説明

光変調装置および光変調制御方法

【課題】半導体マッハツェンダ型変調器を備える光変調装置の動作状態を調整する構成および方法を提供する。
【解決手段】光変調装置は、変調器、変調信号生成器、重畳器、およびバイアス制御器を備える。変調器は、電気光学効果を有する半導体基板に設けられた光導波路と、バイアス電圧および変調信号に応じた電界を前記光導波路に与える信号電極とを備える。変調信号生成器は、変調信号を生成する。重畳器は、バイアス電圧に所定の周波数の信号を重畳する。バイアス制御器は、変調器により生成される変調光信号から抽出される所定の周波数成分の位相に基づいて、変調器の変調方向のバイアス電圧および変調方向に直交する直交方向のバイアス電圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調装置および光変調制御方法に係わり、例えば、半導体マッハツェンダ型変調器(SMZM:Semiconductor Mach-Zehnder Modulator)を利用する光変調に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
光変調デバイスとして、近年、半導体マッハツェンダ型変調器(SMZM)が実用化されている。SMZMは、LN変調等と比較して、小型化が容易であり、また電界吸収型光変調器(EA変調器)に比べ、広い波長帯域特性を有する。
【0003】
関連する技術として、同一半導体基板上にて光が導波する方向に半導体レーザとマッハツェンダ変調器とが集積されている光半導体装置が提案されている。(例えば、特許文献1)。
【0004】
他の関連する技術として、下記の光変調装置が提案されている。すなわち、光変調装置は、入力された入力光を2つの光導波路に分岐し、当該各光導波路を伝搬した各分岐光を合成して合成光を出力する光干渉手段と、前記2つの光導波路のうち、少なくとも1つの光導波路に伝搬光の位相を調整するための電圧を供給する位相調整電圧供給手段と、前記2つの光導波路のうち、少なくとも1つの光導波路に直流電圧を供給する直流電圧供給手段と、前記入力光の波長に応じて、前記直流電圧供給手段で供給する前記直流電圧の値を制御する直流電圧制御手段とを含む。(例えば、特許文献2)
さらに他の関連する技術として、下記の光送信装置が提案されている。すなわち、光送信装置は、光源と、入力信号に応じた駆動電圧を発生する駆動回路と、上記駆動電圧に応じて上記光源の出射光を変調し、上記入力信号を光信号に変換する光変調器と、該光変調器の動作特性曲線のドリフトを検出して、動作点が上記動作特性曲線に対して一定の位置になるように上記光変調器を制御する動作点安定化回路を備える。光送信装置は、動作点切換信号に基づいて、上記動作点を上記動作特性曲線上で半周期シフトさせる動作点シフト回路をさらに備える。(例えば、特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−198881号公報
【特許文献2】特開2005−326548号公報
【特許文献3】特開平4−140712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SMZMは、1組の光導波路を備える。1組の光導波路には、光源からの入力光が分岐されて導かれる。また、SMZMは、各光導波路に対してそれぞれ電界を与える電極を備える。各電極には、データ信号から生成される駆動信号、およびバイアス電圧が印加される。そして、SMZMは、入力光を駆動信号で変調することにより、変調光信号を生成する。このとき、駆動振幅(すなわち、駆動信号の振幅)およびバイアス電圧を適切に調整することにより、品質の良い変調光信号が生成される。
【0007】
ところが、SMZMの静特性は、デバイス毎にばらつきを有するとともに、入力光の波長に依存する。このため、入力光の波長を考慮しながら各SMZMについて予め最適な駆動振幅およびバイアス電圧の組合せを決定するためには、膨大な時間を要する。また、SMZMに対して予め最適な駆動振幅およびバイアス電圧の組合せを決定したとしても、SMZMの静特性は、周囲の温度または経年劣化などにより変化することがある。そして、SMZMの静特性が変化すると、変調光信号の品質が劣化する。例えば、光波形の折り返し、消光比の劣化、クロスポイントの変動、光波形の開口度の縮小などが生じる。
【0008】
なお、SMZMの静特性は、一般的なLN変調器と異なっている。このため、LN変調器の動作状態を調整する方法をSMZMに導入しても、SMZMの動作状態を最適化することは困難である。
【0009】
本発明の課題は、半導体マッハツェンダ型変調器を備える光変調装置の動作状態を調整する構成および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様の光変調装置は、電気光学効果を有する半導体基板に設けられた光導波路と、バイアス電圧および変調信号に応じた電界を前記光導波路に与える信号電極とを備える変調器と、前記変調信号を生成する変調信号生成器と、前記バイアス電圧に、前記変調信号の第1周波数と異なる第2周波数の信号を重畳する重畳器と、前記変調器により生成される変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調器の変調方向のバイアス電圧および前記変調方向に直交する直交方向のバイアス電圧を制御するバイアス制御器、を備える。
【発明の効果】
【0011】
上述の態様によれば、半導体マッハツェンダ型変調器を備える光変調装置の動作状態を自動的にまたは容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に係る光変調装置の一例を示す図である。
【図2】制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】第2の実施の形態に係る光変調装置の一例を示す図である。
【図4】制御動作の動作手順を示すフローチャートである。
【図5】SMZMの静特性の一例、光強度変調の最適な駆動方法の一例を示す図である。
【図6】Y軸方向の光出力特性を示す図である。
【図7】SMZMの静特性を示す図である。
【図8】Y軸方向の光出力特性の2次元グラフを示す図である。
【図9】バイアス電圧を変化させた場合の光出力特性のピーク値を示す図である。
【図10】SMZMの静特性を示す図である。
【図11】Y軸方向の光出力特性および電圧変化を示す図である。
【図12】X軸方向の電圧に対する光出力特性を示す図である。
【図13】第3の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示す図である。
【図14】Y軸方向のバイアス電圧を変調させた場合の光出力特性を示す図である。
【図15】第4の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示す図である。
【図16】Y軸方向のみバイアス変調した場合の特性例を示す図である。
【図17】各部の動作波形を示す図である。
【図18】変調振幅、Y軸方向のバイアス電圧が最適である場合を示す図である。
【図19】変調振幅、Y軸方向のバイアス電圧が最適である場合を示す図である。
【図20】変調振幅、Y軸方向のバイアス電圧が最適である場合を示す図である。
【図21】変調振幅が大きい場合を示す図である。
【図22】変調振幅が大きい場合を示す図である。
【図23】変調振幅が大きい場合を示す図である。
【図24】変調振幅が小さい場合を示す図である。
【図25】変調振幅が小さい場合を示す図である。
【図26】変調振幅が小さい場合を示す図である。
【図27】Y軸方向のバイアス電圧が低い場合を示す図である。
【図28】Y軸方向のバイアス電圧が低い場合を示す図である。
【図29】Y軸方向のバイアス電圧が低い場合を示す図である。
【図30】Y軸方向のバイアス電圧が高い場合を示す図である。
【図31】Y軸方向のバイアス電圧が高い場合を示す図である。
【図32】Y軸方向のバイアス電圧が高い場合を示す図である。
【図33】第5の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示す図である。
【図34】データ信号変調の振幅に低周波変調した場合の特性例を示す図である。
【図35】各部動作波形を示す図である。
【図36】変調振幅、Y軸方向のバイアス電圧が最適である場合を示す図である。
【図37】変調振幅、Y軸方向のバイアス電圧が最適である場合を示す図である。
【図38】変調振幅、Y軸方向のバイアス電圧が最適である場合を示す図である。
【図39】変調振幅が大きい場合を示す図である。
【図40】変調振幅が大きい場合を示す図である。
【図41】変調振幅が大きい場合を示す図である。
【図42】変調振幅が小さい場合を示す図である。
【図43】変調振幅が小さい場合を示す図である。
【図44】変調振幅が小さい場合を示す図である。
【図45】Y軸方向のバイアス電圧が低い場合を示す図である。
【図46】Y軸方向のバイアス電圧が低い場合を示す図である。
【図47】Y軸方向のバイアス電圧が低い場合を示す図である。
【図48】Y軸方向のバイアス電圧が高い場合を示す図である。
【図49】Y軸方向のバイアス電圧が高い場合を示す図である。
【図50】Y軸方向のバイアス電圧が高い場合を示す図である。
【図51】第6の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示す図である。
【図52】X軸方向のみにバイアス変調した場合の特性例を示す図である。
【図53】各部の動作波形を示す図である。
【図54】X軸方向のバイアス電圧が最適の場合を示す図である。
【図55】X軸方向のバイアス電圧が最適の場合を示す図である。
【図56】X軸方向のバイアス電圧が最適より低い場合を示す図である。
【図57】X軸方向のバイアス電圧が最適より低い場合を示す図である。
【図58】X軸方向のバイアス電圧が最適より高い場合を示す図である。
【図59】X軸方向のバイアス電圧が最適より高い場合を示す図である。
【図60】第7の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示す図である。
【図61】SMZMの動作特性を示す図である。
【図62】SMZMの動作特性を示す図である。
【図63】SMZMの動作特性を示す図である。
【図64】SMZMの動作特性を示す図である。
【図65】SMZMの動作特性を示す図である。
【図66】SMZMの動作特性を示す図である。
【図67】第8の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示す図である。
【図68】第9の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示す図である。
【図69】各動作波形を示す図である。
【図70】各動作波形を示す図である。
【図71】変調振幅が小さい場合の特性を示す図である。
【図72】Y軸方向にバイアス電圧が低い場合の特性を示す図である。
【図73】Y軸方向にバイアス電圧が高い場合の特性を示す図である。
【図74】第10の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示す図である。
【図75】第11の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示す図である。
【図76】比較例を示す図である。
【図77】SMZMの静特性の変動および波形劣化を示す図である。
【図78】バイアス電圧が変動した場合の波形劣化を示す図である。
【図79】変調振幅が大きい場合の波形劣化を示す図である。
【図80】変調振幅が小さい場合の波形劣化を示す図である。
【図81】SMZMの静特性が変動した場合の波形劣化を示す図である。
【図82】ピーク検出部およびボトム検出部の構成を示す図である。
【図83】ピーク側波形信号およびボトム側波形信号の抽出を説明する図である。
【図84】SMZMの動作状態を制御するデジタル信号処理を実現する構成を示す図である。
【図85】SMZMの動作状態を制御する手順を示すフローチャートである。
【図86】Y軸方向制御を示すフローチャートである。
【図87】X軸方向制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態について、図1を参照する。図1は、第1の実施の形態に係る光変調装置の一例を示す。
【0014】
第1の実施形態の光変調装置2Aは、本出願の光変調装置の一例である。光変調装置2Aは、図1に示すように、光変調デバイスとして半導体マッハツェンダ型変調器(SMZM:Semiconductor Mach-Zehnder Modulator 、以下「SMZM」と称する)4を備える。SMZM4は、電気光学効果を有する半導体基板を用いて実現される。
【0015】
SMZM4は、第1の光導波路6、および第2の光導波路8を備える。光導波路6、8は、上述の半導体基板上に形成される。また、光導波路6、8は、例えば、互いに平行に形成される。SMZM4には、入力光が導かれる。入力光は、信号を伝送するためのキャリア光であって、例えば、直流光源により生成されるCW光である。光源は、例えば、レーザ光源である。ただし、SMZM4には、光変調器から出力される光信号が入力されてもよい。入力光は、光スプリッタ10により分岐され、光導波路6、8に導かれる。光導波路6、8を通過した光は、合波器12により合波される。これにより、データ信号などの変調信号に対応する変調光信号が生成される。
【0016】
光導波路6に対して第1の信号電極16が設けられる。また、光導波路8に対して第2の信号電極18が設けられる。ここで、光導波路6、8、および信号電極16、18は、電気光学効果を有する半導体基板上にマッハツェンダ干渉計を実現するように、形成される。信号電極16は、第1の入力端子20に接続され、信号電極18は、第2の入力端子22に接続される。入力端子20には、第1の入力電圧V1が与えられ、入力端子22には、第2の入力電圧V2が与えられる。また、信号電極16、18には、それぞれ終端器24、26が接続されている。
【0017】
光モニタ部11は、SMZM4から出力される変調光信号をモニタする。すなわち、光モニタ部11は、変調光信号を表す電気信号を生成して制御部13に導く。
制御部13は、低周波信号生成部15、位相比較器17、バイアス電圧生成部19を備える。低周波信号生成部15は、低周波信号を生成する。この低周波信号は、例えば、バイアス電圧生成部19により生成されるバイアス電圧に重畳される。あるいは、この低周波信号は、変調信号生成部9により生成される変調信号の振幅を制御する振幅制御電圧に重畳される。いずれのケースにおいても、SMZM4の光出力は、低周波信号の成分(以下、「低周波成分」と呼ぶことがある)をまたはその高調波成分を含むことになる。
【0018】
位相比較器17は、低周波信号生成部15により生成される低周波信号を基準として、変調光信号から抽出される低周波成分の位相を検出する。そして、バイアス電圧生成部19は、位相比較器17により検出される位相に基づいて、信号電極16、18に印加するバイアス電圧V1bias、V2biasを制御する。
【0019】
変調信号生成部9は、入力データ信号から変調信号を生成する。このとき、変調信号生成部9は、プッシュプル駆動(差動駆動)を実現するために、変調信号として、1組の正相変調信号V1ppおよび逆相変調信号V2ppを生成する。この変調信号の振幅は、位相比較器17により検出される位相に基づいて制御される。
【0020】
入力電圧V1は、バイアス電圧V1biasに正相変調信号V1ppを加えることにより得られる。また、入力電圧V2は、バイアス電圧V2biasに逆相変調信号V2ppを加えることにより得られる。ここで、バイアス電圧V1bias、V2biasにそれぞれ正相変調信号V1pp、V2ppを加える動作は、たとえば、バイアスT回路により実現される。バイアスT回路は、インダクタおよびキャパシタを含む電子回路である。バイアスT回路を使用することにより、高周波信号(V1pp、V2pp)は直流成分(V1bias、V2bias)の影響を受けることはなく、直流成分は高周波信号の影響を受けることはない。なお、バイアスT回路の構成および作用は、例えば、特開2007−109839号公報に記載されている。
【0021】
信号電極16、18に入力電圧V1、V2が印加されると、光導波路6、8の屈折率は電気光学効果により印加電圧に応じて変化する。この屈折率の変化は、光導波路6、8の通過光の位相をそれぞれ変化させる。すなわち、光導波路6の屈折率は、入力電圧V1により変化し、光導波路8の屈折率は、入力電圧V2により変化する。この結果、各光導波路において、位相シフトが発生する。このとき、光導波路6、8を通過する1組の光の位相が合波部12において互いに同じであれば、SMZM4の出力光パワーが最大となる。一方、光導波路6、8を通過する1組の光の位相が合波部12において互いに逆相であれば、SMZM4の出力光パワーが最小となる。このように、変調信号を利用して光導波路6、8の電界を制御することにより、光強度変調が実現される。なお、図1に示す構成では、プッシュプル駆動(差動駆動)が行われるので、チャープの小さな変調光信号が得られる。
【0022】
図2は、第1の実施形態の光変調制御方法を示すフローチャートである。図2に示す手順は、本出願の光変調制御方法の一例である。
ステップS11において、光導波路6、8に、バイアス電圧および変調信号が与えられる。これにより、SMZM4は、光導波路6、8の通過光を変調する。
【0023】
ステップS12において、変調信号生成部9は、低周波信号を利用して振幅変調を行う。そして、変調信号生成部9は、振幅変調された変調信号を生成する。振幅変調された変調信号は、光導波路6、8に対して設けられている信号電極16、18に印加される。この結果、SMZM4から出力される変調光信号は、低周波成分を含む。
【0024】
ステップS13において、制御部13は、低周波信号を基準として、SMZM4の出力光信号中の低周波成分の位相を検出する。そして、制御部13は、検出した位相に基づいて、変調信号生成部9により生成される変調信号の振幅、およびバイアス電圧生成部19により生成されるバイアス電圧を制御する。
【0025】
上記構成および方法によれば、SMZM4の光出力中の低周波成分をモニタし、低周波信号を利用してその低周波成分を同期検波することにより、光出力中の低周波成分の位相または低周波信号の2倍の周波数成分が検出される。ここで、SMZM4の光出力は、SMZM4の動作状態を表す情報を含むので、上述の位相または2倍の周波数成分を検出すれば、その動作状態を制御するための情報を得ることができる。
【0026】
また、実施形態の方法は、上記位相情報に応じて変調信号の振幅およびバイアス電圧を制御するので、SMZM4の動作特性に応じてそれらを自動的に最適化または略最適化することができる。すなわち、温度変化、経年変化が発生する場合、あるいは回路誤差が存在する場合であっても、最適な変調振幅およびバイアス電圧を設定することができる。したがって、種々の変動要因に関係なく、変調動作を安定させることが可能であり、安定した変調光信号を得ることができる。
【0027】
なお、上記の実施形態では、信号電極16、18双方に変調信号およびバイアス電圧が入力され、それら双方が制御されるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、本発明は、変調信号の振幅またはバイアス電圧のいずれか一方のみを制御する形態であってもよい。変調信号の振幅またはバイアス電圧の何れか一方を最適化する構成であっても、それに応じて変調動作が安定し、安定した光出力が得られる。
【0028】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態について、図3を参照する。図3は、第2の実施の形態に係る光変調装置の一例を示している。図3に示す構成は一例であって、本発明は図3に示す構成に限定されるものではない。なお、図3において、図1と同じ要素には同じ符号が付されている。
【0029】
第2の実施形態の光変調装置2Bは、本出願の光変調装置および光変調制御方法の一例である。光変調装置2Bは、図3に示すように、光変調デバイスとしてSMZM(半導体マッハツェンダ型変調器)4を備える。
【0030】
SMZM4は、第1の実施の形態と同様に、マッハツェンダ干渉計を形成し、同様の機能を有する。従って、光導波路6、8および信号電極16、18は、第1の実施の形態と同様に、変調信号を含む入力電圧V1、V2による電気光学効果で生じた屈折率変調を提供する。すなわち、入力電圧V1、V2により、光導波路6、8の屈折率が変化し、位相シフトが生じる。このとき、光導波路6、8を通過する1組の光の位相が合波部12において互いに同じであれば、SMZM4の出力光パワーが最大となる。一方、光導波路6、8を通過する1組の光の位相が合波部12において互いに逆相であれば、SMZM4の出力光パワーが最小となる。このように、変調信号を利用して光導波路6、8の電界を制御することにより、光強度変調が実現される。また、プッシュプル駆動(差動駆動)が行われるので、チャープの小さな変調光信号が得られる。
【0031】
駆動回路28は、SMZM4の駆動手段の一例である。駆動回路28は、入力データ信号からデータ信号変調信号V1pp、V2ppを生成する。データ信号変調信号V1pp、V2ppの振幅は、制御部30からの振幅制御信号Vcにより制御される。
【0032】
SMZM4の出力側には、光モニタ部32が設けられている。制御部30は、低周波信号生成部34、位相検出器36、バイアス電圧生成部38、振幅制御信号生成部40を備える。
【0033】
光モニタ部32は、SMZM4の光出力をモニタし、その光出力を表す信号を制御部30の位相検出器36に導く。低周波信号生成部34は、基準信号源であって、基準信号である低周波信号(ディザリング信号)を生成する。位相検出器36は、低周波信号生成部34により生成される低周波信号を利用して、光出力に含まれている低周波成分の位相を検出する。このとき、位相検出器36は、例えば、光信号波形のピーク側およびボトム側の低周波成分の位相をそれぞれ検出する。低周波信号の周波数は、例えば、1kHz程度であり、データ信号の周波数よりも遙に低い。
【0034】
バイアス電圧生成部38は、位相検出器36の検出結果に応じて、1組のバイアス電圧V1bias、V2biasを生成する。バイアス電圧V1bias、V2biasは、位相検出器36の検出結果に応じて決まる直流電圧である。ただし、バイアス電圧V1bias、V2biasは、必要に応じて、上記直流電圧に正相または逆相の低周波信号を重畳することで生成されることがある。振幅制御信号生成部40は、位相検出器36の検出結果に応じて、振幅制御信号Vcを生成する。この振幅制御信号Vcにも、必要に応じて低周波信号が重畳されることがある。
【0035】
次に、バイアス電圧V1bias、V2bias、および振幅制御信号Vcを生成する動作について、図4を参照する。図4は、制御動作の手順を示すフローチャートである。
この制御動作は、本出願の光変調制御方法または光送信制御方法の一例である。図4に示すように、まず、光モニタ部32は、SMZM4の光出力をモニタする(ステップS21)。位相検出器36は、低周波信号を利用する同期検波により、光出力に含まれる低周波成分波形のピーク側およびボトム側の位相を検出する(ステップS22)。バイアス電圧生成部38は、検出位相に応じてバイアス電圧V1bias、V2biasを生成し、振幅制御信号生成部40は、検出位相に応じて振幅制御信号Vcを生成する(ステップS23)。制御部30は、バイアス電圧V1biasに正相低周波小信号(u1)を加算し、バイアス電圧V2biasに逆相低周波小信号(u2)を加算する(ステップS24)。駆動回路28は、振幅制御信号Vcに応じて、入力データ信号に対応する正相変調信号V1ppおよび逆相変調信号V2ppの振幅を制御する(ステップS25)。振幅制御された正相変調信号V1ppにバイアス電圧V1biasが重畳され、また、振幅制御された逆相変調信号V2ppにバイアス電圧V2biasが重畳される。これにより、入力電圧V1、V2が生成される(ステップS26)。
【0036】
ステップS21〜S26の処理は、繰り返し実行される。換言すれば、バイアス電圧V1bias、V2bias、および振幅制御信号Vcを制御する動作は、継続的に行われる。このような自動制御により、バイアス電圧および変調振幅はマクロ的に最適化され、温度変化および経年変化等の影響を受けない光変調出力が得られ、光変調出力の安定化が図られる。
【0037】
次に、SMZM4の静特性および光強度変調について、図5を参照する。図5は、SMZMの静特性の一例、および光強度変調の最適な駆動方法の一例を示している。
図5は、SMZM4の特性を表す3次元グラフである。横軸は、光導波路6の信号電極16に印加される入力電圧V1を表す。縦軸は、光導波路8の信号電極18に印加される入力電圧V2を表す。SMZM4の出力光パワーは、紙面に垂直な方向に、等高線を利用して表わされている。等高線に付されている値は、正規化された光出力パワーを表す。すなわち、SMZM4の最大光パワーが「1.0」で表わされ、SMZM4の最小光パワー(あるいは、消光状態)が「0.0」で表わされている。
【0038】
光強度変調において、光信号の消光比を最大にするためには、入力電圧V1、V2により得られる駆動状態が、図5に示すように、ピーク点(すなわち、光パワーが「1.0」である点)とゼロ点(すなわち、光パワーが「0.0」である点)との間を移動するように変調が行われる。このような変調動作を得るためには、光導波路6、8に印加する変調信号の振幅電圧Vpp(すなわち、正相変調信号V1ppおよび逆相変調信号V2ppの各振幅電圧Vpp)、およびバイアス電圧V1bias、V2biasをそれぞれ制御して、動作状態を最適化する必要がある。たとえば、データ信号「1」がピーク点(光パワー=1.0)に設定され、データ信号「0」がゼロ点(光パワー=0.0)に設定されるように、変調信号V1pp、V2ppの振幅、およびバイアス電圧V1bias、V2biasが制御される。
【0039】
なお、この明細書では、図5に示す静特性グラフにおいて光パワーがゼロである等高線に平行な方向を「X軸」または「X軸方向」と呼ぶ。なお、光パワーがゼロである等高線は、静特性グラフ上で直線または略直線である。また、X軸と直交する方向を「Y軸」または「Y軸方向」と呼ぶ。
【0040】
SMZM4の動作状態は、上述したように、図5に示すピーク点とゼロ点との間を移動するように制御される。すなわち、理想的な変調信号に対応する電圧により生成される状態は、図5に示すピーク点とゼロ点との間を移動する。したがって、この明細書においては、上述したY軸方向を「変調方向」と呼ぶ。すなわち、変調方向は、図5に示す静特性グラフにおいて、ピーク点から光パワーがゼロである等高線への垂線と平行な方向に相当する。或いは、変調方向は、光パワーがゼロである等高線と直交する。
【0041】
また、図5において、破線L1、L2は、SMZMの出力光信号の波形において「折り返し」が発生するレベルを表す。破線L1は、光波形のボトム側(すなわち、低光パワー側)の折り返しが生じる境界線を表す。なお、破線L1は、光パワーがゼロである等高線と一致している。また、破線L2は、光波形のピーク側(すなわち、高光パワー側)の折り返しが生じる境界線を表す。
【0042】
次に、Y軸方向の光出力特性について、図6を参照する。図6(A)は、光変調器(すなわち、SMZM4)の入出力特性を示す。図6(B)は、Y軸方向の電圧変化(変調信号)を示す。図6(C)は,光出力波形を示す。
【0043】
光強度変調においては、図6(A)(B)に示すように、Vπ駆動が行われる。すなわち、変調信号「0」は、好ましくは、最小の光パワーを得る電圧(ボトム電圧Vb)に変換される。また、変調信号「1」は、好ましくは、最大の光パワーを得る電圧(ピーク電圧Vp)に変換される。このような変調信号を生成すれば、消光比の良好な強度変調光信号が得られる。
【0044】
図6において、変調信号の振幅がVπよりも小さいときは、出力光信号の消光比が劣化する。変調信号「0」に対応する電圧が、図6(A)に示すボトム電圧Vbよりも低下すると、光信号波形のボトム側で波形の折り返しが発生する。同様に、変調信号「1」に対応する電圧が、ピーク電圧Vpよりも高くなると、光信号波形のピーク側で波形の折り返しが発生する。
【0045】
Y軸方向の光出力特性について、図7および図8をさらに参照する。図7は、SMZMの静特性を表す。図8は、Y軸方向の光出力特性の2次元グラフである。図8に示す特性カーブa〜dは、それぞれ図7に示す4つの動作状態a〜dに対応している。
【0046】
図7において、2次元グラフ上の位置は、SMZMに印加されるバイアス電圧を表す。すなわち、バイアス電圧を制御することにより、2次元グラフ上の所望の位置を得ることができる。図7に示す動作状態a〜dは、バイアス電圧がX軸方向において互いに異なっている。また、動作状態a〜dに対応する2方向矢印の長さは、それぞれ対応する変調信号の振幅を表している。
【0047】
図7において、状態bは、最適なバイアス状態に相当する。バイアス電圧が最適な状態bに調整されていれば、出力光パワーは1.0である。この場合、図8に示すように、高い出力光パワーが得られ、消光比が最大になる。
【0048】
X軸方向においてバイアス電圧が最適値からシフトすると、SMZM4の出力光パワーは低下する。たとえば、図7に示す状態aは、最適状態の近傍に位置するので、SMZM4の出力光パワーはさほど低下しない(図8の特性a)。これに対して、図7に示す状態c、dは、最適状態から遠く離れているので、SMZM4の出力光パワーは大きく低下してしまう(図8の特性c、d)。
【0049】
このように、バイアス電圧が最適化されていれば、SMZMの出力光パワーは最大である。バイアス電圧が最適値に対してX軸方向にシフトすると、図9に示すように、SMZMの出力光パワーのピーク値は低下する。換言すれば、バイアス電圧が最適化されていれば、最大の光出力パワーが得られる。したがって、SMZM4においては、光導波路6、8に印加する変調信号V1pp、V2ppの振幅電圧Vpp、および各バイアス電圧V1bias、V2biasそれぞれを最適化することにより、好ましい光強度変調が実現される。
【0050】
上述のように、光変調装置2Bにおいて、「0」に対応する変調信号電圧がゼロ点(光パワー=0.0)に配置され、かつ、「1」に対応する変調信号電圧がピーク点(光パワー=1.0)に配置されると、消光比、クロスポイントの位置、開口度が最適な光強度変調が実現される。よって、実施形態の変調制御方法は、上述の最適な動作状態が得られるように、各変調信号V1pp、V2ppの振幅、およびバイアス電圧V1bias、V2biasを制御する。
【0051】
次に、バイアス電圧V1bias、V2biasおよび変調振幅の最適化について、図10〜図12を参照する。図10は、SMZMの静特性を示す。図11(A)は、SMZMのY軸方向の光出力特性を示し、図11(B)は、Y軸方向の電圧変化(変調信号)を示す。図12は、X軸方向の電圧に対する光出力特性を示している。
【0052】
以下では、図10に示す開始状態aから最適状態cを得る手順を説明する。状態aにおいては、図11に示すように、「0」に対応する変調信号電圧がボトム電圧Vbよりも小さく、また、「1」に対応する変調信号電圧もピーク電圧Vpからずれている。したがって、まず、「0」に対応する変調信号電圧がボトム電圧Vbとなり、かつ、「1」に対応する変調信号電圧がピーク電圧Vpとなるように、変調信号の振幅およびY軸方向のバイアス電圧が制御される。この制御により、状態bが得られる。
【0053】
状態bは、X軸方向において最適化されていないので、光出力パワーのピーク値が小さい。したがって、SMZM4の動作状態が最適状態cに近づくように、X軸方向のバイアス電圧が制御される。ただし、X軸方向にバイアス電圧が変化すると、図8または図10から明らかなように、変調信号の振幅および/またはY軸方向のバイアス電圧の最適値も変化する。よって、最適状態cを得るためには、変調信号の振幅の制御、Y軸方向のバイアス電圧の制御、X軸方向のバイアス電圧の制御を繰り返し実行することが好ましい。
【0054】
第2の実施の形態の特徴事項および利点について以下に列挙する。
(1)出力光信号から抽出される低周波信号の変化をモニタすることにより、バイアス電圧V1bias、V2biasおよび変調振幅の最適点からのずれを検出できる。よって、このずれを小さくするように(または、最小化するように)フィードバック制御を行うことにより、バイアス電圧V1bias、V2biasおよび変調振幅を常に最適化できる。
【0055】
(2)この結果、バイアス電圧V1bias、V2bias、変調振幅を、予め正確に調整しなくてもよい。すなわち、入力電圧V1、V2の無調整化が実現される。
(3)温度変動等に起因するSMZM4の特性の変化、あるいは、駆動回路28(変調器280)、制御部30などのSMZM4の周辺回路に回路誤差が発生しても、光出力の最適化が図られる。
【0056】
(4)バイアス電圧V1bias、V2bias、変調振幅を個々に制御することは困難である。これに対して、光変調装置2Bにおいては、バイアス電圧が変調方向(Y軸方向)および変調方向と直交する方向(X軸方向)に分解され、X軸方向およびY軸方向に対して制御が行われる。したがって、SMZMの動作状態の自動制御が実現される。
【0057】
(5)変調方向(図5においては、Y軸方向)においては、光出力のピーク側およびボトム側において波形折り返しが生じないように、Y軸方向のバイアス電圧および変調振幅が制御される。
【0058】
(6)変調方向の制御のみでは、出力光パワーを1.0に調整できないので、変調方向に直交する方向(図5においては、X軸方向)にバイアス制御が行われる。これにより、良好な消光比が得られる。
【0059】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態について、図13を参照する。図13は、第3の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示している。図13において、図3と同じ要素には同じ符号が付されている。
【0060】
光送信モジュール200Aは、本出願の光変調装置、光送信装置、変調制御方法の一例である。光送信モジュール200Aは、図13に示すように、光変調器として上述のSMZM4を備える。
【0061】
SMZM4の構成および動作は、図3に示す第2の実施の形態と実質的に同じなので、同じ符号を付すことにより、その説明を省略する。なお、SMZM4の入力側には、光源46が設けられる。そして、光源46により生成されるキャリア光がSMZM4に導かれる。キャリア光は、例えば、CW光である。
【0062】
変調器280は、図3に示す駆動回路28の一例である。変調器280には、制御部30により生成される振幅制御信号Vcが与えられる。変調器280の出力信号の振幅は、この振幅制御信号Vcにより制御される。以下では、振幅制御信号Vcを用いて変調器280の出力信号の振幅を制御する動作を、振幅変調と呼ぶ。すなわち、変調器280は、入力データ信号を振幅制御信号Vcで振幅変調し、正相変調信号V1ppおよび逆相変調信号V2ppを出力する。変調信号V1ppは、キャパシタ48を介して入力端子20に導かれ、変調信号V2ppは、キャパシタ50を介して入力端子22に導かれる。各キャパシタ48、50は、直流成分をカットする。
【0063】
制御部30は、既述のバイアス電圧V1bias、V2biasを生成する。バイアス電圧V1biasは、インダクタ52を介して入力端子20に導かれ、バイアス電圧V2biasは、インダクタ54を介して入力端子22に導かれる。インダクタ52、54は、高周波成分に対して高インピーダンスを有し、高周波成分をカットする。
【0064】
このように、SMZM4に対する入力電圧V1は、正相変調信号V1ppにバイアス電圧V1biasを加えることにより得られる。また、SMZM4に対する入力電圧V2は、逆相変調信号V2ppにバイアス電圧V2biasを加えることにより得られる。
【0065】
SMZM4の出力側には、ビームスプリッタ56が設置されている。ビームスプリッタ56は、出力光信号をモニタする光モニタ部32の一部であって、出力光信号を分岐して受光素子58に導く。受光素子58は、光信号を電流信号に変換する手段であり、ビームスプリッタ56により分岐された光信号を電流(受光電流)に変換する。受光素子58により得られる電流信号は、制御部30に導かれる。なお、受光素子58により得られる電流信号は、SMZM4の光出力を表す。
【0066】
制御部30は、電流信号を電圧信号に変換する手段として、I/V変換部60を有する。よって、I/V変換部60は、SMZM4の出力光信号を表す電圧信号を出力する。I/V変換部60は、例えば、トランスインピーダンスアンプで実現される。I/V変換部60により生成される電圧信号は、ピーク検出器62及びボトム検出器64に導かれる。ピーク検出器62は、I/V変換部60の出力信号を用いて光出力のピーク側の波形を検出する。一方、ボトム検出器64は、I/V変換部60の出力信号を用いて光出力のボトム側の波形を検出する。
【0067】
ピーク検出器62は、図82(A)に示すように、ダイオードD1、キャパシタC1、抵抗R1を有する。I/V変換部60から出力される電圧信号は、ダイオードD1のアノードに入力される。ダイオードD1のカソードには、キャパシタC1および抵抗R1を介して電圧V1が印加される。ここで、キャパシタC1および抵抗R1は、互いに並列に接続されている。また、電圧V1は、好ましくは、図83に示すように、I/V変換部60からの電圧信号の中心電圧に調整される。この回路構成により、ピーク検出器62は、I/V変換部60の電圧信号から、電圧V1の高電圧側の信号を抽出する。すなわち、ピーク検出器62により、SMZM4の出力光信号のピーク側の波形が得られる。
【0068】
ボトム検出器64は、図82(B)に示すように、ダイオードD2、キャパシタC2、抵抗R2を有する。I/V変換部60から出力される電圧信号は、ダイオードD1のカソードに入力される。ダイオードD2のアノードには、キャパシタC2および抵抗R2を介して電圧V1が印加される。ここで、キャパシタC2および抵抗R2は、互いに並列に接続されている。この回路構成により、ボトム検出器64は、I/V変換部60の電圧信号から、電圧V1の低電圧側の信号を抽出する。すなわち、ボトム検出器64により、SMZM4の出力光信号のボトム側の波形が得られる。
【0069】
ピーク検出器62により検出されるピーク側波形信号は、位相比較器68に導かれる。また、ボトム検出器64により検出されるボトム側波形信号は、位相比較器70に導かれる。
【0070】
低周波変調部66は、図3に示す低周波信号生成部34の一例である。低周波変調部66は、低周波変調信号(既述の低周波信号または低周波小信号)を生成する。この低周波変調信号は、位相比較器68、70に与えられる。
【0071】
位相比較器68は、図3に示す位相検出器36に対応する。位相比較器68は、ピーク検出器62により得られるピーク側波形信号と低周波変調信号との間で位相を比較し、ピーク側位相情報を取得する。位相比較器70も、図3に示す位相検出器36に対応する。位相比較器70は、ボトム検出器64により得られるボトム側波形信号と低周波変調信号との間で位相を比較し、ボトム側位相情報を取得する。
【0072】
位相比較器68、70の出力信号は、それぞれ積分部72、74により積分された後、バイアス電圧生成部38および振幅演算器76に導かれる。積分部72、74は、それぞれ、位相比較器68、70の出力信号の高周波成分を除去して平滑化する手段の一例である。したがって、積分部72、74は、それぞれ、例えば、ローパスフィルタで実現してもよい。なお、位相比較器68、70により得られる位相情報が、高周波成分を含まず、直流信号である場合は、積分部72、74は省略してもよい。
【0073】
バイアス電圧生成部38は、Y軸方向バイアス演算器78およびX軸方向バイアス演算器80を備える。Y軸方向バイアス演算器78は、積分部72、74の出力信号を利用して、Y軸方向バイアスを最適化または略最適化するように、バイアス電圧V1bias、V2biasを制御する。また、X軸方向バイアス演算器80は、積分部74の出力信号を利用して、X軸方向バイアスを最適化または略最適化するように、バイアス電圧V1bias、V2biasを制御する。
【0074】
Y軸方向バイアス演算器78およびX軸方向バイアス演算器80の出力側には、第1の加算器82、第2の加算器84、第3の加算器86が設けられている。加算器82、84、86は、信号加算手段の一例である。加算器82は、Y軸方向バイアス演算器78の反転出力信号と、X軸方向バイアス演算器80の出力信号とを加算する。加算器84は、加算器82の出力信号と、低周波変調信号とを加算し、バイアス電圧V1biasを生成する。加算器86は、Y軸方向バイアス演算器78およびX軸方向バイアス演算器80の出力信号を加算し、バイアス電圧V2biasを生成する。なお、この実施の形態では、バイアス電圧V2biasには低周波変調信号は重畳されていないが、バイアス電圧V2biasにも低周波変調信号を重畳してもよい。
【0075】
振幅演算器76は、積分部72、74の出力信号を利用して、正相変調信号V1ppおよび逆相変調信号V2ppの振幅を制御するための振幅制御信号Vcを生成する。振幅制御信号Vcは、変調器280に与えられる。
【0076】
上記構成により、Y軸方向制御として、Y軸方向バイアス制御および変調振幅の制御が行われる。また、X軸方向制御として、X軸方向バイアス制御が行われる。
Y軸方向においてバイアス電圧を制御するときは、バイアス電圧V1bias、V2biasを、互いに逆方向に同じ量だけシフトさせる。すなわち、バイアス電圧をY軸方向に変化させるときには、ΔV1bias=−ΔV2biasでバイアス電圧V1bias、V2biasが制御される。これに対して、X軸方向においてバイアス電圧を制御するときには、バイアス電圧V1bias、V2biasを、互いに同じ方向に同じ量だけシフトさせる。すなわち、バイアス電圧をX軸方向に変化させるときには、ΔV1bias=ΔV2biasでバイアス電圧V1bias、V2biasが制御される。
【0077】
Y軸方向の制御について、図14を参照する。図14は、Y軸方向のバイアス電圧を低周波信号で変調した場合の光出力特性を示す。図14(A)はSMZMの静特性、図14(B)はY軸方向の電圧(データ信号変調信号)、図14(C)は出力光波形を示している。図14(C)に示す光波形a〜eは、それぞれ、図14(B)に示す入力電圧信号a〜eに対応して生成される。
【0078】
SMZM4においては、入力信号の電圧がピーク電圧Vpを超えると、出力光信号の波形が反転する。同様に、入力信号の電圧がボトム電圧Vbを超えると、出力光信号の波形が反転する。
【0079】
図14において、ボトム電圧Vbとピーク電圧Vpの間で電圧信号cがSMZM4に与えられると、光信号cが出力される。ボトム電圧Vbよりも低い電圧信号aがSMZM4に与えられると、光信号aが出力される。この場合、光信号aの位相は、光信号cに対して反転している。また、ボトム電圧Vpよりも高い電圧信号eがSMZM4に与えられると、光信号eが出力される。この場合、光信号eの位相は、光信号cに対して反転している。
【0080】
電圧信号bは、ボトム電圧Vbの近傍に配置されている。この場合、ボトム電圧Vbよりも低い電圧成分に対して、光波形の折り返しが発生する。このため、対応する光信号bの周波数は、電圧信号bの周波数の2倍である。また、1周期の電圧信号bに対して、光信号bは、1つの同相成分および1つの逆相成分を含む。
【0081】
一方、電圧信号dは、ピーク電圧Vpの近傍に配置されている。この場合、ピーク電圧Vpよりも高い電圧成分に対して、光波形の折り返しが発生する。このため、対応する光信号dの周波数は、電圧信号dの周波数の2倍である。また、1周期の電圧信号dに対して、光信号dは、1つの同相成分および1つの逆相成分を含む。
【0082】
制御部30は、上記特性を利用して、Y軸方向バイアスおよび変調振幅を最適化する。すなわち、制御部30は、SMZM4のバイアス電圧に低周波変調信号を重畳し、SMZM4の出力光信号中の低周波成分の位相をモニタする。そして、制御部30は、この低周波成分の位相に基づいて、Y軸方向バイアスおよび変調振幅を制御する。このとき、ピーク検出器62により得られるピーク側波形信号が光信号dの位相状態に制御され、ボトム検出器64により得られるボトム側波形信号が光信号bの位相状態に制御される。この結果、データ「0」に対して最小光パワーが生成され、データ「1」に対して最大光パワーが生成される。すなわち、Y軸方向バイアスおよび変調振幅が最適化される。
【0083】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態について、図15を参照する。図15は、第4の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示している。図15において、図13と同じ要素には同じ符号が付されている。
【0084】
第4の実施の形態の光送信モジュール200Bは、図13に示す第3の実施の形態と同様に、SMZM4を備える。また、第4の実施の形態の光送信モジュール200Bは、第3の実施形態の構成に加えて、反転部88および第4の加算器90を備えている。反転部88は、低周波変調部66から出力される低周波変調信号を反転させる。反転部88により得られた逆相低周波変調信号は、加算器90に導かれる。加算器90は、加算器86の出力信号と逆相低周波変調信号とを加算する。したがって、第4の実施の形態では、バイアス信号生成部38は、逆相低周波変調信号が重畳されたバイアス電圧V2biasを生成する。その他の構成は、図3に示す第2の実施の形態または図13に示す第3の実施の形態と実質的に同じなので、説明を省略する。
【0085】
第4の実施の形態では、Y軸方向バイアス電圧に低周波信号を重畳することにより、変調振幅およびY軸方向バイアス電圧が制御される。Y軸方向バイアス電圧を低周波信号で変調するために、加算器84は、加算器82の出力信号(バイアス電圧V1biasを生成させるための電圧)に、低周波変調信号を重畳することにより、低周波変調されたバイアス電圧V1biasを生成する。また、加算器90は、加算器86の出力信号(バイアス電圧V2biasを生成させるための電圧)に、反転部88により得られる逆相低周波変調信号を重畳することにより、低周波変調されたバイアス電圧V2biasを生成する。すなわち、加算器84、90は、バイアス電圧に低周波信号を重畳する重畳器として動作する。
【0086】
第4の実施の形態においても、位相比較器68、70を用いることにより、ピーク検出器62により得られるピーク側波形信号の位相およびボトム検出器64により得られるボトム側波形信号の位相が検出される。制御部30は、これらの位相に基づいて、変調振幅の誤差、およびY軸方向バイアス電圧の誤差を検出する。そして、制御部30は、変調振幅の誤差およびY軸方向バイアス電圧の誤差を小さくするように、Y軸方向バイアス電圧および変調振幅を制御する。従って、第4の実施形態においても、変調振幅およびY軸方向バイアス電圧が自動的に最適化される。
【0087】
Y軸方向電圧の変調について、図16および図17を参照する。図16は、バイアス電圧をY軸方向においてのみ低周波信号で変調した場合の動作を示す。図16(A)はSMZMの静特性、図16(B)は入力電圧V1の波形、図16(C)はY軸方向の電圧、図16(D)は入力電圧V2の波形、図16(E)はX軸方向の電圧を示している。図17は、図16に示す入力電圧V1、入力電圧V2、X軸方向の電圧、Y軸方向の電圧を時間軸上に示している。
【0088】
入力電圧V1、V2に対して互いに逆相の低周波信号を重畳すると、X軸方向の低周波成分電圧は相殺される。したがって、Y軸方向の電圧のみが低周波信号によって変調される。なお、入力電圧V1、V2に重畳される低周波信号の振幅は、互いに同じであるものとする。この変調動作は、例えば、図15において、V1biasに低周波信号を重畳し、V2biasに逆相低周波信号を重畳することにより実現される。
【0089】
次に、変調振幅およびY軸方向バイアス電圧を制御する方法について説明する。以下では、図16〜図17に示すように、Y軸方向バイアス電圧が低周波信号で変調されているものとする。
【0090】
(1)変調振幅およびY軸方向バイアス電圧が最適である場合(図18〜図20)
図18〜図20は、変調振幅およびY軸方向バイアス電圧が最適化されている状態を示している。図18(A)はSMZM4の動作特性、図18(B)は変調信号波形、図18(C)は出力光信号を示している。図19および図20は、光送信モジュール200Bの各要素により得られる信号を示す。図19(A)はY軸方向の電圧を表す。なお、低周波変調部66により生成される低周波信号の波形も、図19(A)に示す波形と同じである。図19(B)はデータ信号変調信号、図19(C)は光出力信号、図19(D)はピーク側波形信号、図19(E)はボトム側波形信号を表す。図19(F)は、位相検出器68により得られるピーク側波形信号の位相信号、図19(G)は、位相検出器70により得られるボトム側波形信号の位相信号を表す。図20(H)は、積分部70により得られるピーク側位相情報、図20(I)は、積分部72により得られるボトム側位相情報を表す。図20(J)は、Y軸方向バイアス演算器78の出力信号、図20(K)は、振幅演算器76の出力信号を表す。図20(L)(M)は、バイアス電圧V1bias、V2biasを表す。
【0091】
なお、第4の実施形態では、低周波信号は、Y軸方向バイアス電圧に重畳される。このため、SMZM4の入力電圧のピーク側波形およびボトム側波形は、図19(B)に示すように、低周波信号と同相となる。
【0092】
変調振幅およびY軸方向バイアス電圧が最適であれば、出力光信号の波形は、ピーク側およびボトム側の双方において折り返しを有する。この場合、光信号のピーク側波形は、図19(D)に示すように、低周波信号と同相の区間および低周波信号と逆相の区間を交互に有する。そうすると、位相検出器68により得られる位相信号は、図19(F)に示すように、「1」および「0」を交互に繰り返すことになる。積分部72は、この位相信号を積分(すなわち、平均化)する。ここで、図19(F)に示す位相信号を平均化すると「0.5」が得られる。ただし、積分部72は、例えば、位相信号の平均値から「0.5」を引き算した値を出力する。したがって、この場合、積分器72は、図20(H)に示すように、「ゼロ」を出力する。同様に、光信号のボトム側波形も、図19(E)に示すように、低周波信号と同相の区間および低周波信号と逆相の区間を交互に有する。したがって、積分器74も、図20(I)に示すように、「ゼロ」を出力する。
【0093】
積分部72、74の出力の双方がゼロであるときは、振幅演算器76は、図20(K)に示すように、振幅制御信号Vcを保持する。この場合、変調振幅は変化しない。また、積分部72、74の出力がいずれもゼロであるときは、Y軸方向バイアス演算器78は、図20(J)に示すように、出力電圧を保持する。この場合、バイアス電圧V1bias、V2biasを変化しない。
【0094】
(2)変調振幅が大きい場合(図21〜図23)
図21〜図23は、変調振幅が最適値よりも大きい状態を示している。なお、Y軸方向バイアスは、適切に調整されているものとする。図21(A)〜図21(C)は、それぞれ、図18(A)〜図18(C)に対応している。また、図22(A)〜図22(G)、図23(H)〜図23(M)は、それぞれ、図19(A)〜図19(G)、図20(H)〜図20(M)に対応している。
【0095】
変調振幅が最適値よりも大きいときは、光信号のピーク側波形信号の位相は、図22(D)に示すように、低周波信号と逆相になる。そうすると、位相検出器68により得られる位相信号は、図22(F)に示すように、継続的に「1」である。積分部72は、この位相信号を平均化し、さらに「0.5」を引き算する。この結果、積分器72は、図23(H)に示すように、正の値を出力する。同様に、光信号のボトム側波形も、図22(E)に示すように、低周波信号と逆相になる。したがって、積分器74も、図23(I)に示すように、正の値を出力する。
【0096】
積分部72、74の双方が正の値を出力するときは、振幅演算器76は、図23(K)に示すように、変調振幅を小さくするように振幅制御信号Vcを変化させる。また、積分部72、74の双方が正の値を出力するときは、Y軸方向バイアス演算器78は、出力信号を変化させない。この場合、バイアス電圧V1bias、V2biasは変化しない。
【0097】
(3)変調振幅が小さい場合(図24〜図26)
図24〜図26は、変調振幅が最適値よりも小さい状態を示している。なお、Y軸方向バイアスは、適切に調整されているものとする。図24(A)〜図24(C)は、それぞれ、図18(A)〜図18(C)に対応している。また、図25(A)〜図25(G)、図26(H)〜図26(M)は、それぞれ、図19(A)〜図19(G)、図20(H)〜図20(M)に対応している。
【0098】
変調振幅が最適値よりも小さいときは、光信号のピーク側波形信号の位相は、図25(D)に示すように、低周波信号と同相になる。そうすると、位相検出器68により得られる位相信号は、図25(F)に示すように、継続的に「0」である。積分部72は、この位相信号を平均化し、さらに「0.5」を引き算する。この結果、積分器72は、図26(H)に示すように、負の値を出力する。同様に、光信号のボトム側波形も、図25(E)に示すように、低周波信号と同相になる。したがって、積分器74も、図26(I)に示すように、負の値を出力する。
【0099】
積分部72、74の双方が負の値を出力するときは、振幅演算器76は、図26(K)に示すように、変調振幅を大きくするように振幅制御信号Vcを変化させる。また、積分部72、74の双方が負の値を出力するときは、Y軸方向バイアス演算器78は、出力電圧を変化させない。この場合、バイアス電圧V1bias、V2biasは変化しない。
【0100】
(4)Y軸方向バイアス電圧が低い場合(図27〜図29)
図27〜図29は、Y軸方向バイアス電圧が最適値よりも低い場合を示している。なお、変調振幅は、適切に調整されているものとする。図27(A)〜図27(C)は、それぞれ、図18(A)〜図18(C)に対応している。また、図28(A)〜図28(G)、図29(H)〜図29(M)は、それぞれ、図19(A)〜図19(G)、図20(H)〜図20(M)に対応している。
【0101】
Y軸方向バイアス電圧が最適値よりも低いときは、光信号のピーク側波形信号の位相は、図28(D)に示すように、低周波信号と同相になる。そうすると、位相検出器68により得られる位相信号は、図28(F)に示すように、継続的に「0」である。よって、積分器72は、図29(H)に示すように、負の値を出力する。一方、光信号のボトム側波形信号の位相は、図28(E)に示すように、低周波信号と逆相になる。そうすると、位相検出器70により得られる位相信号は、図28(G)に示すように、継続的に「1」である。よって、積分器74は、図29(I)に示すように、正の値を出力する。
【0102】
積分部72が負の値を出力し、積分部74が正の値を出力するときは、振幅演算器76は、図29(K)に示すように、振幅制御信号Vcを変化させない。この場合、変調振幅は変化しない。また、積分部72が負の値を出力し、積分部74が正の値を出力するときは、Y軸方向バイアス演算器78は、図29(J)に示すように、Y軸方向バイアス電圧を高くするように、出力電圧を変化させる。このとき、例えば、バイアス電圧V1biasはΔVだけ高くなり、バイアス電圧V2biasはΔVだけ低くなる。
【0103】
(5)Y軸方向バイアス電圧が高い場合(図30〜図32)
図30〜図32は、Y軸方向バイアス電圧が最適値よりも高い場合を示している。なお、変調振幅は、適切に調整されているものとする。図30(A)〜図30(C)は、それぞれ、図18(A)〜図18(C)に対応している。また、図31(A)〜図31(G)、図32(H)〜図32(M)は、それぞれ、図19(A)〜図19(G)、図20(H)〜図20(M)に対応している。
【0104】
Y軸方向バイアス電圧が最適値よりも高いときは、光信号のピーク側波形信号の位相は、図31(D)に示すように、低周波信号と逆相になる。そうすると、位相検出器68により得られる位相信号は、図31(F)に示すように、継続的に「1」である。よって、積分器72は、図32(H)に示すように、正の値を出力する。一方、光信号のボトム側波形信号の位相は、図31(E)に示すように、低周波信号と同相になる。そうすると、位相検出器70により得られる位相信号は、図31(G)に示すように、継続的に「0」である。よって、積分器74は、図32(I)に示すように、負の値を出力する。
【0105】
積分部72が正の値を出力し、積分部74が負の値を出力するときは、振幅演算器76は、図32(K)に示すように、振幅制御信号Vcを変化させない。この場合、変調振幅を変化しない。また、積分部72が正の値を出力し、積分部74が負の値を出力するときは、Y軸方向バイアス演算器78は、図32(J)に示すように、Y軸方向バイアス電圧を低くするように、出力電圧を変化させる。このとき、例えば、バイアス電圧V1biasはΔVだけ低くなり、バイアス電圧V2biasはΔVだけ高くなる。
【0106】
<第5の実施の形態>
第5の実施の形態について、図33を参照する。図33は、第5の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示している。図33において、図13と同じ要素には同じ符号が付されている。
【0107】
第5の実施の形態の光送信モジュール200Cにおいては、変調振幅を制御するための振幅制御信号Vcが、低周波信号で変調される。第5の実施形態の光送信モジュール200Cは、第3の実施形態と比較すると、加算器84が削除され、また、第5の加算器92を追加されている。加算器92は、振幅演算器76の出力信号と、低周波変調部66により生成される低周波信号とを加算する。加算器92は、低周波信号で変調された振幅制御信号Vcを生成し、変調器280の振幅制御入力ポートに与える。その他の構成は、第3または第4の実施の形態と実質的に同様なので、説明を省略する。
【0108】
低周波信号を用いた振幅変調は、振幅演算器76の出力信号(すなわち、変調振幅を制御する電圧)に低周波信号を重畳することで実現される。以下、第5の実施形態における変調振幅およびY軸方向バイアス電圧の制御について説明する。
【0109】
Y軸方向バイアス電圧に低周波信号を重畳した場合の制御と同様に、位相比較器68、70を用いてピーク側波形およびボトム側波形の位相を検出することにより、変調振幅の誤差およびY軸方向バイアス電圧の誤差が検出される。そして、制御部30は、変調振幅の誤差およびY軸方向バイアス電圧の誤差を小さくするように、変調振幅およびY軸方向バイアス電圧を制御する。したがって、変調振幅およびY軸方向バイアス電圧は自動的に最適化される。
【0110】
低周波信号で変調振幅を変動させる動作について、図34および図35を参照する。図34は、変調信号の振幅を低周波で変動させる場合の動作を示す。図34(A)はSMZMの静特性、図34(B)は入力電圧V1の波形、図34(C)はY軸方向の電圧、図34(D)は入力電圧V2の波形、図34(E)はX軸方向の電圧を示している。図35(A)は、振幅制御信号Vcを表す。図35(B)は正相変調信号、図35(C)は逆相変調信号、図35(D)はY軸方向の電圧を示している。
【0111】
変調器280の振幅制御電圧Vcを低周波信号で変調すると、図35(B)および図35(C)に示すように、変調信号の振幅が低周波信号に同期して変動する。これにより、入力電圧V1、V2の振幅も、低周波信号に同期して変動する。この結果、図34(C)または図35(D)に示すように、Y軸方向の電圧は、低周波信号に同期して変動する。
一方、X軸方向においては、入力電圧V1、V2の低周波成分が相殺されるので、X軸方向の電圧は変化しない。
【0112】
次に、変調振幅およびY軸方向バイアス電圧を制御する方法について説明する。以下では、図34〜図35に示すように、振幅制御信号Vcが低周波信号で変調されているものとする。
【0113】
(1)変調振幅およびY軸方向バイアス電圧が最適である場合(図36〜図38)
図36〜図38は、変調振幅およびY軸方向バイアス電圧が最適化されている状態を示している。図36において、図36(A)はSMZM4の動作特性、図36(B)は変調信号波形、図36(C)は出力光信号を示している。図37および図38は、光送信モジュール200Cの各要素により得られる信号を示す。図37(A)は、低周波信号が重畳された振幅制御信号Vcを表す。なお、低周波変調部66により生成される低周波信号の波形も、図37(A)に示す波形と同じである。図37(B)はデータ信号変調信号、図37(C)は光出力信号、図37(D)はピーク側波形信号、図37(E)はボトム側波形信号を表す。図37(F)は、位相検出器68により得られるピーク側波形信号の位相信号、図37(G)は、位相検出器70により得られるボトム側波形信号の位相信号を表す。図38(H)は、積分部70により得られるピーク側位相情報、図38(I)は、積分部72により得られるボトム側位相情報を表す。図38(J)は、Y軸方向バイアス演算器78の出力信号を表す。図38(K)において、破線は、振幅演算器76の出力信号を表し、実線は低周波信号が重畳された振幅制御信号を表す。図20(L)(M)は、バイアス電圧V1bias、V2biasを表す。
【0114】
変調振幅およびY軸方向バイアス電圧が最適であれば、出力光信号の波形は、ピーク側およびボトム側の双方において折り返しを有する。よって、制御部30の動作は、図18〜図20を参照しながら説明した動作と実質的に同じである。すなわち、積分器72、74は、図38(H)(I)に示すように、いずれも「ゼロ」を出力する。
【0115】
積分部72、74の出力がいずれもゼロであるときは、振幅演算器76は、図38(K)に示すように、振幅制御信号Vcを変化させることなく保持する。この場合、変調振幅は変化しない。また、積分部72、74の出力がいずれもゼロであるときは、Y軸方向バイアス演算器78は、図38(J)に示すように、出力電圧を変化させない。この場合、バイアス電圧V1bias、V2biasは変化しない。
【0116】
なお、第5の実施形態では、低周波信号は、振幅制御信号Vcに重畳される。よって、図37(B)に示すように、SMZM4の入力電圧のピーク側波形は低周波信号と同相であり、SMZM4の入力電圧のボトム側波形は低周波信号と逆相である。このように、第5の実施形態では、第4の実施形態と異なり、SMZM4の入力電圧のピーク側波形およびボトム側波形の位相は、互いに逆相である。
【0117】
(2)変調振幅が大きい場合(図39〜図41)
図39〜図41は変調振幅が最適値よりも大きい状態を示している。なお、Y軸方向バイアスは、適切に調整されているものとする。図39(A)〜図39(C)は、それぞれ、図36(A)〜図36(C)に対応している。また、図40(A)〜図40(G)、図41(H)〜図41(M)は、それぞれ、図37(A)〜図37(G)、図38(H)〜図38(M)に対応している。
【0118】
変調振幅が最適値よりも大きいときは、光信号のピーク側波形信号の位相は、図40(D)に示すように、低周波信号と逆相になる。そうすると、位相検出器68により得られる位相信号は、図40(F)に示すように、継続的に「1」である。積分部72は、第4の実施形態と同様に、位相信号を平均化してさらに「0.5」を引き算する。この結果、積分器72は、図41(H)に示すように、正の値を出力する。一方、光信号のボトム側波形は、図40(E)に示すように、低周波信号と同相になる。したがって、積分器74は、図41(I)に示すように、負の値を出力する。
【0119】
第5の実施形態においては、積分部72が正の値を出力し、積分部74が負の値を出力するときは、振幅演算器76は、図41(K)に示すように、変調振幅を小さくするように振幅制御信号Vcを変化させる。また、積分部72が正の値を出力し、積分部74が負の値を出力するときは、Y軸方向バイアス演算器78は、出力電圧を変化させない。この場合、バイアス電圧V1bias、V2biasは変化しない。
【0120】
(3)変調振幅が小さい場合(図42〜図44)
図42〜図44は、変調振幅が最適値よりも小さい状態を示している。なお、Y軸方向バイアスは、適切に調整されているものとする。図42(A)〜図42(C)は、それぞれ、図36(A)〜図36(C)に対応している。また、図43(A)〜図43(G)、図44(H)〜図44(M)は、それぞれ、図37(A)〜図37(G)、図38(H)〜図38(M)に対応している。
【0121】
変調振幅が最適値よりも小さいときは、光信号のピーク側波形信号の位相は、図43(D)に示すように、低周波信号と同相になる。そうすると、位相検出器68により得られる位相信号は、図43(F)に示すように、継続的に「0」である。積分部72は、位相信号を平均化し、さらに「0.5」を引き算する。この結果、積分器72は、図44(H)に示すように、負の値を出力する。一方、光信号のボトム側波形は、図43(E)に示すように、低周波信号と逆相になる。したがって、積分器74は、図44(I)に示すように、正の値を出力する。
【0122】
第5の実施形態においては、積分部72が負の値を出力し、積分部74が正の値を出力するときは、振幅演算器76は、図44(K)に示すように、変調振幅を大きくするように振幅制御信号Vcを変化させる。また、積分部72が負の値を出力し、積分部74が正の値を出力するときは、Y軸方向バイアス演算器78は、出力電圧を変化させない。この場合、バイアス電圧V1bias、V2biasは変化しない。
【0123】
(4)Y軸方向のバイアス電圧が低い場合(図45〜図47)
図45〜図47は、Y軸方向のバイアス電圧が最適値よりも低い状態を示している。なお、変調振幅は、適切に調整されているものとする。図45(A)〜図45(C)は、それぞれ、図36(A)〜図36(C)に対応している。また、図46(A)〜図46(G)、図47(H)〜図47(M)は、それぞれ、図37(A)〜図37(G)、図38(H)〜図38(M)に対応している。
【0124】
Y軸方向バイアス電圧が最適値よりも低いときは、光信号のピーク側波形信号の位相は、図46(D)に示すように、低周波信号と同相になる。そうすると、位相検出器68により得られる位相信号は、図46(F)に示すように、継続的に「0」である。よって、積分器72は、図47(H)に示すように、負の値を出力する。また、光信号のボトム側波形信号の位相も、図46(E)に示すように、低周波信号と同相になる。そうすると、位相検出器70により得られる位相信号も、図46(G)に示すように、継続的に「0」である。よって、積分器74も、図47(I)に示すように、負の値を出力する。
【0125】
第5の実施形態においては、積分部72、74の双方が負の値を出力すると、振幅演算器76は、図47(K)に示すように、振幅制御信号Vcを変化させない。この場合、変調振幅は維持される。また、積分部72、74の双方が負の値を出力すると、Y軸方向バイアス演算器78は、図47(J)に示すように、Y軸方向バイアス電圧を高くするように、出力電圧を変化させる。この電圧変化に応じて、バイアス電圧V1bias、V2biasもそれぞれ変化する。
【0126】
(5)Y軸方向のバイアス電圧が高い場合(図48〜図50)
図48〜図50は、Y軸方向のバイアス電圧が最適値よりも高い状態を示している。なお、変調振幅は、適切に調整されているものとする。図48(A)〜図48(C)は、それぞれ、図36(A)〜図36(C)に対応している。また、図49(A)〜図49(G)、図50(H)〜図50(M)は、それぞれ、図37(A)〜図37(G)、図38(H)〜図38(M)に対応している。
【0127】
Y軸方向バイアス電圧が最適値よりも高いときは、光信号のピーク側波形信号の位相は、図49(D)に示すように、低周波信号と逆相になる。そうすると、位相検出器68により得られる位相信号は、図49(F)に示すように、継続的に「1」である。よって、積分器72は、図50(H)に示すように、正の値を出力する。また、光信号のボトム側波形信号の位相も、図49(E)に示すように、低周波信号と逆相になる。そうすると、位相検出器70により得られる位相信号も、図49(G)に示すように、継続的に「1」である。よって、積分器74も、図50(I)に示すように、正の値を出力する。
【0128】
第5の実施形態においては、積分部72、74の双方が正の値を出力すると、振幅演算器76は、図50(K)に示すように、振幅制御信号Vcを変化させない。この場合、変調振幅は維持される。また、積分部72、74の双方が正の値を出力すると、Y軸方向バイアス演算器78は、図50(J)に示すように、Y軸方向バイアス電圧を低くするように、出力電圧を変化させる。この電圧変化に応じて、バイアス電圧V1bias、V2biasもそれぞれ変化する。
【0129】
このように、第5の実施形態では、振幅制御信号に低周波信号が重畳される。一方、先に説明した第4の実施形態では、バイアス電圧に低周波信号が重畳される。したがって、第4の実施形態と第5の実施形態との間では、光信号のボトム側波形の位相が互いに異なり、また、振幅演算器76およびY軸方向バイアス演算器78が制御動作を判定する際の論理が互いに異なる。
【0130】
<第6の実施の形態>
第6の実施の形態について、図51を参照する。図51は、第6の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示している。図51において、図15と同じ要素には同じ符号が付されている。
【0131】
第4および第5の実施の形態では、Y軸方向制御に言及した。第6の実施の形態では、X軸方向制御について言及する。X軸方向制御においては、消光比を最適化するようにX軸方向バイアス電圧が調整される。X軸方向バイアス電圧は、バイアス電圧V1bias、V2biasを制御することにより最適化される。なお、バイアス電圧V1bias、V2biasを同じ方向に同じ量だけシフトさせることにより、バイアス電圧をX軸方向に変化させることができる。
【0132】
バイアス電圧がX軸方向に変化すると、例えば図9に示すように、光出力パワーが変化する。消光比を良くするためには、最大光出力パワーを大きくする必要がある。換言すれば、X軸方向の制御は、光出力パワーを大きくするように、X軸方向のバイアス電圧を制御する動作を含む。
【0133】
変調振幅およびY軸方向バイアス電圧が適切に制御されると、変調信号の「0」が図5に示すボトム側境界線L1上に配置され、変調信号の「1」がピーク側境界線L2上に配置される。この後、消光比を最適化するために、変調振幅を一定の値に保持しながら、バイアス電圧がX軸方向に制御される。この場合、変調信号「0」は、好ましくはボトム側境界線L1上に配置されたままである。一方、変調信号「1」は、ピーク側境界線L2からシフトすることになる。
【0134】
ここで、バイアス電圧に低周波信号が重畳されているものとする。そうすると、SMZM4の出力光信号は、低周波成分を含む。そして、この低周波成分のピーク側波形の位相は、変調信号「1」がピーク側境界線L2を超えているときと、変調信号「1」がピーク側境界線L2を超えていないときとでは、互いに反転する。したがって、X軸方向バイアス制御においては、出力光信号のピーク側波形の位相をモニタすれば、X軸方向バイアス電圧を最適化することができる。
【0135】
第6の実施の形態の光送信モジュール200Dは、図51に示すように、X軸方向のバイアス電圧に低周波信号を重畳する。X軸方向バイアス電圧に低周波信号を重畳するために、この実施例では、バイアス電圧V1bias、V2biasに対してそれぞれ低周波信号が加算される。このため、第6の実施形態のバイアス電圧生成部38は、図15に示す第4の実施の形態と同様に、加算器82、84、86、90を備える。ただし、第6の実施形態では、バイアス電圧生成部38は、反転部88を備えていない。したがって、加算器90には、低周波変調部66により生成される低周波信号が与えられる。すなわち、バイアス電圧V1bias、V2biasは、いずれも正相低周波信号により変調される。ピーク検出器62、ボトム検出器64、位相比較器68、70、積分部72、74の動作は、第3〜第5の実施形態と実質的に同じなので、説明を省略する。
【0136】
X軸方向バイアス電圧の制御について、図52および図53を参照する。図52は、バイアス電圧をX軸方向においてのみ低周波信号で変調した場合の動作を示す。図52(A)はSMZMの静特性、図52(B)は入力電圧V1の波形、図52(C)はY軸方向の電圧、図52(D)は入力電圧V2の波形、図52(E)はX軸方向の電圧を示している。図53は、図52に示す入力電圧V1、入力電圧V2、X軸方向の電圧、Y軸方向の電圧を時間軸上に示している。
【0137】
入力電圧V1、V2に対して互いに同相の低周波信号を重畳すると、Y軸方向の低周波成分は相殺される。したがって、X軸方向の電圧のみが低周波信号によって変調される。なお、入力電圧V1、V2に重畳される低周波信号の振幅は、互いに同じであるものとする。この変調動作は、例えば、図51において、V1bias、V2biasに同じ低周波信号を重畳することにより実現される。
【0138】
次に、X軸方向バイアス電圧を制御する方法について説明する。以下では、図51〜図52に示すように、バイアス電圧がX軸方向において低周波信号で変調されているものとする。また、変調振幅およびY軸方向バイアス電圧は、例えば、第3〜第5の実施形態において説明した方法により、最適化されていることが好ましい。
【0139】
(1)X軸方向バイアス電圧が最適である場合(図54〜図55)
図54〜図55は、X軸方向バイアス電圧が最適化されている状態を示している。図54(A)はSMZM4のX軸方向における入出力特性、図54(B)はX軸方向の電圧、図54(C)は出力光信号を示している。図55(A)はX軸方向の電圧を表す。なお、低周波変調部66により生成される低周波信号の波形も、図55(A)に示す波形と同じである。図55(B)は光出力電力、図55(C)はピーク側波形信号を表す。図55(D)は、位相検出器68により得られるピーク側波形信号の位相信号を表す。図55(E)は、積分部72により得られるピーク側位相情報を表す。図55(F)は、X軸方向バイアス演算器80の出力信号を表す。図55(G)(H)は、バイアス電圧V1bias、V2biasを表す。
【0140】
X軸方向バイアス電圧が最適であれば、出力光信号の波形は、ピーク側およびボトム側の双方において折り返しを有する。この場合、光信号のピーク側波形は、図55(C)に示すように、低周波信号と同相の区間および低周波信号と逆相の区間を交互に有する。そうすると、位相検出器68により得られる位相信号は、図55(D)に示すように、「1」および「0」を交互に繰り返すことになる。積分部72は、この位相信号を積分(すなわち、平均化)し、さらに「0.5」を引き算する。したがって、この場合、積分器72は、図55(E)に示すように、「ゼロ」を出力する。
【0141】
第6の実施形態においては、積分部72の出力がゼロであるときは、X軸方向バイアス演算器80は、出力電圧を変化させない。この場合、バイアス電圧V1bias、V2biasは変化しない。
【0142】
(2)X軸方向バイアス電圧が低い場合(図56〜図57)
図56〜図57は、X軸方向バイアス電圧が最適値よりも低い状態を示している。図56(A)〜図56(C)は、それぞれ、図54(A)〜図54(C)に対応する。また、図57(A)〜図57(H)は、それぞれ、図55(A)〜図55(H)に対応する。
【0143】
X軸方向バイアス電圧が最適値よりも低いときは、光信号のピーク側波形信号の位相は、図57(C)に示すように、低周波信号と同相になる。そうすると、位相検出器68により得られる位相信号は、図57(D)に示すように、継続的に「0」である。よって、積分器72は、図57(D)に示すように、負の値を出力する。
【0144】
第6の実施形態においては、積分部72が負の値を出力すると、X軸方向バイアス演算器80は、X軸方向バイアス電圧を高くするように出力電圧を変化させる。このとき、バイアス電圧V1bias、V2biasは、ΔVだけ高くなる。
【0145】
(3)X軸方向のバイアス電圧が高い場合(図58〜図59)
図58〜図59は、X軸方向バイアス電圧が最適値よりも高い状態を示している。図58(A)〜図58(C)は、それぞれ、図54(A)〜図54(C)に対応する。また、図59(A)〜図59(H)は、それぞれ、図55(A)〜図55(H)に対応する。
【0146】
X軸方向バイアス電圧が最適値よりも高いときは、光信号のピーク側波形信号の位相は、図59(C)に示すように、低周波信号と逆相になる。そうすると、位相検出器68により得られる位相信号は、図59(D)に示すように、継続的に「1」である。よって、積分器72は、図59(E)に示すように、正の値を出力する。
【0147】
第6の実施形態においては、積分部72が正の値を出力すると、X軸方向バイアス演算器80は、X軸方向バイアス電圧を低くするように出力電圧を変化させる。このとき、バイアス電圧V1bias、V2biasは、ΔVだけ低くなる。
【0148】
なお、図51に示す実施例では、X軸方向バイアス演算器80は、ピーク側波形を利用してX軸方向バイアスを制御しているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、X軸方向バイアス演算器80は、ピーク場が波形およびボトム側波形を利用してX軸方向バイアスを制御してもよい。
【0149】
<第7の実施の形態>
第7の実施の形態について、図60を参照する。図60は、第7の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示している。
【0150】
第7の実施の形態においては、Y軸方向制御(Y軸方向バイアス電圧制御、変調振幅制御)およびX軸方向制御(X軸方向バイアス電圧制御)が異なるタイミングで行われる。この構成によれば、Y軸方向制御とX軸方向制御との間の干渉が発生しない。すなわち、精度のよい制御が実現される。
【0151】
第7の実施の形態の光送信モジュール200Eは、図60に示すように、振幅演算器76、Y軸方向バイアス演算器78、X軸方向バイアス演算器80に加えて、極性切替部94および制御切替部96を有する。振幅演算器76、Y軸方向バイアス演算器78、X軸方向バイアス演算器80の動作は、制御切替部96によって切り替えられる。また、極性切替部94は、制御切替部96の指示に応じて、正相低周波変調信号または逆相低周波変調信号を出力する。逆相低周波変調信号は、低周波変調部66の出力信号を反転することで生成される。正相低周波変調信号は、低周波変調部66の出力信号を反転させないことで生成される。なお、制御切替部96は、例えば、Y軸方向制御およびX軸方向制御を時分割方式で実行する。
【0152】
極性切替部94は、低周波変調部66と加算器90との間に設けられる。したがって、制御切替部96の指示に応じて、バイアス電圧V2biasに対して、正相低周波変調信号または逆相低周波変調信号が重畳される。ここで、極性切替部94が逆相低周波変調信号を出力するときは、バイアス電圧のY方向にのみ低周波信号が重畳され、図15に示す光送信モジュール200Bと実質的に同じY軸方向制御が実現される。一方、極性切替部94が正相低周波変調信号を出力するときは、バイアス電圧のX方向にのみ低周波信号が重畳され、図51に示す光送信モジュール200Dと実質的に同じX軸方向制御が実現される。
【0153】
第7の実施形態におけるバイアス電圧V1bias、V2biasおよび変調振幅の最適化について、図61〜図66を参照する。図61〜図66は、SMZM4の動作特性を示している。図62〜図66において、(A)はSMZM4の静特性を示す。図62〜図64、図66において、(B)はY軸方向の電圧を示す。図65(B)は、X軸方向の電圧を示す。
【0154】
X軸方向バイアス電圧、Y軸方向バイアス電圧、変調振幅を最適化する手順について説明する。以下では、状態aから状態dへの制御を記載する。状態aは、X軸方向バイアス電圧、Y軸方向バイアス電圧、変調振幅がそれぞれ最適値からずれている。状態dは、好ましい動作状態を表す。
【0155】
まず、Y軸方向制御(Y軸方向バイアス電圧制御および変調振幅制御)が行われる。この場合、制御切替部96は、Y軸方向バイアス電圧演算器78および振幅演算器76を有効にし、X軸方向バイアス演算器80を無効にする。また、制御切替部96は、極性切替部94を動作させる。そうすると、極性切替部94は、低周波変調部66により生成される低周波変調信号の極性を反転させる。この結果、電圧V2biasに逆相低周波変調信号が重畳される。
【0156】
図61および図62において、状態aは、既述の「Y軸方向バイアス電圧が低い場合」に相当する。そこで、制御部30は、Y軸方向においてバイアス電圧を高くする。この結果、図62に示す状態a’が得られる。状態a’においては、変調信号「0」がボトム電圧Vbに設定されている。
【0157】
状態a’は、既述の「変調振幅が小さい場合」に相当する。そこで、制御部30は、変調振幅を大きくする。これにより、図63に示す状態a’’が得られる。しかし、バイアス電圧を固定しながら変調振幅を大きくすると、変調信号「0」がボトム電圧Vbからシフトしてしまう。すなわち、この例では、変調振幅を調整することにより、再度、「Y軸方向バイアス電圧が低い場合」が発生する。したがって、制御部30は、変調振幅を最適化する制御、およびY軸方向バイアス電圧を最適化する制御を、交互に繰り返し行う。この結果、Y軸方向制御が収束し、図64に示す状態bが得られる。状態bにおいては、変調信号「0」がボトム電圧Vbに制御され、変調信号「1」がピーク電圧Vpに制御されている。
【0158】
つづいて、X軸方向バイアス電圧制御が行われる。この場合、制御切替部96は、X軸方向バイアス演算器80を有効にするとともに、Y軸方向バイアス演算器78および振幅演算器76を無効にする。また、極性切替部94は、反転動作を行わないように制御される。この結果、電圧V2biasに正相低周波変調信号が重畳される。
【0159】
状態bは、図64または図65に示すように、既述の「X軸方向バイアス電圧が低い場合」に相当する。よって、制御部30は、X軸方向においてバイアス電圧を高くする。この結果、図65に示す状態cが得られる。
【0160】
上記制御によりX軸方向バイアス電圧が最適化される。しかし、X軸方向バイアス電圧を制御する過程で、Y軸方向バイアス電圧および/または変調振幅が最適値からずれることがある。したがって、第7の実施形態では、X軸方向バイアス電圧制御が安定した後、必要に応じてY軸方向制御が行われる。以降、X軸方向およびY軸方向の双方の状態が安定するまで、X軸方向制御およびY軸方向制御が交互に繰り返し実行される。この結果、X軸方向バイアス電圧、Y軸方向バイアス電圧、変調振幅がすべて最適化され、図66に示す状態dが得られる。
【0161】
以上のように、Y軸方向制御およびX軸方向制御を交互で行うことにより、常に、X軸方向バイアス電圧、Y軸方向バイアス電圧、変調振幅を最適化することができる。したがって、常に、安定した変調光信号が生成される。
【0162】
<第8の実施の形態>
第8の実施の形態について、図67を参照する。図67は、第8の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示している。
【0163】
第2、第3、第4、第6、第7の実施形態(図3、図13、図15、図51、図60)においては、バイアス電圧を低周波信号で変調することにより、X軸方向およびY軸方向のバイアス電圧と変調振幅が制御される。第8の実施の形態では、図33に示す第5の実施の形態と同様に、低周波信号を利用して変調振幅を変動させることにより、第2〜第7の実施の形態と同様な制御が行われる。
【0164】
第8の実施形態の光送信モジュール200Fは、図67に示すように、制御切替部96および低周波変調切替部98を備える。制御切替部96は、X軸方向バイアス演算器80、Y軸方向バイアス演算器78、振幅演算器76、低周波変調切替部98の動作を制御する。
【0165】
Y軸方向制御を行うときは、例えば、低周波変調切替部98は、低周波信号を加算器92に導く。また、X軸方向バイアス演算器80は停止し、Y軸方向バイアス演算器78および振幅演算器76は制御動作を実行する。すなわち、図33に示す光送信モジュール200Cの制御動作が実現される。
【0166】
X軸方向制御を行うときは、例えば、低周波変調切替部98は、低周波信号を加算器84、90に導く。また、X軸方向バイアス演算器80は制御動作を実行し、Y軸方向バイアス演算器78および振幅演算器76は停止する。すなわち、図51に示す光送信モジュール200Dの制御動作が実現される。
【0167】
<第9の実施の形態>
第9の実施の形態について、図68を参照する。図68は、第9の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示している。
【0168】
第9の実施の形態の光送信モジュール200Gにおいては、ピーク検出器62の出力側に第1のバンドパスフィルタ(BPF)100が設けられ、ボトム検出器64の出力側に第2のBPF102が設けられている。BPF100は、ピーク検出器62の出力信号から特定の周波数成分を抽出し、BPF102は、ボトム検出器64の出力信号から特定の周波数成分を抽出する。BPF100を通過したピーク側波形信号は、振幅制御部104、Y軸方向バイアス制御部106、X軸方向バイアス制御部108に導かれる。また、BPF102を通過したボトム側波形信号は、振幅制御部104およびY軸方向バイアス制御部106に導かれる。
【0169】
振幅制御部104は、既述の振幅演算器76に対応し、位相比較器110および積分部112を備える。位相比較器110は、低周波変調信号と、ピーク側波形信号およびボトム側波形信号の位相とを比較する。積分部112は、この比較結果を積分する。そして、振幅制御部104の出力信号は、変調制御部114に導かれる。変調制御部114は、振幅制御部104の出力信号に基づいて、変調器280の出力信号の振幅を制御する。
【0170】
Y軸方向バイアス制御部106は、既述の位相比較器68および積分部72を備える。位相比較器68は、低周波変調信号と、ピーク側波形信号およびボトム側波形信号の位相とを比較する。積分部72は、この比較結果を積分する。そして、Y軸方向バイアス制御部106の出力信号および反転出力信号が、それぞれ加算器82、86に導かれる。
【0171】
X軸方向バイアス制御部108は、既述の位相比較器70および積分部74を備える。位相比較器70は、低周波変調信号とピーク側波形信号との位相を比較する。積分部74は、この比較結果を積分する。そして、X軸方向バイアス制御部108の出力信号は、加算器82、86に導かれる。
【0172】
第9の実施の形態のバイアス電圧生成部38は、バイアス電圧V1biasを生成するバイアス制御部116、およびバイアス電圧V2biasを生成するバイアス制御部118を備える。バイアス制御部116には、加算器82の出力信号および低周波変調部66により生成される低周波変調信号が与えられ、低周波変調信号で変調されたバイアス電圧V1biasが得られる。バイアス制御部118は、加算器86の出力信号に基づいてバイアス電圧V2biasを生成する。
【0173】
図68に示す第9の実施の形態の光送信モジュール200Gの動作について、図69および図70を参照する。図69および図70は、光送信モジュール200Gの各要素の信号波形を示している。図69および図70において、(A)はデータ信号入力、(B)は低周波変調信号、(C)は入力電圧V1、(D)は入力電圧V2、(E)は出力光波形、(F)はI/V変換部60の出力信号、(G)はボトム側波形信号、(H)はピーク側波形信号、(I)はBPF102の出力信号、(J)はBPF100の出力信号、(K)は位相比較器70の出力信号、(L)は位相比較器68の出力信号、(M)は位相比較器110の出力信号、(N)は積分部74の出力信号、(O)は積分部72の出力信号、(P)は積分部112の出力信号を示す。
【0174】
図71は、変調振幅が最適値よりも小さいときの動作状態を示す。図71(A)はSMZMの動作特性、図71(B)はデータ信号変調信号、図71(C)は出力光信号、図71(D)は、光信号から抽出されたピーク側波形信号およびボトム側波形信号を示している。このケースでは、ピーク側波形信号およびボトム側波形信号の位相は、互いに同じである。
【0175】
図72は、Y軸方向においてバイアス電圧が最適値よりも低いときの動作状態を示す。図72(A)〜図72(D)は、それぞれ、図71(A)〜図71(D)に対応する。このケースでは、図72(C)に示すように、出力光信号のボトム側の波形が乱れている。また、ピーク側波形信号およびボトム側波形信号の位相は、図72(D)に示すように、それぞれ正相および逆相である。
【0176】
図73は、Y軸方向においてバイアス電圧が最適値よりも高いときの動作状態を示す。図73(A)〜図73(D)は、それぞれ、図71(A)〜図71(D)に対応する。このケースでは、図73(C)に示すように、出力光信号のピーク側の波形が乱れている。また、ピーク側波形信号およびボトム側波形信号の位相は、図73(D)に示すように、それぞれ逆相および正相である。
【0177】
<第10の実施の形態>
第10の実施の形態について、図74を参照する。図74は、第10の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示している。図74において、図68と同じ要素には同じ符号が付されている。
【0178】
第10の実施の形態に係る光送信モジュール200Hにおいては、図74に示すように、光導波路6に対して信号電極16および位相制御電極120が設置され、光導波路8に対して信号電極18および位相制御電極122が設置されている。
【0179】
位相制御電極120、122には、それぞれ、位相制御部124、126が設けられている。位相制御部124、126は、低周波変調部66により生成される低周波信号を、それぞれ位相制御電極120、122に印加する。この構成により、光導波路6、8の通過光は、低周波信号で変調される。
【0180】
バイアス制御部116は、加算器82の出力信号からバイアス電圧V1biasを生成する。また、バイアス制御部118は、加算器86の出力信号からバイアス電圧V2biasを生成する。すなわち、バイアス電圧V1bias、V2biasは低周波信号で変調されていない。その他の構成は、第9の実施の形態と実質的に同じなので、説明を省略する。上記構成によっても、先に説明した実施形態と同様の制御動作で同様の効果が得られる。
【0181】
<第11の実施の形態>
第11の実施の形態について、図75を参照する。図75は、第11の実施の形態に係る光送信モジュールの一例を示している。図75において、図68と同じ要素には同じ符号が付されている。
【0182】
第11の実施の形態の光送信モジュール200Iにおいては、I/V変換部60の出力側に第3のBPF128が設置されている。BPF128は、I/V変換部60の出力信号から特定の周波数成分(例えば、低周波信号の周波数成分)を抽出する。BPF128の通過信号は、Y軸方向バイアス制御部106に導かれる。第11の実施の形態では、Y軸方向バイアス制御部106の位相比較器68は、BPF128の出力信号と低周波変調信号との位相を比較する。積分部74は、この比較結果を積分する。そして、Y軸方向バイアス制御部106の出力信号および反転出力信号は、それぞれ加算器82、86に導かれる。X軸方向バイアス制御部108の構成および動作は、第10の実施形態と実質的に同じである。
【0183】
変調制御部114およびバイアス制御部118には、低周波変調部66により生成される低周波変調信号が与えられる。必要に応じて、データ信号の変調振幅が低周波変調信号により制御され、バイアス電圧V2biasが低周波変調信号により変調される。上記構成によっても、先に説明した実施形態と同様の制御動作で同様の効果が得られる。
【0184】
上述の第1〜第11に係る光変調装置、光送信装置、光変調制御方法によれば、下記の1以上の効果が得られる。
(1)光出力に応じてバイアス電圧および/または変調振幅が制御される。よって、光出力に現れる光変調器の特性変動および回路誤差の影響が回避され、変調振幅および/またはバイアス電圧を最適値に近づけることができる。
(2)バイアス電圧および/または変調振幅を予め調整しなくてもよい。
(3)光変調器および/または光変調器の周辺回路の温度変化または経年変化などの影響が回避され、出力光信号の波形の劣化を防止できる。
【0185】
<他の実施の形態>
(1)上記実施の形態においては光変調器はSMZMであるが、本出願に係る光変調装置、光送信装置、制御方法は、SMZMを使用する構成に限定されない。バイアス電圧およびデータ信号変調信号を用いる光変調器であれば、他の構成であってもよい。
【0186】
(2)上記実施の形態では、1つの電極にバイアス電圧および変調信号が印加されているが、各光導波路に対して、変調信号電極およびバイアス電極を別個に設けるようにしてもよい。
【0187】
(3)上記実施の形態では、マッハツェンダ型光変調器の1組の光導波路の双方に電極が設けられているが、本出願はこの構成に限定されない。すなわち、本出願に係る光変調器は、1組の光導波路の一方のみに電極を備える構成であってもよい。この場合、既述の変調信号生成部9は、入力データ信号から変調信号を生成する。そして、生成された変調信号が、上記電極に導かれる。
【0188】
<比較例>
比較例について、図76を参照する。図76は、SMZMおよびその周辺回路を示している。この比較例では、既述のSMZM4が使用される。したがって、SMZM4の構成および動作については説明を省略する。
【0189】
SMZM4の入力端子20、22には、変調器280の出力信号が与えられる。また、入力端子20、22には、バイアス制御回路130、132により生成されるバイアス電圧が与えられる。136、138、140、142は、それぞれ、入力データ信号、入力電圧V1、入力電圧V2、出力光信号を示している。
【0190】
SMZM4は、光導波路6、8の通過光を合波することにより得られる光信号を出力する。よって、出力光信号は、光導波路6、8の通過光の位相関係に依存する。例えば、1組の光の位相が互いに同じであれば、出力光パワーは最大であり、1組の光の位相が互いに逆であれば、出力光パワーは同相の場合は最小である。
【0191】
光導波路6、8の屈折率は、それぞれ入力電圧V1、V2によって制御される。すなわち、入力電圧V1、V2に応じて、光導波路6、8を通過する光の位相が制御される。したがって、入力電圧V1、V2を適切に制御することにより、光強度変調が実現される。
【0192】
図76に示す構成では、デバイス毎に、且つ、キャリア光の波長毎に予め最適な変調振幅とバイアス電圧を検索しても、変調振幅および入力電圧V1、V2を制御するだけでは次のような課題がある。
【0193】
SMZM4は、デバイス毎に静特性のばらつきを有する。また、光源46により生成されるキャリア光の入力波長に応じてSMZM4の光出力が変動する。このような変動を防止するためは、デバイス毎かつキャリア光の波長毎に、変調振幅(V1pp、V2pp)およびバイアス電圧(V1bias、V2bias)を最適点に設定する必要がある。しかし、この最適点の発見には膨大な時間を要する。
【0194】
また、変調振幅およびバイアス電圧の最適点は、様々な要因によって変化し得る。例えば、温度変化または経時変化によりSMZMの静特性が変化する。また、バイアス制御回路130、132、変調器280、振幅制御回路134の誤差に起因して、変調振幅またはバイアス電圧の変動が生じる。そして、これらの要因により、変調振幅および/またはバイアス電圧は、その最適点からずれることがある。この結果、波形の折り返しや、消光比劣化、クロスポイント変動、光波形の開口度の縮小などが発生し、光波形が劣化する。以下、光波形が劣化する例を示す。
【0195】
(例1) 図77は、SMZMの静特性の変動および波形劣化を示す。例1においては、図77(A)に示すように、SMZMの静特性がY軸方向に変動している。この場合、クロスポイントが変動する。また、消光比の劣化および光波形の折り返しが発生する。さらに、光波形の開口度が縮小する。
【0196】
(例2) 図78は、バイアス電圧が変動した場合の波形劣化を示す。バイアス電圧が最適値からY軸方向にずれた場合には、クロスポイントが変動する。また、消光比の劣化および光波形の折り返しが発生する。さらに、光波形の開口度が縮小する。なお、バイアス電圧の変動は、例えば、バイアス制御回路130、132の誤差に起因して発生する。
【0197】
(例3)図79は、変調振幅が大きい場合の波形劣化を示す。変調振幅が最適値より大きくなった場合には、消光比が劣化する。また、光波形の折り返しが発生する。さらに、光波形の開口度が縮小する。なお、変調振幅の変動は、例えば、振幅制御回路134の誤差に起因して発生する。
【0198】
(例4)図80は、変調振幅が小さい場合の波形劣化を示す。変調振幅が最適値よりも小さくなった場合は、消光比が劣化する。また、光波形の開口度が縮小する。
(例5)図81は、SMZMの静特性が変動した場合の波形劣化を示す。例5においては、図81(A)に示すように、SMZMの静特性がX軸方向に変動している。この場合、クロスポイントが変動する。また、消光比の劣化および波形の折り返しが発生する。さらに、光波形の開口度が縮小する。
【0199】
<マイクロコンピュータを利用する構成>
第1〜第11の実施形態の制御動作は、アナログ回路を含むハードウェア回路で実現してもよいし、デジタル信号処理で実現してもよい。以下、デジタル信号処理でSMZMのバイアス電圧および変調振幅を制御する構成について説明する。
【0200】
図84は、SMZM4の動作状態を制御するデジタル信号処理を実現する構成を示す。この信号処理システムは、マイクロコンピュータ300、A/Dコンバータ311、312、メモリ313、D/Aコンバータ314、315を備える。なお、マイクロコンピュータ300の代わりに、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を使用してもよい。
【0201】
A/Dコンバータ311は、図60等に示すピーク検出部62から出力されるピーク側波形信号をデジタルデータに変換する。同様に、A/Dコンバータ312は、ボトム検出部64から出力されるボトム側波形信号をデジタルデータに変換する。
【0202】
メモリ313は、バイアス電圧V1bias、バイアス電圧V2bias、振幅制御信号Vcの初期値を格納する。バイアス電圧V1bias、V2biasは、それぞれSMZM4の信号電極16、18に印加されるバイアス電圧である。また、振幅制御信号Vcは、変調器280の出力信号の振幅を制御する。
【0203】
D/Aコンバータ314、315は、マイクロコンピュータ300によって生成されるV1biasデータおよびV2biasデータを、それぞれ電圧信号に変換する。すなわち、D/Aコンバータ314、315は、バイアス電圧V1bias、V2biasを生成する。バイアス電圧V1bias、V2biasは、それぞれ、図60等に示すインダクタ52、54を介してSMZM4の入力端子20、22に導かれる。
【0204】
マイクロコンピュータ300は、ソフトウェアプログラムまたはファームウェアを実行することにより、例えば、図60に示す第7の実施形態と同等の機能を提供する。すなわち、マイクロコンピュータ300は、低周波変調部66、位相比較器68、70、積分部72、74、振幅演算器76、Y軸方向バイアス演算器78、X軸方向バイアス演算器80、加算器84、90、極性切替部94、制御切替部96を有する。これらの要素は、図60に示す第7の実施形態と同等の機能を提供する。ただし、これらの要素は、マイクロコンピュータ300においては、デジタル信号処理により実現される。
【0205】
マイクロコンピュータ300は、光源制御部301、初期設定部302、加算器303〜307をさらに有する。光源制御部301は、図60等に示す光源46の動作を制御する。初期設定部302は、バイアス電圧V1bias、バイアス電圧V2bias、振幅制御信号Vcの初期値をメモリ313から取得して出力する。
【0206】
加算器303は、バイアス電圧V1biasの初期値にY軸方向バイアス演算器78の出力データを加算する。加算器304は、バイアス電圧V2biasの初期値からY軸方向バイアス演算器78の出力データを引き算する。加算器305、306は、加算器303、304の出力データにそれぞれX軸方向バイアス演算器80の出力データを加算する。この場合、加算器84は、加算器305の出力データに低周波信号を重畳し、V1biasデータを生成する。また、加算器90は、加算器305の出力データに極性切替部94の出力信号(低周波信号または反転低周波信号)を重畳し、V2biasデータを生成する。加算器307は、振幅制御信号Vcの初期値に振幅演算器76の出力データを加算し、振幅制御信号Vcを生成する。この振幅制御信号Vcは、必要に応じてD/Aコンバータで変換された後、変調器280に与えられる。
【0207】
図85は、SMZM4の動作状態を制御する手順を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、図84に示すマイクロコンピュータ300により実行される。
ステップS31において、光源制御部301は、光源46をON状態に制御する。これにより、光源46は、直流光(すなわち、CW光)を生成する。ステップS32において、初期設定部302は、バイアス電圧V1bias、バイアス電圧V2bias、振幅制御信号Vcの初期値をメモリ313から取得する。ステップS33において、低周波変調部66は、低周波信号を生成する。
【0208】
ステップS34において、マイクロコンピュータ300は、Y軸方向制御を実行する。Y軸方向制御は、Y軸方向バイアス電圧の制御および変調振幅の制御を含む。ステップS35において、マイクロコンピュータ300は、X軸方向制御を実行する。X軸方向制御は、X軸方向バイアス電圧の制御を含む。なお、マイクロコンピュータ300は、ステップS34およびステップS35を交互に繰り返し実行する。
【0209】
図86は、Y軸方向制御を示すフローチャートである。この処理は、図85に示すステップS34に相当する。
ステップS41において、制御切替部96は、Y軸方向制御を開始する指示、およびX軸方向制御を停止する指示を生成する。この指示に応じて、振幅演算器76およびY軸方向バイアス演算器78は制御動作を開始する。一方、X軸方向バイアス演算器80は、制御動作を行わない。なお、X軸方向バイアス演算器80は、制御動作を行わないときは、出力信号を維持する。
【0210】
ステップS42において、制御切替部96は、極性切替部94に対して反転指示を与える。そうすると、極性切替部94は、ステップS43〜S52が実行されている期間、低周波信号を反転する。
【0211】
ステップS43において、マイクロコンピュータ300は、ピーク検出器62により検出されるピーク側波形信号およびボトム検出器64により検出されるボトム側波形信号を取得する。ステップS44において、位相比較器68は、低周波信号を利用する位相比較により、ピーク側波形信号の位相を検出する。また、位相比較器70は、低周波信号を利用する位相比較により、ボトム側波形信号の位相を検出する。
【0212】
ステップS45〜S46において、振幅演算器76は、ピーク側波形信号およびボトム側波形信号の位相に基づいて、振幅制御信号Vcを制御する。すなわち、ピーク側波形信号の位相が低周波信号と逆相であり、かつ、ボトム側波形信号の位相も低周波信号と逆相であるときは、振幅演算器76は、現在の変調振幅が最適値よりも大きいと判定する。この場合、振幅演算器76は、ステップS49において、変調振幅を小さくするように振幅制御信号Vcを調整する。また、ピーク側波形信号の位相が低周波信号と同相であり、かつ、ボトム側波形信号の位相も低周波信号と同相であるときは、振幅演算器76は、現在の変調振幅が最適値よりも小さいと判定する。この場合、振幅演算器76は、ステップS50において、変調振幅を大きくするように振幅制御信号Vcを調整する。
【0213】
ステップS47〜S48において、Y軸方向バイアス演算器78は、ピーク側波形信号およびボトム側波形信号の位相に基づいて、バイアス電圧をY軸方向に制御する。すなわち、ピーク側波形信号の位相が低周波信号と同相であり、かつ、ボトム側波形信号の位相が低周波信号と逆相であるときは、Y軸方向バイアス演算器78は、現在のY方向バイアス電圧が最適値よりも低いと判定する。この場合、Y軸方向バイアス演算器78は、ステップS51において、Y方向バイアス電圧を高くするように電圧V1bias、V2biasを調整する。また、ピーク側波形信号の位相が低周波信号と逆相であり、かつ、ボトム側波形信号の位相が低周波信号と同相であるときは、Y軸方向バイアス演算器78は、現在のY方向バイアス電圧が最適値よりも高いと判定する。この場合、Y軸方向バイアス演算器78は、ステップS52において、Y方向バイアス電圧を低くするように電圧V1bias、V2biasを調整する。
【0214】
ステップS43〜S52の処理を繰り返し実行すると、図18〜図20に示す状態が実現される。すなわち、ピーク側波形信号およびボトム側波形信号の位相をモニタすることにより、図18〜図20に示す状態が検出されると、マイクロコンピュータ300は、Y軸方向制御を終了する。なお、マイクロコンピュータ300は、図20(H)(I)に示すように、積分部72、74の出力が「ゼロ」であるときに、Y軸方向制御を終了するようにしてもよい。
【0215】
図87は、X軸方向制御を示すフローチャートである。この処理は、図85に示すステップS35に相当する。
ステップS61において、制御切替部96は、X軸方向制御を開始する指示、およびY軸方向制御を停止する指示を生成する。この指示に応じて、X軸方向バイアス演算器80は、制御動作を開始する。一方、振幅演算器76およびY軸方向バイアス演算器78は、制御動作を行わない。なお、振幅演算器76およびY軸方向バイアス演算器78は、制御動作を行わないときは、出力信号を維持する。
【0216】
ステップS62において、制御切替部96は、極性切替部94に対して非反転指示を与える。そうすると、極性切替部94は、ステップS63〜S68が実行されている期間、低周波信号を反転することなく加算器90に導く。
【0217】
ステップS63において、マイクロコンピュータ300は、ピーク検出器62により検出されるピーク側波形信号を取得する。ステップS64において、位相比較器68は、低周波信号を利用する位相比較により、ピーク側波形信号の位相を検出する。
【0218】
ステップS65〜S66において、X軸方向バイアス演算器80は、ピーク側波形信号の位相に基づいて、バイアス電圧をX軸方向に制御する。すなわち、ピーク側波形信号の位相が低周波信号と同相であるときは、X軸方向バイアス演算器80は、現在のX方向バイアス電圧が最適値よりも低いと判定する。この場合、X軸方向バイアス演算器80は、ステップS67において、X方向バイアス電圧を高くするように電圧V1bias、V2biasを調整する。また、ピーク側波形信号の位相が低周波信号と逆相であるときは、X軸方向バイアス演算器80は、現在のX方向バイアス電圧が最適値よりも高いと判定する。この場合、X軸方向バイアス演算器80は、ステップS68において、X方向バイアス電圧を低くするように電圧V1bias、V2biasを調整する。
【0219】
ステップS63〜S68の処理を繰り返し実行すると、図54〜図55に示す状態が実現される。すなわち、ピーク側波形信号の位相をモニタすることにより、図54〜図55に示す状態が検出されると、マイクロコンピュータ300は、X軸方向制御を終了する。なお、マイクロコンピュータ300は、図55(E)に示すように、積分部72の出力が「ゼロ」であるときに、X軸方向制御を終了するようにしてもよい。
【0220】
なお、光変調装置、光送信装置、光変調制御方法の実施形態について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。そして、そのような変形や変更は、本発明の範囲に含まれるものである。
【0221】
以上記載した各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。なお、本発明は、以下の付記に限定されるものではない。
(付記1)
電気光学効果を有する半導体基板に設けられた光導波路と、バイアス電圧および変調信号に応じた電界を前記光導波路に与える信号電極を備える変調器と、
前記変調信号を生成する変調信号生成器と、
前記バイアス電圧に、前記変調信号の第1周波数と異なる第2周波数の信号を重畳する重畳器と、
前記変調器により生成される変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調器の変調方向のバイアス電圧および前記変調方向に直交する直交方向のバイアス電圧を制御するバイアス制御器と、
を備える光変調装置。
(付記2)
前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分のピーク側波形を検出する第1の検出器をさらに備え、
前記バイアス制御器は、前記ピーク側波形の位相に基づいて、前記直交方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の光変調装置。
(付記3)
前記バイアス制御器は、前記ピーク側波形の位相が前記第2周波数の信号の位相と同相か逆相かに基づいて、前記直交方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする付記2に記載の光変調装置。
(付記4)
前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分のボトム側波形を検出する第2の検出器をさらに備え、
前記バイアス制御器は、前記ピーク側波形の位相および前記ボトム側波形の位相に基づいて、前記変調方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする付記2に記載の光変調装置。
(付記5)
前記バイアス制御器は、前記ピーク側波形の位相および前記ボトム側波形の位相が互いに逆位相であるときに、前記変調方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする付記4に記載の光変調装置。
(付記6)
前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分のピーク側波形およびボトム側波形を検出する検出器をさらに備え、
前記バイアス制御器は、前記ピーク側波形の位相および前記ボトム側波形の位相に基づいて、前記変調方向のバイアス電圧および前記直交方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の光変調装置。
(付記7)
前記光導波路は、マッハツェンダ干渉計を形成する第1および第2の光導波路を含み、
前記信号電極は、前記第1および第2の光導波路にそれぞれ電界を与える第1および第2の電極を含み、
前記第1の電極には、前記変調信号および第1のバイアス電圧が与えられ、
前記第2の電極には、前記変調信号の反転信号および第2のバイアス電圧が与えられ、
前記バイアス制御器は、前記直交方向のバイアス電圧を制御する第1のバイアス制御器を備え、
前記重畳器が、前記第1のバイアス電圧および前記第2のバイアス電圧に対して互いに同相で前記第2周波数の信号を重畳するときに、前記第1のバイアス制御器は、前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記直交方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の光変調装置。
(付記8)
前記第1のバイアス制御器は、前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記第1のバイアス電圧および前記第2のバイアス電圧を同じ方向に同じ量だけシフトさせる
ことを特徴とする付記7に記載の光変調装置。
(付記9)
前記バイアス制御器は、前記変調方向のバイアス電圧を制御する第2のバイアス制御器を備え、
前記重畳器が、前記第1のバイアス電圧および前記第2のバイアス電圧に対して互いに逆相で前記第2周波数の信号を重畳するときに、前記第2のバイアス制御器は、前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の光変調装置。
(付記10)
前記第2のバイアス制御器は、前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記第1のバイアス電圧および前記第2のバイアス電圧を互いに逆方向に同じ量だけシフトさせる
ことを特徴とする付記9に記載の光変調装置。
(付記11)
前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調信号の振幅を制御する振幅制御信号を生成する振幅制御器をさらに備え、
前記変調信号生成器は、前記振幅制御信号に応じて前記変調信号の振幅を制御する
ことを特徴とする付記1に記載の光変調装置。
(付記12)
前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分のピーク側波形およびボトム側波形を検出する検出器をさらに備え、
前記振幅制御器は、前記ピーク側波形の位相および前記ボトム側波形の位相に基づいて前記振幅制御信号を生成する
ことを特徴とする付記11に記載の光変調装置。
(付記13)
電気光学効果を有する半導体基板に設けられた光導波路と、バイアス電圧および変調信号に応じた電界を前記光導波路に与える信号電極を備える変調器と、
前記変調信号を生成する変調信号生成器と、
前記変調信号の振幅を制御する振幅制御信号を生成する振幅制御器と、
前記バイアス電圧を生成するバイアス制御器と、
前記バイアス電圧および前記振幅制御信号に、前記変調信号の第1周波数と異なる第2周波数の信号を重畳する重畳器と、を備え、
前記重畳器が前記振幅制御信号に前記第2周波数の信号を重畳するときに、前記バイアス制御器は、前記変調器により生成される変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調器の変調方向のバイアス電圧を制御し、
前記重畳器が前記振幅制御信号に前記第2周波数の信号を重畳するときに、前記振幅制御器は、前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記振幅制御信号を制御し、
前記重畳器が前記バイアス電圧に前記第2周波数の信号を重畳するときに、前記バイアス制御器は、前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調方向に直交する方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする光変調装置。
(付記14)
電気光学効果を有する半導体基板に設けられた光導波路と、バイアス電圧および変調信号に応じた電界を前記光導波路に与える信号電極を備える変調器と、
前記変調器に入力されるキャリア光を生成する光源と、
前記変調信号を生成する変調信号生成器と、
前記バイアス電圧に、前記変調信号の第1周波数と異なる第2周波数の信号を重畳する重畳器と、
前記変調器により生成される変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調器の変調方向のバイアス電圧および前記変調方向に直交する直交方向のバイアス電圧を制御するバイアス制御器と、
を備える光送信装置。
(付記15)
電気光学効果を有する半導体基板に設けられた光導波路と、バイアス電圧および変調信号に応じた電界を前記光導波路に与える信号電極を備える変調器の動作状態を制御する光変調制御方法であって、
前記バイアス電圧に、前記変調信号の第1周波数と異なる第2周波数の信号を重畳し、
前記変調器により生成される変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調器の変調方向のバイアス電圧および前記変調方向に直交する直交方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする光変調制御方法。
【符号の説明】
【0222】
4 SMZM
6、8 光導波路
9 変調信号生成部
11、32 光モニタ部
13 制御部
15 低周波信号生成部
16、18 信号電極
17 位相比較器
19 バイアス電圧生成部
200A、200B、200C、200D、200E、200F、200G、200H 光送信モジュール
28 駆動回路
280 変調器
34 低周波信号生成部
36 位相検出器
38 バイアス電圧生成部
40 振幅制御信号生成部
76 振幅演算器
78 X軸方向バイアス演算器
80 Y軸方向バイアス演算器
300 マイクロコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する半導体基板に設けられた光導波路と、バイアス電圧および変調信号に応じた電界を前記光導波路に与える信号電極とを備える変調器と、
前記変調信号を生成する変調信号生成器と、
前記バイアス電圧に、前記変調信号の第1周波数と異なる第2周波数の信号を重畳する重畳器と、
前記変調器により生成される変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調器の変調方向のバイアス電圧および前記変調方向に直交する直交方向のバイアス電圧を制御するバイアス制御器と、
を備える光変調装置。
【請求項2】
前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分のピーク側波形を検出する第1の検出器をさらに備え、
前記バイアス制御器は、前記ピーク側波形の位相に基づいて、前記直交方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の光変調装置。
【請求項3】
前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分のボトム側波形を検出する第2の検出器をさらに備え、
前記バイアス制御器は、前記ピーク側波形の位相および前記ボトム側波形の位相に基づいて、前記変調方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の光変調装置。
【請求項4】
前記光導波路は、マッハツェンダ干渉計を形成する第1および第2の光導波路を含み、
前記信号電極は、前記第1および第2の光導波路にそれぞれ電界を与える第1および第2の電極を含み、
前記第1の電極には、前記変調信号および第1のバイアス電圧が与えられ、
前記第2の電極には、前記変調信号の反転信号および第2のバイアス電圧が与えられ、
前記バイアス制御器は、前記直交方向のバイアス電圧を制御する第1のバイアス制御器を備え、
前記重畳器が、前記第1のバイアス電圧および前記第2のバイアス電圧に対して互いに同相で前記第2周波数の信号を重畳するときに、前記第1のバイアス制御器は、前記変調光信号から抽出される前記第2の周波成分の位相に基づいて、前記直交方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の光変調装置。
【請求項5】
前記バイアス制御器は、前記変調方向のバイアス電圧を制御する第2のバイアス制御器を備え、
前記重畳器が、前記第1のバイアス電圧および前記第2のバイアス電圧に対して互いに逆相で前記第2周波数の信号を重畳するときに、前記第2のバイアス制御器は、前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の光変調装置。
【請求項6】
前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調信号の振幅を制御する振幅制御信号を生成する振幅制御器をさらに備え、
前記変調信号生成器は、前記振幅制御信号に応じて前記変調信号の振幅を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の光変調装置。
【請求項7】
電気光学効果を有する半導体基板に設けられた光導波路と、バイアス電圧および変調信号に応じた電界を前記光導波路に与える信号電極を備える変調器と、
前記変調信号を生成する変調信号生成器と、
前記変調信号の振幅を制御する振幅制御信号を生成する振幅制御器と、
前記バイアス電圧を生成するバイアス制御器と、
前記バイアス電圧および前記振幅制御信号に、前記変調信号の第1周波数と異なる第2周波数の信号を重畳する重畳器と、を備え、
前記重畳器が前記振幅制御信号に前記第2周波数の信号を重畳するときに、前記バイアス制御器は、前記変調器により生成される変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調器の変調方向のバイアス電圧を制御し、
前記重畳器が前記振幅制御信号に前記第2周波数の信号を重畳するときに、前記振幅制御器は、前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記振幅制御信号を制御し、
前記重畳器が前記バイアス電圧に前記第2周波数の信号を重畳するときに、前記バイアス制御器は、前記変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調方向に直交する方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする光変調装置。
【請求項8】
電気光学効果を有する半導体基板に設けられた光導波路と、バイアス電圧および変調信号に応じた電界を前記光導波路に与える信号電極とを備える変調器と、
前記変調器に入力されるキャリア光を生成する光源と、
前記変調信号を生成する変調信号生成器と、
前記バイアス電圧に、前記変調信号の第1周波数と異なる第2周波数の信号を重畳する重畳器と、
前記変調器により生成される変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調器の変調方向のバイアス電圧および前記変調方向に直交する直交方向のバイアス電圧を制御するバイアス制御器と、
を備える光送信装置。
【請求項9】
電気光学効果を有する半導体基板に設けられた光導波路と、バイアス電圧および変調信号に応じた電界を前記光導波路に与える信号電極とを備える変調器の動作状態を制御する光変調制御方法であって、
前記バイアス電圧に、前記変調信号の第1周波数と異なる第2周波数の信号を重畳し、
前記変調器により生成される変調光信号から抽出される前記第2周波数成分の位相に基づいて、前記変調器の変調方向のバイアス電圧および前記変調方向に直交する直交方向のバイアス電圧を制御する
ことを特徴とする光変調制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図20】
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【図23】
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【図26】
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【図29】
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【図32】
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【図33】
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【図38】
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【図41】
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【図44】
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【図47】
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【図50】
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【図51】
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【図53】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図62】
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【図63】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図70】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図84】
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【図85】
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【図86】
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【図87】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【図28】
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【図30】
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【図31】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図39】
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【図40】
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【図42】
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【図43】
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【図45】
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【図46】
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【図48】
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【図49】
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【図52】
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【図54】
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【図61】
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【図64】
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【図69】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図77】
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【図82】
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【図83】
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【公開番号】特開2012−123358(P2012−123358A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85671(P2011−85671)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(309015134)富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 (72)
【Fターム(参考)】