説明

光変調媒体、光書き込み装置及び光書き込み方法

【課題】一方の面側からのみの露光光による光書き込みにより、両面側から明瞭に視認可能な表示を行うことができる光変調表示媒体及びそれを用いた光書き込み装置、光書き込み方法を提供することである。
【解決手段】1対の電極と、該1対の電極間に挟まれ、露光光の照射により該露光光の強度分布に応じた電気的特性分布を示す光導電層と、前記1対の電極に印加された電圧の前記光導電層の電気的特性分布に応じて分布した分圧が印加され、該分圧に応じて光学的特性分布による可視画像が記録される、相互に同等の反射波長域を有する複数の液晶層と、該複数の液晶層間の1つに配置される遮光層と、が少なくとも積層された光変調素子を有する光変調媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調媒体及びそれを用いた光書き込み装置、光書き込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータの普及、インターネットを始めとする情報化社会の発達により、電子情報の一時的な閲覧を目的とする、いわゆる短寿命文書としての紙の消費は、益々増加する傾向にあり、森林資源保護などの地球環境保全や事務環境改善などの理由から、紙に代わる書き換え可能な表示媒体の実現が望まれている。
【0003】
そこで、無電源でのメモリ性を有し、外部装置によって短時間で画像を書き換えることができる、フルカラー表示可能な表示記憶媒体とその画像書き込み方法および画像書き込み装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この技術における表示記憶媒体は、一対の基板間に、それぞれ異なる色の光を選択反射し、外部から印加される書き込み信号に対して、互いにしきい値電圧が異なるコレステリック液晶から構成される複数の表示層を積層して構成される。また、画像書き込み装置は、表示記憶媒体と別体に形成し、表示記憶媒体を挟持する一対の書き込み電極と駆動回路とが設けられる。具体的な書き込みは、リフレッシュ期間およびセレクト期間と、その後の無電圧の表示期間とによって構成され、リフレッシュ期間およびセレクト期間での印加電圧VrおよびVsが、Vr>Vsの関係をもって、各表示層のコレステリック液晶のしきい値電圧を境界とする複数の電圧から選定された電圧となる書き込み信号を電極間に印加し、前記各液晶層に書き込みが行われ画像を表示する(この方法を「閾値シフト法」と称する)。
【0005】
また、1対の電極間にメモリ性を有し、かつ表示に必要な波長を選択的に反射する選択反射性または後方散乱性の表示制御層と光機能層とを積層した光書き込み型記録媒体を用い、表示側から光書き込みを行う技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−154219号公報
【特許文献2】特開2001−100664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、一方の面側からのみの露光光による光書き込みにより、両面側から明瞭に視認可能な表示を行うことができる光変調表示媒体及びそれを用いた光書き込み装置、光書き込み方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、1対の電極と、該1対の電極間に挟まれ、露光光の照射により該露光光の強度分布に応じた電気的特性分布を示す光導電層と、前記1対の電極に印加された電圧の前記光導電層の電気的特性分布に応じて分布した分圧が印加され、該分圧に応じて光学的特性分布による画像が記録される、相互に同等の反射波長域を有する複数の液晶層と、該複数の液晶層間の1つに配置される遮光層と、が少なくとも積層された光変調素子を有する光変調媒体である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光変調素子の少なくとも片面側に、1層以上の前記光導電層と1層以上の前記液晶層とを1対の電極間に挟んだ状態で支持された他の光変調素子をさらに積層した構成を有する光変調媒体である。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の遮光層の両面側に、相互に異なる反射波長域を有する複数の液晶層が同数ずつ配置され、かつ前記両面側において、それぞれ前記遮光層から外側に向けて前記反射波長域が同等である液晶層が同じ順番に配置されている光変調媒体である。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の相互に異なる反射波長域を有する複数の液晶層が、前記遮光層から外側面に向かって前記反射波長域が短波長になる順に配置される光変調媒体である。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項2〜4のいずれかに記載の他の光変調素子が連続して積層された複数の液晶層を備え、該複数の液晶層における液晶の相変化を生じる閾値電圧が各々異なる光変調媒体である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれかに記載の遮光層の前記露光光が照射される面側の前記光導電層の厚さを、前記遮光層を介して反対側の面側の前記光導電層の厚さより薄くした光変調媒体である。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の遮光層を有する光変調素子における前記光導電層が、該光導電層と前記遮光層との間に設けられた液晶層の反射波長域の光を透過する光変調媒体である。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の遮光層が、当該光変調媒体に設けられたすべての液晶層の反射波長域の光を吸収する光変調媒体である。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の光変調媒体に対し、前記1対の電極間に電圧を印加する電圧印加手段と、該電圧印加手段により電圧を印加された前記光変調媒体の一方の面側からのみ画像データに応じてパターン化した露光光を照射して光書き込みを行う光書き込み手段と、を有する光書き込み装置である。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の光変調媒体に対し、前記1対の電極間に電圧を印加する電圧印加工程と、該電圧を印加された前記光変調媒体の一方の面側からのみ画像データに応じてパターン化した露光光を照射して光書き込みを行う光書き込み工程と、を有する光書き込み方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、一方の面側からのみの露光光による光書き込みにより、両面側から明瞭に視認可能な表示を行える光変調表示媒体を提供することができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに両面側から明瞭に視認可能なカラー表示を行うことができる。
請求項3に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、一方の面側からのみ光書き込みによって反射波長域の異なる複数の液晶層に効率よく書き込みを行うことができる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに書き込み後のカラー表示を両面側から視認しやすくすることができる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに一方の面側からのみ光書き込みによる複数の液晶層への書き込みを簡便に行うことができる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、一方の面側からのみ光書き込みによって、露光側と反対側の液晶層に効率よく書き込みを行うことができる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、一方の面側からのみ光書き込みによって、露光側と反対側の液晶層により効率よく書き込みを行うことができる。
請求項8係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、さらに書き込み後のカラー表示を背面側からの外光に妨げられることなく、両面側から明瞭に視認することができる。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、一方の面側からのみの露光光による光書き込みにより、両面側から明瞭に画像を視認可能な光変調表示媒体への書き込みが行える光書き込み装置を提供することができる。
請求項10に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、一方の面側からのみの露光光による光書き込みにより、両面側から明瞭に画像を視認可能な光変調表示媒体への書き込みを行える光書き込み方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光変調媒体は、1対の電極と、該1対の電極間に挟まれ、露光光の照射により該露光光の強度分布に応じた電気的特性分布を示す光導電層と、前記1対の電極に印加された電圧の前記光導電層の電気的特性分布に応じて分布した分圧が印加され、該分圧に応じて光学的特性分布による画像が記録される複数の液晶層と、該複数の液晶層間のいずれか1つに配置される遮光層と、が少なくとも積層された光変調素子を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の光書き込み装置(光書き込み方法)は、上記本発明の光変調媒体に対し、前記1対の電極間に駆動電圧を印加する電圧印加手段(電圧印加工程)と、該電圧印加手段により駆動電圧を印加された前記光変調媒体の一方の面側からのみ画像データに応じてパターン化した露光光を照射して光書き込みを行う光書き込み手段(光書き込み工程)と、を有することを特徴とする。
以下、図面に則して本発明を説明する。
【0020】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の光変調媒体の一例を示す概略構成図である。この光変調媒体1は、本発明の光変調媒体の構成の基本的態様であり、1対の電極間に後述する光導電層や液晶層を積層して構成される1つの光変調素子を有する光変調媒体である。また、図においては、駆動時の態様を一部表すため、光変調媒体1にバイアス電圧10を印加した状態を併せて示している。
【0021】
図1に示す光変調媒体1は、それぞれITOから構成される透明電極(電極)4、5を備えた透明基板2、3上に、所定の波長の露光光(書き込み光)が照射されると抵抗値が小さくなる光導電層としてのOPC(有機光導電体)層6と、OPC層6の抵抗値の変化に対応して電極間に印加された電圧の分圧が変化し、その分圧の変化に基いて配向分布が変化し光学的特性分布に応じた情報が記録される液晶層7、8と、2つの液晶層7、8に挟まれた位置に形成され、外部からの光などを吸収する遮光層9と、図に示す順に形成されている。
【0022】
透明基板2、3は、絶縁性(体積抵抗率で1012Ωcm以上、以下これに準ずる)を有する、ガラス及びシリコン等の無機シート、またはポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、及びポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを用いて構成される。
透明基板2、3の厚みは、0.01mm〜0.5mmの範囲内であることが望ましい。
【0023】
−電極−
透明電極4、5は、後述する光書き込み装置から印加されたバイアス電圧を、光変調素子内の各機能層へ面方向にばらつきなく印加する目的の部材である。
透明電極4、5は、ITO(Indium Tin Oxide)を用いているが、ITO以外にも、Auなどの金属薄膜、SnO2、ZnOなど酸化物、ポリピロールなどの導電性高分子の薄膜など、透光性の電気導電体を用いることができる。また、本実施形態の光変調媒体の一対の透明電極4、5は、透明基板2、3上にスパッタリングされて形成されているが、必ずしもスパッタリングによる必要はなく、印刷、CVD、蒸着などにより形成することもできる。
【0024】
透明電極4、5の形態及び駆動方式としては、本実施形態においては両電極共に表示領域に共通の電極とし、駆動方式は特開2003−140184号公報及び特開2000−111942号公報に記載の駆動方式を用いて駆動させている。しかし、透明基板2側の透明電極4と透明基板3側の透明電極5との一方を光変調媒体に表示する画像の各画素に共通の電極とし、他方を各画素に個別の電極とするセグメント駆動方式、透明電極4と透明電極5とを互いに直交する方向に各々ストライプ状に形成して、互いに対峙する位置を1つの画素に対応する領域とする単純マトリクス駆動方式、透明電極4及び透明電極5の一方を各画素に共通の電極とし、他方を互いに直交するストライプ状の走査電極及び信号電極から構成されるものとして、これにTFTやMIN等の能動素子を設けるアクティブマトリックス駆動方式等であってもよい。
【0025】
−液晶層−
本実施形態における液晶層とは、電場によって入射光のうち特定の色光の反射・透過状態を変調する機能を有し、選択した状態が無電場で保持できる性質の層である。曲げや圧力などの外力に対して変形しない構造であることが望ましい。
液晶層7、8には、本実施形態では、カイラルネマチック液晶(コレステリック液晶)をゼラチンバインダー(高分子マトリックス)中に分散させたPDLC(Polymer Network Liquid Crystal)構造を採用しているが、この構造に限ることなく、コレステリック液晶をリブを介し電極間距離を固定したセルに配置する方式やカプセル液晶化することにより実現してもよい。また、液晶もコレステリック液晶に限ることなく、スメクチックA液晶、ネマチック液晶、ディスコティック液晶などが利用できる。
また、カイラルネマチック液晶、表面安定化カイラルスメクチックC液晶、双安定ねじれネマチック液晶、粒子分散液晶などのメモリ性液晶を用いることにより、本発明の光変調媒体を、光記録媒体や画像記録媒体として利用することができる。
【0026】
液晶層7、8の反射波長域(表示色波長域)は、例えば液晶としてコレステリック液晶を用いる場合には、該コレステリック液晶の螺旋ピッチにより調整する。コレステリック液晶の螺旋ピッチは、ネマチック液晶に対するカイラル剤の添加量で調整することができ、例えば、表示色を青、緑、赤とする場合には、それぞれ選択反射の中心波長が、400nm〜500nm、500nm〜600nm、600nm〜700nmの範囲になるようにする。また、コレステリック液晶の螺旋ピッチの温度依存性を補償するために、 捩じれ方向が異なる、または逆の温度依存性を示す複数のカイラル剤を添加する公知の手法を用いてもよい。
なお、液晶の光学的特性変化を補助する補助部材として、偏光板、位相差板、反射板などの受動光学部品と併用したり、液晶中に2色性色素を添加したりしてもよい。
【0027】
本実施形態においては、図1に示すように遮光層9の両面側に液晶層7、8が配置されているが、図のようにOPC層6を矢印で示したアドレス光(書き込みのための露光光)側に配置し、前記閾値シフト法により液晶層7、8に書き込みを行う場合には、液晶層7、8の反射波長域は可視光域であれば特に制限されず、また液晶層7及び液晶層8の反射波長域は同等であっても異なっていてもよい。なお、該「同等」とは波長域がずれなく重なるか、ずれが25nm以内であることをいう。以下、これに準ずる。
液晶層7、8の層厚は通常1〜50μmの範囲として用いることが望ましい。
【0028】
液晶材料としては、シアノビフェニル系、フェニルシクロヘキシル系、フェニルベンゾエート系、シクロヘキシルベンゾエート系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサン系、スチルベン系、トラン系など公知の液晶組成物が利用できる。液晶材料には2色性色素などの色素、粒子などの添加剤を加えてもよく、高分子マトリクス中に分散したものや、高分子ゲル化したものや、マイクロカプセル化したものでもよい。また、液晶は高分子、中分子、低分子のいずれでもよく、またこれらの混合物でもよい。
【0029】
光変調媒体1を前記閾値シフト法に供する場合には、液晶層7と液晶層8とで相変化を生じる上下閾値電圧が適度に離れ、閾値シフト法による動作マージンが確保されていることが望まれる。
図4に、液晶層7および液晶層8のコレステリック液晶のスイッチング挙動を示すグラを示す。本実施形態においては、図4のグラフに示されるように、液晶層8の上閾値電圧Vfp8が液晶層7の上閾値電圧Vfp7に対して小さく、また、液晶層8の下閾値電圧Vpf8も液晶層7の下閾値電圧Vpf7に対して小さくなるように調整されている。
【0030】
なお、本実施形態においては、液晶層の容量比と抵抗比とを、液晶材料や各層の厚みを選択することにより調整する。
液晶材料の比抵抗は、例えば、高抵抗のフッ素系材料と低抵抗のシアノ系材料を混合したり、液晶材料にイオン性の不純物を添加したりすることにより制御できる。この時、各液晶層間には容量の差を若干持たせておくことが好ましい。液晶層間の容量の差は、液晶材料の誘電率や表示層の厚みを異ならせることで制御できる。
【0031】
その他、液晶層7,8のスイッチング挙動は、液晶層7,8を構成するコレステリック液晶の誘電率異方性、弾性率、螺旋ピッチ、高分子の骨格構造や側鎖、相分離プロセス、高分子マトリックスと液晶層7,8との界面のモルフォロジー、これらの総合によって決まる高分子マトリックスと液晶層7,8との界面におけるアンカリング効果の程度などによっても制御することができる。
【0032】
より具体的には、ネマチック液晶の種類や組成比、カイラル剤の種類、樹脂の種類、高分子樹脂の出発物質であるモノマー、オリゴマー、開始剤、架橋剤などの種類や組成比、重合温度、光重合のための露光光源、露光強度、露光時間、雰囲気温度、電子線重合のための電子線強度、暴露時間、雰囲気温度、塗布時の溶媒の種類や組成比、溶液濃度、ウェット膜厚、乾燥温度、温度降下時の開始温度、温度降下速度などであるが、これらに限定 されない。
【0033】
−光導電層−
光導電層としては、(a)無機半導体材料として、アモルファス・シリコンや、ZnSe、CdSなどの化合物半導体から構成される層、(b)有機半導体材料として、アントラセン、ポリビニルカルバゾールなどから構成される層、(c)光照射によって電荷を発生する電荷発生材料及び電界によって電荷移動を生ずる電荷輸送材料の混合物や積層体から構成されるいわゆるOPC層などが挙げられる。
【0034】
図1におけるOPC層(光導電体層)6は、内部光電効果をもち、アドレス光の照射強度に応じてインピーダンス特性が変化する特性を有する層である。交流(AC)動作が可能であり、アドレス光に対して対称駆動にならなければならない。このため、電荷発生層(CGL)が電荷輸送層(CTL)の上下に積層された3層構造に形成されてなる構成が望ましい。
【0035】
電荷発生層は、アドレス光を吸収して光キャリアを発生させる機能を有する層である。主に、上側の電荷発生層が書き込み面とは反対側の透明電極4から書き込み面側の透明電極5の方向に流れる光キャリア量を、下側の電荷発生層が書き込み面側の透明電極5からその反対側の透明電極4の方向に流れる光キャリア量を、それぞれ決定している。
電荷発生層としては、アドレス光を吸収して励起子を発生させ、CGL内部、またはCGL/CTL界面で自由キャリアに効率良く分離させられるものが好ましい。
【0036】
前記電荷発生材料としては、例えば、ペリレン系、フタロシアニン系、ビスアゾ系、ジチオピトケロピロール系、スクワリリウム系、アズレニウム系、チアピリリウム・ポリカーボネート系化合物などが挙げられる。また、前記電荷輸送材料としては、例えば、トリニトロフルオレン系、ポリビニルカルバゾール系、オキサジアゾール系、ピラリゾン系、ヒドラゾン系、スチルベン系、トリフェニルアミン系、トリフェニルメタン系、ジアミン系化合物や、LiClOを添加したポリビニルアルコールやポリエチレンオキシド等のイオン導電性材料などが、また電荷発生材と電荷輸送材との複合体として、積層体、混合物、マイクロカプセルなど、が利用できる。
なお、光導電層の膜厚は1〜100μmの範囲で用い、露光光照射時と露光光非照射時の抵抗比は大きい方が望ましい。
【0037】
OPC層6の配置位置は、アドレス光が図1に示すように下側から照射される場合には、図のように液晶層8の下側であることが望ましいが、遮光層9の特性や液晶層の色相によっては1対の電極間のどの位置に配置してもよい。
【0038】
−遮光層−
遮光層9は、少なくとも液晶層7及び液晶層8の反射波長域を吸収し、電気抵抗が高い材料が用いられる。遮光層9に必要な透過率は、少なくとも遮光すべき波長範囲において、10%以下であることが望ましく、より望ましくは5%以下である。また、遮光層9の電気抵抗は、遮光層内の電流によって解像度の低下を引き起こさないように、少なくとも体積抵抗率で10Ω・cm以上とすることが望ましい。さらに、液晶層7、8に加わる分圧の変化分を大きくするためには、遮光層9の静電容量が大きい程よいので、誘電率が大きく膜厚が薄い方が好ましい。
【0039】
後述するように、図1に示す光変調媒体においては、OPC層6に画像情報に対応する露光光を照射すると同時に、透明電極4、5に矩形電圧を印加することで、メモリ性を有する液晶層7、8に画像パターンを記録することができる。この画像パターンは、外光を取り込んで反射させることで可視化される。すなわち、本実施形態の光変調媒体を反射型の画像記録媒体として利用することができる。
【0040】
画像パターンが記録された光変調媒体1は、図における上下側の両側に表示を行うことができるが、この場合、例えばOPC層側(図における下側)からの透過光により視認性が低下するのを防止するためには、遮光層9は液晶層7に記録された画像パターンを読取る読み出し光の波長域だけでなく可視波長域(400〜800nm)全域に亘り吸収することが望ましい。透過率は少なくとも10%以下、より好適には5%以下である。特に視感度が高い400〜700nmの波長域の透過率を低くすることが望ましい。
【0041】
一方、本実施形態の光変調媒体は、一方の面側からのみの書き込み露光光の照射に適応できるものである必要があるため、後述するように、図1に示す光変調素子の少なくとも上側(書き込み露光光照射側と反対側)にさらに光変調素子を積層する場合(例えば図3に示す構成)には、特定のアドレス光を遮光層を透過させて前記積層した光変調素子におけるOPC層に到達させる必要がある。したがって、光変調媒体構成によっては、遮光層9は観察者が視認できる可視波長域の一部の波長域は吸収するが、アドレス光として用いる可視波長域の光は透過する特性を有することが望ましい。
【0042】
したがって、上記の作用を両立させる観点から、遮光層9に必要とされる光吸収特性としては、当該光変調媒体に設けられたすべての液晶層(図1に示す光変調媒体においては液晶層7、8)の反射波長域の光を吸収することが望ましい。具体的には、液晶層7、8の反射光の色相が赤色の場合には、遮光層9は少なくとも600〜700nmの波長域の光を吸収することが望ましい。
なお、本発明において、「光を吸収する」とは入射光の強度が吸収後10%以下となることを意味し、「光が透過する」とは入射光の強度が透過後で50%以上、望ましくは80%以上であることを意味する。
【0043】
遮光層9は、絶縁性を有する、カドミウム系、クロム系、コバルト系、マンガン系、カーボン系などの無機顔料、またはアゾ系、アントラキノン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、ニトロ系、フタロシアニン系、ペリレン系、ピロロピロール系、キナクリドン系、多環キノン系、スクエアリウム系、アズレニウム系、シアニン系、ピリリウム系、アントロン系などの有機染料や有機顔料、あるいはこれらをゼラチンに分散した材料を用いて形成され、少なくとも反射光に対して、光吸収性を有するように構成する。
このようにして形成した遮光層の層厚は、0.01〜20μmの範囲とすることが望ましい。
【0044】
前述のように、図1に示した光変調媒体は本発明の光変調媒体の基本構成であり、前記構成の光変調媒体により、一方の面側からのみのアドレス光により両面側に表示可能な光変調媒体を得ることができる。
上記光変調媒体の駆動については、下記の第2の実施形態の場合に準ずるものであるので、以下において併せて説明する。
【0045】
なお、図1に示した構成の光変調媒体を用いてカラー表示を行う場合には、図2に示すように液晶層7、8を複数層とした構成としても良い。図2に示した光変調媒体11では、図1に示したに構成における透明電極4及び遮光層9間に液晶層7B、7G、7R、透明電極5及び遮光層9間に液晶層8B、8G、8Rが、各々3層ずつの積層された構成となっている。
【0046】
液晶層7B、7G、7R、液晶層8B、8G、8Rの色相は3層のそれぞれが異なっていれば特に限定されないが、液晶層7B、8Bが青色、液晶層7G、8Gが緑色、液晶層7R、8Rが赤色の表示色となるように各々反射波長域を設定することが望ましい。
このように構成することにより、例えば図2の矢印方向からの書き込み光で遮光層9の両面側の青色、緑色、赤色の液晶層に対して書き込みを行えば、両面側から視認可能なフルカラー表示を行うことができる。
【0047】
なお、各液晶層への書き込みは、前記閾値シフト法により行うものであり、具体的には、例えば図2に示した光変調媒体11の遮光層9より上側の駆動は、バイアス電圧20として、液晶層7B、7G、7Rの動作閾値電圧を考慮したバイアス電圧を印加するとともに、各色の画像データに対応したアドレス光を照射して液晶層の光学状態を変化させることにより行う。また、遮光層9より下側の駆動についても、これに準じて行われる。
したがって、液晶層7B、7G、7R、液晶層8B、8G、8Rの各層に用いられる液晶の相変化を生じる閾値電圧は各々異なるように材料設計・選択を行うことが望ましい。
【0048】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の光変調媒体の他の一例及びその光書き込み方法を適用した光書き込み装置の概略構成図である。本実施形態のシステムは、フルカラー画像を記録することが可能な本発明の光変調媒体である光変調媒体と光書き込み装置とから構成される。この両構成要素について詳細に説明してから、その駆動方法について説明する。
【0049】
(光変調媒体)
本実施形態において光変調媒体40は、図3における上側から順に、透明基板12A、光変調素子50A、透明基板13A、光変調素子50B、透明基板13B、光変調素子50Cおよび透明基板13Cを積層して構成される。
【0050】
光変調素子50Bは、図1に示す光変調媒体で説明した光変調素子に準じた構成で、透明電極(電極)14B、15B間に、OPC層(光導電体層)16Bと、液晶層17B、18Bと、2つの液晶層17B、18Bに挟まれた遮光層19と、が積層されている。また、光変調媒体50Aは、図3における上側から順に、それぞれ透明電極(電極)14A、1つ目の液晶層17A、2つ目の液晶層18A、OPC層16Aおよび透明電極(電極)15Aが積層されており、一方、光変調素子50Cは、光変調素子50Aとは遮光層19を介して対称の位置関係となるように、図3における下側からそれぞれ透明電極(電極)15C、1つ目の液晶層17C、2つ目の液晶層18C、OPC層(光導電体層)16Cおよび透明電極(電極)14Cが積層されて構成されるものである。
すなわち、本実施形態の光変調媒体40は、図1に示した光変調素子の両面側に2つの同等の構成の他の光変調素子を互いに反転させて積層したものである。またここで、前記「他の光変調素子」とは、遮光層を含まない光変調素子をいう。
【0051】
なお、本実施形態の複数の光変調素子が積層された構成の光変調媒体は、上記遮光層を介して各層が対称の位置関係にある構成に限られるわけではなく、図1に示す光変調媒体の片面側だけに光変調素子を積層したものであってもよいし、両側に積層した場合でも液晶層やOPC層の数や位置関係が遮光層を介して対象関係となっていなくてもよい。ただし、後述するように、両面側からのフルカラー表示の視認性や一方の面側からのみの光書き込みの観点から、遮光層19を介して相互に異なる反射波長域を有する液晶層やOPC層が対称となる位置関係に配置、構成されることが望ましい。
【0052】
光変調素子50Bの構成は、第1の実施形態で説明した通りであり、光変調素子50Cは光変調素子50Aの構成をそのまま反転させたものであるため、ここでは、光変調素子50Aの構成について説明する。
【0053】
透明基板12A、13A(13Aは光変調素子50Bの構成と共通する)は、第1の実施形態における透明基板2,3と等価の物であり、厚みを変えることが可能である点を除けば、これらに準じた構成、特性のものを用いる。
【0054】
また、光変調素子50Aを構成する透明電極14A、15A、液晶層17A、18A、OPC層16Aについても、色に関する条件を除けば、第1の実施形態におけるそれぞれ対応する部材(透明電極14A,15Aに対する透明電極4,5、液晶層17A,18Aに対する表示層7,8、OPC層16Aに対するOPC層6と等価のものであり、これらに準じた構成、特性のものを用いる。
したがって、本実施形態における光変調素子50Aの各構成部材についての詳細な説明は割愛する。
【0055】
図3に示した光変調媒体においては、光変調素子50Bの両面側にさらに光変調素子50A、50Cが積層されているため、OPC層は遮光層19の両面側に存在する。この場合、書き込みのための露光光が照射される面側のOPC層16Cの厚さを、遮光層9を介して反対側の面側のOPC層16Aの厚さより薄くすることが望ましい。
より具体的には、OPC層16Cの厚さは、OPC層16Aの厚さの33〜67%の範囲とすることが望ましい。
【0056】
なお、光変調素子50Aの1対の電極間には2つの液晶層17A、18Aが含まれるが、これらの液晶層には、後述するように光変調媒体1における液晶層7、8への書き込みに準じた閾値シフト法により各層に書き込みが行われる。したがって、液晶層17A、18Aにおける各液晶の相変化を生じる閾値電圧も各々異なっていることが望ましい。
具体的には、液晶層17A、18Aについて、例えば図4に示したVbで10〜100Vの程度、Vcで10〜150V程度閾値電圧がずれていることが望ましい。
【0057】
液晶層17A、18Aの反射波長域(表示色波長域)は、後述する各液晶層への書き込み後に片面側から画像を見る場合に各液晶層からの反射光が見やすくなるように、遮光層19から外側面に向かって前記反射波長域が短波長になる順に配置されることが望ましい。
より具体的には、遮光層19に最も近い液晶層17Bを赤色(600nm〜700nm)とすることが望ましく、その関係から液晶層18Aを緑色(500nm〜600nm)、液晶層17Aを青色(400nm〜500nm)とすることが望ましい。
【0058】
なお、例えば各液晶層17A、18A、17Bに用いられる色相は、各々青色、緑色、赤色に限られず、組合せ、積層順はこの例に限られるものではない。
また、本実施形態の光変調媒体は、遮光層19を有する光変調素子50Bの両側に各々1つずつ2つの光変調素子を備えているが、必ずしも2つに限定されず、光変調素子50Bの少なくとも片側に2つ以上の光変調素子を備えても良い。
【0059】
また、本実施形態の光変調媒体は、遮光層19を有する光変調素子50Bの両側に各々1つずつ2つの光変調素子を備えているが、50B以外の光変調素子が遮光層を設けた態様も実現可能である。この場合は、例えば図3の17Aと18Aの間に遮光層を設けた場合は、当該遮光層は少なくとも18Aと17Bの反射波長域の光を透過し、18Aよりも短波長の光を遮光するものを設ければよい。これは、従来複数の液晶層を積層させた表示媒体に設けられている遮光層のように、表示媒体に設けられた液晶層とその反射波長域および人が視認する方向を考慮し、適宜遮光層が遮光する光を調整すればよい。
【0060】
(光書き込み装置、光書き込み方法)
次に、本発明の光書き込み装置、光書き込み方法について、その一例を、図3に示した光変調媒体40に光書き込みを行う光書き込み装置により代表して説明する。なお、図1に示した光変調媒体1等への光書き込みも、以下に説明する光書き込み装置と電圧印加部、光照射部の電圧印加、光照射条件が異なるのみで、これに準じた構成、方法により行われる。また、本発明の光書き込み装置、光書き込み方法は、下記の構成に限定されるものではない。
【0061】
本発明において光書き込み装置とは、光変調媒体に画像を書き込む装置であり、図3に示す光書き込み装置は、光変調素子50Aの透明電極14A、15A間、光変調素子50Bの透明電極14B、15B間、光変調素子50Cの透明電極14C、15C間に各々バイアス電圧61A、61B、61Cを印加する電圧印加部60と、光変調素子50Aの光導電層16A、光変調素子50Bの光導電層16B、光変調素子50Cの光導電層16Cに各々書き込み光(アドレス光)81A、81B、81Cを照射する光照射部80と、電圧印加部60および光照射部80を制御し同調させる制御部70により構成されている。
【0062】
−電圧印加部−
電圧印加部60は、所定のバイアス電圧を光変調媒体40に印加する機能を有し、制御部70からの入力信号に基づき、光変調媒体(各電極間)に所望の電圧波形を印加できるものであればよい。ただし、AC出力ができ、高いスルーレートが要求される。電圧印加部60には、例えばバイポーラ高電圧アンプなどを用いることができる。
本実施形態においては、電圧印加部60は第1の実施形態におけるバイアス電圧10に相当する3つのバイアス電圧61A、61B、61Cを印加するものである。
【0063】
電圧印加部60による光変調媒体40への電圧の印加は、3つのバイアス電圧61A、61B、61Cのそれぞれが順に、透明電極14A−透明電極15A間、透明電極14B−透明電極15B間および透明電極14C−透明電極15C間に為される。そして、それぞれのバイアス電圧61A,61B,61Cが、同一またはそれぞれ異なる条件(電圧、周波数、パルス波形、印加時間、印加時期等)で、光変調媒体40の対応する光変調素子50A,50B,50Cに電圧を印加できるようになっている。
【0064】
−光照射部−
光照射部80は、像様となる所定のアドレス光パターンを光変調媒体40に照射する機能を有し、制御部70からの入力信号に基づき、光変調媒体401上(詳しくは、OPC層上)に所望の光画像パターン(スペクトル・強度・空間周波数)を照射できるものであれば特に制限されるものではない。
【0065】
図3に示す光照射部80は、光変調媒体40における液晶層、OPC層の各色相を前記フルカラー表示に好適な構成とした場合には、青(B)色の単色のアドレス光を光変調媒体の露光面側に照射できるように構成される。青(B)色(書き込み光81A、81C)及び赤(R)色(書き込み光81B)の2色のアドレス光を光表示媒体の露光面側(図3における下側)に照射できるように構成されていてもよい。このアドレス光は、2色同時に照射してもよいし、別々に照射してもよい。書き込み時間の短縮化の観点からは、2色同時に照射することが好ましい。
【0066】
光照射部80は、任意の強度の書き込み光81A、81B、81Cを光変調媒体40に照射できるものであればよく、レーザービームスキャン装置、LEDアレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなどの自発光素子や、液晶シャッターなどの調光素子と蛍光管、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、LEDランプ等の光源との組み合わせなどの、液晶プロジェクター、DLPプロジェクター等でもよく、特に限定されるものではない。
【0067】
(制御部)
制御部70は、外部(画像取り込み装置、画像受信装置、画像処理装置、画像再生装置、あるいはこれらの複数の機能を併せ持つ装置等)からの画像データに応じて、電圧印加部60および光照射部80の動作を制御する機能を有する部材である。制御部80による具体的な制御内容は、後述する「電圧印加工程」および「光書き込み工程」の2つの工程から構成されるものであり、その詳細については、以下の光書き込み方法の項で詳述する。
【0068】
以下、図3に示した光変調媒体40として、前述のフルカラー表示に好適な液晶層の配置、すなわち、図における遮光層19の上側(以下、「表面側」という場合がある)については液晶層17A、18A、17Bの順に、遮光層19の下側(以下、「裏面側」という場合がある)については液晶層17C、18C、18Bの順に青色、緑色、赤色の表示色となるように配置された光変調媒体への書き込みについて説明する。
【0069】
液晶層をこのように配置した場合には、例えばOPC層16A、16B、16Cを赤色とし、書き込み光81Aを青色とし、遮光層19を書き込み光81Aを透過する青色とすれば、図3に示すように、書き込み光81AをOPC層16Aまで、書き込み光81BをOPC層16Bまで各々到達させることができ、一方の面側(裏面側)からのカラーのアドレス光照射に対して両面側にカラー画像を書込み・表示することができる。
【0070】
本実施形態の光書き込み方法においては、電圧印加部60によりそれぞれの光変調素子50の透明電極14−透明電極15間に電圧を印加しつつ(電圧印加工程)、光照射部80から赤色、緑色および青色の3色の像様に相当するアドレス光を光変調媒体の露光面側(裏面側)から照射する(光書き込み工程)。すなわち、各工程に応じた「電圧印加」+「アドレス光照射」が為される。
【0071】
例えば図3に示した光変調媒体40の遮光層19より上側(表面側)の駆動は、電圧印加部60から、液晶層17A、18A及び液晶層17Bの動作しきい値電圧を考慮したバイアス電圧61A、61Bを各々印加するとともに(電圧印加工程)、光照射部80から、光導電層16A、16Bの光感度を考慮した強度の書き込み光81A、81Bを照射して液晶層の光学状態を変化させることにより、各液晶層に書き込みを行う(光書き込み工程)。バイアス電圧61A、61Bを印加するタイミング、および書き込み光81A、81Bを照射するタイミングは、各光変調素子50A、50Bが動作するのに必要なバイアス電圧61A、61Bと書き込み光81A、81Bの強度との組合せが少なくとも一部で重なるように、制御部70で調整される。
各工程でのアドレス光の照射による書き込みは、表面側と裏面側とを同時に行ってもよいし、別々に行っても構わない。
【0072】
図3に示す光変調媒体においては、画像を保持する書き込み光81A,81Bは光変調媒体40の一方の面側(裏面側)からのみ照射される。各光変調素子50A,50Bそれぞれを構成するOPC層16A,16Bは、吸収する波長域以外の波長域の入射光は透過する。具体的には、赤色のOPC層16A、16Bは、青色の露光光を吸収すると、抵抗値が低下するが、緑色および赤色の光は透過するので、緑色および赤色の光では抵抗値は変化しない。
【0073】
遮光層19は、OPC層16Aの吸収波長の光を透過し、光変調媒体40の裏面側からの読出し光を遮光するため、遮光層19は500〜700nmの波長域の光を吸収・遮光する遮光層とすることが望ましい。
【0074】
一方、液晶層17Bの駆動は、前記液晶層17A、18Aの関係に準ずるものであり、例えばバイアス電圧61Bとして液晶層17Bが相変化を生じる電圧よリやや低い電圧を印加し(電圧印加工程)、図3に示すように、OPC層16Bに赤色の書き込み光81Bを照射することにより前記のように行われる(光書き込み工程)。なお、前記第1の実施形態における図1の光変調媒体1の光書き込みは、液晶層17B、18Bを各々駆動させ1つのアドレス光により書き込みを行うものである。
ここでは、液晶層17A、18Aの駆動についてさらに詳述する。
【0075】
光変調素子50A全体に印加される電圧に対して、液晶層17A、18Aのそれぞれのコレステリック液晶は閾値電圧が異なるものを用いる。電圧印加部60から電極14A、15A間に印加するバイアス電圧61Aを、上記の閾値電圧を境界とする複数段階の電圧から選定することにより、異なる波長の色を反射する液晶層17A、18Aを制御する。
【0076】
具体的には、液晶層17A,18Aの各々の静電容量は、液晶が誘電率異方性を有することから、液晶の配向状態に依存して変化する。そして、光変調素子50Aに対して、外部の電圧印加部60からバイアス電圧Vを印加し、任意の光量の書き込み光81Aを照射して、液晶層全体に任意の電圧VDを印加した場合、各液晶層17A,18Aには、それぞれ静電容量分圧による電圧が印加され、それぞれ、その電圧に応じて、各液晶層17A,18Aのコレステリック液晶の配向状態が変化する。
【0077】
したがって、光変調素子50Aにおいては、液晶層全体に印加される電圧VDの、各液晶層17A,18Aへの分配比と、実際に印加される電圧に対する各液層17A,18Aの電気光学応答との、2つを制御することによって、液晶層全体に印加される電圧VDに対する各液晶層17A,18Aの電気光学応答を、所望の構成にすることができる。
【0078】
具体的には、前者の、前記各液晶層17A,18Aへの分配比は、上記のように各液晶層17A,18Aの静電容量比などによって、後者の、各液晶層17A,18Aの電気光学応答は、各液晶層17A,18Aを構成するコレステリック液晶の誘電率異方性、弾性率および螺旋ピッチ、さらに高分子を添加した場合には、高分子の構造や相分離プロセスなどに影響を受ける高分子と液晶の界面におけるアンカリング効果の程度などによって、制御することができる。
【0079】
このように構成することにより、例えば書き込み光81Aを青色、81Bを赤色とし、遮光層19の吸収波長域を前記のようにすることで、裏面側からのアドレス光により書き込みを行い、表面側に裏面側とは別個のフルカラー表示を行うことができる。
【0080】
一方、図3における遮光層19の下側(裏面側)については、例えばOPC層16Cを赤色とし書き込み光81Cを青色として、図3に示すように書き込み光81CをOPC層16Cに照射することにより、前記の方法に準じて液晶層17C、18Cに各々書き込みを行うことができ、また、液晶層18Bについては書き込み光81Bにより行われ、遮光層19により表面側からの読み取り光は遮断されるため、裏面側にも前記表側の面とは別個のフルカラー表示を行うことができる。
【0081】
なお、図3に示した光変調媒体40においては、OPC層16A及びOPC層16Cの色相がともに赤色であるが、OPC層16Cは青色の書き込み光81Aをある程度透過する必要がある。一方、OPC層16Cには青色の書き込み光81Cを吸収しつつ、それ以上図3の上側に書き込み光81Cを透過させることが必要とされる。
この観点から、前記のように露光側のOPC層16Cの層厚は反対側のOPC層16Aの層厚より薄くすることが望ましく、また、必要に応じて書き込み光81Aの光量は書き込み光81Cの光量より大きくすることが好適である。
【0082】
以上のようにして、光変調素子50ごとに「電圧印加工程」および「光書き込み工程」を繰り返し、印加電圧及びアドレス光が選択され、その組合せに応じて、液晶層17および液晶層18の内の任意の一方もしくは双方が反射状態、または双方を透過状態となる。このように相が選択されて、光変調媒体40の表裏両面への書き込み(駆動)がなされる。
【0083】
このようにして表裏両面に画像が記録された光変調媒体40は、光書き込み装置から外すことで、持ち運びや保存等のハンドリングを自由に行なうことができる。そして、表裏いずれの面から見た場合にも、それぞれの明瞭な記録画像を視認することができる。
以上のように、本発明の光変調媒体の一例である本実施形態の光変調媒体40は、閾値シフト法をアレンジした前記光書き込み方法により、一方の面側からの3色に相当するアドレス光の露光により表裏両面のフルカラー画像の記録を簡便に行うことができる。また、このように簡便に表裏両面のフルカラー画像記録が可能でありながら、その構造は比較的簡素であり、表示媒体製造のコストを下げることもでき、積層される層の数も比較的少ないので、フルカラーの表示媒体としての薄型化をも実現することができる。
【0084】
以上、2つの好ましい実施形態を挙げて本発明を詳細に説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、以上の実施形態では、光変調素子が1つの構成および3つの構成のもののみを具体例として挙げて説明しているが、本発明において光変調素子はこれらに限られるものではなく、2つであっても4つ以上の構成であっても構わない。
その他、当業者は従来公知の知見に従い、本発明を改変することができ、かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、これらもまた、本発明の範囲に含まれるものである。
【0085】
本発明の光変調媒体は、光変調素子に印加する電圧、書き込み光等の制御により、各々の液晶層の光学特性を変化させるものであるが、この光変調媒体は、表示媒体だけでなく、記録媒体などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の光変調媒体の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の他の光変調媒体の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の他の光変調媒体及びそれを用いた光書き込み装置の一態様を示す概略構成図である。
【図4】図1の光変調媒体における各液晶層のコレステリック液晶のスイッチング挙動を示すグラフである。
【符号の説明】
【0087】
1、11、40 光変調媒体
2、3、12、13 透明基板
4、5、14、15 透明電極
6、16 OPC層(光導電層)
7、8、17、18 液晶層
10、20、61 バイアス電圧
9 遮光層
50 光変調素子
60 電圧印加部(電圧印加手段)
70 制御部
80 光照射部(光書き込み手段)
81 書き込み光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の電極と、該1対の電極間に挟まれ、露光光の照射により該露光光の強度分布に応じた電気的特性分布を示す光導電層と、前記1対の電極に印加された電圧の前記光導電層の電気的特性分布に応じて分布した分圧が印加され、該分圧に応じて光学的特性分布による画像が記録される、相互に同等の反射波長域を有する複数の液晶層と、該複数の液晶層間の1つに配置され、少なくとも前記反射波長域の光を遮光する遮光層と、が少なくとも積層された光変調素子を有することを特徴とする光変調媒体。
【請求項2】
前記光変調素子の少なくとも片面側に、1層以上の前記光導電層と1層以上の前記液晶層とを1対の電極間に挟んだ状態で支持された他の光変調素子をさらに積層した構成を有することを特徴とする請求項1に記載の光変調媒体。
【請求項3】
前記遮光層の両面側に、相互に異なる反射波長域を有する複数の液晶層が同数ずつ配置され、かつ前記両面側において、それぞれ前記遮光層から外側に向けて前記反射波長域が同等である液晶層が同じ順番に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光変調媒体。
【請求項4】
前記相互に異なる反射波長域を有する複数の液晶層が、前記遮光層から外側面に向かって前記反射波長域が短波長になる順に配置されることを特徴とする請求項3に記載の光変調媒体。
【請求項5】
前記他の光変調素子が連続して積層された複数の液晶層を備え、該複数の液晶層における液晶の相変化を生じる閾値電圧が各々異なることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の光変調媒体。
【請求項6】
前記遮光層の前記露光光が照射される面側の前記光導電層の厚さを、前記遮光層を介して反対側の面側の前記光導電層の厚さより薄くしたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の光変調媒体。
【請求項7】
前記遮光層を有する光変調素子における前記光導電層が、該光導電層と前記遮光層との間に設けられた液晶層の反射波長域の光を透過することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光変調媒体。
【請求項8】
前記遮光層が、当該光変調媒体に設けられたすべての液晶層の反射波長域の光を吸収することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光変調媒体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光変調媒体に対し、前記1対の電極間に電圧を印加する電圧印加手段と、該電圧印加手段により電圧を印加された前記光変調媒体の一方の面側からのみ画像データに応じてパターン化した露光光を照射して光書き込みを行う光書き込み手段と、を有することを特徴とする光書き込み装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光変調媒体に対し、前記1対の電極間に電圧を印加する電圧印加工程と、該電圧を印加された前記光変調媒体の一方の面側からのみ画像データに応じてパターン化した露光光を照射して光書き込みを行う光書き込み工程と、を有することを特徴とする光書き込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−90056(P2008−90056A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271777(P2006−271777)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度独立行政法人科学技術振興機構革新技術開発研究事業、産業活力再生特別措置法第30条の規定を受けるもの)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】