体含有樹脂層3、4及び透明樹脂層5を合わせて構成される。この樹脂レンズの直径は青色LED素子2の形状及びサイズに依存し、また、青色LED素子2の型がフェイスアップ型、メタルボンディング(MB)型の場合には、セカンドワイヤパッド(図8に図示)も覆う必要がある。たとえば、樹脂レンズの直径は1.5mm以上である。
【0021】
図1に示す白色LED装置においては、青色LED素子2直上の領域を覆うように黄色蛍光体含有樹脂層4が形成されているので、図2に示すごとく、図13の青色がかった白色光領域、つまり青色光抜け領域は発生しない。また、青色LED素子2の青色光の一部は黄色蛍光体含有樹脂層4直下の黄色蛍光体含有樹脂層3と黄色蛍光体含有樹脂層4とを通過し、青色光の一部が黄色光に変換されて白色光領域W1が形成される。同時に、黄色蛍光体含有樹脂層3のみを通過した青色LED素子2の青色光の一部も黄色光に変換されて白色光領域W2が形成される。黄色蛍光体含有樹脂層4は青色LED素子2と同一サイズの底面を有すテーパ状凹部に設けられているので、青色LED素子2と同一サイズの底面からテーパ状に上方に向って広がる形状となっている。そのため、黄色蛍光体含有樹脂層4は青色LED素子2直上の領域が最も厚く、外側に向うほど薄くなるような形状となっている。従って、白色光領域2では最も強い青色LED素子2直上の光は黄色蛍光体含有樹脂層4の最も厚い部分を通り、青色LED素子2直上からわずかに外側の光は薄くなっていく黄色蛍光体含有樹脂層4を透過する。青色LED素子2直上からわずかに外側の光は青色LED素子2直上よりわずかに弱いが通過する黄色蛍光体含有樹脂層4は薄いため黄色に変換される光の割合も同様にわずかに減り、混色の割合としては変化がないため白色光領域W1内において色むらは生じない。白色光領域W2を形成する青色LED素子2からの光は最も弱いが蛍光体濃度の低い黄色蛍光体含有樹脂層3のみを通過するため黄色に変換される量も少なく白色光領域W1との色むらを生じない。
【0022】
また、図1に示す白色LED装置の黄色蛍光体含有樹脂層4の形成はポッティング塗布法、蛍光体沈降工程等で行えるので比較的容易である。
【0023】
次に、図1の白色LED装置の製造方法を図3〜図6及び図1を参照して説明する。
【0024】
始めに、図3のダイボンディング、ワイヤボンディング工程を参照すると、基板1上に青色LED素子2をダイボンディングする。ついで、たとえばAuよりなるボンディングワイヤ(図示せず)を施す。この場合、基板はガラスエポキシ基板、Al2O3のようなセラミックス基板等を用いる。また、青色LED素子2としては、InGaN系の青色LED素子を用い、その型としては、フェイスアップ型、メタルボンディング(MB)型が望ましいが、フリップチップ型でもよい。
【0025】
次に、図4のコンプレッションモールディング工程を参照すると、上金型41、下金型42を準備し、図3の基板1の非青色LED側を上金型41に真空圧着し、他方、下金型42には黄色蛍光体含有樹脂(図示せず)を塗布してコンプレッションモールディングを行う。このとき、下金型42には、半球状凹部42aが形成されており、その中央部にはテーパ状凸部42bが形成されている。この場合、上金型41、下金型42を100℃〜120℃程度加熱して10分程度保持し、これにより、仮硬化させ、テーパ状凹部3aを有する黄色蛍光体含有樹脂層3が完成する。その後、上金型41、下金型42は離型させる。尚、図4はこの離型状態を示している。
【0026】
図4における上金型41、下金型42は黄色蛍光体含有樹脂層3に対して硬化による収縮率から最適化されている。また、黄色蛍光体含有樹脂層3の樹脂はシリコーン樹脂、エポキシ樹脂あるいはウレタン樹脂でもよいが、長期信頼性の観点から、シリコーン樹脂が最も適している。さらに、黄色蛍光体としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)が最も効率がよいが、オルトシリケート、テルビウム・アルミニウム・ガーネット(TAG)でもよい。
【0027】
次に、図5のポッティング工程を参照すると、黄色蛍光体含有樹脂層51を黄色蛍光体含有樹脂層3のテーパ状凹部3aにディスペンサ52によってポッティング塗布する。このポッティング塗布の際のポッティング位置は黄色蛍光体含有樹脂層3及び黄色蛍光体含有樹脂層51により構成される樹脂レンズを画像認識して決定し、これにより、基板1と樹脂レンズとの位置ずれをキャンセルできる。尚、黄色蛍光体含有樹脂層51の蛍光体濃度は、後述の黄色蛍光体含有樹脂層4の蛍光体濃度が黄色蛍光体含有樹脂層3の蛍光体濃度より大きくなるように、決定される。
【0028】
また、黄色蛍光体含有樹脂層51のポッティング塗布量(高さ)は横からの画像認識、レーザ変位計による高さ測定、あるいは、パッドを介して電圧を印加して実際の発光状態によって決定できる。この場合、黄色蛍光体含有樹脂層51の頂上(図1の透明樹脂層5の頂上に相当)は、図6に示すごとく、黄色蛍光体含有樹脂層3のテーパ状凹部3aの端部を結んだ直線より上にするのがよい。黄色蛍光体含有樹脂層51の頂上が、黄色蛍光体含有樹脂層3のテーパ状凹部3aの端部を結んだ直線より下になると、全反射により光束の低下を招くことになるからである。
【0029】
最後に、図1を参照して蛍光体沈降及び本硬化を説明する。黄色蛍光体含有樹脂層51の樹脂がシリコーンの場合、図5の基板1を50〜80℃ホットプレートもしくは高温構内に入れて30〜120分程度保持する。あるいは、室温で150分以上放置する。この結果、黄色蛍光体含有樹脂層51の黄色蛍光体(たとえばYAG)が黄色蛍光体含有樹脂層51内のテーパ状凹部3aの底部に向って沈降する。従って、黄色蛍光体含有樹脂層3のテーパ状凹部3a内において、黄色蛍光体含有樹脂層51は蛍光体が存在する黄色蛍光体含有樹脂層4及び蛍光体が存在しない透明樹脂層5に分かれる。沈降完了後に、基板1を150℃程度の高温構内に入れて黄色蛍光体含有樹脂層3、4及び透明樹脂層5を本硬化させることにより図1の白色LED装置は完成する。
【0030】
尚、図1における黄色蛍光体含有樹脂層3のテーパ状凹部3aは直線状であったが、図7に示すごとく、テーパ状凹部3a底部からの垂線及び開口部からの垂線の範囲でアールをつけてもよい。この場合、テーパ状凹部3aの形状に合わせて図4の下金型42のテーパ状凸部42bの形状を適宜変更する。但し、テーパ状凹部3aがその底部からの垂線より内側にはみ出ると、コンプレッションモールディング工程で下金型42が抜けなくなると同時に白色光領域W1における色むら防止の効果が生じなくなってしまう。
【0031】
図8は本発明者らによって実際に製造された白色LED装置の一部写真よりなる断面図である。図8においては、セカンドワイヤパッド6が黄色蛍光体含有樹脂層3によって完全に覆われていることが分かる。
【0032】
尚、上述の実施の形態においては、発光素子を青色LED素子、蛍光体含有樹脂層を黄色蛍光体含有樹脂層としたが、本発明は青色LED素子以外のLED素子あるいは半導体レーザ等の所定波長領域の光を発光する発光素子及びこの所定波長の光をこの所定波長より長い波長の光に変換する蛍光体含有樹脂層を有する光半導体装置にも適用し得る。
【符号の説明】
【0033】
1:基板
2:青色LED素子
3:黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)
3a:テーパ状凹部
4:黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)
5:透明樹脂層
6:セカンドワイヤパッド
41:上金型
42:下金型
42a:半球状凹部
42b:テーパ状凸部
51:黄色蛍光体含有樹脂層
52:ディスペンサ
101:基板
102:青色LED素子
103、104、104’:黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)
B11,B21:青色光抜け領域
W1,W2、W11,W21、W22、W31,W32:白色光領域
【技術分野】
【0001】
本発明は光半導体装置、特に、白色発光ダイオード(LED)装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白色LED装置として、青色LED素子と黄色蛍光体含有樹脂層と組合せて構成するものがある。この場合、青色LED素子の青色光と、青色光の一部を黄色蛍光体によって変換して得られる黄色光とを混合して白色光を得る。
【0003】
図9は第1の従来の白色LED装置を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【0004】
図9においては、基板101上に青色LED素子102をダイボンディングし、ボンディングワイヤ(図示せず)を施してある。さらに、その上に、樹脂レンズとして半球状の黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)103を設けてある。尚、樹脂レンズ形状はコンプレッションモールド工程によって形成される。
【0005】
図10は第2の従来の白色LED装置を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【0006】
図10においては、図9の青色LED素子102直上のみに半球状の黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)104を付加してある。この場合、黄色蛍光体含有樹脂層104の黄色蛍光体の濃度は黄色蛍光体含有樹脂層103の黄色蛍光体の濃度より大きくしてあり、これにより、青色LED素子102直上の青色光の黄色光への変換を促進して青色光抜けを防止する。尚、樹脂レンズはコンプレッションモールド工程を用い、黄色蛍光体含有樹脂層103、104を合わせて構成される。
【0007】
図11は第3の従来の白色LED装置を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【0008】
図11においては、図10の半球状の黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)104の代りに、プレート状の黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)104’を設けてある。この場合も、黄色蛍光体含有樹脂層104’の黄色蛍光体の濃度は黄色蛍光体含有樹脂層103の黄色蛍光体の濃度より大きくしてあり、これにより、青色LED素子102直上の青色光の黄色光への変換を促進して青色光抜けを防止する。尚、樹脂レンズはコンプレッションモールド工程を用い、黄色蛍光体含有樹脂層103、104’を合わせて構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図9に示す白色LED装置においては、青色LED素子102直上部の黄色蛍光体含有樹脂層103の光路長はその他の部分の黄色蛍光体含有樹脂層103の光路長より短いので、図12に示すごとく、青色LED素子102直上部領域で青色がかった白色光領域、つまり、青色光抜け領域B11が発生する。このような青色光抜け領域B11は青色LED素子102直上の一様に強い青色が反映されるために青色LED素子102と同サイズとなる。他方、青色LED素子102は直上から外側に向うほど、青色の光は徐々に弱くなる配光特性を有する。この結果、青色光抜け領域B11の外側は領域B11側が青色がかった白色光領域W11となる。このような青色光抜け領域B11及び青色がかった白色光領域W11の色度的に全く異なる2つの領域B11、W11の存在のために、大きな色むらが発生するという課題がある。
【0010】
また、図10に示す白色LED装置においては、青色LED素子102の4隅部では黄色蛍光体含有樹脂層104が形成されていないので、図13に示すごとく、青色LED素子102の4隅部に対応する領域で青色がかった白色光領域、つまり、青色光抜け領域B21が発生する。また、黄色蛍光体含有樹脂層104を通過した青色LED素子102の青色光の一部は黄色光に変換されて白色光領域W21が形成される。一方、白色光領域W21および青色光抜け領域B21の外周から外側においては、素子直上の領域から外側へと広がっていく光によって白色光領域W22が形成される。ただし、黄色蛍光体含有樹脂層104を通過することなく、黄色蛍光体含有樹脂層103のみを直接通過する青色LED素子102の素子側面から出た光を含むために、比較的青色光が強い白色光領域W21との境界付近では白色光領域W21よりも青みが強く、図9の白色光領域W11と同様に外側へ向うほど青みが徐々に弱くなりかつ黄色味が徐々に強くなる。この場合、青色光抜け領域B21の明度は青色LED素子102のその指向特性によって特に強く、さらに、その上の黄色蛍光体含有樹脂層103の黄色蛍光体によって散乱されて拡がっている。この結果、青色光抜け領域B21の青色光が白色光領域W21、W22に拡がる。このような青色光抜け領域B21、白色光領域W21、W22の色度的に異なる3つの領域B21、W21、W22の存在のために、大きな色むらが発生するという課題がある。
【0011】
尚、図10に示す白色LED装置の黄色蛍光体含有樹脂層104の形成はポッティング塗布法等で行えるので比較的容易である。
【0012】
さらに、図11に示す白色LED装置においては、青色LED素子102の全体に黄色蛍光体含有樹脂層104’が形成されているので、図14に示すごとく、図13の青色光抜け領域B21は発生しない。そして、黄色蛍光体含有樹脂層104’を通過した青色LED素子102の青色光の一部は黄色光に変換されて白色光領域W31が形成される。また、素子直上の領域から外側へと広がっていく光によって白色光領域W32が形成される。ただし、黄色蛍光体含有樹脂層104を通過することなく、黄色蛍光体含有樹脂層103を直接通過する青色LED素子102の素子側面から出た光を含むために、白色光領域W32の境界付近では白色光領域W31よりも青みが強くなる。従って、白色光領域W32は図9の白色光領域W11、図10の白色光領域W22と同様に、外側へ向う程青みが徐々に弱くなりかつ黄色味が徐々に強くなる。このように異なる白色光領域W31、白色光領域W32の境界付近において大きな色むらが発生するという課題がある。
【0013】
さらにまた、図11に示す白色LED装置の黄色蛍光体含有樹脂層104’の形成はスプレー法あるいは印刷法等で行い、この結果、均一な黄色蛍光体含有樹脂層104’の形成は容易でなく、青色LED素子102直上に配置するのは困難であるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するために、本発明に係る光半導体装置は、基板と、基板上に設けられた発光素子と、発光素子を覆い、発光素子上に平坦底面を有し上方に拡がったテーパ状凹部が形成された第1の蛍光体含有樹脂層と、第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部の底部に設けられ、第1の蛍光体含有樹脂層の蛍光体濃度より大きい蛍光体濃度を有する第2の蛍光体含有樹脂層と、第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部内の第2の蛍光体含有樹脂層上に設けられた透明樹脂層とを具備するものである。これにより、第2の蛍光体含有樹脂層は発光素子直上において最も膜厚となり、発光素子直上から離れるに従い薄くなる形状となる。従って、発光素子直上の強い青色光との混色光と、発光素子直上から外側に向うに従い弱くなる青色光との混色光に色むらを生じさせない。さらに、第1の蛍光体樹脂層のみを通過する青色光との蛍光体発光との混色光とも色むらを生じさせない。
【0015】
また、本発明に係る光半導体装置の製造方法は、基板上に発光素子を設ける工程と、基板の非発光素子側を第1の金型に圧着し、半球状凹部内にテーパ状凸部を有する第2の金型に第1の蛍光体含有樹脂層を塗布してモールディングする工程と、モールディング工程によって形成された第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部に蛍光体含有樹脂層をポッティング塗布する工程と、第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部に形成された蛍光体含有樹脂層の蛍光体を沈降させて第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部の底部に第1の蛍光体含有樹脂層の蛍光体濃度より大きい蛍光体濃度を有する第2の蛍光体含有樹脂層及びその上に透明樹脂層を形成する工程と、蛍光体沈降工程後に第1、第2の蛍光体含有樹脂層及び透明樹脂層を硬化させる工程とを具備するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、テーパ状凹部の底部の第2の蛍光体含有樹脂層の存在のために、発光素子から徐々に弱くなる青色光に応じて蛍光体による色変換が行われるために、色むらを緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る白色LED装置の実施の形態を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図2】図1の発光面を説明する図である。
【図3】図1の白色LED装置の製造方法を説明するための図であって、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図4】図1の白色LED装置の製造方法を説明するための図であって、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図5】図1の白色LED装置の製造方法を説明するための図であって、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図6】図5の黄色蛍光体含有樹脂層の高さを説明する断面図である。
【図7】図1の黄色蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部の変更例を説明する断面図である。
【図8】本発明者らによって実際に製造された白色LED装置の一部写真よりなる断面図である。
【図9】第1の従来の白色LED装置を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図10】第2の従来の白色LED装置を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図11】第3の従来の白色LED装置を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【図12】図9の発光面を説明する図である。
【図13】図10の発光面を説明する図である。
【図14】図11の発光面を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る白色LED装置の実施の形態を示し、(A)は断面図、(B)は(A)の上面図である。
【0019】
図1においては、基板1上に青色LED素子2をダイボンディングし、ボンディングワイヤ(図示せず)を施してある。さらに、その上に、樹脂レンズとして半球状の黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)3を設けてある。黄色蛍光体含有樹脂層3には青色LED素子2上に平坦底面を有し上方に拡がったテーパ状凹部3aが形成されている。このテーパ状凹部3aは青色LED素子2と同一サイズの底面を有している。但し、テーパ状凹部3aの平坦底面のサイズは実装ずれを考慮してクリアランスをとり、青色LED素子2のサイズの1.1倍程度とすることができる。また、テーパ状凹部3aの上部の開口径は底面サイズの2倍程度までとする。2倍以上となると、色むら改善効果が低下するからである。
【0020】
黄色蛍光体含有樹脂層3の底部には黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)4を設け、さらに、その上に、透明樹脂層5を設けてある。この場合、黄色蛍光体含有樹脂層4の黄色蛍光体の濃度は黄色蛍光体含有樹脂層3の黄色蛍光体の濃度より大きくしてあり、これにより、青色LED素子2直上の青色光の黄色光への変換を促進して青色光抜けを防止する。尚、樹脂レンズは黄色蛍光体含有樹脂層3、4及び透明樹脂層5を合わせて構成される。この樹脂レンズの直径は青色LED素子2の形状及びサイズに依存し、また、青色LED素子2の型がフェイスアップ型、メタルボンディング(MB)型の場合には、セカンドワイヤパッド(図8に図示)も覆う必要がある。たとえば、樹脂レンズの直径は1.5mm以上である。
【0021】
図1に示す白色LED装置においては、青色LED素子2直上の領域を覆うように黄色蛍光体含有樹脂層4が形成されているので、図2に示すごとく、図13の青色がかった白色光領域、つまり青色光抜け領域は発生しない。また、青色LED素子2の青色光の一部は黄色蛍光体含有樹脂層4直下の黄色蛍光体含有樹脂層3と黄色蛍光体含有樹脂層4とを通過し、青色光の一部が黄色光に変換されて白色光領域W1が形成される。同時に、黄色蛍光体含有樹脂層3のみを通過した青色LED素子2の青色光の一部も黄色光に変換されて白色光領域W2が形成される。黄色蛍光体含有樹脂層4は青色LED素子2と同一サイズの底面を有すテーパ状凹部に設けられているので、青色LED素子2と同一サイズの底面からテーパ状に上方に向って広がる形状となっている。そのため、黄色蛍光体含有樹脂層4は青色LED素子2直上の領域が最も厚く、外側に向うほど薄くなるような形状となっている。従って、白色光領域2では最も強い青色LED素子2直上の光は黄色蛍光体含有樹脂層4の最も厚い部分を通り、青色LED素子2直上からわずかに外側の光は薄くなっていく黄色蛍光体含有樹脂層4を透過する。青色LED素子2直上からわずかに外側の光は青色LED素子2直上よりわずかに弱いが通過する黄色蛍光体含有樹脂層4は薄いため黄色に変換される光の割合も同様にわずかに減り、混色の割合としては変化がないため白色光領域W1内において色むらは生じない。白色光領域W2を形成する青色LED素子2からの光は最も弱いが蛍光体濃度の低い黄色蛍光体含有樹脂層3のみを通過するため黄色に変換される量も少なく白色光領域W1との色むらを生じない。
【0022】
また、図1に示す白色LED装置の黄色蛍光体含有樹脂層4の形成はポッティング塗布法、蛍光体沈降工程等で行えるので比較的容易である。
【0023】
次に、図1の白色LED装置の製造方法を図3〜図6及び図1を参照して説明する。
【0024】
始めに、図3のダイボンディング、ワイヤボンディング工程を参照すると、基板1上に青色LED素子2をダイボンディングする。ついで、たとえばAuよりなるボンディングワイヤ(図示せず)を施す。この場合、基板はガラスエポキシ基板、Al2O3のようなセラミックス基板等を用いる。また、青色LED素子2としては、InGaN系の青色LED素子を用い、その型としては、フェイスアップ型、メタルボンディング(MB)型が望ましいが、フリップチップ型でもよい。
【0025】
次に、図4のコンプレッションモールディング工程を参照すると、上金型41、下金型42を準備し、図3の基板1の非青色LED側を上金型41に真空圧着し、他方、下金型42には黄色蛍光体含有樹脂(図示せず)を塗布してコンプレッションモールディングを行う。このとき、下金型42には、半球状凹部42aが形成されており、その中央部にはテーパ状凸部42bが形成されている。この場合、上金型41、下金型42を100℃〜120℃程度加熱して10分程度保持し、これにより、仮硬化させ、テーパ状凹部3aを有する黄色蛍光体含有樹脂層3が完成する。その後、上金型41、下金型42は離型させる。尚、図4はこの離型状態を示している。
【0026】
図4における上金型41、下金型42は黄色蛍光体含有樹脂層3に対して硬化による収縮率から最適化されている。また、黄色蛍光体含有樹脂層3の樹脂はシリコーン樹脂、エポキシ樹脂あるいはウレタン樹脂でもよいが、長期信頼性の観点から、シリコーン樹脂が最も適している。さらに、黄色蛍光体としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)が最も効率がよいが、オルトシリケート、テルビウム・アルミニウム・ガーネット(TAG)でもよい。
【0027】
次に、図5のポッティング工程を参照すると、黄色蛍光体含有樹脂層51を黄色蛍光体含有樹脂層3のテーパ状凹部3aにディスペンサ52によってポッティング塗布する。このポッティング塗布の際のポッティング位置は黄色蛍光体含有樹脂層3及び黄色蛍光体含有樹脂層51により構成される樹脂レンズを画像認識して決定し、これにより、基板1と樹脂レンズとの位置ずれをキャンセルできる。尚、黄色蛍光体含有樹脂層51の蛍光体濃度は、後述の黄色蛍光体含有樹脂層4の蛍光体濃度が黄色蛍光体含有樹脂層3の蛍光体濃度より大きくなるように、決定される。
【0028】
また、黄色蛍光体含有樹脂層51のポッティング塗布量(高さ)は横からの画像認識、レーザ変位計による高さ測定、あるいは、パッドを介して電圧を印加して実際の発光状態によって決定できる。この場合、黄色蛍光体含有樹脂層51の頂上(図1の透明樹脂層5の頂上に相当)は、図6に示すごとく、黄色蛍光体含有樹脂層3のテーパ状凹部3aの端部を結んだ直線より上にするのがよい。黄色蛍光体含有樹脂層51の頂上が、黄色蛍光体含有樹脂層3のテーパ状凹部3aの端部を結んだ直線より下になると、全反射により光束の低下を招くことになるからである。
【0029】
最後に、図1を参照して蛍光体沈降及び本硬化を説明する。黄色蛍光体含有樹脂層51の樹脂がシリコーンの場合、図5の基板1を50〜80℃ホットプレートもしくは高温構内に入れて30〜120分程度保持する。あるいは、室温で150分以上放置する。この結果、黄色蛍光体含有樹脂層51の黄色蛍光体(たとえばYAG)が黄色蛍光体含有樹脂層51内のテーパ状凹部3aの底部に向って沈降する。従って、黄色蛍光体含有樹脂層3のテーパ状凹部3a内において、黄色蛍光体含有樹脂層51は蛍光体が存在する黄色蛍光体含有樹脂層4及び蛍光体が存在しない透明樹脂層5に分かれる。沈降完了後に、基板1を150℃程度の高温構内に入れて黄色蛍光体含有樹脂層3、4及び透明樹脂層5を本硬化させることにより図1の白色LED装置は完成する。
【0030】
尚、図1における黄色蛍光体含有樹脂層3のテーパ状凹部3aは直線状であったが、図7に示すごとく、テーパ状凹部3a底部からの垂線及び開口部からの垂線の範囲でアールをつけてもよい。この場合、テーパ状凹部3aの形状に合わせて図4の下金型42のテーパ状凸部42bの形状を適宜変更する。但し、テーパ状凹部3aがその底部からの垂線より内側にはみ出ると、コンプレッションモールディング工程で下金型42が抜けなくなると同時に白色光領域W1における色むら防止の効果が生じなくなってしまう。
【0031】
図8は本発明者らによって実際に製造された白色LED装置の一部写真よりなる断面図である。図8においては、セカンドワイヤパッド6が黄色蛍光体含有樹脂層3によって完全に覆われていることが分かる。
【0032】
尚、上述の実施の形態においては、発光素子を青色LED素子、蛍光体含有樹脂層を黄色蛍光体含有樹脂層としたが、本発明は青色LED素子以外のLED素子あるいは半導体レーザ等の所定波長領域の光を発光する発光素子及びこの所定波長の光をこの所定波長より長い波長の光に変換する蛍光体含有樹脂層を有する光半導体装置にも適用し得る。
【符号の説明】
【0033】
1:基板
2:青色LED素子
3:黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)
3a:テーパ状凹部
4:黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)
5:透明樹脂層
6:セカンドワイヤパッド
41:上金型
42:下金型
42a:半球状凹部
42b:テーパ状凸部
51:黄色蛍光体含有樹脂層
52:ディスペンサ
101:基板
102:青色LED素子
103、104、104’:黄色蛍光体含有樹脂層(波長変換層)
B11,B21:青色光抜け領域
W1,W2、W11,W21、W22、W31,W32:白色光領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に設けられた発光素子と、
該発光素子を覆い、該発光素子上に平坦底面を有し上方へ拡がったテーパ状凹部が形成された第1の蛍光体含有樹脂層と、
該第1の蛍光体含有樹脂層の前記テーパ状凹部の底部に設けられ、前記第1の蛍光体含有樹脂層の蛍光体濃度より大きい蛍光体濃度を有する第2の蛍光体含有樹脂層と、
該第1の蛍光体含有樹脂層の前記テーパ状凹部内の前記第2の蛍光体含有樹脂層上に設けられた透明樹脂層と
を具備する光半導体装置。
【請求項2】
前記透明樹脂層の頂上は前記第1の蛍光体含有樹脂層の前記テーパ状凹部の端部を結んだ直線より上である請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
基板上に発光素子を設ける工程と、
前記基板の非発光素子側を第1の金型に圧着し、半球状凹部内にテーパ状凸部を有する第2の金型に第1の蛍光体含有樹脂層をモールディングする工程と、
前記モールディング工程によって形成された前記第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部に蛍光体含有樹脂層をポッティング塗布する工程と、
前記第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部に形成された前記蛍光体含有樹脂層の蛍光体を沈降させて前記第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部の底部に前記第1の蛍光体含有樹脂層の蛍光体濃度より大きい蛍光体濃度を有する第2の蛍光体含有樹脂層及びその上に透明樹脂層を形成する工程と、
該蛍光体沈降工程後に前記第1、第2の蛍光体含有樹脂層及び前記透明樹脂層を硬化させる工程と
を具備する光半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板と、
該基板上に設けられた発光素子と、
該発光素子を覆い、該発光素子上に平坦底面を有し上方へ拡がったテーパ状凹部が形成された第1の蛍光体含有樹脂層と、
該第1の蛍光体含有樹脂層の前記テーパ状凹部の底部に設けられ、前記第1の蛍光体含有樹脂層の蛍光体濃度より大きい蛍光体濃度を有する第2の蛍光体含有樹脂層と、
該第1の蛍光体含有樹脂層の前記テーパ状凹部内の前記第2の蛍光体含有樹脂層上に設けられた透明樹脂層と
を具備する光半導体装置。
【請求項2】
前記透明樹脂層の頂上は前記第1の蛍光体含有樹脂層の前記テーパ状凹部の端部を結んだ直線より上である請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
基板上に発光素子を設ける工程と、
前記基板の非発光素子側を第1の金型に圧着し、半球状凹部内にテーパ状凸部を有する第2の金型に第1の蛍光体含有樹脂層をモールディングする工程と、
前記モールディング工程によって形成された前記第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部に蛍光体含有樹脂層をポッティング塗布する工程と、
前記第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部に形成された前記蛍光体含有樹脂層の蛍光体を沈降させて前記第1の蛍光体含有樹脂層のテーパ状凹部の底部に前記第1の蛍光体含有樹脂層の蛍光体濃度より大きい蛍光体濃度を有する第2の蛍光体含有樹脂層及びその上に透明樹脂層を形成する工程と、
該蛍光体沈降工程後に前記第1、第2の蛍光体含有樹脂層及び前記透明樹脂層を硬化させる工程と
を具備する光半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図8】
【公開番号】特開2013−69757(P2013−69757A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205899(P2011−205899)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]