説明

光反射体用樹脂組成物、光反射体、及び光反射体用樹脂組成物の製造方法

【課題】反射率が高く、且つ高温環境下に長時間さらされても反射率が低下しない光反射体を製造するための光反射体用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)液晶性樹脂と、(B)酸化チタンと、(C)繊維状無機フィラーと、を含む光反射体用樹脂組成物であり、(C)繊維状無機フィラーの繊維長が特定の範囲にある。具体的には、繊維長が50μm以上150μm以下である。また、(B)酸化チタンの含有量と(C)繊維状無機フィラーの含有量との合計が、(A)液晶性樹脂100重量部に対して、25重量部以上150重量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射体用樹脂組成物、光反射体、及び光反射体用樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子を搭載した発光装置が知られている。発光装置は、光源としてのLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)素子(発光素子)が搭載された回路基板と、プリント基板上に設けられLED素子からの光を反射させるための光反射体(リフレクタ)と、を備える。このような通常の発光装置では、光反射体は、金属材料から構成されており、樹脂接着剤によって回路基板上に固定されている。
【0003】
ところで、近年、発光装置の薄型化、小型化が求められている。つまり、光反射体も小型化、軽量化することが求められている。しかし、上記の通り、現状の光反射体は、金属材料で構成されており、容易に小型化、軽量化することは困難である。そこで、樹脂材料からなる光反射体を製造することが検討されている。樹脂材料は成形が容易である等の特徴を有するため、小型化、軽量化された光反射体を容易に製造できると考えられる。
【0004】
このような樹脂製の光反射体用の原料として、酸化チタンと、液晶性樹脂と、高い機械特性を維持するためのガラス繊維等の無機フィラーと、非繊維状無機フィラーを含む光反射体用樹脂組成物の開発が盛んに行われている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−84129号公報
【特許文献2】特開2009−231269号公報
【特許文献3】特開2008−231368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、LEDは電気的エネルギーを光に変換すると同時に発熱する。長時間同じ光反射体を使用し続けると、この発熱よって、樹脂の化学的・物理的変化が生じる。その結果、光反射体の反射率が低下するという問題が生じる。
【0007】
そこで、高温環境下に長時間さらされても、反射率が低下しない光反射体を製造するための光反射体用樹脂組成物が求められている。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、反射率が高く、且つ高温環境下に長時間さらされても反射率が低下しない光反射体を製造するための光反射体用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、光反射体用樹脂組成物中の繊維状無機フィラーの繊維長が特定の範囲にあることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) (A)液晶性樹脂と、(B)酸化チタンと、(C)繊維状無機フィラーと、を含み、前記(C)繊維状無機フィラーは、CIELAB表色系におけるL値が95以上99以下、b値が1以上3以下であり、前記(C)繊維状無機フィラーは、繊維長が50μm以上150μm以下であり、(B)酸化チタンの含有量と(C)繊維状無機フィラーの含有量との合計が、(A)液晶性樹脂100重量部に対して、25重量部以上150重量部である光反射体用樹脂組成物。
【0011】
(2) 前記(B)酸化チタンは、表面が酸化アルミニウムで被覆処理されている(1)に記載の光反射体用樹脂組成物。
【0012】
(3) 前記(C)繊維状無機フィラーが、ミルドファイバーであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の光反射体用樹脂組成物。
【0013】
(4)(1)から(3)に記載の光反射体用樹脂組成物を成形してなる反射体。
【0014】
(5) 200℃で100時間加熱処理後の、JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に基づいて求められる波長470nmの光線に対する反射率の低下が、5%以内である(4)に記載の反射体。
【0015】
(6) 二軸押出機に(A)液晶性樹脂と、(B)酸化チタンと、(C)繊維状無機フィラーと、を供給して、光反射体用樹脂組成物を製造する方法であって、表面が酸化アルミニウムで被服処理された(B)酸化チタンの少なくとも一部を、二軸押出機のシリンダーの上流側の端部から前記シリンダー全長の1/5の長さ以上下流側で供給する光反射体用樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光反射体用樹脂組成物によれば、反射率が高く、且つ高温環境下に長時間さらされても反射率が低下しない光反射体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】二軸押出機の断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0019】
<光反射体用樹脂組成物>
本発明の光反射体用樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂、(B)酸化チタンに、特定の(C)繊維状無機フィラーを配合してなる。
【0020】
特定の(C)繊維状無機フィラーと、(A)液晶性樹脂及び(B)酸化チタンとの組み合わせにより、高温環境下に長時間さらされても反射率が低下しない光反射体を得るための材料となる。
【0021】
また、(C)繊維状無機フィラーと、(A)液晶性樹脂及び(B)酸化チタンとの組み合わせであれば、反射率の低下に繋がる光反射体の白色度の低下や黄変も問題も生じにくい。
【0022】
以下、(A)液晶性樹脂、(B)酸化チタン、(C)繊維状無機フィラーについてこの順で説明する。必須成分である(A)液晶性樹脂、(B)酸化チタン、(C)繊維状無機フィラーについて説明した後、本発明の光反射体用樹脂組成物に含有可能なその他の成分について説明する。
【0023】
[(A)液晶性樹脂]
(A)液晶性樹脂は、特に限定されず従来公知のものを使用することができる。(A)成分は、寸法安定性に優れる等の特徴を有するため、電子部品等の高い寸法精度が要求される部品の原料として好適である。
【0024】
本発明で使用する(A)液晶性樹脂とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性樹脂は直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
【0025】
上記のような(A)液晶性樹脂としては特に限定されないが、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましく、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルもその範囲にある。これらは60℃でペンタフルオロフェノールに濃度0.1重量%で溶解したときに、好ましくは少なくとも約2.0dl/g、さらに好ましくは2.0〜10.0dl/gの対数粘度(I.V.)を有するものが使用される。
【0026】
本発明に適用できる(A)液晶性樹脂としての芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドとして特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンの群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を構成成分として有する芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルアミドである。
【0027】
より具体的には、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール及びその誘導体の少なくとも1種又は2種以上、とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及びその誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及びその誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール及びその誘導体の少なくとも1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド等が挙げられる。さらに上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
【0028】
本発明に適用できる(A)液晶性樹脂を構成する具体的化合物の好ましい例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(I)及び下記一般式(II)で表される化合物等の芳香族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び下記一般式(III)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;p−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン類が挙げられる。
【化1】

(X:アルキレン(C1〜C4)、アルキリデン、−O−、−SO−、−SO−、−S−、−CO−より選ばれる基である)
【化2】

【化3】

(Y:−(CH−(n=1〜4)、−O(CHO−(n=1〜4)より選ばれる基である。)
【0029】
本発明に使用される(A)液晶性樹脂は、光反射体をより白色にするために、白色の程度(白色度)が高いものを使用することが好ましい。例えば、(A)成分中の6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸成分(HNA成分)の量で、(A)成分の白色度を調整することができる。ここで、白色度の高い液晶性樹脂とは、例えば、CIELAB表色系におけるL値が90以上である液晶性樹脂をいう。
【0030】
また、白色度の高い(A)液晶性樹脂であっても、樹脂自体の劣化等により黄色くなる場合がある。樹脂自体が黄色くなると、(A)成分の白色度が低下する。したがって、CIELAB表色系におけるb値が10以下である液晶性樹脂を用いることが好ましい。HNA成分の量を調整することで、CIELAB表色系におけるb値を低く抑えることができる傾向にある。
【0031】
(A)液晶性樹脂が上記のL値、b値の好ましい数値範囲を満たすためには、(A)成分中のHNA成分の量を0.5モル%以上60モル%以下に調整することが好ましい。
【0032】
[(B)酸化チタン]
(B)酸化チタンとは、主として酸化チタンからなり、形状は特に限定されないが、粒子状のものが好ましい。「酸化チタン」と呼称され、樹脂充填剤用粒子状フィラーとして市販されているものであれば、(B)成分として用いることができる。(B)成分は、光反射体の白色度を高めるために使用される。なお、酸化チタンと呼称されて市販されているものは、そのまま使用してもよい。また、酸化チタンとしては、後述するような表面処理が施されたものが好ましく使用可能である。
【0033】
(B)酸化チタンの結晶形は特に限定されず、ルチル型、アナターゼ型、又は両者が混合したものを用いることができる。本発明においては、(B)成分の結晶形はルチル型であることが好ましい。反射体の反射率を高め、反射体の耐候性も高めることができるためである。本発明においては、ルチル型の酸化チタンの単独使用が特に好ましい。
【0034】
(B)酸化チタンの平均粒径(体積平均粒径)は、特に限定はされないが、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがさらに好ましい。光反射体の反射率が高まり、また、(B)成分が組成物中、光反射体中に分散しやすくなるからである。なお、反射体の厚みを考慮して、上記数値範囲内から平均粒径を決定することが好ましい。なお、ここでいう平均粒径は、(B)成分の外観を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定し、得られたSEM写真を画像解析装置(例えば株式会社ニレコ製「ルーゼックスIIIU」)を用いて、一次粒子の各粒径区間における粒子量(%)をプロットして分布曲線を求め、その累積した分布曲線より、累積度50%(平均粒径)で求められる体積平均粒径である。
【0035】
光反射体用樹脂組成物中の(B)酸化チタンの含有量は、特に限定されないが、(A)液晶性樹脂100重量部に対して20重量部以上70重量部以下が好ましい。含有量が20重量部以上であれば、光反射体の反射率を高める効果が大きいため好ましく、70重量部以下であれば、反射体の製造が困難になる等の問題がほとんど生じないため好ましい。なお、(B)成分として、後述するような、表面処理されている酸化チタン(表面処理粒子状酸化チタン)を用いる場合には、通常、この表面処理粒子状酸化チタンの表面処理量は微量であるので、該表面処理粒子状酸化チタンの総重量を基として、(B)成分の配合量を選択すればよい。
【0036】
また、上記(B)酸化チタンは、その分散性等の特性向上を目的として、表面処理を施してもよい。このような表面処理は特に限定されないが、分散性及び耐候性を向上させる観点からは、無機金属酸化物を用いた表面処理が好ましく、該無機金属酸化物としては酸化アルミニウムが好ましい。
【0037】
本発明において、(B)酸化チタンの塩基性が強いと、(A)液晶性樹脂を劣化させてしまう。(A)成分が劣化すると、反射体が黄色く変色し、反射体の白色度が低下する結果、反射体の反射率が低下する。このため、(B)成分のpHは8以下であることが好ましく、より好ましくは6以上8以下である。
【0038】
[(C)繊維状無機フィラー]
本発明に用いる(C)繊維状無機フィラーは、CIELAB表色系におけるL値が95以上99以下、b*値が1以上3以下であり、繊維長が50μm以上150μm以下であればよく、その種類は特に限定されない。
【0039】
上記の通り、(C)繊維状無機フィラーの繊維長は、50μm以上150μm以下である。50μm以上であれば、光反射体の機械的強度が高まり、また、光反射体用樹脂組成物の成形性も高まる。また、150μm以下であれば、光反射体を高温環境下に長時間さらしても反射率が低下しにくくなるため好ましい。
【0040】
上記の通り、(C)繊維状無機フィラーのCIELAB表色系におけるL値は95以上99以下である。(C)成分のL値が上記範囲内であれば、(C)成分を含有することによる光反射体の白色度の低下がほとんどないため好ましい。本発明では、光反射体の白色度を低下させにくいため、光反射体の反射率も高くなる。
【0041】
上記の通り、(C)繊維状無機フィラーのCIELAB表色系におけるb値は1以上3以下である。b値が上記範囲内であれば、(C)成分を含有することによる光反射体の黄変を抑えることができる。光反射体の黄変が抑えられる結果、光反射体の黄変による反射率の低下を抑えることができる。
【0042】
また、(C)繊維状無機フィラーを使用することにより、光反射体の機械的強度を向上させたり、光反射体用樹脂組成物の成形性を向上させたりする等の効果が得られる。
【0043】
(C)繊維状無機フィラーの具体例としては、ミルドファイバー、又はウィスカー状フィラー等を挙げることができる。光反射体用樹脂組成物中の繊維長が、上記範囲内にあれば、原料の(C)成分の繊維長は特に限定されず、ミルドファイバー等と比較して繊維長が長いガラス繊維も使用可能である。しかし、原料の(C)成分の繊維長がより長くなると、組成物中の繊維長を所望の範囲に調整するために、充分な混練が必要になる。この充分な混練により発生する熱で樹脂が劣化すると、反射率やその他の物性が低下する場合がある。したがって、ミルドファイバー又はウィスカー状フィラーの使用が好ましい。その中でも、b値等の点で本発明においては(C)成分として、ミルドファイバーを使用することが好ましい。
【0044】
光反射体用樹脂組成物中の(C)繊維状無機フィラーの含有量は特に限定されないが、(A)液晶性樹脂100重量部に対して、30重量部以上50重量部以下であることが好ましい。30重量部以上であれば、光反射体の強度を充分に高めることができ、また、光反射体用樹脂組成物の成形性も高めることができるため好ましい。50重量部以下であれば、成形金型の摩耗を抑えることができるため好ましい。
【0045】
また、光反射体用樹脂組成物においては、(C)繊維状無機フィラーと(B)酸化チタンとの合計の含有量を特定の範囲に調整することが好ましい。具体的には、(A)液晶性樹脂100重量部に対して、(B)成分の含有量と(C)成分の含有量との合計を、25重量部以上150重量部以下にすることが好ましい。(B)成分の含有量と(C)成分の含有量との合計が25重量部未満であれば反射率向上効果が低く、150重量部より多くなると成形品表面粗度が大きくなり、反射率が低下するという意味で好ましくない。
【0046】
[その他の成分]
以上、本発明の光反射体用樹脂組成物に含まれる必須成分について説明したが、本発明の光反射体用樹脂組成物は、本発明の効果を害さない範囲で、上記必須成分以外の成分(その他の成分)を含有することができる。その他の成分としては、(A)液晶性樹脂以外の他の樹脂、顔料、酸化防止剤、安定剤、可塑剤等の従来公知の添加剤を例示することができる。
【0047】
<光反射体用樹脂組成物の製造方法>
本発明の光反射体用樹脂組成物は、従来公知の調製方法で製造することができるが、以下に例示される押出機を使用する方法でペレット化させた光反射体用樹脂組成物とすることが好ましい。
【0048】
先ず、押出機の概要について簡単に説明する。押出機としては、例えば、図1に示すようなものを使用することができる。図1に示す押出機は、メインフィード口1、可塑化部2、サイドフィード口3、混練部4、ダイ5、スクリュー6、シリンダー7、ベント口8、及び減圧装置9を有する。
【0049】
シリンダー7の内部に、可塑化部2及び混練部4を有するスクリュー6が配設される。シリンダー7には、上流側から、メインフィード口1、サイドフィード口3、ベント口8が設けられる。また、シリンダー7は、下流側の端部に、樹脂組成物を押出すためのダイ5が設けられる。
【0050】
メインフィード口1は、原料をシリンダー7内部に供給するための部位であり、シリンダー7の上流側端部付近に設けられる。サイドフィード口3は原料の一部をシリンダー7の内部に供給するための部位であり、シリンダー7の上流側の端部から上記シリンダー全長の1/5の長さ以上下流側に設けられる。なお、サイドフィード口3は複数設けてもよい。
【0051】
ベント口8は、減圧装置9に接続されており、減圧排気を行なうために設けられる。ベント口8、減圧装置9については、減圧排気を行なわない場合には設ける必要はない。
【0052】
スクリュー6は、メインフィード口1やサイドフィード口3から供給された原料を、ダイ5に向かう方向に搬送する働きを有する。また、スクリュー6に設けられる可塑化部2では、搬送させる働き以外にも、供給された原料を可塑化する働きを有する。また、混練部4では、搬送させる働き以外にも、供給された原料を混合する働きを有する。なお、一般的に、搬送のみ行なう部分には順フライトからなるスクリューエレメントが使用され、可塑化部2、混練部4では、逆フライト、シールリング、順ニーディングディスク、逆ニーディングディスク等のスクリューエレメントが組み合わされて構成されることが一般的である。
【0053】
次いで、好ましい製造方法について簡単に説明する。先ず、(A)液晶性樹脂、(B)酸化チタンの少なくとも一部からなる原料が、シリンダーの端部付近に設けられたメインフィード口1から供給される。供給された原料はスクリュー6の回転により搬送され、可塑化部2に到達する。可塑化部2に到達した原料は、可塑化部2で可塑化されながら、さらに前方(ダイ5に向かう方向)に搬送される。可塑化された原料は、サイドフィード口3から供給される(B)酸化チタン及び(C)繊維状無機フィラーとシリンダー7内で合流する。(B)酸化チタン及び(C)繊維状無機フィラーと合流した原料は、さらに前方に搬送され、混練部4に到達する。混練部4に到達した原料は、ここでさらに混合される。混練部4で混合された原料は、ダイ5から押出される。押出されたダイストランド状の樹脂組成物は冷却されペレタイザー等でカットされることでペレットになる。
【0054】
通常、押出性を考慮して(B)酸化チタンは全量メインフィード口1より供給されるが、上記の方法で得た光反射体用樹脂組成物を用いて、光反射体を製造することで、光反射体内での(B)酸化チタンの分散性が高まる結果、均一で高い白色度を光反射体に付与できる。つまり、反射率の高い光反射体が得られるため好ましい。
【0055】
上記の好ましい方法の実施に当たっては、(B)酸化チタンとして、酸化アルミニウム等で表面処理された酸化チタンを使用することが好ましく、成形機としては、二軸押出機を使用することが好ましい。
【0056】
<光反射体の製造方法>
光反射体の製造方法は、特に限定されない。例えば、本発明の光反射体用樹脂組成物を原料として、射出成形法により製造することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
<原料>
本実施例で使用した原料を表1にまとめた。なお、酸化チタンとして用いた、堺化学工業(株)製の商品名「SR−1」は、焙焼工程を含む硫酸法により得られたルチル型酸化チタンである。本実施例では、この酸化チタンを酸化アルミニウムで表面処理した。処理後の酸化チタンは、数平均粒子径が0.25μm、酸化チタンと酸化アルミニウムとの重量構成が95%/5%であった。
【0059】
【表1】

【0060】
液晶性樹脂1、2のCIELAB表色系におけるL値、b値、融点(Tm)、溶融粘度を以下の方法で測定した。測定には液晶性樹脂1、2からなる樹脂ペレットを使用した。
【0061】
色彩計(スガ試験機株式会社製 SMカラーメーターSM−P 光源:C/2)を用いて、L、a、bを測定した。測定結果は表2に示した。
【0062】
液晶性樹脂の融点は、JIS K7121に基づき、樹脂ペレットを、示差熱分析法(DSC)により昇温温度20℃/分で測定した。測定結果を表2に示した。
【0063】
溶融粘度は、キャピラリー式レオメータ(東洋精機社製キャピログラフ1B)により、せん断速度1000/秒での見かけの溶融粘度をISO11443に準拠して測定した。測定には直径1.0mm、長さ20mmのオリフィスを用いた。測定結果を表2に示した。
【0064】
【表2】

【0065】
また、無機フィラーについて、CIELAB表色系におけるL値、b値、粒子径、pHを測定した。
【0066】
CIELAB表色系におけるL値、b値は、上記液晶性樹脂1、2の場合と同様の方法で測定した。測定結果を表3に示した。
【0067】
粒子径は平均粒子径であり、レーザー散乱法にて測定を行い、累積50%を平均粒子径とした。測定結果を表3に示した。また、ミルドファイバー、酸化亜鉛ウィスカー、ガラス繊維については、繊維長、繊維径を示した。
【0068】
pHは、JIS K5116に順じて、pHメーターを用い、濃度10重量%の懸濁液(溶媒;水)から測定した。
【0069】
【表3】

【0070】
<光反射体用樹脂組成物の製造方法>
押出機として、日本製鋼所株式会社製、二軸スクリュー押出機TEX−30α(スクリュー径33mm、L/D)を用いた。二軸スクリュー押出機の模式図は、図1に示す通りである。なお、可塑化部2、混練部4の詳細は以下の通りである。
可塑化部2;C4〜C5(構成:上流側より、順ニーディング、逆ニーディング、長さは128mm)
混練部4;C7〜C9(構成:上流側より、順ニーディング、直交ニーディング、逆ニーディング、逆フライト、順ニーディング、逆ニーディング、逆フライト、長さ352mm)
【0071】
上記二軸スクリュー押出機のメインフィード口1に設けたフィーダーは、(株)日本製鋼所製のスクリュー式ロスインウェイトフィーダーである。また、サイドフィード口3に設けたフィーダーは、(株)日本製鋼所製のスクリュー式ロスインウェイトフィーダーと、K−TRON社製スクリュー式ロスインウェイトフィーダーである。
【0072】
押出条件は以下の通りである。
シリンダー温度;メインフィード口1のシリンダーのみが200℃であり、
他のシリンダー温度は全て340℃とした。
押出吐出量;20kg/h
スクリュー回転数;200rpm
ダイ温度;340℃
【0073】
組成物の混練及び押し出し方法について説明する。上記二軸スクリュー押出機を用い、液晶性樹脂のペレットをメインフィード口1から、酸化チタンをメインフィード口1或いはメインフィード口1とサイドフィード口3から供給した。液晶性樹脂、無機フィラーの配合割合は、表4、5に示す通りである酸化チタンのうち、サイドフィード口3から供給したものにはC6フィードと記載した)。サイドフィーダーには二軸サイドフィーダーを用い、重量フィーダーを用いて供給量を制御した。ダイストランド状に吐出させた溶融樹脂組成物をタナカ製作所製メッシュベルトコンベアで搬送しつつ、スプレー噴霧水により冷却した後、カッティングしてペレットを得た。なお、無機フィラーについては全てサイドフィード口3から供給した。
【0074】
[押出性]
上記ペレットを製造する際に、組成物の押出性の評価を行なった。押出成形が容易なものを「○」、得られたダイストランド状物が脆く、ペレットとして採取が困難な状態を「×」と評価した。評価結果を表4、5に示した。
【0075】
[繊維状無機フィラー長]
光反射体用樹脂組成物中のガラス繊維、ミルドファイバーの繊維長を測定した。繊維長は以下の方法で測定した(以下ガラス繊維の場合を例に説明するが、ミルドファイバーについても同様の方法で測定した。)。
測定には、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ社製)を使用した。測定は以下の(1)から(6)の手順で行った。
(1)ガラス繊維と液晶性樹脂1とを含む液晶性樹脂組成物の混練ペレット約2gを600℃で3時間加熱し灰化させる。
(2)上記液晶性樹脂組成物の混練ペレットの灰分を3mg秤量し、ポリエチレングリコール5%水溶液に分散させる。
(3)分散液5mlを採取し、シャーレに均一に注ぎ入れる。
(4)実体顕微鏡(20倍)を用いて画像を取り込む(n=9)
(5)取り込んだ各々の画像を2値化し、上記画像処理解析装置を用いて充填剤のサイズを測定する。
(6)測定された値の重量平均繊維長をガラス繊維の繊維長とする。
【0076】
<光反射体の製造>
実施例、比較例の各ペレットを、住友重機械工業株式会社製、SE100DU射出成形機を用い、成形温度340℃、金型温度80℃で80mm×80mm×1mmの平板状の光反射体を製造した。実施例、比較例の光反射体について、以下の方法で、反射率、表面粗さRaの評価を行なった。
【0077】
[反射率]
実施例、比較例の光反射体について、日本分光株式会社製、分光光度計V−570型にて470nm波長光の分光反射率を測定した。標準試料としては硫酸バリウム固体を使用した。
【0078】
[表面粗さ]
実施例、比較例の光反射体について、KEYENCE 超深度カラー3D形状測定顕微鏡 VK9510を用いて表面粗さRaを測定した。具体的には、測定範囲10mm×10mm、測定点を5点とし、5点の平均値を使用して表面粗さを評価した。
【0079】
【表4】

【表5】

【0080】
実施例と比較例1とは、組成物中の繊維状無機フィラーの繊維長が異なる。実施例の結果と比較例1の結果とから明らかなように、組成物中の繊維状無機フィラーの繊維長が特定に範囲に調整されることで、高温環境下に長時間さらしても反射率の低下が小さい光反射体になることが確認された。
【0081】
実施例と比較例2とは、実施例がCIELAB表色系におけるb値が1以上3以下の範囲の繊維状無機フィラーを使用し、比較例2がb値が3以上の繊維状無機フィラーを使用する点で異なる。実施例の結果と比較例2の結果とから明らかなように、CIELAB表色系におけるb値が3以上の繊維状無機フィラーの使用では、光反射体を高温環境下に長時間さらすと、反射率の低下が大きいことが確認された。
【0082】
実施例1と実施例3とは、実施例1が全ての原料をメインフィード口から供給するのに対して、実施例3が一部の酸化チタンをサイドフィード口から供給する点で異なる。実施例1の結果と実施例3の結果とから明らかなように、酸化チタンを投入する際には二軸混練機のシリンダーの途中より供給することにより(C6フィード)、全ての酸化チタンを他の原料と共にホッパーより供給する場合に比較して、得られる樹脂組成物を射出成形してなる成形体中の酸化チタンが均一に分散する傾向にあり、反射率が向上する傾向にあることが確認された。また、高温環境下に長時間さらしても反射率の低下が小さいことが確認された。
【0083】
実施例1と実施例2との比較から、CIELAB表色系におけるL値が大きく、b値が小さい、液晶性樹脂1を使用した実施例1の方が、反射率が高く、表面粗さが小さいことが確認された。
【0084】
実施例と比較例3及び4との比較から、(B)酸化チタンの含有量と(C)繊維状無機フィラーの含有量との合計が、(A)液晶性樹脂100重量部に対して、25重量部以上150重量部以下の範囲でなければ、本発明の効果を奏さないことが確認された。
【符号の説明】
【0085】
1 メインフィード口
2 可塑化部
3 サイドフィード口
4 混練部
5 ダイ
6 スクリュー
7 シリンダー
8 ベント口
9 減圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液晶性樹脂と、(B)酸化チタンと、(C)繊維状無機フィラーと、を含み、
前記(C)繊維状無機フィラーは、CIELAB表色系におけるL値が95以上99以下、b値が1以上3以下であり、
前記(C)繊維状無機フィラーは、繊維長が50μm以上150μm以下であり、
(B)酸化チタンの含有量と(C)繊維状無機フィラーの含有量との合計が、(A)液晶性樹脂100重量部に対して、25重量部以上150重量部である光反射体用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)酸化チタンは、表面が酸化アルミニウムで被覆処理されている請求項1に記載の光反射体用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)繊維状無機フィラーが、ミルドファイバーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光反射体用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から3に記載の光反射体用樹脂組成物を成形してなる反射体。
【請求項5】
200℃で100時間加熱処理後の、JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に基づいて求められる波長470nmの光線に対する反射率の低下が、5%以内である請求項4に記載の反射体。
【請求項6】
(A)液晶性樹脂と、(B)酸化チタンと、(C)繊維状無機フィラーと、を二軸押出機に供給して、光反射体用樹脂組成物を製造する方法であって、
表面が酸化アルミニウムで被服処理された(B)酸化チタンの少なくとも一部を、二軸押出機のシリンダーの上流側の端部から前記シリンダーの全長の1/5の長さ以上下流側で供給する光反射体用樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−92200(P2012−92200A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239684(P2010−239684)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】